未経験から児童養護施設で働く|受け入れている募集と、慣れるまで

長谷川 奈津
長谷川 奈津
未経験から児童養護施設で働く|受け入れている募集と、慣れるまで

この記事のポイント

  • 児童養護施設は未経験から入れるのか
  • 受け入れている募集の中身と
  • 入職後に慣れるまでの流れを整理します

先日、福祉とはまったく関係のない業界で働いてきた方から相談を受けました。「児童養護施設で働きたいけれど、未経験で資格もない自分が応募していいのか分からない」と。

結論から言うと、応募できます。未経験を受け入れている募集は実際に出ていますし、資格がなくても入れる枠があります。ただし、条件があります。どの職種として採用されるのか、どの働き方で契約するのか。ここを曖昧にしたまま入ると、後から「聞いていた話と違う」ということになります。

これ、知らない人が本当に多いんです。児童養護施設の求人には、見た目は似ていても法律上まったく違う働き方が混ざっています。宿直と夜勤の違いがその代表です。

この記事では、未経験の方が応募する前に知っておくべきことと、入った後に慣れるまでの流れを、順を追って書きます。

未経験を受け入れている募集は、実際に出ている

まず、事実から確認します。児童養護施設の求人には、経験や資格を問わない募集が一定数あります。求人サイトに出ている募集条件を見ると、求められている人物像がはっきり書かれています。

...責任感をもって仕事に取り組んでいただける方・保育士・幼稚園教諭の経験を生かしたい方、または資格取得に向けて勉強中の方・保育補助員や子育て経験を生かしたい方<活かせる経験・スキル>当施設では、保育園や幼稚園での勤務経験をお持ちの方、児童館、児童養護施設、児童福祉施設での経験がある方が活躍中です。また、学童保育や病院内保育(病棟保育)、企業内保育の経験がある方や、放課後等デイサービスでの勤務経験をお持ちの方も在籍し、それぞれの経験を活かして子どもたちの支援を行っています... 出典: 求人ボックス

注目してほしいのは、「資格取得に向けて勉強中の方」と「子育て経験を生かしたい方」という記述です。つまり、この施設は資格を持っていない段階の応募を想定しています。そして、在籍している職員の前歴として、保育園、幼稚園、児童館、学童保育、病棟保育、企業内保育、放課後等デイサービスが並んでいます。児童養護施設の経験者だけで固めているわけではないということです。

なぜ受け入れられるのか。理由は、施設の中に複数の職種があり、そのすべてに資格要件が課されているわけではないからです。ここを次の節で整理します。

一点だけ注意を添えます。「未経験可」という表記は、応募できるという意味であって、入った後に負担が軽いという意味ではありません。ここを混同すると、入職後につらくなります。求人票の言葉は、採用の入口の条件であって、仕事の中身の説明ではないのです。

なぜ未経験でも入れるのか、仕組みから説明する

児童養護施設は、児童福祉法に基づいて都道府県などから認可を受けて運営されている施設です。つまり、自由に人を置けるわけではなく、職員の配置に関する基準があります。

この基準に数えられる中心の職種が、児童指導員と保育士です。ここには要件があります。保育士は国家資格です。児童指導員は試験のある資格ではなく任用資格と呼ばれるもので、社会福祉士や精神保健福祉士の保有、大学で社会福祉学や心理学や教育学や社会学を修めた卒業、教員免許の保有、児童福祉事業での実務経験などの要件を満たす人が、その職に就いたときに児童指導員として扱われます。

つまり、こういうことです。大学で心理学科や教育学科を出ていれば、福祉とは無関係の職歴しかなくても、児童指導員の要件に該当する可能性があります。教員免許を取ったまま教職に就かなかった方も同じです。ここに気づいていない方が本当に多い。履歴書を出す前に、ご自身の卒業学科と手元の免許を確認してください。

そして、この基準の枠の外側にも職員がいます。補助的に生活支援に入る職員、調理を担当する職員、事務職員、宿直に入る非常勤の職員など。この枠には資格要件が課されていないため、未経験からの応募が可能になります。

もうひとつ、施設の運営形態も関係します。近年は大きな建物で大人数を見る形から、小さな生活単位に分ける形へ移す流れが続いています。生活単位が小さくなるほど、必要な職員の数は増えます。人手を必要としている施設が多いというのは、この構造から来ています。

※ただし、施設ごとに採用の考え方は異なります。未経験を積極的に育てる施設もあれば、経験者に限定している施設もあります。募集要項の文言で見極めてください。

応募できる職種と、応募前に確認すべき職種

未経験の方が応募を検討するとき、募集職種名を正確に読むことが出発点になります。

生活支援を担う職種として募集されている場合、名称は施設によって異なります。児童指導員、保育士、支援員、生活支援員、ケアワーカーなど。このうち、児童指導員と保育士という名称で募集されているものは、先に書いた要件を満たしている必要があります。要件を満たしているかどうかは、証明書類で判断されます。

支援員や補助員という名称の募集は、要件が緩い場合があります。ただし、施設によっては「支援員」という名称で児童指導員の要件を求めていることもあるため、応募資格の欄を必ず読んでください。

宿直専従の募集もあります。夜間だけ施設に入り、見回りと夜間の対応を担当する働き方です。他に本業がある方や、学生が担うこともあります。

学習支援として関わる募集もあります。週に2回、夕方に宿題を見る、といった形です。ここから施設と関わり始めて、後に常勤になる方もいます。

調理、事務、送迎など、子どもへの直接支援ではない職種もあります。施設の中にいる以上、子どもと日常的に接することにはなります。

一方で、応募前に確認が必要な職種もあります。家庭支援専門相談員、心理療法担当職員、里親支援を担う職員などは、資格や実務経験の要件が定められていることが一般的です。未経験からいきなりこの職に就くことは、通常ありません。

つまり、未経験からの入口は、生活支援の補助的な枠か、要件に該当する児童指導員か、宿直や学習支援といった限定的な枠、ということになります。

「宿直」と「夜勤」は、法律上まったく別の制度です

ここが今日いちばんお伝えしたい部分です。求人票に書かれている夜間の勤務には、法律上まったく違う二つの形があります。これを知らずに契約すると、想定していた収入と実際が食い違います。

まず夜勤です。これは通常の労働時間として扱われる勤務です。交代制で夜の時間帯に働く形で、勤務時間はそのまま労働時間に算入されます。午後10時から午前5時の間に働いた分には、労働基準法により深夜割増賃金が発生します。割増率は25パーセント以上です。

次に宿直です。これは労働基準法第41条第3号にいう「監視又は断続的労働」にあたるものとして、労働基準監督署長の許可を受けた場合に認められる勤務形態です。つまり、常時労働している状態ではなく、待機が中心で、たまに対応が発生する勤務という位置づけです。許可を受けた宿直については、労働時間や休憩、休日に関する規定の適用が外れ、賃金は宿直手当という形で支払われます。

つまり、こういうことです。同じ「夜に施設にいる」勤務でも、夜勤なら時間単価に深夜割増が乗り、宿直なら手当の定額になります。手取りの計算がまったく変わります。

※注意点があります。宿直として許可を受けていても、実態として夜間に継続的な労働が発生しているのであれば、その部分は労働時間として扱われるべきものです。夜中に何度も起こされて対応が続いているのに宿直手当だけ、という状態が常態化している場合は、労働基準監督署に相談してください。これは施設を責める話ではなく、実態と制度が合っていないというだけの話です。

応募のときに聞くべきことを、具体的に書きます。夜間の勤務は夜勤か宿直か。宿直なら手当はいくらか。月に何回入るか。宿直明けはそのまま休みになるのか、日中の会議に出るのか。仮眠の時間と場所は確保されているか。この5つです。

法律はあなたの味方です。ただし、契約の段階で確認しなければ、後から主張するのは大変になります。

雇用契約で、必ず確認する項目

未経験で入る方ほど、契約書の確認を後回しにしがちです。ここで確認すべき項目を整理します。

労働条件の明示です。労働基準法第15条により、使用者は労働契約を結ぶ際に労働条件を明示しなければなりません。契約期間、就業の場所と業務の内容、始業と終業の時刻、休憩、休日、賃金、退職に関する事項は、書面などで示されるべきものです。口頭だけで済まされた場合は、書面を求めてください。求めること自体は当然の権利です。

契約期間です。無期なのか有期なのか。有期であれば、更新の有無と、更新の判断基準が書かれているかを見ます。有期契約が反復更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申込みにより無期労働契約に転換できる仕組みがあります。長く働くつもりなら、頭に入れておいてください。

試用期間です。期間の長さと、その間の賃金が本採用後と違うかを確認します。試用期間中であっても、労働契約は成立しています。つまり、施設側が自由に辞めさせられるわけではありません。

賃金の内訳です。基本給がいくらで、どの手当がいくらか。児童養護施設の求人では、宿直手当、夜勤手当、処遇改善に関する手当などが加わることがあります。求人票の「月給22万円から」といった表示に、これらの手当が含まれているのかどうかで、実際の基本給は変わります。基本給は賞与や残業代の計算の基礎になるため、ここは必ず分解して確認してください。

変形労働時間制の有無です。シフト制の職場では、1か月単位や1年単位の変形労働時間制を採用していることがあります。これが適用されると、週や日の労働時間の考え方が変わります。就業規則で確認できます。

※就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場では作成と周知が義務づけられています。見せてもらえるはずのものです。入職時に見せてもらってください。

給与水準の目安を持っておくことも大切です。福祉の職場全体の水準は介護職員の年収・単価相場にまとめてあります。保育士資格を持って応募する方は保育士の年収・単価相場と比べると、提示された条件が相場のどこにあるかが判断できます。

施設の形態によって、未経験の入りやすさが変わる

同じ児童養護施設でも、建物と生活単位の作り方によって、未経験者の受け入れやすさが違います。応募先を選ぶときの判断材料になるので、整理しておきます。

大舎制は、大きな建物に多くの子どもが生活し、食事は食堂で一斉に取る形です。職員の数が多く、常に誰かが近くにいます。未経験の方にとっては、先輩に聞ける環境があるという意味で入りやすい形です。調理は厨房の職員が担当するため、支援員が台所に立つ場面は少なくなります。一方で、集団としての統制が必要になり、時間の管理が細かくなります。

小規模グループケアは、施設の中を小さな生活単位に分ける形です。六人前後で一つの単位を作り、その単位ごとに生活します。家庭に近い環境になりますが、その時間帯に単位の中にいる職員は一人か二人です。つまり、判断を自分でする場面が早い段階から来ます。調理も職員が関わることが多くなります。

地域小規模児童養護施設は、地域の一軒家などで少人数が生活する形です。職員の数がさらに限られ、一人で判断する時間が長くなります。ここは経験を積んでから配属されるのが通常で、未経験からいきなり配属されることはあまりありません。

つまり、未経験で入るなら、まず人の多い環境から始めるのが安全です。ただし、施設によっては入職後すぐに小規模の単位に配属されることもあります。面接で「未経験の職員は最初にどこに配属されますか」と聞いてください。この一つの質問で、その施設が人を育てる仕組みを持っているかどうかが見えます。

※注意点があります。小規模化は国の方針として進んでいるため、今は大舎制でも数年後に形が変わる可能性があります。施設が今後どういう形を目指しているのかも、あわせて聞いておくとよいです。

面接で聞かれること、こちらから聞くべきこと

未経験で応募する場合、面接で問われることはおおむね決まっています。準備しておけば落ち着いて話せます。

なぜ児童養護施設なのか。これは必ず聞かれます。ここで気をつけてほしいのは、「子どもが好きだから」だけで終えないことです。それは動機であって、続けられる根拠にはなりません。前職で何をしてきて、その経験のどこがこの仕事に繋がると考えているのかを、具体的に話してください。

夜間や休日の勤務ができるか。これも必ず問われます。生活がある以上、正直に答えるのが双方のためです。できないことを言わずに入ると、後でシフトが組めなくなります。

子どもに強い言葉をぶつけられたらどう対応するか。これは、正解を答えさせるための質問ではありません。一人で抱えずに他の職員に相談する、と答えられれば十分です。

逆に、こちらから聞くべきことを挙げます。

未経験の職員が入ったとき、最初の一か月はどういう体制で動くのか。単独でシフトに入るのはいつからか。この二つで、育成の仕組みがあるかが分かります。

記録はいつ書く時間があるのか。勤務時間の中に組み込まれているのか、終業後になるのか。ここが曖昧な施設は、持ち帰りが発生している可能性があります。

夜間の勤務は夜勤か宿直か、月に何回か、明けの扱いはどうか。これは先に書いたとおり、契約の中身に直結します。

直近三年で、どのくらいの職員が入って、どのくらい辞めたか。答えにくい質問ですが、正直に答えてくれる施設は信頼できます。言葉を濁された場合、それも一つの情報です。

見学ができるなら、夕方の時間帯を希望してください。下校から夕食にかけてが、この職場のいちばん忙しい時間です。そこを見せてもらえるかどうかで、施設の姿勢が分かります。

入職して最初の1か月に、何が起きるか

ここからは、入った後の話です。未経験の方が最初の1か月で通る道を書きます。

最初の1週間から2週間は、覚える期間です。子どもの名前と顔、それぞれの生活のリズム、施設のルール、物の置き場所、書類の様式。この時期に「役に立てていない」と焦る方が多いのですが、覚える以外にやることはありません。

先輩職員の動きを見て、そのまま真似してください。特に、声のかけ方と距離の取り方です。子どもごとに、近づき方が決まっています。自分のやり方を持ち込むのは、関係ができてからで十分です。

2週間を過ぎると、シフトに単独で入る場面が出てきます。ここで最初の壁が来ます。自分が声をかけても動かない、話しかけても返事がない。他の職員だと動くのに、という場面です。

これは能力の差ではありません。子どもは、この人が自分にとって安全かどうかを時間をかけて確かめています。特に、大人に裏切られた経験のある子ほど、慎重になります。つまり、警戒されているのは当たり前の段階なのです。

1か月目の終わりごろ、記録の書き方で迷い始めます。何を書けばよいのか分からない、という段階です。ここは遠慮せず、先輩の記録を読ませてもらってください。事実を書く欄と、支援者としての見立てを書く欄を分けるのが基本の型です。

そして、この時期にいちばん多い誤解を書いておきます。「自分は向いていないのではないか」と感じることです。1か月で判断しないでください。この段階で分かるのは、自分がまだ慣れていないということだけです。

2か月目から半年までに、見えてくるもの

2か月目に入ると、子どもの側から話しかけてくる場面が出てきます。何気ない雑談です。学校であったこと、好きなゲームの話、他の子への不満。この雑談が始まったら、関係ができ始めている証拠です。

同時に、感情を向けられる場面も出てきます。強い言葉をぶつけられる、物に当たられる。これは、この人になら出してもよいと判断されたという側面があります。頭では分かっていても、受け止める側にはこたえます。ここで1人で抱え込まないでください。その日のうちに他の職員に話す。これが唯一の対処です。

3か月目には、記録が書けるようになってきます。何を見て、どう解釈したかを分けて書けるようになると、自分の仕事が言語化されます。言語化できると、うまくいかなかった日も無駄にならなくなります。

半年を過ぎると、変化が見えるようになります。半年前の記録を読み返して、「そういえばこの子、以前は食卓に来なかった」と気づく。この気づきが、続ける力になります。

実務の世界でよく言われることですが、この仕事は短い単位では成果が見えません。1日単位、1週間単位で結果を求めると、必ず消耗します。半年、1年という単位で見る習慣をつけてください。

私自身、独立して法務の相談を受け始めた頃に同じ失敗をしました。相談を受けたその場で解決しないと自分の力不足だと感じて、消耗したのです。実際には、相談の多くは時間をかけて形が変わっていくもので、その場で全部を解くほうが例外でした。この見方を変えてから、仕事が続くようになりました。

つらくなる場面と、そのときに取れる選択肢

未経験で入った方が、実際につらくなる場面を挙げておきます。先に知っておけば、そこで自分を責めずに済みます。

子どもから強い言葉や態度を向けられたとき。繰り返しになりますが、これはあなた個人への評価ではありません。ただし、続くとこたえます。ここで大切なのは、その日のうちにチームに共有することです。一人で受け止め続ける構造になっているなら、変えるべきは職場の回し方です。

職員同士で支援の方針が食い違うとき。同じ子に対して、待つ方針の職員と、促す方針の職員がいる。これがすり合っていないと、子どもが混乱し、間に立つ職員が消耗します。話し合う場が設けられているかどうかが分かれ目です。

書類の量に追われるとき。記録、自立支援計画、行事の書類、学校とのやりとり。書く量が想定を超えていた、という声はよく聞きます。ここは施設差が大きく、様式が整理されていて入力の仕組みがある施設と、毎回一から手書きする施設では負担がまったく違います。

生活のリズムが崩れるとき。早番と遅番と宿直が入れ替わる勤務は、体に効きます。特に最初の数か月は、慣れるまで眠りが浅くなる方が多いです。

ここで、法律の面から選択肢を書いておきます。

労働条件が契約と違う場合、労働基準法により、労働者は即時に労働契約を解除することができます。つまり、明示された条件と実態が違うなら、我慢して続ける義務はありません。

長時間の時間外労働が続いている場合、時間外労働の上限規制があります。実際の勤務時間を自分で記録しておいてください。タイムカードとは別に、手元のメモでも構いません。後から主張するときの材料になります。

ハラスメントを受けた場合、事業主には防止措置を講じる義務があります。施設内の相談窓口、それが機能しないなら都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。

※つらさの原因が、職場の設計にあるのか、自分の適性にあるのかを分けて考えてください。人員の不足、記録の仕組み、方針の不一致が原因なら、施設を変えれば解決することがあります。自分には向いていないと結論を出す前に、そこを切り分けてほしいのです。

入ってから資格を取るという道筋

未経験で入った方から、必ず出てくる質問があります。働きながら資格は取れますか、というものです。取れます。ただし、どの資格を目指すかで道のりが変わります。

保育士は、国家試験に合格する道があります。受験資格は、大学や短大を卒業していれば学部学科を問わず得られるのが基本で、高卒の場合は児童福祉施設での実務経験が必要になります。児童養護施設は児童福祉施設にあたるため、勤務しながら受験資格を得る道が開けます。ただし必要な年数と時間数の要件があるので、勤務先が要件を満たす形かどうかを事前に確認してください。

試験は筆記の科目と実技で構成され、筆記は科目ごとの合格が一定期間持ち越せます。つまり、一年で全部を揃える必要はありません。働きながら二年から三年かけて科目を潰していくのが、現実的な進め方です。

社会福祉士は、受験資格を得るまでの過程が長くなります。福祉系の大学を出ていない場合、養成施設の課程が必要になり、実習も伴います。仕事と並行するなら通信課程を使い、二年ほどをかける計画になります。

児童指導員の任用要件を、実務経験で満たす道もあります。試験も学費も要りません。児童福祉事業に従事した年数で該当する入口があるためです。ただし、この場合は実務経験証明書を発行してもらう必要があります。どの業務にどれだけ従事したかを施設が証明できる形で記録しているか、入る前に確認してください。退職した後に頼むのは気まずいので、証明書は退職時にもらっておくのが賢いやり方です。

そして、資格取得を支援する制度が施設にあるかどうかも大きい要素です。受験費用の補助、試験前の勤務調整、実習期間の休暇。こうした制度がある施設は、人を育てて長く置く前提で運営しています。求人票の福利厚生欄に書かれていなければ、面接で聞いてください。聞くこと自体が、長く働く意思の表明になります。

前職の経験は、思っているより活きる

未経験といっても、これまでの職歴がゼロになるわけではありません。むしろ、福祉以外の経験が生きる場面は多くあります。

接客や販売の経験。相手の表情から状態を読む力、クレームに動じない姿勢。これは子どもとも保護者とも関係機関とも通じます。

事務の経験。書類の管理、期限の把握、正確な記録。児童養護施設は書類の多い職場です。ここを苦にしない方は重宝されます。

営業や調整の経験。学校、児童相談所、医療機関、地域との調整は日常的に発生します。外部と話すことに抵抗がない人は、それだけで戦力です。

運転の経験。通院の付き添い、行事の送迎、学校への迎え。免許を持っていることは、それだけで採用の理由になります。

子育ての経験。これは求人票にも明記されていることがあります。生活の段取り、食事の用意、体調の変化への気づき。ただし、注意点があります。自分の子育てのやり方をそのまま持ち込むと、うまくいきません。施設の子どもは、それぞれ異なる背景を抱えています。経験は土台として使い、方法は施設の方針に合わせる。この切り分けができる方は、強いです。

実際、求人に書かれている在籍職員の前歴を見ても、保育園、幼稚園、児童館、学童保育、病棟保育、企業内保育、放課後等デイサービスと幅があります。福祉の中でも異なる分野から集まっているということは、経験の種類より、その経験を持ち込み方を調整できるかが問われているということです。

守秘義務は、入職初日から発生します

最後に、法律の面でもうひとつだけ。守秘義務についてです。

児童養護施設で知る情報は、子どもの生育歴、家庭の状況、健康状態、通っている学校、措置に至った経緯など、いずれも極めて機微な個人情報です。これらを外部に漏らしてはならないという義務は、就業規則に書かれているだけでなく、法令上も位置づけられています。

つまり、こういうことです。退職した後も義務は続きます。在職中だけの話ではありません。

具体的に気をつけるべき場面を挙げます。SNSへの投稿です。施設名を出さなくても、地域と職種と具体的なエピソードを組み合わせれば、特定される可能性があります。子どもが写った写真の扱いも同様です。施設の行事で撮影した写真を、個人の端末に残したまま退職する、といったことも避けてください。

家族や友人への話も注意が必要です。「今日こんなことがあって大変だった」という話は、日常の会話として出やすいものです。愚痴を言うなという話ではありません。言う相手と、具体性の度合いを選んでください。職場の中で話す。これが原則です。

※もし外部から取材や問い合わせを受けた場合は、自分で答えず必ず施設の管理者に回してください。善意で答えたことが、結果として子どもの不利益になることがあります。

この分野を長く見てきた立場から

フリーランスと在宅の働き方の市場を20年運営してきた立場から、未経験で新しい分野に入る人について観察してきたことを書きます。

運営者として見てきた限りでは、未経験から入って続いている人には共通点があります。前の職場のやり方を早い段階で手放している、という点です。逆に、前職で評価されていた人ほど、自分のやり方に自信があるため、新しい職場の方針とぶつかります。これは能力ではなく姿勢の問題で、業種を問わず同じ傾向が出ます。

もうひとつ。長く続く人は、自分の得意と苦手を早い段階で職場に伝えています。何でもできるように振る舞う人は、何でも回されて潰れます。「書類の整理は得意です、夜の対応はまだ自信がありません」と言えるほうが、結果的に長く同じ場所にいられます。人数の少ない職場ほど、この効果が大きく出ます。

働き方の入口も、常勤だけではありません。宿直だけ入る形、学習支援として週2回関わる形、非常勤で特定の時間帯だけ入る形。間に仲介業者を挟まずに施設と直接やりとりできるなら、条件も自分で確認できます。仲介の手数料が乗らなければ、施設は同じ予算でより多くの時間を頼めますし、働く側の手取りは厚くなります。金額の大小ではなく手取りの質の話で、手数料0%で直接つながる形が効くのはこういう場面です。

自分の職歴をどう説明すれば伝わるのかを整理したい方は、第三者と話す方法もあります。キャリアの相談を職業にしている人がどう関わるのかは職場・転職・キャリア相談のお仕事にまとめました。その国家資格の中身はキャリアコンサルタントで確認できます。

未経験であることは、応募を止める理由になりません。止める理由になるのは、契約の中身を確かめないまま入ることのほうです。求人票を読み、条件を聞き、書面で確認する。それだけで、入った後の景色は変わります。法律はあなたの味方です。

よくある質問

Q. 資格も経験もなくて児童養護施設に応募できますか?

応募できます。配置基準に数えられる児童指導員や保育士には要件がありますが、補助的な支援員、宿直専従、学習支援、調理や事務といった枠には資格要件がない募集があります。ただし施設ごとに採用の考え方が異なるため、募集要項の応募資格の欄を必ず読んでください。

Q. 求人票の「宿直」と「夜勤」は何が違いますか?

法律上まったく別の制度です。夜勤は通常の労働時間として扱われ、午後10時から午前5時の勤務には25パーセント以上の深夜割増賃金が発生します。宿直は労働基準監督署長の許可を受けた断続的労働で、宿直手当という定額で支払われます。手取りが変わるので契約前に確認してください。

Q. 教員免許や心理学科の卒業は役に立ちますか?

役に立ちます。児童指導員は任用資格で、幼稚園から高等学校までのいずれかの教員免許の保有や、大学で社会福祉学、心理学、教育学、社会学を修めた卒業が要件に含まれます。教職や福祉の職歴がなくても該当する場合があるため、卒業証明書や免許状を用意して応募時に伝えてください。

Q. 未経験で入って、どのくらいで慣れますか?

最初の2週間は名前と生活リズムを覚える期間で、1か月目に声かけが通らない壁が来ます。2か月目から子どもの側の雑談が始まり、3か月目に記録が書けるようになるのが典型的な流れです。半年を過ぎると子どもの変化が見えてきます。1か月で向き不向きを判断しないでください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月27日最終更新:2026年9月17日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金

お金・税金

確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

AI活用

AI活用

職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人

看護師の転職・求人

看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人

薬剤師の転職・求人

薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保育士の転職・求人

保育士の転職・求人

保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人

医療職の転職・求人

医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業

法律・士業

契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方