法人になったら5日以内に出す社会保険の届出


この記事のポイント
- ✓法人設立社会保険手続きは登記が終わってからが本番です
- ✓新規適用届と資格取得届を5日以内に出す流れ
- ✓労働保険とハローワークの期限
まず、安心してください。法人設立社会保険手続きは、書類の枚数こそ多いものの、やること自体は決まった様式に決まった順番で記入して、決まった窓口へ出すだけです。難しいのは中身ではなく、期限の短さと、窓口が3か所に分かれていることです。
登記が完了した時点で「会社づくりは終わった」と感じる人は多いのですが、社会保険の側から見ると、そこがスタート地点になります。しかも最初の届出の期限は「事実発生から5日以内」です。登記完了の通知を待ってから調べ始めると、それだけで期限の半分が過ぎます。
この記事では、法人になった直後に出す届出を、出す順番どおりに並べます。どの書類を、いつまでに、どこへ、何を添えて出すのか。人を雇った場合に増える手続き、保険料がいくらになるのか、出し遅れたときに何が起きるのか。判断に迷いやすいところは、どこへ聞けば答えが出るのかまで書きます。
法人になった瞬間、社会保険は選べるものではなくなる
会社を作る前と後でいちばん大きく変わるのは、健康保険と厚生年金に「入るかどうかを自分で決められなくなる」ことです。個人で仕事をしていたときは国民健康保険と国民年金でしたが、法人にすると、原則として会社として厚生年金保険と健康保険に入る義務が生じます。
日本年金機構は、加入が義務づけられる事業所(強制適用事業所)を次のように示しています。株式会社などの法人の事業所は、事業主だけしかいない場合も含めて対象です。個人の事業所については、従業員が常時5人以上いる場合に対象となり、農林漁業やサービス業の一部は例外として扱われます。
つまり、社長ひとりだけの会社でも、役員報酬を出して働いている以上は対象になります。「従業員がいないから関係ない」という理解は、法人では通用しません。ここを取り違えたまま1年が過ぎ、あとから過去にさかのぼって加入させられる例は珍しくありません。
ひとつだけ例外があります。日本年金機構は、新規加入に必要な書類をまとめたページで、法人事業所であっても被保険者となる人がいない場合、つまり無報酬の役員しかいない場合は、適用事業所の要件を満たさないため適用を受けられないと説明しています。役員報酬をゼロに設定している会社が加入できないのはこのためです。ただし、報酬を出し始めた時点で状況は変わるので、報酬を決める段取りと届出の段取りはセットで考えたほうが安全です。
用語をひとつだけ整理しておきます。「適用事業所」とは、健康保険と厚生年金の対象になる事業所のことです。「被保険者」とは、その保険に実際に加入する人、つまり役員や従業員本人を指します。会社が適用事業所になり、その中の個人が被保険者になる。この二段構えになっているので、届出も会社の分と個人の分の2種類が必要になります。
最初に出すのは2枚、期限はどちらも5日以内
法人設立社会保険手続きの入口は、次の2枚です。
1枚目が「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」。これは会社そのものを社会保険の対象として登録するための書類です。2枚目が「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」。こちらは社長本人や従業員を、その保険に加入させるための書類です。
日本年金機構が届書に添えている手続概要には、期限がはっきり書かれています。
この届出は、事業所が健康保険、厚生年金保険に適用されることになった場合、事実発生から 5 日以内に事業主が行わなければなりません。 出典: nenkin.go.jp
同じ手続概要には、この届出を出すときは必ず被保険者資格取得届と同時に提出するように、とも書かれています。2枚は別々の書類ですが、実務上はひと組として扱うものだと考えてください。資格取得届のほうも、提出期限は事実発生から5日以内です。
提出先は、事務センターまたは管轄の年金事務所です。ここで間違えやすいのが、登記した住所と実際に仕事をしている場所が違うケースです。自宅で登記して別の場所に事務所を借りている場合などが当てはまります。日本年金機構は、実際に事業を行っている事業所の所在地が登記上の所在地と異なる場合は、実際に事業を行っている事業所の所在地を管轄する事務センター(年金事務所)が提出先になる、と案内しています。登記簿の住所を見て管轄を決めると、送り先を間違えることがあります。
提出方法は、電子申請、郵送、窓口持参の3通りです。郵送の場合、届いた日ではなく消印の日で判断されるかどうかは扱いが分かれるので、期限が迫っているなら窓口持参か電子申請が確実です。
なお「事実発生」がいつなのかは、実際の運用では設立日そのものではなく、役員報酬の支払いが始まる日や、人を使い始めた日で考えることが多いとされています。ただしこれは会社ごとの事情で判断が変わる部分なので、設立日と報酬の開始日がずれている場合は、届出の前に管轄の年金事務所へ「うちの場合はいつが事実発生日になるか」を電話で確認してください。5分の電話で、あとから直す手間がなくなります。
新規適用届に添える書類と、そろえる順番
新規適用届は、それだけでは受け付けてもらえません。会社が実在することを示す書類を添えます。法人の場合に必要なのは次のとおりです。
法人(商業)登記簿謄本、つまり登記事項証明書の原本です。コピーは使えません。しかも日本年金機構は、直近の状態を確認するため、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものを提出するよう求めています。設立登記が終わったらすぐ取っておけばよいので、この期限で困ることはまずありませんが、設立から時間が空いてから加入手続きをする会社は注意が必要です。
もうひとつが法人番号に関する書類です。届書の項目9で「1:法人番号」を選ぶ場合は、法人番号指定通知書のコピーを添えます。通知書が手元にない、まだ届いていないという場合でも手はあります。日本年金機構は、国税庁の法人番号公表サイトで確認した法人情報(事業所名称、法人番号、所在地が載っている画面)を印刷して添付しても差し支えない、と案内しています。通知書の到着を待って期限を過ぎるより、印刷して出すほうが正解です。
登記上の所在地と実際の事業所の所在地が違う場合は、賃貸借契約書のコピーなど、そこで事業をしていることが分かるものを別に添えます。自宅兼事務所であれば、自宅の賃貸借契約書や、住所が分かる公共料金の請求書などが使われます。何が認められるかは窓口で差があるので、迷ったら事前に聞いてください。
登記事項証明書の取り方と費用も押さえておきましょう。法務省が公表している登記手数料では、窓口や郵送で請求する書面請求が1通600円、オンラインで請求して郵送で受け取ると520円、オンラインで請求して窓口で受け取ると490円です。登記事項証明書は社会保険以外でも使う場面が多いので、設立直後に2通から3通まとめて取っておくと、あとの手続きが楽になります。
登記事項証明書(謄抄本) 書面請求 600円 オンライン請求・送付 520円 オンライン請求・窓口交付 490円 出典: moj.go.jp
原本で出した添付書類は、希望すれば返してもらえます。返却してほしい場合は、提出のときにその旨を伝えてください。何も言わないとそのまま回収されます。
家族を扶養に入れるなら、もう1枚が必要になる
配偶者や子どもを健康保険の扶養に入れる場合は、「健康保険 被扶養者(異動)届」を出します。この書類は、配偶者を国民年金の第3号被保険者にする届出も兼ねています。用語を言い換えると、第3号被保険者とは、厚生年金に入っている人に扶養されている配偶者のことで、自分では国民年金の保険料を払わずに加入している扱いになる人を指します。
この届は資格取得届と一緒に出すのが普通です。社長本人の加入手続きと家族の扶養手続きを別々のタイミングで出すと、家族の保険証の発行が遅れ、その間に医療機関にかかったときに全額自己負担で立て替える場面が出てきます。日本年金機構は、資格確認書が交付されるまでの間に医療機関にかかりたい場合の取り扱いも案内していますが、そもそも同時に出しておけば起きない問題です。
扶養に入れられるかどうかは、収入の条件や同居の有無で判断されます。この判断は個別の事情で結論が変わるうえ、年ごとに取り扱いが更新される部分もあるので、境界線にいる家族がいる場合は、断定せずに年金事務所か協会けんぽに確認してください。届出の内容によっては、収入を証明する書類の添付を求められることもあります。日本年金機構は、記載内容や添付書類について事業主へ電話などで確認する場合があるとも書いています。
人を雇った瞬間、窓口が3か所に増える
社長ひとりの会社なら、ここまでの年金事務所の手続きで社会保険の話はいったん終わります。人を雇うと、労働保険の世界が加わります。労働保険とは、労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。
厚生労働省は、農林漁業や建設業などを除く一般的な事業(一元適用事業)の手続きを、次の順番と期限で示しています。
| 書類 | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|
| 保険関係成立届 | 保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内 | 所轄の労働基準監督署 |
| 概算保険料申告書 | 保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内 | 労働基準監督署、都道府県労働局、日本銀行のいずれか |
| 雇用保険適用事業所設置届 | 設置の日の翌日から起算して10日以内 | 所轄の公共職業安定所 |
| 雇用保険被保険者資格取得届 | 資格取得の事実があった日の翌月10日まで | 所轄の公共職業安定所 |
順番が決まっている点が重要です。厚生労働省は、保険関係成立届を出したあと、または同時に概算保険料申告書を出し、保険関係成立届を出したあとに雇用保険の2つを出すと説明しています。ハローワークに先に行っても、労働基準監督署の控えがないと受け付けてもらえません。労働基準監督署を先、ハローワークを後、と覚えてください。
概算保険料とは、その年度に払う見込みの賃金総額に保険料率をかけて先に納める保険料のことです。年度が終わってから実際の賃金額で精算します。設立初年度は途中からの加入になるので、設立日から年度末までに払う見込みの賃金で計算します。
雇用保険に入れる必要があるのは、すべての従業員ではありません。1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上引き続き雇用される見込みがある人が対象です。短時間のアルバイトだけなら雇用保険の手続きは不要になる場合がありますが、労災保険のほうは労働時間に関係なく、人を1人でも雇えば対象になります。ここは混同しやすいところです。
役員だけの会社の場合、役員は労働者ではないため、一般には労働保険の対象外として扱われます。ただし、役員でありながら従業員としての仕事も持っている兼務役員のような形は判断が分かれます。該当しそうな場合は、労働基準監督署に事情を説明して確認してください。
保険料はいくらになるのか、数字で確かめる
金額の感覚がないまま手続きを進めると、最初の納付書を見て驚くことになります。料率は公表されているので、先に計算しておきましょう。
厚生年金保険の保険料率は、平成29年9月を最後に引上げが終わり、18.3%で固定されています。これは会社と本人が半分ずつ負担するので、本人の給与から引かれるのは9.15%です。
健康保険の料率は都道府県ごとに違います。協会けんぽの令和8年度の料率では、東京都は9.85%で、前年度の9.91%から引き下げられました。これに加えて、令和8年4月分(5月納付分)からは全国一律の子ども・子育て支援金0.23%が上乗せされます。40歳から64歳までの人は、さらに全国一律の介護保険料率1.62%が加わります。健康保険も労使折半です。
これとは別に、会社だけが負担するものがあります。子ども・子育て拠出金で、令和8年度の率は0.36%です。本人負担はありません。
保険料の計算のもとになるのが標準報酬月額です。これは、基本給に残業手当や通勤手当などを足した税引き前の給与を、一定の幅で区切った等級に当てはめた額のことです。日本年金機構によれば、厚生年金の標準報酬月額は1等級の8万8千円から32等級の65万円までの32等級に分かれています。賞与については標準賞与額を使い、支給1回あたりの上限は150万円です。
東京都で標準報酬月額が30万円、40歳未満の人を例に、目安を出してみます。厚生年金は30万円の18.3%で54,900円、うち本人負担が27,450円。健康保険は9.85%に0.23%を足した10.08%で30,240円、うち本人負担が15,120円。子ども・子育て拠出金は0.36%で1,080円、これは全額が会社負担です。合計すると会社の負担がおよそ4万3,650円、本人の負担がおよそ4万2,570円、あわせて月およそ8万6,220円です。
実際の金額は保険料額表の等級で決まるため、ここで出した数字は端数処理の前の目安として見てください。正確な額は協会けんぽが都道府県ごとに公表している保険料額表で確認できます。いずれにせよ、役員報酬を決める段階で「額面の3割弱が社会保険料として出ていく」という前提を置いておくと、資金繰りの見通しが大きく外れません。
納付は翌月末日。最初の請求は設立の翌々月に届く
届出を出したら、次に来るのは納付です。いつ払うのかは法律で決まっています。
毎月の保険料は、翌月末日までに、納付しなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
4月分の保険料は5月末日まで、5月分は6月末日までです。納入告知書(納付書)は前月分の保険料が確定したあとに郵送で届くので、4月に会社を作って届出を出すと、最初の納付書が手元に来るのは5月の下旬になります。設立してすぐには請求が来ないため、忘れたころに届く形になります。口座振替を使えば毎月自動で引き落とされるので、申出書を出しておくと払い忘れが防げます。
保険料が発生する月の数え方にも決まりがあります。資格を取得した日が属する月から発生し、資格を喪失した日が属する月は発生しません。月の末日に退職した人だけは、翌月1日が資格喪失日になるため、その月の保険料が発生します。人の出入りがある会社では、退職日を末日にするかその前日にするかで1か月分の保険料が動きます。
給与から差し引くタイミングも押さえておきます。実務では、前月分の保険料をその月の給与から差し引く形が広く使われています。4月分の保険料を5月支給の給与から引く、という運用です。設立初月に「まだ納付書も来ていないのに給与から引くのか」と迷う場面が出るので、社内でどちらの月から引き始めるかを先に決めて、給与明細の記載を揃えておいてください。途中で変えると、本人から見て1か月分が二重に引かれたように見えます。
保険料を帳簿にどう書くか
支払いが会社負担と本人負担に分かれるので、帳簿も分かれます。
給与を支給するときは、借方に役員報酬または給料手当として額面を計上し、貸方に本人から預かる分を並べます。源泉所得税の預り金、住民税の預り金、社会保険料の本人負担分の預り金、そして差額の普通預金です。
会社が負担する分は、借方に法定福利費として計上します。厚生年金、健康保険、介護保険の会社負担分に加えて、会社だけが負担する子ども・子育て拠出金もここに入ります。相手方は未払金または預り金です。
納付するときは、預り金として溜めてきた本人負担分と、法定福利費として計上した会社負担分をまとめて普通預金から出します。1つの納付書で両方を払うので、内訳を分けずに全額を法定福利費にしてしまう間違いが起きやすい。本人から預かった分は会社の費用ではないので、混ぜると人件費が実際より大きく見えます。
労働保険料の扱いは少し違います。概算保険料として先に1年分を納めるため、納めた時点では前払費用として立てておき、月ごとに按分して法定福利費へ振り替える方法と、納付時に全額を費用にする方法があります。金額が小さければ後者で通す会社も多く、どちらを選ぶかは継続して同じ扱いにしておくのが大事です。社会保険料も労働保険料も、消費税の計算では対象外の取引になります。
科目の立て方は会社の事情で変わるので、迷う部分は税務署か顧問の税理士に確認してください。
1年の流れを日付で追う
届出を出したあと、社会保険と労働保険は年間の決まった日付で動きます。4月1日に設立した会社を例に並べます。
4月上旬(設立から5日以内)。新規適用届と被保険者資格取得届を年金事務所へ。扶養に入れる家族がいれば被扶養者(異動)届も同時に出します。
4月中旬(人を雇う場合、翌日から10日以内)。保険関係成立届を労働基準監督署へ、雇用保険適用事業所設置届と被保険者資格取得届をハローワークへ。概算保険料申告書は翌日から50日以内です。
5月末日。4月分の社会保険料を納付。以後、毎月末日が納期限になります。
毎年7月10日まで。労働保険の年度更新です。前年度の確定保険料と当年度の概算保険料をまとめて申告し、納めます。分割して納める場合も、第1期の納期限はこの日です。
毎年7月。算定基礎届を出します。4月、5月、6月に支給した報酬をもとに標準報酬月額を決め直す手続きです。
その年の9月分から。算定基礎届で決まった新しい標準報酬月額が適用されます。納付は10月末日の分から金額が変わります。給与からの控除を前月分方式にしているなら、10月支給の給与から引く額が変わる形になります。
12月。年末調整をします。役員報酬も給与所得として対象です。
翌年1月末まで。法定調書合計表と給与支払報告書を提出します。給与支払報告書は市区町村へ出すもので、翌年度の住民税の計算のもとになります。
このほかに、昇給などで報酬が大きく変わったときは月額変更届を出して標準報酬月額を見直します。設立初年度は7月の算定基礎届まで期間が短いので、届出のときに書いた報酬の見込額がそのまま保険料の基礎として使われます。見込額を適当に書くと、そのまま1年分の保険料に反映されます。期限や様式は制度の見直しで変わることがあるので、実際に出す前に年金事務所や労働基準監督署の案内で今の記載を確かめてください。
合同会社でも、手続きは同じ
株式会社で説明してきましたが、合同会社も法人なので扱いは変わりません。法人の事業所は、代表者だけしかいない場合も含めて強制適用事業所になります。合同会社だから加入しなくてよい、という抜け道はありません。
違うのは書類の書き方だけです。届書の事業主の欄には代表社員の氏名を書きます。添付する登記事項証明書には取締役ではなく業務執行社員と代表社員が載っているので、そのまま出せば足ります。役員報酬に相当するのは業務執行社員の報酬で、これを受け取っている人が被保険者になります。
無報酬の場合の扱いも同じです。報酬を受ける人がいなければ被保険者となる人がいないため、適用事業所の要件を満たしません。報酬をゼロで始めた合同会社は、報酬を出し始める段階で改めて届出が必要になります。報酬を決める書類と社会保険の届出は、同じ時期にまとめて片づけるのが確実です。
期限を過ぎたとき、出さなかったときに何が起きるか
うっかり5日を過ぎてしまった場合、まずやるべきことは、出すのをやめることではなく、すぐ出すことです。遅れて出せば受け付けてもらえます。
問題は、出さないまま放置した場合です。健康保険法には罰則の規定があります。第208条は、事業主が正当な理由なく届出をしない、または虚偽の届出をしたときなどについて、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処する、と定めています。
実務でより重いのは、罰則そのものよりも、さかのぼって加入させられたときの負担です。加入義務があった時点までさかのぼって適用され、その期間の保険料を会社と本人の分あわせて請求されます。1年分となれば、先ほどの例で考えても100万円を超える規模になります。しかも本人負担分はすでに給与を払ってしまっているので、実際には会社が丸ごとかぶることになりがちです。
日本年金機構は、法人番号などの情報をもとに未加入の事業所を把握する取り組みを続けています。「小さい会社だから見つからない」という前提は成り立ちません。手続きが面倒だから先送りする、という選択は、金額の面でいちばん高くつきます。
税務署と都道府県への届出は、社会保険と並行で進む
社会保険だけを見ていると全体の順番を見失うので、同じ時期に出す税金側の届出も並べておきます。
国税庁は、内国法人である普通法人または協同組合等を設立した場合、設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に「法人設立届出書」に定款などの写しを添えて、納税地の所轄税務署長に提出しなければならないとしています。提出方法はe-Taxまたは書面です。
給与を払う会社になるので、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」も必要です。こちらは開設の事実があった日から1か月以内に、給与支払事務所等の所在地を所轄する税務署へ出します。
青色申告をするなら「青色申告の承認申請書」を出します。国税庁は、設立第1期目から青色申告の承認を受けようとする場合の提出期限を、設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日までとしています。これは忘れると初年度の赤字を繰り越せなくなるので、期限としては最も気をつけるべきもののひとつです。
従業員が少ないうちに検討したいのが、源泉所得税の納期の特例です。給与の支給人員が常時10人未満であれば、毎月10日までの納付を半年ごとにまとめられます。1月から6月分は7月10日、7月から12月分は翌年1月20日が納期限です。申請書を出した月の翌月末日に承認があったものとみなされる仕組みなので、設立後すぐに出しておくと事務の回数が年12回から2回に減ります。
都道府県と市区町村への届出も忘れないでください。たとえば東京都の場合、事業を開始した日から15日以内に「法人設立・設置届出書」を、定款などの写しを添えて所管の都税事務所へ提出することになっています。期限も書式も自治体ごとに違うので、必ず自分の会社の所在地の自治体のページを見て確認してください。
自分で出すか、任せるか。判断の分かれ目
ここまでの書類は、すべて自分で出せます。日本年金機構は、社会保険の届出をオンラインで出す方法として3つの経路を案内しています。すでに使っている市販の労務管理ソフトから申請する方法、無料で配布されている届書作成プログラムを使う方法、そしてe-Govから申請する方法です。主要な届書だけを費用をかけずに電子申請したいなら、届書作成プログラムが向いています。
紙で出す場合も、様式は日本年金機構のサイトからエクセル形式やPDF形式でダウンロードできます。記入例も公開されているので、空欄の意味が分からなくなったら記入例を横に置いて埋めるのが早いです。
自分でやるか専門家に任せるかの分かれ目は、書類の難易度ではなく、「判断が要る要素があるかどうか」だと考えてください。社長ひとり、役員報酬も固定、従業員なし、という構成なら、迷うところはほとんどありません。一方、設立と同時に何人か雇う、短時間勤務の人が混ざる、役員が別の会社でも働いている、といった事情があると、誰を被保険者にするかの判断が入ります。ここは間違えるとあとから全部やり直しになるので、社会保険労務士に相談する価値があります。
経営のしくみを体系的に学びたい人なら、資格の勉強が遠回りに見えて近道になることもあります。財務や法務を含めて経営全体を扱う中小企業診断士は、制度の背景から理解したい人に向いた資格です。また、医療機関の事務職を目指す人が押さえる医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)のように、保険請求の実務に直結する資格もあります。こうした知識は、自社の手続きを読み解くときにもそのまま効いてきます。
手続きの先にある、働き方の設計
法人化の社会保険手続きを一通り終えた人からよく聞かれるのが、「ここまでコストをかけて法人にした意味はどこで回収するのか」という問いです。
運営者として在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた立場から言えば、法人化の効果がいちばん出るのは、単発の仕事を積み上げる働き方から、継続して任される働き方へ移るときです。発注する側から見ると、法人と契約することで支払いや契約の手続きが社内の基準に乗りやすくなり、継続案件を出しやすくなります。毎月の社会保険料という固定費を抱えるぶん、収入の側も固定化していかないと釣り合いません。
もうひとつ、長く続く人に共通しているのは、手取りの厚さを意識していることです。仲介の手数料が何割か乗る取引を続けていると、同じ仕事量でも手元に残る額が変わります。手数料0%で直接つながる形の取引は、依頼する側が同じ予算でより多く頼め、受ける側の手取りが厚くなります。社会保険料という固定費を持った以上、この差は毎月効いてきます。
どの分野で継続案件を取りにいくかを考えるうえでは、職種ごとの相場を知っておくと判断がぶれません。開発職の相場感はソフトウェア作成者の年収・単価相場に、文章まわりの相場感は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっています。どちらも、法人化後の役員報酬をいくらに設定するかを考えるときの材料になります。
仕事の種類そのものを広げたいなら、生成AIの導入を支援するAIコンサル・業務活用支援のお仕事や、マーケティングとセキュリティをまたぐAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、受託開発を中心としたアプリケーション開発のお仕事が参考になります。法人格があることで応募できる案件が増える領域は、実際に存在します。
補助金や助成金を使って初期の固定費を抑える道もあります。テレワーク環境の整備に使える制度はテレワーク 助成金 2026に、介護や福祉の分野でIT化を進める場合の制度は介護・福祉事業所のDX化2026|IT導入補助金で介護記録を完全デジタル化に整理してあります。社会保険料は減らせませんが、そのぶん別のところで支出を抑える設計はできます。
届出の期限はどれも短く、最初の2枚は5日以内です。けれど、5日以内にやることは「様式をダウンロードして、登記事項証明書を添えて、管轄の年金事務所へ出す」だけです。全体像さえ頭に入っていれば、一日で終わる作業です。
よくある質問
Q. 社長ひとりの会社でも社会保険に入る必要がありますか?
必要です。日本年金機構は、株式会社などの法人の事業所は事業主のみの場合を含めて強制適用事業所になると示しています。ただし無報酬の役員しかいない場合は被保険者がいないため適用を受けられません。役員報酬を出す予定があるなら、報酬の開始時期に合わせて届出を準備してください。
Q. 新規適用届の期限に間に合わなかったらどうなりますか?
遅れても受け付けてもらえるので、気づいた時点ですぐ出してください。放置した場合は、加入義務のあった時点までさかのぼって適用され、その期間の保険料を会社と本人の分あわせて請求されます。健康保険法第208条には6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の定めもあります。
Q. 添付する登記事項証明書はコピーでも大丈夫ですか?
コピーは使えません。原本が必要で、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものを求められます。法務省の登記手数料では書面請求が1通600円、オンライン請求で郵送受取が520円、窓口受取が490円です。ほかの手続きでも使うので数通まとめて取っておくと便利です。
Q. 従業員を雇わなければ労働保険の手続きは不要ですか?
役員だけの会社であれば、役員は労働者ではないため一般に労働保険の対象外として扱われます。人を1人でも雇えば、保険関係成立届を10日以内に労働基準監督署へ出す必要があります。兼務役員など判断が分かれる形もあるので、該当しそうな場合は労働基準監督署に確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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