企業の産業保健を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

中西 直美
中西 直美
企業の産業保健を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

この記事のポイント

  • ✓企業の産業保健を辞めたいと感じたときに
  • ✓原因が仕事の中身なのか職場の体制なのかを切り分ける方法を整理します
  • ✓健康管理室の1日で疲れが溜まる場所

企業の産業保健を辞めたいと思っている。 でも、せっかく病院から移ってきたのに、ここで辞めたら次はどこへ行けばいいのか分からない。 そんな気持ちで、この記事にたどり着いた方もいると思います。

大丈夫ですよ。辞めたいと感じること自体は、おかしなことではありません。 企業の産業保健には、この職場ならではのしんどさがあり、多くの人が同じところでつまずいています。

ただ、辞める前に1つだけやっておいてほしいことがあります。 それは「何から離れたいのか」を切り分けることです。 仕事の中身がつらいのか、いまの会社の体制がつらいのか、特定の人との関係がつらいのか。 ここを分けないまま次の職場へ移ると、同じ悩みをもう一度抱えることがあるからです。

この記事では、企業の健康管理室の中で実際に何が起きているのかを整理しながら、出ていく前に切り分けておきたいことを順にお話しします。

企業の産業保健を辞めたくなる理由は、職場の仕組みから生まれることが多い

企業の産業保健は、外から見ると「夜勤がなく、落ち着いて働ける職場」と思われがちです。 実際、病棟のような体力的な負担は減ります。 けれど、入ってみると別の種類の負担があることに気づきます。

人材紹介の立場から、産業保健師の悩みについて次のように紹介されています。

産業保健師は、従業員の健康管理やメンタルヘルス対策を支える重要な存在ですが、「思っていたより辛い」「辞めたいと感じる」と悩む人も少なくありません。少人数体制による孤独感、成果の見えにくさ、メンタル不調者対応の難しさなど、産業保健師ならではの悩みがあります。 出典: avenir-executive.co.jp

ここに挙げられている「少人数体制」「成果の見えにくさ」「メンタル不調者への対応」は、どれも個人の能力の問題ではありません。 企業の産業保健という職場の仕組みから生まれるものです。

少し仕組みの話をさせてください。 労働安全衛生法では、常時50人以上が働く事業場に、産業医と衛生管理者を置くことが義務づけられています。 一方で、保健師や看護師を置くことは義務ではありません。 つまり、企業にとって看護職は「必ず置く人」ではなく、「会社の判断で置く人」です。

そのため、健康管理室に看護職が1人しかいない会社が珍しくありません。 同じ職種の同僚がいないので、迷ったときに相談できる相手が社内にいない。 病院なら先輩や同僚にすぐ聞けたことを、ここでは自分一人で判断しなければならない。 この孤独感が、辞めたい気持ちの根っこにあることが多いんです。

もう1つは、立場の難しさです。 看護職は従業員の健康を守る役割を持ちながら、給料は会社から受け取っています。 従業員の希望と会社の方針がぶつかったとき、どちらの側にも立ちきれない。 「保健師さんは会社の味方なんでしょう」と言われ、人事からは「もっと早く復職させてほしい」と言われる。 この板挟みに、少しずつ心がすり減っていきます。

こうした悩みは、あなたが弱いから生まれるのではありません。 仕組みから生まれているのだと知っておくだけで、自分を責める気持ちが少し軽くなるはずです。

健康管理室の1日のどこで、疲れが溜まっていくのか

辞めたい気持ちを切り分けるために、まずは1日の流れを振り返ってみましょう。 どの時間に、どんな場面で疲れを感じているかが見えてくると、原因が絞りやすくなります。

朝、出社するとメールと社内チャットを開きます。 上司からの「部下の様子がおかしい」という相談、休職中の人からの連絡、健診機関からのデータ。 誰も優先順位をつけてくれないので、どれから手をつけるかを自分で決めます。

午前中は、健診結果の確認や受診勧奨の連絡、記録の入力に追われることが多いです。 この事務作業の重さについて、同じ出典では次のように書かれています。

産業保健師は、従業員との面談や保健指導が中心の仕事だと思われがちですが、実際には記録作成、健診結果の整理、受診勧奨リストの管理、ストレスチェック関連の集計、会議資料の作成など、事務作業の比重が大きい職場も少なくありません。 出典: avenir-executive.co.jp

午後は面談です。 高ストレスと判定された人、復職を控えた人、上司に勧められて来た人。 1件ごとに気持ちを向けて話を聞き、終わったら記録を書く。 中には、強い不安や死にたい気持ちを打ち明ける人もいます。 そういう面談のあと、次の人が待っていると、気持ちを切り替える時間もありません。

夕方は、人事との打ち合わせや、衛生委員会の資料づくり。 健康の話を、会社が判断に使える言葉に置き換える作業です。

この1日の中で、あなたが一番疲れるのはどこでしょうか。

・朝、何から手をつけるか決めるとき ・パソコンに向かって記録や集計をしているとき ・重い面談のあと ・人事や上司と話すとき ・一人で判断しなければならないとき

紙に書き出してみると、意外なことに気づくことがあります。 「面談は好きだけれど、人事との調整が苦しい」 「事務作業は苦にならないけれど、一人で判断するのが怖い」 こうして疲れの場所が分かると、辞めるべきなのか、職場の中で変えられることがあるのかが見えてきます。

出ていく前に切り分けること1:仕事の中身がつらいのか、いまの体制がつらいのか

最初に切り分けたいのは、「企業の産業保健という仕事そのもの」がつらいのか、「いまの会社の体制」がつらいのか、という点です。

この2つは、似ているようで行き先がまったく違います。

仕事そのものがつらい場合は、たとえばこんな気持ちが続いています。 ・成果が目に見えないことが、どうしても物足りない ・治療やケアに直接関わる仕事に戻りたい ・健康な人に働きかけることに、やりがいを感じられない

こうした気持ちが強いなら、別の企業に移っても、同じ物足りなさを感じる可能性があります。 病院や訪問看護など、直接ケアに関わる職場を考えたほうが、心が落ち着くかもしれません。

一方、いまの体制がつらい場合は、こんな気持ちです。 ・一人で全部を抱えていて、相談できる人がいない ・産業医がほとんど来ないので、判断を背負わされている ・人事が健康管理に関心がなく、何を提案しても動いてくれない ・拠点が多すぎて、移動と事務で1日が終わる

こちらに当てはまるなら、企業の産業保健という仕事を離れる必要はないかもしれません。 看護職が複数いる会社、専属の産業医がいる会社、健康管理に力を入れている会社に移ることで、悩みが解消することがあります。

見分けるための問いを1つ、お伝えしますね。 「もし、看護職の同僚が2人いて、産業医が週に1回来てくれて、人事が協力的だったら、この仕事を続けたいと思いますか」

この問いに「それなら続けたい」と答えられるなら、つらいのは体制です。 「それでも、やっぱり違う気がする」と感じるなら、仕事の中身が合っていない可能性があります。

どちらの答えが出ても、間違いではありません。 自分の気持ちの向きを知ることが、次の一歩を選ぶ土台になります。

もう1つ、見落としやすい切り分けがあります。 それは「いまの時期だけがつらいのか」という点です。

企業の産業保健には、1年の中ではっきりした波があります。 4月は新入社員の健診と異動の相談が重なり、春から秋は定期健診の結果への対応が続き、秋から冬はストレスチェックと高ストレス者への面接の案内が入ります。 山場の真っ最中に「もう辞めたい」と感じていても、閑散期に入ると気持ちが落ち着く人もいます。

また、入社して1年目は、1年の流れがまだ見えていないので、何もかもが初めてで疲れやすい時期です。 2年目になると、「この時期にはこれが来る」と先が読めるようになり、同じ仕事量でも負担の感じ方が変わることがあります。

去年の同じ時期の手帳や記録を見返して、「毎年この時期につらくなっているのか」「今年だけ特別なのか」を確かめてみてください。 時期の問題なら、繁忙期だけ外部の手を借りる相談をするなど、辞める以外の方法が見つかるかもしれません。 反対に、閑散期になっても気持ちが晴れないなら、それは時期ではなく、もっと根本的な理由があるサインです。

出ていく前に切り分けること2:人との関係がつらいのか、立場の構造がつらいのか

2つ目に切り分けたいのは、「特定の人との関係」がつらいのか、「看護職という立場の構造」がつらいのか、という点です。

企業の健康管理室で関わる人は、限られています。 直属の上司(多くは人事部や総務部の管理職)、人事の担当者、産業医、そして従業員です。 人数が少ないぶん、1人との関係がこじれると、職場全体が息苦しくなります。

特定の人との関係がつらい場合は、たとえばこんな状況です。 ・上司が健康情報の扱いを理解しておらず、面談の内容を報告するよう求めてくる ・産業医と方針が合わず、面談のたびに意見がぶつかる ・特定の管理職が、部下の不調を「甘え」と言って取り合わない

この場合、その人が異動したり、会社が変わったりすれば、悩みはなくなるかもしれません。 また、間に人事の責任者や産業医に入ってもらうことで、関係が変わることもあります。

一方、立場の構造がつらい場合は、相手が誰であっても感じる苦しさです。 ・従業員の味方でいたいのに、会社の一員として振る舞わなければならない ・本人の同意がない限り、上司に大事なことを伝えられないもどかしさ ・自分の判断ではなく、産業医と会社が決めることを、本人に伝える役回り

企業の産業保健では、看護職は判断する人ではなく、判断に必要な情報をそろえてつなぐ人です。 この「つなぐ役割」そのものが苦しいと感じるなら、どの会社に行っても似た場面に出会います。

私自身、会社勤めをしていたころに、立場の板挟みで眠れなくなった時期がありました。 相手を変えれば楽になると思って部署を移ったのですが、次の部署でも同じ苦しさがやってきたんです。 そのとき初めて、つらかったのは人ではなく、自分が置かれていた立場の形だったと気づきました。 気づいてからは、「自分が決めることと、決めないこと」をノートに分けて書くようにしました。 それだけで、全部を背負っているような重さが、少しずつほどけていきました。

人との関係か、立場の構造か。 ここを分けておくと、「会社を変える」のか「働き方の形を変える」のか、選ぶ方向が見えてきます。

保健師の職場の人間関係については、保健師の職場の人間関係と、合わないときの動き方で、行政や病院も含めた職場ごとの特徴と対処が整理されています。企業の健康管理室の悩みと比べながら読むと、自分の悩みがどちら寄りなのかを考える助けになります。

出ていく前に切り分けること3:心と体が、限界に近づいていないか

3つ目は、とても大事なことです。 いまのあなたの心と体が、限界に近づいていないかを確かめてください。

企業の産業保健で働く人は、ほかの人の不調には気づけるのに、自分の不調には気づきにくいことがあります。 「私は支える側だから」と、自分のしんどさを後回しにしてしまうんです。

こんなサインが2週間以上続いていたら、少し立ち止まってほしいと思います。 ・朝、会社に行こうとすると体が重く、動けない日がある ・夜、面談の内容が頭から離れず、眠れない ・休みの日も、仕事のことを考えて気持ちが休まらない ・以前は楽しめていたことに、興味が持てなくなった ・食欲が落ちた、または食べすぎてしまう

もし当てはまるなら、切り分けの作業は後回しで大丈夫です。 まずは休むこと、そして誰かに相談することを優先してください。

相談先について、少し気をつけたいことがあります。 企業の産業保健で働いていると、自社の産業医に自分の不調を相談しにくいと感じるかもしれません。 毎日一緒に仕事をしている相手ですから、当然のことです。

そういうときは、社外の相談先を使ってください。 かかりつけの医療機関や心療内科を受診する方法があります。 厚生労働省が運営する働く人のメンタルヘルスのポータルサイト「こころの耳」では、電話やSNSで相談できる窓口が紹介されています。 会社が外部の相談サービス(EAP)と契約していれば、それを自分のために使うこともできます。

限界に近いときに、大きな決断をするのはおすすめしません。 疲れているとき、人は「全部を投げ出す」か「全部を我慢する」かの二択で考えがちだからです。 まず休んで、少し回復してから、あらためて切り分けを考えましょう。

あなたが休むことは、周りに迷惑をかけることではありません。 支える人が倒れないことも、職場を守ることの一部です。

辞める前に、社内で試せる調整

切り分けてみて「つらいのは体制かもしれない」と感じたら、辞める前に社内で試せることがあります。 すべてが実現するわけではありませんが、伝えてみる価値はあります。

まず、業務の棚卸しです。 1か月の仕事を、健診の事後対応、面談、記録、資料づくり、人事との調整、というように分類し、それぞれに何時間使っているかを書き出します。 これを上司に見せながら、「一人で回すにはこの部分が限界です」と伝えると、感覚ではなく事実として受け止めてもらいやすくなります。

次に、外部の力を借りる提案です。 健診結果のデータ入力を健診機関に任せる、ストレスチェックの実施を外部の事業者に委託する、事務の補助をパートで1人入れる。 看護職でなくてもできる仕事を外に出せれば、自分は面談や保健指導に時間を使えるようになります。

判断の重さがつらい場合は、産業医との打ち合わせの時間を定期的に取ってもらうよう相談しましょう。 嘱託の産業医でも、来社日の前後に15分ほど相談の時間を確保してもらうだけで、一人で抱える判断はずいぶん減ります。

社外の相談先を持つことも、立派な調整です。 各都道府県にある産業保健総合支援センターでは、産業保健に関わる人向けの研修や相談を無料で行っています。 同じ立場の人と出会える研修に参加すると、「悩んでいるのは自分だけじゃない」と感じられて、気持ちが楽になることがあります。

働き方の形を変えるという選択肢もあります。 常勤から時短勤務やパートに切り替える、担当する拠点を減らしてもらう、在宅勤務の日を設けてもらう。 いまの会社の就業規則でどんな形が認められているかを、人事に確かめてみてください。

こうした調整を試しても変わらなかったとき、それは「あなたが努力しなかったから」ではありません。 その会社の体制では難しかった、ということです。 そのときは、安心して次の職場を考えていいんですよ。

辞めると決めたとき、行き先によって何が変わるか

切り分けと調整を経て、辞めると決めたなら、次の行き先を考えます。 企業の産業保健の経験を持つ人の主な行き先と、それぞれで働き方がどう変わるかをまとめます。

1つ目は、別の企業の健康管理室です。 つらかったのが体制なら、看護職が複数いる会社、専属の産業医がいる会社、健康経営に力を入れている会社を選ぶことで、同じ仕事を続けながら悩みを減らせます。 企業の産業保健の経験者は採用で歓迎されやすく、1社目での経験がそのまま強みになります。

2つ目は、健診機関や、企業から産業保健の業務を受託する会社です。 複数の企業を担当するので、1社の中の板挟みからは少し距離を置けます。 一方で、担当する会社が多いぶん、移動や事務の量は増えることがあります。

3つ目は、行政の保健師です。 市区町村の保健センターなどで、地域の住民の健康を支えます。 母子保健、高齢者、精神保健など、担当分野によって仕事が大きく変わります。 公務員試験を受ける必要があり、年齢制限を設けている自治体もあるので、早めに確認しましょう。

4つ目は、病院やクリニック、訪問看護です。 仕事の中身が合わなかったと感じた人には、直接ケアに関わる職場に戻るのが自然な選択になることがあります。 企業で身につけた、働く人の生活や職場の事情を踏まえる視点は、外来や訪問看護で患者さんの生活を支えるときにも役立ちます。

5つ目は、組織に属さない働き方です。 オンラインの健康相談、企業向けの研修講師、健康に関する記事の監修など、企業の産業保健の経験を活かせる仕事は少しずつ増えています。 ただし、収入が安定するまでには時間がかかるので、いきなり独立するより、次の勤め先を持ちながら少しずつ始めるほうが安心です。

収入がどう変わるかは、行き先を決めるうえで大切な情報です。 看護師の年収・単価相場では、病棟、外来、企業など、働く場所ごとの水準がまとまっているので、移ったあとの生活を具体的に思い描く材料になります。

企業の産業保健を離れるかどうか迷っている人向けに、辞める前に確かめたい点は産業保健師を辞めたいと思ったときに確かめる5つのことでも整理されています。この記事の切り分けと合わせて読むと、判断の抜けが減ります。

辞めると伝えるときと、引き継ぎで気をつけたいこと

辞めると決めたら、伝え方と引き継ぎの段取りを考えます。 企業の健康管理室は、辞める人の頭の中にしかない情報が多い職場です。 ここを丁寧に進めておくと、自分の気持ちも区切りやすくなります。

まず、伝える時期です。 就業規則に「退職の1か月前までに申し出る」などの決まりがあれば、それに沿って伝えます。 期間の定めのない雇用なら、法律上は申し出から2週間で退職できるとされていますが、健康管理室の引き継ぎを考えると、余裕を持って伝えるほうがお互いに楽です。

時期を選べるなら、1年の山場を避けることも考えてみてください。 定期健診の結果が返ってくる時期や、ストレスチェックの実施時期に辞めると、引き継ぐ側の負担が一気に大きくなります。 責任感の強い人ほど、それを気にして辞める時期を先へ先へと延ばしてしまいがちです。 山場を避けるのは大切ですが、自分の心と体が限界なら、時期より自分を優先してくださいね。

次に、引き継ぎの中身です。 企業の産業保健で特に丁寧に引き継ぎたいのは、次のようなことです。 ・休職中の人と、復職したばかりの人の経過と、次に予定している面談 ・受診勧奨を続けている人の一覧と、これまでの連絡の記録 ・ストレスチェックや健診の年間の段取りと、健診機関の担当者の連絡先 ・健康情報の保管場所と、誰が見られるかの決まり ・産業医とのやり取りの方法と、来社日の段取り

健康情報の引き継ぎには、特に気をつけてください。 記録は会社の健康情報の取扱規程に沿って保管されているはずなので、個人のメモや自分のパソコンに残っている情報がないかを確かめ、決まった場所に移しておきます。 退職したあとも、仕事で知った健康情報を漏らしてはいけない義務は続きます。

後任が決まっていない場合は、引き継ぎ資料を産業医と人事の両方に渡しておくと安心です。 特に、面談を続けている人には、担当が変わることをどう伝えるかを産業医や人事と相談しておきましょう。 突然いなくなると、相談していた人が不安になることがあります。

最後に、辞めると伝えたあとの気持ちのことです。 「こんな時期に辞めるなんて」と言われることがあるかもしれません。

あなたは、できる範囲で丁寧に引き継げば十分なんですよ。

次の職場の求人票で、同じことを繰り返さないために見る点

次の職場を探すときは、いまの職場でつらかったことが、次の職場でも起きないかを確かめる視点で求人票を読みましょう。

一人で抱えることがつらかったなら、看護職の人数を確認します。 求人票に書かれていなければ、面接で「看護職は何人いらっしゃいますか」と聞いてください。 配属先が「健康管理室」「健康推進課」のように独立した部署か、「人事部」「総務部」の中の一員かも、体制を知る手がかりになります。

判断の重さがつらかったなら、産業医の体制を確認します。 事業場の従業員が1,000人を超えていれば、専属の産業医がいる可能性が高くなります。 数百人規模なら嘱託の産業医が月に1回程度来る形が多く、看護職が判断を求められる場面が増えます。

事務作業に追われたなら、業務内容の書き方を見ます。 「健康管理業務全般」とだけ書かれていたら、面接で1日の時間配分を聞きましょう。 事務の補助をする人がいるか、健診データの管理を外部に任せているかも、聞いておくと安心です。

人事との関係がつらかったなら、会社が健康管理にどれくらい力を入れているかを見ます。 健康経営優良法人の認定を受けているか、健康に関する取り組みを社外に発信しているかは、会社のホームページで調べられます。 面接で「健康管理室の提案が、これまでどんなふうに形になりましたか」と聞くと、会社の姿勢が伝わってきます。

募集の理由も、見逃さないでください。 「前任者の退職に伴う」と書かれていたら、前任者がどのくらいの期間働いていたかを聞いてみましょう。 短い期間で人が入れ替わっている職場は、体制に何かしらの難しさを抱えていることがあります。

求人の探し方そのものについては、企業の産業保健の求人はどこで探すのかで、募集が出やすい場所と応募前に確かめることがまとめられています。いまの職場で働きながら次を探す場合は、効率よく探す手がかりになります。

在宅ワーク市場を長く見てきた立場から、辞めたい気持ちとの向き合い方を考える

在宅ワークやフリーランスの市場を長く見てきた立場から言えば、医療職の方が組織を離れたあとに一番苦しむのは、仕事の中身より「一人で決め続けること」の重さだと感じています。 企業の健康管理室で一人職場を経験した人は、この重さをすでに知っています。 だからこそ、次に一人で働く道を選ぶなら、相談できる相手や仲間を先に持っておくことが大切です。

長く続いている人を見ていると、仕事を急いで広げるより、「この人に相談すると安心できる」という関係を少しずつ育てている傾向があります。 依頼主と直接つながる形なら、仲介の手数料がかからない分、依頼する側は同じ予算で頼みやすく、受ける側も自分の時間に見合った手取りを受け取れます。 手数料0%の直接取引は、専門職が自分をすり減らさずに働き続けるための形の1つです。

企業の産業保健で身につけた「働く人の悩みを聞き、必要な窓口へつなぐ力」は、キャリアの相談にもつながります。 職場・転職・キャリア相談のお仕事では、働く人の相談にどんな形があるかが紹介されています。 いつか、自分と同じように悩む人の力になりたいと思ったら、キャリアコンサルタントの資格ガイドで、学ぶ内容や受験資格を見ておくのもいいかもしれません。

辞めたいと感じたことは、失敗ではありません。 自分に合う働き方を探すための、大切なサインです。 何から離れたいのかを切り分けて、あなたが安心して働ける場所を選んでくださいね。 あなたは一人じゃありません。

よくある質問

Q. 企業の産業保健を辞めたいと思ったら、まず何をすればいいですか?

まず「何から離れたいのか」を切り分けます。仕事の中身がつらいのか、看護職が1人で産業医も少ないといった体制がつらいのか、特定の人との関係がつらいのかを分けて考えます。紙に1日の流れを書き出し、どこで一番疲れるかを確かめると、原因が絞りやすくなります。

Q. 自社の産業医に自分の不調を相談しにくいときはどうすればいいですか?

社外の相談先を使ってください。かかりつけの医療機関や心療内科の受診、厚生労働省の働く人のメンタルヘルスのポータルサイト「こころの耳」で紹介されている電話やSNSの相談窓口、会社が契約している外部の相談サービスなどがあります。限界に近いときは、大きな決断より休むことを優先しましょう。

Q. 辞める前に社内で試せることはありますか?

1か月の業務を分類して時間を書き出し、一人で回すのが難しい部分を上司に事実として伝える方法があります。健診データの入力や事務の補助を外部やパートに任せる提案、産業医との定期的な相談時間の確保、時短勤務や担当拠点の見直しなども、伝えてみる価値があります。

Q. 企業の産業保健を辞めたあとの行き先にはどんなものがありますか?

看護職が複数いる別の企業、複数の企業を担当する健診機関や受託会社、市区町村の行政保健師、病院やクリニック、訪問看護などがあります。つらかったのが体制なら同じ仕事で職場を変え、仕事の中身が合わなかったなら直接ケアに関わる職場を考えると、同じ悩みを繰り返しにくくなります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月15日最終更新:2026年9月17日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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