特別支援学校へ転職するという選択|前の職場との落差と、決め手

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
特別支援学校へ転職するという選択|前の職場との落差と、決め手

この記事のポイント

  • ✓通常の学校や福祉の現場から特別支援学校の教員へ転職すると
  • ✓1日の流れと複数担任の体制
  • ✓学習より生活に比重がある授業

特別支援学校の教員へ転職するのは、良い選択なのか。結論から言うと、「1人の子どもの変化を、時間をかけて複数の大人で支える仕事」に手応えを感じられる人にとっては、通常の学校よりも納得感のある職場になりやすい傾向があります。一方で、「教科の授業で子どもの学力を伸ばすこと」にやりがいの中心を置いている人は、落差の大きさに戸惑うことが多いのも事実です。

特別支援学校への転職を考える人の出発点は、大きく2つに分かれます。1つは、小学校や中学校、高校で働く教員が、特別支援学級や通級での経験をきっかけに、特別支援学校を希望するケース。もう1つは、放課後等デイサービスや保育園、障害福祉の施設で子どもに関わってきた人が、教員として働く道を考えるケースです。

どちらの場合も、「同じ子どもに関わる仕事だから、そこまで変わらないだろう」と考えていると、入ってから驚くことになります。この記事では、特別支援学校という職場の中で何が起きているのかを整理したうえで、前の職場との落差、免許と採用のルート、転職を決める前に確かめておきたい点を順番にまとめます。

特別支援学校という職場の全体像

まず、特別支援学校がどういう場所なのかを整理しておきます。

特別支援学校は、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱のいずれかの障害のある子どもが通う学校です。1つの障害種だけを対象にする学校もあれば、知的障害と肢体不自由のように複数の障害種を受け入れる学校もあります。在籍する子どもの数は長く増える傾向が続いており、特に知的障害の特別支援学校では、教室の不足が課題になっている地域もあります。

学校の中は、幼稚部、小学部、中学部、高等部に分かれています。すべての学部を持つ学校もあれば、高等部だけの学校もあります。同じ特別支援学校でも、どの学部に配属されるかで仕事の中身はかなり違います。

もう1つ押さえておきたいのが、医療的ケアが必要な子どもの存在です。たんの吸引や経管栄養など、日常的に医療的な支援が必要な子どもが、肢体不自由の学校を中心に多く通っています。医療的ケアは主に学校に配置された看護師が担いますが、一定の研修を受けた教員が特定の行為を行う仕組みもあります。自分が配属される学校で、教員が医療的ケアにどこまで関わるのかは、学校や自治体によって違うため、事前に確かめておきたい点です。

また、特別支援学校には、学校の外に向けた役割もあります。地域の小中学校で障害のある子どもを担当する教員からの相談に応じる、センター的な機能です。経験を積んだ教員は、こうした地域支援の担当になることもあります。

1クラスの人数と、担任の数

特別支援学校の大きな特徴は、1クラスの子どもの人数が少ないことです。国の基準では、小学部と中学部は1学級6人、高等部は8人が標準とされ、障害を重複している子どもの学級は3人が標準です。そのうえで、1つのクラスに複数の教員が担任としてつくのが一般的です。

つまり、通常の学校で「35人の子どもを1人の担任が見る」形に慣れている人は、「6人の子どもを2人から3人の教員で見る」形に変わります。これは一見、楽になりそうに思えます。ところが実際には、1人ひとりに必要な支援の量が多く、教員同士で方針を揃えるための話し合いも必要になるため、別の種類の忙しさが生まれます。

教員以外の職員

特別支援学校には、教員のほかにも多くの職員が働いています。医療的ケアを担う看護師、寄宿舎で子どもの生活を支える寄宿舎指導員、学校によっては介助員や支援員もいます。スクールバスの運転手や、添乗する職員もいます。

通常の学校よりも、職種の違う大人と一緒に働く場面がはるかに多い職場です。福祉の現場から来た人にとっては、この多職種での連携はなじみがある一方、通常の学校から来た教員にとっては、新しく覚えることの1つになります。

特別支援学校の1日で、何が起きているか

知的障害の特別支援学校の小学部を例に、1日の流れを見てみます。

時間帯 子どもの様子 教員の動き
8時台 スクールバスや保護者の送りで登校 バス停や玄関での受け入れ、連絡帳の確認
9時台 着替え、排泄、朝の会 身支度の支援、体調の確認
10時〜12時 日常生活の指導、生活単元学習、教科の学習 授業、個別の課題への支援
12時台 給食 食事の支援、食べ方の指導
13時台 歯みがき、休憩、午後の学習 見守り、個別の支援
14時台 帰りの会、下校 連絡帳の記入、バスへの引き渡し
15時以降 下校後 学年会、授業の準備、個別の計画の作成

通常の学校と大きく違うのは、授業の時間と生活の時間の境目があいまいなことです。着替えや排泄、給食の時間は、そのまま「生活に必要な力を身につける学習」の時間でもあります。特別支援学校の教育課程には、各教科に加えて自立活動という領域があり、障害による学習上や生活上の困難を改善するための指導が組み込まれています。知的障害の特別支援学校では、教科や領域を合わせた「日常生活の指導」「生活単元学習」「作業学習」といった授業の形も広く使われています。

子どもが帰ってからが、もう1つの仕事

子どもの下校は14時台から15時ごろと、通常の学校より早めです。そこから、教員の仕事の後半が始まります。

特別支援学校では、子ども1人ひとりに「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」がつくられます。個別の教育支援計画は、家庭や医療、福祉など学校の外の機関とも連携しながら長い期間の支援を考えるもの、個別の指導計画は、学校での具体的な指導の目標と方法を定めるものです。この計画の作成と見直し、学年での打ち合わせ、連絡帳への返事、授業で使う教材づくり。放課後の時間は、これらで埋まっていきます。

私が以前、教育系の媒体の取材で特別支援学校を訪ねたとき、下校のバスを見送った直後に、教員たちがそのまま職員室の一角に集まり、その日の子どもの様子を5分ほどで共有していたのが印象に残っています。「この5分がないと、翌日の支援がばらばらになる」と話していました。複数の教員で1つのクラスを見る職場では、情報の共有そのものが仕事の中心にあるのです。

前の職場との落差はどこにあるか

ここからは、転職した人が「前の職場と違う」と感じやすい点を、出身の職場ごとに整理します。

通常の学校から来た教員が感じる落差

1つ目は、授業の組み立て方です。通常の学校では、学習指導要領にそって教科書を進めることが授業の骨格になります。特別支援学校、特に知的障害の学校では、子ども1人ひとりの目標から逆算して授業をつくります。同じクラスの6人でも、目標がそれぞれ違う。教科書どおりに進めれば形になる、という手がかりがないことに、最初は戸惑う人が多い傾向があります。

2つ目は、身体の介助です。排泄の支援、食事の介助、着替えの手伝い、車いすからの移乗。肢体不自由の学校では特に、教員が子どもの体を支える場面が日常的にあります。通常の学校ではまず経験しない仕事であり、腰を痛める教員も少なくありません。

3つ目は、成果の見え方です。通常の学校では、テストの点数や入試の結果という形で、成果がはっきり見えます。特別支援学校では、「スプーンを自分で口に運べるようになった」「友だちの名前を呼べるようになった」といった変化を、何か月、ときには何年もかけて積み重ねていきます。この時間の感覚の違いに、やりがいを感じる人と、手応えのなさを感じる人がはっきり分かれます。

4つ目は、チームでの意思決定です。通常の学校では、学級のことは担任が決めるのが基本です。特別支援学校では、複数の担任で話し合って決めます。自分の考えだけでは進められない場面が増えます。

福祉の現場から来た人が感じる落差

放課後等デイサービスや障害福祉の施設、保育園から来た人の場合は、落差の方向が逆になります。

1つ目は、学習としての意味づけです。福祉の現場では「その子が安心して過ごせるか」が中心にあったのに対し、学校では同じ着替えや食事の支援にも、教育課程の中での目標と評価がついてきます。支援の内容は似ていても、「何のためにやっているのか」を指導計画の言葉で説明することが求められます。

2つ目は、事務と書類の量です。個別の指導計画、通知表、指導要録、学校行事の計画書。福祉の記録とは形式も量も違います。

3つ目は、組織の大きさです。放課後等デイサービスは数人から10人ほどの職場でしたが、特別支援学校は教員だけで数十人から100人を超える規模になることもあります。学部や学年、分掌といった組織の中で動く感覚に慣れるまで、少し時間がかかります。

保護者との距離

どちらの出身の人にとっても共通の落差になりやすいのが、保護者との距離の近さです。多くの特別支援学校では、連絡帳で毎日のように保護者とやりとりをします。子どもの体調、家での様子、学校での出来事。そのぶん、関係が良いときは心強い協力者になり、関係がこじれたときは担任にかかる負担が非常に大きくなります。

特別支援学校の教諭ですが、隣の学年で学年懇談会でクレームを出したり、担任に4時間もクレームの電話をする保護者がいると聞きましたどのような対応が良いのでしょうか? ちょっとしたことですぐに電話がきてクレーム。 それが何時間ともなると、その事で振り回されると思うとこちらが参ってしまいます。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

これは極端な例ですが、保護者との関係に悩む声は、特別支援学校の教員から少なからず聞かれます。背景には、子どもの将来への保護者の強い不安があります。学校卒業後の進路が限られること、成長の見通しが立てにくいこと。その不安が、担任への要求という形で表に出ることがあります。正直なところ、こうした対応を担任1人に背負わせている学校は、組織として問題があると思います。複数担任や学部主事、管理職と役割を分けて対応する体制があるかどうかは、職場を見るうえで大事な点です。

免許と採用のルート

特別支援学校の教員になるための道筋を整理します。

必要な免許

特別支援学校の教員には、原則として、幼稚園、小学校、中学校、高校いずれかの教員免許に加えて、特別支援学校教諭の免許状が必要です。特別支援学校教諭の免許状は、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱の領域ごとに定められています。

ただし、教育職員免許法の附則により、当分の間は、特別支援学校教諭の免許状を持っていなくても、幼稚園から高校までの教員免許があれば、特別支援学校で相当する学部の教員になれるとされています。実際には、特別支援学校の教員の多くが特別支援学校教諭の免許状を持っており、国も免許状の取得を進めています。採用試験で特別支援学校教諭の免許状を持っていることを条件にしたり、加点したりする自治体もあります。

すでに教員免許を持っている人は、大学の通信課程や、教育委員会などが実施する免許法認定講習で単位を修得し、特別支援学校教諭の免許状を取る方法があります。働きながら取得する教員も多い道です。

一方、福祉の現場から来る人で教員免許を持っていない場合は、大学などで教員免許の取得から始めることになります。数年単位の計画になるので、先に後で触れる教員以外の職種で学校に関わりながら、免許の取得を目指す人もいます。

公立の教員採用試験

特別支援学校の教員の多くは、都道府県や政令指定都市の公立学校の教員です。教員採用試験に、特別支援学校の区分を設けている自治体が多くあります。社会人経験者や、他の自治体で教員として働いている人向けの特別な選考を用意している自治体もあり、年齢の上限を大きく引き上げたり、撤廃したりする動きも広がっています。

すでに公立学校の教員である場合

同じ自治体の公立学校で働いている教員であれば、人事異動の希望として特別支援学校を出す方法があります。採用試験を受け直す必要はありません。ただし、希望どおりに異動できるかは、その年の人事の状況によります。特別支援学級を担任した経験や、特別支援学校教諭の免許状を持っていることが、希望を伝えるうえでの材料になります。

講師として入る

採用試験に合格する前に、臨時的任用教員や非常勤講師として特別支援学校で働く道もあります。特別支援学校は教員の不足が続いている地域が多く、講師の募集は比較的多い傾向があります。講師として働きながら、職場が自分に合うかを確かめ、採用試験の準備を進めるという順番は、転職のリスクを抑える意味で合理的です。

教員以外の職種で、特別支援学校に関わる道

教員免許を持っていない人、まず学校という職場を知りたい人には、教員以外の職種で特別支援学校に関わる道もあります。

・寄宿舎指導員:寄宿舎のある学校で、子どもの生活全般を支援する ・学校看護師:たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアを担う ・介助員、支援員:授業や生活場面での介助や見守りを担う(名称や任用の形は自治体によって違う) ・実習助手:高等部の作業学習などで教員を補助する

これらの職種は、自治体によって正規の職員として採用されることもあれば、会計年度任用職員として1年ごとの任用になることもあります。求人は、都道府県の教育委員会のホームページや、ハローワークに出されることが多いので、住んでいる地域の教育委員会の採用情報を確認してみてください。

会計年度任用職員の場合、任用は年度ごとで、勤務時間は子どもの登校から下校までに合わせた短時間のものが多い傾向があります。夏休みなどの長期休業中は勤務日が少なくなり、その間の収入が減ることもあります。一方で、学校の年間の予定に合わせて働けるため、子育て中の人や、大学の通信課程で免許の取得を進めている人には組みやすい働き方でもあります。任用の条件、特に長期休業中の扱いと、翌年度の任用の見込みは、応募の段階で必ず確認しておきましょう。

学校看護師の仕事は、病院の看護とはかなり性質が違います。医療的ケアの実施に加えて、教員への助言、保護者や主治医との連絡、校外学習への同行など、教育の場に合わせた役割が求められます。医師がそばにいない環境で、子どもの体調の変化を判断する責任の重さもあります。

看護師の資格を持つ人にとっては、学校看護師は病院とは違う働き方ができる選択肢の1つです。看護師の年収の相場や働く場所による違いは看護師の年収・単価相場で確認できるので、病院勤務との比較の参考になります。

福祉の現場から来る人にとっては、介助員や支援員として働くことで、学校の中で子どもがどう過ごしているのか、教員がどう動いているのかを内側から見ることができます。そのうえで教員を目指すかどうかを判断しても、遅くはありません。

転職を決める前に確かめたいこと

特別支援学校への転職を考えたとき、決め手になる点を5つに整理します。

1. どの障害種の学校か

知的障害、肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、病弱。障害種によって、授業の中身も、身体介助や医療的ケアの比重も、求められる専門性も大きく違います。視覚障害の学校では点字、聴覚障害の学校では手話やコミュニケーションの方法の専門性が求められます。自分の関心と経験がどの障害種と重なるのかを、最初に考えておく必要があります。

2. どの学部か

小学部では生活の基盤づくり、中学部では思春期の揺らぎへの対応、高等部では就労や卒業後の生活に向けた進路指導の比重が大きくなります。高等部では、企業での現場実習の調整や、卒業後に利用する福祉サービスの事業所との連携も仕事になります。

3. 身体の負担に耐えられるか

身体介助のある学校では、腰や肩への負担が避けられません。持病がある人や体力に不安がある人は、見学や講師の経験を通じて、実際の負担を確かめておくことが大切です。

4. 通勤とスクールバス

特別支援学校は、地域に1校しかない場合も多く、自宅から遠くなりがちです。また、スクールバスの添乗が教員の仕事になっている学校では、朝の出勤時間が早くなることもあります。

5. 教員の働き方の実態

特別支援学校は子どもの下校が早い一方で、下校後に会議や計画の作成が集中します。持ち帰りの仕事がどのくらいあるのか、行事の準備の負担はどうか。見学や説明会で、現職の教員に聞いてみてください。

学校の情報を集める方法

これらを確かめるための情報源として、まず学校のホームページがあります。多くの特別支援学校は、学校の概要や教育課程、学部ごとの時間割の例、年間の行事予定を公開しています。作業学習の種類や、高等部の卒業生の進路の傾向が載っていることもあり、学校の特色をつかむ手がかりになります。

次に、学校公開や体験の機会です。特別支援学校の多くは、入学を考える保護者向けの学校見学会や公開授業を行っています。教員を目指す人向けの説明会や、ボランティアの募集をしている学校もあります。授業中の教員同士の連携の様子や、子どもへの声のかけ方を自分の目で見ると、求人の文面からは分からない職場の空気が伝わってきます。

放課後等デイサービスや保育園などで働いてきた人が、教員の給与と自分のいまの給与を比べるときは、手当や退職金、昇給の仕組みまで含めて見ることが大切です。保育の分野で働く人の年収の水準は保育士の年収・単価相場にまとまっているので、比較の出発点として使えます。

転職した最初の1年に起きやすいこと

特別支援学校に移った最初の1年は、どんな経歴の人でも、戸惑う場面がいくつか重なります。あらかじめ知っておくと、落ち着いて向き合えます。

4月の最初の数週間

特別支援学校の新年度は、子どもの情報の引き継ぎから始まります。前年度の個別の指導計画、支援のときの注意点、アレルギーや発作の有無、保護者との約束事。子ども1人あたりの情報量が、通常の学校とは比べものになりません。担当する子どもが決まったら、まずこれらの資料を読み込むことに時間を使ってください。子どもの登校が始まってから「知らなかった」では、安全に関わる場面があるからです。

年下の先輩に教わる

経験のある教員が転職してきた場合でも、特別支援学校では「年下の先輩」から教わる場面が多くあります。特定の子どもへの関わり方については、その子を長く担当してきた若い教員のほうが詳しいのは当然です。前の職場での経験や年齢にこだわらず、「この子については教えてください」と素直に聞ける人ほど、早く職場になじんでいきます。

研修と、専門性の学び直し

公立学校の教員として新たに採用された場合は、初任者研修があります。人事異動で移ってきた場合も、特別支援教育に関する研修が用意されていることが多くあります。障害の特性の理解、自立活動の考え方、身体介助の方法、医療的ケアの基礎。学ぶことは多いですが、1年目にすべてを身につける必要はありません。まずは担当する子どもに必要なことから、優先して学んでいけば十分です。

保護者との最初の関係づくり

新しく担任になった教員に対して、保護者は期待と同時に不安も抱いています。前の担任との関係が良かった家庭ほど、「今度の先生は分かってくれるだろうか」と慎重になります。最初の数か月は、連絡帳にその日の小さな出来事を具体的に書く、できたことを1つ添える、気になることは早めに電話で伝える、といった積み重ねが信頼の土台になります。前の職場で保護者対応に苦労した経験がある人ほど、最初に丁寧に関係をつくっておく価値があります。対応に迷う相談を受けたときは、1人で答えを出さずに、学年の教員や学部主事と共有してから返すようにしましょう。

体の疲れ

身体介助のある学校では、最初の数か月で腰や肩に負担がたまりやすくなります。抱え方や移乗の方法には、体を痛めにくいやり方があります。自己流で無理をせず、研修や先輩の方法を早めに取り入れることが、長く続けるための近道です。

特別支援学校に向いている人、向いていない人

ここまでの内容をもとに、向き不向きをフェアに整理しておきます。

向いている人

・子どもの小さな変化に気づき、それを喜べる人 ・自分1人で決めるより、同僚と話し合って進めるほうが性に合う人 ・教科の知識より、子どもの生活や将来の暮らしに関心がある人 ・看護師や福祉職など、ほかの職種と協力することに抵抗がない人 ・同じことを根気よく繰り返す支援を、退屈と感じない人

向いていない可能性がある人

・教科の専門性を深め、授業で学力を伸ばすことにやりがいの中心がある人 ・自分のやり方で学級をつくりたい気持ちが強い人 ・身体介助に強い抵抗がある人 ・短期間で目に見える成果を求める人

向いていない可能性がある項目に当てはまっても、それだけで諦める必要はありません。たとえば、教科の専門性を生かしたい人でも、高等部や、知的障害のない子どもが通う視覚障害や聴覚障害、病弱の学校では、教科の授業の比重が大きくなります。自分の強みが生きる場所を、障害種と学部の組み合わせで探すという考え方が有効です。

教員そのものを続けるか迷っている人にとっては、特別支援学校だけが選択肢ではありません。教員の転職を扱う情報では、教育とは関係のない仕事への転職も紹介されています。

また、未経験でも可かつ年収600万円以上の求人が公開・非公開合わせて15,000件以上(※)あることから、なるべく年収を維持しながら教育とは関係のない新しいキャリアに挑戦したい教員におすすめです。 出典: kakehashi-skysol.co.jp

これは転職サービスの紹介文なので、数字はそのサービスの求人に関するものです。ただ、「特別支援学校へ移る」「学校の外へ出る」「いまの学校で役割を変える」の3つを並べて比べてから決める、という姿勢は大事だと考えています。

進む方向に迷ったときは、キャリアの相談を専門にする人と話すのも1つの手です。どんな専門家が相談に乗っているのかはキャリアコンサルタントで資格の中身から紹介されていますし、転職や職場の悩みの相談がどんな形で行われているのかは職場・転職・キャリア相談のお仕事で具体的にまとめられています。

長く働き方の変化を見てきて思うこと

フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、職場を移って満足している人には、はっきりした共通点があります。それは、「前の職場の何が合わなかったのか」と「次の職場で何を得たいのか」を、転職の前に言葉にしていることです。

特別支援学校への転職でいえば、「35人の学級で1人ひとりに目が届かないことがつらかった。少人数で、時間をかけて1人の子どもに関わりたい」という理由がある人は、落差に戸惑っても、その理由に立ち返って踏みとどまれます。反対に、「通常の学校がきついから、特別支援学校なら楽そう」という理由だけで移った人は、身体介助や保護者対応、チームでの話し合いという別の重さに直面して、早い段階で迷い始める傾向があります。

もう1つ、長く続けている人に共通しているのは、転職を「一度で完結する決断」ではなく「確かめながら進める過程」として扱っていることです。講師として1年働いてみる、見学を重ねる、免許の取得を先に進めておく。いきなり大きく動くのではなく、戻れる道を残しながら少しずつ進んだ人ほど、移った先で落ち着いて働いています。

働く場所の選び方は、雇われて働く場合も、自分で仕事を受ける場合も同じです。仕事を頼む人と受ける人が直接話し合える関係では、期待のずれが小さいうちに見つかり、受ける側は手数料0%のぶん手取りも厚くなります。どこで働くかより、そこで何をしたいのかがはっきりしているほど、選んだ場所での納得感は高くなります。

特別支援学校は、子どもの変化を複数の大人で、長い時間をかけて支える職場です。前の職場との落差は、決して小さくありません。それでも、障害種と学部を選び、講師や見学で実際の姿を確かめ、自分が何を大事にしたいのかを言葉にしてから決めれば、その落差は「新しい仕事の手応え」に変わっていくはずです。

よくある質問

Q. 特別支援学校教諭の免許状がなくても、特別支援学校で働けますか?

教育職員免許法の附則により、当分の間は幼稚園から高校までの教員免許があれば、特別支援学校で相当する学部の教員になれるとされています。ただし国は免許状の取得を進めており、採用試験で条件や加点にしている自治体もあります。働きながら免許法認定講習や大学の通信課程で単位を修得し、免許状を取る教員も多くいます。

Q. 通常の学校から特別支援学校へ移ると、仕事はどう変わりますか?

1クラスの人数が少なく複数の担任で見る体制になり、授業は子ども1人ひとりの目標から組み立てるようになります。着替えや食事、排泄の支援も学習の一部として行い、学校によっては身体介助の比重が大きくなります。個別の指導計画の作成や連絡帳での保護者とのやりとりなど、子どもの下校後の仕事も増える傾向があります。

Q. 福祉の現場から特別支援学校の教員を目指すには、どうすればよいですか?

教員免許を持っていない場合は、大学などで教員免許を取得し、あわせて特別支援学校教諭の免許状の取得を目指すのが基本の道です。数年がかりになるため、その間に介助員や支援員、寄宿舎指導員として学校に関わり、職場を内側から知る人もいます。住んでいる地域の教育委員会の採用情報を確認してください。

Q. 特別支援学校への転職を決める前に、何を確かめるべきですか?

どの障害種の学校か、どの学部に配属される可能性があるかを最初に確かめてください。障害種と学部によって、授業の中身や身体介助、医療的ケアの比重が大きく変わります。あわせて通勤距離やスクールバスの添乗の有無、下校後の会議や持ち帰り仕事の実態を、見学や講師の経験を通じて確認しておくと安心です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月4日最終更新:2026年9月21日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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