記事外注のNDA|未公開の事業情報を渡す際の契約範囲 2026


この記事のポイント
- ✓記事外注でNDAを結ぶ範囲や必須条項
- ✓失敗しない契約の流れを解説します
- ✓未公開の事業情報や取材内容を安全に外部ライターへ渡すための実務ポイントをまとめました
「記事外注をお願いしたいけれど、社内の未公開情報をどこまで渡していいのか分からない」。こういうご相談、本当に多いんです。新商品の情報、これから発表する経営方針、顧客データの一部。ライターさんに渡さないと良い記事は書けないけれど、外に漏れたらどうしよう、という不安。大丈夫です。NDA、つまり秘密保持契約をきちんと結べば、その不安はかなりの部分が解消できます。今日は、記事外注でNDAをどう扱えばいいのか、契約範囲の決め方から費用相場まで、実務的な話を全部お伝えします。
記事外注でNDAが必要になる場面と市場の実態
まず知っておいていただきたいのは、記事外注そのものが急速に一般化している、という背景です。オウンドメディア運用やSEO記事制作を外部のフリーランスライターに委託する企業は増え続けていて、中小企業庁の調査でも業務委託・外部人材活用は継続的なテーマとして取り上げられています。
この記事では雛形(ひな形)についてもご紹介しましたが、実際には、秘密保持契約書の作成にあたっては、「具体的な取引内容」や「開示する情報の内容」、「秘密情報漏洩リスクの程度」に応じて、個別の事情を踏まえた内容で作成することが非常に重要です。
この記事では雛形(ひな形)についてもご紹介しましたが、実際には、秘密保持契約書の作成にあたっては、「具体的な取引内容」や「開示する情報の内容」、「秘密情報漏洩リスクの程度」に応じて、個別の事情を踏まえた内容で作成することが非常に重要です。 出典: kigyobengo.com
記事外注でNDAが必要になる典型的な場面は、次のようなケースです。
未公開の新商品・新サービスの情報を取材ベースで書いてもらうとき。決算前の業績や資金調達の話を織り込んだプレスリリース原稿を依頼するとき。顧客インタビュー記事で個人情報や取引先の実名が絡むとき。競合分析や社内データをもとにした比較記事を書いてもらうとき。
こうした場面では、口約束や発注メールのやり取りだけで済ませてしまうと、後で「言った・言わない」のトラブルになりやすいです。特に、記事外注は単発の短い付き合いになりがちなので、契約書をきちんと結ぶ習慣がない発注者様も少なくありません。ですが、情報が漏れてから対応するのでは遅いのです。事前に、渡す情報の範囲と守ってもらうべきことを明文化しておくことが、結果的に双方の安心につながります。
NDA(秘密保持契約)とは何か。記事外注特有の視点で整理する
NDAは、業務を進めるうえで開示する情報について、外部に漏らさない・目的外に使わないことを約束してもらう契約です。記事外注の文脈で言えば、「取材で聞いた話」「共有した資料」「見せた社内システムの画面」など、記事を書くために渡した情報すべてが対象になり得ます。
ここで大事なのは、NDAは万能の防御壁ではない、ということです。NDAを結んだからといって情報漏洩が物理的に不可能になるわけではありません。あくまで「約束を破ったら責任を問える」という法的な土台を作るものです。だからこそ、契約の中身、つまり「何を秘密情報とするか」「どこまでの範囲で使っていいか」を具体的に詰めておく必要があります。
このような外注先、業務委託先からの情報漏洩を防ぐためのもっとも基本的な対策が、「秘密保持契約書(機密保持契約書やNDAとも呼ばれる)の締結」です。
このような外注先、業務委託先からの情報漏洩を防ぐためのもっとも基本的な対策が、「秘密保持契約書(機密保持契約書やNDAとも呼ばれる)の締結」です。 出典: kigyobengo.com
記事外注のNDAで特に意識したいのは、次の3点です。
第一に、記事の対象となる取材内容自体は秘密情報にならない、という誤解に注意することです。公開を前提とした記事の内容そのものは、公開後は当然オープンになります。NDAで守るべきは、記事に「書かない」情報、たとえば背景説明として口頭で伝えた社内事情や、参考として見せた未公開資料の中身です。
第二に、記事外注では取材メモや録音データの扱いも契約範囲に含めるべきだという点です。ライターさんが取材時に録音した音声、書き起こしたテキスト、下書き段階の原稿。これらすべてに秘密保持義務がかかるように条項を作っておくと安心です。
第三に、記事公開後の情報の扱いです。公開された記事の内容自体は公知情報になりますが、公開前に渡した参考資料やボツになった取材内容は引き続き秘密情報として扱われるべきです。この線引きを契約書に明記しておかないと、後になって「もう公開されたから関係ないでしょう」という認識のズレが起きます。
秘密保持契約で定めるべき必須条項
記事外注のNDAで最低限入れておきたい条項を整理します。ひな形をそのまま使うのではなく、記事制作という業務の特性に合わせて調整することが重要です。
秘密情報の定義
「秘密情報」とは何を指すのか、範囲を明確にします。記事外注の場合、取材で口頭説明した内容、共有した資料(PDF・スプレッドシート・社内システムのスクリーンショットなど)、取材の録音・録画データ、下書き原稿、これらすべてを対象に含めるのが基本です。「本契約に基づき開示者が受託者に開示した一切の情報」という包括的な定義にしておくと、後から「これは対象外だった」と主張されるリスクを減らせます。
秘密情報の管理方法
受け取った情報をどう扱うべきかを定めます。パソコンやクラウドストレージでの保管方法、パスワード管理、第三者への再委託の可否などです。記事外注では、ライターさんがさらに校正者やデザイナーに情報を渡すケースもあるため、再委託を認める場合は「再委託先にも同等の秘密保持義務を課すこと」という条項を入れておくべきです。
秘密保持義務の期間
契約終了後も一定期間、秘密保持義務が続くように定めます。記事外注では、契約終了後1年から3年程度を設定するケースが多く見られます。未公開の経営情報や新商品情報を扱う場合は、公開時期が確定するまでの期間を考慮して、やや長めに設定しておくと安心です。
秘密保持義務の例外
すべての情報を無制限に秘密扱いにすると、業務が回らなくなります。すでに公知の情報、独自に保有していた情報、法令に基づく開示が求められる情報などは例外として明記するのが一般的です。ここを曖昧にすると、後々「これも秘密情報だったのか」という認識のズレでトラブルになりやすいので、具体的に列挙しておくことをおすすめします。
違反時の対応
秘密保持義務に違反した場合、どのような対応を取るかを定めます。損害賠償請求ができること、契約を即時解除できることなどを明記します。ただし、記事外注のような比較的小規模な業務委託では、実際に損害賠償まで発展するケースは稀です。むしろ、この条項があること自体が抑止力として機能する側面が大きいと考えてください。
しかし、秘密保持契約書が締結されていても、内容が不適切であったり、雛形を使いまわしたため実態にあったものになっていないというケースがよくあります。これでは、情報漏洩事件が発生したときの損害賠償請求にも問題が生じます。
しかし、秘密保持契約書が締結されていても、内容が不適切であったり、雛形を使いまわしたため実態にあったものになっていないというケースがよくあります。これでは、情報漏洩事件が発生したときの損害賠償請求にも問題が生じます。 出典: kigyobengo.com
記事外注のNDA、実務での結び方と流れ
ここからは、実際にNDAをどう結ぶのか、手順を追って説明します。
ステップ1: 開示する情報の範囲を先に社内で決める
ライターさんに契約書を見せる前に、まず社内で「どこまでの情報を渡すか」を確認しておきます。取材で話す内容、見せる資料、渡さない情報。この線引きを先に決めておくと、契約書の「秘密情報の定義」条項がぶれません。
ステップ2: 契約書のひな形を用意する
一から作る必要はありません。中小企業庁や各種法律事務所が公開しているひな形を土台にして、記事外注向けに調整するのが効率的です。取材データ・録音・下書き原稿を秘密情報の対象に含める文言を追加し、期間や例外条項を業務内容に合わせて修正します。
ステップ3: 契約締結のタイミングを決める
NDAは、取材や資料共有を始める前に締結するのが原則です。よくある失敗が、「まず打ち合わせをして、契約は後で」という進め方です。打ち合わせの段階ですでに未公開情報を話してしまっていたら、NDAを結ぶ意味が薄れてしまいます。発注前の初回ヒアリングの時点で、簡易版のNDAを先に交わしておくという方法もあります。
ステップ4: 電子契約か紙の契約かを選ぶ
記事外注のような比較的小規模な業務委託では、電子契約サービスを使うケースが増えています。印紙代がかからず、締結までのスピードも速いというメリットがあります。紙の契約書の場合、契約金額によっては印紙税がかかる点にも注意してください。
ステップ5: 契約後も情報共有のルールを守る
契約を結んで終わりではありません。実際の情報共有では、クラウドストレージへのアクセス権限を必要最小限にする、チャットツールでのやり取りも記録が残る形にする、といった運用面の工夫も欠かせません。
記事外注のNDA、よくある失敗とその対策
発注者側の失敗としてよくあるのが、契約書のひな形をそのまま使い回してしまうパターンです。私自身、最初にライターさんへ外注をお願いしたとき、ネットで見つけた雛形をほぼそのまま使い、複数の見積もりを比較する段階で内容をきちんと精査しないまま進めてしまったことがあります。後になって、秘密情報の定義があまりに曖昧で、実際に渡した取材データが契約書の文言でカバーされているのか判断がつかない状態になっていることに気づきました。安さや納期の早さだけで依頼先を決めてしまい、契約内容の精査が後回しになった結果、品質面でも認識のズレに苦労した経験があります。それ以来、契約書は必ず自社の業務内容に合わせて一文一文見直すようにしています。
もう一つよくある失敗が、口頭でのやり取りに頼りすぎることです。「このメールでのやり取りだから大丈夫だろう」と考えて、正式な契約書を交わさないまま未公開情報を共有してしまうケースです。特に、単発・小規模な記事外注では「わざわざ契約書を作るほどでもない」という心理が働きやすいのですが、金額の大小と情報の機密性は関係ありません。数万円の案件であっても、渡す情報が未公開の事業計画であれば、きちんとNDAを結ぶべきです。
また、フリーランスライターとの契約において、企業側が一方的に厳しい条項を押し付けてしまい、受注側から契約を敬遠されるという逆のパターンもあります。秘密保持義務の期間を無期限に設定したり、あらゆる情報を無制限に秘密情報扱いにしたりすると、良いライターさんほど契約内容に慎重になり、依頼を断られることもあります。双方が納得できる、現実的な範囲での契約にすることが大切です。
記事外注のNDA、費用相場と依頼方法の選び方
NDAの締結自体に別途費用がかかることは基本的にありません。契約書のひな形を自社で用意して電子契約サービスを使えば、追加コストはほぼゼロです。弁護士に契約書のチェックを依頼する場合は、内容の複雑さによって3万円から10万円程度が相場になります。継続的に記事外注を行う予定があるなら、最初にきちんとした契約書のテンプレートを一つ作っておくことをおすすめします。一度作れば、以降の案件では微調整だけで使い回せるからです。
依頼先の選び方についても触れておきます。記事外注の依頼先は、大きく分けて制作会社経由とフリーランスへの直接依頼の2通りがあります。制作会社に依頼すると、進行管理やディレクションを任せられる分、仲介手数料が上乗せされ、総額が割高になる傾向があります。一方で、フリーランスへ直接依頼すれば、中間マージンが発生しない分、同じ予算でもより多くの取材や執筆に予算を回せます。NDAについても、直接契約であれば内容を発注者側の意向に沿って柔軟に調整しやすいという利点があります。もちろん、直接依頼の場合は発注者自身が進行管理や契約書の準備を担う必要があるため、その手間を許容できるかどうかで選び方が変わってきます。
@SOHO独自データの考察
20年この市場を見てきた立場から言えば、記事外注におけるNDAの扱いは、企業の規模や業種を問わず、ここ数年で明らかに丁寧になってきています。以前は「ライターに簡単な発注書を送るだけ」というケースが大半でしたが、情報漏洩事件の報道が増えるにつれ、発注者側から「NDAを結びたい」と申し出るケースが目立つようになりました。運営者として見てきた限りでは、こうした変化は健全な流れだと感じています。
興味深いのは、長く続く発注者とライターの関係ほど、契約書自体がシンプルになっていく傾向があることです。信頼関係が積み上がるにつれ、細かい条項の応酬ではなく、お互いに「何を渡していいか」「何を書いてはいけないか」を感覚として共有できるようになるからです。とはいえ、それは最初にきちんとした契約を交わし、期待値をすり合わせた上での話です。最初を丁寧にした関係ほど、後が楽になる。これは記事外注に限らず、業務委託全般に共通する実感です。
もう一つ、運営者として見てきた実感として付け加えたいのが、直接取引における中間マージンの構造です。制作会社を挟んだ発注では、その手数料分がライターの報酬から差し引かれるか、発注者の予算に上乗せされるかのどちらかになります。フリーランスへの手数料0%の直接依頼であれば、同じ予算でもライターの手取りは厚くなり、発注者はより多くの記事本数や取材時間に予算を振り向けられます。これは双方にとって得な構造であり、NDAをきちんと整備した上での直接取引は、記事外注においても十分に現実的な選択肢だと考えています。
記事外注を依頼する体制づくりの参考として、契約書・資料・企画書作成のお仕事では、契約書や社内資料の作成をフリーランスへ依頼する際の業務範囲の決め方を紹介しています。また、ビジネス文書・契約書作成のお仕事では、NDAを含む各種ビジネス文書の外注実務について解説しています。記事のライター選定にあたって、報酬水準の目安を知りたい場合は著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になります。あわせて、AI活用やセキュリティ分野の外注を検討している場合はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事もご覧ください。
NDAをフリーランス側の視点で理解しておきたい場合は、フリーランスのNDA(秘密保持契約)|テンプレート付き解説ガイドやフリーランスのNDA(秘密保持契約)テンプレート|書き方と注意点で、受注側がどのような点を気にしているかを知ることができます。発注者としてライターの立場を理解しておくことは、無理のない契約内容を作るうえでも役立ちます。海外のライターへ依頼する可能性がある場合は、海外クライアントとの英文契約書テンプレート|必須条項と注意点もあわせて確認しておくと安心です。
記事外注は、情報を渡さなければ良い記事が生まれない仕事です。だからこそ、渡す情報の範囲を最初にきちんと決め、NDAという形で明文化しておくことが、発注者にとってもライターにとっても、安心して長く付き合える関係の土台になります。
よくある質問
Q. 記事外注のNDAは、どんな案件でも必ず結ぶべきですか?
未公開の新商品情報や経営に関わる話を取材ベースで書いてもらう場合は必ず結ぶべきです。公開情報のみを扱う一般的なコラム記事であれば、簡易的な業務委託契約の秘密保持条項だけで対応できる場合もあります。
Q. NDAの締結にかかる費用はどれくらいですか?
ひな形を自社で用意し電子契約サービスを使えば追加費用はほぼかかりません。弁護士に内容確認を依頼する場合は3万円から10万円程度が相場です。継続案件がある場合は一度作れば使い回せます。
Q. 制作会社とフリーランス、NDAの結びやすさに違いはありますか?
フリーランスへの直接依頼のほうが契約内容を発注者の意向に沿って柔軟に調整しやすい傾向があります。制作会社経由では仲介手数料が上乗せされる分、総額は割高になりやすい点も考慮してください。
Q. 取材の録音データもNDAの対象に含めるべきですか?
含めるべきです。口頭での説明内容や録音データ、下書き原稿もすべて秘密情報の定義に明記しておくことで、後からの認識のズレを防げます。
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この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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