内視鏡室の人間関係|狭い職場での距離の取り方

中西 直美
中西 直美
内視鏡室の人間関係|狭い職場での距離の取り方

この記事のポイント

  • 内視鏡室の人間関係に悩む看護師へ
  • 少人数で固定メンバーの内視鏡室は
  • なぜ関係が濃くなりやすいのか

内視鏡室の人間関係で、息が詰まりそうになっていませんか。

病棟にいた頃は、合わない人がいても勤務が重ならない日がありました。内視鏡室では、毎朝同じ顔ぶれで準備を始め、同じ部屋で検査をして、同じ時間に休憩をとります。逃げ場がないように感じるのは、あなたの気持ちが弱いからではありません。職場の形が、そう感じさせやすいのです。

この記事では、内視鏡室という職場で人間関係がどう動いているかを、1日の流れに沿ってほどいていきます。そのうえで、狭い職場で自分を守りながら働くための距離の取り方をお伝えします。

内視鏡室の人間関係が濃くなりやすい理由

最初に、内視鏡室という場所の特徴を整理しておきます。人間関係の悩みは「あの人が悪い」「私が悪い」と個人の問題にしてしまいがちですが、実は職場の構造が大きく関わっています。

1つ目は、人数の少なさです。

病棟なら看護師が20人、30人といるところ、内視鏡室は数人から10人程度で回していることが多くあります。クリニックであれば、看護師が2〜4名という職場も珍しくありません。人数が少ないと、1人との関係がこじれたときの影響が職場全体に広がります。

2つ目は、メンバーの固定です。

内視鏡室は専門性が高く、覚えることが多い部署です。そのため一度配属された人が長く在籍しやすく、10年、15年と同じ部署にいるベテランがいることもあります。長く続くことは教える力の面では心強いのですが、「この部屋のやり方」が強く根づき、新しく入った人が入り込みにくい空気を生むこともあります。

3つ目は、密室で緊張が続くことです。

検査室は照明を落とし、医師はモニターに集中し、患者さんは鎮静で眠っているか、苦しさに耐えています。その中で、看護師は医師の短い指示に即座に応え、呼吸や血圧の変化を見続けます。張りつめた状態が続くと、人は言葉が短くなり、表情も硬くなります。それを「冷たい」「怒っている」と受け取ってしまうすれ違いが、内視鏡室ではよく起きます。

4つ目は、時間が同じに流れることです。

内視鏡室は日勤で、始業も休憩も終業もほぼ全員が同じです。病棟のように夜勤で顔を合わせない期間がないので、関係に「冷却期間」が生まれにくいのです。

5つ目は、仕事の境目があいまいになりやすいことです。

日本消化器内視鏡学会の説明にもあるとおり、内視鏡室には洗浄、介助、観察、機器管理、在庫管理など多くの業務があり、多くの施設では看護師がそれらを兼務しています。境目があいまいな仕事は、「誰がやるのか」をめぐって不満がたまりやすくなります。

6つ目は、患者さんとの関わりが短いことです。

病棟では、回復していく患者さんの姿や「ありがとう」の言葉が、職場のしんどさを支えてくれることがあります。内視鏡室では、1人の患者さんと過ごす時間は長くても1〜2時間で、鎮静で眠っていることも多いため、そうした支えを感じにくくなります。仕事の手応えを患者さんから受け取りにくい分、同僚との関係が気持ちに占める割合が大きくなるのです。

こうした特徴を知っておくだけでも、「自分だけがうまくやれていない」という思い込みから少し離れられます。大丈夫です。つらさの一部は、場所の性質から来ています。

1日の流れの中で、摩擦が起きやすい場面

こういう相談がよくあります。

「嫌われているわけではないと思うのに、1日の中で何度もピリッとする瞬間がある」

内視鏡室の1日を追っていくと、そのピリッとする瞬間には、ある程度決まった場所があることが分かります。

朝の準備の時間。

検査が始まる前に、スコープの点検、洗浄機の立ち上げ、処置具や薬剤の補充、検査室の準備を済ませます。ここで起きやすいのが「いつも同じ人ばかりが早く来て準備している」という不満です。始業前の準備が暗黙の了解になっている職場では、早く来る人と時間ちょうどに来る人の間に、口に出さない溝ができやすくなります。

検査中の指示。

医師がスコープを操作している間、看護師への指示は「鉗子」「吸引」「押して」といった単語になります。慣れないうちは聞き返したくても言い出せず、動きが遅れて医師の声が強くなり、それが検査後まで気持ちに残ります。

洗浄と片付け。

検査が続くと、使ったスコープが洗浄室にたまっていきます。誰かが検査に入っている間に、誰かが洗浄を回さなければなりません。ここで「私ばかり洗っている」という気持ちが生まれやすくなります。

休憩の順番。

検査の合間に交代で休憩をとる職場では、誰がいつ抜けるかが毎日の小さな交渉になります。ベテランが先に休み、新人が最後に回る。そういう流れが続くと、言葉にしにくい不公平感が積もります。

終業前の時間。

大腸カメラや治療が長引くと、終業時刻が読めなくなります。保育園のお迎えがある人と、残れる人の間で、帰り方をめぐる気まずさが生まれることもあります。

常勤とパートの間。

内視鏡室には、午前の検査枠だけ入るパートの看護師がいることもよくあります。午前で帰る人と、午後の治療や最後の洗浄まで残る人がいると、「大変なところは常勤ばかり」「パートは肩身が狭い」という気持ちが、両方の側に生まれやすくなります。どちらかが悪いのではなく、勤務の形の違いが見えにくい不満を作っているのです。

どれも、1回ずつは小さな出来事です。けれど、狭い職場ではそれが毎日同じ人との間で繰り返されます。心がすり減るのは、出来事の大きさではなく、繰り返しの数によるものなのです。

ここで大切なのは、自分がどの場面でいちばん疲れているかを知っておくことです。朝なのか、検査中なのか、休憩なのか。場面が分かれば、打つ手も具体的になります。1週間ほど、帰り道に「今日いちばんしんどかった瞬間」をスマホのメモに1行だけ書いてみてください。気持ちを整理する助けになるだけでなく、あとで誰かに相談するときの材料にもなります。

医師との関係:検査中の言い方をどう受け止めるか

内視鏡室の人間関係で、看護師がいちばん悩みやすいのが医師との関係です。

病棟では医師と顔を合わせる時間は限られていますが、内視鏡室では1日の大半を医師と同じ部屋で過ごします。しかも医師は、患者さんの体の中を映す画面に集中しています。

検査中の医師の言葉が短く、ときにきつく聞こえるのは、多くの場合、あなたに向けた感情ではありません。出血を止める、病変を見逃さない、偶発症を起こさない。そのために意識のほとんどを画面に向けているから、言葉に気を配る余裕がなくなっているのです。

鳥取大学医学部附属病院の先進内視鏡センターは、検査と治療の安全について次のように紹介しています。

合併症予防のため、鎮静下の検査・治療の術前には手術室と同様のレベルで医師・看護師によるタイムアウトを行っています。 検査中は酸素飽和度、血圧、脈拍をモニターし、安全・安心な検査・治療ができるようにしています。 出典: www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp

手術室と同じ水準の確認をするほど、内視鏡室は緊張を伴う場所だということです。言葉のきつさを我慢しなさいという意味ではありません。受け止め方を少し変えるための、背景として知っておいてほしいのです。

では、具体的にどうすればよいでしょうか。

検査中は、聞き返すことをためらわないでください。

「すみません、もう一度お願いします」の一言は、遅れて間違った物を渡すよりずっと安全です。聞き返しを嫌がる医師もいますが、患者さんの安全のための確認は、看護師の大事な役割です。

検査が終わってから、短く確認する。

「さっきのポリープのとき、もう少し早くスネアを出したほうがよかったですか」。検査中は言えなかったことを、落ち着いた時間に一言だけ聞いてみます。医師にも手技の好みがあり、それを知るほど検査中のやりとりは楽になります。

医師ごとの好みを、メモに残す。

内視鏡室には複数の医師が入ることが多く、「この先生は送気を早めに」「この先生は体位変換の声かけを先にほしい」といった違いがあります。覚えきれないのは当然なので、自分用のメモに書いておきましょう。

それでも、人格を否定するような言葉や、物に当たるような態度が続く場合は話が別です。それは受け止め方の問題ではありません。一人で抱えずに、看護師長や部署の責任者に、日時と言葉を記録したうえで伝えてください。

もう1つ、覚えておいてほしいことがあります。患者さんの呼吸が浅くなっている、血圧が下がっている。そうした変化に気づいたときは、医師が画面に集中していても、ためらわずに声をかけてください。検査を止める一言をかけられる看護師は、長い目で見ると医師からいちばん信頼されます。関係に気を遣うことと、患者さんの安全を伝えることは、別のものとして考えてよいのです。

ベテランと新人:暗黙のやり方にどう入っていくか

「前の人はこうしていたから」

内視鏡室に異動や転職で入った人から、この言葉がつらかったという話をよく聞きます。

長く同じメンバーで回ってきた内視鏡室には、手順書に書かれていない「この部屋のやり方」があります。処置具を置く位置、スコープを受け取る角度、患者さんへの声かけの順番。ベテランにとっては体に染みついた当たり前なので、説明するという発想そのものが浮かびにくいのです。

新しく入る側は、それを知らないまま動くので、何度も「違う」と言われます。すると「私は向いていないのかもしれない」と感じてしまう。けれど、知らないことを知らないのは当たり前です。

私が以前お話を聞いた方も、内視鏡室に移って半年ほど、毎日のように「そこじゃない」と言われ続けて、朝の通勤電車で涙が出るようになったと話していました。一緒に振り返ってみると、注意されていたことの多くは、手順書にない置き場所や段取りの話でした。能力の問題ではなく、情報が渡っていなかっただけだったのです。その方は、注意された内容を1冊のノートにまとめ、「この部屋のやり方ノート」として先輩に見てもらうことにしました。それをきっかけに、先輩の側からも説明が増えていったそうです。

暗黙のやり方に入っていくための工夫を、いくつか挙げます。

・注意されたことは、その日のうちにメモに書く。同じことを2回聞かないで済むように ・質問は、検査の合間ではなく、片付けの時間や休憩の前など、相手に余裕がある時間を選ぶ ・「なぜそうするのか」も一緒に聞く。理由が分かると応用が利き、ベテランも答えやすくなる ・自分が前の職場で身につけたやり方は、すぐに持ち込まず、まずは部屋のやり方を覚えてから提案する

最後の点は、少しだけ意識してほしいところです。前の職場のほうが効率的だったとしても、入ってすぐに「前はこうでした」と言うと、長くその部屋を守ってきた人たちには否定の言葉に聞こえます。半年ほど経って信頼ができてから提案すると、同じ内容でも受け入れられやすくなります。

逆に、あなたがベテランの立場になったときは、新しく入った人に「この部屋のやり方」を言葉にして渡してあげてください。狭い職場ほど、それだけで空気は変わります。

もう1つ、知っておいてほしいことがあります。ベテランの側も、実は余裕がないことが多いのです。少人数の内視鏡室では、ベテランは検査に入りながら新人を見て、医師の要望にも応え、在庫や洗浄の管理まで気にかけています。言葉がきつく聞こえるのは、あなたを拒んでいるのではなく、手が回っていないサインであることもあります。そう考えると、少しだけ受け止め方が変わるかもしれません。

他職種との間:役割の境目で起きること

内視鏡室は、看護師だけの職場ではありません。

臨床工学技士、洗浄を担当するスタッフ、看護助手、受付の事務職員、薬剤師、臨床検査技師、そして病棟や外来の看護師。施設の規模によって顔ぶれは違いますが、多くの職種が1つの流れの中で動いています。

他職種との間で起きやすいのは、「それは誰の仕事なのか」というすれ違いです。

たとえば、スコープの不具合に気づいたとき。看護師が臨床工学技士に連絡するのか、技士が朝の点検で見つけるべきなのか。検体を検査室に出すのは看護師か、臨床検査技師か、事務か。こうした境目があいまいなまま忙しくなると、「気づいた人がやる」ことになり、気づく人ほど疲れていきます。

病棟との間でも、よく摩擦が起きます。

入院患者さんの検査が押すと、病棟では食事や点滴、ほかの検査の予定が崩れます。病棟からの「まだですか」という電話に、内視鏡室の看護師が何度も対応することになり、お互いに「分かってもらえない」と感じやすくなります。

こうしたすれ違いは、個人の性格より、役割の決め方の問題であることがほとんどです。

できることは、2つあります。

1つは、境目で困ったことを「人」ではなく「仕事」として話すことです。「〇〇さんがやってくれない」ではなく、「検体の提出が、誰の担当か決まっていないので、決めたいです」と伝える。主語を人から仕事に移すだけで、相手は責められていると感じにくくなります。

もう1つは、他職種の仕事の中身を少し知ることです。臨床工学技士が朝にどんな点検をしているか、洗浄スタッフが1本のスコープにどれだけの手順をかけているか。知っていると、「なぜすぐにやってくれないのか」という苛立ちが、「今はあの工程の途中なんだな」という理解に変わります。

相手の仕事を知ろうとする姿勢は、相手にも伝わります。狭い職場では、その小さな伝わり方が、関係を少しずつ柔らかくしていきます。

受付や事務の職員との間では、患者さんの声の扱いで行き違いが起きやすくなります。検査の待ち時間が長くなったとき、最初に不満を受け止めるのは受付です。それが看護師に伝わらないまま、患者さんの苛立ちだけが検査室に持ち込まれると、どちらも「現場の事情を分かってくれない」と感じます。朝の打ち合わせで、その日の予定が押しそうかどうかを受付とも共有しておくと、患者さんへの説明がそろい、職種の間の空気もやわらぎます。

狭い職場で、近すぎず離れすぎない距離を保つ方法

ここからは、狭い職場で自分を守るための距離の取り方をお伝えします。

心理学では、自分と他人の間に引く見えない線のことを「境界線」と呼びます。日常の言葉にすると、「ここまでは話すけれど、ここから先は自分のもの」という線です。内視鏡室のように人との距離が近い職場ほど、この線を意識しておくことが大切になります。

休憩の時間を、自分のために使ってよい。

少人数の職場では、休憩室でも同じメンバーと顔を合わせます。毎回会話に加わらなければと思うと、休憩が仕事の延長になってしまいます。週に何回かは、外の空気を吸いに出る、飲み物を買いに行く、イヤホンで音楽を聴く。そういう時間を持ってかまいません。

私生活の話は、話す量を自分で決める。

家族のこと、休日の過ごし方、恋愛のこと。狭い職場では、こうした話が一気に広がりやすくなります。聞かれたことに全部答える必要はありません。「そうですね、まあいろいろです」とやわらかく流す返し方を、1つ持っておくと楽になります。

頼まれごとを断るときは、理由を短く。

「今は洗浄の途中なので、終わったら行きます」。断ることは関係を壊すことではありません。むしろ、全部を引き受けて疲れ切るほうが、長い目で見て関係を壊します。

言いたいことは「私」を主語にして伝える。

これはアサーションと呼ばれる伝え方で、相手を責めずに自分の気持ちを伝える方法です。「いつも洗浄を押しつけないでください」ではなく、「最近洗浄に入る回数が多くて、観察が手薄になるのが心配です」と伝える。同じ内容でも、受け取る側の構え方が変わります。

悪口の輪には、入らなくていい。

狭い職場ほど、その場にいない人の話が出やすくなります。同意を求められたら、「そうなんですね」と受け止めるだけにとどめます。うなずきすぎず、否定もしない。これが、どの人とも一定の距離を保つための現実的なやり方です。

職場の外に、話せる人を持つ。

人間関係が狭い職場ほど、職場の中だけで気持ちを処理しようとすると苦しくなります。前の職場の同期、看護学校の友人、家族。職場とは関係のない人に話すだけで、気持ちの圧は少し下がります。

それから、挨拶だけは自分から続けてください。関係がぎくしゃくしている相手ほど、挨拶まで省きたくなります。けれど狭い職場では、挨拶が止まった瞬間に周りにも緊張が伝わります。気持ちを込めなくてかまいません。「おはようございます」「お疲れさまです」を、形として続けるだけで十分です。

距離を取ることは、冷たくなることではありません。自分を保ったまま、長く一緒に働くための工夫です。

職場の種類で人間関係はどう変わるか、入る前にどう見抜くか

内視鏡室の人間関係は、職場の種類によっても性格が変わります。これから転職や異動を考えている人は、ここも参考にしてください。

大学病院やがん専門病院の内視鏡室は、人数が多く、医師も入れ替わります。1人と合わなくても、ほかのメンバーと組む日があるので、関係に逃げ道が作りやすい職場です。その一方で、職種も人数も多い分、連絡や調整に気を遣う場面が増えます。

急性期の一般病院では、外来と内視鏡をローテーションすることが多く、毎日同じメンバーとは限りません。内視鏡室の中の関係よりも、外来全体の雰囲気が働きやすさを左右します。

消化器内科クリニックは、最も人数が少ない職場です。院長の人柄と、長く勤めているスタッフとの相性が、働きやすさのほとんどを決めると言ってもよいほどです。合えば家族のように温かく、合わなければ逃げ場がありません。

健診センターは、件数が多く流れ作業の要素が強いため、個人的な会話は少なめになりやすい職場です。人間関係のわずらわしさを避けたい人には合う一方、チームで励まし合う雰囲気を求める人には物足りなく感じるかもしれません。

入る前に人間関係を見抜くのは難しいですが、手がかりはあります。

・見学のときに、スタッフ同士が名前で呼び合っているか、指示だけが飛び交っているか ・検査の合間に、誰かが困っているときに自然に手が伸びているか ・面接で「どんな方が長く働いていますか」と聞いたときに、具体的な答えが返ってくるか ・求人が短い間隔で何度も出ていないか

最後の点は大事です。同じ施設の内視鏡室の求人が、半年ごとに出ている場合は、人が定着しにくい何かがある可能性があります。

給与や条件だけで比べると、人間関係の見えにくい部分が抜け落ちます。条件の相場は看護師の年収・単価相場で雇用形態ごとの水準を確かめられるので、条件の確認はそちらで済ませ、見学と面接の時間は人の様子を見ることに使うのがおすすめです。

派遣や短時間勤務で内視鏡室に入る場合は、人間関係の感じ方がまた違います。期間が決まっている分、深く関わりすぎずに済む気楽さがある一方、「この人はいずれいなくなる」と見られて、やり方を丁寧に教えてもらえないこともあります。短い期間で入るときほど、初日に「分からないことは誰に聞けばよいですか」と確認し、聞く相手を1人決めておくと、動きやすくなります。

しんどさが続くときの判断と、相談先

最後に、人間関係のつらさが続いているときの判断についてお話しします。

人間関係で悩んでいるとき、心の中で起きやすい考え方のくせがあります。

1つは「全部自分のせいだ」と考えるくせです。医師の声が強くなったのも、先輩がため息をついたのも、自分の動きが悪かったからだと結びつけてしまう。けれど実際には、相手の疲れや、予定の遅れや、別の患者さんへの心配など、あなたとは関係のない理由が混ざっていることがほとんどです。

もう1つは「いつも」「絶対」で考えるくせです。「いつも私だけ注意される」「絶対に嫌われている」。そう感じたら、本当に毎回だったか、注意されなかった日はなかったかを、メモを見返して確かめてみてください。事実を1つずつ確かめると、気持ちの重さは少し軽くなります。

まず、体のサインに目を向けてください。

・日曜日の夕方になると気分が沈む ・朝、職場の建物が見えると動悸がする ・眠りが浅く、夜中に何度も目が覚める ・食欲が落ちた、あるいは食べすぎてしまう ・休日も職場の人の顔や言葉が頭から離れない

こうしたサインが2週間以上続いているなら、心が「もう少し休ませて」と伝えています。気合いで乗り切ろうとせず、職場の産業医や、心療内科などの専門家に相談してください。

次に、職場の中で相談できる相手を探します。

看護師長、部署の責任者、看護部の相談窓口。相談するときは、「つらい」という気持ちに加えて、いつ、どの場面で、何があったかを具体的に伝えると、相手も動きやすくなります。先ほどお伝えしたメモが、ここで役に立ちます。

それでも変わらないときは、職場を変えることも選択肢です。

病院に勤めている場合は、辞める前に部署の異動を相談する道もあります。内視鏡室の経験を持ったまま外来や病棟に移り、しばらく距離を置いてから、別の形で内視鏡に関わり直す人もいます。職場を辞めるか続けるかの二択だけで考えると、心が追いつめられます。間にいくつかの選択肢があることを、覚えておいてください。

内視鏡室の経験は、ほかの施設でも活かせます。人間関係を理由に職場を移ることは、逃げではありません。自分が力を発揮できる場所を選び直すことです。

転職を考えるときに、気持ちの整理や方向性の相談に乗ってくれる専門家もいます。キャリアの相談を受ける国家資格の内容はキャリアコンサルタントの解説にまとまっており、どんな支援を受けられるのかを知る手がかりになります。また、職場や転職の悩みを聞く仕事がどのように行われているかは、職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介されています。

私自身も、組織の中で人間関係に悩んだ時期がありました。そのとき一番助けになったのは、解決策そのものより、「それはつらかったですね」と話を最後まで聞いてくれた人の存在でした。あなたの話を聞いてくれる人は、職場の外にもいます。一人で抱えないでください。

運営者の視点から見た、内視鏡室と人の定着

ここでは、医療職の求人と働き方を長く見てきた運営者の立場から、少しだけ補足します。

20年この市場を見てきた立場から言えば、少人数の職場で長く働き続けている人には、共通点があります。それは、仕事の腕だけでなく、「この人と組むと楽だ」と周りに思ってもらえる関係づくりに時間を使っていることです。検査中に次に必要な物を先回りして出す、洗浄が溜まっていたら声をかけて手伝う、新しく来た人に部屋のやり方を言葉で渡す。そうした小さな積み重ねが、狭い職場での居場所を作っています。

もう1つ感じているのは、人間関係を理由に職場を移った人が、次の職場で落ち着くケースが少なくないことです。前の職場での経験から、入る前に見学で人の様子を確かめ、面接で具体的な質問をするようになるからです。つらかった経験は、次の職場選びの目を確かにしてくれます。今の苦しさにも、そういう意味が後からついてくることがあります。

また、少人数の職場で関係が良好な内視鏡室には、「困っていることを早めに口に出せる空気」があるように感じています。洗浄が回らない、医師の指示が聞き取りにくい、休憩が取れていない。小さな困りごとが朝の数分の打ち合わせで話題にのぼる職場では、不満が大きな対立に育つ前に手当てされています。反対に、困りごとを口にすると「できない人」と見られる空気がある職場では、同じ人数、同じ件数でも、人が定着しにくい傾向があります。

これから職場を選ぶ人は、見学や面接で「困ったことがあったとき、どうやって共有していますか」と聞いてみてください。答え方そのものに、その内視鏡室の人間関係が表れます。いま働いている人は、自分の職場にその空気を少しずつ作っていく側に回ることもできます。狭い職場は、1人の小さな働きかけで空気が変わりやすい場所でもあるのです。

内視鏡の経験を持つ看護師は、病院、クリニック、健診センターと、働く場所の選択肢が比較的多い職種です。今の職場の人間関係がすべてだと思い込まず、選べる場所がほかにもあると知っておくことが、心の余裕につながります。余裕がある人ほど、今の職場でも落ち着いてふるまえるものです。人間関係に悩む時間が長く続いたときこそ、働く場所を広い目で見渡してみてください。そのうえで今の職場に残ると決めたなら、それはもう「我慢」ではなく、あなた自身が選んだ働き方です。

よくある質問

Q. 内視鏡室は人間関係が悪い職場なのですか?

悪いと決まっているわけではありません。人数が少なくメンバーが固定されやすい、密室で緊張が続く、休憩や勤務時間が全員同じといった構造があるため、関係が濃くなりやすいのです。相性が合えば働きやすく、合わないと逃げ場がないと感じやすい、振れ幅の大きい職場だと考えると実態に近くなります。

Q. 検査中に医師の言い方がきつくて落ち込みます。どうすればよいですか?

検査中の短い言葉は、画面に集中しているために出ることが多く、あなたへの感情とは限りません。聞き返しをためらわず、検査後に落ち着いて確認する習慣をつけると、やりとりは楽になります。ただし人格を否定する言葉や物に当たる態度が続く場合は、日時と内容を記録して責任者に相談してください。

Q. ベテランの暗黙のルールになじめません。辞めるべきでしょうか?

すぐに辞めると決める必要はありません。注意されたことをその日のうちにメモし、理由も一緒に聞くと、半年ほどで部屋のやり方は身につくことが多いです。ただし眠れない、食欲が落ちるといった体のサインが2週間以上続く場合は、専門家への相談や職場を変えることも前向きな選択肢です。

Q. 転職前に内視鏡室の人間関係を見抜く方法はありますか?

見学でスタッフ同士の声のかけ方や、困っている人に手が伸びているかを見るのが有効です。面接では「どんな方が長く働いていますか」と聞き、具体的な答えが返ってくるかを確かめます。同じ施設の求人が短い間隔で何度も出ている場合は、定着しにくい理由がないか注意して確認してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月30日最終更新:2026年9月16日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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