看護の業務マニュアルの作り方と、病棟の新人にも伝わる手順書の書き方

@SOHO編集部
@SOHO編集部
看護の業務マニュアルの作り方と、病棟の新人にも伝わる手順書の書き方

この記事のポイント

  • ✓看護の業務マニュアルの作り方を
  • ✓構成の決め方から書き方
  • ✓更新の仕組みまで整理します

看護の業務マニュアルを作る役目を任されたものの、どこから手を付ければよいか分からない。既存のマニュアルはあるけれど、古くなっていて誰も開かない。病棟の係や委員会でマニュアルの担当になった看護師の多くが、こうした悩みを抱えています。

看護の業務マニュアルは、医療の安全と新人の教育を支える土台です。ただ、作ること自体が目的になると、分厚いのに使われない文書が残るだけになります。この記事では、看護の業務マニュアルの作り方を、構成の決め方、新人にも伝わる書き方、作ったあとの更新の仕組みまで順に整理します。マニュアルの作成や更新の作業を、担当と期限つきで回す方法として、カンバンやガントのボードを使えるPinatecaにも触れます。

なお、マニュアルの中身となる手技や判断の基準は、所属する施設の規程、医師の指示、医薬品や医療機器の添付文書などに従うものです。この記事は、マニュアルという文書の作り方と運用の仕方を扱います。

看護の業務マニュアルが求められる背景

看護の業務マニュアルは、単に「あると便利な文書」ではありません。病院や診療所には、医療の安全を確保するための体制を整えることが法令で求められていて、マニュアルや手順書はその体制を支える文書の1つです。

医療法施行規則が求める安全管理の体制

医療法施行規則の第1条の11では、病院などの管理者に対して、医療に係る安全管理のための体制を確保することを求めています。条文に並んでいる主な内容は次のとおりです。

求められている体制 内容
指針の整備 医療に係る安全管理のための指針を整備する
委員会の設置 医療安全管理委員会を設置する(病院や入院施設のある診療所など)
職員研修 安全管理のための基本的な事項と具体的な方策について研修する
改善の方策 事故の報告など、安全の確保を目的とした改善の方策を講じる
記録の整備 安全管理に関する記録を整備する

さらに同じ条文では、院内感染対策のための指針の策定や、医薬品の安全使用のための業務に関する手順書の作成なども求められています。医薬品の手順書は、医薬品安全管理責任者のもとで作られるものです。

病棟の業務マニュアルは、こうした施設全体の指針や手順書と矛盾しないように作る必要があります。新しくマニュアルを作るときは、まず施設の医療安全管理の担当者や看護部に、上位の指針や既存の手順書がどこにあるかを確かめておくと、内容の食い違いを防げます。厚生労働省の医療安全対策のページには、医療安全に関する国の取り組みと資料がまとめられています。

新人の定着と教育の負担

もう1つの背景は、新人の教育です。看護の現場の手順書の役割について、医療・介護の情報サイトでは次のように説明されています。

現場経験が浅い看護師は、実習などで経験していないケアに遭遇することが多く、なおかつ手順や準備物を忘れてしまっているケースもあります。看護手順書を整備することで、新しく病棟に配属された看護師でも業務内容やその手順を把握でき、短い期間で現場へ定着することができます。 出典: wiseman.co.jp

マニュアルが整っていないと、新人は先輩に1つずつ聞くしかなく、教える側も忙しい業務の合間に同じ説明を繰り返すことになります。教える人によって説明が少しずつ違うと、新人はどれが正しいのか迷います。マニュアルは、教える側と教わる側の両方の負担を減らす道具でもあります。

業務マニュアルと手順書の違い

マニュアルの作成を始める前に、「業務マニュアル」と「手順書」の違いを整理しておくと、何をどこまで書くかが決めやすくなります。

業務マニュアルは全体の地図

業務マニュアルは、病棟の仕事の全体像を示す文書です。1日の業務の流れ、勤務帯ごとの役割、申し送りの方法、物品の場所、緊急時の連絡の流れ、記録の書き方など、病棟で働くうえで知っておくべきことを広くまとめます。新しく配属された人が最初に読む「病棟の地図」と考えると分かりやすいです。

手順書は1つの作業の道順

手順書は、1つの作業を、誰がやっても同じ品質でできるように、手順を順番に書いた文書です。与薬、採血、吸引、入院時の受け入れなど、作業ごとに1つずつ作ります。業務マニュアルが地図なら、手順書は目的地までの道順です。

法令でいう「手順書」との区別

看護の分野では、「手順書」という言葉が法令の中で特別な意味で使われることもあります。保健師助産師看護師法の第37条の2では、特定行為を「手順書により行う看護師」は研修を受けなければならないと定めています。ここでいう手順書は、医師や歯科医師が看護師に診療の補助を行わせるために、指示として作る文書のことです。病棟で作る業務の手順書とは別のものなので、マニュアルの中で言葉を使うときは混同しないよう注意してください。

マニュアル作りを始める前の準備

いきなり書き始めると、途中で範囲が広がりすぎたり、同じ内容を別の人が二重に書いたりします。書き始める前に、次の4つを決めておきます。

1. 目的と読む人を決める

まず、そのマニュアルを何のために、誰に向けて作るのかを決めます。「新人が配属から3か月のあいだに覚える業務をまとめる」「夜勤の少ない人数でも同じ対応ができるようにする」など、目的が具体的なほど、書く内容の取捨選択がしやすくなります。

読む人によって、書き方も変わります。新人向けなら用語の説明を丁寧に、経験者向けなら要点を短く、と書き分けます。1つのマニュアルですべての人に向けようとすると、新人には難しく、経験者には冗長な文書になりがちです。

2. 既存の文書を集める

病棟には、すでに手順のメモや古いマニュアル、先輩が作った手書きの資料が残っていることが多いはずです。新しく作り直す前に、それらを集めて一覧にします。施設全体の指針や、医薬品・医療機器の手順書など、上位の文書もこのときに確かめておきます。ゼロから書くより、既存の資料を土台に整理し直すほうが、早く、現場の実態に合ったものになります。

3. 作る項目の一覧と優先順位を決める

次に、マニュアルや手順書として作るべき項目を一覧にし、優先順位を付けます。優先順位の目安は次のとおりです。

優先度 項目の例
高い 間違えると患者さんに影響が出る作業、新人が早い時期に担当する作業、手順が人によってばらついている作業
中くらい 頻度は低いが、手順を忘れやすい作業
低い 慣れればほぼ迷わない作業、他部署の手順書で足りている作業

すべてを一度に作ろうとせず、優先度の高いものから順に作っていきます。優先度を決めるときは、係のメンバーだけで決めず、新人や異動してきた人に「最初に迷った作業」を聞いてみると、現場で本当に必要とされている手順が見えてきます。

4. 分担と期限を決める

マニュアル作りは、1人で抱えると必ず止まります。項目ごとに担当者と期限を決め、委員会や係の会議で進み具合を確かめる流れを作ります。担当と期限の管理の方法は、後の「作成と更新の作業を担当つきで回す」の節で説明します。

手順書の基本の構成

手順書は、決まった構成で書くと、読む人がどこに何が書いてあるかを迷わずに済みます。病棟の手順書でよく使われる構成は次のとおりです。

項目 書く内容
題名 作業の名前(例:入院時の受け入れ)
目的 この作業を何のために行うのか
対象 どの患者さん、どの場面に当てはまるのか
担当者 誰が行うのか(看護師、看護補助者など)
必要な物品 準備する物と、置き場所
手順 作業の順番と、それぞれの注意点
例外と緊急時 手順どおりにいかないときの対応と連絡先
記録 どこに何を記録するか
根拠となる文書 施設の指針、医師の指示、添付文書など
作成日・更新日・責任者 最後に見直した日と、内容に責任を持つ人

医療機関向けの解説記事でも、手順書を「定義・構造・作成手順」の観点から整理し、テンプレートとチェックリストで標準化することがすすめられています。どの病棟の手順書も同じ構成になっていれば、異動してきた人もすぐに読み方が分かります。

「更新日」と「責任者」を必ず入れる

構成の中で特に大切なのが、更新日と責任者です。手順や物品は、薬剤の採用の変更、医療機器の入れ替え、施設の規程の改定などで変わっていきます。いつ見直した手順なのかが分からないと、読む人は書いてある内容を信じてよいか判断できません。更新日が古い手順書は、見直しが必要な合図として目立つようにしておきます。

新人にも伝わる書き方のコツ

手順書は、書いた人ではなく、読む人が理解できて初めて役に立ちます。新人にも伝わる書き方のコツを6つ紹介します。

コツ1:1つの手順に1つの動作を書く

「物品を準備し、患者さんに説明して、体位を整える」のように、1つの手順に複数の動作を詰め込むと、途中の動作を飛ばしやすくなります。1つの番号には1つの動作だけを書き、番号を順にたどれば作業が終わるようにします。

コツ2:動作の理由を一言添える

手順だけを並べると、新人は「なぜそうするのか」が分からないまま覚えることになります。手順の横に、その動作の理由を一言添えておくと、想定と違う場面に出会ったときにも判断の手がかりになります。理由が分かっている手順は、忘れにくくもなります。

コツ3:病棟の中だけで通じる言葉を避ける

略語や、病棟の中だけで使われている呼び方は、異動してきた人や新人には通じません。略語を使う場合は、初めて出てくるところで正式な名前を書きます。物品の呼び方も、病棟での通称と、物品庫の表示の名前をそろえて書くと、探すときに迷いません。

コツ4:写真や図で置き場所と形を示す

物品の置き場所や、器具の組み立て方は、文章で説明するより写真や図で示すほうが早く伝わります。物品庫の棚の写真に番号を振り、手順書の物品の欄にその番号を書いておくと、新人でも迷わず準備できます。

コツ5:「やってはいけないこと」を分けて書く

手順の中に注意点を混ぜると、読み流されやすくなります。患者さんの安全に関わる注意点は、手順とは別の枠に「やってはいけないこと」としてまとめ、目に入りやすくしておきます。

コツ6:書いたら新人に読んでもらう

書き上げた手順書は、その作業に慣れていない人に読んでもらい、分かりにくい箇所を指摘してもらいます。経験のある人が書くと、自分にとって当たり前の動作を書き飛ばしてしまうことがよくあります。新人が手順書だけを見て作業の流れを説明できるかどうかが、分かりやすさを確かめるいちばん確実な方法です。

手順書の記入例:入院時の受け入れ

構成と書き方のコツを、実際の手順書の形に当てはめた例を示します。ここでは、看護の手技ではなく、病棟の段取りの手順を題材にしています。具体的な観察項目や確認の基準は、施設の規程に合わせて書き換えてください。

項目 記入例
題名 予定入院の患者さんの受け入れ
目的 患者さんが安心して入院生活を始められるよう、受け入れの準備と説明を漏れなく行う
対象 外来から予定入院となる患者さん(緊急入院は別の手順書を参照)
担当者 受け持ちの看護師。病室の準備は看護補助者と分担
必要な物品 入院時の書類一式、病棟の案内、名札、物品の一覧(棚の写真の番号を併記)
根拠となる文書 施設の入院時の対応の規程、患者さんの確認の手順書
作成日・更新日・責任者 作成日、最終の更新日、病棟の係の責任者名

手順の部分は、次のように1つの番号に1つの動作を書き、右に理由を添えます。

番号 動作 理由・注意
1 入院の予定表で、患者さんの名前と病室、入院の時刻を確かめる 病室や時刻の取り違えを防ぐため
2 病室の準備ができているかを、看護補助者と確かめる 到着してから準備が足りないと、患者さんを待たせるため
3 患者さんが到着したら、施設の決まりに沿って本人の確認を行う 患者さんの取り違えを防ぐため
4 病棟の案内を渡し、ナースコールやトイレの場所を説明する 入院の初日に困りやすい点を先に伝えるため
5 入院時の書類を受け取り、不足がないかを一覧で確かめる 後から書類を探す手間を減らすため
6 記録の決まった場所に、受け入れの内容を記録する 次の勤務帯に正しく引き継ぐため

このように表の形にしておくと、新人は上から順に作業を進められ、指導する側も「いま何番の手順にいるか」を共有しやすくなります。

マニュアルを「読まれる文書」にする工夫

どれだけ丁寧に作っても、必要な場面で開かれなければ意味がありません。マニュアルが読まれるようにするための工夫を紹介します。

目次と索引を整える

忙しい勤務の中でマニュアルを開くのは、たいてい「いま、この作業の手順を確かめたい」という場面です。目次で章を探し、索引で作業の名前から手順書を引けるようにしておくと、開いてから目的の手順にたどり着くまでの時間が短くなります。電子で管理している場合は、手順書の題名に、現場でよく使う呼び方も含めておくと、検索で見つけやすくなります。

1枚の早見表を添える

手順書の中でも特に大切な部分は、1枚の早見表にまとめて、作業の場所の近くに掲示する方法もあります。急変時の連絡の流れや、物品の置き場所の一覧などは、手順書を開く余裕がない場面で役に立ちます。早見表を作る場合も、元の手順書と同じ更新日を書き、手順書を直したときは早見表も同時に差し替えます。

新人の教育の計画と結びつける

マニュアルを新人の教育の計画と結びつけておくと、自然と読まれる文書になります。配属から1週間で読む章、1か月で読む章、3か月で読む章を決め、指導の担当者と一緒に確かめていく流れにすると、新人は何をいつまでに覚えればよいかが分かり、指導する側も教える内容がそろいます。

よくある失敗と立て直し方

マニュアル作りでよく起きる失敗と、その立て直し方を整理しておきます。

よくある失敗 立て直し方
分厚すぎて誰も読まない 業務マニュアルは全体の地図に絞り、詳しい手順は手順書に分ける
作った人しか分からない言葉で書かれている 新人に読んでもらい、分かりにくい箇所に印を付けてもらう
古い手順のまま放置されている 更新日と責任者を必ず書き、見直しの時期を年間の予定に入れる
担当者が異動して作業が止まった 作成と更新の作業を、担当と期限つきの一覧で管理する
施設の指針と内容が食い違っている 上位の指針や手順書を根拠の欄に書き、改定のたびに照らし合わせる

失敗の多くは、作ることに力を使い切り、使い続けるための仕組みを後回しにしたことから起きています。最初の1本を作る段階から、更新日と責任者、見直しの時期を決めておくことが、長く使われるマニュアルへの近道です。

写真や動画を使うときの注意

物品の置き場所や器具の扱い方は、写真や短い動画で示すと新人に伝わりやすくなります。ただし、医療の現場で撮影する以上、気をつけなければならない点があります。

患者さんや個人の情報を写さない

撮影するときは、患者さんの姿や名前、ベッドの名札、モニターの画面、カルテの内容などが写り込まないようにします。物品の置き場所を撮るつもりでも、背景に患者さんの情報が写っていることがあります。撮影は患者さんのいない場所や時間に行い、撮ったあとに画面の隅々まで確かめてから使います。

撮影と保存の決まりは施設に従う

医療の現場での撮影や、撮った写真の保存先については、施設ごとに決まりがあるのが一般的です。個人のスマートフォンで撮影してよいか、どこに保存してよいかは、看護部や情報管理の担当に必ず確かめてください。決まりがない場合は、マニュアル作りを機に、撮影と保存の手順そのものを決めておくと、後から困りません。

写真も更新の対象にする

物品の配置や器具の型が変わると、写真も古くなります。写真が古いままだと、文章と写真の内容が食い違い、かえって新人を混乱させます。手順書を見直すときは、文章だけでなく写真や動画も確かめ、撮り直した日を記録しておきます。

業務マニュアルの章立ての例

病棟の業務マニュアル全体の章立ての例を示します。病棟の特性や施設の規程に合わせて、加えたり省いたりして使ってください。

章 主な内容
1. 病棟の概要 診療科、病床数、主な疾患、スタッフの構成、病棟の配置図
2. 1日の流れ 勤務帯ごとの業務の流れと時間の目安
3. 申し送りと記録 申し送りの方法、記録の書き方、記録の場所
4. 患者さんの受け入れと退院 入院時の受け入れ、転棟、退院の流れ
5. 物品と薬剤の管理 物品の置き場所、補充の方法、薬剤の管理の決まり
6. 医療安全と感染対策 施設の指針の参照先、報告の流れ、感染対策の基本
7. 緊急時の対応 急変時の連絡の流れ、災害時の対応
8. 手順書の一覧 作業ごとの手順書の題名と保存場所

業務マニュアルの中に、すべての手順書の中身を書き込む必要はありません。第8章のように手順書の一覧と保存場所を示し、詳しい手順はそれぞれの手順書を見てもらう形にすると、マニュアル全体が分厚くなりすぎません。

紙と電子のどちらで管理するか

マニュアルや手順書を紙で管理するか、電子で管理するかも、決めておく必要があります。

紙で管理する場合

紙のマニュアルは、電子機器が使えない場面でも開けること、ナースステーションで誰でもすぐに手に取れることが利点です。一方で、更新するたびに印刷し直して差し替える手間がかかり、古い版が残りやすいのが弱点です。紙で管理する場合は、差し替えた日と版の番号を表紙に書き、古い版は必ず回収する決まりを作っておきます。

電子で管理する場合

電子のマニュアルは、更新がすぐに全員に反映され、検索で必要な手順をすぐに見つけられるのが利点です。写真や動画を入れやすいのも、新人の教育には向いています。一方で、端末が使えない場面への備えが必要です。電子で管理する場合も、急変時や災害時の対応のように、端末が使えないときにも必要な手順は、紙でも用意しておくと安心です。

どちらで管理するかは、施設の情報システムの決まりにも関わります。個人の端末やクラウドのサービスにマニュアルを保存してよいかは、所属する施設の情報管理の担当に必ず確かめてください。

作ったあとの見直しの回し方

マニュアルは、作った時点から古くなり始めます。使われ続けるマニュアルにするには、見直しの仕組みを最初から決めておくことが欠かせません。

定期の見直しと、きっかけの見直し

見直しには、決まった時期に行う定期の見直しと、何かが起きたときに行うきっかけの見直しの2つがあります。

種類 きっかけの例
定期の見直し 年に1回、新人の配属の前など、時期を決めて全体を点検する
きっかけの見直し 薬剤や医療機器の変更、施設の規程の改定、ヒヤリハットや事故の報告、新人からの質問が多かった箇所

特に、ヒヤリハットや事故の報告をきっかけにした見直しは大切です。医療法施行規則でも、事故の報告などをもとにした改善の方策を講じることが求められています。報告の分析から手順の見直しが決まったら、手順書を直し、更新日を書き換え、変更点をスタッフに伝えるところまでを1つの流れにしておきます。

変更点の伝え方

手順書を直しても、スタッフがそれに気づかなければ意味がありません。変更があったときは、申し送りや朝の打ち合わせで変更点を伝え、手順書の冒頭に「何をいつ変えたか」の履歴を残しておきます。変更の前後を見比べられるようにしておくと、慣れた人ほど起こしやすい「以前のやり方のまま作業してしまう」誤りを防げます。

係や委員会で進めるときの1年の段取り

病棟のマニュアル作りは、係や委員会の活動として1年単位で進めることが多いはずです。新人の配属の時期から逆算した段取りの例を示します。時期は施設の年間の予定に合わせて調整してください。

時期 やること
年度の初め 前年度の見直しの結果を引き継ぎ、今年度に作る項目と優先順位を決める
初めの2か月 既存の文書を集め、手順書の構成をそろえる。担当と期限を割り振る
半年まで 優先度の高い手順書から作成し、係の会議で内容を確かめ合う
秋ごろ 作成した手順書を新人や異動してきた人に読んでもらい、分かりにくい箇所を直す
冬ごろ 施設の医療安全や感染対策の担当に内容を確かめてもらい、承認を得る
新人の配属の前 業務マニュアル全体を点検し、更新日を書き換えて版を確定する

会議では「止まっている作業」から話す

係の会議では、進んでいる作業の報告に時間を使いがちです。限られた時間を有効に使うには、期限を過ぎている作業と、確認待ちで止まっている作業から先に話し合います。止まっている理由が「上位の指針の改定待ち」なのか「担当者が忙しい」なのかによって、打つ手が変わるからです。

異動のときの引き継ぎを決めておく

看護の現場では、年度の替わり目に担当者が異動することがよくあります。異動の前に、担当していた手順書の進み具合、残っている作業、相談していた相手を一覧で引き継ぐ決まりを作っておくと、新しい担当者がゼロから状況を調べ直す手間を省けます。

作成と更新の作業を担当つきで回す

マニュアル作りで最もよく起きるのは、作業が途中で止まることです。担当者が忙しい時期に入る、異動する、誰がどこまで進めたのか分からなくなる。こうした停滞を防ぐには、作成や更新の作業そのものを、担当と期限つきの仕事として見える形にしておくことが効果的です。

表計算ソフトで管理する場合

手順書の題名、担当者、期限、状態(未着手・作成中・確認待ち・完了)、最終の更新日を列にした一覧を、表計算ソフトで作るのが最も手軽な方法です。委員会や係の会議では、この一覧を見ながら、期限を過ぎているものと確認待ちのものを中心に話し合います。

ただ、表計算ソフトの一覧は、複数の人が同時に書き込むと上書きの行き違いが起きたり、誰かが更新しないと情報が古いまま残ったりします。期限が近づいても通知はされないため、会議の場で初めて遅れに気づくことも少なくありません。

ボードで管理する場合

作成と更新の作業を担当と期限つきで回す方法の1つが、プロジェクト管理の道具のPinatecaです。公式サイトによると、カンバン・ガント・カレンダー・リスト・ディスカッション・グリッド・時間割・リソースの8種類のボードがあり、チャットも内蔵されています。

たとえばカンバンボードに「未着手」「作成中」「確認待ち」「完了」の列を作り、手順書1本ごとにカードを作って担当者と期限を設定しておけば、どの手順書が誰のところで止まっているかが一目で分かります。年1回の定期の見直しの予定は、ガントボードで期間を横に並べると、配属の時期までに間に合うかを確かめやすくなります。自分宛てのメンションや担当の割り当て、締め切りは受信箱に集まると案内されています。料金ページでは、5人までのチームならボード10個まで無料で使えると書かれています。

扱うのは作業の進み具合の情報だけにし、患者さんの情報は書き込まないようにしてください。外部のサービスを使ってよいかは、施設の情報管理の決まりに従って事前に確かめる必要があります。

Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。

業務を整える経験は、働き方の選択肢を広げる

病棟のマニュアル作りで身につく、業務を整理して文書にする力は、看護の現場の外でも求められています。

訪問看護や開業の場面

訪問看護ステーションを立ち上げる場合、業務の手順書やマニュアルを一から整える必要があります。訪問看護ステーションの開業手順2026|必要資格・設備基準・開業資金では、開業に必要な資格や設備の基準、資金の目安を整理しています。病棟でマニュアル作りに関わった経験は、こうした立ち上げの場面で直接役に立ちます。

医療や介護の現場の業務改善

医療や介護の現場では、記録や手順の電子化が進んでいます。介護の分野で記録をデジタルに切り替える取り組みと、使える補助金については、介護・福祉事業所のDX化2026|IT導入補助金で介護記録を完全デジタル化で解説しています。手順書を電子化する流れの中で、現場の業務を知る看護師の視点は欠かせません。

看護師の働き方と報酬を知る

看護師の資格と経験を活かした働き方は、病棟の勤務だけではありません。訪問看護、健診、教育、医療系の文書の作成や監修など、さまざまな形があります。看護師の年収・単価相場では、看護師の報酬の目安を確かめられます。副業や兼業を考える場合は、所属する施設の就業規則で可否と手続きを必ず確かめてください。

運営者の視点で見た、手順を言葉にできる人の強み

在宅ワークとフリーランスの仲介を2004年から続けてきた運営者として見てきた限りでは、専門職の人が現場の外で仕事を広げていくとき、強みになるのは資格そのものより「現場の手順を、知らない人にも分かる言葉で書ける力」です。医療や介護の分野では、手順書の作成、研修の資料づくり、医療系の記事の監修など、現場の知識と文章の力の両方が求められる仕事があります。

そうした仕事で長く頼られる人は、依頼する側が何に困っているのかを先に聞き取り、読む人の立場に立って書いています。病棟のマニュアル作りで新人に読んでもらい、分かりにくい箇所を直していく経験は、そのまま現場の外でも通用する力になります。

仲介の手数料がかからない直接のやりとりでは、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側は手取りが厚くなります。専門職の知識を活かした仕事は、一度任されると継続しやすい分野です。まずは病棟で、優先度の高い手順書を1本、この記事の構成に沿って書き直してみるところから始めてみてください。マニュアル作りの全体の進め方や、医療事務の分野の資格に関心がある人は、医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)の資格ガイドも参考になります。

よくある質問

Q. 看護の業務マニュアルと手順書は何が違いますか?

業務マニュアルは、1日の流れや申し送り、物品の場所など、病棟の仕事の全体像を示す文書です。手順書は、与薬や入院時の受け入れなど1つの作業を、誰がやっても同じ品質でできるよう順番に書いた文書です。業務マニュアルには手順書の一覧と保存場所を載せ、詳しい手順は各手順書を見てもらう形にすると整理しやすくなります。

Q. 手順書には最低限どんな項目を入れればよいですか?

題名、目的、対象、担当者、必要な物品、手順、例外と緊急時の対応、記録、根拠となる文書、作成日と更新日と責任者が基本です。特に更新日と責任者は、手順を信じてよいかを読む人が判断する手がかりになるため、必ず入れておきます。手技や判断の中身は、施設の規程や医師の指示、添付文書に従います。

Q. マニュアルはどのくらいの頻度で見直せばよいですか?

年に1回など時期を決めた定期の見直しに加えて、薬剤や医療機器の変更、施設の規程の改定、ヒヤリハットや事故の報告があったときに見直すのが基本です。見直したら更新日を書き換え、変更点を申し送りなどで伝え、手順書の冒頭に変更の履歴を残しておくと、以前のやり方のまま作業してしまう誤りを防げます。

Q. 新人に分かりやすい手順書にするにはどうすればよいですか?

1つの手順に1つの動作だけを書き、動作の理由を一言添えます。病棟の中だけで通じる略語は避け、物品の置き場所は写真で示します。書き上げたら、その作業に慣れていない人に読んでもらい、手順書だけで流れを説明できるかを確かめると、書き飛ばしている動作に気づけます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年5月18日最終更新:2026年10月15日
@SOHO編集部

この記事を書いた人

@SOHO編集部

フリーランス・在宅ワークの専門メディア

@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金

お金・税金

確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

AI活用

AI活用

職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人

看護師の転職・求人

看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人

薬剤師の転職・求人

薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人

介護職の転職・求人

介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人

保育士の転職・求人

保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人

医療職の転職・求人

医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業

法律・士業

契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

M&A・事業売却

M&A・事業売却

会社売却・事業承継・事業譲渡を考える経営者向け。売却の流れ、税金、従業員への伝え方、仲介会社の選び方

アウトソーシング・外注ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方