整形外科クリニックの人間関係|狭い職場での距離の取り方

長谷川 奈津
長谷川 奈津
整形外科クリニックの人間関係|狭い職場での距離の取り方

この記事のポイント

  • ✓整形外科クリニックの人間関係は
  • ✓院長の影響が大きいぶん濃くなりがちです
  • ✓看護師どうしとの関係で起きやすいこと

整形外科クリニックの人間関係で悩んでいる方から、こんな相談を受けることがあります。「仕事そのものは嫌いじゃない。でも、職場の空気に毎日疲れてしまう」。

これ、知らない人が本当に多いんです。整形外科クリニックの人間関係の悩みは、特定の誰かの性格だけで起きているわけではありません。少人数で、異動がなく、院長の影響が大きく、職種の違う人が同じ空間で長い時間を過ごす。つまり、職場の構造そのものが、人間関係を濃くしやすい形になっているのです。

構造が分かると、対処の方法も見えてきます。相手を変えることは難しくても、自分の立ち位置や距離の取り方は変えられます。そして、どこからが「我慢しなくてよいこと」なのかも、法律の目線で整理できます。

この記事では、整形外科クリニックの中で人間関係がどう絡み合っているのかを、院長、理学療法士などのリハビリ職、受付のベテラン、看護師どうしといった関係ごとに具体的にお話しします。そのうえで、狭い職場での距離の取り方、ハラスメントを感じたときの対処、働く前に人間関係を見抜く方法までまとめました。

整形外科クリニックの人間関係が濃くなりやすい理由

まず、なぜ整形外科クリニックの人間関係は濃くなりやすいのか。職場の構造から整理しておきます。

少人数で、逃げ場がない

整形外科クリニックのスタッフは、医師が1〜2人、看護師が数人、受付と医療事務が数人、理学療法士とリハビリ助手が数人から10人ほど。全体で10人から20人ほどの職場です。病院であれば部署を変えたり、別の病棟に移ったりして距離を取れますが、クリニックにはその選択肢がありません。合わない人とも、毎日顔を合わせることになります。

職種が多く、立場の違いがはっきりしている

看護師、准看護師、理学療法士、リハビリ助手、看護助手、受付、医療事務、診療放射線技師。小さな職場なのに職種が多く、それぞれの仕事の優先順位が違います。リハビリ室は予約の時間通りに患者さんを回したい、看護師は注射と処置の順番を守りたい、受付は待ち時間の不満を減らしたい。この優先順位の食い違いが、人間関係の摩擦になりやすいのです。

長い昼休みを一緒に過ごす

整形外科クリニックの多くは、昼休みが2時間以上あります。職場の近くに住んでいない人は、この時間を休憩室で一緒に過ごすことになります。雑談の輪に入るか入らないか、どんな話題が出るか。仕事以外の時間の過ごし方が、人間関係に影響しやすい職場です。

パートと常勤が混在している

午前だけ、午後だけのパートが多く、日によって顔ぶれが変わります。連絡事項がうまく伝わらない、常勤の人に仕事の負担が偏る、といったことが、不満のもとになります。

院長の影響が大きい

医師が1人のクリニックでは、院長が雇い主であり、診療の責任者であり、職場のルールを決める人です。院長の言動が職場の空気をほぼ決めてしまいます。院長のご家族が事務を担当していることもあり、そうなると職場の人間関係はさらに複雑になります。

こうして並べると、整形外科クリニックの人間関係の悩みの多くは、「誰かが悪い」より「構造がそうさせている」部分が大きいことが分かります。自分を責めすぎないためにも、まずこの前提を押さえておいてください。

院長との距離:雇い主であり、診療の責任者でもある人

整形外科クリニックの人間関係でいちばん影響が大きいのが、院長との関係です。

院長の立場は、病院の医師と違う

病院では、医師は同じ組織の中の一つの職種です。雇い主は病院であり、看護師には看護部という別の指揮系統があります。一方、個人のクリニックや小さな医療法人では、院長が雇い主そのものです。つまり、診療の指示を出す人と、給与や勤務の条件を決める人が同じなのです。

この構造では、院長に意見を言いにくくなります。診療のやり方に疑問があっても、「言ったら評価に響くのでは」と感じてしまう。これが、院長との関係に悩む方の多くが抱えている気持ちです。

院長の機嫌に振り回されやすい場面

・患者さんが多く、診察が押しているときに言葉がきつくなる ・注射や処置の準備が遅れたとき、患者さんの前で注意される ・スタッフによって態度が違うように感じる ・昨日と今日で指示の内容が変わる

整形外科の外来は、1日に何十人、多いところでは100人を超える患者さんを診ます。院長自身も余裕がなくなる時間帯があるのは事実です。忙しい時間帯の強い口調が、あなた個人への否定とは限りません。

院長との距離の取り方

院長との関係で大切なのは、「感情のやりとり」と「仕事のやりとり」を分けることです。つまり、機嫌の良し悪しに反応するのではなく、仕事の内容だけを正確にやりとりする、ということです。

・指示があいまいなときは、その場で「〇〇ということでよろしいですか」と確認する ・指示が変わったときは、変わった内容を短くメモに残しておく ・提案や相談は、診療中ではなく、昼休みの前後など落ち着いた時間に短く伝える ・困っていることは、個人の感情ではなく「患者さんの待ち時間が長くなっている」など事実で伝える

院長のご家族が事務長などを務めている職場では、ご家族への相談が院長への相談と同じ意味を持つことがあります。誰に何を話すかは、慎重に考えましょう。

私自身、小さな事務所を開く前は、少人数の職場で働いていました。そこでも、上の人の機嫌が職場の空気を決めていて、最初は顔色ばかりうかがっていました。変わったのは、「指示を確認して記録する」ことを淡々と続けるようにしてからです。感情ではなく事実でやりとりすると、相手の機嫌に左右される場面が確実に減りました。

看護師と理学療法士、リハビリ職との関係

整形外科クリニックならではの人間関係が、看護師とリハビリ職との関係です。

リハビリに力を入れているクリニックでは、医師と理学療法士の連携を大切にしていることを、患者さん向けに打ち出していることがあります。あるクリニックのホームページには、こう書かれていました。

海外・日本で多くの経験を積み上げてきた理学療法士が在籍しています。医師とスポーツを専門としている理学療法士が密な連携をして患者様のリハビリテーションを行っていきます。 出典: n-cli.com

医師と理学療法士が密に連携する。患者さんにとってはとても心強いことです。ただ、働く人の目線で見ると、職場の中で理学療法士の存在感が大きくなるということでもあります。

看護師が少数派になる職場

病院の病棟では、看護師は人数が最も多い職種です。一方、リハビリ中心の整形外科クリニックでは、理学療法士やリハビリ助手の人数が看護師を上回ることがあります。医師との会話も、リハビリの進み具合についてのものが多くなります。

病院から移ってきた看護師さんが戸惑いやすいのが、ここです。「看護師がチームのまとめ役」という感覚のまま動くと、リハビリ職の人たちとぶつかってしまうことがあります。

摩擦が起きやすい場面

・患者さんを注射とリハビリのどちらから先に回すか ・リハビリの予約の時間に、診察や処置が押して間に合わない ・物理療法の機械やベッドの使い方をめぐる行き違い ・助手への指示が、看護師とリハビリ職の両方から出て重なる ・患者さんの情報が、看護師とリハビリ職の間で共有されていない

これらは、人の性格の問題というより、ルールが決まっていないことから生まれる摩擦です。つまり、「誰が決めるのか」「どの順番で回すのか」がはっきりすれば、多くは解消します。

リハビリ職との関係をよくするために

・理学療法士から患者さんの様子を聞く時間を、短くても意識してつくる ・注射のあとにリハビリがある患者さんの情報を、先に伝えておく ・助手に指示を出すときは、リハビリ職の指示と重なっていないか確認する ・順番の決め方でもめるときは、個人間で解決しようとせず、院長や主任に「ルールを決めてほしい」と相談する

職種が違えば、見ている景色が違います。相手の仕事の都合を少し知るだけで、言葉のトゲはずいぶん減ります。

受付・医療事務のベテランとの関係

整形外科クリニックで、看護師や新しく入った人が悩みやすいのが、受付や医療事務のベテランとの関係です。

ベテランが職場の情報を握っている

開院のころから長く勤めている受付や事務のスタッフは、職場のあらゆることを知っています。患者さん一人ひとりの事情、院長の好み、交通事故や労災の書類の手順、保険会社とのやりとり、物品の発注先。こうした情報が、その人の頭の中だけにある職場は少なくありません。

整形外科は交通事故と労災の患者さんが多い診療科なので、書類の手順を知っている人の存在は、クリニックにとって欠かせないものです。院長もその人を頼りにしています。その結果、ベテランの人の発言力が大きくなり、新しく入った人は意見を言いにくい状態になります。

よくある悩み

・質問すると不機嫌な態度をとられる ・前の人のやり方と違うと、強く注意される ・自分だけ連絡事項を知らされていない ・看護師の仕事の段取りに、受付の都合で口をはさまれる

ベテランとの距離の取り方

ここで大切なのは、ベテランの人の「経験」には敬意を払いつつ、仕事の情報を自分でも持つことです。

・教わった手順は、その場で自分のメモに残し、同じことを何度も聞かないようにする ・「〇〇さんに教わった方法でやっています」と、教えてくれた人を立てる ・連絡事項は、口頭だけでなく、連絡ノートや共有の場所に残してもらうようお願いする ・受付との行き違いは、個人の問題ではなく、患者さんの流れの問題として相談する

ベテランの人がつらく当たるとき、その背景に「自分ばかりに仕事が集中している」「誰も手伝ってくれない」という不満があることも少なくありません。書類の仕事を少しでも分担できるようになると、関係が変わることがあります。受付や医療事務の仕事を体系的に理解しておきたい方は、医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)の内容を見ておくと、ベテランの人が何に気を配っているのかが分かるようになります。

看護師どうし、常勤とパートの関係

同じ職種の中の人間関係も、整形外科クリニックならではの形があります。

看護師と准看護師

整形外科クリニックでは、看護師と准看護師が一緒に働いていることがよくあります。法律上、准看護師は医師や看護師の指示を受けて業務を行う立場ですが、クリニックの現場では、仕事の中身にほとんど差がないことも多いものです。

それでも、給与の差や、呼び方、仕事の割り振りをめぐって、微妙な空気が生まれることがあります。とくに、経験の長い准看護師と、経験の浅い看護師が一緒に働く場合です。資格の違いと、経験の違いを、お互いに尊重できるかどうかが大切になります。

常勤とパート

午前だけ、午後だけのパートが多い職場では、常勤の人が「自分ばかりが最後まで残って片付けている」「パートの人が帰ったあとの夕方の混雑を少人数で回している」と感じやすくなります。反対に、パートの人は「常勤の人たちだけで決めたことを、あとから知らされる」と感じることがあります。

どちらの不満も、個人の問題ではなく、仕事の分担と情報の共有の問題です。

・申し送りの時間や連絡ノートなど、情報を共有する仕組みがあるか ・片付けや準備の担当が、勤務時間に合わせて決まっているか ・シフトの決め方が、常勤とパートの両方にとって納得できるものか

これらが決まっていない職場では、人の善意に頼ることになり、不満がたまりやすくなります。

同じ職種の相談相手が少ない

看護師が2人か3人しかいない職場では、看護の悩みを相談できる相手が限られます。その相手と関係がこじれると、職場の中で孤立したように感じてしまいます。職場の外に、同じ仕事の悩みを話せる人を持っておくことは、狭い職場で働くうえで大きな支えになります。看護師の働き方や待遇の全体像を知っておきたいときは、看護師の年収・単価相場が参考になります。職場の外の物差しを持っておくと、職場の中の出来事を少し冷静に見られるようになります。

長い昼休みの過ごし方

整形外科クリニックの人間関係で、意外に大きいのが昼休みの過ごし方です。

2時間以上の休憩を、どう過ごすか

午前の診療が12時半ごろに終わり、午後が15時ごろから。この長い昼休みを、休憩室で一緒に過ごすかどうかは、人によって好みが分かれます。雑談が好きな人にとっては楽しい時間ですが、一人で静かに休みたい人にとっては、気を使う時間になってしまいます。

休憩室での会話が、患者さんの噂話や、その場にいないスタッフの話になる職場もあります。その輪に入らないと孤立しそう、入ると自分も同じことをしているようで気が引ける。こうした悩みもよく聞きます。

休憩は、本来自由に使える時間

ここで、知らない人が多い大切なことをひとつ。労働基準法では、休憩時間を自由に使わせることが決められています。つまり、休憩時間にどこで過ごすか、誰と過ごすかは、本来あなたが決めてよいことです。外に出て散歩をする、車の中で休む、近くのカフェで過ごす。職場の近くに住んでいるなら、家に戻ることもできます。

また、休憩時間に「電話が鳴ったら出て」「患者さんが来たら対応して」と指示されている場合、その時間は休憩ではなく、実際には働いている時間として扱われる可能性があります。昼休みの電話当番が、特定の人だけに押しつけられているなら、それは人間関係の問題であると同時に、労働条件の問題でもあります。※未払いの賃金などを具体的に請求したい場合は、弁護士や労働基準監督署に相談してください。

角を立てずに、一人の時間をつくる

いきなり休憩室に来なくなると、周りが気にすることもあります。「昼は少し外を歩くようにしているんです」「家のことを片付けに帰っています」と一言添えておくと、自然に一人の時間をつくれます。毎日でなくても、週に何日かは休憩室で過ごし、残りの日は外に出る、というように、自分なりの頻度を決めるのもひとつの方法です。

新しく入った最初の3か月の立ち位置

整形外科クリニックの人間関係は、入ってから最初の3か月でおおよその形が決まります。この時期の立ち位置を意識しておくと、その後の働きやすさがかなり変わります。

最初の1か月は「職場のやり方を知る期間」と割り切る

前の職場で経験を積んでいる方ほど、新しいクリニックのやり方に違和感を覚えます。「前の病院ではこうしていた」「このやり方は効率が悪い」。そう感じるのは自然なことです。ただ、入ってすぐにそれを口にすると、長く勤めている人たちからは「来たばかりなのに」と受け取られやすくなります。

最初の1か月は、職場のやり方をまず受け取り、なぜそのやり方になっているのかを観察する期間と割り切りましょう。整形外科クリニックの手順には、院長の診療のスタイルや、過去に起きたトラブルへの対策など、外からは見えない理由があることも多いのです。

2か月目からは「聞き方」を工夫する

仕事に慣れてきたら、疑問に思ったことを少しずつ聞いていきます。このとき、「なぜこうするんですか」ではなく、「このやり方には、何か理由があるんですか。覚えておきたくて」と聞くと、相手は教える立場として答えやすくなります。つまり、否定ではなく学ぶ姿勢として伝える、ということです。

3か月目に、自分の役割を確かめる

3か月ほど経つと、自分がどの仕事を任されていて、誰と組むことが多いのかが見えてきます。この時点で、任されている範囲と、雇われたときの説明が大きくずれていないかを確かめてください。看護師として雇われたのに受付や掃除の仕事ばかりが増えている、パートの契約なのに常勤と同じ時間まで残るのが当たり前になっている、といったずれがあれば、早めに相談するほうがこじれません。

試用期間中に気をつけたいこと

多くのクリニックでは、入ってから数か月を試用期間としています。これ、知らない人が本当に多いのですが、試用期間中であっても、合理的な理由のない解雇は認められません。つまり、「試用期間だから何を言われても我慢しなければならない」わけではないのです。とはいえ、この時期は職場の側もあなたを見ています。仕事の報告や記録を丁寧に続け、「きちんと仕事をする人」という評価をつくっておくことが、人間関係を安定させるいちばんの近道になります。

私が以前相談を受けた方で、入って2週間で業務の改善案を院長に直接提案し、それが原因でベテランの受付の方と関係がこじれてしまった看護師さんがいました。提案の中身は正しかったのです。ただ、順番と時期を間違えてしまった。3か月待って、周りの人に相談しながら出していたら、結果は違ったかもしれません。正しいことを伝えるにも、狭い職場ではタイミングが大切です。

狭い職場での、具体的な距離の取り方

ここまでの関係ごとの話を踏まえて、狭い職場で自分を守りながら働くための、具体的な距離の取り方をまとめます。

挨拶と、仕事の報告だけは丁寧に

人間関係の土台は、実はとても基本的なところにあります。朝の挨拶、帰りの挨拶、仕事の区切りでの報告。これを誰に対しても同じように丁寧に続けていると、「仕事はきちんとする人」という評価が固まり、個人的な好き嫌いで扱われにくくなります。

雑談は「浅く、広く」

特定のグループと深く付き合うと、別のグループとの関係がぎくしゃくすることがあります。狭い職場では、雑談は天気や季節の話、患者さんの前向きな話など、誰とでも話せる内容を中心にし、どのグループとも適度な距離を保つのが安全です。

噂話には、同意も否定もしない

その場にいない人の話が出たら、「そうなんですね」と受け流すにとどめます。同意すると「あの人も言っていた」と広まり、否定すると角が立ちます。自分からは話を広げないことが大切です。

職場の人とのSNSのつながりは慎重に

休日の過ごし方や、職場への不満がSNSを通じて伝わってしまうことがあります。とくに患者さんに関することは、個人が特定できない書き方であっても投稿しないのが原則です。医療の現場で知った患者さんの情報を漏らすことは、職種によっては法律上の守秘義務に反することにもなります。

仕事の指示とやりとりは記録に残す

言った言わないのトラブルは、狭い職場ほどこじれます。指示の内容、変更の内容、引き継いだこと。簡単なメモで構いません。記録があると、自分を守る根拠になりますし、相手と感情ではなく事実で話し合えるようになります。

これはハラスメントでは、と感じたら

人間関係の悩みの中には、「距離を取る工夫」で対処すべきものと、「我慢してはいけない」ものがあります。後者について、法律の目線で整理しておきます。

パワーハラスメントの防止は、クリニックにも義務がある

職場のパワーハラスメントについては、労働施策総合推進法で、事業主に防止のための措置を取ることが義務づけられています。2022年4月からは、中小企業にもこの義務が適用されています。つまり、小さなクリニックであっても、相談の窓口を設けるなどの対応を取らなければならない、ということです。

パワーハラスメントとは、優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによって、働く人の職場環境が害されるものを指します。たとえば、次のようなものです。

・患者さんや他のスタッフの前で、人格を否定するような言葉で繰り返し怒鳴る ・特定の人だけを無視する、仕事を与えない、連絡を回さない ・明らかにこなせない量の仕事を押しつける、反対に仕事を取り上げる ・私生活について、しつこく詮索する

一方で、ミスを指摘する、業務のやり方を注意するといった、仕事に必要な範囲の指導は、口調が厳しくてもそれだけでハラスメントに当たるとは限りません。ここの線引きは、実際の言動や回数、状況によって変わります。

感じたときにやること

・いつ、どこで、誰に、何を言われたか、されたかを、日付入りで記録する ・同じ場面を見ていた人がいれば、その人の名前も書いておく ・クリニックに相談の窓口があれば、そこに相談する ・院長自身の言動が問題で、クリニック内に相談先がない場合は、職場の外の窓口を使う

職場の外の相談先としては、都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーがあります。労働条件やハラスメントについて、無料で相談できます。※心身の不調が出ている場合や、損害賠償などを考えている場合は、医療機関の受診や弁護士への相談もあわせて検討してください。

小さなクリニックでは、「院長に言っても変わらない」「狭い職場だから、相談したことがすぐ伝わる」と感じて、声を上げられない方が多いのが現実です。だからこそ、記録を残し、外の窓口があることを知っておくことが、あなたを守る力になります。

働く前に、人間関係を見抜くために

最後に、これから整形外科クリニックで働く方に向けて、人間関係を事前にある程度見抜く方法をお伝えします。

見学は、混雑する時間帯に

見学ができるなら、午前の診療が始まってすぐの時間帯か、夕方の混雑の時間帯にお願いしてみてください。忙しいときにスタッフ同士がどんな言葉を交わしているか。院長がスタッフにどんな口調で指示を出しているか。患者さんへの態度と、スタッフへの態度に大きな差がないか。落ち着いた時間帯では見えないことが分かります。

面接で聞いておきたいこと

・前任の方は、どのくらいの期間お勤めでしたか ・スタッフの方の勤続年数は、どのくらいの方が多いですか ・看護師とリハビリの方で、患者さんの情報をどのように共有していますか ・昼休みの過ごし方や、電話当番はどうなっていますか ・困ったことがあったとき、誰に相談する形になっていますか

答えにくそうにされる質問があれば、それ自体がひとつの情報です。

求人が頻繁に出ていないかを見る

同じクリニックの同じ職種の求人が、短い間隔で何度も出ている場合は、人が定着していない可能性があります。求人の掲載時期を気にかけておきましょう。

それでも、人間関係は入ってみなければ分からない部分が残ります。合わなかったときに一人で抱え込まず、相談できる相手を持っておくことが大切です。仕事やキャリアの悩みを専門的に聞く仕事がどういうものかは、職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介されています。国家資格として相談を担うキャリアコンサルタントの内容を知っておくと、どんな専門家を頼れるのかが分かります。職場を変えずに働き方を広げたい方は、臨床経験を活かした在宅の仕事を紹介している看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】も参考になります。

働く人と職場の関係を長く見てきた立場から、ひとつ観察を添えておきます。長く続く人ほど、人間関係を「相性」だけで片付けず、仕事の範囲や条件、情報の伝え方を言葉にしてそろえています。これは雇われる場合も、業務委託で仕事を受ける場合も同じです。間に入る仲介の取り分が大きい仕組みより、働く人と依頼する側が直接条件を確かめ合える関係のほうが、働く人の手取りが厚くなり、「この人に任せたい」という信頼も育ちやすいものです。関係を言葉にしてそろえることは、狭い職場ほど効き目があります。

整形外科クリニックの人間関係は、構造を知り、距離の取り方を工夫し、我慢してはいけない線を知っておくことで、ずっと扱いやすくなります。一人で抱え込まないでくださいね。法律は、あなたの味方です。

よくある質問

Q. 整形外科クリニックの人間関係が難しいと言われるのはなぜですか?

スタッフが10人から20人ほどと少人数で異動がなく、院長が雇い主と診療の責任者を兼ねているため、院長の影響が大きいことが理由です。さらに看護師、理学療法士、受付、助手など職種が多く、仕事の優先順位が食い違いやすいこと、長い昼休みを一緒に過ごすことも、人間関係を濃くしやすくしています。

Q. 理学療法士との関係がうまくいかないときは、どうすればよいですか?

摩擦の多くは、患者さんを注射とリハビリのどちらから回すか、助手への指示が重なるなど、ルールが決まっていないことから生まれます。個人間で解決しようとせず、院長や主任に順番や役割のルールを決めてほしいと相談しましょう。日頃から患者さんの情報を短く共有するだけでも、関係は変わりやすくなります。

Q. 昼休みは休憩室で一緒に過ごさないといけませんか?

労働基準法では休憩時間を自由に使わせることが決められているため、どこで誰と過ごすかは本来自分で決めてよいことです。角を立てたくない場合は、外を歩いている、家のことを片付けに帰っているなど一言添えると自然です。休憩中に電話対応を指示されている場合は、働いている時間として扱われる可能性があります。

Q. 小さなクリニックでハラスメントを受けたら、どこに相談できますか?

パワーハラスメントの防止措置は2022年4月から中小企業にも義務づけられているため、まずクリニックの相談窓口に相談できます。院長自身の言動が問題で院内に相談先がない場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーで無料で相談できます。いつ誰に何をされたかを日付入りで記録しておくことが大切です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月9日最終更新:2026年9月17日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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