救急外来を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと


この記事のポイント
- ✓救急外来を辞めたいと感じたときに
- ✓辞める前に切り分けておきたいことをまとめました
- ✓仕事そのものがつらいのか職場の体制の問題か
「救急外来を辞めたい。でも、辞めたら逃げたことになる気がして動けない」。 このご相談、本当に多いんです。
まず、お伝えしたいことがあります。 救急外来を辞めたいと思うのは、弱いからではありません。 救急外来は、仕事の構造そのものが、心と体に負担をかけやすい職場です。 そう感じているあなたは、一人じゃありません。
ただ、「辞めたい」という気持ちの中には、いくつかの違う理由が混ざっていることがよくあります。 仕事そのものが合わないのか。 今の職場の体制がつらいのか。 心と体が限界に近づいているのか。 人間関係に疲れているのか。
この記事では、救急外来を辞める前に切り分けておきたいことを、順番にお話しします。 切り分けができると、辞めるにしても、残るにしても、次の一歩を自分で選べるようになります。
救急外来で「辞めたい」が生まれやすい理由
救急外来で働く人が「辞めたい」と感じやすいのには、はっきりした理由があります。 個人の問題ではなく、職場の仕組みから生まれるものが多いんです。
1つ目は、予測ができないことです。 病棟なら、朝の申し送りで今日の患者さんが分かります。 救急外来では、次に誰が来るか分かりません。 ホットライン1本で、数分後に心肺停止の患者さんが運ばれてくることもあります。 勤務の間ずっと、心のどこかで身構えている状態が続きます。
2つ目は、患者さんや家族の感情を正面から受けることです。 救急外来の診察は、受付順ではなく緊急度の順です。 病院も、受診する人に向けてそのことを説明しています。
救急外来は,休日や夜間に緊急性のある患者様を対象に診療を行う外来です。したがって,診察時の順番は通常の外来とは違って診療の緊急性の有無に応じて変わることとなり,必ずしも受け付け順ではありません。当番医師により緊急性が低いと判断された患者様には診療までにかなりお待ち頂くこともあることを御了承下さい。 出典: toride-medical.or.jp
こうして案内していても、待合室で長く待つ人の不安や苛立ちは、目の前にいる看護師に向かいがちです。 「いつまで待たせるんだ」と怒鳴られた直後に、重症の患者さんの処置に入る。 この切り替えを繰り返すことは、想像以上に心を消耗させます。
3つ目は、関わりが短いことです。 救急外来では、処置をして病棟に送り出したら、その後どうなったか分からないまま次の患者さんに向き合います。 「ありがとう」と言われる瞬間が少なく、手応えを感じにくい職場です。
4つ目は、人の死に立ち会う機会が多いことです。 蘇生を尽くしても助からなかった患者さんの家族に対応し、そのまま次の救急車を受け入れる。 悲しむ時間も、振り返る時間もないまま、勤務が続きます。
5つ目は、夜間の人員体制です。 中小規模の病院では、夜間の救急外来を看護師1人か2人で担当していることがあります。 判断に迷っても、すぐに相談できる相手がいない。 その孤独が、辞めたい気持ちを強めることがあります。
こうした理由を並べてみると、「辞めたい」と感じるのはごく自然なことだと分かります。 大丈夫ですよ。 まずは、あなたの「辞めたい」がどこから来ているのかを、一緒に見ていきましょう。
切り分け1:仕事そのものがつらいのか、この職場の体制がつらいのか
最初に切り分けたいのは、「救急外来という仕事」がつらいのか、「今の職場の救急外来」がつらいのか、という点です。 ここを分けないまま辞めると、次の職場でも同じつらさを抱えることがあります。
次の問いに、心の中で答えてみてください。
・人員に余裕のある職場なら、救急外来の仕事を続けたいと思うか ・重症の場面そのものが怖いのか、少人数で対応しなければならないことが怖いのか ・関わりの短さに寂しさを感じるのか、それとも忙しすぎて患者さんに向き合えないことがつらいのか ・夜勤そのものがつらいのか、夜勤の回数や組み方がつらいのか
たとえば、「重症の場面が怖い」という気持ちでも、中身は人によって違います。 自分の知識や技術が足りないと感じて怖いのなら、研修や経験で少しずつ変わっていく可能性があります。 一方で、夜間に1人で重症の患者さんを受けなければならない体制が怖いのなら、それはあなたの問題ではなく、職場の体制の問題です。
「忙しすぎて患者さんに向き合えない」というつらさも、よく聞きます。 本当はもっと声をかけたいのに、次々と来る救急車に追われて、処置だけで終わってしまう。 この葛藤は、看護師として大切にしたいことがあるからこそ生まれるものです。 こういう方は、救急外来という仕事が合わないのではなく、今の職場の忙しさと、自分が大切にしたい看護のあいだにずれがあるのかもしれません。
同じ救急外来でも、職場によって体制は大きく違います。 救命救急センターを持つ大きな病院では、救急外来に専従の看護師が夜間も複数人いて、医師もすぐそばにいます。 地域の中小病院では、夜間は病棟の看護師が交代で救急外来を兼ねていることもあります。
仕事そのものは嫌いではないけれど、今の体制がつらい。 そう気づいたなら、選択肢は「看護師を辞める」「救急を辞める」だけではありません。 体制の違う救急外来に移るという道もあります。
逆に、どんな体制であっても、予測できない状況に身構え続けることがつらい、関わりの短さがどうしても寂しい、と感じるなら、救急外来という仕事そのものと、あなたの大切にしたい看護のあいだにずれがあるのかもしれません。 それは悪いことではありません。 自分に合う場所を探す、大切な気づきです。
切り分け2:心と体からのサインを見逃さない
次に確かめたいのは、心と体の状態です。 「辞めたい」という気持ちが、実は心身の限界のサインになっていることがあります。
次のようなことが、2週間以上続いていないか振り返ってみてください。
・夜勤明けでもないのに眠れない、または何度も目が覚める ・勤務の前日になると、動悸がしたり、お腹が痛くなったりする ・休みの日も仕事のことが頭から離れない ・以前は楽しめていたことに、興味が持てなくなった ・食欲がない、または食べ過ぎてしまう ・特定の場面(ホットラインの音、心肺蘇生の場面など)を思い出して、つらくなる
最後の項目は、救急外来で働く人に特有のものです。 つらい場面に何度も立ち会うことで、その記憶が繰り返しよみがえり、心に負担がかかることがあります。 心理学では、強い衝撃を受ける出来事に触れた後の心の反応を「惨事ストレス」と呼ぶことがあります。 消防や警察、医療の現場で働く人に起きやすいことが知られています。 つまり、あなたの心が弱いから起きるのではなく、そういう場面に立ち会う仕事だから起きるものなんです。
こうしたサインがあるときは、辞めるかどうかを決める前に、まず自分を休ませることを優先してください。 心身が疲れ切った状態では、物事を冷静に判断することが難しくなります。 「全部やめてしまいたい」という気持ちが、実は疲れから来ていることもあります。
相談できる場所はいくつかあります。 職場に産業医や産業保健の窓口があれば、そこに相談できます。 厚生労働省も、働く人のメンタルヘルスについての情報や相談窓口を案内しています。 眠れない、気分の落ち込みが続くなど、つらさが強いときは、心療内科や精神科を受診することも大切な選択です。
※ここに書いたサインは、自分の状態を振り返るための目安です。 診断ではありません。 つらさが続くときは、自己判断せず、医師や専門の相談窓口に相談してください。
以前、カウンセリングでお会いした看護師さんは、「救急車のサイレンを聞くと、休みの日でも体がこわばる」と話していました。 その方は、しばらく休職して心と体を休めた後、救急外来ではなく健診センターに移り、少しずつ元気を取り戻していきました。 「辞めたいと思ったのは、救急が嫌いになったからじゃなくて、疲れ切っていたからだった」と、後で振り返っていました。
切り分け3:人間関係がつらいのか
救急外来を辞めたい理由として、人間関係を挙げる人も少なくありません。 救急外来は、少人数で緊張感の高い場面を乗り越える職場です。 そのぶん、人間関係の影響を強く受けやすいんです。
緊急の場面では、言葉が短く、きつくなりがちです。 「早く」「違う、それじゃない」。 その場では仕方がないと分かっていても、毎回そう言われると、心に傷が残ります。
また、少人数の職場では、合わない人と同じ勤務になる日を避けにくいという事情もあります。 夜勤で、苦手な先輩と2人きりになる。 それだけで、勤務の前から気持ちが重くなる、というご相談もよく聞きます。
ここでも切り分けが大切です。 ・特定の人との関係がつらいのか、職場全体の雰囲気がつらいのか ・緊急の場面での言葉がつらいのか、普段の関わりもつらいのか ・つらさを相談できる人が、職場に1人でもいるか
特定の人との関係がつらいなら、勤務の組み合わせを配慮してもらえないか、上司に相談する方法があります。 職場全体に、新しく入った人を責める雰囲気があるなら、それは個人の努力では変えにくい問題です。
こういう相談がよくあります。 「緊急の場面で怒鳴られるのは仕方ないと思っていた。でも、処置が終わった後も、ナースステーションでみんなの前でミスを責められるのがつらい」。 緊急の場面の短い言葉と、場面が終わった後の叱責は、分けて考えてください。 処置の最中の「早く」は、患者さんを守るための言葉です。 でも、終わった後に人前で繰り返し責めることは、患者さんを守ることにはつながりません。 その違いに気づけると、「自分が悪い」とだけ思い込まずにすみます。
もし、人格を否定するような言葉や、大勢の前での叱責が繰り返されているなら、それはパワーハラスメントに当たる可能性があります。 2022年4月からは、中小企業を含むすべての事業主に、パワーハラスメントを防ぐための措置が義務付けられています。 職場の相談窓口に相談することは、あなたの正当な権利です。
気持ちを整理するために、紙に書き出してみる
ここまで3つの切り分けをお話ししてきました。 でも、頭の中だけで考えていると、同じところをぐるぐる回ってしまいがちですよね。 そこでおすすめしているのが、紙に書き出してみることです。
カウンセリングでも、よくこの方法をお伝えしています。 難しいことはありません。 紙を1枚用意して、縦に3つの欄をつくるだけです。
| 欄 | 書くこと | 書き方の例 |
|---|---|---|
| つらかった場面 | この2週間で、辞めたいと強く感じた場面 | 夜勤で救急車が続き、先輩に「遅い」と言われた |
| そのときの気持ち | その場面で感じたこと | 情けない、怖い、一人だと感じた |
| 何があれば違ったか | その場面がどう変われば、つらさが減ったか | もう1人いれば、声をかけてもらえれば |
ポイントは、3つ目の欄です。 「何があれば違ったか」を書いていくと、自分が本当に困っていることが見えてきます。
たとえば、3つ目の欄に「もう1人いれば」「相談できる人がいれば」が並ぶなら、あなたのつらさは人員体制や支えの仕組みから来ている可能性が高いです。 「重症の患者さんが来なければ」「もっと患者さんと話せれば」が並ぶなら、救急外来という仕事の性質と、あなたの大切にしたい看護のあいだにずれがあるのかもしれません。 「あの人がいなければ」が並ぶなら、人間関係の問題が中心です。
書き出すときは、上手に書こうとしなくて大丈夫です。 単語だけでも、箇条書きでもかまいません。 1回で終わらせず、1週間くらいかけて、つらいと感じたときに書き足していくと、傾向がはっきりしてきます。
書いたものを、信頼できる人に見せるのもいい方法です。 同じ職場の人でなくてもかまいません。 看護学校の同期、別の病院で働く友人、家族。 「こんなことがあってね」と話すだけで、気持ちが少し軽くなることがあります。
もう1つ、書き出すときに気をつけてほしいことがあります。 「自分がだめだから」「私が遅いから」と、自分を責める言葉ばかりが並んでいないか見てみてください。 もしそうなら、同じ場面を、仲のいい後輩が経験したと想像して書き直してみてください。 後輩になら「それは一人で抱えなくていいよ」と言えるはずです。 その言葉を、自分にもかけてあげてください。
辞めたい気持ちが強い日に、今日からできる小さなこと
切り分けや書き出しには、少し時間がかかります。 その間にも、勤務は続きますよね。 ここでは、辞めたい気持ちが強い日に、今日からできる小さなことをお伝えします。
夜勤明けの過ごし方を決めておく
夜勤明けは、心も体も疲れ切っています。 この状態で「辞めようか」と考えると、気持ちがどんどん暗い方向に流れていきます。 夜勤明けには大きな決断をしない、と決めておくだけで、少し楽になります。
帰り道に温かい飲み物を買う、帰宅したらシャワーを浴びてすぐ眠る、起きたら少しだけ外を歩く。 自分なりの「夜勤明けの手順」を決めておくと、心が切り替えやすくなります。
勤務の終わりに、1つだけ「できたこと」を思い出す
救急外来は、手応えを感じにくい職場だとお話ししました。 だからこそ、勤務の終わりに、1つだけ「できたこと」を思い出す習慣が役に立ちます。
「不安そうな家族に、声をかけられた」 「救急カートの点検を丁寧にできた」 小さなことでかまいません。 できなかったことばかりに目が向く日ほど、この習慣があなたを支えてくれます。
つらい場面の後は、誰かと言葉を交わす
蘇生の場面や、患者さんが亡くなった場面の後は、できれば誰かと少しだけ言葉を交わしてください。 「さっきの、きつかったね」。 この一言を同僚と交わすだけで、一人で抱え込む重さが違います。
職場によっては、つらい症例の後に短い振り返りの時間を設けているところもあります。 今の職場にそういう場がなければ、信頼できる先輩に「少し話を聞いてもらえませんか」とお願いしてみるのも一つの方法です。
大丈夫ですよ。 こうした小さなことは、辞めるか残るかを決めるまでの間、あなたの心を守ってくれます。
辞める前に、院内でできる調整を知っておく
切り分けができたら、辞める前に院内でできる調整がないかを考えてみましょう。 「辞める」か「我慢して続ける」かの2つしかないと思い込んでいる方が多いのですが、実はその間にいくつもの選択肢があります。
夜勤の回数や形を変えてもらう
夜勤がつらいなら、回数を減らせないか、2交代から3交代に変えられないか相談してみてください。 日本看護協会のガイドラインでは、3交代制の場合、夜勤は月8回以内を基本とする考え方が示されています。 今の回数が大きく上回っているなら、相談する根拠になります。
部署を異動する
救急外来という仕事が合わないと感じたなら、同じ病院の中で病棟や外来に異動する道があります。 職場の人間関係や福利厚生はそのままに、仕事の性質を変えられるのが利点です。 異動の希望は、面談の機会などに上司に伝えるのが一般的です。
休職する
心と体の不調が強いときは、休職という選択肢があります。 医師の診断書をもとに、一定期間仕事を休み、回復に専念します。
休職中に給与が出ない場合、健康保険の傷病手当金を受け取れることがあります。 病気やけがで仕事を休み、給与が出ないときに、おおむね給与の3分の2程度が、支給開始から通算で最長1年6か月受け取れる制度です。 条件があるので、職場の担当者や加入している健康保険に確認してください。
有給休暇でまとまった休みを取る
休職まではいかなくても、有給休暇を使ってまとまった休みを取るだけで、気持ちが整理できることがあります。 少し距離を置いて、自分がどうしたいのかを考える時間をつくるのも、大切な調整です。
調整を試してみて、それでもつらさが変わらないなら、そのときは辞めることを前向きに考えていいと思います。 試したうえでの決断は、逃げではありません。
辞めると決めたときの手順
辞めると決めたら、次は手順です。 焦って動くと、後で手続きに困ったり、職場との関係がこじれたりすることがあります。 落ち着いて、一つずつ進めましょう。
退職の意思を伝える時期
期間の定めのない雇用契約なら、法律上は退職を申し出てから2週間で辞めることができます。 ただし、職場の就業規則で「1か月前までに申し出る」などと決められていることが多いので、まず就業規則を確認してください。 救急外来は夜勤のシフトを早めに組むことが多いため、できれば1か月から2か月前に伝えると、職場との話し合いが進めやすくなります。
伝える相手は、まず直属の上司です。 同僚に先に話すと、上司に伝わる前に噂が広がり、話がこじれることがあります。
引き止められたとき
人手が足りない救急外来では、引き止められることがよくあります。 「あなたが辞めたら夜勤が回らない」と言われると、罪悪感を感じてしまいますよね。
あなたが自分の心と体を守るために辞めることを、責める必要はありません。
退職の意思がはっきりしているなら、「考えた末に決めたことです」と、穏やかに、繰り返し伝えれば大丈夫です。
有給休暇の消化と引き継ぎ
残っている有給休暇は、退職前に使うことができます。 引き継ぎの期間と有給休暇の消化の日程を、上司と相談して決めましょう。
次の職場を決めてから辞めるか、辞めてから探すか
よくいただくのが、「次を決めてから辞めるべきか、先に辞めてから探すべきか」というご質問です。 これは、今の心と体の状態によって答えが変わります。
心身にまだ少し余裕があるなら、働きながら次の職場を探すほうが、収入の心配をせずに落ち着いて選べます。 見学や面接の日程は、休みの日や夜勤明けの翌日に入れるなど、無理のない範囲で組んでください。
一方で、先ほどお話ししたような心と体のサインが強く出ているなら、先に休むことを優先してください。 疲れ切った状態で転職活動をすると、「とにかく今の職場から逃げたい」という気持ちが先に立ち、条件を十分に確かめないまま決めてしまうことがあります。 その結果、次の職場でも同じつらさを抱える、というご相談も少なくありません。 休んで回復してから探すほうが、結果的に自分に合う職場に出会いやすくなります。
どちらを選ぶにしても、「今の自分は、冷静に選べる状態か」を一度確かめてから動くことが大切です。
次の職場が決まる前に辞める場合
次の職場が決まる前に辞める場合は、雇用保険の失業給付を受けられることがあります。 自己都合で辞めた場合、以前は給付が始まるまでに2か月の待機のような期間がありましたが、2025年4月からは原則1か月に短くなっています。 退職後はハローワークで手続きをします。 健康保険と年金の切り替えも必要になるので、退職日が決まったら早めに確認しておきましょう。
※退職をめぐって職場と深刻なトラブルになった場合は、都道府県の労働局の総合労働相談コーナーや、弁護士に相談してください。
救急外来の経験が生きる次の職場
救急外来を辞めても、そこで身につけた力は消えません。 むしろ、多くの職場で求められる力です。
救急外来で身につく力には、次のようなものがあります。 ・短い時間で、患者さんの状態の重さを見立てる力 ・急変に気づき、すぐに動ける力 ・医師や他の職種と、簡潔に情報をやりとりする力 ・不安な患者さんや家族に、落ち着いて説明する力
こうした力が生きる職場を、いくつか挙げてみます。
| 次の職場 | 救急外来の経験が生きる場面 | 働き方の特徴 |
|---|---|---|
| 別の救急外来 | 体制の違う職場で経験をそのまま生かせる | 体制次第で負担が大きく変わる |
| 集中治療室(ICU) | 重症の患者さんの観察や急変対応 | 一人の患者さんに長く関われる |
| 手術室 | 手順を正確に守る力、緊急手術への対応 | 夜勤はオンコールの形が多い |
| 訪問看護 | 自宅で急変に気づき判断する力 | 夜間はオンコールの形が多い |
| クリニック・健診センター | 状態の見立て、来院者への説明 | 夜勤がない職場が多い |
| 介護施設 | 急変時の判断、医師との連携 | 看護師が少なく判断を任される |
「救急外来の緊張感から離れたい、でも急性期の感覚は生かしたい」という方は、ICUや手術室が合うことがあります。 「夜勤から離れて、生活のリズムを整えたい」という方は、クリニックや健診センターを考えてみてもいいかもしれません。
働く場所を変えるときは、収入の変化も気になりますよね。 救急外来は夜勤手当の比重が大きいので、夜勤のない職場に移ると、収入が下がることがあります。 看護師の年収の相場や、働き方による違いを、公的な統計をもとにまとめたデータがあります。 次の職場の条件を考えるときに、自分の希望する収入が相場と比べてどうなのかを確かめる材料になります。 看護師の年収・単価相場
次の職場の求人票で、同じつらさを繰り返さないために
次の職場を探すときは、今回の切り分けで分かったことを、求人票を見る目に生かしてください。 同じつらさを繰り返さないための、いちばん確かな方法です。
夜間の人員体制がつらかったなら、求人票の夜勤の人数や形態を確認します。 書かれていなければ、面接で「夜勤は何人体制ですか」「救急外来の夜間は、看護師は何人ですか」と聞いてかまいません。
人間関係がつらかったなら、見学の機会をつくってもらい、忙しい時間帯に看護師どうしがどう声をかけ合っているかを見てください。 新しく入った人への教育の仕組み(プリセプターの有無、研修の内容)も、職場の雰囲気を映します。
つらい場面の後の支えがなかったなら、面接で「つらい症例の後に、振り返りや相談の場はありますか」と聞いてみてください。 答え方から、職場がスタッフの心をどう扱っているかが見えてきます。
一人で求人を見比べていると、どうしても判断が揺らぎます。 キャリアの専門家と一緒に考えを整理するのも、1つの方法です。 転職や職場の悩みについて相談に乗る仕事の内容や、どんな人が担っているかをまとめたガイドがあります。 職場・転職・キャリア相談のお仕事
キャリアの相談を受ける国家資格として、キャリアコンサルタントがあります。 どんな専門家に相談しているのかを知っておくと、安心して話ができます。 資格の概要や、どんな場面で活躍しているかをまとめたページもあります。 キャリアコンサルタント
辞めることも、残ることも、自分で選べばいい
働く人の相談に長く関わってきて、そしてフリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見えていることがあります。 それは、長く働き続けている人ほど、「今の場所が合わない」と感じたときに、自分を責めずに次の組み合わせを探している、ということです。
仕事が続かないことを、自分の欠点だと思い込む方はとても多いです。 でも、実際には、人と職場の組み合わせが合っていないだけ、ということがほとんどです。 合う組み合わせを探す過程で、いくつかの職場を経験することは、決して遠回りではありません。
救急外来で身につけた力は、病院の中だけでなく、病院の外でも生かせます。 臨床の経験を生かして、医療記事の執筆や健康相談などを在宅で担う看護師も増えています。 夜勤から離れて心と体を整えたい時期に、収入の柱の1つとして知っておくと、選べる道が広がります。
依頼する人と働く人が直接つながる仕組みでは、中間の取り分がないぶん、同じ予算で依頼者はより多くを頼め、受け手の手取りは厚くなります。 病院で働くこととは仕組みが違いますが、「自分の力を、どこで、どんな形で使うか」を自分で選ぶ視点は、救急外来を辞めるか考えるときにも役立ちます。
救急外来を辞めたいと思ったあなたは、ここまでたくさんの命の最初の時間を支えてきた人です。 その経験を大切にしながら、次の場所を選んでください。 あなたは一人じゃありません。
よくある質問
Q. 救急外来を1年未満で辞めるのは早すぎますか?
期間の長さより、辞めたい理由を切り分けることが大切です。心身の不調が続いているなら、期間に関係なく休むことや職場を変えることを優先してください。一方で、慣れない時期の不安が理由なら、研修や相談の仕組みを使って様子を見る選択もあります。短い期間でも、救急外来で得た経験は次の職場で評価されます。
Q. 救急外来から病棟への異動を希望しても大丈夫ですか?
院内での異動は、職場を変えずに仕事の性質を変えられる現実的な方法です。上司との面談の機会などに、救急外来のどこがつらいのか、どんな働き方をしたいのかを具体的に伝えると話が進みやすくなります。すぐに異動できない場合もあるので、時期の見通しもあわせて確認しておくと安心です。
Q. 辞めたいと上司に伝えたら強く引き止められました。どうすればいいですか?
人手不足の救急外来では引き止められることがよくありますが、人員を確保するのは職場の責任です。退職の意思が固いなら、考えた末の決断であることを穏やかに繰り返し伝えてください。期間の定めのない雇用契約なら法律上は申し出から2週間で退職できますが、就業規則も確認し、引き継ぎの時期を相談しましょう。
Q. 救急外来の経験は転職でどのように評価されますか?
短い時間で患者さんの状態を見立てる力、急変への対応力、医師や他職種との連携力は、ICUや手術室、訪問看護、介護施設など多くの職場で求められます。面接では、どんな場面でどう判断し動いたかを具体的に話せると伝わりやすくなります。夜勤のない職場に移る場合は、収入の変化もあわせて確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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