精神科病院の人間関係|狭い職場での距離の取り方


この記事のポイント
- ✓精神科病院の人間関係は
- ✓患者さんを通じた意見の割れなど
- ✓この職場ならではの理由で濃くなりがちです
「患者さんとの関わりはつらくないんです。しんどいのは、職員同士の関係のほうで」。
精神科病院で働く方から、このご相談を本当によくいただきます。
精神科病院の人間関係は、ほかの病院と比べて特別に悪いわけではありません。ただ、この職場には、人間関係が濃くなりやすい、そして揺れやすい条件がいくつもそろっています。その条件を知らないまま悩むと、「私の性格が合わないのかな」と自分を責めてしまいがちです。
大丈夫ですよ。人間関係のしんどさの多くは、職場の仕組みから生まれています。仕組みが分かれば、距離の取り方も見えてきます。この記事では、精神科病院という職場で何が起きているのかを整理しながら、狭い職場で自分を守る方法を、ひとつずつお話しします。
精神科病院の人間関係が「濃く」なりやすい理由
まず、精神科病院の人間関係がなぜ濃くなりやすいのか、その理由を見ていきましょう。
ひとつ目は、勤続年数の長い職員が多いことです。精神科病院は、急な処置や残業が比較的少なく、生活と両立しやすい職場です。そのため、同じ病院に10年、20年と勤めている方が珍しくありません。長く働ける職場であることは良いことですが、病棟の中に「昔からのやり方」や、暗黙の上下関係が根づきやすくなります。
ふたつ目は、病棟の空間です。精神科病院には、出入り口に鍵がかかっている閉鎖病棟があります。鍵のかかった空間で、同じメンバーが長い時間を一緒に過ごす。休憩も病棟の近くで取ることが多く、仕事の間ずっと同じ顔ぶれです。息抜きの場が少ない分、ちょっとした行き違いが大きく感じられます。
みっつ目は、夜勤の人数です。精神科病院の夜勤は、50床から60床の病棟を2人か3人で見ることも珍しくありません。夜勤で組む相手との相性が、そのまま一晩の過ごしやすさを決めてしまいます。苦手な人と2人きりの夜勤が月に何回あるか。それだけで、仕事全体のつらさが大きく変わるんです。
よっつ目は、立地です。精神科病院は郊外にあることが多く、職員の多くが地元の出身ということもあります。職場の外でも知り合い同士、家族ぐるみの付き合いがある、ということもあります。外から来た人にとっては、すでにできあがった輪の中に入っていく感覚になりやすいんです。
いつつ目は、職種の構成です。精神科病院では、看護師、准看護師、看護補助者(看護助手)がそれぞれ多く働いていて、ほかの病院より男性職員の割合が高い傾向もあります。資格も年齢も経歴もさまざまな人が、同じ病棟で協力し合う職場です。
こうして並べてみると、人間関係が濃くなるのは、誰かの性格のせいではなく、職場の条件のせいだと分かりますよね。まずは、そこから始めてください。「私がうまくやれないから」ではなく、「濃くなりやすい場所にいるから」。この捉え方だけで、少し肩の力が抜けるはずです。
患者さんを通して、職員同士の関係が揺れることがある
精神科病院の人間関係には、ほかの職場にはない特徴があります。それは、患者さんとの関わりが、職員同士の関係に影響することです。
たとえば、ある患者さんが、Aさんには「あなただけが分かってくれる」と話し、Bさんには「あの人は冷たい、ひどいことを言われた」と訴える。すると、AさんとBさんの間で「あの患者さんへの対応が厳しすぎるんじゃないか」「いや、甘すぎるから要求がエスカレートしているんだ」と意見が割れていきます。
これは、患者さんが意地悪をしているのではありません。症状によって、人を「良い人」と「悪い人」に分けて感じてしまうことがあるんです。心理学ではこれを「分裂」と呼ぶことがあります。職員の側がそのことを知らないと、患者さんの言葉をそのまま受け取って、職員同士が対立してしまいます。
こういうご相談がありました。精神科病院に移って1年ほどの看護師さんで、「先輩たちが私の対応を陰で批判しているみたいで、病棟に行くのがつらい」と。
お話を聞いていくと、その方は、ある患者さんから特に頼りにされていました。その患者さんが、ほかの職員に「あの看護師さんは話を聞いてくれるのに、あなたたちは聞いてくれない」と話していたようなんです。先輩たちから見ると、その方がチームで決めた対応から外れて、特別扱いをしているように見えていました。
その方は、決まりを破っていたわけではありませんでした。ただ、患者さんとの会話の中身を、チームに十分共有していなかったんです。次のカンファレンスで、患者さんとどんな話をしているのかを具体的に伝え、対応をそろえる相談をしたところ、先輩たちの見る目が変わったとおっしゃっていました。
看護師向けの情報サイトでも、患者さんとの距離について次のように書かれています。
患者さんとのコミュニケーションスキルもポイント。ただし、患者さんとの距離が近すぎると依存や妄想を招いてしまいます。 出典: 看護roo!
患者さんとの距離が近くなりすぎると、患者さんのためにならないだけでなく、職員同士の関係も揺らぎます。逆に言えば、患者さんとの関わりをチームに開いておくことが、職場の人間関係を守ることにもつながるんです。
「患者さんから聞いたこと、自分だけが知っていることはないかな」。申し送りの前に、ひと呼吸おいて振り返ってみてください。
看護師と看護補助者、職種の間で起きるすれ違い
精神科病院で人間関係のしんどさが生まれやすい場所のひとつが、職種の間です。
とくに多いのが、看護師と看護補助者(看護助手)の間のすれ違いです。精神科病院の看護補助者には、長く勤めていて、病棟のことを誰よりもよく知っているベテランが少なくありません。患者さん一人ひとりの好みや、落ち着かなくなるきっかけを、肌で覚えている方もいます。
そこへ、若い看護師さんや、ほかの病院から移ってきた看護師さんが入ってきます。立場の上では看護師が指示を出す側ですが、経験では看護補助者のほうがずっと長い。この「立場」と「経験」のずれが、すれ違いを生みやすいんです。
看護師の側からは、「指示を出しても、いつものやり方でいいのよと言われてしまう」。看護補助者の側からは、「来たばかりの人に、ここのやり方も知らないで命令される」。どちらの気持ちも、自然なものですよね。
ここで役に立つのが、指示ではなく「相談」の形で話すことです。「この方の入浴、今日はこういう理由で時間を変えたいんですが、何か気をつけることはありますか」。理由を添えて、相手の経験を聞く。これだけで、ベテランの方は「頼りにされている」と感じ、協力してくださることが多いんです。
反対に、看護補助者として働いている方は、看護師さんの指示に疑問を感じたときに、その場で「前はこうだった」と返すのではなく、「こういうことがあったので心配なんですが」と、自分が見てきた事実を伝えてみてください。事実として伝えられた情報は、看護師にとって判断の大切な材料になります。
看護補助者と介護施設の介護職では、待遇の水準や仕事の中身にも違いがあります。介護職員の年収・単価相場では、統計をもとに介護職の年収の水準を整理しているので、精神科病院の看護補助者として働き続けるか、介護施設に移るかを考えるときの目安になります。
職種の間のすれ違いは、看護師と精神保健福祉士、医師との間にもあります。退院の時期について、病棟の看護師は「まだ生活が落ち着いていない」と感じ、精神保健福祉士は「受け入れ先が見つかった今が機会だ」と考える。どちらも患者さんのことを思っての意見です。職種によって見えている場面が違うのだと知っておくと、意見の違いを「対立」ではなく「情報の違い」として受け取れるようになります。
ベテランの「独自ルール」とどう付き合うか
精神科病院で働き始めた方が戸惑うことのひとつが、病棟ごとの独自ルールです。
「この病棟では、ホールのテレビは何時に消す」「この患者さんには、この言い方で声をかける」「申し送りはこの順番で」。文書になっていない決まりごとが、長く勤める方の頭の中にたくさんあります。
新しく来た人から見ると、理由の分からない決まりに見えることもあるでしょう。前の職場のほうが合理的だった、と感じることもあるかもしれません。
でも、少しだけ待ってください。精神科の病棟では、決まりごとの中に、過去の出来事から学んだ理由が隠れていることが多いんです。テレビを消す時間は、ある患者さんが夜遅くまで興奮してしまった経験から決まったのかもしれません。特定の声のかけ方は、その患者さんが安心できる言い方を、何年もかけて見つけた結果かもしれません。
だから、最初の数か月は、「なぜそうしているんですか」と理由を聞くことに徹してみてください。責める口調ではなく、「覚えたいので教えてください」という気持ちで聞く。理由を教えてもらえると、決まりに納得できることもありますし、ベテランの方にとっても、自分の経験を認めてもらえた嬉しい出来事になります。
そのうえで、理由を聞いても納得できない決まりがあったら、そのときに初めて、カンファレンスなど公式の場で「こういう方法も考えられないでしょうか」と提案します。休憩室での愚痴として話すと、あっという間に広がってしまうのが狭い職場です。提案は公式の場で、が鉄則です。
私自身、カウンセラーとして新しい相談機関で働き始めたとき、前の職場のやり方を早々に口にして、先輩たちとの間にぎこちない空気を作ってしまったことがあります。後から分かったのは、そこでのやり方には、利用者さんの事情に合わせた理由がきちんとあったということでした。最初の3か月は聞くことに徹する。それ以来、職場が変わるたびに、自分に言い聞かせていることです。
狭い職場で、ちょうどいい距離を取る方法
では、人間関係が濃くなりやすい職場で、どうやって自分をすり減らさない距離を取ればよいのでしょうか。私がカウンセリングでお伝えしている方法を、具体的にお話しします。
1つ目は、「仕事の言葉」で話す時間を増やすことです。精神科の病棟では、患者さんの感情に触れる場面が多いので、職員同士の会話もつい感情的になりがちです。「あの人の対応、ひどくない?」ではなく、「あの場面、どう対応すればよかったか一緒に考えたい」。感情ではなく、場面と対応の話にする。仕事の言葉で話す関係は、深入りしすぎず、でも冷たくもない、ちょうどいい距離になります。
2つ目は、申し送りや記録で、事実と気持ちを分けることです。「Cさんが怒鳴った。怖かった」ではなく、「Cさんが14時ごろ大きな声を出した。職員2人で対応し、10分ほどで落ち着いた」と事実を書き、自分の気持ちは信頼できる人との振り返りの時間に話す。事実と気持ちが混ざると、聞いた人は「この人は大げさだ」「あの人のせいにしている」と受け取りやすくなります。
3つ目は、プライベートの情報を出しすぎないことです。狭い職場では、話したことが思わぬ形で広がります。家族のこと、恋愛のこと、ほかの職員への気持ち。職場で話すのは、広がっても困らない範囲にとどめておくと安心です。職場の人とSNSでつながるかどうかも、慎重に考えてよいことです。
4つ目は、職場の外に、話せる場所を持つことです。同じ病院の中だけで人間関係が完結していると、職場でのつまずきが生活のすべてに響きます。学生時代の友人、ほかの病院で働く看護師仲間、趣味の集まり。職場の外の人に話すと、「そんなことで悩んでいたの」と言ってもらえることがあります。これが、とても大切なんです。
5つ目は、苦手な人と「うまくやる」ことを目標にしないことです。仲良くなる必要はありません。挨拶をして、必要な報告と相談ができれば、仕事の関係としては十分です。苦手な人に好かれようと頑張ることが、いちばん心を疲れさせます。
夜勤で組む相手との関係を整える
精神科病院の人間関係のしんどさが、いちばん凝縮されるのが夜勤です。少ない人数で長い夜を過ごすので、組む相手とのちょっとした行き違いが、そのまま一晩のつらさになります。
夜勤で起きやすいすれ違いには、いくつかの型があります。
ひとつは、仕事の分担が言葉になっていないことです。「いつもこの人が巡視に行ってくれるはず」「記録はこの人が先に書くはず」。お互いに相手がやると思っていたことが抜け、朝になって気まずくなる。これは、どちらかが怠けていたのではなく、分担を確認していなかったことが原因です。
ふたつ目は、休憩や仮眠の取り方です。休憩の順番や長さについて、言い出しにくいまま片方ばかりが休めない。小さな不満が夜ごとに積み重なっていきます。
みっつ目は、判断の基準の違いです。落ち着かない患者さんがいたとき、「もう少し様子を見よう」と考える人と、「すぐに当直の先生に連絡しよう」と考える人がいます。どちらが正しいというより、経験や性格による違いです。でも、基準が違うまま夜を過ごすと、「なんで呼ばないの」「なんで大げさにするの」という苛立ちになってしまいます。
おすすめしたいのは、夜勤の始まりに3分だけ、打ち合わせの時間を持つことです。
・今夜、気をつけたい患者さんは誰か ・巡視と記録、ナースコールへの対応をどう分けるか ・休憩はどちらが先に、何時ごろ取るか ・どういう状態になったら当直の医師や応援を呼ぶか
この4つを最初に言葉にしておくだけで、夜の間の行き違いがぐっと減ります。苦手な相手とこそ、この打ち合わせをしてみてください。気持ちの距離を縮める必要はなく、仕事の約束をそろえるだけでよいんです。
こういうご相談がありました。ベテランの看護補助者さんと組む夜勤がつらい、という若い看護師さんです。「何か言うと、ため息をつかれる気がする」と。その方に、夜勤の始まりに「今夜の分担、こうしようと思うんですけど、どうですか」と聞く習慣を提案しました。数週間後、「ため息がなくなったわけではないけれど、何をしてほしいのか分かるようになって、気にならなくなった」と話してくださいました。相手を変えようとしなくても、仕事の約束がそろえば、気持ちの負担は軽くなるんです。
性別や年代の違いから生まれるすれ違い
精神科病院は、ほかの病院に比べて男性の看護師や看護補助者が多い傾向があります。そして、同じ病棟に20代から60代まで、幅広い年代が一緒に働いています。この違いも、人間関係に影響することがあります。
性別の面で起きやすいのが、役割の偏りです。患者さんが興奮したとき、「男性職員を呼んで」となることが多い病棟があります。体の大きさや力の面で頼られるのは自然なことかもしれませんが、毎回同じ人が呼ばれ続けると、その人には負担とけがの危険が集中します。「なぜ自分ばかり」という不満が、口に出されないまま積み重なっていきます。
一方で、女性の職員が「危ない場面から外される」ことに、もどかしさを感じることもあります。自分も対応の手順を学んでいるのに、任せてもらえない。守られていることが、一人前に扱われていないように感じられるんです。
こうしたすれ違いは、個人の気持ちの問題として片づけず、病棟の対応の手順として話し合うことが大切です。暴力への対応は、性別で決めるのではなく、研修を受けた職員がチームで動くのが本来の形です。「対応の役割が偏っていて、特定の人に負担が集中しているように感じる」と、カンファレンスで事実として伝えてみてください。
年代の面では、仕事の考え方の違いがすれ違いの種になります。長く精神科で働いてきた世代の中には、患者さんの行動を細かく管理することが当たり前だった時代を経験してきた方もいます。若い世代は、患者さんの権利や自分で選ぶことを大切にする考え方を学んできています。
どちらの経験も、患者さんのことを思って積み重ねてきたものです。ベテランの方の「管理」には、事故を防いできた実感があります。若い方の「権利を大切に」には、これからの精神科医療の方向があります。どちらかを否定するのではなく、「事故を防ぎながら、ご本人の選べることを増やすにはどうするか」という共通の問いに置き換えると、話し合いが対立になりにくくなります。
違いがあること自体は、悪いことではありません。いろいろな立場の人がいる職場だからこそ、一人の見方に偏らずに患者さんを支えられるんです。
自分の疲れが、同僚への苛立ちに変わっていないか
精神科病院の人間関係で、もうひとつ知っておいてほしいことがあります。それは、患者さんとの関わりで受けた疲れが、同僚への苛立ちとして出てくることがある、ということです。
精神科の仕事では、自分の感情を抑えて、落ち着いた態度を保つことが求められます。怒りをぶつけられても、穏やかに返す。つらい話を聞いても、表情を崩さない。このように、仕事として感情をコントロールすることを「感情労働」と呼びます。
感情労働を続けていると、心の中に疲れがたまっていきます。そして、そのたまった疲れは、安心できる相手、つまり同僚に向かいやすいんです。いつもなら気にならない先輩の一言にカチンとくる。後輩の小さなミスが許せない。そんなときは、相手が変わったのではなく、自分の疲れがたまっているサインかもしれません。
こういうときにおすすめしたいのが、勤務の終わりの「振り返り」です。つらい場面があった日は、一緒に勤務した人と5分だけ、「今日のあの場面、大変でしたね」と言葉にする時間を持つ。心理学では、出来事のあとに気持ちを言葉にして整理することを大切にしています。言葉にしないまま帰ると、疲れは翌日の人間関係に持ち越されてしまいます。
病棟によっては、暴力や大きな出来事があったあとに、チームで振り返る場を設けているところもあります。そうした場がない病棟なら、師長さんに「こういう時間を作れないでしょうか」と相談してみる価値があります。職員の心を守る仕組みは、人間関係を守る仕組みでもあるんです。
入職して最初の3か月にしておきたいこと
精神科病院の人間関係は、最初の数か月でかなりの部分が形づくられます。これから精神科病院で働く方、働き始めたばかりの方に向けて、最初の3か月にしておくと後が楽になることをまとめます。
1つ目は、病棟の「キーパーソン」を知ることです。役職の上では師長さんや主任さんが中心ですが、実際に病棟の空気を左右しているのは、長く勤めている看護師さんや看護補助者さんであることも多いんです。誰に聞けば病棟の決まりごとが分かるのか、誰が患者さん一人ひとりのことをよく知っているのか。観察しながら、少しずつ把握していきましょう。
2つ目は、自分から挨拶と報告をすることです。当たり前のようですが、閉鎖病棟のように人の出入りが限られた空間では、挨拶の有無が思っている以上に印象を左右します。「14時に3号室の方の入浴介助が終わりました」のような短い報告も、「この人は何をしているか分かる人」という安心感につながります。
3つ目は、分からないことを分からないと言うことです。精神科が未経験の方は、とくに「こんなことを聞いたら恥ずかしい」とためらいがちです。でも、精神科の病棟では、分からないまま自己流で対応されるほうが、周りにとってはずっと困ることなんです。
4つ目は、人の評判を鵜呑みにしないことです。入ったばかりのころは、「あの人には気をつけて」「あの先輩はきつい」と、親切のつもりで教えてくれる人がいます。参考として聞いておくのはよいのですが、自分で一緒に働いてみるまでは判断を保留にしておきましょう。狭い職場では、評判そのものが人間関係の対立から生まれていることもあります。
最初の3か月は、職場に合わせることに疲れる時期でもあります。休日はしっかり休み、職場の外の人と話す時間を意識して持ってください。
相性の問題を超えたら、一人で抱えない
ここまで、距離の取り方についてお話ししてきました。でも、中には、距離の取り方では解決できない関係もあります。
人前で人格を否定するような言葉を繰り返される。必要な情報を自分だけ回してもらえない。明らかに一人ではこなせない仕事を押しつけられる。無視される。こうしたことが続くなら、それは相性の問題ではなく、ハラスメントに当たる可能性があります。
厚生労働省は、職場のハラスメントについて、働く人に向けて次のように呼びかけています。
ハラスメントは、個人の問題ではなく会社の問題です。会社の人事労務などの相談担当者や信頼できる上司に相談しましょう。 出典: 厚生労働省
同じページでは、会社に相談しても対応してもらえなかった場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談するよう案内されています。
狭い職場では、「相談したことが相手に伝わったらどうしよう」と不安になりますよね。病院には、相談した人のプライバシーを守り、相談したことを理由に不利益な扱いをしないようにする義務があります。それでも不安なら、職場の外の窓口から相談を始めても大丈夫です。
相談する前に、次のことをしておくと、話がスムーズに進みます。
・いつ、どこで、誰に、何を言われたか、されたかを、その日のうちにメモしておく ・その場にいた人がいれば、名前を控えておく ・眠れない、食欲がないなど体に変化があれば、受診して記録を残しておく
あなたは一人じゃありません。つらい関係を一人で我慢し続けることは、あなたの心にも、あなたが関わる患者さんにも良くないことです。
人間関係を理由に職場を変えるときに見ておくこと
いろいろ試しても関係が変わらないとき、異動や転職を考えるのは、まったく悪いことではありません。
まず考えたいのは、同じ病院の中での異動です。精神科病院は、病棟ごとに雰囲気が大きく違います。急性期と療養、認知症の病棟では、職員の顔ぶれも、働き方も、関係の濃さも変わります。病院を辞める前に、一度は異動の相談をしてみてください。
転職を考える場合は、見学のときに人間関係の手がかりを探してみましょう。
・職員同士が、忙しい時間帯にどんな声のかけ方をしているか ・若い職員が、ベテランに気軽に質問できていそうか ・看護師と看護補助者が、どんな言葉でやりとりしているか ・見学者に、案内役以外の職員も挨拶をしてくれるか ・職員の平均の勤続年数や、この1年で辞めた人の数を聞いたとき、率直に答えてもらえるか
勤続年数が長い職場は、居心地が良い職場であることが多い一方、新しい人が入りにくい職場であることもあります。反対に、入れ替わりが激しい職場は、何かしら人間関係や働き方に課題を抱えているかもしれません。どちらの傾向があるのかを知っておくだけで、入ったあとの心構えが違ってきます。
看護師として働く場合の待遇の水準は、看護師の年収・単価相場で統計をもとに確認できます。人間関係だけで職場を選ぶと、条件の面で後悔することもあるので、待遇の相場もあわせて見ておくと安心です。
また、精神科病院で身につけた「人と人との間に立つ力」は、病院の外の相談の仕事にもつながります。職場の人間関係や転職に悩む人の相談業務にどんな依頼があるかは職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介されています。相談の力を国家資格として形にしたい方は、キャリアコンサルタントの試験や受験資格も参考にしてみてください。
フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ても、長く働き続けている人は、職場の人間関係を「全員とうまくやる」ことではなく、「必要な相手と、必要な距離で信頼を積み重ねる」ことで保っているように感じます。雇われて働く人も、依頼主と一対一で仕事をする人も、そこは変わりません。
精神科病院の人間関係に悩んでいるあなたは、それだけ人との関係を大切に考えている人です。その繊細さは、この職場で患者さんの小さな変化に気づく力にもなっています。自分を責めずに、距離の取り方をひとつずつ試してみてください。大丈夫。あなたは一人じゃありません。
よくある質問
Q. 精神科病院は、ほかの病院より人間関係が悪いのですか?
特別に悪いわけではありません。ただ、勤続年数の長い職員が多い、閉鎖病棟で同じメンバーが長い時間を過ごす、夜勤が少人数になる、職種や経歴の異なる人が一緒に働くなど、人間関係が濃くなりやすい条件がそろっています。人間関係のしんどさは個人の性格より職場の条件から生まれることが多いので、まずその仕組みを知ることが大切です。
Q. ベテランの看護補助者との関係がうまくいきません。どうすればよいですか?
指示ではなく相談の形で話してみてください。「こういう理由でこうしたいのですが、気をつけることはありますか」と理由を添えて、相手の経験を聞く姿勢を見せると、協力してもらえることが多くなります。長く勤める看護補助者は、患者さん一人ひとりのことをよく知っている心強い存在です。経験を頼りにしながら、看護師として判断の理由を伝えることがポイントです。
Q. 患者さんへの対応をめぐって、同僚と意見が割れてしまいます?
患者さんが職員によって違う態度を見せることで、職員同士の意見が割れることは精神科病院ではよくあります。個人の間で言い合うのではなく、患者さんとの会話や出来事を事実としてチームに共有し、カンファレンスなど公式の場で対応をそろえる相談をしてください。関わりをチームに開いておくことが、患者さんと職員の関係の両方を守ります。
Q. 職場の人間関係がハラスメントかもしれないと感じたら、どこに相談できますか?
まず病院の相談窓口や信頼できる上司に相談できます。病院にはハラスメントの相談体制を整え、相談者のプライバシーを守る義務があります。院内で対応してもらえない場合や、院内で相談しにくい場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。相談の前に、日時や内容、その場にいた人をメモしておくと話が進みやすくなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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