透析クリニックを辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

中西 直美
中西 直美
透析クリニックを辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

この記事のポイント

  • ✓透析クリニックを辞めたいと感じている看護師向けに
  • ✓人員体制といった原因を
  • ✓透析という仕事そのものの問題か施設の問題かに切り分ける方法と

朝、クリニックに向かう電車の中で、今日の穿刺の患者さんの顔が浮かんで胃が重くなる。返血の時間が延びて、また残ることになるのかと考えてしまう。「透析クリニック 辞めたい」と検索したあなたは、きっとそんな毎日を過ごしているのだと思います。

まず、お伝えしたいことがあります。辞めたいと感じるのは、あなたが弱いからでも、看護師に向いていないからでもありません。透析クリニックは、ほかの職場にはない種類のしんどさが重なりやすい場所です。こういうご相談は、本当に多いんです。

そのうえで、1つだけ提案させてください。辞めるかどうかを決める前に、「何がつらいのか」を切り分けてみることです。

結論から書きます。透析クリニックを辞めたい理由は、大きく2つに分かれます。1つは、透析という仕事そのものが合わない場合。もう1つは、透析の仕事は嫌いではないけれど、今の施設の体制や人間関係が合わない場合です。この2つは、次に選ぶべき道がまったく違います。

前者なら透析以外の分野へ、後者なら別の透析施設へ移ることで、同じ苦しさを繰り返さずに済みます。この記事では、その切り分け方と、辞める前に試せること、辞めると決めたときの進み方を、順番にお話しします。

「辞めたい」が生まれやすい、透析クリニックという職場

最初に、透析クリニックでなぜ「辞めたい」が生まれやすいのかを見ておきます。自分のつらさがどこから来ているのかを知ると、それだけで少し気持ちが落ち着くことがあります。

透析クリニックの1日は、午前と午後、施設によっては夜間の「クール」で区切られています。1クールの始まりには、多くの患者さんに一斉に針を刺して治療を始めます。

透析室や透析クリニックでは、1日に2クール、8~10名程度の患者さまに対して2か所ずつ穿刺を行わなければなりません。業務の難易度の高さから「自分には向いていない」と感じれば、透析看護師を辞めたいと思うこともあるでしょう。 出典: kango-oshigoto.jp

1人の患者さんに2か所ずつ、それを何人分も、限られた時間の中で続けていく。しかも、使う針は採血や点滴より太く、患者さんは同じ腕に週3回、何年も針を刺されています。一回一回の穿刺に、患者さんの痛みと、その血管を何年もたせるかという責任が乗っています。

そして、患者さんとの関係は、何年も続きます。

患者さまにとって、透析治療は一生涯向き合っていかなければならないものです。週に2~3回通院して4~5時間治療を行うため、心身ともに疲弊してしまうこともあるでしょう。そのような事情が分かっていても、患者さまが不機嫌な態度だとストレスを感じる看護師も少なくありません。 出典: kango-oshigoto.jp

病棟なら、つらい関係も退院で区切りがつきます。透析クリニックでは、来週も、来月も、同じ患者さんと4時間を過ごします。

さらに、透析室は多くのベッドが仕切りなく並ぶオープンフロアです。穿刺の様子は、周りの患者さんにも同僚にも見えます。失敗すれば、それも見られます。

まとめると、透析クリニックでは次のようなしんどさが重なりやすいのです。

・太い針を、決まった時間の中で、続けて刺す負担 ・何年も続く患者さんとの関係、合わない関係も終わらない ・周りから見られながら働く緊張 ・毎日同じ流れの繰り返しによる、先の見えなさ ・人員を削れないため、1人欠けると残りの負担が一気に増える

これだけ重なれば、辞めたくなるのは自然なことです。まず、そう自分に言ってあげてくださいね。

切り分けの基本:仕事そのものか、この施設の体制か

ここからが本題です。辞めたい気持ちを、2つの箱に分けてみます。

1つ目の箱は「透析という仕事そのもの」。どの透析施設に移っても、同じように起きることです。

2つ目の箱は「今の施設の体制や人間関係」。施設が変われば、変わる可能性があることです。

よくある辞めたい理由を、この2つの箱に振り分けてみると、次のようになります。

辞めたい理由 仕事そのものに近い 施設の体制に近い
穿刺がどうしても怖い、自分に合わない ○ 穿刺を臨床工学技士が担う施設もある
失敗したときに責められる、見放される ○
同じ流れの繰り返しが苦痛 ○
患者さんとの長い関係に疲れる ○ 担当を調整できる施設もある
特定の患者さんの対応を一人で抱えている ○
残業が多く、定時に帰れない ○
機械のトラブルを一人で対応させられる ○
人間関係、先輩や上司との関係 ○
夜間クールの負担が重い ○
祝日や年末年始も出勤が続く ○

表を見ると分かるように、「穿刺」や「患者さんとの関係」のように、仕事そのものに見える理由の中にも、施設の体制によって変わる部分が含まれています。

だから、ざっくり「透析が合わない」と結論を出す前に、もう一段細かく見ていく価値があるのです。

ここで、紙とペンを用意してみてください。そして、この1か月で「辞めたい」と強く感じた場面を、3つから5つ書き出してみます。「いつ、どこで、何があって、どう感じたか」をできるだけ具体的に。

書き出したら、それぞれが表のどちらの箱に近いかを考えます。全部が左側に偏っているなら、透析という分野を離れることを考える時期かもしれません。右側が多いなら、透析を続けながら施設を変える選択肢が見えてきます。

心理学では、ばくぜんとした不安を具体的な場面に分けて見ることを「外在化」と呼ぶことがあります。難しく聞こえますが、頭の中でぐるぐるしているものを、紙の上に出して眺める、というだけのことです。それだけで、気持ちの重さが少し変わりますよ。

穿刺のつらさを切り分ける

穿刺のつらさは、辞めたい理由の中でも特に多いものです。ここは、もう少し細かく見ていきましょう。

穿刺のつらさには、実はいくつかの種類があります。

・針を刺す行為そのものが怖い、手が震える ・技術がなかなか上達しない、失敗が続く ・失敗したときの周りの反応がつらい ・難しい血管の患者さんばかり任される ・開始の時間帯に急かされて、落ち着いて刺せない

1つ目は、仕事そのものに近いつらさです。何か月、何年と続けても針を刺す行為に強い恐怖が残るなら、無理に続ける必要はありません。

たとえば、多くの施設では、同じ患者さんに2回失敗したら先輩に交代する、という決まりを設けています。この決まりがある施設では、失敗しても一人で抱え込まずに済みます。反対に、決まりがなく「できるまでやる」空気の施設では、失敗のたびに追い詰められていきます。

また、臨床工学技士(透析の機械を扱う専門職)が多い施設では、穿刺の多くを臨床工学技士が担当し、看護師は観察や足のケア、生活指導に比重を置く分担になっていることがあります。

以前、私のところに相談に来られた看護師さんがいました。透析クリニックに入って2年、穿刺の失敗が続くたびに、先輩から大きなため息をつかれ、患者さんの前で交代させられる。「私は透析に向いていないので、看護師自体を辞めようかと思っています」とおっしゃっていました。

一緒にお話を整理していくと、その方がつらかったのは、刺すこと自体よりも、失敗したときの周りの反応でした。その後、穿刺の教育の仕組みがしっかりした別の透析クリニックに移られて、今は落ち着いて働いていらっしゃいます。

「穿刺がつらい」と感じたら、そのつらさが「刺すこと」なのか「刺す環境」なのかを、一度考えてみてください。

見分けるヒントを1つお伝えします。休みの日に、穿刺のことを思い出したとき、何が一番先に浮かびますか。針が血管に入る感覚や、患者さんの痛そうな表情が浮かぶなら、刺すこと自体への負担が大きいのかもしれません。先輩のため息や、周りのベッドからの視線、急かされる時計の針が先に浮かぶなら、刺す環境のほうがつらさの中心にある可能性が高いです。

どちらであっても、あなたの感じ方は間違っていません。ただ、次に選ぶ道が変わるので、正直に自分に聞いてみてくださいね。

患者さんとの関係のつらさを切り分ける

次に、患者さんとの関係のつらさです。

透析の患者さんは、週に何度も長い時間の治療を受け、食事や水分を制限されながら暮らしています。心も体も疲れていて、その疲れが、スタッフへの強い言葉や不機嫌な態度として出ることがあります。頭では分かっていても、毎回それを受け止め続けるのは、とても消耗しますよね。

このつらさも、いくつかに分けて見てみましょう。

・特定の患者さんとの関係がつらい ・患者さん全体との距離の近さに疲れる ・生活指導をしても、なかなか変わらないことに無力感がある ・長く見てきた患者さんの入院や最期に関わるのがつらい

1つ目の「特定の患者さん」の場合は、施設の体制で変わる可能性があります。チームで担当を調整する、対応が難しい患者さんには2人で関わる、といった工夫をしている施設は少なくありません。まずは、上司やリーダーに「この患者さんの対応が続いてしんどい」と伝えてみる価値があります。伝えても「みんな我慢している」で終わってしまうなら、それは施設の体制の問題として受け止めてよいと思います。

2つ目と3つ目は、透析という仕事そのものに近いつらさです。何年も続く関係、すぐには結果が出ない関わり。これが透析看護の中心なので、どの施設に移っても、ある程度は同じように起きます。

ただ、3つ目の無力感については、考え方で少し軽くできることもあります。透析に至った患者さんの食事や生活の習慣は、何十年もかけてできあがったものです。数か月の指導で変わらないのは、あなたの力不足ではありません。「制限を守らせる」ではなく「本人が選べる工夫を1つ増やす」を自分の役割にすると、関わりの意味が見えやすくなります。

4つ目の、看取りに関わるつらさは、とても大切なサインです。何年も顔を合わせてきた患者さんを見送るとき、看護師の心には深い悲しみが残ります。これは「悲嘆」と呼ばれる自然な反応で、弱さではありません。同僚と気持ちを話す場がある職場では、この悲しみを少しずつ受け止めていくことができます。話す場がなく、次の日も何事もなかったように働くことを求められているなら、それは一人で抱えるには重すぎます。そのつらさは、仕事そのものというより、悲しみを受け止める仕組みがない施設の体制の問題として考えてよいと思います。

人間関係と人員体制のつらさを切り分ける

透析クリニックを辞めたい理由として、人間関係や人員体制を挙げる方もたくさんいます。

透析クリニックは、看護師と臨床工学技士が少人数で、同じフロアで、毎日同じ時間割で働く職場です。人数が少ないぶん、1人との関係がこじれると逃げ場がありません。そして、患者さんのベッドを空けられないので、人員が欠けると残った人に負担がそのまま乗ります。

このつらさは、ほとんどが「施設の体制」の箱に入ります。つまり、施設を変えれば変わる可能性が高い、ということです。

ここで確かめておきたいのは、次のような点です。

・人手不足が一時的なものか、ずっと続いているものか ・残業が、患者さんの状態による一時的なものか、毎日の決まった流れになっているか ・機械のトラブルや急変のときに、頼れる人がフロアにいるか ・夜間クールの勤務が、希望に反して増えていないか ・特定の人との関係が原因なのか、職場全体の雰囲気なのか

たとえば、欠員が出て一時的に忙しい時期なら、数か月で新しい人が入り、状況が変わることもあります。一方で、何年も「人が足りない」状態が続いている施設は、今後も大きくは変わりにくいと考えたほうが現実的です。

人間関係については、特定の1人との関係なのか、職場全体に「失敗を責める」「新人に冷たい」といった空気があるのかで、対処が変わります。前者なら、上司に相談してシフトや担当の組み方を変えてもらえる可能性があります。後者なら、個人の努力で変えるのは難しいでしょう。

透析クリニックならではの人間関係として、看護師と臨床工学技士の間の関係もあります。穿刺をどちらが担当するか、機械のトラブルのときに誰が動くか。この分担があいまいな施設では、「看護師がやるべき」「臨床工学技士の仕事だ」というすれ違いが起きやすく、それが日々のぎくしゃくにつながります。こうした摩擦は、個人の性格ではなく、分担が決まっていないという施設の仕組みから生まれていることが多いのです。

また、少人数の職場では、長く勤めている人のやり方がそのまま「職場のルール」になっていることもあります。新しく入った人が別のやり方を提案しにくく、合わせるしかない。こういう息苦しさを感じているなら、それもあなたのせいではありません。

こういうご相談もありました。「長く勤めているベテランの方に、毎回やり方を細かく直される。患者さんの前で注意されるのがつらい」。その方は、ベテランの方が悪い人だとは思っていませんでした。むしろ、患者さんのためを思って厳しくしているのも分かっていたそうです。だからこそ、自分が我慢すべきだと抱え込んでいました。

相手に悪意がなくても、あなたがつらいなら、それは調整が必要な状況です。「患者さんの前ではなく、後で教えてもらえると助かります」と伝えるだけで変わることもありますし、伝えても変わらなければ、上司に間に入ってもらうことを考えてよいのです。

辞めたくなった時期によって、見るべき点が変わる

「辞めたい」と感じた時期によっても、切り分けのポイントは少しずつ違います。いま自分がどの時期にいるのかも、合わせて考えてみてください。

入職して3か月以内

この時期の辞めたい気持ちは、覚えることの多さと、フロアの流れについていけない焦りから来ていることがほとんどです。機械の仕組み、患者さんの名前と特徴、アラームへの対応、穿刺の練習。一度に押し寄せるので、誰でも「自分だけができていない」と感じやすい時期です。

ここで見てほしいのは、「分からないことを聞ける相手がいるか」です。プリセプターが決まっていて、聞けば答えてもらえる環境なら、つらさは時間とともに軽くなっていくことが多いです。聞く相手が決まっておらず、聞くたびに嫌な顔をされるなら、それは施設の教育の体制の問題です。

1年前後

穿刺を一通り任されるようになり、難しい血管の患者さんも担当し始める時期です。失敗の重みを一番感じやすいのが、この頃です。また、何か月も生活指導を続けても変わらない患者さんとの関わりに、無力感を覚え始める時期でもあります。

この時期は、穿刺と患者さんとの関係の切り分けが特に役立ちます。前の章で書いた見分け方を、ぜひ使ってみてください。

もう1つ、この時期に多いのが、夜間クールや遅番の勤務が増え始めることです。慣れてきたからと任される時間帯が広がり、生活のリズムが崩れてつらくなる。これは仕事そのものではなく、勤務の組み方の問題なので、調整を相談できる余地があります。

3年以上

仕事には慣れたけれど、「このままでいいのか」という迷いが出てくる時期です。毎日同じ流れの繰り返しに、先が見えない感覚を持つ方もいます。また、長く見てきた患者さんの入院や最期に関わることが増え、心の疲れがたまりやすくなります。

この時期の辞めたい気持ちは、職場を変えることで解決する場合もあれば、役割を変えることで解決する場合もあります。後輩の教育を担う、足のケアや療養指導の専門性を深めるといった、新しい目標を持つことで気持ちが変わる方もいます。それでも気持ちが変わらないなら、透析の経験を持って別の分野に移るのは、とても自然な流れです。

心と体のサインを、見逃さないで

切り分けの話を続けてきましたが、ここで1つ、とても大切なことをお伝えします。

辞めるか辞めないかを考えるより先に、今のあなたの心と体の状態を確かめてください。

次のようなサインが2週間以上続いているなら、切り分けより先に、休むことや、専門家に相談することを優先してほしいのです。

・眠れない、朝早く目が覚めてしまう、寝ても疲れが取れない ・出勤前に動悸や吐き気、腹痛がある ・休みの日も仕事のことが頭から離れない ・以前は楽しめていたことが楽しめない ・食欲が極端に落ちた、または増えた ・小さなミスが増えた、集中できない

こうした状態は、心が限界に近づいているサインかもしれません。この状態で穿刺を続けると、ミスが増え、それがさらに自信を削るという悪循環に入りやすくなります。

職場に産業医や相談窓口があれば、そこを使ってください。なければ、かかりつけの医療機関や、心療内科、メンタルヘルスの相談窓口に相談することも考えてみてくださいね。医師の診断があれば、休職という選択肢を取れる場合もあります。

透析クリニックならではの注意点もあります。この職場は、祝日も年末年始も治療が続き、人員を削れないので、「自分が休むと誰かが困る」という気持ちが働きやすいのです。その気持ちが強い人ほど、体調が悪くても休めず、限界を越えてしまいます。

でも、考えてみてください。あなたが倒れて長く休むことになれば、職場はもっと困ります。早めに休んで回復することは、長い目で見れば、患者さんにとっても同僚にとっても一番良い選択です。

私がカウンセリングでお会いした看護師さんの中には、「年末年始の人手が足りない時期だから」と、不眠と動悸を抱えたまま3か月働き続けた方がいました。最後は出勤途中に動けなくなり、そのまま長いお休みに入ることになりました。「あのとき1週間休んでいれば」と、何度もおっしゃっていたのが忘れられません。

「看護師なのに、自分の体調管理ができていない」と責める必要はありません。人を支える仕事をしている人ほど、自分のサインを後回しにしがちです。患者さんの小さな変化にはすぐ気づけるのに、自分の変化には気づけない。それは、あなたがいつも相手のほうを向いて働いてきた証拠でもあります。大丈夫です。休むことも、立派な対処の1つです。

辞める前に、試せること

心と体のサインが落ち着いていて、切り分けで「施設の体制」に近い理由が見えてきたら、辞める前に試せることがあります。

上司に、具体的に相談する

「つらいです」だけでなく、「開始の時間帯に、難しい血管の患者さんが続いて負担が大きい」「特定の患者さんの対応を、しばらく交代してもらえないか」のように、場面と希望をセットで伝えると、上司も動きやすくなります。

担当や勤務の形を変えてもらう

夜間クールを外してもらう、午前クールだけにしてもらう、穿刺の担当を一時的に減らしてもらう、といった調整です。常勤からパートに切り替えて、日数を減らしながら続ける方もいます。

同じ法人の別の施設に移る

複数のクリニックを持つ法人なら、別の施設への異動を相談できることがあります。退職して転職活動をするより負担が小さく、雰囲気の違う職場を経験できます。

期間を決めて、様子を見る

「3か月だけ、上に書いた相談や調整を試してみて、それでも変わらなければ動く」と、自分の中で期限を決めておく方法です。期限があると、毎日「辞めるべきか」を考え続ける消耗が減ります。期限の日には、最初に書き出した「辞めたい場面」を読み返して、減ったか、変わらないか、増えたかを確かめてみてください。

相談する前に、伝えることを紙に書いておく

上司に相談しようと思っても、いざ面と向かうと、言いたいことの半分も言えなかった。そういう経験はありませんか。つらい気持ちが強いときほど、言葉はうまく出てきません。

相談の前に、次の3つを紙に書いておくと、落ち着いて話せます。

・何がつらいのか(具体的な場面を1つか2つ) ・それによって、どんな影響が出ているのか(眠れない、ミスが増えた、など) ・どうしてもらえると続けやすいのか(担当の調整、勤務の形の変更、など)

3つ目が思いつかなくても大丈夫です。「どうしたらいいか、一緒に考えてもらえませんか」と伝えるだけでも、相談としては十分です。

どれも、あなたが無理をして我慢するためのものではありません。「試したけれど変わらなかった」という事実は、次に進むときの確かな判断材料になります。

それでも辞めると決めたとき:次の選び方

いろいろ試しても、やっぱり辞めたい。そう決めたなら、その決断を大切にしてください。

ご紹介した1~3の対処法を試してみても辞めたい気持ちが変わらない場合は、転職を検討してみましょう。透析看護師の業務にミスマッチを感じている場合は透析以外の分野の職場を選ぶことも可能です。また、職場の体制や人間関係が原因で辞めたい場合は、ほかの透析室や透析クリニックへ転職する方法もあります。我慢に限界を感じるような無理をしてまで同じ職場に留まる必要はないので、新しい現場でのスタートを検討してみましょう。 出典: kango-oshigoto.jp

ここで、最初の切り分けが生きてきます。

施設の体制が原因なら、別の透析施設へ

透析の仕事自体は嫌いではない、という方は、透析の経験を活かして別の透析施設に移ることを考えてみてください。透析の経験は、ほかの透析クリニックや病院の透析室への転職で評価されやすい経験です。

次の施設を選ぶときは、今の職場でつらかった点が、次の職場ではどうなっているかを必ず確かめます。

・穿刺は看護師と臨床工学技士のどちらが主に担当しているか ・穿刺で失敗したときに交代する決まりがあるか ・臨床工学技士と医師がフロアにいる時間帯 ・夜間クールの有無と、その勤務の頻度 ・対応が難しい患者さんの担当を、チームで調整しているか

できれば、午前クールの開始の時間帯に見学させてもらってください。穿刺が集中する時間帯のフロアの空気で、その施設の余裕が分かります。

仕事そのものが合わないなら、透析以外の分野へ

透析という仕事そのものが合わないと感じたなら、ほかの分野に移るのは自然な選択です。透析クリニックで身につけた、慢性疾患の高齢の患者さんを長く見る力、足のケア、生活指導の経験は、訪問看護や介護施設、外来のクリニックなどでも役に立ちます。

日勤中心の働き方を続けたいのか、夜勤ありでも収入を上げたいのか。条件の面も整理しておくと、次の職場を選びやすくなります。看護師の働き方ごとの年収の水準は、看護師の年収・単価相場で確認できます。今の条件と比べる目安にしてみてください。

辞めるときの伝え方

透析クリニックは人員を削れない職場なので、辞めるときは早めに伝えることが、自分を守ることにもつながります。法律上は、期間の定めのない雇用なら2週間前に申し出れば退職できますが、就業規則で1か月前などと決めている施設が多いので、まず就業規則を確認しましょう。

患者さんへの挨拶のタイミングは、施設の方針に合わせるのが基本です。長く見てきた患者さんに何も言わずに去るのがつらい、という方も多いですよね。最後の勤務の日に、無理のない範囲で一言伝えられるよう、上司と相談しておくと、気持ちの区切りがつけやすくなります。

運営者の視点:辞めることは、終わりではない

ここからは、20年近くフリーランスや在宅ワークの市場を見てきた立場から、お話しします。

運営者として見てきた限りでは、1つの職場を辞めた経験を「失敗」として抱えている人ほど、次の選択が遅れがちです。反対に、「何がつらくて、何は大丈夫だったのか」を言葉にできている人は、次の職場で同じ苦しさを繰り返しにくい。辞めることそのものより、辞める前の切り分けが、その後の働き方を左右しているように感じます。そして、長く働き続けている人ほど、「この人に任せると安心」と思ってもらえる関係を、職場が変わっても一から丁寧に築き直しています。経験は持ち運べても、信頼は場所ごとにつくるものだと知っているのでしょう。

透析クリニックで働いた経験は、辞めた後も消えません。慢性疾患の患者さんを長く支えてきた経験は、臨床を続けるときにも、臨床以外の働き方を加えるときにも使えます。臨床経験を活かして自宅でできる仕事の例は、看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】で紹介されています。次の職場を探す間や、働く日数を減らしている時期に、少しずつ始める方もいます。こうした仕事は、中間の手数料がかからない直接のやり取りなら、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側は手取りが厚くなります。手数料0%の良さは、金額の大きさよりも、お互いが納得できる関係が長く続きやすいところにあると感じています。

一人で考えていると、どうしても堂々めぐりになります。信頼できる人や、キャリアの相談を受ける専門家に話してみることも、切り分けの大きな助けになります。相談を受ける側がどんな仕事をしているのかは、職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介されています。

辞めたいと思ったあなたは、ここまでずっと頑張ってきた人です。何がつらいのかを切り分けて、あなたに合う次の場所を選んでください。あなたは一人じゃありませんよ。

よくある質問

Q. 透析クリニックを1年未満で辞めても大丈夫ですか?

心や体の不調が出ているなら、期間にこだわらず自分を守ることを優先してください。ただ、次の職場を選ぶときに同じ苦しさを繰り返さないために、辞めたい理由が透析という仕事そのものなのか、今の施設の体制なのかを切り分けておくことが大切です。面接では、何が合わず、次の職場で何を確かめたいのかを具体的に伝えると理解されやすくなります。

Q. 穿刺がつらくて辞めたい場合、別の透析施設なら続けられますか?

つらさの中身によります。刺すこと自体に強い恐怖が続くなら、透析以外の分野を考えるのも自然です。一方、失敗したときの周りの反応や、交代の決まりがないこと、難しい血管の患者を任され続けることがつらいなら、教育の仕組みがある施設や、臨床工学技士が穿刺を多く担う施設に移ることで続けられる場合があります。

Q. 透析クリニックを辞めた後、どんな職場に移る人が多いですか?

施設の体制が合わなかった人は、別の透析クリニックや病院の透析室に移ることが多い傾向です。透析という仕事自体が合わなかった人は、訪問看護、介護施設、外来のクリニックなどに移るケースが見られます。透析で身につけた慢性疾患の継続管理、足のケア、生活指導の経験は、こうした職場でも活かしやすい経験です。

Q. 辞めたい気持ちが強いとき、まず何をすればよいですか?

眠れない、出勤前に動悸や吐き気があるといった状態が2週間以上続いているなら、辞めるかどうかを考える前に、産業医や医療機関に相談してください。心と体が落ち着いているなら、この1か月で辞めたいと感じた場面を3つから5つ書き出し、仕事そのものの問題か施設の体制の問題かに分けてみると、次に取るべき行動が見えてきます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月22日最終更新:2026年9月22日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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