LINEになりすまされたときの見分け方

丸山 桃子
丸山 桃子
LINEになりすまされたときの見分け方

この記事のポイント

  • LINE なりすましの見分け方を
  • 公式の案内にもとづいて整理しました
  • QRコードログインと認証番号の危険性

友だちの名前とアイコンでメッセージが届いたけれど、書き方がいつもと違う。自分の写真を使った別のアカウントがあると知らされた。LINEのなりすましは、この2つのどちらかで気づくことがほとんどです。この記事では、届いたメッセージが本物かどうかを判断する材料、なりすまされた側がすぐに取れる手当て、そして先に済ませておくと被害が止まる設定を、運営元と公的機関が公開している情報だけを使って順番に整理します。慌てて認証番号を送ってしまう前に、ここだけは押さえておきたい、という内容に絞っています。

なりすましは「今も増えている手口」だという前提を持つ

まず、この手のトラブルが珍しい事故ではないことを数字で押さえておきます。フィッシング対策協議会がまとめている月次の報告では、2026年8月に寄せられたフィッシングの報告件数は82,338件でした。前月より16,219件増えています。同じ月に報告されたフィッシングサイトのURLは39,800件、実在する会社やサービスの名前を使われたブランドの数は96件です。

フィッシングというのは、実在する会社やサービスになりすまして、ログイン用のメールアドレスやパスワード、暗証番号などを本人に入力させて盗む行為のことです。なりすましのLINEアカウントは、この入口として使われることが多くなっています。偽のメッセージを送る側からすると、見ず知らずの差出人より、相手が知っている名前を使ったほうが開いてもらえるからです。

注目したいのは、メールの差出人そのものを偽装する割合です。同じ月次報告では、調査用のアドレスに届いたフィッシングメールのうち、実在するサービスのドメイン名を差出人に使った「なりすまし」のメールが32.3%だったと公表されています。つまり3通に1通は、差出人の表示だけを見ても本物と区別がつかない状態で届いています。

2026 年 8 月にフィッシング対策協議会に寄せられたフィッシング報告件数は、前月より 16,219 件増加し、82,338 件となりました。 出典: antiphishing.jp

ここから導ける行動の指針は一つです。見た目や差出人の名前で本物かどうかを判断するのをやめる、ということ。名前もアイコンも文面も、いくらでも真似できます。判断の基準を「誰から来たか」ではなく「何をさせようとしているか」に移すと、なりすましはかなりの確率で見抜けます。何をさせようとしているかについては、この後の節で具体的に挙げていきます。

なりすましには4つの型がある

LINEのなりすましと呼ばれているものは、中身が4種類に分かれます。どれに当たるかで、やるべきことが変わります。

1つ目は、運営元をかたる型です。LINEからの連絡を装ったメールやショートメッセージが届き、本物そっくりのログイン画面に誘導されます。運営元のガイドは、この点をはっきり否定しています。

LINEからログインを促すメールを送ることはありません。 出典: guide.line.me

2つ目は、友だちをかたる型です。実際にやり取りのあるアカウントからメッセージが届くので、警戒が働きません。乗っ取られたアカウントから送られている場合も、名前とアイコンだけを真似た別アカウントから送られている場合もあります。

3つ目は、有名人や企業の名前を使った別アカウントです。投資や副業の勧誘、プレゼント企画を装った誘導が典型で、個人情報を聞き出したり、別のサービスへ登録させたりする目的で作られています。

4つ目は、本人のアカウントそのものを奪う乗っ取りです。ログイン情報を入力させられたか、QRコードログインの認証番号を教えてしまったかのどちらかで起こります。この型は、友だち全員に被害が波及するという点で影響がいちばん大きくなります。

自分が今どれに当たるのかは、次の問いで切り分けられます。自分のアカウントは今も自分の端末で使えているか。使えているなら、乗っ取りではなく、別アカウントによるなりすましです。使えていない、勝手にログアウトさせられたという状態なら乗っ取りを疑います。友だちから「変なメッセージが届いた」と言われた場合は、自分のトーク履歴にその送信記録が残っているかどうかを見ます。記録が無ければ、自分のアカウントは無事で、名前を真似た別アカウントが動いていることになります。

本物かどうかを判断する材料は4つある

届いたメッセージが本物かどうかは、次の4点で確かめます。時間にして数分で終わります。

第一に、公式バッジの有無です。運営元のガイドによると、アカウント名の左に緑色の公式バッジが付いているものが公式アカウントからのメッセージです。このバッジはスマートフォン版のアプリでのみ表示されます。パソコン版の画面だけで判断しようとすると、この材料が使えません。

第二に、何をさせようとしているかです。ログイン情報とは、メールアドレス、パスワード、電話番号、認証番号の4つを指します。このうちのどれかを入力させよう、送らせようとしている時点で、相手が誰を名乗っていても一度手を止めます。正規のやり取りで認証番号を第三者に伝える場面はありません。

第三に、URLの文字列です。本物とよく似たドメイン名が使われます。2026年8月の報告では、フィッシングサイトのURLのうち79.3%が「.com」で終わるドメインでした。見慣れた文字で終わっているから安全、という判断は成り立ちません。リンクを踏まず、普段使っているアプリかブックマークから開き直して、同じお知らせが出ているかを確かめるほうが確実です。

第四に、別の連絡手段での確認です。友だちを名乗るメッセージなら、電話でも、別のメッセージアプリでも構わないので、LINE以外の経路で本人に聞きます。これが最も確実で、しかも無料でできる確認方法です。相手が急かしてくる場合ほど効果があります。急かす文面は、確認の時間を取らせないために作られています。

なりすましのアカウントには、見た目でわかる特徴も出ます。友だち追加した覚えがないのにトークが来る、プロフィールの写真が1枚だけで背景画像が初期設定のまま、日本語の言い回しが不自然、実際の関係性に対して距離感がおかしい、といった点です。ただし、これらはあくまで補助です。作り込まれた偽アカウントはこの特徴を消してきますから、最終的な判断は「何をさせようとしているか」で行います。

QRコードログインと認証番号が乗っ取りの入口になる

乗っ取りの手口で、いちばん誤解されやすいのがQRコードログインです。運営元のガイドは、この画面自体は偽物ではないと説明しています。QRコードログインの画面は本物で、別の端末にログインするための正規の操作です。そこが厄介な点です。

流れはこうなります。なりすましのアカウントから「アンケートに答えて」「この投票に協力して」といった誘いが届き、QRコードを読み取るよう促されます。読み取ると、自分の端末に本物のログイン画面が出ます。ここでログインを押すと、相手から認証番号が送られてきて、その番号を入力するよう言われます。入力した瞬間に、相手の端末で自分のLINEが使えるようになります。

つまり、偽サイトにパスワードを打ち込んでいないのに乗っ取られます。「偽のログイン画面に気をつけましょう」という対策だけでは防げない理由がここにあります。覚えておく行動は一つで十分です。自分が別の端末にログインしようとしている場面以外で、QRコードを読み取る理由はありません。意図しないQRコードログインの画面が出たら、その場でキャンセルします。

認証番号についても同じです。認証番号は本人確認のための一度きりの数字で、誰かに伝えるためのものではありません。運営元からもこの番号は聞かれません。「番号を教えて」と言ってきた相手は、名前が誰であっても、その時点でなりすましだと判断して構いません。

投票や応援の依頼という形で来ることが多いのは、断りにくい文面だからです。頼まれたのが親しい友だちの名前だと、無視するのが気まずく感じます。ただ、本物の友だちなら、確認の電話に応じてくれます。気まずさを感じるくらいなら、確認したほうが結果的にお互いのためになります。

自分がなりすまされていると気づいたときの順番

友だちから連絡が来て、自分の名前で偽アカウントが動いていると分かったときの手順です。上から順に進めます。

最初に、自分のアカウントが無事かを確かめます。アプリが普通に開けて、トーク履歴があり、勝手にログアウトさせられていないなら、乗っ取りではありません。この場合、自分のパスワードは盗まれていないので、慌てて全部を変える必要はありません。

次に、ログイン中の端末を確認します。設定画面から、自分のアカウントにログインしている端末の一覧を見ることができます。ここに見覚えのない端末があれば、その場でログアウトさせます。QRコードログインをしてしまった心当たりがある人は、この確認を最優先で行ってください。

三番目に、通報します。LINEには通報機能があり、自分や友だちのアカウントの乗っ取り、なりすましを見つけたときに使えます。通報は運営元が対抗措置を取るための材料になるので、面倒でも出しておく価値があります。

四番目に、友だちへ知らせます。一斉送信でなくても構いません。よく連絡を取る相手に「自分の名前で別のアカウントが動いている。お金や認証番号の話が来たら無視してほしい」と伝えておくだけで、二次被害がかなり減ります。

五番目に、金銭の被害やその手前まで進んでしまった場合の相談先です。金銭をだまし取られた、送金してしまったという段階に入ったら、警察と消費生活センターが窓口になります。消費者庁が案内している消費者ホットラインは「188」の3桁で、最寄りの消費生活センターにつながります。被害届を出すかどうかを含めて、どう動くかは個別の事情で変わるので、自己判断で決めず、窓口で状況を話したうえで決めるのが無難です。

乗っ取られてしまった場合の復旧

自分のアカウントが乗っ取られた場合は、まだアプリが使えるかどうかで分かれます。

まだ使える状態なら、すぐにパスワードを変更します。変更した時点で、相手の端末からのアクセスは切れます。あわせてログイン中の端末を確認し、知らない端末を全部ログアウトさせます。

もうログインできない状態なら、自力での復旧はできません。運営元のカスタマーサポートへ連絡することになります。ガイドにも、ログインできなくなった場合はカスタマーサポートへ連絡する、と案内があります。このとき、こちらから用意できる情報が多いほど話が早く進みます。登録していた電話番号、メールアドレス、最後に使えていた日時、使っていた端末の機種あたりをメモにまとめてから連絡するとよいです。

復旧にどれくらいかかるかは状況によって変わるため、断定できません。ただ、その間もなりすましのメッセージは友だちへ送られ続けます。ですから、復旧の手続きと並行して、別の連絡手段で周囲に知らせる作業を先に進めておくほうが被害は小さく済みます。

復旧を待つあいだにやっておくと役立つのが、連絡先の棚卸しです。LINEでしかつながっていない相手を書き出し、電話番号やメールアドレスを知っている相手と分けます。前者が多いほど、アカウントが止まったときの影響が大きくなります。書き出してみると、思っていたより多いはずです。連絡が取れるうちに、仕事の関係先だけでも別の経路を確保しておくと、次に何かあったときの立ち直りが早くなります。

大事な確認をもう一つ。乗っ取られたアカウントで、決済サービスや有料のサービスと連携していなかったかを洗い出します。LINEのアカウントは、他のサービスのログインにも使われていることがあります。連携先のサービス側でもパスワードを変え、身に覚えのない取引が無いかを見てください。片方だけ直しても、連携先から入り直されると意味がありません。

事前に済ませておく4つの設定

起きてから動くより、先に設定しておくほうが手間が少なくて済みます。運営元が用意している機能のうち、効果が大きいのは次の4つです。

1つ目は、パスワードの単純化と使い回しをやめることです。他のサービスで漏れたパスワードをそのまま使っていると、そこから入られます。運営元のガイドも、単純な文字列を使わないこと、使い回さないことを最初の対策として挙げています。

2つ目は、ログイン通知です。別の端末でログインが検出されると、手元のスマートフォンに通知が届きます。自分が操作していないタイミングで通知が来たら、そこが警戒のきっかけになります。

3つ目は、ログイン許可の設定です。これはパソコンやタブレットなど、スマートフォン以外の端末からログインできるようにする機能で、初期設定ではオンになっています。複数の端末で使う予定がないなら、オフにしておくと乗っ取りの経路が一つ減ります。仕事でパソコン版を使っている人は、オフにできないので、代わりにログイン通知とログイン中の端末の確認を習慣にします。

4つ目は、ログイン中の端末の定期確認です。設定画面から、今ログインしている端末をスマートフォンで確認できます。月に一度眺めるだけで、見覚えのない端末に気づけます。

ここまでを済ませるのに10分もかかりません。特に3つ目は、複数端末を使わない人にとっては副作用がほとんどない設定なので、優先度が高い項目です。

仕事でLINEを使っている人が追加でやること

在宅で働いている人や、個人で仕事を受けている人にとって、LINEのアカウントは連絡先であると同時に取引の窓口でもあります。乗っ取られたときの損害は、個人的なやり取りが漏れることだけにとどまりません。

まず、仕事の連絡と私用を同じアカウントで混ぜている場合、取引先とのやり取りの履歴がそのまま相手の手に渡ります。見積もりの金額、納品物、請求先の情報まで含まれていることがあります。仕事のやり取りは、後から検索できる記録が残る手段に寄せておくほうが、事故が起きたときの被害範囲が狭くなります。

次に、なりすましのアカウントが取引先に接触する可能性です。名前とアイコンを真似たアカウントが「振込先が変わりました」と連絡する手口は、メールの世界では以前から起きています。取引先とのあいだで、振込先の変更は必ず電話でも確認する、という取り決めをしておくと、この経路は塞げます。

こうしたセキュリティの知識は、仕事として求められる場面も増えています。セキュリティ関連の支援は在宅でも成り立つ仕事の一つで、どんな依頼があるのかはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に、業務の種類ごとに整理されています。ネットワークの基礎から体系立てて学びたい場合は、ネットワーク機器の設定と運用を扱うCCNA(シスコ技術者認定)が入口になります。認証やアクセス制御の考え方は、この範囲に含まれています。

相手に状況を伝える文書の書き方も、地味ですが効きます。取引先へ「なりすましが発生しているので注意してほしい」と連絡するとき、事実と依頼事項を短く分けて書けるかどうかで、相手の動きが変わります。この型はビジネス文書検定が扱う範囲で、資格を取るかどうかは別として、文書の組み立て方を一度学んでおくと、トラブル時の連絡が速くなります。

「公式っぽい」を見分けるときによくある誤解

公式アカウントかどうかの判断では、思い込みで間違えやすい点がいくつかあります。実際に相談として持ち込まれることが多いものを挙げておきます。

一つ目は、友だち追加した覚えがあるから本物だろう、という判断です。キャンペーンの応募やクーポンの取得で追加したアカウントは数が多く、あとから見ると何を追加したか覚えていないものです。追加した記憶があること自体は、本物である証拠になりません。確かめるのはバッジと、そのアカウントが何をさせようとしているかです。

二つ目は、認証済みのバッジが付いているから安心、という判断です。バッジが示しているのは、そのアカウントの運営者が確認されているということだけで、そのアカウントから送られてくるリンクの中身まで保証するものではありません。バッジ付きのアカウントを装った偽アカウントが並んで表示されることもあるので、名前が完全に一致しているかを見てください。よく使われるのは、全角と半角を入れ替える、似た形の文字に置き換える、末尾に記号を足す、といった細工です。

三つ目は、日本語がきれいだから本物だろう、という判断です。以前は不自然な言い回しが見分ける材料になりましたが、文章を自動で整える道具が普及した今、この材料は弱くなりました。文面の自然さは、判断の根拠から外してください。

四つ目は、電話番号が表示されているから本物だろう、という判断です。表示されている番号は、相手が自由に書けます。番号の存在は確認の材料になりません。確認するなら、その会社の公式サイトを検索して開き、そこに載っている番号へかけ直します。

五つ目は、自分は詳しいから引っかからない、という前提です。2026年8月のフィッシングの報告で悪用されたブランドは96件にのぼり、その中には官公庁の名前も含まれています。相手は毎月手口を変えています。詳しいかどうかではなく、確認の手順を持っているかどうかで結果が分かれます。

家族や年配の人が狙われたときに伝えること

自分の対策が終わったら、次に問題になるのは家族です。特に、機種変更や設定の相談を受けている立場の人は、先に共有しておくと後が楽になります。

伝える内容は3つに絞ると届きます。1つ目、番号を聞かれたら全部断る。認証番号、暗証番号、パスワード、どれも人に教えるものではないと、種類を分けずに一括で伝えます。細かく分類すると覚えられません。2つ目、急かされたら必ず誰かに相談する。相手が急かしてくるのは、確認させないためだと説明しておきます。3つ目、困ったら自分に電話する。判断を任せるのではなく、判断の前に一本かけてもらう形にします。

やってはいけないのは、専門的な用語で説明することです。フィッシング、ワンタイムパスワード、二要素認証といった言葉を並べると、話の内容ではなく「難しくてわからない」という印象だけが残ります。そうなると、次に何か起きたときに相談してもらえません。

端末側でできる手当てもあります。ログイン通知をオンにしておくこと、スマートフォン以外の端末からのログインを許可する設定をオフにしておくこと、この2つは本人が操作を覚える必要がないので、設定を手伝う立場の人がやっておくとよいです。パソコンで使う予定がないなら、後者の副作用はありません。

それから、被害に遭ったときに責めないと先に伝えておくことも効きます。だまされたことを言い出しにくくて相談が遅れ、被害が広がるという流れは、相談窓口の現場でもよく指摘されています。金銭の被害が出た場合の窓口は、警察と消費生活センターです。消費者庁が案内している3桁の番号で最寄りの窓口につながるので、電話帳に登録しておくところまで済ませておくと確実です。

判断に迷ったまま時間だけが過ぎるときの決め方

ここまでの材料を並べても、実際の場面では迷います。相手が親しい人の名前だったり、内容が本当にありそうな話だったりするからです。迷ったときの決め方を、あらかじめ一つだけ決めておくと手が動きます。

基準はこうです。断って困るのは誰か、を考えます。本物の相手なら、確認のために待たされても困りません。あとで「疑ってごめん」と言えば済む話です。なりすましの相手だけが、確認されると困ります。つまり、確認を嫌がる反応が返ってきた時点で答えが出ます。

返事の仕方も決めておくと楽です。「今は判断できないので、あとで電話します」。これ一文で足ります。理由を説明する必要はありませんし、相手の話に反論する必要もありません。会話を続けると、相手は説得の材料を足してきます。判断を保留して、別の経路に移すのが最短です。

時間の区切りも決めておきます。確認が取れるまでは、リンクを開かない、番号を送らない、振り込まない。この3つをまとめて止めておけば、その間に被害は進みません。逆に言えば、この3つのどれかを済ませてしまうと、あとから取り消すのが一気に難しくなります。順番として、止めるのが先で、調べるのは後です。

家族や同僚と取り決めておく手もあります。お金や番号の話が出たときは、お互いに必ず電話で確認する、という一文の約束です。取り決めがあると、確認することが失礼にならないので、迷いが消えます。組織で使っている場合は、このやり方を文章にして共有しておくと、担当者が変わっても残ります。

記録として残しておくもの

なりすましの被害に遭ったとき、後の手続きで必要になるのは記録です。何を残すかを先に決めておくと、慌てているときでも手が動きます。

残すのは4種類です。1つ目、届いたメッセージの画面。文面だけでなく、相手のアカウント名とアイコンが一緒に写るように撮ります。2つ目、相手のプロフィール画面。アカウントを特定するための情報が入ります。3つ目、リンク先のURL。踏まずに、長押しでコピーして貼り付けておきます。開いて確認する必要はありません。4つ目、日時です。画面に時刻が写っていれば足ります。

撮った画面は、LINEの中ではなく端末のアルバムか、クラウド上の別の場所へ保存します。アカウントが使えなくなったときに、LINEの中に置いた記録は取り出せなくなるためです。仕事で使っている人は、案件のフォルダと同じ場所に入れておくと、取引先へ説明するときにすぐ出せます。

金銭のやり取りが発生していた場合は、振込の記録も同じ場所に集めます。振込先の口座、金額、振込の日時。この3つが揃っていると、窓口での相談が具体的に進みます。

一方で、やらないほうがよいこともあります。相手を挑発する返信を送る、相手の情報を自分で調べて公開する、といった行動です。相手に警戒されて証拠が消えるうえ、こちらの立場が悪くなることもあります。調べる作業と公開する判断は、窓口に任せるのが安全です。

仕事のやり取りをLINEで受けている場合、契約や条件の変更が口頭とメッセージだけで進んでしまいがちです。なりすましが入り込む余地は、ここにも生まれます。金額や納期を変えるときは、変更後の条件を自分の言葉で書き直して相手に送り、返事をもらう。この一往復を挟むだけで、後から「言った、言わない」にならず、なりすましによる横入りも見つけやすくなります。手間は1分ほどです。

市場を長く見てきた立場からの観察

フリーランスと在宅ワークの市場を20年ほど運営してきた立場から言えば、アカウントの乗っ取りで本当に痛いのは、金銭そのものよりも取引の中断です。連絡手段が一つ止まると、進行中の案件が全部止まります。納品の期日が動き、相手の信用が削れ、次の依頼が来なくなる。この連鎖のほうが、金額に直すと大きくなることが多いのです。

運営者として見てきた限りでは、長く続いている人ほど、連絡手段を分散させています。仕事の窓口はメールか専用のメッセージ機能、雑談と細かい調整はメッセージアプリ、という具合に用途で分けている。片方が止まっても、もう片方で「今こういう状況です」と伝えられるからです。特別な技術ではなく、置き方の問題です。

もう一つ、現場で感じるのは、仲介が薄い取引ほど連絡の記録が重要になるという点です。間に人が入らず直接やり取りする形は、同じ予算でも依頼する側はより多く頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%の仕組みが効いてくるのはこの部分です。ただしその分、条件の確認も支払いの確認も当事者同士で完結するので、やり取りの記録が唯一の証拠になります。連絡手段を守ることが、そのまま取引を守ることになるわけです。

単価の相場を知っておくことも、防御になります。なりすましの勧誘は、相場からかけ離れた条件で誘ってきます。開発系の仕事ならソフトウェア作成者の年収・単価相場、書く仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、実際の水準が職種ごとに整理されています。相場を知っている人は、うますぎる話を見た瞬間に立ち止まれます。知らない人は、その話が異常かどうかを判断できません。

なりすましの対策というと、設定と見分け方の話になりがちです。ただ、実際に被害を止めているのは、確認の習慣と、止まったときの代わりの経路です。設定は一度で終わりますが、この2つは日々の運用でしか作れません。今日できることから一つずつ積んでいけば、次に同じメッセージが届いたとき、手が止まるようになります。

よくある質問

Q. 友だちの名前でお金を求めるメッセージが届いたらどうすればいいですか?

その場で返信せず、LINE以外の方法で本人に確認してください。電話でも別のメッセージアプリでも構いません。急かされても、確認の時間を取るのが最優先です。認証番号やログイン情報を求められている場合は、相手が誰を名乗っていてもなりすましだと判断して、やり取りを終えて通報してください。

Q. QRコードを読み取っただけで乗っ取られますか?

読み取っただけでは乗っ取られません。危険なのは、その後に表示されるログイン画面でログインを押し、届いた認証番号を相手に伝えたり入力したりする操作です。運営元のガイドでも、QRコードログインの画面自体は本物で、別の端末にログインするための操作だと説明されています。意図しない画面が出たらキャンセルしてください。

Q. なりすましアカウントを通報すると相手に伝わりますか?

LINEの通報機能は、運営元が対抗措置を取るための情報として使われます。通報したこと自体が相手に知らされる仕組みではありません。自分や友だちのアカウントの乗っ取り、なりすましを見つけたときは、運営元も通報機能の利用を案内しています。面倒でも出しておくと、同じ手口の被害が広がりにくくなります。

Q. 乗っ取られないために最初にやるべき設定はどれですか?

パスワードの使い回しをやめることと、スマートフォン以外の端末からのログインを許可する設定をオフにすることの2つです。複数の端末で使う予定がなければ、後者は副作用がほとんどありません。あわせてログイン通知をオンにしておくと、身に覚えのないログインが起きたときに手元の端末へ通知が届きます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月5日最終更新:2026年9月23日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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