工務店・建設の勤怠管理をどう選ぶか|現場で回る条件から決める


この記事のポイント
- ✓工務店や建設会社の勤怠管理システムを
- ✓機能の多さではなく現場で回るかどうかで選ぶ条件を実務の順番で整理しました
- ✓給与計算との連携までを解説します
建設や工務店の勤怠管理を見直したい。そう思って調べ始めたけれど、出てくるサービスが多すぎて、何を基準に選べばいいのか分からない。こういうご相談、本当に多いんです。
大丈夫ですよ。焦らなくて大丈夫です。建設業の勤怠管理システムを選ぶ基準は、実はそれほど多くありません。決め手になるのはひとつ、事務所に来ない人が確実に打刻できるかどうかです。建設業の勤務は、朝に現場へ直行して夕方に現場から帰る形が普通です。この人たちの労働時間を正確に記録できないシステムは、どんなに機能が豊富でも役に立ちません。
この記事では、工務店や建設会社の勤怠管理を選ぶときの条件を、実際に検討していく順番で並べます。ひとつずつ、自社の状況に当てはめながら読んでみてください。
建設業の勤怠管理が難しい理由を先に整理する
条件を並べる前に、なぜ建設業の勤怠管理が他の業種より難しいのかを整理しておきます。ここが分かると、どの条件を優先すべきかが自然に見えてきます。
まず、働く場所が毎日変わります。事務所に集まってから現場へ向かう日もあれば、自宅から直接現場へ行く日もあります。同じ日に複数の現場を回ることもあります。事務所に据え置いた端末で打刻する方式は、この働き方に合いません。
次に、労働時間が現場の都合で伸び縮みします。天候で作業が中止になる日があり、逆に工期に間に合わせるために長時間になる日があります。予定と実績のずれが大きい業種です。
そして、誰が働いているかが日によって変わります。自社の社員だけでなく、協力会社の職人が現場に入ります。この人たちの労働時間をどこまで自社で管理するのかという線引きが必要になります。
さらに、現場ごとの原価を把握する必要があります。誰がどの現場に何時間入ったかが分からないと、工事ごとの人件費が計算できません。勤怠の記録が、労務管理だけでなく原価管理の資料にもなるのが建設業の特徴です。
最後に、労働時間の上限規制への対応があります。建設業は他業種より遅れて適用が始まった分野で、対応が求められている状況です。
対策できていないと...6か月以下の懲役または30万円以下の罰金。 厚生労働省による企業名公表 →採用減/入札資格の取消の可能性も...建設業界の勤怠管理には、汎用的な勤怠管理システムではなく、 出典: obc.co.jp
労働時間を正確に把握できていない状態は、単に管理が甘いという話では済まなくなっています。記録を残す仕組みを作ることは、会社を守ることでもあります。
比較する前に決めておく3つのこと
サービスを並べる前に、自社の条件を3つ言葉にしてみてください。これをやっておくと、比較する項目が半分になります。
誰の労働時間を管理するか
自社の社員だけか。常用で入ってもらっている職人も含めるか。協力会社の職人まで含めるか。
ここの範囲によって、必要な人数が変わり、費用が変わります。また、協力会社の人まで自社のシステムで打刻させる場合は、その運用を相手に説明して協力してもらう必要があります。導入前に方針を決めておいてください。
現場ごとの時間を集計したいか
労働時間の総量だけ分かればいいのか、それとも誰がどの現場に何時間入ったかまで分けたいのか。
後者を求めるなら、打刻のときに現場を選ぶ仕組みが必要になります。この機能を「工数管理」と呼ぶことがあり、標準では付いていないシステムもあります。現場別の原価を把握したいなら、この点を最初に条件に入れてください。
集計したデータを次にどこへ渡すか
給与計算を自社でやっているのか、外部に委託しているのか。使っている給与ソフトは何か。工事の原価管理に使っているソフトはあるか。
ここが決まっていないと、集計は終わったのに手で入力し直す状態になります。それでは半分しか楽になりません。
条件1|直行直帰でも確実に打刻できるか
ここからが実務の順番です。最初の条件はこれです。建設業の勤怠管理で、他のすべての条件より優先されます。
事務所に据え置いた端末での打刻は、直行直帰の人には使えません。現場から打刻できる方法が必要です。
スマートフォンのアプリで打刻する方法が、建設業では主流です。現場に着いたら打刻し、作業が終わったら打刻する。端末を用意する必要がなく、どの現場からでも使えます。
ただし、この方法には課題があります。現場に行っていないのに打刻できてしまうという問題です。この対処として、位置情報を確認する機能があります。打刻した位置を記録する、あるいは現場から一定の範囲の外では打刻できないようにする。この機能の有無と、どこまで厳密に判定するかを確認してください。
位置情報の扱いには注意が必要です。常時位置を追跡する形にすると、働く人に監視されているという感覚を与えます。打刻の瞬間だけ位置を記録する形にとどめて、その旨をきちんと説明することを勧めます。説明なしに導入すると、不信感につながります。
現場に据え置く端末を使う方法もあります。長期間にわたる大きな現場では、現場事務所にタブレットやカードリーダーを置く形が取れます。ただし短期間で終わる現場が多い工務店では、設置と撤去の手間が見合いません。
通信環境が悪い現場への備え
建設業に固有の課題として、通信環境の問題があります。山間部の現場、地下の作業、建物の内部。電波が届かない場所で打刻できないと、その日の記録が残りません。
確認したいのは、通信できない状態でも打刻を受け付けて、電波が回復したときに送信してくれる仕組みがあるかです。この機能がないと、電波の届く場所まで移動してから打刻することになり、記録が実態とずれます。
打刻漏れへの手当て
どんな方法を選んでも、打刻漏れは起きます。忙しくて忘れる、端末の電池が切れる、作業に集中していて記憶から抜ける。
確認したいのは、漏れを自動で検出して知らせてくれるか、本人が修正を申請できるか、上長が承認する形になっているか、修正の履歴が残るか、の4点です。
最後の履歴が重要です。労働時間の記録は、あとから確認を求められることがあります。誰がいつどう直したかが残らないシステムでは、その場面で説明ができません。
条件2|現場ごとの時間を集計できるか
建設業の勤怠管理が他業種と最も違うのが、この点です。
労働時間の総量だけを記録するシステムでは、工事ごとの人件費が分かりません。誰がどの現場に何時間入ったかを分けて記録できると、工事ごとの原価が把握でき、次の見積もりの精度が上がります。
確認したいのは次の点です。
打刻のときに現場を選べるか。あらかじめ現場を登録しておいて、打刻の画面から選ぶ形になっているか。現場の数が多い会社では、選ぶ操作が面倒だと使われなくなるので、よく使う現場が上に出るなどの工夫があるかも見てください。
1日に複数の現場を回った場合、その内訳を記録できるか。午前は現場A、午後は現場B。この形を1日の勤務の中で表現できるかを確認してください。
作業の内容まで分けられるか。同じ現場でも、基礎工事と内装工事では原価の付け方が違います。ここまで分けたいなら、その設定ができるかを見てください。
集計結果を現場別に出力できるか。工事ごとに何人が何時間入ったかの一覧が出せると、原価管理の資料になります。
ただし、細かく分けるほど入力の手間が増えます。現場を選ぶだけなら1タップですが、作業内容まで選ばせると3タップになります。現場で働く人にとって、この差は小さくありません。どこまで細かく取るかは、得られる情報と入力の手間を天秤にかけて決めてください。最初は粗く始めて、必要になったら細かくするほうが定着します。
条件3|複雑な勤務形態を破綻せずに記録できるか
建設業には、一般的な事務所にない勤務の形があります。デモや無料期間で必ず試してください。
移動時間の扱い。事務所に集合してから現場へ向かう場合の移動時間、現場から現場への移動時間。これらを労働時間に含めるか含めないか、含めるならどう記録するか。会社の方針を決めたうえで、それを設定できるかを確認してください。
早朝や夜間の作業。道路工事や設備の切り替えなど、通常と違う時間帯に作業する日があります。深夜の割増が自動で計算されるかを見てください。
休日の作業と振替休日。工期の都合で休日に作業し、平日に休みを取る運用がある場合、その処理ができるか。
天候による中止。作業が中止になった日の扱いをどうするか。休業として記録するのか、別の扱いにするのか。集計に反映されるかを確認してください。
日をまたぐ作業。深夜から早朝にかけての作業がある場合、日付が変わったところで勤務が切れてしまわないかを確認してください。
自社の社員と、常用の職人で扱いを変える必要があるか。雇用形態によって労働時間の管理の仕方が変わるなら、それぞれに設定できるかを見てください。
これらのうち、自社で発生する形をすべてリストにして、デモの際に「この形を設定できますか」と具体的に聞いてください。機能一覧の言葉だけでは判断できない部分です。
条件4|上限規制への対応が続くか
労働時間の上限に関する規制は、建設業でも対応が求められています。ここへの備えがどこまで組み込まれているかを確認してください。
見ておきたいのは、上限に近づいた人を自動で知らせてくれる機能です。月の時間外労働が一定の水準を超えそうな人、休日出勤が続いている人、連続勤務が長くなっている人。これらを自動で検出して知らせてくれると、管理者が全員分を目で確認する必要がなくなります。
警告の水準を自社で設定できるかも見てください。法令の上限ぎりぎりで警告が出ても遅いので、その手前で知らせる設定にできると実用的です。
法改正への対応も確認事項です。改正のたびに設定を自分で直さなければならないシステムと、提供する側が対応してくれるシステムとでは、長期的な負担が違います。対応に追加の費用がかかるかどうかも聞いておいてください。
有給休暇の管理も、この文脈に入ります。年間で一定日数の取得が求められる仕組みになっているため、取得が進んでいない人を早めに把握できることには意味があります。付与日数の自動計算、取得状況の一覧、有効期限が近い分の通知。この3つがあるかを確認してください。
建設業向けの勤怠管理を扱った解説でも、業界固有の課題と必要性が繰り返し取り上げられています。
今回は、建設業の勤怠管理の課題と必要性、メリットを解説し、おすすめの勤怠管理システム16選もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。 出典: kensetsu-kaikei.com
条件5|シフトと予定の管理まで乗るか
工務店や建設会社では、誰をどの現場に配置するかの調整が日々発生します。この作業がシステム上でできると、連絡の手間が減ります。
確認したいのは次の点です。
現場ごとの必要人数を設定して、配置の予定を組めるか。予定を組んでおくと、実績との差が見えるようになります。
配置の予定を働く人に伝える方法があるか。明日はどの現場か、何時に集合か。これが各自のスマートフォンで見られると、前日の電話連絡が減ります。
予定の変更を伝えられるか。天候や資材の都合で現場が変わることは頻繁にあります。変更をその場で反映して、関係者に通知が届く形になっているかを見てください。
予定と実績のずれを集計できるか。予定より時間がかかった現場、早く終わった現場。この差が見えると、次の見積もりの参考になります。
ただし、シフト管理の機能が標準で含まれているものと、追加のオプションになっているものがあります。見積もりを取るときは、必要な機能を含めた構成で出してもらってください。基本の料金だけを見て比較すると、後で条件が変わります。
シフト管理を標準で持つ勤怠管理システムが、建設業でも使いやすい理由として挙げられることがあります。
シフトは日・週・月のうち、任意の期間単位・任意のパターンを従業員に割り当て可能。作成したシフトはアプリやWebブラウザを通じて従業員に簡単に配信でき、従業員からの修正依頼申請も容易。予定をもとにした勤務実績の差異抽出や想定される概算人件費まで確認できるのもポイント。 正確な勤怠管理を簡単に実現する機能も豊富で、PC・スマホ・アプリでの打刻のほか、ICカードや指紋・静脈認証など様々な打刻が可能。位置情報も取得できるため現場への直行直帰やテレワークにも対応できる。 出典: aspicjapan.org
予定と実績の差を抽出できる点は、現場ごとの原価を追いたい会社にとって効いてくる部分です。予定より時間がかかった現場が可視化されれば、その原因を振り返る材料になります。逆に、この機能を持たないシステムを選ぶと、予定と実績の比較を表計算ソフトで別途やることになります。
口コミと比較記事の読み方
比較記事を読むときの注意点も書いておきます。
まず、掲載されているサービスの数が多い記事ほど、そのほとんどは自社に関係がありません。順位や星の数の平均を見るより、各サービスの説明の中にある具体的な条件を拾ってください。課金の単位、対応している打刻の方法、工数管理とシフト管理が標準かオプションか。この3つは比較の材料になります。
口コミは、自社と規模も業態も近い会社が書いたものを読んでください。従業員が数人の工務店と、数百人を抱える建設会社では、必要なものがまったく違います。
低い評価の口コミは、内容を見てください。「機能が足りない」という不満は、その人が求めていた機能が自社にも必要かどうかで意味が変わります。一方で「通信が不安定な場所で使えない」「操作が重い」「サポートの返信が遅い」といった不満は、規模を問わず影響します。こちらは重く見てください。特に通信に関する不満は、建設業では致命的になり得ます。
導入事例のページに載っているのは、うまくいった例だけです。自社と規模も工事の種類も近い事例を探し、そこに書かれている導入前の課題が自分と同じかを見てください。課題が違えば、同じ結果にはなりません。
条件6|給与計算と原価管理まで手作業が残らないか
勤怠の集計が終わっても、その数字を手で打ち込んでいるなら、作業は半分しか減っていません。
給与計算への引き渡しを確認してください。使っている給与ソフトと直接つながるものがあるか。つながらない場合、表計算ソフトで開ける形式に出力できるか。出力した形式が給与ソフトで読める形になっているか。
外部に給与計算を委託している場合も同じです。先方が受け取りやすい形式で渡せるかを先に確認しておいてください。
原価管理への引き渡しも見ておきましょう。現場ごとの労働時間を集計できても、それを工事の原価に反映する仕組みがなければ、また手で転記することになります。使っている工事管理のソフトと連携できるか、できない場合はデータを出力して取り込めるかを確認してください。
締め日の設定も忘れずに。給与の締め日が月末か15日か、会社によって違います。締め日に合わせて集計期間を設定できるか、締め日後に修正が入ったときの扱いがどうなるかを見てください。
条件7|費用の構造とデータの持ち出し
費用は働く人の数で決まる形が一般的です。人数の数え方を確認してください。在籍者全員で数えるのか、その月に実際に打刻した人だけで数えるのか。季節によって人数が変動する会社では、この違いが大きな差になります。
協力会社の職人を含める場合、その人数も費用に含まれるかを確認してください。含まれるなら、どこまで含めるかの判断が費用に直結します。
初期費用の有無、端末の購入が必要か、サポートに費用がかかるか。工数管理やシフト管理を追加した場合の費用がどうなるか。これらを合わせて見積もりを取ってください。
無料で使えるものもありますが、人数や機能に制限があります。制限の内容を見て、自社の規模で足りるかを判断してください。特に見ておきたいのは、集計したデータを出力できるかどうかです。出力できないと、給与計算に渡せず、あとで別のシステムに移ることもできなくなります。
契約前に必ず確認してほしいのが、データの持ち出しです。持ち出したいのは、勤務記録、現場ごとの集計、有給休暇の付与と取得の記録の3つです。出力形式が表計算ソフトで開ける形なら扱えます。画面を1ページずつ印刷するしかないなら、実質的に持ち出せません。
契約期間の縛り、途中解約の条件、解約後にデータが残る期間。労働時間の記録は一定期間の保存が求められるので、解約時に持ち出せるかは必ず見てください。
導入を進める順番
条件が固まったら、次の順番で進めてください。焦らずに、一段ずつで大丈夫です。
最初にやるのは、今の勤怠管理で何に時間がかかっているかを書き出すことです。日報の回収に何時間、集計に何時間、給与ソフトへの入力に何時間、現場ごとの人件費の計算に何時間。ここを数えておかないと、導入後に何が良くなったのか判断できません。
次に候補を3つに絞ります。5つ以上に広げると比較が終わりません。ここまでの条件のうち、自社で外せないものを3つ選び、それを満たすものだけを残してください。
そのうえで、必ず無料期間かデモで実機を触ります。触るのは決めた人だけでなく、実際に現場で毎日打刻する人を含めてください。ここで使いにくいという声が出たら、その声を優先してください。決めた人が使いやすいと感じても、現場が使わなければ意味がありません。
現場での確認は、実際の現場でやってください。事務所の中では電波が届いても、現場では届かないことがあります。通信環境の確認は、机の上ではできません。
導入を決めたら、切り替えは月の初めに行います。月の途中で切り替えると、その月の集計が2つに分かれて面倒になります。工期の山場を避けることも大事です。忙しい時期に新しい方法へ切り替えると、記録が抜けます。
働く人への説明の時間は必ず取ってください。説明するのは全機能ではなく、出勤の打刻、退勤の打刻、現場の選択、修正の申請。この4つだけで十分です。最初に全部教えると、覚えきれずに全部忘れます。
最初の1か月は、記録が実態と合っているかを確認する期間だと考えてください。日報と併用して、両方が一致することを確かめてから日報をやめる。この二重の期間を惜しむと、あとで不一致が発覚して収拾がつかなくなります。
導入しても解決しないこと
正直にお伝えしておきたいことがあります。勤怠管理システムを入れても、なくならないことがあります。
労働時間そのものは減りません。システムは記録と集計を助けますが、工期を延ばしてくれるわけではありません。上限を超えそうな人が見えるようになるだけで、その人の仕事を誰かに振り分ける判断は人がやります。
人手不足も解決しません。記録が正確になっても、現場に入れる人が増えるわけではありません。
打刻漏れもゼロにはなりません。減らすことはできますが、忙しい現場で人がやることですから、一定の割合で発生します。大事なのはゼロにすることではなく、漏れたときにすぐ気づいて直せる状態を作ることです。
そして、運用のルールがなければ機能しません。打刻を忘れたら誰にどう伝えるか、修正は誰が承認するか、現場が変わったときに誰が登録するか。この取り決めがない会社では、どんなシステムを入れても記録が実態からずれます。導入と同じくらいの時間を、この運用ルールを決めることに使ってください。
働く人にとっての意味も考えてほしい
勤怠管理システムというと、管理する側の道具に見えます。でも、働く人にとっても意味があるんです。
自分が今月何時間働いたかが、いつでも自分のスマートフォンで見られる。残業の時間がきちんと記録されている。有給休暇があと何日残っているかが分かる。これは働く人にとって、安心につながる変化です。
こういうご相談を受けることがあります。自分の労働時間がきちんと記録されているか不安だ、という声です。記録が曖昧なまま働いていると、じわじわと不信感が積もります。客観的な記録が残る仕組みは、働く人を守る仕組みでもあります。
特に建設業では、記録を残す仕組みが整っているかどうかが、人が集まるかどうかにも関わってきます。労働時間が管理されている会社と、そうでない会社。どちらで働きたいかは明らかです。
導入するときは、この点も一緒に伝えてください。監視するためではなく、お互いのために記録を正確にするのだ、と。位置情報を使う場合は特に、何をどこまで記録するのかを丁寧に説明してください。伝え方ひとつで、受け止められ方が変わります。
業務システムを選ぶ視点は業種を超えて共通する
建設業に固有の要件を並べてきましたが、業務システムの選び方そのものには、業種を超えた共通点があります。現場の人が毎日触るものは、機能の多さより操作の浅さで決まる。データを持ち出せないものは長期的に不利になる。導入より運用ルールのほうが成否を分ける。この3点はどの業種でも変わりません。
勤怠管理そのものについては、主要なサービスの設計の違いを勤怠管理システム比較2026|KING OF TIME vs ジョブカン vs マネーフォワードで整理しています。建設業に限らない一般的な比較なので、選定の前提を掴むのに向いています。社員のスキルや保有資格を蓄積して配置に活かす分野については、タレントマネジメントシステム比較2026|カオナビ vs HRBrain vs タレントパレットが参考になります。建設業では保有資格が配置の条件になることが多いので、この観点は相性がよい部分です。現場と事務所のやり取りをオンラインの打ち合わせに切り替えたい場合は、Zoom・Teams・Google Meetを比較|フリーランスの打ち合わせに最適なのは?【2026年版】で、それぞれの向き不向きをまとめています。
システムの選定や導入設計を社内だけで進めるのが難しい場合、外部の専門家に部分的に頼る方法もあります。業務の棚卸しからツール選定、定着までを外部に委託する形の仕事は増えており、AIコンサル・業務活用支援のお仕事にその内容がまとまっています。
導入の効果をどう測るか
最後に、導入したあとの話をしておきます。せっかく入れたのに、良くなったのかどうか分からないまま使い続けている会社が少なくありません。
測る項目は、導入前に数えたものと同じでかまいません。日報の回収と集計にかかっていた時間、給与ソフトへの入力にかかっていた時間、現場ごとの人件費を計算するのにかかっていた時間。これらが導入後にどう変わったかを、3か月後に同じ方法で数えてください。
あわせて見てほしいのが、記録の正確さです。打刻の漏れが何件あったか、修正の申請が何件出たか。導入直後は多く、慣れてくると減っていくのが自然な流れです。3か月経っても漏れが減らないなら、打刻の方法が現場に合っていない可能性があります。その場合は、方法を変えるか、端末を追加するか、運用のルールを見直すかを検討してください。
上限に近づいた人の数も見ておきましょう。導入前は見えていなかったものが、導入後に初めて数字として出てきます。最初は思っていたより多くて驚くかもしれません。でも、見えるようになったこと自体が前進です。見えなければ手の打ちようがありません。
数字が改善しない場合、その原因はシステムではなく運用にあることがほとんどです。誰が何をやるかの取り決めが曖昧なままだと、道具を変えても結果は変わりません。導入して終わりにせず、3か月後に一度振り返る時間を取ってください。
現場を長く見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、ひとつ書き添えておきます。
業務システムの導入がうまくいく事業者とそうでない事業者の差は、システムの性能ではありません。決めた人が現場の操作を自分で試したかどうかです。運営者として多くの事業者を見てきた限り、うまくいかない事例のほとんどは、決めた人と使う人が別で、決めた人が現場に一度も持ち込んでいないケースでした。
もうひとつ。長く続く事業者ほど、道具そのものより、道具を使う人との関係づくりに時間を使っています。なぜこの仕組みに変えるのかを説明し、変えたあとに困っていないかを聞く。この手間をかけた会社では、システムが定着します。説明なしに導入した会社では、現場が独自の抜け道を作って、記録が実態から離れていきます。
道具は運用を助けますが、運用そのものを作りはしません。選定に時間をかけたぶん、同じくらいの時間を、働く人への説明と運用ルールの整理に使ってください。それが、選んだ道具を一番よく働かせる方法です。
よくある質問
Q. 直行直帰の職人でも打刻できますか?
スマートフォンのアプリで打刻する方式なら可能です。現場に着いたら打刻し、作業が終わったら打刻します。現場に行っていないのに打刻できてしまう問題への対処として、打刻した位置を記録する機能や、現場から一定の範囲外では打刻できないようにする機能があります。ただし常時位置を追跡する形にすると監視されている感覚を与えるので、打刻の瞬間だけ記録する形にとどめることを勧めます。
Q. 電波が届かない現場ではどうなりますか?
通信できない状態でも打刻を受け付けて、電波が回復したときにまとめて送信する仕組みを持つものがあります。この機能がないと、電波の届く場所まで移動してから打刻することになり、記録が実態とずれます。山間部や地下、建物内部での作業がある会社は、契約前に必ず確認してください。実際の現場で試すのが確実です。
Q. 現場ごとの人件費を出すことはできますか?
打刻のときに現場を選ぶ仕組みがあれば可能です。工数管理と呼ばれる機能で、標準で付いているものと追加のオプションになっているものがあります。1日に複数の現場を回った場合の内訳を記録できるか、集計結果を現場別に出力できるかも合わせて確認してください。細かく分けるほど入力の手間が増えるので、最初は粗く始めるほうが定着します。
Q. 協力会社の職人も管理の対象にすべきですか?
自社の方針で決めることになります。対象に含めれば労働時間の全体像が見えますが、相手に運用を説明して協力してもらう必要があり、費用も人数分かかります。まずは自社の社員と常用の職人から始めて、必要になったら範囲を広げる進め方でも構いません。範囲は最初に決めておかないと、途中で費用の見込みが変わります。
Q. 導入の切り替えはいつやるのがいいですか?
月の初めで、かつ工期の山場を避けた時期に切り替えてください。月の途中だと集計が2つに分かれ、忙しい時期だと記録が抜けます。切り替えの前には働く人への説明の時間を必ず取ってください。説明するのは出勤の打刻、退勤の打刻、現場の選択、修正の申請の4つだけで十分です。最初の1か月は日報と併用して、両方が一致することを確かめてから日報をやめてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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