精神科病院を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと


この記事のポイント
- ✓精神科病院を辞めたいと思ったとき
- ✓先に切り分けておきたいのは
- ✓つらさの原因が患者対応なのか
先日、精神科病院で働く看護師さんから相談を受けました。「もう辞めたい。でも、辞めたいのが病院なのか、精神科なのか、看護師という仕事なのか、自分でも分からない」と。
これ、実はとても大事な問いなんです。精神科病院を辞めたいと思ったとき、原因をひとつに決めないまま退職すると、次の職場でも同じつらさを抱えることがあります。反対に、原因がはっきりすれば、辞めずに解決できることもあれば、辞めるべき理由が明確になって迷いが消えることもあります。
この記事では、精神科病院という職場に特有の事情を踏まえて、「出ていく前に切り分けておくこと」を順番に整理します。私は労働問題の代理人ではないので、法律の話は仕組みの説明にとどめます。個別の紛争になりそうなときは、弁護士や社会保険労務士、労働局の窓口に相談してください。
「辞めたい」の中身を5つに切り分ける
まず、紙に書き出してみてください。精神科病院を辞めたいと思う理由は、だいたい次の5つのどれか、または組み合わせです。
・患者さんとの関わり:暴言や暴力、関係が築けない、気持ちを引きずる ・病院の方針:隔離や身体的拘束の考え方、薬物療法への姿勢、退院支援への熱意が自分の看護観と合わない ・人員と労働条件:夜勤の人数や回数、残業、休憩が取れない、給料 ・職場の人間関係:上司や先輩との関係、ハラスメント ・自分の心身の状態:眠れない、朝起きられない、休日も仕事のことが頭から離れない
この5つは、解決の方法がまったく違います。患者さんとの関わりのつらさは、病棟を変えれば軽くなることがあります。方針が合わないなら、同じ精神科でも別の病院に移れば解決するかもしれません。人員や労働条件の問題は、数字で比べれば転職先の選び方が見えます。人間関係やハラスメントは、法律上、事業主に対応する義務があります。そして心身の不調は、辞めるかどうかを決める前に、まず休むことが優先です。
つまり、「辞めたい」をひとまとめにせず、どの箱に入る悩みなのかを分けるだけで、打てる手が変わるんです。
私自身、独立する前に勤めていた事務所を辞めたとき、この整理をしないまま退職を切り出しました。仕事量がつらいのだと思っていたのですが、辞めてから振り返ると、本当につらかったのは、判断を仰げる人がいない孤立感でした。次の職場を選ぶときにそこを見ていなかったので、同じ状況を繰り返しかけたんです。だからこそ、相談に来られた方には、まず書き出してもらうことにしています。
書き出すときのコツは、「いつ、どの場面で、何がつらかったか」を具体的にすることです。「夜勤がきつい」ではなく、「60床を2人で見る夜勤で、興奮した患者さんの対応中にナースコールが鳴り続け、誰にも助けを呼べなかった」。ここまで書くと、つらさの原因が夜勤そのものなのか、夜間の応援体制なのかが見えてきます。
患者さんからの暴言や暴力がつらいとき
精神科病院を辞めたい理由として、とても多いのがこれです。とくに急性期病棟では、症状が強い時期の患者さんが入院してくるため、暴言や暴力に直面する場面が避けられません。
ここで知っておいてほしいのは、患者さんからの暴力は「精神科なのだから我慢するもの」ではないということです。
まず、業務中に患者さんから暴力を受けてけがをした場合、労災保険の対象になります。つまり、治療費や休業中の補償を、労災の仕組みで受けられるということです。職場によっては「大ごとにしたくない」という空気があり、健康保険で受診してしまう方がいます。これ、知らない人が本当に多いんです。業務中のけがは原則として健康保険ではなく労災で扱うものなので、必ず職場に報告して、労災の手続きを取ってください。
心の面の被害も同じです。暴力や暴言を受けた出来事がきっかけで、眠れなくなったり、職場に行けなくなったりすることがあります。精神障害の労災認定の基準は2023年に見直され、顧客や施設利用者などから著しい迷惑行為を受けたことが、評価の対象となる出来事として明記されました。認定されるかどうかは個別に判断されますが、「心の問題だから労災にはならない」と決めつける必要はありません。
さらに、職場の対策についても法律が動いています。厚生労働省は、いわゆるカスタマーハラスメントへの対策を事業主の義務にする法改正について、次のように案内しています。
本改正により、カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメント(いわゆる「求職者等セクハラ」)の防止措置が事業主の義務となります(令和8年10月1日施行)。 出典: 厚生労働省
病院の場合、症状による言動をどう扱うかは、一般のお店とは事情が違います。病気の症状として起きる興奮と、意図的な迷惑行為は区別して考える必要があります。それでも、職員を守るための方針を示し、相談できる体制を整えることは、事業主の側の責任です。
辞める前に確かめておきたいのは、次のような点です。
・暴力の出来事を報告したとき、病院は記録を残し、振り返りの場を持ったか ・一人で対応しない手順、応援を呼ぶ手順が決まっているか ・暴力への対応についての研修があるか ・同じ病院の中に、急性期ではない病棟への異動の道があるか
これらが整っているのに自分がつらいなら、病棟を変える相談から始める価値があります。整っておらず、報告しても「精神科だから仕方ない」で終わる職場なら、それは個人の努力で解決できる問題ではありません。職場を変えることを真剣に考えてよい理由になります。
※暴力で大きなけがをした、労災の手続きを病院が拒む、といったケースでは、労働基準監督署や弁護士に相談してください。
病院の方針が自分の看護観と合わないとき
精神科病院ならではの「辞めたい」理由が、方針の違いです。これは一般の診療科より、ずっと幅が大きいんです。
看護師向けの転職情報サイトでも、次のように書かれています。
精神科は、職場によって治療方針が大きく異なっており、自分の看護観と合わない場合は辞めたくなることもあるでしょう。たとえば、主に投薬によって治療を行う病院もあれば、カウンセリングを基本としているところもあります。 出典: レバウェル看護
とくに看護師さんを悩ませるのが、隔離や身体的拘束の考え方です。精神保健福祉法では、隔離や身体的拘束は、医師が必要と判断した場合に限って行い(身体的拘束や12時間を超える隔離は精神保健指定医の判断が必要です)、その理由などを記録することが定められています。つまり、法律は「必要な場合に限って行う行動制限」として位置づけています。ところが実際には、病院によって、拘束をできるだけ減らす取り組みに力を入れているところもあれば、拘束が長く続くことに慣れてしまっているところもあります。
「この拘束は本当に必要なのだろうか」と感じながら毎日観察の記録を書くのは、看護師にとってとても苦しいことです。これは、あなたが弱いから苦しいのではありません。看護観を持っているから苦しいんです。
方針が合わないと感じたとき、切り分けておきたいのは次の2点です。
ひとつは、その方針が病院全体のものなのか、今の病棟や今の上司のものなのか。精神科病院では、病棟ごとに師長の考え方で雰囲気が大きく変わることがあります。病院全体としては行動制限を減らす委員会が動いているのに、自分の病棟だけが変わっていない、ということもあります。
もうひとつは、自分が意見を伝える場があるかどうか。行動制限について話し合う委員会やカンファレンスに、看護師の声が届く仕組みがあるか。伝えても変わらないのか、そもそも伝える場がないのか。
病院全体の方針が合わず、声を届ける仕組みもないのであれば、同じ精神科という分野の中で、別の病院に移ることを考えてよいと思います。精神科の経験そのものは無駄になりません。方針の合う職場でこそ、その経験が生きます。
次の病院を探すときは、病院のホームページで行動制限の最小化に向けた取り組みを公表しているか、見学のときに保護室の使われ方や拘束の件数について質問に答えてもらえるかを確認してみてください。答え方そのものが、その病院の姿勢を映しています。
人員や夜勤、労働条件がつらいとき
精神科病院は、一般病院と比べて残業が少ない傾向があると言われます。その一方で、人員の配置は薄くなりがちです。医療法の基準では、一般病床が入院患者3人に対して看護職員1人以上であるのに対し、精神病床は4人に対して1人以上です。療養病棟などでは看護助手を含めた人数で体制を組むことが多く、夜勤では50床から60床の病棟を2人か3人で見ることも珍しくありません。
このつらさを切り分けるには、感覚ではなく数字で見ることが大切です。
まず、自分の実際の働き方を1か月分書き出してください。夜勤の回数、1回の夜勤で取れた休憩の時間、始業前に来ていた時間、終業後に残っていた時間。そのうえで、世の中の平均と比べます。先ほどのレバウェル看護の記事では、日本看護協会の調査として、常勤看護師の月平均の超過勤務時間が約5.2時間、2交替制の病院での夜勤回数が月平均約4.9回と紹介されています。
これより大きく多いなら、あなたの職場は平均より負担が重い職場です。そして、法律の面でも確かめておきたいことがあります。
・始業前の情報収集や、終業後の記録の時間に、残業代が払われているか ・夜勤中に、決められた休憩時間が実際に取れているか。取れていないなら、それは休憩ではなく労働時間です ・夜勤明けから次の勤務までに、十分な間隔があるか
つまり、「みんな前残業しているから」「夜勤は休憩が取れないものだから」という慣習は、法律上の労働時間の考え方とは別物だということです。これ、医療現場では本当に見過ごされがちです。
こうした問題は、職場の中で改善を求めることもできます。労働組合があれば相談先になりますし、なければ労働基準監督署に相談することもできます。ただ、現実には、声を上げ続けるより、条件の良い職場へ移るほうが早い場合も多いのが正直なところです。
もし移るなら、求人票では次の点を見てください。夜勤の体制(何人で何床を見るか)、月の夜勤回数の目安、夜勤専従や日勤常勤の選択肢があるか、残業時間の実績。書かれていなければ、面接で聞いて大丈夫です。聞いたことに具体的な数字で答えてくれる病院は、それだけ働き方を管理している病院です。
待遇の相場を把握しておくことも大切です。看護師の年収・単価相場では、公的な統計をもとに看護師の年収の水準を整理しています。今の給料が相場と比べてどうなのかを確かめてから、条件の交渉や転職先の比較をすると、判断を誤りにくくなります。
職場の人間関係やハラスメントがつらいとき
精神科病院は、人間関係の悩みが生まれやすい条件がそろった職場でもあります。
ひとつは、職員の入れ替わりが少ないことです。精神科病院には、同じ病棟に10年、20年と勤めているベテランが多くいます。長く働ける職場であることの裏返しですが、そのぶん病棟の中に独自のやり方や上下関係が根づきやすく、新しく入った人が意見を言いにくい空気になることがあります。
もうひとつは、閉鎖病棟という空間です。鍵のかかった病棟の中で、限られた人数の職員が長い時間を一緒に過ごします。夜勤では2人きりになることもあります。相性の悪い先輩と組む夜勤が月に何回あるか。それだけで、仕事のつらさが大きく変わってしまうんです。
ここで切り分けておきたいのは、それが「相性の問題」なのか「ハラスメント」なのかです。
厚生労働省は、職場のパワーハラスメントを、優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超え、働く人の就業環境を害するもの、と整理しています。つまり、仕事のミスを指導されることはハラスメントではありませんが、人前で人格を否定するような言葉を繰り返す、必要な情報を自分だけ回してもらえない、明らかに一人では無理な業務を押しつけられる、といったことは、ハラスメントに当たる可能性があります。
パワーハラスメントの防止措置は、2022年4月から中小の事業主も含めて義務になっています。病院には、相談窓口を設け、相談があれば事実を確認し、適切に対処する責任があります。相談したことを理由に不利益な扱いをすることも禁じられています。
実際の相談で多いのは、「看護部長に相談したら、相手の先輩に筒抜けになってさらにひどくなった」というケースです。これは、病院が法律上求められている対応を取れていない状態です。こうした場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーや雇用環境・均等部(室)に相談することができます。
相談の前に、次のことをしておくと話が進みやすくなります。
・いつ、どこで、誰から、何を言われたか、されたかを、その日のうちにメモしておく ・同じ場面を見ていた人がいれば、名前を控えておく ・体調の変化があれば、受診して記録を残しておく
※ハラスメントで心身に不調が出ている、損害賠償を考えている、といった場合は、弁護士に相談してください。
一方、ハラスメントとまでは言えない相性の問題なら、異動の希望を出すことが有効な手になります。精神科病院は病棟ごとに雰囲気が大きく違うので、同じ病院の中で環境が一変することは珍しくありません。辞める前に、一度は異動を相談してみる価値があります。
心や体に不調が出ているとき
ここは、いちばん大事なところなので、はっきり書きます。眠れない、食べられない、休日も涙が出る、出勤前に動悸がする。そういう状態のときは、辞めるかどうかを決める前に、まず休んでください。
不調が強いときの判断は、どうしても極端になります。「今すぐ辞めなければ」と思い詰めて退職し、次の職場を探す力も残っていない、という相談を私は何度も受けてきました。
休む方法として、次の仕組みを知っておいてください。
ひとつは、医療機関を受診して診断書をもらい、休職することです。休職の制度があるかどうか、期間はどれくらいかは、病院の就業規則で決まっています。まず就業規則を確認しましょう。
もうひとつは、健康保険の傷病手当金です。業務外の病気やけがで仕事を休み、給料が出ない場合に、連続して3日間休んだあと、4日目から支給されます。支給額は、おおむね給料の日額の3分の2程度で、支給が始まった日から通算1年6か月まで受けられます。
注意してほしいのは、退職したあとも傷病手当金を受け続けるための条件です。退職日までに継続して1年以上健康保険に加入していて、退職の時点で傷病手当金を受けているか、受ける条件を満たしていることが必要です。つまり、「最後の日だけでも挨拶に行こう」と退職日に出勤してしまうと、条件を満たさなくなることがあるんです。これ、知らない人が本当に多いんです。退職日の過ごし方は、事前に加入している健康保険の窓口で確認してください。
なお、不調の原因が暴力や過重な業務など仕事にある場合は、先ほど触れた労災の対象になる可能性もあります。労災と傷病手当金は同時に受けられないので、どちらで申請するかは、労働基準監督署や社会保険労務士に相談しながら決めると安心です。
一人で抱え込まないための相談先も、いくつか持っておいてください。職員数が50人以上の病院には、産業医を選任する義務があります。つまり、多くの精神科病院には、職員の健康について相談できる医師がいるということです。ストレスチェックの結果をきっかけに、産業医との面談を申し出ることもできます。職場の人に知られたくない場合は、厚生労働省の働く人向けのメンタルヘルスのポータルサイト「こころの耳」で、電話やメール、SNSの相談窓口を探せます。精神科で働いている人ほど、「自分は支える側だから」と相談をためらいがちです。でも、支える側だからこそ、支えてもらう先を持っておくことが大切なんです。
休んで少し回復してから、あらためて最初に書き出した5つの箱を見直してみてください。休む前は「全部つらい」と感じていたのに、落ち着いてみると、つらさの中心は特定の病棟の特定の場面だった、ということがよくあります。
辞めると決めたときの手順と、知っておきたい法律
切り分けた結果、辞めると決めたなら、あとは手順を踏むだけです。ここでは、精神科病院に限らず、病院を辞めるときによく問題になる点を整理します。
まず、退職の申し出の時期です。期間の定めのない雇用、つまり正職員の場合、民法では、退職の申し入れから2週間が経てば雇用は終わるとされています。病院の就業規則では「1か月前まで」「3か月前まで」と書かれていることが多いのですが、円満に辞めるためには、就業規則に沿って余裕を持って伝えるのが実務的です。とはいえ、「人が足りないから半年は辞めさせない」といった引き留めに、いつまでも従う義務はありません。
契約社員など期間の定めのある雇用の場合は、原則として契約期間の途中で辞めるには、やむを得ない理由が必要です。ただし、契約期間が1年を超える契約では、一定の専門職などを除き、契約から1年を過ぎればいつでも退職を申し出られるという決まりがあります。自分の契約書を確認してください。
次に、年次有給休暇です。残っている有給休暇は、退職日までに使うことができます。病院側には時季を変更する権利がありますが、退職日を超えて変更することはできないと考えられています。引き継ぎと有給消化の日程は、早めに上司と相談して決めましょう。
そして、看護師さんから相談が多いのが、病院の奨学金や修学資金の問題です。「辞めるなら一括で返せ」「決められた年数を働かないと違約金」と言われて、辞められずにいる方がいます。労働基準法は、労働契約の不履行について違約金や損害賠償額をあらかじめ決めておくことを禁じています。一方で、貸したお金を返すという約束そのものは有効な場合もあり、契約の中身や金額、働く年数との結びつき方によって判断が分かれます。
※奨学金の返還をめぐって病院と話がまとまらない場合は、必ず弁護士に相談してください。個別の契約書を見ないと判断できない問題です。
最後に、雇用保険の失業給付です。自分の都合で退職した場合、給付が始まるまでに待つ期間があります。この給付制限は、2025年4月から原則1か月に短くなりました。また、体調不良など正当な理由のある退職と認められれば、給付制限がかからないこともあります。離職票の退職理由の書き方は大切なので、内容を確認してから提出しましょう。
次の職場は「つらさの箱」で選ぶ
辞めると決めたら、次の職場は、最初に書き出した5つの箱と照らし合わせて選んでください。
患者さんからの暴力がつらかったなら、同じ精神科でも、療養病棟や認知症治療病棟、外来やデイケアでは状況が大きく違います。精神科の訪問看護という道もあります。病院の方針が合わなかったなら、行動制限の最小化に取り組んでいる別の精神科病院を探す価値があります。人員や夜勤がつらかったなら、夜勤の体制を数字で確認できる職場を選びます。
精神科の中で職場を変える場合の違いも、簡単に整理しておきます。
・外来や精神科クリニック:夜勤がなく、暴力に直面する場面は病棟より少なくなります。一方、少ない人数で受付や電話の対応まで担うことがあり、患者さんとの関わりは短い時間になります ・デイケアやナイトケア:通所してくる方と、プログラムを通じて長く関わります。レクリエーションやグループの進行が好きな人に合います ・精神科の訪問看護:ご自宅での暮らしを支える仕事で、原則として一人で訪問します。病棟のような応援は呼べない分、事業所の相談体制と、複数人で訪問する仕組みがあるかが大切です ・別の精神科病院:病棟の種類と、行動制限や退院支援への方針で選びます。同じ急性期でも、病院によって雰囲気は大きく違います
どこに移るにしても、面接では「前の職場で何がつらかったか」を聞かれることがあります。そのときに、最初に書き出した箱をもとに「夜間の応援体制が整っていない中での暴力対応が負担だったので、応援の手順が決まっている職場で働きたい」と伝えられれば、単なる不満ではなく、働き方の希望として受け取ってもらえます。退職理由の伝え方で悩む方は多いのですが、事実と希望を分けて話せば、嘘をつく必要も、前の職場を悪く言う必要もありません。
精神科の経験は、病院の外でも評価されます。話を聴く力、言葉にならない変化を観察する力、多職種と連携する力は、介護施設、訪問看護、企業の健康管理室など、多くの場所で求められています。病院勤務にこだわらず、看護の経験を活かした在宅での働き方を考えたい方は、看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】で、健康相談や医療系の記事監修などの仕事の中身が紹介されています。
また、精神科で身につけた「相手の話を聴いて整理する力」は、働く人の相談を受ける仕事にもつながります。職場や転職の悩みに向き合う相談業務にどんな依頼があるかは職場・転職・キャリア相談のお仕事にまとまっています。相談の力を国家資格として形にしたい方は、キャリアコンサルタントの試験内容や受験資格も確認してみてください。
フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、職場を離れる決断そのものより、「何がつらかったのか」を言葉にできているかどうかが、その後を大きく左右していると感じます。つらさを言葉にできた人は、次の職場で同じ問題を避けられますし、条件の交渉でも自分の希望をはっきり伝えられます。勤め先を変える人も、雇われない働き方に移る人も、そこは同じです。
辞めたいと思うこと自体は、決して悪いことではありません。それは、あなたの心と体が「このままでは続かない」と知らせてくれている合図です。その合図を、ひとつずつ切り分けて受け止めてください。そして、休む権利、辞める権利、けがや不調を補償してもらう権利を、遠慮なく使ってください。法律はあなたの味方です。
よくある質問
Q. 精神科病院を辞めたいとき、最初に何をすればよいですか?
まず、辞めたい理由を「患者さんとの関わり」「病院の方針」「人員と労働条件」「人間関係」「自分の心身の状態」に分けて書き出してください。原因によって、病棟の異動で解決するのか、別の病院に移るべきなのか、まず休むべきなのかが変わります。心身に不調が出ている場合は、辞めるかどうかを決める前に受診と休養を優先してください。
Q. 患者さんから暴力を受けてけがをした場合、労災になりますか?
業務中に患者さんから受けた暴力によるけがは、労災保険の対象になります。治療費は健康保険ではなく労災で扱うのが原則なので、必ず職場に報告して手続きを取ってください。暴言や暴力がきっかけで心の不調が生じた場合も、個別の判断にはなりますが労災の対象になり得ます。病院が手続きに協力しない場合は、労働基準監督署に相談できます。
Q. 就業規則に「退職は3か月前までに申し出る」とあります。従わないといけませんか?
期間の定めのない雇用では、民法上、退職の申し入れから2週間で雇用は終わるとされています。ただ、引き継ぎや有給休暇の消化を円満に進めるためには、就業規則に沿って余裕を持って伝えるのが実務的です。人手不足を理由にいつまでも退職を認めないといった引き留めに従う義務はありません。話がこじれた場合は労働局などに相談してください。
Q. 病院の奨学金を借りていても、途中で辞められますか?
退職すること自体は可能です。労働基準法は違約金や損害賠償額をあらかじめ決める契約を禁じていますが、借りたお金を返す約束そのものは有効な場合もあり、契約の内容や金額、勤務年数との結びつき方によって判断が分かれます。一括返済を求められて話がまとまらない場合は、契約書を持って弁護士に相談してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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