訪問入浴の1日の流れ|朝から終業までの動き方を追う

中西 直美
中西 直美
訪問入浴の1日の流れ|朝から終業までの動き方を追う

この記事のポイント

  • ✓訪問入浴の1日の流れを
  • ✓出勤から終業まで時間の順に追います
  • ✓朝の積み込みと車両点検

「訪問入浴って、1日どんなふうに動いているんですか」

介護の仕事を考えている方から、このご質問をよくいただきます。施設やデイサービスなら見学で様子が分かりますが、訪問入浴は利用者さんのご自宅が現場です。外から見えるのは、住宅街に停まっている入浴車くらいですよね。

見えない仕事は、不安になりやすいものです。

大丈夫ですよ。この記事では、訪問入浴の1日を、朝の出勤から終業まで時間の順に追っていきます。誰が何を担当しているのか、どこで時間を使っているのか、どんなときに予定が変わるのか。読み終えるころには、自分がその中で働く姿を具体的に思い浮かべられるはずです。

訪問入浴の1日を動かしている、3人のチーム

時間の流れに入る前に、1日の土台になっている「チーム」の話をさせてください。訪問入浴の動き方は、この体制でほとんど決まります。

訪問入浴は、その名のとおり、利用者の自宅を訪問して入浴介助を行うもので、介護保険給付サービスのひとつです。自力での入浴が困難だったり、自宅の浴室を利用できなくなったりした高齢者がおもな利用者になります。 介護をしている家族の負担を軽減すると同時に、利用者の衛生状態を良好に保ち、湯につかることで疲れを癒す効果もあるため、利用者は増加傾向にあり、同時にサービスを行う事業者も増えています。 この仕事に就く看護師は、移動式の浴槽を積んだ車に、介護職員2名とともに乗って、1日に数件を巡ることになります。 出典: kango.benesse-careeros.co.jp

介護保険の訪問入浴介護では、1回の訪問に原則として介護職員2人と看護職員1人、合わせて3人で伺います。要支援の方向けの介護予防訪問入浴介護では、介護職員1人と看護職員1人の2人体制です。

3人の役割

・看護師(准看護師を含む) 入浴前後の健康チェック、入浴してよいかの判断、皮膚の観察や軟膏の塗布など ・介護職員(入浴介助の担当) 衣服の着脱、洗髪や洗身、利用者さんへの声かけ ・介護職員(運転と機材の担当) 入浴車の運転、浴槽やホースの搬入、お湯の温度や量の管理

事業所によっては、運転と機材を担当する職員を「オペレーター」と呼び、介護の資格がなくても応募を受け付けていることがあります。入浴介助を担当する職員は、介護職員初任者研修以上の資格を求められることが多いです。

1日を通して同じメンバーで動く

このチームは、1台の入浴車に乗って、朝から夕方まで同じメンバーで動くのが基本です。つまり、訪問入浴の1日は「3人で1台の車に乗って、何軒ものお宅を順番に回る1日」だと考えると分かりやすいです。

施設で働く場合、1日の中で話す相手はその時々で変わります。訪問入浴では、朝から夕方まで同じ2人と過ごします。移動中の車内も、昼休みも一緒のことが多い。この「狭い単位で動く」感覚は、1日の流れを知るうえでとても大事なので、覚えておいてください。

チームの組み合わせは、毎日固定の事業所もあれば、曜日ごとに入れ替える事業所もあります。看護師はパートで午前だけ、午後から別の看護師に交代するという形も珍しくありません。

出勤から出発まで|8時台は「準備で1日が決まる」時間

ここからは、ある事業所の典型的な1日を時間の順に追っていきます。始業や件数は事業所によって違うので、あくまで目安として読んでください。

8時30分 出勤と朝のミーティング

出勤したら、まず着替えです。訪問入浴では濡れても動きやすい服装が必要なので、事業所で用意されたユニフォームに着替えることが多いです。

着替えが終わると、その日のチームで短いミーティングをします。確認するのは、次のような内容です。

・今日訪問するお宅の件数と順番 ・それぞれの利用者さんの前回の様子(体調、皮膚の状態、入浴中の注意点) ・ご家族からの連絡事項(通院の予定、体調の変化など) ・新しく利用を始める方がいるかどうか

特に、前回の訪問で「血圧が高めだった」「背中に赤みがあった」といった記録は、看護師が中心になって共有します。

8時45分 車両の点検と積み込み

次に、入浴車の点検と積み込みです。訪問入浴の車には、折りたたみ式の浴槽、給水と排水のホース、お湯を沸かすボイラー、排水用のポンプなどが積まれています。

確認するのは、燃料や給湯の設備に問題がないか、ホースに傷や劣化がないか、タオルやシーツ、ボディソープ、シャンプー、保湿剤などの消耗品が件数分そろっているか、血圧計や体温計、パルスオキシメーターが動くかといった点です。

こういう相談がよくあります。「入ったばかりのころ、積み込みを1つ忘れて、現場で入浴ができなくなりそうになった」と。バスタオルや防水シートが足りないだけでも、その場では代わりがききません。多くの事業所ではチェックリストを使っているので、慣れるまでは必ずそれを見ながら積み込めば大丈夫です。

9時00分 出発

準備が終わったら、1件目のお宅へ向けて出発します。移動時間はエリアによって大きく違い、住宅が密集した地域なら10分前後、郊外では30分以上かかることもあります。

運転を担当する職員は、駐車できる場所をあらかじめ確認しておきます。入浴車は普通の乗用車より大きいので、狭い道に面したお宅では、駐車の位置がその日の段取りに影響するからです。

天気で変わる朝の段取り

雨の日は、浴槽やタオルを濡らさずに玄関まで運ぶための工夫が必要です。浴槽にカバーをかける、タオル類は防水の袋に入れておくなど、出発前の積み込みの段階から準備が変わります。雪の多い地域では、駐車場所や玄関先の雪かきから始まる日もあります。

夏は、車内に置いたままの消耗品や機材が高温になりやすく、冬は給水ホースや屋外の蛇口の凍結に気を使います。訪問入浴の朝は、その日の天気予報を見て「今日は何に時間がかかりそうか」を考えるところから始まる、と言ってもいいくらいです。

1件目の訪問|到着から入浴が始まるまで

訪問入浴の1件は、到着から撤収まで45分から60分程度が目安です。そのうち、お湯につかっている時間は10分前後にすぎません。残りの大半は、準備と後片付けです。

到着と挨拶

お宅に着いたら、まずご本人とご家族に挨拶をします。この最初の数十秒は、とても大切です。

利用者さんにとって、他人に裸を見せて入浴するのは、慣れていても緊張することです。明るすぎず、でも暗くない声で、「今日もよろしくお願いします」と伝える。これだけで、場の空気がやわらぎます。

看護師の健康チェック

挨拶をしている間に、看護師が健康チェックを始めます。体温、血圧、脈拍を測り、必要に応じて血液中の酸素の状態も確認します。ご家族から、昨夜の様子や食事、排せつの状況を聞き取るのもこのタイミングです。

測った数値と聞き取った内容から、看護師がその日に入浴してよいかを判断します。判断の基準は、主治医の意見を踏まえて事業所ごとに決められています。

搬入と設置

健康チェックと並行して、介護職員の2人が浴槽を運び込みます。玄関から入浴を行う部屋まで、浴槽を大人2人で運びます。階段のあるお宅や、家具の多いお宅では、どこを通すかを考えながらの作業になります。

部屋に着いたら、床を濡らさないように防水のシートを敷き、浴槽を組み立てます。その後、給水ホースをお宅の水道につなぎ、入浴車のボイラーで温めたお湯を浴槽に送ります。排水用のホースは、浴室やトイレなどの排水できる場所へ伸ばしておきます。

お湯の温度は、利用者さんの好みと体調に合わせて調整します。一般的には38度から41度くらいの範囲で、看護師と相談しながら決めます。

3人が同時に別の作業をしている

この到着から入浴開始までの時間は、3人がそれぞれ別の作業を同時に進めています。看護師は健康チェック、1人は浴槽の設置、もう1人はホースの接続とお湯の準備。誰かの作業が遅れると、全体が止まります。

慣れないうちは、自分の作業に精一杯で、ほかの2人の動きが見えません。でも、数週間から数か月たつと、「今は看護師さんがまだ血圧を測っているから、先にタオルを広げておこう」と、自然に動けるようになります。焦らなくて大丈夫です。

入浴中と入浴後|分担がいちばんはっきりする時間

準備が整い、看護師から入浴の許可が出たら、いよいよ入浴です。

移動と入浴

まず、利用者さんの衣服を脱いでいただきます。寝たきりの方の場合は、ベッドの上でタオルをかけながら、肌をなるべく見せないように着替えを進めます。

次に、ベッドから浴槽へ移ります。2人の介護職員が、頭側と足側に分かれて利用者さんを抱え、声をかけてタイミングを合わせながら浴槽のネットの上に移します。この移動が、訪問入浴の中でもっとも事故に注意が必要な場面です。

お湯につかったら、足元から少しずつかけ湯をして、体を慣らします。そのあと、洗髪、洗顔、洗身と進めます。入浴介助の担当が洗い、運転と機材の担当はお湯の温度や量を見ながら補助に入ります。看護師は、顔色や呼吸の様子、皮膚の状態を見守ります。

最後にシャワーで流し、上がり湯をかけて、また2人で抱えてベッドへ戻します。

入浴後のケア

ベッドに戻ったら、すぐに体を拭いて保温します。看護師はもう一度、体温や血圧を測って入浴後の変化を確認します。必要に応じて、保湿剤や、主治医の指示による軟膏を塗ることもあります。

着替えが終わったら、水分をとっていただきます。入浴は思っている以上に体力を使うので、水分補給は欠かせません。ご本人が「気持ちよかった」と言ってくださるのは、たいていこのタイミングです。

入浴を中止する日もある

健康チェックの結果、看護師が「今日は全身の入浴は控えましょう」と判断する日もあります。その場合は、体をタオルで拭く清拭や、手足だけをお湯につける部分浴に切り替えます。

介護保険の報酬でも、全身入浴が困難で清拭や部分浴に変えた場合は、所定の単位数の90%で算定する仕組みになっています。つまり、訪問入浴は「行けば必ずお風呂に入れる」サービスではなく、その日の体調に合わせて内容を変えるサービスだということです。

入ったばかりの方は、中止の判断に戸惑うことがあります。準備した浴槽を使わずに片付けるのは、もったいなく感じるかもしれません。でも、無理をしないことが、利用者さんを守ることにつながります。

撤収、移動、昼休み|次の家までの「つなぎ」の時間

入浴が終わったら、撤収と次のお宅への移動です。この「つなぎ」の時間の使い方で、1日が楽になるか、時間に追われるかが変わります。

排水と片付け

浴槽のお湯を、排水ポンプで浴室やトイレなどへ流します。ホースを外し、浴槽を拭いてたたみ、防水シートを片付けます。お宅の床や壁が濡れていないか確認し、使ったタオルやシーツは持ち帰り用の袋に入れます。

搬入のときと同じように、浴槽を2人で車まで運びます。お湯を抜いたあとの浴槽とはいえ、階段の上り下りは体力を使います。

記録

片付けと並行して、看護師や入浴介助の担当が記録を書きます。入浴前後の体温や血圧、実施した内容、皮膚の状態、ご家族から聞いたことなどを残します。紙の記録にご家族のサインをもらう事業所もあれば、タブレットやスマートフォンに入力する事業所もあります。

この記録は、ケアマネジャーや次に訪問するチームが読みます。短くても、事実を正確に書くことが大切です。

移動と昼休み

車に戻ったら、次のお宅へ移動します。午前中に2件から3件を回り、12時から13時ごろに昼休みをとる流れがよく見られます。

昼休みの過ごし方は、事業所によって違います。いったん事業所に戻って休む場合もあれば、午後の訪問先の近くで車を停め、車内で休む場合もあります。午前中に使ったタオルを事業所で入れ替えたり、消耗品を補充したりするために戻ることもあります。

こういう相談もよくあります。「昼休みも同じメンバーと一緒で、気が休まらない」と。気持ちはよく分かります。短い時間でも、少し車の外に出て空を見る、飲み物を買いに行くなど、1人になる数分を作るだけで、午後の疲れ方がずいぶん変わりますよ。

午後の訪問と、1日の中で起きる予定の変更

午後は、13時から16時ごろにかけて、さらに2件から3件を回ります。流れは午前と同じですが、午後ならではの変化もあります。

疲れがたまる時間帯

午後の2件目、3件目は、体の疲れが出てくる時間帯です。特に夏場は、浴室まわりの湿気と、屋外の暑さの往復で、思っている以上に体力を消耗します。冬場は逆に、利用者さんのお部屋を暖めておく必要があり、室温の管理に気を使います。

移乗や搬入は、疲れているときほど事故が起きやすくなります。午後になったら、声をかけ合うタイミングを午前より意識して、ゆっくり動くようにしてください。

当日のキャンセルと、急な追加

訪問入浴の予定は、その日のうちに変わることがあります。

・利用者さんの急な発熱や入院で、訪問が中止になる ・ご家族から「今日は通院が長引いたので、時間をずらしてほしい」と連絡が入る ・健康チェックで入浴を見合わせ、清拭に切り替えたため、予定より早く終わる

キャンセルが出たときは、事業所に連絡して、次のお宅の訪問時間を前倒しできるか確認することがあります。反対に、別のチームで欠員が出て、1件を引き受けることもあります。

初回訪問がある日

新しく利用を始める方のお宅に初めて伺う日は、いつもより時間に余裕を持って組まれます。初回は、入浴そのものより前に確認することがたくさんあるからです。

・入浴車をどこに停められるか、近所への配慮が必要か ・浴槽を置く部屋の広さと、玄関からそこまでの通り道 ・給水できる蛇口と、排水できる場所の位置 ・ご本人の体の状態、苦手なこと、入浴で大切にしたいこと ・ご家族がどこまで立ち会うか、貴重品や触れてほしくない物の場所

事前に事業所の担当者が下見をしていても、実際に浴槽を運んでみると想定と違うことがあります。「ベッドの位置を少しずらしていいですか」とご家族に相談しながら、2回目以降の段取りを決めていくのが初回の役割です。

初回の記録には、その家ならではの手順を細かく残します。次に別のチームが伺ったときに、同じ説明をご家族にくり返させないためです。

私が大切にしている考え方

私のカウンセリングには、訪問系の介護の仕事をしている方も相談に来られます。以前、訪問入浴で働き始めて3か月ほどの方が、「体の疲れより、予定がどんどん変わっていくことに焦ってしまう」と話してくれました。

「予定どおりに回らない自分が悪い」と感じてしまっていたんですね。お話を聞いていくと、あるとき一緒に回っていた看護師さんから、「予定が変わるのは、利用者さんの体が毎日違うからだよ。私たちの段取りの問題じゃない」と言われて、少し気持ちが軽くなったそうです。

私はそのとき、焦りの正体は「自分でコントロールできないことを、自分の責任だと感じていること」だとお伝えしました。変えられるのは段取りの確認と声かけだけ。そう線を引けたことで、その方は少しずつ落ち着いて働けるようになりました。

予定が変わるのは、訪問入浴という仕事の性質です。あなたの力不足ではありません。

帰所してから終業まで|翌日のための時間

最後の訪問が終わったら、事業所に戻ります。16時から16時30分ごろに帰所し、17時30分ごろに終業するのが一つの目安です。この1時間ほどの時間も、訪問入浴にとっては大切な仕事です。

浴槽とホースの洗浄と消毒

まず、1日使った浴槽、ホース、ネットなどを洗い、消毒します。利用者さんの肌に直接触れる道具なので、感染症を防ぐためにも丁寧に行います。浴槽は、訪問ごとに現場で拭いていても、帰所後にもう一度しっかり洗うのが一般的です。

タオルやシーツの洗濯

使ったタオルやシーツは、事業所で洗濯するか、業者に出します。翌日の件数分のタオルを乾いた状態でそろえておく必要があるので、洗濯機と乾燥機を回しながら、ほかの作業を進めることになります。

記録の整理と翌日の確認

現場で書いた記録を見直し、事業所のシステムに入力したり、必要な連絡をケアマネジャーに入れたりします。看護師は、皮膚の状態や体調の変化で気になる点があれば、事業所の責任者に報告します。

そのあと、翌日の訪問予定と、利用者さんの注意点を確認します。車の燃料や消耗品の補充を済ませ、翌朝すぐ出発できる状態にして、1日が終わります。

残業が発生しやすい場面

訪問入浴は日勤のみで夜勤がない職場がほとんどですが、次のような日は終業が遅れがちです。

・移動に時間がかかり、最後の訪問が押した日 ・入浴中に体調の変化があり、ご家族や医療機関への連絡が必要になった日 ・新しく利用を始める方の初回訪問があり、説明や記録が多かった日

求人票の「残業月◯時間程度」という記載は、こうした日も含めた平均だと考えて、面接で実際の帰所時間を聞いてみると安心です。

入ったばかりのころの1日と、流れに慣れるまで

ここまで紹介したのは、慣れたチームの1日です。働き始めたばかりのころは、同じ1日でも見え方がずいぶん違います。

最初の数日は「見て覚える」日

多くの事業所では、最初の数日から数週間、先輩のチームに4人目として加わって同行します。この時期に任されるのは、タオルを広げる、ホースを運ぶ、浴槽を拭くといった一部の作業です。入浴介助そのものは、先輩がやるのを横で見ながら、手順を覚えていきます。

1日が終わると、覚えることの多さにぐったりするかもしれません。お宅ごとに浴槽を置く場所も、ホースをつなぐ蛇口も、利用者さんの好みの湯温も違うからです。

大丈夫ですよ。最初から全部を覚えている人はいません。お宅ごとの手順は記録に残っているので、分からなくなったら記録を見返せばいいのです。

慣れてくると、1日の中に余白が生まれる

同行の期間が終わり、3人のチームの1人として動くようになると、最初は時間に追われる感覚が強くなります。自分の作業が遅れると、全体が止まってしまうからです。

それが、1か月、2か月と続けるうちに、段取りが体に入ってきます。お宅に着く前に「この家は階段があるから、先に浴槽を下ろそう」と考えられるようになり、1件あたりの時間に少し余裕が出てきます。すると、利用者さんとの会話を楽しむ余白も生まれます。

体の疲れとの付き合い方

慣れないうちは、腰や腕の筋肉痛が続くことがあります。移乗や搬入のときに、腰だけで持ち上げず、膝を曲げて体全体で支えること。浴槽は1人で無理に持たず、必ず声をかけて2人で運ぶこと。この2つを守るだけで、体への負担はずいぶん変わります。

こういう相談もよくあります。「疲れているのに、周りに迷惑をかけたくなくて言い出せない」と。でも、疲れを隠して無理をすると、移乗のときに踏ん張りがきかず、事故につながります。「今日は少し腰が重いです」と朝のミーティングで伝えるのは、チームを守るための大切な報告です。

施設やデイサービスの入浴介助とは、1日の組み立てがまったく違う

同じ「入浴介助」の仕事でも、働く場所によって1日の流れは大きく変わります。訪問入浴を選ぶかどうか考えるときの参考に、ほかの職場と比べてみましょう。

施設の入浴介助

特別養護老人ホームなどの入所施設では、入浴は週に2回以上行うよう定められており、入浴日には午前も午後も続けて何人もの入浴を介助します。機械浴の設備が整った浴室で行うため、道具の運搬や設置はありません。その代わり、入浴以外の食事や排せつの介助、夜勤など、1日の中でさまざまな仕事を担当します。

デイサービスの入浴介助

デイサービスでは、利用者さんが通ってくる日中に入浴を行います。午前中に入浴を集中させ、午後はレクリエーションや機能訓練にあてる事業所が多いです。こちらも浴室は固定で、送迎の運転や日中の見守りが1日の中心になります。

訪問入浴の1日の特徴

訪問入浴は、1日のほとんどを「移動」と「設置と撤収」と「入浴」の繰り返しで過ごします。入浴以外の介護はほとんど担当しません。その分、1件ごとに利用者さんとじっくり向き合える時間があり、ご家族の感謝の言葉を直接聞く機会も多い仕事です。

介護職員の給与の相場は、働く場所や雇用形態によって違います。平均的な年収や時給の目安をまとめた介護職員の年収・単価相場を見ると、訪問入浴の求人に書かれた給与が相場と比べてどの水準かを確かめられます。

また、訪問入浴で働く看護師は、病院とはまったく違う1日を過ごします。看護師の給与の相場を職場の種類ごとに比べられる看護師の年収・単価相場は、病院から訪問入浴への転職を考えている看護師の方が、収入の変化を見積もるのに役立ちます。

求人票で1日の流れを確かめる箇所

最後に、応募する前に求人票で1日の実態を読み取るポイントを整理します。

始業と終業の時刻

「8時30分から17時30分」のように書かれていても、朝の積み込みや帰所後の洗浄が、その時間内に収まっているかは事業所によって違います。面接で「朝は何時に着けば間に合いますか」「帰所後の片付けは何時ごろ終わりますか」と聞いてみてください。

1日の訪問件数

「1日4件から6件程度」といった件数の記載があれば、1日の忙しさの目安になります。件数が多い事業所は、1件あたりの時間が短く、移動も効率よく組まれている傾向があります。件数が少ない事業所は、移動範囲が広い可能性があります。

担当する役割

運転と機材の担当なのか、入浴介助の担当なのか、両方を日によって交代するのかで、1日の体の使い方が変わります。運転免許の要件(普通免許で運転できる車かどうか、AT限定でもよいか)も確認しておきましょう。

研修と同行の期間

入ったばかりのころは、先輩のチームに加わって同行しながら覚えるのが一般的です。同行の期間がどのくらいあるか、1人立ちの判断を誰がするかも、聞いておきたい点です。

運営者として見てきたこと

在宅で働く人の市場を長く見てきた立場から言えば、訪問入浴のように「チームで同じ車に乗る仕事」を長く続けている人は、技術より先に、チームの中での声のかけ方を身につけている人が多いと感じます。「今から持ち上げます」「お湯、少し熱いかもしれません」。こうした一言を、利用者さんにも仲間にも欠かさない人ほど、疲れがたまりにくく、事故も少ないのです。

仕事の悩みや、この働き方が自分に合っているかという迷いは、1人で抱えなくて大丈夫です。職場選びやキャリアの相談にのる専門職の資格の内容をまとめたキャリアコンサルタントを読むと、どんな相談ができて、どんな支援が受けられるのかが分かります。

訪問入浴の1日は、準備に始まり、準備で終わる1日です。3人で1台の車に乗り、何軒ものお宅で同じ手順を丁寧にくり返す。その中で、「気持ちよかった」という言葉を1日に何度も聞ける仕事でもあります。流れが分かれば、不安は少しずつ具体的な準備に変わっていきます。あなたは一人じゃありません。

よくある質問

Q. 訪問入浴は1日に何件くらい回りますか?

事業所や地域によって違いますが、午前に2件から3件、午後に2件から3件、合わせて1日4件から6件程度が一つの目安です。1件は到着から撤収まで45分から60分ほどかかり、移動時間も加わります。住宅が密集した地域では件数が多く、郊外では移動が長い分だけ件数が少なくなる傾向があります。

Q. 訪問入浴の仕事に夜勤や残業はありますか?

訪問入浴は利用者さんのご自宅に日中に伺うサービスなので、夜勤はほとんどありません。一方、最後の訪問が押した日や、入浴中に体調の変化があって連絡対応が必要になった日、初回訪問で説明や記録が多い日は、帰所後の洗浄や記録を含めて終業が遅れることがあります。面接で実際の帰所時間を聞いておくと安心です。

Q. 入浴を中止するのは誰が判断しますか?

入浴前の体温や血圧、脈拍などの健康チェックの結果と、ご家族からの聞き取りをもとに、同行している看護師が判断します。判断の基準は主治医の意見を踏まえて事業所ごとに決められています。全身の入浴を控える日は、体を拭く清拭や手足だけの部分浴に切り替えて、その日の体調に合った内容で支援します。

Q. 昼休みはどこで過ごすことが多いですか?

事業所に戻って休む場合と、午後の訪問先の近くに車を停めて車内で休む場合があります。タオルや消耗品を補充するために昼に戻る事業所もあります。チームの3人が一緒に過ごすことが多いので、気持ちを切り替えたいときは、少し車の外に出たり飲み物を買いに行ったりして、1人になる時間を数分作ると午後が楽になります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月19日最終更新:2026年9月15日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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