児童養護施設で任される仕事|ここでしか経験できないことは何か


この記事のポイント
- ✓児童養護施設の仕事内容を
- ✓保育園や学童との違いから整理します
- ✓ケアワーカーが担う生活支援
「児童養護施設で働いてみたい。でも、実際に何をするのか想像がつかない」
こういうご相談、本当によく聞きます。
保育園なら、子どもを朝預かって夕方に保護者へ返す。学童なら、放課後の数時間を一緒に過ごす。そういう働き方は、なんとなく思い描けますよね。
けれど児童養護施設は、子どもが「帰っていく場所」そのものです。朝起きてから夜眠るまで、そして次の朝まで。そこでの仕事は、保育や指導という言葉だけでは収まりません。
大丈夫ですよ。この記事では、児童養護施設の職員が実際に任される仕事を、ほかの職場との違いを軸にして、ひとつずつ言葉にしていきます。読み終えるころには、「ここでしか経験できないこと」が何なのか、そして自分がそれを担えそうかどうかを考える材料がそろっているはずです。
児童養護施設は「子どもが暮らす家」である
まず、この職場の前提から確かめておきましょう。仕事の中身は、そこで暮らす子どもたちの状況から決まってくるからです。
児童養護施設は、児童福祉法にもとづく施設で、保護者のいない子どもや、虐待を受けているなど保護者のもとで暮らすことが適当でない子どもが生活しています。入所を決めるのは、施設ではなく児童相談所です。
年齢については、社会的養護の専門サイトで次のように説明されています。
児童養護施設に入所する子どもたちは原則2歳から18歳までの子どもたちが対象です。措置延長で20歳まで、社会的養護自立支援事業で22歳まで継続的に支援している場合もあります。 出典: chabonavi.jp
幼児から高校生、場合によってはその先まで。年齢の幅がとても広いんです。同じ生活単位に、小学生と高校生が一緒に暮らしていることも珍しくありません。
そして、子どもたちが抱えている背景も知っておく必要があります。こども家庭庁の資料「社会的養育の推進に向けて」によると、児童養護施設で暮らす子どものうち71.7%に虐待を受けた経験があり、42.8%に障害等があるとされています(児童養護施設入所児童等調査、令和5年2月1日現在)。
数字にすると少し重く感じるかもしれません。でも、ここを知っておくことは、仕事を理解するうえでとても大切です。
なぜなら、この職場の仕事は「生活を回すこと」と「傷ついた経験のある子どもが、大人を信頼し直していくのを支えること」が、切り離せない形で重なっているからです。ご飯を作る、洗濯をする、宿題を見る。その一つひとつが、子どもにとっては「この大人は毎日ちゃんとそこにいてくれる」という安心の積み重ねになります。
保育園の保育士が「保育のプロ」だとしたら、児童養護施設の職員は「暮らしのプロ」でもある。そう考えると、この先の話がつかみやすくなると思います。
施設の中にいる職種と、それぞれの役割
児童養護施設には、いろいろな職種の人が働いています。まずは全体像を見てみましょう。全国の児童養護施設でつくる協議会は、職員の構成をこう説明しています。
全国の児童養護施設では、児童指導員、保育士等が子どもたち一人ひとりの自立目標に合わせた支援計画をもとに、養育を行っています。 このほか看護師、事務職員、調理員、栄養士、心理療法担当職員、個別対応職員、家庭支援専門相談員、職業指導員、里親支援専門相談員などの職員、運営管理者として施設全体に責任を持つ施設長が子どもたちの生活を支えています。 出典: zenyokyo.gr.jp
たくさんの職種が並んでいますね。ただ、子どもの毎日の生活にいちばん近いところにいるのは、保育士と児童指導員です。施設によってはこの2つをまとめて「ケアワーカー」と呼んだり、「指導」という言葉が実態に合わないとして「児童支援員」と呼び変えたりしています。
主な職種の役割を、日常の言葉に置き換えて整理します。
・保育士・児童指導員:子どもと一緒に暮らし、生活全般を支える。担当する子どもの成長を長く見守る ・個別対応職員:虐待を受けた経験などから特に個別の関わりが必要な子どもと、1対1の時間をつくる ・家庭支援専門相談員:保護者との連絡や面接を重ね、家庭に戻れるように調整する。退所後の相談にも応じる ・里親支援専門相談員:児童相談所や里親会と連携し、里親家庭で暮らす道をつなぐ ・心理療法担当職員:遊びやカウンセリングを通して、心の傷のケアをする。ほかの職員に心理面から助言する ・栄養士・調理員:子どもの体の状態に合わせた食事を用意する ・自立支援担当職員:退所を控えた子どもの進学や就職、一人暮らしの準備を支える
国の基準では、児童指導員、保育士、個別対応職員、家庭支援専門相談員、栄養士、調理員などを置くことが定められています。心理療法担当職員は、心理療法が必要な子どもが10人以上いる場合に置くことになっています。
ここで知っておいてほしいのは、ケアワーカーが「全部をひとりで抱える」わけではない、ということです。子どもの心のことは心理職と、家族のことは家庭支援専門相談員と、健康のことは看護師や嘱託医と。役割を分け合いながら、ひとりの子どもを施設全体で支えます。
新しく入った人ほど「自分がなんとかしなきゃ」と思いやすいんです。でも、この職場は最初からチームで動く前提でつくられています。そのことを覚えておくだけで、少し肩の力が抜けると思います。
ケアワーカーが毎日担う、生活の仕事
では、保育士・児童指導員として採用された場合、毎日どんな仕事をするのでしょうか。東京都内の児童養護施設が、自施設の職員の仕事を具体的に紹介しています。
子どもたちが安心・安全な生活が送れるように、子ども一人ひとりにあわせた支援を行っています。 食事の用意、洗濯や掃除、学習支援、一緒に遊んだりお出かけをしたりと、生活の中の支援は多岐に渡ります。 出典: wakakusaryo.or.jp
「多岐に渡ります」という言葉のとおり、仕事の幅はとても広いです。私なりに分けてみると、次の4つの層になります。
1つ目は、家事の層です。食事の準備と片付け、洗濯、掃除、食材や日用品の買い出し。少人数のグループで暮らす形の施設では、職員が献立を考えて調理まで担うことも多くあります。大きな建物で調理員が食事を作る施設では、盛り付けや配膳、片付けが中心になります。
2つ目は、身の回りの世話と健康の層です。起床と着替えの声かけ、検温、入浴、寝かしつけ。風邪をひいた子の看病や、病院への付き添い、薬の管理もここに入ります。
3つ目は、学びと遊びの層です。宿題を見る、塾やボランティアの学習支援とつなぐ、休日に一緒に出かける、誕生日や季節の行事を準備する。社会的な経験が不足しがちな子どももいるので、「どんな体験をしてほしいか」を考えて外出を企画するのも大事な仕事です。
4つ目は、事務と連絡の層です。子どもの様子を記録する、学校の提出物を準備する、食費などの精算をする、子どものお小遣い帳を確認する。学校や児童相談所とは、日々連絡を取り合います。
こうして並べると、「子育て」と「家事」と「記録」を、何人分もまとめて担っているような感覚に近いかもしれません。
実は私も、以前ある子ども関係の現場を見学させてもらったとき、驚いたことがあります。職員の方が夕食を作りながら、隣で宿題をしている子に声をかけ、その合間に電話を受けて学校と話していたんです。あとで聞くと「これが普通の夕方です」と笑っていました。この「同時にいくつも抱えながら、目の前の子どもの気持ちは取りこぼさない」という動き方は、ほかの職場ではなかなか身につかないものだと感じました。
勤務の形によって、担う仕事の顔ぶれが変わる
同じケアワーカーでも、その日の勤務の形によって、担う仕事の顔ぶれがずいぶん変わります。ここを知っておくと、「仕事内容」がより立体的に見えてきます。
児童養護施設は、子どもが暮らす家なので、夜も誰かがいなければなりません。国の基準でも、施設長は保育士か児童指導員のうち少なくとも1人を、子どもと起居を共にさせなければならないとされています。そのため勤務は、早番、日勤、遅番、宿直(施設によっては夜勤)などを組み合わせた交代制になります。
先ほど紹介した施設では、日勤と宿直の動き方をこう説明しています。日勤はお昼頃に出勤して、宿直した職員から子どもの様子の引き継ぎを受ける。子どもが学校から帰るまでは、事務作業や洗濯物の片付け、環境の整備、食材の買い物と夕食作り。子どもが帰ってきてからは宿題を見たり、お風呂の声かけをしたり、翌日の準備を一緒にしたり。
宿直は夕方から出勤し、日勤の職員と役割を分けながら学習に付き添ったり、夕食を作ったりします。夕食のあとは片付けや洗濯をして、リビングで一緒にテレビを見たり、遊んだりしながら団らんの時間を過ごす。就寝前には、小学生に絵本を読んだり、中高生と学校や将来のこと、雑談をしたり。子どもが寝静まったあとは、翌日の予定の確認や朝食の下ごしらえ、見回り、事務作業を済ませて、職員も翌日に備えて眠ります。
こうして見ると、勤務の形ごとに仕事の性格が違うのが分かりますね。
・朝の時間帯:起こす、食べさせる、送り出す。時間との勝負で、段取りの力が問われる ・日中の時間帯:家事、事務、会議、関係機関への連絡。子どもがいない時間にしかできない仕事を片付ける ・夕方から夜:宿題、食事、入浴、団らん、寝かしつけ。子どもの気持ちがいちばん動く時間帯 ・夜間:見回り、体調の急変や眠れない子への対応、翌日の準備
特に、夕方から就寝までの時間は、子どもが学校であったことを話したり、不安を口にしたりしやすい時間です。担当の子どもとじっくり話せるのも、この時間帯であることが多い。一方で、家事と重なって一番慌ただしい時間でもあります。
この施設では、日中から子どもの就寝頃まで、なるべく2人で勤務するようにしているそうです。ほかの職員が子どもとどう関わっているかを間近で見られるので、学ぶ場になり、若手職員の安心感にもつながっていると紹介されていました。
「仕事内容」を考えるときは、「何をするか」だけでなく「どの時間帯に、誰と一緒に担うのか」まで想像してみてください。それが、自分がこの職場で働く姿を思い描く一番の近道になります。
担当制と自立支援計画は、この職場ならではの仕事
児童養護施設の仕事で、保育園や学童と大きく違うのが「担当制」です。
多くの施設では、子ども一人ひとりに担当の職員が決まります。担当になると、その子の日々の生活を見るだけでなく、学校の面談や行事に保護者の代わりに出席したり、進路を一緒に考えたり、必要に応じて児童相談所の担当者と話し合う場を設けたりします。
そして、担当として深く関わるのが「自立支援計画」です。国の基準では、施設長は入所している子ども一人ひとりについて、年齢や発達の状況に応じて子どもの意見や意向を聞き、家庭の状況なども踏まえて、自立を支援するための計画を立てなければならないとされています。
この計画づくりを、子どもと一緒に進める施設が増えています。先ほど引用した施設では、将来の夢や、数年後にどうなっていたいか、今年は何を頑張りたいか、周りの大人にどんな手伝いがほしいかを子どもと話し合い、計画書を作って共有しているそうです。子どもが30人いれば30通りの支援がある、という言葉が印象的でした。
ここが、この仕事のいちばん奥深いところだと思います。
保育園では、子どもの育ちを見守る期間は就学前までで区切られます。学童も、小学生のうちです。でも児童養護施設では、幼児期に入所した子どもが高校を卒業するまで、同じ施設で10年以上暮らすこともあります。担当の職員は、その子の「小さかったころ」を知っている大人として、思春期の揺れも、進路の迷いも、一緒に通っていくことになります。
もちろん、つらい場面もあります。子どもから強い言葉をぶつけられることもあるし、信頼してくれたと思った矢先に距離を取られることもある。心理学では、安心できる相手かどうかを確かめるように、わざと大人を困らせる行動が出ることがあると言われます。つまり「この人は、ここまでしても離れていかないか」を試しているんですね。
そういう揺れに付き合い続けることは、簡単ではありません。でも、だからこそ、子どもが少しずつ落ち着いていく過程に立ち会えたとき、この職場でしか味わえない手ごたえがあります。
入所から退所、その先まで。つながりを支える仕事
児童養護施設の仕事は、施設の中だけで完結しません。子どもが入ってくる前から、出ていったあとまで続いていきます。
入所のときには、子どもを迎え入れる準備があります。児童相談所から情報を受け取り、部屋や生活用品を整え、初日の不安を少しでも和らげる。新しい環境に来た子どもにとって、最初に出会う大人の態度は、とても大きな意味を持ちます。
在籍中には、家族との関係を調整する仕事があります。国の基準では、家庭環境の調整は、子どもの家庭の状況に応じて親子関係の再構築などが図られるように行うこととされています。面会や外泊の段取り、保護者との連絡。これは主に家庭支援専門相談員が担いますが、日々の様子を一番知っているケアワーカーの情報が欠かせません。
退所が近づくと、次の生活に向けた準備が始まります。家庭に戻る子、里親家庭に移る子、進学や就職をして一人暮らしを始める子。高校生になると、施設の中で一人暮らしを体験する機会を設けているところもあります。お金の管理、役所の手続き、料理。家庭で自然に身につくはずの経験を、意識して積んでもらう仕事です。
そして、退所したあとも関わりは続きます。家庭支援専門相談員の役割について、全国の協議会はこう説明しています。
ファミリーソーシャルワーカーとも呼ばれ、保護者などへの支援を通じて、子どもの家庭復帰等を支援します。また、施設を退所した子どもたちの相談援助や、地域の関係機関との連絡・調整、地域の子育て家庭の相談援助等も行います。 出典: zenyokyo.gr.jp
退所した子どもが、仕事で悩んだとき、住まいのことで困ったときに、ふらっと施設に電話をかけてくる。そういう「実家のような役割」を、施設は担い続けます。
保育園や学童の仕事は、子どもが卒園・卒所したらそこで区切りがつきます。でも児童養護施設では、子どもの人生の節目に、何年たっても関わる可能性がある。ここが、この職場の仕事のもう1つの大きな特徴です。
生活単位の大きさで、仕事の中身はこう変わる
児童養護施設の仕事内容を語るとき、もう1つ外せないのが「生活単位の大きさ」です。同じ施設の職員でも、どの形の生活単位に配属されるかで、毎日の仕事がかなり違ってきます。
かつての児童養護施設は、大きな建物の中で数十人の子どもが一緒に暮らす形が中心でした。今は国の方針として、できるだけ家庭に近い環境で、少人数で暮らせるように施設の小規模化と地域分散化が進められています。こども家庭庁の資料では、施設の中で少人数のグループに分かれて暮らす小規模グループケアが2,527か所、地域の住宅などで暮らす地域小規模児童養護施設が629か所とされています(令和6年10月1日現在)。
生活単位の形ごとの、ケアワーカーの仕事の違いをまとめるとこうなります。
・大きな生活単位(本園の大きなホーム):職員の人数が多く、調理は調理員が担うことが多い。ケアワーカーは子どもの生活の支援に集中しやすいが、一人ひとりとじっくり過ごす時間は取りにくい ・施設内の小規模グループケア:本園の敷地内で6人前後のグループに分かれて暮らす。職員は献立づくりや調理まで担うことが増えるが、困ったときは本園の職員にすぐ相談できる ・地域小規模児童養護施設(グループホーム):地域の住宅で6人前後が暮らす。買い物、調理、ご近所づきあい、通院の付き添いまで、家庭とほぼ同じ営みを少人数の職員で担う
少人数の生活単位ほど、子どもにとっては「普通の家」に近づきます。そのぶん職員は、保育や指導の専門職というより、家を切り盛りする大人としての役割が大きくなる。ひとりで判断する場面も増えます。
どちらが自分に合うかは、人によって違います。大勢の職員と一緒に動くほうが安心できる人もいれば、少人数で子どもとじっくり暮らすほうがやりがいを感じる人もいます。施設によっては、本園とグループホームの間で異動があることも覚えておいてください。
同じ資格でも、保育園や学童とは任される範囲が違う
保育士の資格を持っている人が、保育園から児童養護施設へ移ることを考えるとき、戸惑いやすいのが「同じ資格なのに、仕事の幅がまるで違う」という点です。
違いを表にまとめてみます。
| 比べる点 | 保育園 | 学童・放課後等デイサービス | 児童養護施設 |
|---|---|---|---|
| 関わる時間 | 日中 | 放課後と長期休み | 24時間365日の交代制 |
| 対象年齢 | 就学前 | 主に小学生(放デイは高校生まで) | 幼児から高校生、その先まで |
| 家事 | ほぼなし | ほぼなし | 食事作り・洗濯・掃除まで担うことが多い |
| 保護者との関係 | 毎日の送迎で会う | 送迎や連絡帳で関わる | 保護者の代わりを担い、家族との関係を調整する |
| 関係機関 | 小学校との連携が中心 | 学校・相談支援事業所 | 学校・児童相談所・病院・警察・家庭裁判所など |
| 関わる期間 | 数年 | 数年 | 10年以上になることもある |
この表を見ると、児童養護施設の仕事が「保育」よりも「生活全体を引き受けること」に近いのが分かると思います。
保育園での経験は、もちろん生きます。幼児への声かけ、発達の見立て、行事の準備。こうした力は、施設でもそのまま役立ちます。一方で、思春期の子どもとの関わり、学校や児童相談所との調整、家事全般の段取りは、新しく覚えることになります。
年収の水準は、職種全体の相場を知っておくと比べやすくなります。保育士という職種全体の年収や単価の相場は保育士の年収・単価相場にまとまっています。児童養護施設では宿直や夜勤の手当が加わることが多いので、その分を差し引いて比べるのがおすすめです。
保育士や児童指導員の資格が生きる職場はほかにもあります。条件の見方と決め手に分けて職場を比べた児童指導員の働き先を比べるを読んでおくと、自分が児童養護施設を選ぶ理由が、よりはっきりすると思います。
この仕事で身につく力と、つらくなりやすい場面
ここまで読んで、「自分に務まるだろうか」と感じた方もいるかもしれません。その気持ちは自然なものです。この節では、この職場で身につく力と、つらくなりやすい場面を、両方正直に書いておきます。
まず、身につく力です。
1つ目は、生活を組み立てる力です。何人分もの食事、洗濯、通院、学校の予定を、限られた人数と時間で回していく。この段取りの力は、どんな職場に移っても、自分の家庭を持っても生きてきます。
2つ目は、関係を長く保つ力です。子どもとの関係は、一度うまくいったら終わりではありません。調子のいい時期もあれば、ぶつかる時期もある。その波をならしながら、それでも関わり続ける経験は、人と向き合う仕事の土台になります。
3つ目は、多職種と連携する力です。学校の先生、児童相談所の担当者、心理職、医師、ときには警察や家庭裁判所。立場の違う人と、ひとりの子どものために話を合わせていく経験は、福祉の仕事の中でも、とても幅の広いものです。
次に、つらくなりやすい場面です。
1つ目は、子どもの行動を「自分のせい」と受け止めてしまうとき。強い言葉を向けられたり、約束を破られたりすると、自分の関わり方が悪かったのではないかと落ち込みやすいんです。でも、その行動の多くは、子どもが過去の経験から身につけてきた自分の守り方です。あなた個人への評価ではありません。
2つ目は、生活と仕事の境目があいまいになるとき。子どもが暮らす家で働くので、勤務が終わっても子どものことが頭から離れない、ということが起きます。休みの日にも気になってしまう。これは、真剣に向き合っている人ほど起きやすいことです。
3つ目は、職員同士の考え方の違いに悩むとき。子育てに正解がないように、施設での関わり方にも、人によって考え方の違いがあります。ルールをどこまで厳しくするか、どこまで子どもの自由に任せるか。ここで意見が合わず、苦しくなる人もいます。
こうした場面に出会ったとき、ひとりで抱え込まないことが本当に大切です。先輩や同期に話す、心理職に相談する、施設の外にいる信頼できる人に聞いてもらう。自分の気持ちを言葉にして外に出すだけで、心の負担は少し軽くなります。
あなたは一人じゃありません。この職場は、職員同士が支え合うことで、子どもを支え続けられる場所です。
経験を重ねた先に、任されるようになる仕事
「ずっと現場で子どもと暮らし続けるのかな」と、長い目で不安に思う方もいます。大丈夫です。児童養護施設には、経験を重ねた人が担う役割がいくつも用意されています。
たとえば、家庭支援専門相談員です。国の基準では、児童養護施設で子どもの指導に5年以上従事した人か、社会福祉士などの資格を持つ人でなければならないとされています。つまり、現場で5年ほど子どもと暮らした経験そのものが、ソーシャルワークの仕事への道になっているんです。
また、施設の中で自立支援計画の作成や進行管理、職員の指導を担う基幹的職員(スーパーバイザー)という役割もあります。国はこの役割を担う人を育てるための研修を事業として実施しています。
ほかにも、里親支援専門相談員として里親家庭を支える道、自立支援担当職員として退所前後の子どもを支える道、小規模なグループホームのまとめ役になる道があります。施設長になるには、社会福祉士などの資格を持つか、児童養護施設の職員として3年以上勤めたことなどに加えて、国が指定する研修を受けることが求められます。
現場で積んだ「生活を支える力」は、そのまま次の役割の土台になります。ここも、この職場ならではのところです。
求人や見学で「任される範囲」を確かめる方法
最後に、実際に施設を選ぶときの話をします。仕事の中身は施設によって本当に違うので、応募する前に確かめておくことが大切です。
こういう相談もよくあります。「保育士として入ったのに、思っていたより家事の比重が大きくて戸惑った」。これは、施設が悪いわけでも、本人の準備不足でもありません。施設の生活単位の形によって、ケアワーカーが担う家事の量が大きく変わるからです。
見学や面接で、次のことを聞いてみてください。
・配属先は本園か、地域のグループホームか。1つの生活単位に子どもは何人いるか ・食事は誰が作るか。調理員がいるのか、職員が献立から考えるのか ・担当を持つのは入職後いつごろからか。最初は先輩と組んで入るか ・学校の面談や児童相談所との会議には、担当として出るのか ・心理職や家庭支援専門相談員とは、どのくらいの頻度で話し合う機会があるか ・退所した子どもとの関わりは、誰がどのように担っているか
聞き方に迷ったら、「1日の流れと、1週間の中で一番忙しい日の過ごし方を教えてください」とお願いするのがおすすめです。その答えの中に、任される範囲がほとんど含まれています。
この仕事は、決して楽ではありません。けれど、子どもが「ただいま」と帰ってくる場所をつくり、その子の人生の長い時間に寄り添える仕事です。自分に向いているかどうかは、実際に施設の空気に触れてみることで、少しずつ見えてきます。
あなたが感じている迷いも、きっと意味のあるものです。焦らず、ひとつずつ確かめていきましょう。
よくある質問
Q. 児童養護施設の保育士と保育園の保育士は、仕事内容がどう違いますか?
保育園は日中に就学前の子どもを預かるのに対し、児童養護施設は幼児から高校生までが暮らす生活の場を24時間の交代制で支えます。食事作りや洗濯などの家事、学校行事への出席、児童相談所とのやりとり、進路の相談まで担うことが多く、保護者の代わりとして長い期間関わる点が大きな違いです。
Q. 児童養護施設の担当制とは何ですか?
子ども一人ひとりに担当の職員が決まり、日々の生活に加えて、学校の面談や進路の相談、関係機関との話し合いなどを中心になって担う仕組みです。国の基準で施設長が作ることになっている自立支援計画も、担当職員が子どもの意見を聞きながら一緒に作ることが多く、成長を長く見守る役割になります。
Q. 児童養護施設ではケアワーカーがすべてをひとりで担うのですか?
ひとりで抱える前提ではありません。心の傷のケアは心理療法担当職員、家族との調整は家庭支援専門相談員、健康面は看護師や嘱託医、食事は栄養士や調理員というように役割を分けて、施設全体で子どもを支えます。困ったときに相談できる体制があるかは、見学や面接で確かめておくと安心です。
Q. 経験を積むと、児童養護施設でどんな仕事を任されるようになりますか?
子どもの指導に5年以上従事すると、家庭支援専門相談員として保護者への支援や退所後の相談を担う道が開けます。ほかにも、職員の指導や計画の管理を行う基幹的職員、里親家庭を支える里親支援専門相談員、退所前後の生活を支える自立支援担当職員など、現場経験を土台にした役割があります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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