あん摩マッサージ指圧師の1年目をどう乗り切るか|つまずきやすい場面と、慣れるまでの順番

長谷川 奈津
長谷川 奈津
あん摩マッサージ指圧師の1年目をどう乗り切るか|つまずきやすい場面と、慣れるまでの順番

この記事のポイント

  • あん摩マッサージ指圧師の1年目でつまずきやすい場面を
  • 契約・研修・給与のしくみ・技術・患者対応の順に整理
  • 辞めたくなったときの判断まで解説します

あん摩マッサージ指圧師として働き始めた1年目は、想像以上に消耗します。技術が足りない気がする、体力がもたない、給与のしくみがよく分からない。この3つが同時にのしかかるからです。ただ、つまずく場所はだいたい決まっていて、順番も見えています。この記事では、1年目に起きやすい場面を並べたうえで、どの順番で慣れていけばいいのかを整理します。

先に結論だけ言うと、1年目でいちばん大事なのは技術の上達ではありません。自分がどういう条件で働いているのかを正確に把握することです。これ、知らないまま1年を過ごしてしまう人が本当に多いんです。

働き始めてからの1年で、実際に何が起きるのか

あん摩マッサージ指圧師の働き方は、勤務先によってまったく違います。この職種は国家資格を必要とする仕事で、就職先は治療院、接骨院、整形外科などの医療機関、介護保険サービスの事業所、リラクゼーション系の店舗、訪問での施術を行う事業所、企業内の施術室と、思っている以上に幅があります。

働き始めてすぐ気づくのが、「学校で習ったことと、現場で求められることが違う」という感覚です。学校では手技と基礎医学を体系的に学びます。現場では、限られた時間の中で、患者さんの訴えを聞き、方針を決め、施術をして、記録を残し、次の予約につなげるところまでを一人でやります。技術以外の作業が想像より多いのです。

もうひとつが体力です。1日に何人も施術すると、手指と腰にかなりの負担がかかります。特に最初の数か月は、力の抜き方が分からず、必要以上に体力を使ってしまいます。これは経験を積むと自然に改善しますが、その前に体を壊してしまう人がいます。

そして給与です。求人票に書かれた金額と、実際に振り込まれる金額が違う。この相談を受けることがよくあります。原因のほとんどは、固定給と歩合の割合、社会保険料の控除、研修期間中の扱いを、入職前に確認していなかったことにあります。

つまり、1年目のつまずきは「技術が足りないから起きる」のではなく、「条件と環境の理解が足りないから起きる」ものが大半です。ここを先に押さえておくと、1年目の消耗はかなり減ります。

最初の関門は契約書。雇用か業務委託かで景色が変わる

入職するときに、契約書や労働条件通知書を受け取ったでしょうか。受け取っていない、あるいは受け取ったけれど読んでいない。この状態の方が、実はとても多いです。

まず確認してほしいのは、あなたの働き方が「雇用」なのか「業務委託」なのかという点です。同じ院で同じ仕事をしていても、この2つはまったく別の制度で扱われます。

雇用であれば、労働時間、休憩、有給休暇、最低賃金、残業代といった労働関係の法律の保護を受けます。社会保険や雇用保険の対象になる場合もあります。つまり、働いた時間に対して守られる仕組みがある状態です。

業務委託であれば、あなたは事業者として仕事を受けている扱いになります。労働時間の規制や有給休暇の仕組みは基本的に適用されません。その代わり、施術時間や受ける件数を自分で調整できる余地が広がります。

どちらが良い悪いという話ではありません。問題なのは、実態が雇用に近いのに業務委託の契約になっているケースです。出勤時間が決まっていて、シフトを指定され、施術方法も指示されるのに、契約書は業務委託。この形は、あとから条件をめぐって揉める原因になります。

ここでひとつ、注意書きを入れておきます。契約の形が実態に合っているかどうかの判断は、個別の事情によって変わります。給与や残業代、社会保険の扱いで納得できない点があるなら、自己判断で結論を出さず、労働基準監督署などの公的な窓口に相談してください。相談は無料で受け付けています。所管の情報は厚生労働省のサイトから確認できます。

行政書士として書類の相談を受ける立場から言うと、契約書を交わさずに働き始めてしまう例が、この業界にはかなりあります。悪意があるわけではなく、小規模な院ほど書面の習慣がないだけ、ということも多い。ただ、書面がないと、あとで「言った言わない」になったときに何も残りません。入職時に何も渡されなかったなら、「労働条件を書面でいただけますか」と一度お願いしてみてください。これは失礼な要求ではありません。

研修期間と試用期間。ここでのつまずきが一番多い

1年目の相談で特に多いのが、研修期間まわりです。

まず、研修期間と試用期間は別物です。試用期間は、雇用契約を結んだうえで、適性を見るために設けられる期間のことです。研修期間は、業務に必要な技術や知識を身につけるための期間を指します。この2つを混同したまま説明されると、条件がぼやけます。

確認すべき点は4つです。

1つ目は期間の長さです。3か月なのか6か月なのか。書面に書かれていますか。

2つ目はその間の給与です。本採用後より低く設定されている場合、いくらなのか、いつから本採用の金額になるのか。

3つ目は研修時間の扱いです。営業時間の前後に行われる技術研修が、労働時間として扱われているかどうか。参加が事実上強制されているのに無給、という形は問題になりやすい部分です。

4つ目は本採用の判断基準です。何ができるようになれば本採用なのか。あいまいなまま延長される例があります。

この4つを入職前に確認できていれば理想ですが、すでに働き始めている方も多いはずです。その場合でも、今から確認して構いません。「研修期間の終わりの目安を教えてください」と聞くのは、やる気の表明でもあります。

技術面では、最初の数か月は施術に入れず、受付や清掃、洗濯、予約管理といった業務が中心になる院もあります。これを「雑用ばかりで学べない」と感じる方がいますが、受付での会話は患者さんの主訴を聞く練習になりますし、予約の組み方を知ると時間配分の感覚が身につきます。無駄ではありません。ただし、半年経っても施術にまったく入れない状態が続くなら、それは技術を身につける場としては機能していないので、院長に見通しを聞いてみてください。

給与のしくみを、最初のうちに理解しておく

給与のしくみを理解しないまま働き続けると、1年目の終わりに「思っていたより手元に残らない」という結論だけが残ります。

この業界の給与は、大きく分けて3つの要素で組み立てられています。固定給、歩合、手当です。

固定給は、施術件数に関係なく支払われる部分です。ここが厚い院は収入が安定しますが、頑張っても上がりにくい面があります。

歩合は、施術した件数や売上に応じて上乗せされる部分です。指名の数が反映される院もあります。歩合の割合が高い院は、繁忙期と閑散期で収入の差が大きくなります。1年目は施術件数が伸びないので、歩合中心の院だと最初の数か月が苦しくなりやすい点は知っておいてください。

手当は、資格手当、住宅手当、通勤手当などです。あん摩マッサージ指圧師の免許に対する資格手当を設けている院もあります。

確認しておきたいのは、歩合の計算方法です。売上のうち何を対象にするのか、物販は含むのか、指名料はどう扱われるのか。この計算式が説明されないまま「歩合あり」とだけ言われている場合、あとで認識のずれが出ます。

年収の水準については、勤務先の業態と地域で幅があります。求人票に書かれた金額は歩合込みの上限であることが多いので、そのまま受け取らないでください。職業別の賃金の実態は公的な統計で確認できます。数字の根拠を持って条件を見るくせをつけると、転職を考えるときにも役立ちます。

社会保険についても触れておきます。小規模な院では、社会保険に加入していない場合があります。加入の要件は事業所の形態や労働時間によって変わるため、自分がどの扱いになっているのかは給与明細と加入状況で確認してください。判断に迷うときは、年金や健康保険の窓口に確認するのが確実です。

技術面でのつまずきと、抜け出す順番

技術のつまずきは、だいたいこの順番でやってきます。

最初は、力の入れすぎです。自信がないぶん、しっかり効かせようとして力んでしまう。結果として自分の手指を痛めます。ここは、先輩に自分の施術を受けてもらうのが早いです。力加減は言葉で説明されるより、受けてもらってフィードバックをもらうほうが伝わります。

次が、時間配分です。40分60分の枠に対して、前半に時間をかけすぎて後半が駆け足になる。これは、施術の前に「今日はここを中心にやります」と組み立てを決めておくだけで、かなり改善します。

そのあとに来るのが、判断です。訴えが複数あるとき、どこから手をつけるか。ここは経験がものを言う部分なので、焦らなくて大丈夫です。判断に迷う症状や、これまでに見たことがない反応があった場合は、一人で抱えず、院の管理者や医療機関につなぐ判断を優先してください。この職種は施術の専門職であり、診断をする立場ではありません。無理をしないことが、結果として患者さんを守ります。

最後が、自分の体のメンテナンスです。1年目は自分の体を後回しにしがちですが、手指や腰を壊すと、この仕事は続けられません。施術者どうしで交代して施術を受け合う、ストレッチの時間を確保する、体重の乗せ方を見直す。この習慣がある人ほど、長く続いています。

患者さんとのやりとりでつまずく場面

技術より先に、人とのやりとりで疲れてしまう方がいます。

多いのが、説明の場面です。「どこが悪いんですか」と聞かれたとき、どこまで答えていいのか迷う。ここは線引きをはっきりさせておくと楽になります。施術で感じた体の状態を伝えることと、病名を決めつけて伝えることは違います。前者は仕事の一部ですが、後者は範囲を超えます。「気になる症状が続くようなら、医療機関の受診をおすすめします」と伝えるのは、逃げではなく適切な対応です。

次に多いのが、断り方です。時間を延長してほしい、次回の予約を無理な時間に入れてほしい、施術中に個人的な連絡先を聞かれる。1年目は断ることに罪悪感を持ちやすいですが、院のルールを理由にして構いません。「院の決まりで、そこまでのご対応はできないんです」と伝えるほうが、あなたも患者さんも困りません。

そして、距離感です。継続して来院される方とは自然に関係が深くなりますが、施術者と患者という関係を保つことが、結果的に長く通ってもらうことにつながります。

トラブルの相談として持ち込まれるものの中には、施術中の会話が原因になっているものがあります。悪気のない一言が、受け取り方によっては不快に感じられることがある。避けたほうが無難な話題(体型、家庭の事情、病歴の詮索)を自分の中で決めておくと、事故が減ります。

訪問での施術という選択肢を知っておく

1年目のうちから知っておいてほしいのが、訪問での施術という働き方です。院に来られない方の自宅や施設に伺って施術を行う形で、介護分野との関わりが深い領域です。

この分野の特徴を、事業者側の説明から見てみます。

あん摩マッサージ指圧師として5年の実務経験を積むとケアマネジャー(介護支援専門員)の受験資格を取得することができますが、福祉の分野とより密接にかかわるのは訪問マッサージになるため資格取得後、ケアマネジャーになる場合にも有利です。 また、通院が困難であるALSや脳梗塞などの既往歴を持つ患者様の治療を行う事も多いため、治療家としての技術を磨く機会も多くあります。 訪問サービスであることから、移動をする事や、治療院の様に施術環境が整っていない状態で施術を行わなければいけないことはデメリットです。 出典: magonoteclub.co.jp

移動があること、施術環境が整っていないことがデメリットとして挙げられている点は、そのまま受け止めておいたほうがいいです。ベッドがない部屋で、布団の上で施術することもあります。冬の移動はこたえます。

一方で、院の中では出会えない状態の方に関わることになるので、技術の幅は広がります。ご家族とのやりとりが増える点も、院内の施術とは違うところです。

なお、訪問での施術に関わる制度は、医療保険や介護保険の取り扱いが絡むため、要件や手続きが細かく定められています。同意書の扱い、請求のしかた、対象となる方の条件は、事業所や所管の窓口に確認してください。制度は改正されることがあるので、古い情報のまま覚えないほうがいいです。おすすめの方法は、勤務先の管理者に「どの制度に基づいた施術なのか」を教わり、その根拠を自分でも確認しておくことです。

慣れるまでの順番。1年を4つの時期に分けて考える

やることが多すぎて何から手をつけるか分からない、という状態を避けるために、1年を4つの時期に分けて考えます。

最初の時期(おおよそ入職から3か月)は、環境に慣れることだけに集中します。院の流れ、予約の入り方、記録の書き方、道具の場所。技術の上達は一旦後回しで構いません。この時期に無理をして技術を詰め込もうとすると、体力が先に尽きます。

次の時期(3か月から6か月)は、時間内に施術を組み立てられるようになることが目標です。決まった枠の中で、話を聞いて、方針を決めて、施術して、次回の説明までを収める。ここができると、精神的にかなり楽になります。

3つ目の時期(6か月から9か月)は、継続して来てくださる方をつくる時期です。技術というより、説明と信頼の積み重ねです。前回の内容を覚えていて、変化を言葉にできると、それだけで関係が変わります。

最後の時期(9か月から1年)は、次の方向を考え始める時期です。今の院で技術を深めるのか、訪問に移るのか、医療機関で他職種と働くのか、いずれ独立を目指すのか。すぐに決める必要はありませんが、選択肢を知っておくと、日々の学び方が変わります。

この順番には理由があります。人は、環境に慣れていない状態では新しい技術を吸収できません。安心できる状態をつくるほうが先で、技術はそのあとに乗ってきます。

辞めたくなったときの判断と、手続きの話

1年目の途中で辞めたくなるのは、珍しいことではありません。ここで大事なのは、辞めるかどうかを決める前に、何が原因かを切り分けることです。

原因が技術や体力なら、時間で解決する可能性があります。原因が人間関係なら、部署や店舗の異動で変わることがあります。原因が労働条件(給与の未払い、長時間の無給研修、休憩が取れない)なら、これは環境そのものの問題なので、我慢しても改善しません。

ここは注意して読んでください。給与が支払われない、残業代が出ない、休憩がまったく取れないといった状況は、法律で守られているはずの部分に関わります。個別の事情によって判断が変わるので、まず労働基準監督署などの公的な窓口に相談してください。深刻なケースでは弁護士に相談することも検討してください。一人で結論を出さないことが大切です。

辞める場合の手続きも、押さえておきましょう。退職の申し出は、就業規則に定められた時期に従うのが基本です。多くの場合、1か月前までに申し出る形になっています。口頭だけでなく、退職届を書面で残しておくと、あとで争いになりません。

気をつけたいのが、退職を引き止められる場面です。人手が足りない院では、なかなか受け入れてもらえないことがあります。ただし、退職の意思表示そのものが認められないということは、通常はありません。話が進まないときは、書面で意思を伝えたうえで、公的な窓口に相談してください。

もうひとつ、競業避止の条項です。契約書に「退職後、一定期間は近隣で同種の仕事をしない」といった内容が入っていることがあります。この種の条項がどこまで有効かは、範囲や期間、代償措置の有無によって変わります。独立を考えている方は、契約書を確認しておいてください。判断が必要な場合は、専門家に相談するのが確実です。

法律は、あなたを縛るためのものではなく、あなたを守るためにあります。知っておくだけで、選べる手が増えます。

勤務先ごとの違いを、メリットとデメリットで並べてみる

1年目のうちに、勤務先ごとの特徴を把握しておくと、次の一手が考えやすくなります。フェアに並べます。

治療院や接骨院は、施術件数が多く、手技を反復して身につけられる環境です。院長との距離が近いので、教わりやすいという良さもあります。一方で、小規模なぶん労働条件が書面で整理されていないことがあり、休憩が取りにくい、シフトが固定されにくいといった話も出てきます。

整形外科などの医療機関は、医師や看護師、理学療法士と一緒に働くため、記録や報告の作法が身につきます。労務管理が整っている職場が多いのもメリットです。デメリットは、施術の裁量が小さくなりやすい点と、求人の数がそこまで多くない点です。

介護保険サービスの事業所は、高齢の方への対応が中心になります。生活の場に近い場所で関わるので、体の状態だけでなく暮らし全体を見る視点が育ちます。制度に関わる書類の作業が増える点は、人によって向き不向きが分かれます。

リラクゼーション系の店舗は、接客とスピードが求められる環境です。集客の仕組みを間近で見られるので、将来独立を考えている方には学びが多い場所です。ただし、国家資格を持つ施術者と、資格を必要としない施術者が同じ現場で働く形になることがあり、業務範囲の線引きを自分で理解しておく必要があります。ここはあいまいにしないでください。

訪問での施術は、移動の負担と施術環境の不便さがある一方で、通院できない方に関われる領域です。制度に関わる知識が身につくので、将来の選択肢は広がります。

企業内の施術室や、スポーツ関連の現場もあります。数は多くありませんが、働く人の体を継続して見る仕事や、競技者に関わる仕事に興味があるなら、探してみる価値はあります。

おすすめの考え方としては、1年目のうちに「自分がどの環境で消耗しにくいか」を見極めることです。人と話し続けるのが苦にならないなら店舗型、静かに集中したいなら訪問や医療機関、書類作業が苦にならないなら介護分野。技術の上達より先に、続けられる環境を見つけたほうが結果的に伸びます。

1年目の学び方と、資格の広げ方

技術をどう伸ばすかについても、順番があります。

まず、院内で学べるものを取り切ることです。先輩の施術を受ける、自分の施術を受けてもらう、症例の相談をする。この3つは費用がかからないうえに、効果が大きい方法です。1年目のうちは、外部の講習より院内の反復のほうが効率がいい場面が多くあります。

次に、外部の勉強会や研修です。手技系の研修は種類が多く、費用も幅があります。1年目で高額な講座に飛びつく必要はありません。基礎が固まる前に応用の技術を重ねても、身につかないからです。参加するなら、まずは無料または低額の勉強会から様子を見るのが現実的です。

資格の広げ方についても触れておきます。この職種は、実務経験を積むことで受験資格が得られる関連資格があります。介護分野に関わる資格や、機能訓練に関わる領域がその例です。ただし、受験資格の要件(必要な実務年数、対象となる業務の範囲)は制度によって定められていて、改正されることもあります。ここは伝聞で覚えず、必ず所管の窓口や公式の案内で確認してください。

はり師やきゅう師の免許を追加で取る方もいます。養成施設に通い直す必要があるため時間と費用はかかりますが、施術の幅は明確に広がります。逆に、免許を増やすより一つの分野を深めるほうが合っている方もいます。どちらが正解ということはありません。

1年目でよくある失敗は、あれもこれもと手を出して、どれも中途半端になることです。相談を受けていて感じるのは、伸びる人ほど「今年はこれをやる」と決めている、ということです。決めるためには、自分が今どの段階にいるかを知る必要があります。だから、先ほどの4つの時期の話が効いてきます。

1年目のうちに知っておきたい、記録と広告のルール

最後に、実務で見落とされやすい部分を挙げておきます。

ひとつは記録です。施術の内容を記録に残す習慣は、1年目のうちにつけておいてください。あとから「あのとき何をしたか」を説明できることが、自分を守ります。何かトラブルが起きたとき、記録がない状態は非常に不利です。

もうひとつは広告表現です。この職種には、施術所の広告について定められたルールがあります。効能をうたう表現には制限がありますし、資格の表示方法にも決まりがあります。個人でSNSを使って発信する場合も、内容によっては同じ問題が生じます。将来独立を考えている方は特に、早い段階で確認しておいてください。ルールの詳細と最新の運用は、所管の行政の窓口や勤務先の管理者に確認するのが確実です。

法務の相談を受けていて感じるのは、独立してから初めてルールの存在を知る方が多いということです。開業してから「その表現は使えません」と指摘されると、作り直しの手間もお金もかかります。勤務しているうちに知っておくほうが、圧倒的に安く済みます。

施術以外の選択肢も、視野に入れておく

在宅ワークやフリーランスの市場を長く運営してきた立場から見ていると、資格職の方が「資格の中だけ」で将来を考えて、選択肢を狭めてしまうことがよくあります。体を使う仕事である以上、体調や家庭の事情で働き方を変えざるを得ない時期は、多くの人に訪れます。そのときに施術以外の引き出しがあるかどうかで、選べる幅が変わります。

運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど、単発の作業を積み重ねるのではなく「この人に任せると楽だ」と思ってもらえる関係づくりに時間を使っています。これは施術でも、施術以外の仕事でも同じです。指名が増える人と、継続して仕事を頼まれる人は、やっていることの構造がよく似ています。

もうひとつ、直接取引の話をしておきます。仲介の手数料が乗らない取引では、同じ予算でも依頼する側はより多く頼めますし、受ける側の手取りは厚くなります。金額の大小ではなく、手取りが薄くならないという質の違いです。副業として在宅の仕事を組み合わせるとき、この差は思ったより効いてきます。

具体的にどんな仕事があるのかは、分野ごとの解説を読むのが早いです。生成AIの導入支援という新しい領域を扱ったAIコンサル・業務活用支援のお仕事、広告運用やセキュリティなど専門性の高い分野をまとめたAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発案件の受注の流れを解説したアプリケーション開発のお仕事があります。

報酬の水準を知りたいときは、職種別の統計を見るのが確実です。開発職の相場を扱ったソフトウェア作成者の年収・単価相場や、文章を書く仕事の水準をまとめた著述家,記者,編集者の年収・単価相場は、施術以外の分野の相場感をつかむのに役立ちます。

書類作成やITの基礎を身につけたい方には、資格という入口もあります。報告書や案内文の作り方を体系的に学べるビジネス文書検定、ネットワークの基礎を扱ったCCNA(シスコ技術者認定)は、独立後の事務作業にも効いてきます。

同じ医療系の資格職が、どう働き方を組み立てているかを知るのも参考になります。職場ごとの向き不向きを整理した看護師におすすめの職場・働き方・転職支援ツールを徹底解説、調剤以外の道を扱った企業薬剤師への転職ガイド|年収・働き方・中途採用の壁を突破する方法【2026年版】、独立して案件を取る形をまとめたインテリアコーディネーターのフリーランス独立ガイド|年収・案件獲得・働き方は、いずれも1年目の視野を広げてくれます。

1年目は、うまくいかないことのほうが多い時期です。それは能力の問題ではなく、順番の問題であることがほとんどです。条件を把握して、環境に慣れて、時間内に組み立てられるようになって、それから技術を深める。この順番で進めば、1年後の景色は変わっています。

よくある質問

Q. 入職時に契約書をもらっていないのですが、問題ありますか?

書面がないと、給与や研修の扱いで認識のずれが出たときに確認する手段が残りません。すでに働き始めていても、労働条件を書面でもらえるよう依頼して構いません。それ自体は失礼な要求ではありません。給与や残業代で納得できない点があれば、自己判断せず労働基準監督署などの公的な窓口に相談してください。

Q. 研修期間中は給与が低いと言われました。これは普通のことですか?

本採用より低く設定されること自体はあります。確認すべきなのは、期間の長さ、その間の金額、いつから本採用の金額になるか、本採用の判断基準の4点です。特に、参加が事実上強制されている研修が無給扱いになっている場合は問題になりやすい部分なので、公的な窓口に相談することをおすすめします。

Q. 1年目で訪問マッサージに移るのは早すぎますか?

早すぎるということはありませんが、訪問は一人で判断する場面が多く、施術環境も整っていないことがあります。院内で時間内に施術を組み立てられるようになってから移ると、負担が少なく済みます。制度に関わる要件や手続きは細かいので、事業所や所管の窓口で確認してください。

Q. 辞めたいときは、どのくらい前に言えばいいですか?

就業規則に定められた時期に従うのが基本で、1か月前までに申し出る形になっている職場が多く見られます。口頭だけでなく退職届を書面で残しておくと、あとで争いになりません。引き止められて話が進まないときは、書面で意思を伝えたうえで公的な窓口に相談してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月21日最終更新:2026年9月10日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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