業務の可視化の進め方|仕事の流れと担当を書き出して改善につなげる手順


この記事のポイント
- ✓業務の可視化の進め方を
- ✓流れ図と担当表の作り方
- ✓改善と定着の順に整理しました
業務の可視化を進めるように言われたものの、何から手を付ければよいか分からない、という人は少なくありません。「可視化」という言葉は便利ですが、実際にやることは、仕事の流れと担当と時間を書き出して、誰が見ても分かる形にすることです。書き出すだけで終わらせず、そこから課題を見つけて改善につなげるまでが、業務の可視化の本当の目的です。この記事では、業務の可視化を、目的の決め方から、業務の洗い出し、流れ図と担当表の作り方、時間の測り方、課題の見つけ方、改善と定着まで、順番に説明します。可視化したあとの仕事の状況をチームで共有する方法の1つとして、ボードで仕事を進めるプロジェクト管理ツールのPinatecaにも触れます。
業務の可視化とは何か
業務の可視化とは、ふだん人の頭の中や個人のやり方にとどまっている仕事の中身を、文字や図や表にして、関係者のだれもが見られる状態にすることです。どの仕事が、どんな順番で、だれによって、どのくらいの時間をかけて行われているのかを書き出します。
人材サービスの会社の解説では、業務の可視化を次のように説明しています。
「生産性が落ちている」「業務効率化を図りたい」など、業務の見直しや改善を検討している場合には、業務可視化による問題点の把握が欠かせません。業務可視化では、部門の業務を見直し、洗い出すことで、今まで把握できていなかった課題を明らかにします。 出典: persol-group.co.jp
ここで大切なのは、「今まで把握できていなかった課題を明らかにする」という部分です。業務の可視化は、それ自体が目的ではありません。見えていなかった無駄や偏り、止まっている場所を見つけ、改善のきっかけにするための手段です。
業務の可視化で書き出す対象は、大きく3つに分けられます。
- 仕事の流れ:どの作業が、どの順番でつながっているか
- 担当:だれが、どの作業を受け持っているか
- 量と時間:それぞれの作業に、どのくらいの件数と時間がかかっているか
この3つがそろうと、「この作業は特定の1人しかできない」「この確認の工程で毎回2日止まっている」「月末にだけ作業が集中している」といった課題が、数字と図で見えるようになります。
業務の可視化が求められる背景
業務の可視化が多くの職場で話題になっている理由は、大きく3つあります。
1つ目は、人手が足りない中で、同じ人数で回せる仕事の量を増やす必要が出てきたことです。新しい人を採るのが難しいとき、まず取り組めるのは、今いる人の時間を何に使っているかを知り、無駄を減らすことです。
2つ目は、在宅勤務やリモートワークが広がり、隣の席の人が何をしているかが見えにくくなったことです。同じ部屋で働いていれば自然に伝わっていた「あの人が今忙しい」「この件は止まっている」といった情報が、書かなければ伝わらなくなりました。
3つ目は、特定の人にしか分からない仕事が、休職や退職のときに大きな問題になることです。こうした状態は「属人化」と呼ばれます。属人化とは、ある仕事のやり方が特定の人の経験や記憶に頼っていて、ほかの人が代わりにできない状態のことです。業務を可視化して手順を書き出しておけば、引き継ぎや代わりの対応がしやすくなります。
業務の可視化で得られる5つのメリット
業務を可視化すると、次の5つのメリットが期待できます。
1. 無駄な作業が見つかる
書き出してみると、同じ情報を2つの表に入力している、だれも見ていない報告書を毎週作っている、といった無駄が見つかります。頭の中で考えているだけでは気づきにくい重複も、紙に並べるとすぐに分かります。
2. 仕事の偏りが分かる
担当と時間を書き出すと、特定の人に仕事が集中していることが数字で見えます。忙しい人ほど自分の仕事を書き出す時間がなく、周りから負担の大きさが見えにくいものです。
3. 止まっている場所が分かる
流れ図を描くと、承認待ちや確認待ちで仕事が止まっている工程が見えます。作業そのものは短くても、待ち時間が長い工程は、全体の時間を大きく延ばしています。
4. 引き継ぎがしやすくなる
手順が書き出されていれば、担当が変わったときや、急に休んだときにも、ほかの人が仕事を続けられます。
5. 改善の効果を測れる
可視化の段階で作業の時間を測っておけば、改善のあとにもう一度測ることで、どれだけ時間が減ったかを数字で示せます。改善の効果を示せると、次の改善にも協力が得やすくなります。
業務の可視化の進め方6ステップ
ここからは、業務の可視化を実際に進める手順を、6つのステップで説明します。1つの部署や1つの仕事から小さく始めるのがこつです。
ステップ1:目的と範囲を決める
最初に、何のために可視化するのかを決めます。「月末の残業を減らしたい」「問い合わせへの返事が遅いので原因を知りたい」「担当者が辞めても困らないようにしたい」など、目的によって、どこまで細かく書き出すかが変わります。
範囲も決めます。部署の全部の仕事を一度に書き出そうとすると、作業が膨らんで途中で止まってしまいます。最初は「請求書の発行の仕事」「採用の応募者への連絡の仕事」のように、1つの仕事の流れに絞ります。
関係者への説明の例
可視化を始める前に、協力してもらう人へ目的と進め方を伝えておくと、聞き取りや時間の記録が進めやすくなります。説明は、次のような短い文で十分です。
「月末の請求の作業で残業が続いているため、作業の流れを一度書き出して、減らせる手間がないかを探します。来週、30分ほど作業の内容を聞かせてください。そのあと2週間だけ、30分単位でどの作業をしていたかを記録してもらいます。記録は作業ごとの時間を知るためのもので、個人の評価には使いません。結果は全員に共有し、改善の案も一緒に考えます。」
この文には、目的、頼むこと、かかる時間、記録の使い道、結果の扱いの5つが入っています。どれかが欠けると、「何のために聞かれているのか分からない」「評価に使われるのでは」という不安が生まれ、正直な答えが集まりにくくなります。特に記録の使い道は、最初にはっきり伝えておくことが大切です。
ステップ2:業務を洗い出す
範囲を決めたら、その中にある作業を全部書き出します。担当している人に、ふだん何をしているかを聞き取るのが基本です。聞き取りでは、次の点を確かめます。
- 作業の名前(「見積書を作る」「上長に確認を依頼する」のように、動詞で終わる形で書く)
- 作業のきっかけ(何が届いたら、何が起きたら始めるのか)
- 使っている道具(表計算ソフト、メール、チャット、社内のシステムなど)
- 作業のあと、だれに何を渡すか
- 頻度(毎日、毎週、月末だけ、依頼があったときだけ)
聞き取りのときは、「普通はこう」という答えだけでなく、「困ったときはどうしているか」「例外はあるか」も聞きます。可視化で見つかる課題の多くは、例外の対応の中に隠れています。
ステップ3:流れ図にする
洗い出した作業を、順番に並べて流れ図にします。流れ図とは、作業を四角の枠で表し、矢印でつないで、仕事の流れを図にしたものです。業務フロー図とも呼ばれます。
流れ図を描くときは、横に担当者や部署の列を分けて描く形が便利です。この形は「スイムレーン」と呼ばれ、プールのレーンのように担当ごとの帯を並べ、その中に作業の枠を描きます。こうすると、仕事が担当から担当へ渡るところが矢印で見え、受け渡しの多さや待ち時間が一目で分かります。
描く道具は、紙と付箋で十分です。付箋に作業を1つずつ書いて壁や机に並べると、順番の入れ替えが簡単で、関係者と一緒に見ながら直せます。形が固まったら、表計算ソフトや図を描くソフトに写します。
ステップ4:担当と時間を表にする
流れ図とは別に、作業ごとの担当と時間を表にまとめます。列の例は次のとおりです。
| 作業 | 担当 | 頻度 | 1回の時間 | 1か月の合計 | 使う道具 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 見積書を作る | Aさん | 週5回 | 30分 | 約10時間 | 表計算ソフト | 単価表は別のファイル |
| 上長に確認を依頼 | Aさん | 週5回 | 5分 | 約2時間 | メール | 返事まで平均1日 |
| 請求書を発行 | Bさん | 月1回 | 4時間 | 4時間 | 会計ソフト | 月末に集中 |
1か月の合計の時間は、頻度と1回の時間から計算します。たとえば週5回で1回30分なら、1週間で2.5時間、1か月をおよそ4週と見れば約10時間です。こうして並べると、1回は短くても回数が多い作業が、合計では大きな時間を使っていることが分かります。
ステップ5:時間を測る
担当している人の感覚で書いた時間は、実際とずれていることがよくあります。可能なら、1週間から2週間ほど、実際にかかった時間を記録してもらいます。事務機器の会社の解説では、時間の測り方として次の方法を挙げています。
業務プロセスを可視化するとともに、そのそれぞれの業務の工数を算出します。あわせてメンバー属性情報などを含む運用体制についても可視化していきます。計測方法には、実際の現場でモニタリングする方法、社員にかかった時間を記入させるアンケート形式、社員が推測し記入する方法などがあります。テンプレートもいろいろ公開されていますので、自社の業務に合いそうなものを探してみるとよいでしょう。その他にも業務可視化ツールと呼ばれるものも存在しています。それらの活用によりより簡単に作業時間や進捗状況を把握することも可能です。 出典: canon.jp
工数とは、作業にかかる人の時間のことで、「何人で何時間かかったか」を表します。記録してもらうときは、細かすぎる記録を求めないことが大切です。5分単位の記録は続きません。30分単位で、その時間に主に何をしていたかを書いてもらう程度にすると、負担が少なく、全体の傾向はつかめます。
ステップ6:課題を見つけて、改善につなげる
流れ図と担当表と時間の記録がそろったら、課題を探します。課題の見つけ方は、次の節で詳しく説明します。見つけた課題には優先順位を付け、効果が大きく、すぐに取り組めるものから改善します。
可視化した業務から課題を見つける観点
書き出した業務を眺めても、課題がすぐに見つかるとは限りません。次の5つの観点で見直すと、課題が浮かび上がりやすくなります。
観点1:やめられる作業はないか
その作業をやめたら、だれが困るのかを考えます。だれも困らない作業は、やめる候補です。たとえば、以前は必要だったが、今はだれも見ていない報告書がこれに当たります。
観点2:まとめられる作業はないか
同じ情報を何度も入力している、似た確認を2人で別々にしている、という作業は、1回にまとめられないかを考えます。
観点3:順番を変えられる作業はないか
確認待ちの間にほかの作業を進められないか、前の工程で情報をそろえておけば後の工程の手戻りが減らないかを考えます。
観点4:1人に偏っている作業はないか
特定の人しかできない作業は、その人が休むと止まります。手順を書き出してほかの人も担当できるようにする、作業を分けて複数の人で受け持つ、といった手を考えます。
観点5:道具で楽にできる作業はないか
手で行っている転記や集計、定型のメールの送信などは、表計算ソフトの関数、システムの連携、自動化のツールで楽にできることがあります。ただし、道具を入れる前に、観点1から4で作業そのものを減らしておくことが大切です。無駄な作業を自動にしても、無駄が速くなるだけです。まず減らし、残った作業を楽にする、という順番を守ります。
5つの観点で見直すときは、1人で考えるより、作業を担当している人と一緒に流れ図を見ながら話すほうが、案が出やすくなります。担当している人は、ふだんから「ここが面倒だ」と感じている点を知っています。その声を引き出すことが、効果の大きい改善への近道です。
表計算ソフトで業務の可視化を始める方法
業務の可視化は、特別なツールがなくても、表計算ソフトで始められます。小さく始めるなら、次の3つのシートを作るだけで十分です。
シート1:業務一覧
ステップ4の表を作ります。作業、担当、頻度、1回の時間、1か月の合計、使う道具、備考の列を並べ、1行に1つの作業を書きます。1か月の合計の列には、頻度と1回の時間から計算する式を入れておくと、数字を直したときに合計も自動で変わります。
シート2:時間の記録
日付、担当、作業、かかった時間の4列を作り、記録してもらいます。1週間から2週間ほど記録したら、作業ごと、担当ごとに合計を出します。表計算ソフトのピボットテーブルの機能を使うと、作業別や担当別の合計を簡単に集計できます。
シート3:課題と改善の一覧
見つかった課題、改善の案、担当、期限、状況(未着手、進行中、完了)の列を作ります。改善の案は、出すだけで終わってしまいがちです。担当と期限を必ず書くことで、実際に動き出します。
表計算ソフトで回すときに気をつけたいのは、ファイルの保存先と最新版の管理です。共有のフォルダやクラウドの表計算ソフトにファイルを1つだけ保存し、全員がそのファイルを直すようにします。メールでファイルを送り合うと、どれが最新か分からなくなります。
可視化した仕事の状況をチームで共有する
業務の可視化には、一度書き出して課題を見つける「棚卸し」の面と、日々の仕事の状況をいつでも見えるようにしておく「見える化を続ける」面があります。棚卸しは表計算ソフトで十分ですが、日々の仕事の状況を共有し続けるには、表だけでは手間がかかる場面が出てきます。
表での共有が苦しくなる場面
- 複数の人が同じ表を同時に直して、どれが最新か分からなくなる
- 仕事ごとのやり取りがチャットやメールに散らばり、表の行とつながらない
- 期限が近い仕事や止まっている仕事を、毎回目で探している
- 担当ごとの仕事の量を見るために、毎回並べ替えや集計をしている
カンバンで仕事の状況を見える形にする
日々の仕事の状況を見える形にする方法として広く使われているのが、カンバンです。カンバンとは、仕事を1枚ずつのカードにして、「未着手」「進行中」「確認待ち」「完了」のような列に並べ、進み具合に合わせてカードを動かす方法です。確認待ちの列にカードがたまっていれば、そこで仕事が止まっていることがすぐに分かります。業務の可視化で見つけた「待ち時間の長い工程」を、日々の運用の中で見張り続けることができます。
チームでタスクと担当と期限を回したいときの選択肢
表での共有が苦しくなり、チームで仕事と担当と期限を見える形で回したい場面での選択肢の1つが、国産のプロジェクト管理ツールのPinatecaです。公式サイトによると、カンバン・ガント・カレンダー・リスト・ディスカッション・グリッド・時間割・リソースの8種類のボードとチャットが無料プランから使え、5人までなら無料で使えます。リソースボードでは人やチームごとの仕事の負荷の偏りを見られ、カスタムフィールドで見積もりの工数や優先度などの項目をカードに追加できます。カードごとのコメントやチャンネルのチャットで、仕事とやり取りをつなげて残せます。業務の可視化で書き出した作業をカードにし、担当と期限を付けて動かしていくと、棚卸しで作った一覧を日々の運用につなげられます。
Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
問い合わせの仕事を可視化するときの選択肢
問い合わせへの対応のように、外から届く依頼を受けて返す仕事では、可視化の対象が「届いた1件ごとの状況」になります。メールの受信箱で問い合わせを受けていると、だれが対応しているのか、返事を送ったのかが、受信箱を見ただけでは分かりません。こうした場面では、フォームで受け付けた問い合わせを1件ずつ担当と状況を付けて管理し、同じ画面から返信まで送れるHalictのようなツールも選択肢になります。公式サイトによると、フォームの作成から、届いた回答への担当と状況の記録、返信と開封の記録までを1つにまとめられ、無料から始められます。
Halictは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
例:請求書の発行の仕事を可視化してみる
ここまでの手順を、小さな会社の「請求書の発行」の仕事に当てはめてみます。担当は営業のAさんと経理のBさんの2人、毎月の請求書は30件ほどとします。
洗い出した作業
聞き取りの結果、次の作業が出てきました。
- Aさんが、その月に納品した案件を思い出して、表計算ソフトの一覧に書き出す
- Aさんが、案件ごとの金額を見積書のファイルから探して一覧に写す
- Aさんが、一覧をメールでBさんに送る
- Bさんが、一覧の金額を会計ソフトに入力し、請求書を作る
- Bさんが、金額に疑問がある案件をAさんにメールで問い合わせる
- Aさんが、見積書を探し直して返事をする
- Bさんが、請求書を取引先に送る
流れ図と時間から分かったこと
担当ごとの帯に分けて流れ図を描き、2週間ほど時間を記録してもらうと、次のことが分かりました。
- 1と2の作業は月末の2日間に集中し、Aさんは合計で6時間ほどかけていた
- 5と6の問い合わせのやり取りが毎月10件ほどあり、返事を待つ間、Bさんの作業が止まっていた
- 金額の食い違いの多くは、見積もりのあとに変わった金額が、見積書のファイルに反映されていなかったことが原因だった
改善の案
観点に沿って考えると、次の改善が見えてきます。
- まとめる:案件が決まった時点で、金額を1つの一覧に記録しておく。月末に思い出して書き出す作業と、見積書を探す作業をなくす
- 順番を変える:金額が変わったら、その場で一覧を直す決まりにする。月末の問い合わせのやり取りを減らす
- 道具で楽にする:一覧と会計ソフトの取り込みの形式をそろえ、手での入力を減らす
改善のあとにもう一度時間を測ると、Aさんの月末の作業と、Bさんの問い合わせ待ちの時間がどれだけ減ったかを数字で確かめられます。このように、1つの仕事を書き出すだけでも、改善の手がかりは具体的に見つかります。
担当を書き出すときに便利な役割の整理
担当表を作るとき、「担当」の欄に1人の名前を書くだけでは、仕事の実態を表しきれないことがあります。実際の仕事では、作業する人、最終的に責任を持つ人、相談される人、結果を知らされる人が、それぞれ別にいることが多いからです。
こうした役割を整理する方法の1つに、RACIと呼ばれる表があります。作業ごとに、実際に作業する人(Responsible)、最終的な責任を持つ人(Accountable)、相談を受ける人(Consulted)、結果を知らされる人(Informed)を割り当てる方法です。英語の頭文字を取ってRACIと呼ばれます。
この整理をしておくと、「確認はだれに取ればよいのか」「決めるのはだれか」があいまいなまま仕事が止まる、という事態を防げます。特に、承認待ちで仕事が止まっている工程を見つけたときは、その工程の最終的な責任を持つ人がだれなのかを確かめるところから始めると、待ち時間を減らす手がかりが見つかります。
すべての作業にこの表を作る必要はありません。複数の人が関わり、判断が必要な作業に絞って作ると、手間をかけずに効果を得られます。
在宅やリモートの職場で可視化を進めるこつ
在宅勤務やリモートワークの職場では、業務の可視化の進め方にも工夫が要ります。
聞き取りは、ビデオ会議で画面を共有しながら行うと、実際の操作の手順を見せてもらえて、書き出しの漏れが減ります。付箋の代わりに、オンラインの付箋のボードや、共有の表計算ソフトを使えば、離れた場所の人とも同じ図を見ながら直せます。
時間の記録は、出社しているときより記録の習慣が途切れやすくなります。1日の終わりに5分だけ記録の時間を取る、と決めておくと続けやすくなります。
また、リモートの職場では、可視化したあとの「状況の共有」が特に大切になります。だれが何をしていて、どこで止まっているかを、聞かなくても見られる場所を1つ決めておくと、確認のための連絡が減り、在宅で働く人の集中の時間も守れます。
業務の可視化でよくある失敗
業務の可視化は、進め方を誤ると、手間ばかりかかって成果が出ないまま終わります。よくある失敗と防ぎ方を挙げます。
書き出すことが目的になる
立派な流れ図や一覧ができあがったところで満足してしまい、改善に進まないことがあります。最初に決めた目的に戻り、「この一覧から、どの課題を、いつまでに改善するか」を決めるところまでを、可視化の作業に含めます。
細かく書きすぎる
作業を細かく分けすぎると、書き出しに時間がかかり、図も表も読めないほど大きくなります。最初は、1つの作業が15分から数時間程度になる粒の大きさで書き、課題が見つかったところだけを細かく掘り下げます。
現場の協力を得られない
業務の可視化は、現場の人に「監視されている」「仕事が遅いと責められる」と受け取られることがあります。可視化の目的は個人の評価ではなく、仕事の進め方の改善であることを、最初に説明します。時間の記録も、個人の速さを比べるためではなく、作業ごとの合計を知るために使うと伝えます。
一度で終わる
業務の中身は、担当の交代や取引先の変化で少しずつ変わります。一度作った一覧も、放っておけば古くなります。半年に1回など、見直す時期を決めておきます。
改善を定着させるための仕組み
改善の案を実行しても、しばらくすると元のやり方に戻ってしまうことがあります。改善を定着させるために、次の3つの仕組みを作っておきます。
手順書を更新する
改善した手順は、必ず手順書に書き直します。手順書が古いままだと、新しく担当になった人は古いやり方を覚えてしまいます。手順書には、最後に更新した日と、更新した人を書いておくと、どれが最新かが分かります。
効果を測って共有する
改善の前後で同じ作業の時間を測り、どれだけ減ったかを関係者に共有します。「請求書の発行が1か月あたり4時間から2時間になった」のように数字で示すと、改善に協力した人の手応えになり、次の改善にもつながります。
振り返りの場を決める
月に1回など、短い時間でよいので、改善の進み具合と新しく見つかった課題を話し合う場を決めます。課題と改善の一覧を見ながら、完了したもの、止まっているもの、新しく手を付けるべきものを確かめます。
業務の可視化から自動化へ進むとき
業務を可視化して無駄を減らしたあと、さらに手間を減らす方法として、自動化があります。表計算ソフトのマクロ、RPAと呼ばれる定型の操作を自動で行うソフトウェア、システム同士の連携などです。RPA(Robotic Process Automation)とは、人がパソコンで行っている定型の操作を、ソフトウェアに記録して自動で繰り返させる仕組みのことです。
自動化に向いているのは、手順が決まっていて、例外が少なく、回数が多い作業です。業務の可視化で作った担当表の「頻度」と「1回の時間」の列を見れば、自動化の候補を選べます。回数が多く、1か月の合計の時間が大きい作業ほど、自動化の効果が大きくなります。
自動化に進む前には、次の3つを確かめておきます。1つ目は、手順が本当に固まっているかです。担当者によってやり方が違う作業は、先に手順をそろえないと自動にできません。2つ目は、例外が起きたときにだれが気づき、だれが直すかです。自動化した作業は、止まっても気づかれにくくなります。3つ目は、自動化の仕組みを作った人がいなくなっても、ほかの人が直せるかです。自動化の仕組みそのものが新しい属人化を生まないよう、設定の内容と直し方を手順書に残しておきます。
自動化を自分で進めるのが難しい場合は、外部の専門家に頼む方法もあります。RPA・業務自動化ツールのお仕事では、RPAや自動化のツールを使って企業の業務を楽にする仕事の内容を紹介しています。社内のシステムそのものを作り直す場合は、Web・業務システム開発のお仕事で紹介しているような、業務システムの開発の仕事を担う人と組むことになります。
業務の改善を支える仕事から見た考察
2004年から在宅ワークとフリーランスの仲介を続けてきた運営者として見てきた範囲では、業務の改善や自動化を外部に頼んでうまくいく会社には、共通点があります。頼む前に、自分たちで仕事の流れと担当を書き出していることです。流れ図と担当表が1枚あるだけで、受ける側は何をどこまで変えるのかを正確に見積もれ、やり取りの回数も減ります。反対に、「とにかく効率化してほしい」という依頼は、受ける側が現状を調べるところから始めなければならず、時間も費用もかさみがちです。
中間の手数料が乗らない直接の取引では、依頼する側が現状を整理して渡すほど、同じ予算で受ける側が手を動かせる時間が増えます。受ける側にとっても、手取りが厚い仕事を、迷わず進められます。業務の可視化は、社内の改善だけでなく、外部の力を借りるときの準備としても役立ちます。
業務の可視化と改善の考え方は、さまざまな業種に通じます。製造の現場では、機械の稼働状況を記録して見える形にする取り組みが進んでおり、中小製造業の低コストIoT導入2026|1台数万円で始める稼働可視化では、少ない費用で稼働を可視化する方法を紹介しています。介護や福祉の現場の記録のデジタル化については、介護・福祉事業所のDX化2026|IT導入補助金で介護記録を完全デジタル化で取り上げています。経営の側から業務の改善を支える知識を体系的に学びたい人には、中小企業診断士の資格も参考になります。業務の改善を手伝う仕事に関心がある人は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で、生成AIを使った業務の改善を支援する仕事も確かめてみてください。
よくある質問
Q. 業務の可視化はどの部署から始めればよいですか?
最初は、困りごとがはっきりしている1つの仕事に絞って始めるのがおすすめです。「月末の請求の作業で残業が多い」「問い合わせへの返事が遅い」のように、目的が明確な仕事ほど、書き出したあとに課題を見つけやすくなります。小さな範囲で成果を出してから、ほかの仕事に広げると協力も得やすくなります。
Q. 業務の可視化に専用のツールは必要ですか?
必須ではありません。業務の洗い出しや流れ図は紙と付箋で、担当表や時間の記録は表計算ソフトで十分に始められます。複数の人が同じ表を同時に直して混乱する、仕事ごとのやり取りが表とつながらない、といった困りごとが出てきたら、カンバンなどで状況を共有できるツールを検討します。
Q. 作業時間の記録はどのくらい細かく取ればよいですか?
細かすぎる記録は続かないため、30分単位で、その時間に主に何をしていたかを書く程度で十分です。1週間から2週間ほど記録すると、作業ごとの合計や担当ごとの偏りといった全体の傾向がつかめます。記録は個人の速さを比べるためではなく、作業ごとの時間を知るために使うと最初に伝えておきます。
Q. 可視化したあと、改善が進まないときはどうすればよいですか?
課題と改善の案に、担当と期限を付けて一覧にすることから始めます。案を出しただけでは動き出しにくいためです。そのうえで、月に1回など短い振り返りの場を決め、完了したものと止まっているものを確かめます。改善の前後で作業の時間を測って共有すると、次の改善への協力も得やすくなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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