傾聴セラピストの仕事内容と、活動できる場所の探し方


この記事のポイント
- ✓傾聴セラピストの仕事は
- ✓相手の話を評価せずに聴き切ることで気持ちの整理を手伝うことです
- ✓副業で続けるときのお金と手続きまでを整理しました
傾聴セラピストの仕事を調べると、資格講座の広告ばかりが目に入り、実際にどこで働けて、どのくらいの収入になるのかが見えにくいはずです。結論から書くと、「傾聴セラピスト」という職種名で出ている求人はごく少なく、仕事は介護、電話やチャットの相談、自治体や社会福祉協議会の活動、企業の人事、そして自分で開く個人セッションに散らばっています。
この記事では、傾聴セラピストが何をする人なのかを確認したうえで、求人の実態、活動できる場所、名乗り方の決まり、資格の選び方、副業として続けるときのお金と手続き、聴く側の心の守り方までを順番に整理します。読み終えたときに、自分がどの場所から始めればよいかを決められることを目標にしています。
傾聴セラピストとは何をする人か
傾聴とは、相手の話を途中で評価したり、助言を急いだりせずに、最後まで注意深く聴き切ることです。傾聴セラピストは、この聴き方を仕事として提供する人を指す呼び名で、国が定めた職業名ではありません。民間の団体が独自に講座や認定を行っていて、「傾聴カウンセラー」「傾聴士」「傾聴サポーター」など、呼び名も団体ごとに異なります。
仕事の中身は、おおむね次の3つに分かれます。
- 話を聴く: 高齢者、子育て中の親、働く人など、話し相手を求めている人の話を、決めた時間のあいだ聴く
- 気持ちを言葉にする手伝いをする: 相手の言葉を繰り返したり、感じていることを短く言い換えたりして、本人が自分の気持ちに気づけるようにする
- 必要な支援先につなぐ: 話を聴くなかで、医療や行政の支援が必要だと感じたときに、相談窓口を紹介する
ここで大事なのは、傾聴セラピストは「答えを出す人」ではないという点です。悩みを解決する方法を教えるのではなく、相手が自分で考えを整理できるように場をつくる役割です。アドバイスを求められても、まずは相手がどうしたいのかを聴くことから始めます。
心理の専門職と比べると、違いが分かりやすくなります。心理学の専門知識で心の状態を分析し、相談に応じて助言や援助を行うのは、国家資格の公認心理師などの仕事です。病気かどうかを判断し、治療するのは医師の仕事です。傾聴セラピストは、そのどちらにも当たらない「聴くこと」に絞った役割で、だからこそ資格の要件がなく、誰でも学び始められる一方、仕事の範囲をはっきり意識しておく必要があります。
「セラピスト」という言葉から治療を連想する人もいますが、傾聴の仕事で治療を約束することはできません。仕事の説明をするときは「お話を聴く時間を提供します」と、行うことをそのまま書くのが誤解を生まない書き方です。
「傾聴セラピスト」という名前の求人がほとんど無い理由
求人検索サイトで傾聴に関わる仕事を探すと、件数そのものは多く出ます。求人ボックスで「傾聴カウンセラーの仕事」と検索したところ、2026年10月3日の時点で4,135件が表示されました。ただし中身を開くと、多くは「傾聴力を活かせる」と書かれた受付、接客、コールセンター、電話占い、キャリア相談、介護職などの求人です。「傾聴セラピスト」そのものを職種名にした募集は、ほとんど見当たりません。
この状況には理由があります。傾聴は独立した職種というより、多くの対人の仕事に必要な技能として扱われているからです。介護の現場では利用者の話を聴くことが日々のケアの一部ですし、受付や営業では顧客の要望を聴き取る力が成果に直結します。企業は「傾聴セラピストを雇う」のではなく、「傾聴ができる人を、別の職種で雇う」ことがほとんどです。
検索結果の件数をそのまま市場の大きさと読まないことも大切です。求人検索サイトは、似た求人をまとめたり、表示順を調整したりしています。
求人ボックスでは、類似する求人が複数ヒットした際に求人を探しやすくなるよう自動で非表示にしています。 そのため、記載されたヒット件数と実際に検索結果に表示されている求人の数が異なる場合がございます。 出典: 求人ボックス
求人を探すときは、「傾聴」という言葉だけで検索せず、仕事の場面で探すほうが効率的です。たとえば「デイサービス 話し相手」「電話相談員」「チャット相談 在宅」「キャリア相談 未経験」「シニア 見守り 訪問」のように、誰の話をどこで聴くのかを言葉にすると、自分に合う求人に早くたどり着けます。
もう1つの見方は、雇われる道と自分で場をつくる道を分けて考えることです。雇われる道では、傾聴は職種の中の1つの技能として評価されます。自分で場をつくる道では、傾聴そのものを提供するサービスとして値段を付けられます。どちらを選ぶかで、身につけるべき技能も準備の順番も変わります。
活動できる場所は大きく5つ
傾聴の技能を活かせる場所は、大きく次の5つに分けられます。それぞれの特徴と向いている人を整理します。
1. 高齢者の施設や訪問の現場
デイサービス、有料老人ホーム、訪問介護、見守りサービスなどです。利用者の話し相手になることは、介護の仕事の大切な一部です。介護職として雇われる場合は、傾聴だけでなく、食事や入浴の介助、記録の作成なども仕事に含まれます。話を聴く時間だけを担当する「話し相手」の有償ボランティアや、見守り訪問の仕事が地域で募集されていることもあります。高齢の家族と過ごした経験がある人や、ゆっくりした会話が苦にならない人に向いています。
2. 電話やチャットの相談窓口
企業の従業員向け相談窓口、自治体や団体が運営する相談事業、オンラインの相談サービスなどです。在宅で働ける求人もあります。相談の内容によっては専門職の資格や経験が求められるため、未経験から入る場合は、研修のある窓口や、話し相手を中心にしたサービスから始めるのが現実的です。夜間や土日の勤務がある窓口も多いので、生活の時間帯と合うかを先に確認します。
3. 自治体や社会福祉協議会の活動
社会福祉協議会とは、地域の福祉活動を進める民間の団体で、各市区町村に置かれています。多くの地域で、ボランティアセンターが傾聴ボランティアの養成講座を開いたり、施設への派遣を調整したりしています。報酬は無いか、交通費程度のことがほとんどですが、実際の相手と向き合う経験を積める場として貴重です。お住まいの市区町村の社会福祉協議会に「傾聴ボランティアの募集や講座はありますか」と問い合わせると、地域の状況を教えてもらえます。
4. 企業の人事や研修、キャリア相談
社員の面談、新人の相談役、キャリア相談などで、傾聴の技能は重宝されます。キャリアコンサルタントのように国家資格がある分野もあり、傾聴を入り口に資格取得まで進む人もいます。会社員として働いている人なら、今の職場で面談や後輩の相談を担当することが、最初の実践の場になります。
5. 自分で開く個人セッション
オンラインや貸し会議室で、1回ごとの料金で話を聴くサービスを提供する形です。働く時間や料金を自分で決められる反面、集客、予約管理、料金の受け取り、記録の保管まで自分で担います。いきなりこの形から始めるより、1から4のどれかで経験を積み、紹介や口コミで相手が見つかるようになってから移るほうが無理がありません。
活動の場を探すときの具体的な手順
5つの場所のどこから始めるかが決まったら、実際に探す手順に移ります。闇雲に講座や求人を見比べるより、次の順で動くと時間を無駄にしません。
- 聴きたい相手を1つに絞る: 高齢の方、子育て中の親、働く人、学生など、誰の話を聴きたいのかを決める。相手が決まると、探す場所と必要な知識が絞られる
- 地域の窓口に問い合わせる: 市区町村の社会福祉協議会、地域包括支援センター(高齢者の暮らしの相談を受ける公的な窓口)、ボランティアセンターに、傾聴の活動や講座があるかを尋ねる
- 求人検索サイトで場面の言葉を使って探す: 「話し相手」「見守り」「電話相談員」「チャット相談」など、仕事の場面の言葉と地域名を組み合わせる。条件を保存して、新着を定期的に確認する
- 応募や問い合わせの前に条件を確かめる: 雇用か業務委託か、研修の有無、1回の勤務時間、夜間や休日の対応、相談の内容に応じた交代の仕組みがあるかを確認する
- 最初の3か月で振り返る: 実際に活動してみて、相手、時間帯、働き方が自分に合っているかを見直す。合わなければ別の場所を試す
この手順で大切なのは、1つの場所にこだわりすぎないことです。最初に選んだ場所が合わなくても、そこで得た経験は次の場所で必ず役に立ちます。
名乗り方と、してはいけないこと
傾聴の仕事は資格が無くても始められますが、名乗り方と仕事の範囲には法律の決まりがあります。ここを知らないまま活動を始めると、思わぬところで問題になります。
まず名乗り方です。公認心理師法では、資格を持たない人が「心理師」という言葉を名乗ることを禁じています。
公認心理師でない者は、公認心理師という名称を使用してはならない。 前項に規定するもののほか、公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない。 出典: e-Gov法令検索(公認心理師法 第44条)
つまり「傾聴心理師」のような名前は、公認心理師の資格が無ければ使えません。「傾聴セラピスト」「傾聴カウンセラー」という呼び名は、この条文の対象には当たりませんが、相手が国家資格の専門職と誤解しないよう、民間の認定であることをプロフィールに書いておくのが誠実です。
次に、仕事の範囲です。傾聴セラピストは、病気かどうかを判断したり、治療の方法を勧めたりすることはできません。眠れない、食欲が落ちた、仕事に行けないといった話が出たときに、「それはうつ病です」と言ったり、「薬はやめたほうがいい」と勧めたりするのは、聴く仕事の範囲を超えています。そうした話が出たときは、医療機関や公的な相談窓口につなぐのが役割です。
命に関わる話が出たときの対応も、事前に決めておく必要があります。厚生労働省は、悩んでいる人に気づいて声をかけ、話を聴き、必要な支援につなぐ人を「ゲートキーパー」と呼んで、その心得を公開しています。そのなかには、相談にのる側が困ったときの「つなぎ先(相談窓口等)を知っておきましょう」という項目があります。活動を始める前に、地域の保健所、精神保健福祉センター、24時間の電話相談などの連絡先を手元に控えておくことが、聴く仕事の最低限の準備です。
秘密を守ることも欠かせません。公認心理師には法律で秘密を守る義務が課されていますが、民間の傾聴セラピストにも同じ姿勢が求められます。聴いた内容を本人の許可なく家族や職場に伝えない、SNSに書かない、記録を持ち歩かないといった決まりを、自分の中で文章にしておくと迷いません。ただし、命の危険がある場合は、本人を守るために支援先と情報を共有することがあり得ると、最初に説明しておくのが一般的です。
資格の選び方と、費用の見方
傾聴セラピストに国家資格はなく、民間の団体が独自の講座と認定を行っています。講座の数は多く、通信講座、通学、オンラインの実技、短期集中など形もさまざまです。料金も講座ごとに大きく違うため、名前の響きや合格のしやすさで選ぶと後悔しやすくなります。選ぶときは、次の5つを比べます。
- 実技の練習があるか: 動画や教材を読むだけでは、聴く技能は身につきにくい。講師やほかの受講者と組んで聴く練習をする時間があるかを確かめる
- 振り返りの仕組みがあるか: 練習のあとに、講師から聴き方について具体的な指摘をもらえるか。技能の伸びはここで決まる
- 修了後の活動の場があるか: 団体がボランティア先や実習先を紹介しているか、修了生どうしの練習会があるか
- 更新や会費が必要か: 認定の維持に年会費や更新料がかかる団体もある。初年度だけでなく、数年続けたときの総額で比べる
- 講師の経歴が確かめられるか: 講師が実際にどの現場で相談の経験を積んだのかが、公開されているか
参考として、講座を紹介している民間の比較サイトには、動画講義を中心にした通信講座で、オンラインの実技が付いた例が紹介されています。通信講座は時間の融通が利きますが、聴く練習の量が少ないと現場で戸惑います。通信で学ぶ場合でも、実技の時間が含まれているかを最初に確かめておくと安心です。
資格を取ったあと、さらに専門性を高めたい人には、国家資格へ進む道もあります。公認心理師は大学と大学院(または指定の実務経験)で決められた科目を修めることが受験の条件で、短期間で取れる資格ではありません。働く人の相談に関わりたい場合は、キャリアコンサルタントの国家資格が選択肢になります。どちらも傾聴が土台にある資格なので、民間講座で学んだことが無駄になることはありません。
逆に、高額な講座に申し込む前に立ち止まりたい場面もあります。「資格を取れば仕事を紹介する」「すぐに独立して稼げる」と強く勧められるときは、修了生の実際の活動状況を質問し、契約書と解約の条件を必ず読んでから決めます。仕事の紹介を約束して講座代を払わせる勧誘は、消費生活センターへの相談が多い分野です。
未経験から活動を始める5つのステップ
傾聴の仕事は、資格を取ってから動くより、小さく試しながら学ぶほうが続きます。未経験から始める場合の順番を5つのステップで整理します。
ステップ1: 身近な人との会話で聴き方を試す
家族や友人との会話で、相手の話を途中で遮らない、助言をすぐにしない、相手の言葉を短く繰り返す、という3つを意識してみます。思った以上に難しく、自分がどれだけ話の途中で口を挟んでいたかに気づくはずです。この気づきが、講座を選ぶときの基準にもなります。
ステップ2: 入門の講座や自治体の講座を受ける
社会福祉協議会や自治体が開く傾聴ボランティアの養成講座は、受講料が無料か低額のことが多く、地域の活動にもつながります。民間の講座を選ぶ前に、まずこうした入門の場で全体像をつかむと、高い講座に迷い込む心配が減ります。
ステップ3: ボランティアで実際の相手と向き合う
施設や地域の活動で、実際に話を聴く経験を積みます。高齢の方の話は、同じ話が何度も出てくることもあります。そのたびに初めて聴くように向き合えるかが、聴く仕事の向き不向きを判断する目安になります。
ステップ4: 仕事として受ける形を選ぶ
経験を積んだら、介護や相談窓口の求人に応募するか、個人でセッションを始めるかを選びます。個人で始める場合は、知人の紹介などで5人程度に試しの時間を提供し、時間の長さ、料金、話の進め方について感想をもらうと、サービスの形が固まります。
ステップ5: 記録と振り返りの習慣をつくる
セッションのあとに、相手が特定されない形で、自分の聴き方の振り返りを書き残します。うまくいかなかった場面ほど学びになります。講座の仲間や講師に、守秘に配慮したうえで相談できる関係を持っておくと、一人で抱え込まずに済みます。
副業や在宅で続けるときの、お金と手続き
傾聴の仕事を副業や個人の活動として続ける場合、報酬の受け取り方と税金の手続きを最初に整理しておくと安心です。
報酬の形は、大きく3つあります。雇用されて時給で受け取る形、業務委託で1件ごとや1時間ごとに受け取る形、個人で直接お客様から料金を受け取る形です。求人検索サイトで見られる電話相談やチャット相談の求人には、時給1,250円前後から3,000円程度までの募集が並んでいました(2026年10月3日時点)。ただし、相談の内容、時間帯、経験の有無で大きく変わるので、目安にとどめてください。
業務委託で受ける場合は、契約書で報酬の計算方法、支払日、キャンセルされたときの扱い、相談内容の記録を誰が持つのかを確認します。発注する側が事業者で、受ける側が個人の場合、2024年11月に始まったフリーランス法(正式名は特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)で、取引の条件を書面などで示すことが発注者に求められています。条件があいまいなまま始めないことが、自分を守る第一歩です。
税金の手続きでは、会社員が副業で得た所得の扱いを知っておきます。国税庁は、給与を1か所から受けていて年末調整を受けている人の場合、給与以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要だと案内しています。所得とは、収入から交通費や講座の受講料などの必要経費を引いた金額です。20万円以下でも住民税の申告は別に必要になるので、お住まいの市区町村に確認してください。
個人で事業として続ける場合は、税務署に開業届を出します。提出の期限は、開業した年分の確定申告の期限までです。開業届を出し、帳簿をつけて青色申告を選ぶと、所得から差し引ける控除を受けられる場合がありますが、どれが有利かは収入の規模や働き方で変わるので、税務署や税理士に確認するのが確実です。
もう1つ、個人で活動するときに見落としやすいのが、相談記録の保管です。氏名や連絡先と相談の内容を一緒に保存する場合は、鍵のかかる場所や、パスワードで守られた環境に保存し、使わなくなった記録は決まった時期に削除します。紙のメモを持ち歩かないことも大切です。
聴く側の心を守る方法
傾聴の仕事は、相手の重い話を受け止める仕事です。続けているうちに、自分の心が疲れてしまうことがあります。長く続けるためには、聴く側の心を守る工夫が欠かせません。
厚生労働省のゲートキーパーのページでも、支える側の負担について触れています。
友達や家族の相談にのっていると、「悩みを聞くのがつらい」など、自分が疲れてしまう時があるかもしれません。そんなときは、すべてを抱え込む必要はなく、少し休んでみてはどうでしょうか。まずは自分の心を大切にしてください。 出典: 厚生労働省「ゲートキーパーになろう!」
具体的には、次の4つを習慣にしておくと負担が軽くなります。
- 1日に受ける件数の上限を決める: 予定を詰め込むと、後半の相手に向ける注意が落ちる。休憩を挟める件数にとどめる
- セッションの前後に切り替えの時間をつくる: 前の相手の話を引きずらないよう、深呼吸や短い散歩で気持ちを切り替える
- 自分も話を聴いてもらう相手を持つ: 講座の仲間、信頼できる先輩、必要なら専門家に、自分の気持ちを話せる場をつくる
- 抱えきれない話は支援先につなぐ: 自分一人で解決しようとしない。つなぐことも聴く仕事の一部と考える
働く人の心の健康については、厚生労働省が働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」を開いていて、ストレスへの気づき方やセルフケアの方法、相談窓口の案内をまとめています。聴く仕事をする人自身が、自分の疲れの度合いを確かめる道具として使えます。相談を受ける側に回る前に、まず自分の状態を知る方法を1つ持っておくと、無理を重ねる前に気づけます。
聴く仕事に向いている人ほど、相手のために頑張りすぎてしまう傾向があります。自分の調子が悪いときは休む、と最初に決めておくことが、結果として相手のためにもなります。
1回のセッションはどう進むか
個人でセッションを提供する場合や、相談窓口で1件を担当する場合、1回の流れはおおむね決まっています。流れを先に決めておくと、相手も自分も安心して時間を使えます。ここでは、オンラインで60分のセッションを行う場合を例に整理します。
始める前の説明(約5分)
最初に、時間の長さ、話した内容を外に漏らさないこと、ただし命の危険があるときは支援先と相談する場合があること、診断や治療の助言はしないことを、短く説明します。この説明を毎回同じ言葉で行うと、相手は「ここまでは話してよい」と分かり、話し始めやすくなります。オンラインの場合は、周りに人がいない場所かどうかも確認します。
話を聴く時間(約45分)
相手のペースで話してもらいます。聴く側は、うなずきや短いあいづちで「聴いています」と伝え、相手の言葉を繰り返したり、感じていることを短く言い換えたりします。沈黙が続いても、すぐに埋めようとしません。沈黙は、相手が考えをまとめている時間であることが多いからです。質問をするときは、「はい」「いいえ」で終わる質問より、「そのとき、どう感じましたか」のように相手が自由に答えられる形を選びます。
終わりに向けた振り返り(約10分)
終わりの10分前になったら、残り時間を伝えます。今日話したことの中で、相手が一番大切だと感じたことを本人の言葉で確かめ、次回の予定があれば決めます。話の途中で強いつらさが出てきた場合は、そのまま終えずに、今の気持ちを落ち着ける時間をとり、必要なら相談窓口の連絡先を伝えます。
終わったあとの記録
セッションのあとには、日時、時間の長さ、相手が特定されない形での話題の要点、次回に向けて気をつけたいことを記録します。記録は、自分の聴き方を振り返る材料であり、相手の話を勝手に評価するためのものではありません。記録の扱い方は、最初の説明で相手に伝えておきます。
この流れを何度も繰り返すうちに、自分なりの言葉や間の取り方が身についていきます。最初のうちは、説明の言葉を紙に書いて手元に用意しておくと、慌てずに済みます。
料金の決め方と、向いている人・向いていない人
個人でセッションを提供する場合、料金をいくらにするかで迷う人が多くいます。料金は、相場だけで決めるより、自分が使う時間と経費から逆算するほうが続けやすくなります。
考え方の順番は次のとおりです。まず、1回のセッションにかかる時間を、準備や記録の時間まで含めて数えます。60分のセッションでも、前後の準備と記録で合計90分ほどかかることは珍しくありません。次に、オンライン会議の道具、予約の受付、決済の手数料、講座の更新費、学び続けるための費用など、1か月あたりの経費を書き出します。そのうえで、1か月に受けられる件数で経費を割り、1件あたりにいくら上乗せすれば続けられるかを考えます。
料金を決めたら、次の3つを公開しておくと、相手が申し込みやすくなります。
- 1回の時間と料金、支払いの方法
- 予約を取り消すときの決まり(何日前までなら料金がかからないか)
- 提供できないこと(診断や治療の助言、緊急時の対応)
向き不向きについても整理しておきます。傾聴の仕事に向いているのは、相手の話を最後まで聴くことに疲れにくい人、自分の意見を言いたくなっても一度飲み込める人、同じ話を繰り返し聴いても初めて聴くように向き合える人です。会話の主導権を握りたい人や、すぐに解決策を示したくなる人は、最初は苦労するかもしれません。ただし、これは訓練で変えられる部分でもあります。
一方で、自分自身が強い悩みを抱えている時期に、他人の重い話を聴き続けるのは負担が大きくなります。聴く仕事を始める時期は、自分の生活と心が落ち着いているときを選ぶことも、長く続けるための大切な判断です。
傾聴の力が生きる、隣の仕事
傾聴セラピストとしての活動だけで生活を支えるのは、簡単ではありません。多くの人は、聴く技能を軸にしながら、ほかの仕事と組み合わせて収入を組み立てています。在宅で取り組める組み合わせの例を挙げます。
1つ目は、取材やインタビューを伴う執筆の仕事です。話し手の言葉を遮らずに聴き、本当に伝えたいことを引き出す力は、インタビュー記事の質を左右します。編集や執筆の仕事の収入の目安は、統計に基づく職種別の年収データで確かめられます(この記事の最後の節で紹介します)。書く仕事で単価を上げていく具体的な順序は、Webライターが文字単価を上げる方法【2026年版】|1円→5円のステップが参考になります。
2つ目は、相手の困りごとを聴き取る業務支援の仕事です。たとえば、中小の事業者が生成AIなどの道具を業務に取り入れるとき、最初に必要なのは、現場の担当者が何に困っているのかを丁寧に聴き取ることです。こうした支援の仕事の中身は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で、どんな作業が依頼され、どんな人が受けているのかを紹介しています。
3つ目は、聴いた内容を文章に整理する仕事です。面談の記録、議事録、相談内容の要約などは、聴く力と書く力の両方が求められます。文章の基本を体系立てて確かめたい人には、ビジネス文書検定のように、ビジネス文書の書き方や表記の決まりを問う資格もあります。
聴く力は、どの仕事でも「この人と話すと考えがまとまる」という信頼につながります。傾聴の講座で学んだことは、セラピストとして活動する場面だけでなく、こうした仕事で相手との関係をつくる土台になります。
運営者として見てきた、聴く仕事が続く人の共通点
在宅ワークの市場を長く見てきた立場から言えば、人の話を聴く仕事で長く続いている人には共通点があります。それは、聴く技能を「売り物」として前に出すより、「この人に相談すると話が早い」という関係を、目の前の仕事の中で少しずつ積み上げていることです。傾聴の講座を修了したことより、実際の相手との時間の中で信頼を得てきた経験のほうが、次の依頼につながっています。
もう1つは、仲介の手数料が少ない取引を選んでいることです。1回あたりの報酬が大きくない仕事では、仲介手数料が引かれると手元に残る金額が目に見えて減ります。依頼する人と直接やりとりできる形なら、同じ予算で依頼する側はより長い時間を頼め、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%の直接取引は、単価の低い聴く仕事ほど効いてくる仕組みです。
傾聴セラピストという肩書きだけで仕事を待つより、聴く力を活かせる在宅の仕事を1つ選び、実績と信頼を重ねながら、セッションの提供へ広げていく。これが、未経験から始める人にとって現実的な道筋です。聴く力を活かせる仕事の収入の目安を知るには、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、統計に基づく年収の水準と単価の傾向を確かめ、取材や記録の仕事と組み合わせたときの見通しを立ててみてください。
よくある質問
Q. 傾聴セラピストになるのに資格は必要ですか?
国が定めた資格は無く、資格が無くても活動できます。民間の団体が講座と認定を行っているので、実技の練習と振り返りがある講座を選ぶと技能が身につきます。ただし「心理師」という言葉は、公認心理師の資格が無い人は名前に使えないと法律で決まっています。
Q. 傾聴セラピストの仕事は在宅でできますか?
電話やチャットの相談窓口の求人には在宅で働けるものがあり、個人でオンラインのセッションを開く人もいます。相談の内容によっては専門職の資格や経験が求められるため、未経験の場合は研修のある窓口や、話し相手を中心にしたサービスから始めるのが現実的です。
Q. 傾聴の仕事の時給はどのくらいですか?
求人検索サイトで見られる電話相談やチャット相談の募集では、時給1,250円前後から3,000円程度までの幅がありました。相談の内容、時間帯、経験の有無で大きく変わり、ボランティアの活動では無償か交通費程度のことも多いので、応募前に条件を確かめてください。
Q. 副業で傾聴の仕事をしたら確定申告は必要ですか?
給与を1か所から受けて年末調整を受けている会社員なら、給与以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。所得は収入から必要経費を引いた金額です。20万円以下でも住民税の申告は別に必要になるため、お住まいの市区町村に確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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