個人クリニックで任される仕事|ここでしか経験できないことは何か

中西 直美
中西 直美
個人クリニックで任される仕事|ここでしか経験できないことは何か

この記事のポイント

  • 個人クリニックの仕事内容を
  • 看護師と医療事務の担当業務
  • 1人が何役も持つ兼務の実際

「病棟から個人クリニックに移ったら、思っていた仕事と全然違った」。

このご相談、本当に多いんです。

クリニックは夜勤がなくて、残業も少なくて、仕事は採血と注射くらい。そう思って移ってみたら、受付に立ち、電話を取り、物品の発注をして、閉院後には床の掃除までしていた。そんな話を何度も聞いてきました。

大丈夫ですよ。これは、あなたの見込みが甘かったのではありません。個人クリニックという職場の仕組みが、外からは見えにくいだけです。

この記事では、個人クリニックで実際に任される仕事を、職種ごとに書いていきます。そのうえで、個人クリニックでしか経験できないこと、反対に経験しにくいこと、求人票のどこを見れば中身が分かるのかをお話しします。

個人クリニックは「院長の診療所」という職場

まず、個人クリニックがどんな職場なのかを整理しておきます。

医療法では、病床が20床以上の施設を病院、それより少ない施設を診療所と呼びます。個人クリニックの多くは入院のベッドを持たない無床の診療所で、院長である医師が1人、そこに看護師と医療事務を合わせて数人から十数人の職員がいる規模です。

開設の形は、医師個人が開いているものと、医療法人として運営しているものがあります。どちらでも、日々の診療と職場の方針を決めているのは院長です。

ここが、病院との一番大きな違いです。

病院では、看護部という組織があり、就業規則や教育の仕組みがあり、困ったときに相談できる上司が何人もいます。個人クリニックでは、院長の考え方がそのまま職場のルールになります。院長が「患者さんを待たせない」を大事にしていれば、受付から会計までの速さが最優先になる。「丁寧な説明」を大事にしていれば、1人の患者にかける時間が長くなる。

クリニックへの転職を考える看護師が増えている背景について、医療職の求人を扱う情報サイトは次のように書いています。

夜勤や慢性的な残業を負担に感じ病棟からクリニックへの転職を考える看護師は少なくありません。クリニックは楽というイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。 ここでは病棟勤務と比較したときのメリット・デメリットを紹介していきます。 出典: co-medical.com

「クリニックは楽」というイメージは、半分当たっていて、半分外れています。夜勤がないのは本当です。けれど、職員が少ないぶん、1人が受け持つ仕事の種類は病棟より多くなります。

看護師が任される仕事

個人クリニックの看護師の仕事は、大きく分けて4つあります。

診察の介助と医療行為

中心になるのは、院長の診察を支える仕事です。

・患者の呼び込みと、診察前の問診や血圧、体温の測定 ・診察の介助(体位を整える、器具を渡す、処置の準備をする) ・採血、注射、点滴、予防接種 ・創傷の処置、抜糸、ガーゼ交換 ・心電図や尿検査、迅速検査(インフルエンザや新型コロナウイルスなど)の実施

病棟と違って、1人の患者に関わる時間は短く、数十人の患者を次々に回していきます。午前だけで50人を超える患者が来る内科や小児科もあります。

患者への説明と指導

診察のあとに、薬の飲み方や生活上の注意、次回の検査の準備について説明するのも看護師の仕事です。生活習慣病の患者が多いクリニックでは、食事や運動の指導を看護師が担当することもあります。

院長が診察で話したことを、患者が理解できているかを確かめる。ここは、病棟よりも看護師の判断が求められる場面かもしれません。

電話の対応

「熱が出たけど今日行ったほうがいいですか」「昨日もらった薬を飲んだら発疹が出ました」。こうした電話に、まず答えるのは看護師です。院長に確認するべきか、受診をすすめるか、救急を案内するか。電話口での判断は、個人クリニックの看護師に特有の仕事です。

物品と院内の管理

・医薬品や注射器、ガーゼなどの在庫の確認と発注 ・器具の洗浄と滅菌 ・ワクチンの温度管理 ・感染対策の備品の補充

病院なら物品管理の部署や薬剤部が担う仕事を、個人クリニックでは看護師が引き受けていることが多いです。

こういう相談がよくあります。「発注を任されたけれど、在庫が切れて院長に叱られた。病棟ではやったことがないのに」。これは、あなたの能力の問題ではありません。発注の仕組みが整っていない職場で、引き継ぎがないまま任されたことが原因です。入職したら、発注のタイミングと数量の決め方を、最初に誰かに聞いておくと安心です。

医療事務・受付が任される仕事

個人クリニックの医療事務は、受付と会計と請求業務を、少人数ですべて担います。

受付

・来院した患者の受付と、保険証やマイナ保険証による資格の確認 ・初診の患者への問診票の案内 ・予約の管理と、待ち時間の案内 ・電話の対応(予約の変更、診療時間の問い合わせ)

受付は、クリニックの印象を決める場所です。待合室の様子を見ながら、具合の悪そうな患者に気づいて看護師に伝えるのも、受付の大事な役割です。

会計

診察が終わった患者のカルテの内容から診療費を計算し、会計をして、処方箋や次回の予約票を渡します。電子カルテとレセプトコンピュータが連動しているクリニックでは入力の手間は減りますが、算定の漏れがないかを確認するのは人の目です。

診療報酬の請求(レセプト)

1か月分の診療内容をまとめて、審査支払機関に請求する業務です。請求の締め切りは翌月の10日なので、月初めは医療事務がいちばん忙しい時期になります。病院なら請求係が専任で担当しますが、個人クリニックでは受付の職員が日中の業務の合間に進めます。

医療事務の仕事を未経験から始める場合、基礎知識を持っているかどうかで最初の数か月の苦労が大きく変わります。医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)では、受付から請求までの知識を問う試験の内容と学び方をまとめているので、どこから勉強すればよいかの目安になります。

1人が何役も持つ、兼務の実際

個人クリニックの仕事を語るうえで欠かせないのが、兼務です。求人票には書かれていないことも多いので、ここで具体的に書いておきます。

看護師が受付や会計に入る

受付の職員が休んだ日や、患者が集中する時間帯には、看護師が受付に立つことがあります。インフルエンザの予防接種の時期は、看護師が予約の電話を受けることもあります。

医療事務が診察室の準備を手伝う

医療事務の職員が、診察室のシーツ交換や器具の片付け、検査の案内を手伝うこともあります。ただし、採血や注射などの医療行為は、資格がなければできません。「手伝ってほしい」と言われても、医療行為にあたることは断ってかまいません。これは法律で決まっていることです。

職種を問わず、全員でやる仕事

・開院前と閉院後の掃除 ・ゴミの分別と、医療廃棄物の管理 ・郵便物や宅配便の受け取り ・出入りの業者の対応 ・待合室の掲示物の貼り替え ・ホームページのお知らせの更新

病院には清掃や施設管理の部署がありますが、個人クリニックにはありません。これを「雑用を押し付けられた」と感じるか、「職場を自分たちでつくっている」と感じるかで、働く気持ちはずいぶん変わります。

私自身、昔、少人数の職場で働いていたとき、専門の仕事以外のことを任されるたびに、自分が軽く扱われているように感じていました。けれど、後になって振り返ると、職場全体の流れを知っていたことが、どんな仕事にも役立ちました。無理に前向きに考える必要はありません。ただ、兼務の多さを事前に知っておくだけで、入職後の「こんなはずじゃなかった」はかなり減ります。

ここでしか経験できないこと

では、個人クリニックで働くことで得られるものは何でしょう。病院では得にくい経験を挙げてみます。

院長のすぐ隣で、診療の考え方を学べる

病院では、看護師が医師と話す時間は限られています。個人クリニックでは、毎日同じ院長の隣で診察に立ちます。院長がどの症状で何を疑い、どう説明し、どこで専門の病院に紹介するのか。その判断の流れを、毎日間近で見ることになります。

同じ患者を、何年も見続けられる

かかりつけの患者は、何年も同じクリニックに通います。子どもの予防接種から始まって、その子が小学生になり、中学生になる。高血圧で通っていた人の、ご家族まで知るようになる。

病棟では、患者は退院していきます。個人クリニックでは、患者の生活の変化を長い時間の中で見守ることができます。「最近、顔色がいいですね」と声をかけられる関係は、ここならではのものです。

自分の提案が、すぐ職場に反映される

「待合室の掲示を分かりやすくしたい」「予約の取り方を変えたら待ち時間が減るのでは」。病院なら委員会を通して何か月もかかる改善が、個人クリニックでは院長に話せば翌週から変わることがあります。

クリニックの経営が見える

患者が何人来たか、どの季節に忙しくなるか、請求が戻ってきたらどうなるか。小さな職場なので、経営の動きが肌で分かります。これは、将来ほかの職場に移ったときにも、組織の見方として役立ちます。

反対に、経験しにくいこと

良いことばかりではありません。個人クリニックに移る前に知っておいてほしいことも書いておきます。

急変の対応や、重症の患者のケア

入院のない個人クリニックでは、重症の患者を継続して看ることはほとんどありません。急変があれば救急車を呼び、病院に送ります。人工呼吸器や術後の管理など、病棟で身につけた技術を使う機会は減ります。

「数年クリニックにいたら、病棟に戻れなくなるのでは」という不安をよく聞きます。実際に、戻るときに学び直しが必要になることはあります。ただ、採血や注射の手技、患者への説明の力は、クリニックでむしろ磨かれます。何を失い、何を得るのかを分けて考えると、不安は少し整理できますよ。

体系的な教育

病院のような新人研修やプリセプター制度は、個人クリニックにはないことが多いです。先輩が1人いれば、その人に教わる。いなければ、院長に聞くしかない。前任者が辞めたあとの補充だと、引き継ぎがほとんどないこともあります。

人間関係の逃げ場

職員が数人の職場では、合わない人がいても、部署を変えることはできません。院長との相性も、そのまま働きやすさに直結します。

休みの取りやすさ

看護師が2人しかいないクリニックで1人が休めば、残る1人ですべてを回すことになります。有給休暇は法律で認められた権利ですが、実際には「代わりがいないから言い出しにくい」と感じる人が多いです。

給与の水準

年収の面では、病院よりクリニックのほうがやや低い傾向があります。先ほどと同じ情報サイトは、令和7年の賃金構造基本統計調査をもとに、クリニックの看護師の平均年収を約471万円、病院や介護施設を約524万円と紹介しています。夜勤手当がないことが、差の大きな理由の1つです。

看護師の年収が年代や地域でどう違うのかは、看護師の年収・単価相場で統計をもとに整理しているので、提示された給与が相場のどのあたりなのかを確かめるときに役立ちます。

仕事が広すぎる職場を見分けるサイン

兼務があること自体は、個人クリニックでは普通です。けれど、中には1人が抱える仕事が明らかに多すぎて、心も体もすり減ってしまう職場もあります。入職の前後で気づけるサインを挙げておきます。

求人がいつも出ている

同じクリニックの求人が、何か月も続けて出ている。あるいは、1年のうちに何度も出ている。職員が少ない職場で人の入れ替わりが多いのは、仕事の量や人間関係に理由があることが少なくありません。

職員の人数に対して、患者の数が多い

見学のときに、待合室がいっぱいなのに看護師が1人で走り回っている。受付に長い列ができている。こうした様子が日常なら、1人あたりの負担は大きいと考えてよいでしょう。

休憩が取れていない

診療時間の表では昼休みが長くても、実際には昼の時間に電話対応や片付け、午後の準備をしていて、休憩らしい休憩が取れていない職場があります。職員に「お昼はゆっくり食べられますか」と聞けると、実態が見えます。

役割の分担が決まっていない

「手が空いている人がやる」という職場は、一見柔軟に見えます。けれど、実際には気がつく人、断れない人に仕事が集まりやすくなります。発注や掃除の担当が決まっているかどうかは、働きやすさを大きく左右します。

あなたが疲れていると感じたら

入職してから「仕事が多すぎる」と感じたら、まず、自分が抱えている仕事を紙に書き出してみてください。書き出すだけで、頭の中の重さが少し軽くなります。そのうえで、院長に「この仕事の担当を決めたい」と、具体的に相談してみる。一人で抱え込まないことが、何より大切です。

診療科によって、仕事の中身はこれだけ変わる

同じ個人クリニックでも、診療科によって任される仕事はかなり違います。代表的な科を比べてみます。

内科

生活習慣病の定期受診が多く、採血、心電図、健康診断、予防接種が中心です。秋から冬はインフルエンザの予防接種と発熱の患者で、1年でいちばん忙しくなります。

小児科

予防接種と乳幼児健診が大きな柱です。子どもの採血や点滴は技術が必要で、保護者への説明や電話の相談も多くなります。感染症が流行する季節は、待合室の分け方や動線の管理も看護師の仕事になります。

整形外科

リハビリテーションの部門を持つクリニックが多く、理学療法士や柔道整復師と一緒に働きます。看護師は、関節への注射の介助、ギプスや包帯の処置、レントゲン撮影の案内などを担います。高齢の患者が多く、午前中に来院が集中する傾向があります。

皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科

処置や検査の準備が中心です。眼科では視能訓練士が検査を担当し、看護師は手術の介助や点眼の指導を行います。耳鼻咽喉科は、花粉症の時期に患者が大きく増えます。

在宅療養支援診療所

外来だけでなく、患者の自宅を訪問して診療する診療所もあります。看護師は院長の訪問に同行し、自宅での処置や家族への説明、訪問看護ステーションやケアマネジャーとの連絡を担います。運転を求められることもあります。

診療科ごとの求人の出方については、たとえば整形外科クリニックの求人はどこで探すのか|募集の出方と、応募前に確かめることで、整形外科に特有の募集の傾向と確認すべき点をまとめています。科を絞って探している人は、あわせて読んでみてください。

季節によって、任される仕事の比重が変わる

個人クリニックの仕事は、1年の中で波があります。病棟では季節による業務の変化はそれほど大きくありませんが、外来だけのクリニックでは、季節の影響をまともに受けます。内科や小児科を例に、1年の流れを追ってみます。

花粉症の患者が増え、耳鼻咽喉科や内科の外来が混み合います。4月から6月にかけては、学校や職場の健康診断の書類を持ってくる人が増え、健診の予約と結果の書類づくりが事務の仕事に加わります。新年度で保険証が変わる患者も多く、受付での資格の確認に手間がかかる時期です。

市区町村が行う特定健診やがん検診が始まるクリニックでは、健診の予約管理と、採血や心電図の実施が増えます。熱中症や夏かぜで、子どもの受診も増えます。お盆の休診の前後は、薬をまとめてもらいに来る患者で混雑します。

秋から冬

1年でいちばん忙しいのが、この時期です。10月からインフルエンザの予防接種が始まり、予約の電話、問診票の確認、接種、接種後の観察と、看護師の仕事が一気に増えます。12月から2月にかけては、発熱の患者が集中します。発熱の患者と他の患者の動線を分ける、待合室の換気や消毒を増やす、といった感染対策も看護師が中心になって回します。

年末は、休診に入る前に薬をもらいたい患者が増え、会計や処方の確認が立て込みます。医療事務は、年末の請求に向けた準備も重なります。

季節の波をどう受け止めるか

こういう相談がよくあります。「入職したのが夏で、落ち着いた職場だと思っていたのに、秋から急に別の職場のように忙しくなった」。

入職の時期によって、クリニックの印象はずいぶん変わります。面接や見学のときには、「いちばん忙しいのはいつ頃ですか。そのとき、1日に何人くらいの患者さんが来ますか」と聞いてみてください。忙しい時期の姿を知ったうえで決めれば、驚きは少なくて済みます。

常勤とパートで、任される範囲はどう違うか

個人クリニックでは、常勤の職員とパートの職員が一緒に働いていることが多いです。同じ看護師でも、雇用の形によって任される範囲は変わります。

常勤に任されやすい仕事

・物品の発注と在庫の管理 ・ワクチンの予約の管理と、接種の計画 ・新しく入った職員への仕事の説明 ・院長と相談しながら決める、院内のルールづくり ・レセプトの点検や、月末月初の締めの作業(医療事務の場合)

常勤は、クリニックの「中の仕組み」を回す役割を任されやすいです。院長と話す時間も長くなり、職場づくりに関われる反面、責任も重くなります。

パートに任されやすい仕事

・午前だけ、午後だけなど、患者が多い時間帯の診察の介助や採血 ・予防接種の時期だけの応援 ・受付と会計

パートは、決まった時間帯の業務を担当することが多く、発注や職場の仕組みづくりには関わらないことが一般的です。家庭との両立を考えて、あえてパートを選ぶ看護師も多くいます。

ただし、職員の少ないクリニックでは、パートでも常勤と同じような仕事を任されることがあります。「パートなのに発注まで任されている」と感じたら、それは職場の人手が足りていないというサインかもしれません。無理をしすぎないように、担当の範囲を院長と話し合ってみてください。

入職して最初の3か月で覚えること

個人クリニックに入って最初の数か月は、覚えることが一気に押し寄せます。慌てなくて大丈夫ですよ。順番に並べておくので、目安にしてください。

最初の1か月

・電子カルテとレセプトコンピュータの基本操作 ・物品や薬品の置き場所 ・院長の診察の流れと、処置の準備の順番 ・電話の対応の決まり(どの内容を院長に回すか)

特に大事なのが、院長の「やり方」です。同じ処置でも、器具を渡す順番や、ガーゼの大きさの好みは院長ごとに違います。病棟での経験があるほど、自分のやり方との違いに戸惑うかもしれません。最初はメモを取りながら、院長のやり方に合わせてみてください。

2か月目

・よく来る患者の顔と名前、病気の傾向 ・予防接種のスケジュールと、ワクチンの種類ごとの管理 ・月初めの請求の流れ(医療事務の場合)

3か月目

・発注のタイミングと数量の決め方 ・季節の繁忙期に向けた準備 ・自分から改善を提案できそうな点の整理

3か月たつと、職場の流れが見えてきます。この頃に「ここはもっとこうしたら」と感じることが出てきたら、院長に伝えてみてください。個人クリニックのよさは、その声が届きやすいことです。

私自身、新しい職場に入ったばかりの頃は、何を聞けばよいかも分からず、ただ流れについていくのに精一杯でした。3か月たったとき、ようやく「自分がいてもいい場所だ」と思えるようになった。そのくらいの時間がかかるのは、普通のことです。

面接で、任される仕事の範囲を確かめる聞き方

求人票で分からないことは、面接で聞くしかありません。個人クリニックの面接は、院長と1対1で話すことが多いので、聞き方を少し工夫すると聞きやすくなります。

・「看護師の方は、受付や会計に入ることはありますか。あるとしたら、どのくらいの頻度ですか」 ・「物品の発注や、器具の滅菌はどなたが担当されていますか」 ・「前任の方からの引き継ぎの期間はありますか」 ・「インフルエンザの予防接種の時期は、1日にどのくらいの人数に接種しますか」 ・「掃除や片付けは、どのように分担されていますか」

「残業はありますか」「有給は取れますか」と直接聞くのが気まずいときは、「閉院してから、皆さんは何時頃に帰られることが多いですか」「皆さん、お休みはどのように調整されていますか」と、職場の様子を聞く形にすると話しやすくなります。

見学ができるなら、ぜひお願いしてください。患者が多い時間帯に、職員がどう動いているか。院長が職員にどんな言葉をかけているか。30分ほど見ているだけで、求人票には書かれていないことがたくさん伝わってきます。

求人票のどこを見れば、実態が分かるか

個人クリニックの求人票は、情報が少ないことが多いです。限られた情報から実態を読むための見方をお伝えします。

職員の人数

「看護師3名、医療事務4名」のように人数が書かれていれば、1人あたりの負担と、休みの取りやすさが予測できます。書かれていなければ、面接で聞いてください。常勤とパートの内訳も大事です。

診療時間と昼休み

「9:00〜12:30、15:00〜18:30」のように、午前と午後の間に長い休憩があるクリニックは多いです。休憩が長いと、拘束される時間は長くなります。午後の診療の最後の患者が帰ったあとに、片付けや会計の締めがあるので、終業時刻は診療時間の終わりより遅くなります。

「受付業務あり」「その他院内業務」

看護師の求人にこの言葉があれば、兼務が前提です。悪いことではありませんが、どこまでの範囲なのかを面接で確認しておくと、入職後のずれを防げます。

開院の時期

開院したばかりのクリニックは、仕組みがまだできていないぶん、自分で職場をつくっていく面白さがあります。長く続いているクリニックは、やり方が決まっていて覚えやすい反面、変えにくいこともあります。院長が高齢で、後継の医師への承継を控えている場合は、将来の方針が変わる可能性も考えておきましょう。

社会保険

個人で開設しているクリニックでも、常時5人以上の従業員がいれば、健康保険と厚生年金に加入するのが原則です。求人票の「社会保険完備」の欄を確認し、書かれていなければ面接で聞いてください。

個人クリニックに向いているのは、どんな人か

最後に、個人クリニックという職場に合いやすい人の傾向をお話しします。

・1つの専門業務より、いろいろな仕事を組み合わせるのが苦にならない人 ・患者と長く関わる関係を大切にしたい人 ・決まったやり方に沿うより、職場を自分たちで良くしていきたい人 ・院長という1人の医師の考え方に、ある程度合わせて働ける人

反対に、専門的な技術を磨き続けたい人、体系的な教育を受けたい人、人間関係の距離を保ちたい人は、病院のほうが合うかもしれません。

どちらが正しいということはありません。大切なのは、あなたが今、何を大事にしたいかです。

病棟とクリニックの働き方の違いを、年収や勤務時間の面からもう少し比べたい場合は、看護師のクリニック転職ガイド|病棟との年収・働き方の違いで詳しく整理しているので、判断の材料にしてみてください。

働き方の相談を長く見てきた限りでは、個人クリニックで長く働いている人は、「仕事の範囲が広いこと」を最初から分かって選んだ人が多いと感じます。反対に、早く辞めてしまう人は、「楽になるはず」と期待して移った人に多い。仕事の中身そのものより、期待とのずれが心を疲れさせるのです。

もし、どの職場が自分に合うのか一人で考えるのがつらくなったら、誰かに話を聞いてもらうのも1つの方法です。職場・転職・キャリア相談のお仕事では、キャリアの相談に乗る専門職の仕事を紹介していて、こうした相談先がどんな支援をしているのかを知ることができます。

あなたは一人じゃありません。職場の中身を知ったうえで選べば、きっと納得のいく働き方に近づけますよ。

よくある質問

Q. 個人クリニックの看護師は、病棟の看護師と比べて仕事は楽ですか?

夜勤がなく、重症の患者を継続して看ることが少ない点では、体の負担は軽くなりやすいです。一方で、職員が少ないため、受付や電話の対応、物品の発注、掃除など、看護以外の仕事も受け持つことが多くなります。楽かどうかは、仕事の種類の多さを負担と感じるかどうかで変わります。

Q. 個人クリニックの医療事務は未経験でもできますか?

未経験から採用されることはあります。ただ、個人クリニックは教える人が少なく、受付、会計、診療報酬の請求まで少人数で担うため、最初の数か月は覚えることが多くなります。医療事務の基礎知識を事前に学んでおくと、請求業務が集中する月初めにも落ち着いて対応しやすくなります。

Q. 個人クリニックの看護師が受付を頼まれるのは普通ですか?

珍しいことではありません。受付の職員が休んだ日や、患者が集中する時間帯に、看護師が受付や電話の対応に入るクリニックは多くあります。求人票に受付業務ありと書かれていれば兼務が前提です。どこまでの範囲を任されるのか、面接の段階で具体的に確認しておくと、入職後のずれを防げます。

Q. 個人クリニックで働くと、病棟に戻りにくくなりますか?

急変の対応や術後の管理などを経験する機会が減るため、病棟に戻るときには学び直しが必要になることがあります。一方で、採血や注射の手技、患者への説明の力はクリニックで磨かれます。病院の復職支援研修や中途向けの教育制度を利用すれば、ブランクを埋めながら戻ることは十分に可能です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月11日最終更新:2026年9月16日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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