企業の産業保健の人間関係|狭い職場での距離の取り方


この記事のポイント
- ✓企業の産業保健の人間関係は
- ✓関わる相手が少なく立場が複数あることから独特の難しさがあります
- ✓健康管理室の1日でこじれやすい場面
企業の産業保健の人間関係は、結論から言うと「人数が少ないこと」と「立場が複数あること」の2つから難しさが生まれます。病院の病棟のように同じ職種の仲間が大勢いる職場とは違い、健康管理室では関わる相手が限られ、しかも相手ごとに求められる役割が違います。だからこそ、相手ごとに距離の取り方をあらかじめ決めておくことが、長く働くための鍵になります。
この記事では、企業の健康管理室という職場の中で、誰とどんな関係が生まれ、どの場面でこじれやすいのかを整理します。そのうえで、人事や上司、産業医、同僚、従業員それぞれとの距離の取り方、一人職場の孤立への対処、求人票と面接で職場の空気を読み取る方法までを順に書いていきます。
企業の健康管理室は、関わる相手が少なく、立場が複数ある職場
まず、企業の産業保健で看護職が関わる相手を整理しておきます。人材紹介の立場から、産業保健師の役割は次のように説明されています。
一方で、従業員の日常的な健康相談、健康診断後のフォロー、メンタルヘルス不調の早期発見、休職・復職支援など、企業の産業保健を実際に動かしていくうえで重要な役割を担うのが「産業保健師」です。 出典: avenir-executive.co.jp
ここに挙げられた仕事を実際に動かすには、多くの相手と関わる必要があります。健康相談では従業員本人、健診後のフォローでは健診機関と本人、メンタルヘルス不調の早期発見では本人の上司、休職と復職の支援では人事と産業医と主治医。1つの案件に、立場の違う人が何人も関わります。
一方で、健康管理室の中にいる人は少人数です。労働安全衛生法が選任を義務づけているのは産業医と衛生管理者で、保健師や看護師の配置は義務ではありません。そのため、看護職が1人か2人という職場が珍しくなく、嘱託の産業医は月に1回ほどしか来社しません。日常的に顔を合わせるのは、人事部や総務部の担当者と、健康管理室を訪れる従業員というケースが多くなります。
この「相手は多いのに、味方になってくれる同じ職種の仲間は少ない」という構造が、企業の産業保健の人間関係を独特なものにしています。
もう1つの特徴は、看護職の立場が1つに定まらないことです。従業員から見れば「相談を聞いてくれる人」、人事から見れば「健康管理の担当者で、会社の一員」、産業医から見れば「現場の情報を持ってきてくれる協力者」。相手によって期待される役割が違い、それぞれの期待がぶつかる場面で、人間関係がこじれやすくなります。
健康管理の分野でよく紹介される調査では、働く人の68.3%が仕事に関して強い不安やストレスを感じているとされています。職場の人間関係は、そのストレスの大きな要因の1つです。つまり、看護職は他人の人間関係の悩みを聞く立場でありながら、自分自身も狭い職場の人間関係の中にいるわけです。この二重の構造を意識しておくことが、距離の取り方を考える出発点になります。
健康管理室の1日の中で、人間関係がこじれやすい場面
人間関係の難しさは、抽象的に考えるより、1日の中の具体的な場面で見たほうが対処しやすくなります。従業員数700人ほどの事業場で、看護職が1人、嘱託の産業医が月2回来社する体制を例に、1日を追ってみます。
朝、社内チャットに営業部の課長から連絡が入っています。「部下のAさんが最近元気がない。健康管理室で何か聞いていたら教えてほしい」。実はAさんは先週、健康管理室に相談に来ていました。ここが1つ目の分かれ目です。課長の心配は本物ですが、Aさんの同意なく相談の内容を伝えることはできません。断り方を間違えると、課長は「保健師は協力してくれない」と感じます。
午前中、人事の担当者と打ち合わせをします。休職中のBさんの復職について、人事は「来月から戻ってもらいたい」と考えています。一方、看護職は面談で、Bさんがまだ生活リズムを整えきれていないと感じています。ここが2つ目の分かれ目です。人事と対立する形になると、今後の協力が得にくくなります。
昼休み、社員食堂で従業員と同じテーブルになります。「保健師さん、この前の健診の結果なんですけど」と、周りに人がいる中で話しかけられます。ここが3つ目の分かれ目です。気さくに応じれば親しみを持たれますが、周りに健康情報が聞こえてしまいます。
午後、産業医が来社し、面談が続きます。面談のあと、産業医の意見が、看護職が日々の関わりから感じていた本人の状態と少し違うことがあります。ここが4つ目の分かれ目です。意見を言うべきか、黙っておくべきか迷います。
夕方、衛生委員会の準備で、各部署の管理職に長時間労働者の状況を確認します。忙しい管理職からは「またその話か」という反応が返ってくることもあります。ここが5つ目の分かれ目です。
この1日から分かるのは、企業の産業保健の人間関係のこじれは、相手の性格の問題より、「立場の違う人の期待がぶつかる場面」で起きるということです。場面ごとに、あらかじめ自分の動き方を決めておけば、その場で悩む時間はずいぶん減ります。
人事や上司との距離:情報をどこまで渡すかを先に決めておく
企業の健康管理室の看護職は、多くの場合、人事部や総務部に所属しています。直属の上司が人事の管理職で、毎日一緒に働くのも人事の担当者です。この人たちとの関係が、日々の働きやすさを最も大きく左右します。
人事との関係でこじれやすいのは、情報の扱いです。人事は、休職の手続き、配置の変更、労務の管理のために、従業員の健康状態を知りたいと考えます。看護職は、従業員から聞いた話を、本人の同意なく人事に伝えることはできません。保健師と看護師には法律上の守秘義務があり、健康診断の事務に関わる人にも秘密を守る義務があります。
ここで大切なのは、個別の場面ごとに悩むのではなく、「どの情報を、どの形で、誰に渡すか」を人事と一緒に先に決めておくことです。多くの会社には健康情報等の取扱規程があり、そこに情報を扱う人の範囲や目的が書かれています。規程を人事と一緒に読み合わせ、「就業上の配慮が必要かどうかと、その内容は人事に伝える。病名や相談の具体的な内容は、本人の同意がある場合だけ伝える」というように運用のルールを確認しておくと、個別の場面で断る理由を自分個人の判断にしなくて済みます。
冒頭の課長の例なら、「健康管理室での相談の内容は、ご本人の同意がないとお伝えできない決まりになっています。ただ、課長が心配されていることは受け止めました。課長から見て気になる様子があれば、具体的に教えていただけると、こちらからの声かけの参考にします」と返せます。情報は渡さないけれど、協力は拒まない。この線を保つのが、人事や上司との距離の取り方の基本です。
復職の時期のように意見が分かれる場面では、自分の意見をぶつけるより、判断の材料をそろえて、判断する人に渡す役割に徹するほうが関係を保てます。「生活リズムの記録を2週間つけてもらい、次の産業医面談で確認しましょう」と提案すれば、人事と対立せずに、本人の状態を確かめる時間をつくれます。
正直なところ、人事と「仲良く」なりすぎるのも注意が必要です。人事と親しくなるほど、従業員からは「保健師さんに話すと人事に伝わる」と見られやすくなります。人事とは信頼できる仕事の相手として付き合い、プライベートの距離は少し保っておく。この程度の距離感が、立場の複数ある職場ではちょうど良いと考えています。
産業医との距離:役割の違いを前提にし、情報を持っていく
産業医は、企業の産業保健で看護職が最も密に連携する相手です。ただし、多くの事業場では嘱託で月に1回か2回しか来社しないので、関係をつくる時間が限られています。
産業医との関係でこじれやすいのは、判断の違いが出たときです。看護職は、日々の関わりから従業員の様子をよく知っています。産業医は、限られた面談の時間で医学的な意見を述べます。そのため、「自分が見ている本人の姿と、産業医の意見が違う」と感じる場面が出てきます。
ここで押さえておきたいのは、就業上の配慮について医学的な意見を述べるのは産業医の役割であり、看護職はその判断に必要な情報を集めて伝える役割だという点です。役割の違いを前提にすると、意見が違うと感じたときの動き方が変わります。「先生の意見に反対です」と伝えるのではなく、「面談の場では落ち着いて見えましたが、ここ2週間で遅刻が4回あり、昼休みに一人で過ごす時間が増えています」と、判断の材料を追加で伝えるのです。産業医はその情報を踏まえて、意見を補ったり、次の面談で確認したりできます。
産業医との関係を良くするために効果的なのは、来社日の準備を丁寧にすることです。面談の対象者の経過を短くまとめ、前回の面談からの変化、本人の希望、人事の意向を整理しておく。これがあると、産業医は限られた時間で要点をつかめます。「この看護職がいると面談が進めやすい」と感じてもらえれば、来社日以外にも電話やメールで相談しやすい関係ができます。
産業医によって、関わり方の好みは大きく違います。細かく報告してほしい人もいれば、要点だけで良い人もいます。入社したばかりのころに「どんな形で情報をお伝えすると助かりますか」と一度聞いておくと、その後のすれ違いが減ります。
同じ健康管理室の同僚との距離:少人数だからこそ役割を言葉にする
看護職が複数いる健康管理室では、同僚との関係も大切です。少人数の職場ならではの難しさがあります。
2人や3人の職場では、1人との関係がこじれると、職場全体の空気が変わります。病棟なら、苦手な同僚がいても、勤務の組み合わせや担当の患者が変われば顔を合わせる時間が減りますが、健康管理室では毎日同じ部屋で過ごします。逃げ場がないことが、少人数の職場の人間関係を重くします。
こじれやすいのは、仕事の分担が曖昧なときです。健診の事後対応、メンタルヘルスの相談、復職支援、衛生委員会の資料。どれを誰が担当するかがはっきりしていないと、「あの人は面談ばかりで、事務は私に回ってくる」「私が関わっていた人の面談を、相談なく別の人が受けていた」といった不満が積み重なります。
少人数だからこそ、役割を言葉にして共有することをおすすめします。年度の初めに、担当の範囲、判断に迷ったときの相談の順番、不在の日の引き継ぎの方法を話し合い、簡単な表にしておく。仲が良い職場ほど「言わなくても分かる」と思いがちですが、言葉にしておくほうが、関係は長持ちします。
経験の差がある同僚との関係も、少人数の職場では難しくなりがちです。企業の産業保健が長いベテランと、病院から移ってきたばかりの人では、仕事の進め方が大きく違います。ベテランのやり方に疑問を感じても、職場に2人しかいなければ、意見を言いにくいものです。この場合は、「このやり方にはどんな理由があるんですか」と、批判ではなく理由を聞く形で話を始めると、相手も説明しやすくなります。
同じ職種の同僚がいることは、一人職場と比べれば大きな支えです。人間関係に悩んだときも、「相談できる相手がいる職場にいる」という事実を思い出すと、少し気持ちに余裕が生まれます。
保健師の職場の人間関係については、保健師の職場の人間関係と、合わないときの動き方で、行政や病院を含めた職場ごとの特徴と、合わないときに取れる行動がまとめられています。企業の健康管理室の人間関係と比べると、自分の悩みがこの職場特有のものなのかを考える材料になります。
従業員との距離:親しくなりすぎず、遠すぎない
企業の産業保健で、最も距離の取り方が難しいのが従業員との関係です。病院の患者さんとは違い、従業員とは同じ会社の中で毎日のようにすれ違います。
私自身、会社員だったころに、社内の健康管理室で面談を受けたことがあります。そのとき一番気になったのは、「ここで話したことが、上司や同じ部署の人に伝わらないか」という点でした。保健師さんは丁寧に話を聞いてくれましたが、その後、社員食堂で同僚と一緒にいるときに声をかけられ、周りの目が気になってしまったのを覚えています。保健師さんに悪気はまったくなかったはずです。けれど、相談する側にとっては、健康管理室の外での距離感がとても大切だと、そのとき感じました。
従業員との距離の取り方で意識したいのは、次の点です。
健康管理室の外では、健康の話をしない。社員食堂や廊下で健診の結果について聞かれたら、「その件は健康管理室でゆっくりお話ししましょう」と場所を移すことを提案します。親しみを持たれることは大切ですが、周りに健康情報が聞こえる場で応じないことが、結果的に信頼につながります。
特定の従業員と親しくなりすぎない。飲み会や社内のサークル活動に参加するのは悪いことではありませんが、特定のグループと親しくなると、ほかの従業員から「あの人たちの仲間」と見られ、相談しにくい存在になることがあります。誰とでも同じ距離で接することを意識しておくと安心です。
個人の連絡先やSNSでつながらない。相談に来た従業員から個人の連絡先を聞かれることがあります。善意で応じると、勤務時間外にも相談が届くようになり、自分の生活が守れなくなります。連絡は会社のメールやチャットに限り、急ぎの場合の社外の相談先を案内しておくのが基本です。
一方で、距離を取りすぎるのも問題です。健康管理室にこもって面談だけをしていると、従業員からは「何をしている部署か分からない」と思われ、不調を抱えた人が相談に来にくくなります。職場巡視や健康に関する社内の発信を通じて、「困ったときに行ける場所」として顔を知ってもらうことも、この仕事の一部です。
現場の管理職との距離:衛生委員会と職場巡視で関係を育てる
人事や産業医と比べて見落とされがちなのが、各部署の管理職との関係です。管理職は、部下の不調に最初に気づく立場であり、長時間労働の是正や職場の改善を実際に動かす人でもあります。ここと良い関係をつくれるかどうかで、健康管理室の仕事の進み方が大きく変わります。
管理職との関係でこじれやすいのは、健康管理室からの依頼が「仕事を増やすもの」と受け取られるときです。長時間労働者の面接指導の案内、ストレスチェックの受検の呼びかけ、部下の復職に向けた業務の調整。どれも管理職にとっては、忙しい業務の合間に対応しなければならないことです。依頼の文面が事務的だったり、理由の説明がなかったりすると、「また健康管理室か」という反応につながります。
距離を縮めるきっかけになるのが、衛生委員会と職場巡視です。衛生委員会は毎月開くことが決まっていて、各部署の管理職や労働者の代表が参加します。ここで健診の受診状況やストレスチェックの集団分析の結果を報告するときに、数字を並べるだけでなく、「この部署ではこういう工夫で残業が減っていました」と良い取り組みを紹介すると、管理職は健康管理室を「指摘してくる部署」ではなく「一緒に職場を良くする部署」と見るようになります。
職場巡視は、産業医や衛生管理者が定期的に作業場を回るものですが、看護職が同行できる職場も多くあります。現場に足を運び、管理職と顔を合わせて短い会話を重ねておくと、部下の不調に気づいたときに「まず健康管理室に相談しよう」と思ってもらいやすくなります。
管理職から部下についての相談を受けたときは、管理職自身の負担にも目を向けてください。部下の不調に悩む管理職は、自分も強いストレスを抱えていることが少なくありません。「課長ご自身は大丈夫ですか」と一言添えるだけで、関係の質が変わることがあります。管理職も、健康管理室が支える従業員の1人だからです。
関係がこじれてしまったときの立て直し方
どれだけ気をつけていても、狭い職場では関係がこじれることがあります。こじれたあとにどう動くかで、その後の働きやすさは大きく変わります。
まず、こじれた原因が「人」なのか「役割のぶつかり」なのかを分けて考えます。人事から強く反発されたとき、それが相手の性格によるものなのか、情報の扱いや復職の時期といった役割の違いによるものなのか。企業の産業保健では、ほとんどの場合、後者です。役割のぶつかりだと分かれば、相手を責める気持ちが和らぎ、話し合いの糸口を探しやすくなります。
次に、1対1で話す時間をつくります。メールやチャットでのやり取りが続くと、文面の冷たさから誤解が深まりやすくなります。短い時間でよいので直接話し、「先日の件、こちらの説明が足りなかったと思います。私が気にしていたのはこういう点でした」と、自分の意図を伝えます。相手の立場で困っていたことを聞くのも忘れないでください。
それでも関係が戻らないときは、間に人を入れることを考えます。人事との関係なら人事の責任者、同僚との関係なら上司、産業医との関係なら人事の担当者というように、役割の上で調整できる人に相談します。ここで大事なのは、相手の悪口ではなく、「業務のこの部分で方針が合わず、対応に困っている」と事実として伝えることです。
関係がこじれた状態が長く続き、眠れない、出勤がつらいといったサインが出てきたら、関係の修復より自分の心と体を優先してください。社内の産業医に相談しにくければ、かかりつけの医療機関や、厚生労働省が運営する働く人のメンタルヘルスのポータルサイト「こころの耳」で紹介されている相談窓口を使う方法があります。
関係の立て直しがうまくいかず、職場を移ることを考える場合もあるでしょう。そのときは、つらかったのが特定の人との関係なのか、立場の構造そのものなのかを切り分けてから次を選ぶと、同じ悩みを繰り返しにくくなります。
一人職場で孤立しないために、社外に関係をつくる
看護職が1人だけの健康管理室では、人間関係の悩みは「人とのこじれ」より「孤立」の形で現れます。社内に同じ職種の相談相手がいないので、判断に迷ったとき、つらい面談のあと、気持ちを話せる人がいないのです。
一人職場で長く働いている人に共通しているのは、社外に関係をつくっていることです。
1つ目は、産業保健総合支援センターの活用です。各都道府県にあるこのセンターでは、産業保健に関わる人向けの研修や専門的な相談を無料で行っています。研修に参加すると、ほかの会社で同じように一人で働く看護職と出会えます。「うちの会社でも同じことで悩んでいる」と分かるだけで、孤立感はずいぶん和らぎます。
2つ目は、職能団体や学会の活動への参加です。産業保健に関わる看護職の研究会や勉強会に参加すると、困ったときに相談できる仲間ができます。事例の検討会では、守秘義務に配慮しながら、判断に迷った場面について意見をもらうこともできます。
3つ目は、前の職場の同僚や、看護学校時代の友人とのつながりを保つことです。企業の産業保健の事情を詳しく知らなくても、看護職として話を聞いてもらえる相手がいることは、大きな支えになります。
社内でも、孤立を防ぐ工夫はできます。産業医との打ち合わせの時間を来社日ごとに15分でも確保してもらう、人事の担当者と週に1回、案件の進み具合を共有する時間を決める。相談相手を「同じ職種の人」に限らず、「一緒に仕事を進める人」と考えると、社内にも頼れる関係は見つかります。
求人票と面接で、職場の人間関係を読み取る方法
人間関係は入ってみないと分からない部分が大きいものですが、求人票と面接から読み取れることもあります。
まず、看護職の人数と配属先を確かめます。一人職場か、複数いる職場かで、悩みの形が「孤立」か「同僚とのこじれ」かに分かれます。配属先が「健康管理室」のように独立しているか、「人事部」の中にあるかで、人事との距離の近さも予想できます。
次に、募集の理由です。「前任者の退職に伴う」とあれば、前任者がどのくらいの期間働いていたかを面接で聞いてみてください。短い期間で人が入れ替わっている職場は、体制や人間関係に何かしらの難しさを抱えている可能性があります。
面接では、次のような質問が人間関係を知る手がかりになります。「健康管理室の方は、普段どなたと一番よく連携されていますか」「産業医の先生とは、来社日以外にどのように連絡を取られていますか」「健康情報の扱いについて、人事の方とどのようなルールを決めていますか」。答えが具体的に返ってくる職場は、関係の中での役割分担が整理されていると考えられます。
面接に同席する人の様子も見ておきましょう。人事の担当者だけでなく、現場の看護職や産業医が面接に加わる職場は、健康管理室のチームとしての関係を大切にしている傾向があります。面接官同士のやり取りが自然かどうかも、職場の空気を知る材料になります。
求人の探し方と応募前に確かめることについては、企業の産業保健の求人はどこで探すのかで、募集が出やすい場所とあわせて整理されています。人間関係の読み取り方と組み合わせると、応募先を絞り込みやすくなります。
在宅ワーク市場を長く見てきた立場から、狭い職場での距離の取り方を考える
在宅ワークやフリーランスの市場を長く見てきた立場から言えば、企業の産業保健で身につく「相手ごとに距離を決め、情報の線を守る力」は、組織の外で働くときにそのまま役立つ力だと感じています。依頼主と直接やり取りする仕事では、誰に何をどこまで伝えるか、どこまで引き受けるかを自分で決め続けなければならないからです。
長く続いている人ほど、単発の依頼をこなすことより、「この人に任せると安心」という関係を少しずつ育てることに時間を使っている傾向があります。依頼主と直接つながる形なら、仲介の手数料が乗らない分、依頼する側は同じ予算で頼みやすく、受ける側の手取りも厚くなります。手数料0%の直接取引は、専門職が関係づくりに時間を使い、その価値を正当に受け取るための形として意味があります。
企業で働く人の悩みを聞く経験を、別の形で活かしたい人もいるはずです。産業カウンセラーとして働く人の相談に乗る仕事の始め方では、オンラインでの相談の始め方と料金の考え方が紹介されています。働く人の相談にどんな種類があるかは、職場・転職・キャリア相談のお仕事で見られます。人間関係や働き方の悩みを体系的に支える力を身につけたいなら、キャリアコンサルタントの資格ガイドで受験資格や学ぶ範囲を確かめておくと、次の一歩が具体的になります。
職場を移るかどうかを考えるときは、収入の変化も判断材料になります。看護師の年収・単価相場では、病棟、外来、企業といった働く場所ごとの水準がまとまっているので、今の職場を続ける場合と移る場合を客観的に比べられます。
企業の産業保健の人間関係は、相手の性格ではなく、職場の構造から難しさが生まれます。人事とは情報の線を先に決め、産業医には判断の材料を持っていき、同僚とは役割を言葉にし、従業員とは健康管理室の内と外で距離を分ける。一人職場なら社外に関係をつくる。こうして相手ごとの距離を決めておけば、狭い職場でも自分をすり減らさずに働き続けられます。
よくある質問
Q. 企業の産業保健の人間関係はなぜ難しいと言われるのですか?
健康管理室は看護職が1人か2人という少人数の職場が多い一方、従業員、人事、上司、産業医など立場の違う相手と関わるためです。相手ごとに期待される役割が違い、情報の扱いや復職の時期などで期待がぶつかる場面でこじれやすくなります。相手の性格より職場の構造から生まれる難しさです。
Q. 上司から部下の相談内容を聞かれたらどう対応すればいいですか?
本人の同意なく相談の内容を伝えることはできません。健康情報等の取扱規程を人事と読み合わせ、伝える情報の範囲を先に決めておくと、個人の判断で断らずに済みます。心配は受け止めたうえで、気になる様子があれば具体的に教えてほしいと伝えると、情報は渡さずに協力の姿勢を示せます。
Q. 従業員と親しくなりすぎないためにはどうすればいいですか?
健康管理室の外では健康の話をせず、社員食堂などで聞かれたら場所を移すことを提案します。特定のグループとだけ親しくならないこと、個人の連絡先やSNSでつながらないことも大切です。一方で距離を取りすぎると相談しにくくなるため、職場巡視や社内の発信で顔を知ってもらう工夫も必要です。
Q. 一人職場で孤立しないためにできることはありますか?
各都道府県の産業保健総合支援センターの研修や相談を使う、産業保健に関わる看護職の勉強会に参加するなど、社外に相談できる関係をつくることが効果的です。社内でも、産業医との打ち合わせ時間を来社日ごとに確保する、人事と週に1回案件を共有するなど、一緒に仕事を進める人を頼れる形を整えましょう。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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