廃業届をe-Taxで出す手順|税務署に行かずに済ませる


この記事のポイント
- ✓廃業届はe-Taxで出せます
- ✓使うのは確定申告の画面ではなくe-Taxソフトで
- ✓事前に利用者識別番号が要ります
事業をやめることにした。税務署に行く時間がない、そもそも平日の日中は動けない。廃業届をe-Taxで出せないかと調べ始めた人が、この記事の読者です。
結論から書きます。廃業届はe-Taxで出せます。国税庁は個人事業の開業・廃業等届出書について、パソコンからe-Taxソフトで届出書を作成のうえe-Taxにより提出してくださいと案内しています。窓口に行く必要はありません。
ただし、つまずくところが2つあります。1つは、使う画面が確定申告のときのものとは違うこと。もう1つは、廃業のときに出す書類が1枚ではないことです。この2つを先に理解しておかないと、途中で「自分の使っている画面に廃業届が出てこない」と止まります。
ここでは国税庁が公開している手続の案内をそのまま確認しながら、何を、どの順で、どこに出すのかを整理します。
廃業のときにe-Taxで出せる書類は、最大で4枚ある
まず全体像です。個人事業をやめるときに税務署へ出す書類は、状況によって次のように分かれます。
| 書類 | 出す人 | 提出期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 事業をやめるすべての人 | 廃止の事実があった日の属する年分の所得税の確定申告期限まで | 所得税法第229条 |
| 所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 青色申告の承認を受けていた人 | 取りやめようとする年分の所得税の確定申告期限まで | 所得税法第151条 |
| 事業廃止届出書(消費税) | 課税事業者などで一定の条件に当たる人 | 事由が生じた場合、速やかに | 消費税法第57条第1項第3号 |
| 給与支払事務所等の廃止届出書 | 従業員や専従者に給与を払っていた人 | 廃止の事実があった日から1か月以内 | 所得税法230条 |
この4枚は、どれも別の手続きです。1枚出せばまとめて処理されるわけではありません。そして期限もばらばらです。いちばん短いのが給与支払事務所等の廃止届出書の1か月以内、いちばん長いのが本体の廃業届で確定申告期限までです。
ここで多くの解説記事と食い違う点が1つあります。ネット上では廃業届の期限を「廃業日から1か月以内」と書いているものが目立ちますが、国税庁が公開している現在の案内はこうです。
[概要]新たに事業を開始したとき、事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止したとき又は事業を廃止したときの手続です。 [提出時期]事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください。 [作成・提出方法]パソコンからe-Taxソフトで届出書を作成の上、e-Taxにより提出してください。 出典: nta.go.jp
1か月ではなく、その年分の所得税の確定申告期限までです。ただし、期限に余裕があることと、後回しにしてよいことは別です。給与を払っていた人は1か月以内の別の書類を抱えていますし、後述する都道府県への申告はもっと短い期限で動いています。まとめて片付けるほうが結果的に早く終わります。
使うのは「e-Taxソフト」で、確定申告のときの画面ではない
ここがいちばん多いつまずきです。毎年の確定申告を確定申告書等作成コーナーやスマートフォンで済ませている人は、同じ場所に廃業届があると思って探します。しかし国税庁の案内が指しているのは、パソコンにインストールして使うe-Taxソフトです。
4枚のうち3枚について、国税庁の案内はこう書いています。
・個人事業の開業・廃業等届出書: パソコンからe-Taxソフトで届出書を作成の上、e-Taxにより提出してください ・所得税の青色申告の取りやめ届出書: パソコンからe-Taxソフトで届出書を作成の上、e-Taxにより提出してください ・事業廃止届出書(消費税): パソコンからe-Taxソフトをダウンロードし、届出書を作成・提出してください
いずれもe-Taxソフトを名指ししています。確定申告のときに使う画面とは別の道具だと理解してから始めてください。毎年スマートフォンで確定申告をしている人にとっては、ここで初めてパソコンを開くことになります。
正直なところ、この二本立ては分かりにくい作りです。確定申告は誰もが年に1度通る道なので入口が整備されていますが、届出書は一生に数回しか出さないので、専用のソフトに寄せられている。慣れの問題ではなく設計の問題なので、初めて触る人が迷うのは当然です。
なお、いずれの書類も書面で出す道は残っています。国税庁は各手続の案内に、書面で届出書を作成のうえ持参または送付により提出することもできますと添えています。パソコンの準備に時間がかかるなら、紙で郵送するほうが早く終わる人もいます。
事前に必要なのは、利用者識別番号
e-Taxを使うには、利用者識別番号という番号が要ります。国税庁は各手続の案内に、e-Taxを初めて利用する場合は利用者識別番号を取得する必要があると書いています。
この番号を取るための手続きも、独立した1つの手続きとして案内されています。
[概要]e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用して申告、申請・届出及び納税等を行おうとする場合の手続です。 [提出時期]e-Tax(国税電子申告・納税システム)で申告、申請・届出及び納税等を行おうとする前 ※通知書等を送付する場合がありますので、十分余裕をもって提出してください。 出典: nta.go.jp
注意したいのが、この注記です。届出の内容を変更する人や書面で提出する人には、後日、税務署から郵送で通知書が送られると書かれています。つまり、やり方によっては郵便が届くのを待つ時間が発生します。「今日中にe-Taxで廃業届を出そう」と思い立った人が、その日のうちに完了できるとは限りません。
すでに確定申告をe-Taxで済ませたことがある人なら、利用者識別番号はもう持っています。過去の申告のときに使った番号を探してください。番号が分からなくなった場合の再取得や変更の手続きも、同じ案内の中で変更等届出として整理されています。
提出先は、個人の場合は申告所得税の納税地を所轄する税務署長です。廃業届そのものの提出先も、納税地を所轄する税務署長です。ここは一致しているので、別の税務署を調べる必要はありません。
廃業届の提出先は、事務所の場所ではなく納税地
e-Taxで出す場合でも、書類が届く先は決まっています。廃業届の提出先について、国税庁の案内はこう整理しています。
納税地を所轄する税務署長。ただし、事務所や事業所を移転する場合で、その移転前の事務所や事業所の所在地を納税地としていたときには、移転前の所在地を所轄する税務署長。
そして、同じページにはもう1つ便利な決まりが書かれています。新設、増設、移転、廃止に係る事務所や事業所の所在地が納税地と異なる場合であっても、納税地を所轄する税務署長以外の税務署長への提出は不要とされています。
自宅が納税地で、借りていた事務所が別の市にあった。この場合でも、出すのは自宅の管轄税務署1か所だけです。事務所の管轄税務署に同じ書類を送る必要はありません。e-Taxなら送信先は自動的に決まるので、この点で迷うことはありませんが、紙と併用する場合は覚えておいてください。
e-Taxで出すと減るもの、増えるもの
紙とe-Taxで何が変わるのかを並べます。
減るものの1つ目が、本人確認書類です。国税庁の案内には、e-Taxにより提出される場合は本人確認書類の提示または写しの添付は不要と書かれています。書面でマイナンバーを記載した申請書等を提出する際には、その都度、本人確認書類の提示または写しの添付が必要とされているので、ここはe-Taxの明確な利点です。廃業のときは複数の書類を出すので、そのたびに免許証をコピーする手間がなくなります。
2つ目が、移動時間です。税務署の開庁時間は8時30分から17時までで、土日祝は受付を行っていません。平日の日中に動けない人にとっては、これだけで大きな制約になります。e-Taxの利用可能時間は国税庁ではなくe-Taxのサイトで公開されていて、時期によって変わります。申告期の繁忙期は長く、それ以外は短くなる運用なので、出す前に確認してください。
3つ目が、控えの管理です。紙で出すと控えに受付印をもらう必要があり、郵送なら返信用封筒を同封することになります。e-Taxなら送信した記録がデータとして残るので、紙の保管場所を考えずに済みます。
逆に増えるのが、最初の準備です。利用者識別番号の取得、ソフトの導入、電子証明書の用意。過去にe-Taxを使ったことがない人にとっては、ここが最大の山になります。廃業届1枚のためにこれを全部やるなら、紙で郵送したほうが早いという判断も十分に成り立ちます。
判断の目安はこうです。今後も確定申告をe-Taxで続けるなら、この機会に環境を整える価値があります。事業をやめて給与所得だけになる予定なら、紙で出すほうが合理的です。
画面を開く前に、手元にそろえておく情報
e-Taxでも紙でも、書く内容は同じです。先にそろえておくと、途中で止まりません。
・納税地(住所地、居所地、事業所等のうち該当するもの)と、納税地以外に住所地や事業所等がある場合はその場所 ・氏名、生年月日、個人番号(マイナンバー12桁)、職業、屋号 ・廃業日 ・所得の種類(不動産所得、山林所得、事業(農業)所得のどれか)と、廃業するのが事業の全部か一部か ・事業の概要(業態が分かる書き方にする) ・届出日現在の給与等の支払の状況
このうち迷いやすいのが「全部」か「一部」かです。国税庁の書き方には、事業所得を生ずべき事業を2以上行っている人がその全部を廃止する場合は「全部」を、一部を廃止する場合は「一部」を選び、「一部」の場合は廃止する事業を括弧内に簡記すると書かれています。
もう1つ、給与を払っていた人には忘れやすい欄があります。同じ書き方の注記はこうです。
(注) 給与等の支払事務を行う事務所等を廃止した場合には、「その他参考事項」欄に、給与等の支払事務を引き継いだ先の事務所等の所在地を記載します。
引き継ぐ先がないまま完全にやめるなら、この欄は空欄で構いません。法人を作ってそちらへ移すなら、会社の所在地を書きます。書いておくと、個人の源泉徴収の口座が閉じて会社の口座が開く流れが税務署に伝わり、後からの問い合わせが減ります。
給与等の支払の状況の欄は、届出日現在の状況を書きます。専従者と使用人と計の3行で、それぞれ従事員数、給与の定め方(日給や月給などの区分)、税額の有無を書きます。税額の有無は、各人の給与額と扶養親族等の状況から見て納めるべき税額があるかどうかで判断し、その区分の全員に納付すべき税額がないと認められる場合は「無」にします。
同時に出す3枚を、それぞれ確認する
本体の廃業届だけでは終わらないケースがほとんどです。残り3枚を順に見ます。
所得税の青色申告の取りやめ届出書
青色申告の承認を受けていた人が出します。国税庁の案内はこうです。
[概要]青色申告の承認を受けていた方が、青色申告書による申告を取りやめようとする場合の手続です。 [提出時期]青色申告を取りやめようとする年分の所得税の確定申告期限までに提出してください。 [手続根拠]所得税法第151条 出典: nta.go.jp
出す前に一度立ち止まってください。個人にほかの所得が残るなら、取りやめると損をすることがあります。事業はやめるがアパートの家賃収入は続く、という人が典型です。青色申告特別控除や赤字の繰り越しが使えなくなるので、不動産所得が残るなら取りやめないほうが有利になる場合があります。
一般にはこう整理されますが、どちらが有利かは金額と事情で変わります。迷ったら出す前に税務署か税理士に確認してください。出してしまってから元に戻すのは手間がかかります。
事業廃止届出書(消費税)
消費税の課税事業者だった人が出します。国税庁の案内では、提出時期は「事由が生じた場合、速やかに」、手続根拠は消費税法第57条第1項第3号と消費税法施行規則第26条第1項第4号です。
ただし、全員が出すわけではありません。廃業届の書き方には、この届出書を出す人の範囲が限定して書かれています。
事業を廃止する方で青色申告の取りやめをされる方は、「青色申告の取りやめ届出書」も提出してください。 また、適格請求書発行事業者の方、消費税の課税事業者の方及び課税事業者を選択されている方で、廃業する事業のほかに課税売上げに当たる所得(不動産所得等)のない方は、「事業廃止届出書」も提出してください。なお、適格請求書発行事業者の方が「事業廃止届出書」を提出した場合、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」の提出は不要です。 出典: nta.go.jp
読み取るべき点が2つあります。1つ目は、廃業する事業のほかに課税売上に当たる所得が残る人は出さないということ。事業用の建物を人に貸すようなケースでは、その賃料が課税売上になるので、消費税の関係は続きます。
2つ目が、インボイスの登録をしている人への扱いです。適格請求書発行事業者が事業廃止届出書を出した場合、登録の取消しを求める旨の届出書は不要と明記されています。インボイスの登録を別途取り消す作業が要らないということで、これは知らないと1枚余計に出すことになります。
給与支払事務所等の廃止届出書
従業員や専従者に給与を払っていた人が出します。使う様式は、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書です。国税庁の案内では、提出時期は開設、移転または廃止の事実があった日から1か月以内、提出先は給与支払事務所等の所在地の所轄税務署です。根拠は所得税法230条と所得税法施行規則第99条です。
4枚の中でこれだけ期限が1か月と短く、しかも提出先が納税地ではなく事務所の所在地です。自宅で1人で仕事をしていた人なら同じ税務署になりますが、事務所を借りていた人は提出先が違う可能性があります。ここは確認してから出してください。
出したあとに残る作業
廃業届を出しても、その年の分の申告は残ります。廃業した年の1月1日から廃業日までの所得について、翌年に確定申告をします。事業をやめたから申告も不要、ということにはなりません。
帳簿は廃業日で締めます。ここで迷いやすいのが、廃業後に入金された売掛金と、廃業後に払う経費の扱いです。一般には、廃業後に生じた費用でも事業に関連するものは一定の範囲で必要経費にできると整理されますが、範囲は事情によって変わります。金額が大きいなら税務署か税理士に確認してください。
都道府県への申告も別に走ります。個人事業税は都道府県の税金なので、税務署の手続きとは切り離されています。東京都の場合、都内で行っていた事業を廃止したときは、廃止の日から10日以内に事業開始(廃止)等申告書を所管の都税事務所等へ提出する必要があると案内されています。税務署の「確定申告期限まで」とは比べものにならない短さです。
さらに、年の途中でやめた場合はもう1つあります。東京都主税局の案内によれば、年の中途で事業を廃止した場合は、所得税の確定申告や住民税の申告とは別に、廃止の日から1か月以内(死亡による廃止の場合は4か月以内)に個人の事業税の申告をしなければなりません。根拠は地方税法第72条の55と第72条の55の2です。
個人事業税には、知っておくと計算が変わる点があります。事業主控除の額は年間290万円ですが、営業期間が1年未満の場合は月割になります。東京都主税局が公開している月割額はこうです。
② 事業主控除 控除額は、年間290万円(営業期間が1年未満の場合は月割額)です。 3ヶ月 725,000/6ヶ月 1,450,000/9ヶ月 2,175,000/12ヶ月 2,900,000 出典: tax.metro.tokyo.lg.jp
1か月あたり242,000円ずつ動く計算です。廃業の月を選べる余地があるなら、この点も計算に入れておくと見通しが立ちます。期限や様式は都道府県ごとに違うので、東京都以外の人はその都道府県の公式サイトで確認してください。
健康保険と年金も動きます。国民健康保険料は前年の所得に基づいて決まるので、廃業した直後は収入がないのに保険料の請求が続きます。会社に勤めるなら健康保険に切り替わりますし、家族の扶養に入る道もあります。市区町村の窓口で、廃業の事実を伝えて相談してください。減免の仕組みを持っている自治体もあります。
紙で出す道も残っているので、比べてから決める
e-Taxの準備に時間がかかりそうなら、紙で出す道を選んでも不利にはなりません。国税庁は4枚のいずれについても、書面で届出書を作成のうえ持参または送付により提出することもできますと案内しています。
紙で出す方法は3つあります。
| 出し方 | 使える時間 | 控えの残り方 | 本人確認書類 |
|---|---|---|---|
| 税務署の窓口 | 8時30分から17時まで | 控えに受付印をもらえる | 提示または写しの添付が必要 |
| 郵送 | いつでも投函できる | 返信用封筒を同封すれば受付印付きの控えが戻る | 写しの添付が必要 |
| 時間外収受箱 | 閉庁日でも投函できる | 返信用封筒を入れておけば後日戻る | 写しの添付が必要 |
国税庁の案内には、税務署の閉庁日(土・日曜日・祝日等)は受付を行っていないが、送付または税務署の時間外収受箱に投函することにより提出することができると書かれています。平日に動けない人でも、紙で出す道は閉じていません。
控えは取っておいてください。廃業の事実を後から示す場面が、意外なところで出てきます。国民健康保険料の減免を申請するとき、失業に関する給付の相談をするとき、金融機関で個人の借入を整理するとき。そのたびに税務署へ問い合わせずに済みます。
様式のPDFは国税庁のサイトから取得できます。案内には、PDFファイルは適宜の作業場所にダウンロードしたうえで入力や印刷ができること、ダウンロードしないと入力内容が保存できない場合があることが注記されています。ブラウザ上で直接開いて書き込むと、入力した内容が消えることがあるということです。先に手元に保存してから開いてください。
廃業日をいつにするかで、後の計算が変わる
廃業届を作るとき、いちばん最後まで決まらないのが廃業日です。実態に合わせるのが原則ですが、月の区切りで選べる余地がある場合は、その先の計算にも目を向けておくと差が出ます。
1つ目の影響が、個人事業税の事業主控除です。前の節で見たとおり、営業期間が1年未満なら月割になります。1か月で242,000円ずつ動くので、3月末に畳むか4月末に畳むかで控除できる額が変わります。
2つ目が、所得税と住民税です。事業所得が減れば、その年の所得税と翌年の住民税の両方が下がります。逆に、廃業を年末まで引っ張って売上を計上すると、その分だけ税負担が乗ります。
3つ目が、売上と経費の切れ目です。廃業日は帳簿を締める日でもあります。その日を境に、売上をどちらの年に計上するか、経費をどこまで入れるかが決まります。取引先への請求のタイミングとずれていると、あとで整理に手間がかかります。請求のサイクルの区切りに合わせるのが実務では楽です。
4つ目が、健康保険と年金の切り替え日です。会社に就職するなら、その入社日と廃業日の間が空きすぎないほうが手続きが単純になります。空白期間があると、その間だけ国民健康保険と国民年金に入る必要が出ます。
どれを優先するかは人によって違います。ただ、廃業日を決めてから届出書を作るほうが、作り直しがなくなります。
やめずに「動かさない」という選択もある
ここは検索している人の一定数に当てはまる話です。廃業届を出すかどうかを迷っている人の中には、完全にやめるのではなく、仕事を減らして続けたい人が混ざっています。
個人事業には、法人でいう休眠のような正式な手続きがありません。売上がゼロの年があっても、事業を続けている限り廃業届は出しません。逆に言えば、いったん廃業届を出してから再開する場合は、また開業届を出すことになります。
判断の分かれ目は、事業所得が今後も生じる見込みがあるかどうかです。会社員に戻って副業もしないなら、廃業届を出します。仕事量を絞って続けるなら、出しません。法人を作って事業をそちらへ移すなら、出します。
ここで気をつけたいのが、青色申告の扱いです。青色申告の承認は、2年続けて期限内に申告をしないと取り消される扱いがあります。売上がないからと申告を飛ばしていると、再開したときに青色申告が使えなくなっていることがあります。純損失を繰り越している場合も、繰り越しを続けるには申告が要ります。動かさずに置いておくつもりなら、申告だけは続けるのが安全です。
なお、この判断は個別の事情で結論が変わります。事業所得が残るかどうかの見立てが微妙なら、廃業届を出す前に税務署に電話で確認してください。税務署は手続きの要否について無料で答えてくれます。
廃業のあとに何をするかで、手続きの意味が変わる
ここからは、在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた運営者の視点で、届出の手前と後ろにある話に触れます。
運営者として見てきた限りでは、廃業届を出す人の多くは事業そのものをやめたわけではありません。会社員に戻る人、法人を作って事業を移す人、そして仕事の量を減らして続ける人。3つ目が意外に多く、この場合は廃業届を出すかどうかから考え直す余地があります。事業所得が残るなら、廃業届は出しません。
もう1つ、長く続けている人に共通しているのが、報酬の額面ではなく手取りの厚みで仕事を選んでいる点です。仲介が何割か抜く仕組みを通していると、同じ仕事量でも手元に残る額が変わります。中間マージンが乗らない直接取引なら、発注する側は同じ予算でより多く頼め、受ける側は手数料0%で手取りが厚くなる。廃業を考えるほど収入が細ったとき、単価が低いのか、抜かれている分が大きいのかを切り分けてみる価値があります。
自分の単価が市場のどのあたりにいるかを知ると、この切り分けができます。開発の仕事ならソフトウェア作成者の年収・単価相場に全国平均と都道府県別の水準が並んでいます。文章や編集の仕事が主なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場のほうです。地域差も見えるので、住む場所を変えるかどうかの材料にもなります。
仕事の内容を変えて続ける道を考えるなら、企業側の予算が付きやすい領域から見るのが早いです。AIコンサル・業務活用支援のお仕事は生成AIの導入設計から社内研修までを引き受ける仕事で、業務の経験がそのまま値段になりやすい分野です。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事も、技術と事業の両方が分かる人が少ないため単価が落ちにくい傾向があります。受託開発を軸にするならアプリケーション開発のお仕事が近い領域です。
会社員に戻る場合でも、個人で事業をやっていた期間の経験は残ります。書類仕事の型を客観的に示したいならビジネス文書検定が実務に直結しますし、技術側の基礎を証明したいならCCNA(シスコ技術者認定)のような資格を面接の材料にする人もいます。
税金の考え方を一度整理しておくのも、廃業の前後では役に立ちます。何が経費になり、何が控除になるのかを洗い直すなら確定申告 メリットを最大化!フリーランスが知るべき節税と還付のコツが土台になります。廃業後の生活費の置き場所を考えるなら【20年で2倍?】毎月10万円の積立投資で資産形成する最強のポートフォリオのような長期の視点も要りますし、職種ごとの収入の幅を確かめたいならUI/UXデザイナーの平均年収は?職種別の収入格差を公開【2026年版】のようなデータが参考になります。
手続きそのものは、環境さえ整っていれば長くかかりません。時間を取られるのは、青色申告を取りやめるかどうか、消費税の扱いをどうするか、廃業日をいつにするかという判断のほうです。この3つを先に決めてから画面を開くと、迷わずに終わります。
なお、この記事の内容は公開時点の公式の記載に基づいています。e-Taxの画面や操作の手順は更新されることがあるので、実際の操作はe-Taxの案内に従ってください。税金の個別の判断は金額や事情で結論が変わるため、迷う部分は税務署か税理士に確認するのが確実です。
よくある質問
Q. 廃業届はe-Taxで出せますか?
出せます。国税庁は個人事業の開業・廃業等届出書について、パソコンからe-Taxソフトで届出書を作成のうえe-Taxにより提出してくださいと案内しています。ただし使うのは確定申告のときの画面ではなくe-Taxソフトです。初めて利用する場合は、先に利用者識別番号を取得する必要があります。
Q. 廃業届の提出期限はいつまでですか?
国税庁の現在の案内では、事業の廃止等の事実があった日の属する年分の所得税の確定申告期限までとされています。よく見かける「1か月以内」ではありません。ただし給与支払事務所等の廃止届出書は1か月以内、東京都の事業開始(廃止)等申告書は10日以内と別の期限なので、まとめて早めに片付けるほうが安全です。
Q. 廃業のときにe-Taxで出す書類は何枚ありますか?
最大で4枚です。個人事業の開業・廃業等届出書、所得税の青色申告の取りやめ届出書、消費税の事業廃止届出書、給与支払事務所等の廃止届出書です。全員が4枚とも出すわけではなく、青色申告をしていたか、消費税の課税事業者か、給与を払っていたかで必要な枚数が決まります。
Q. e-Taxなら本人確認書類は要りませんか?
要りません。国税庁は、e-Taxにより提出される場合は本人確認書類の提示または写しの添付は不要と案内しています。書面でマイナンバーを記載した申請書等を出す場合は、その都度、本人確認書類の提示または写しの添付が必要になります。複数の書類を出す廃業のときほど、この差が効いてきます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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