救急外来はきついと言われる理由|負担が集まる場面と、続く人のやり方

長谷川 奈津
長谷川 奈津
救急外来はきついと言われる理由|負担が集まる場面と、続く人のやり方

この記事のポイント

  • 救急外来がきついと言われる理由を
  • 患者さんからの暴言や暴力
  • 看取りの場面に分けて整理しました

「救急外来はきつい」。 看護師の間でよく聞く言葉です。 でも、何がどうきついのかを具体的に説明できる人は、実はそれほど多くありません。

私はふだん、働く人の契約や労働条件の相談を受けています。 その中で医療職の方の話を聞いていると、「きつい」の中身は、仕事そのものの難しさと、職場の仕組みの問題が混ざっていることがとても多いんです。 そして後者、つまり仕組みの問題は、法律や契約の知識で先に避けたり、改善を求めたりできる部分があります。

この記事では、救急外来で負担が集まる場面を1つずつ分けて、それぞれ法律ではどう扱われているのか、求人票や労働条件通知書のどこで先に確かめられるのか、そして長く続いている人はどうしているのかを整理します。

「きつい」の中身を分けると、5つに分かれる

まず、救急外来の「きつい」を分解してみます。 相談を受けてきた経験から整理すると、おおよそ次の5つに分かれます。

きつさの種類 主な原因 仕組みで減らせるか
予定が読めない いつ救急車が来るか分からない 一部は減らせる(役割分担、人員配置)
休憩が取れない 救急車の重なり 減らせる(休憩の運用、交代要員)
夜勤の体の負担 生活リズムの乱れ 減らせる(夜勤回数、仮眠の確保)
暴言や暴力 患者さんや家族の怒り 減らせる(組織の対応、警備との連携)
看取りの心の負担 助からない命との出会い 支えで和らげられる(振り返り、相談先)

表を見て気づいていただきたいのは、5つのうち4つが「仕組みで減らせる」ことです。 救急外来のきつさは、救急という仕事の宿命だけでできているわけではありません。

救急の現場を取り巻く状況

背景には、救急の需要そのものが増えていることがあります。 総務省消防庁の集計では、令和5年の救急出動件数は約763万件で、過去最多でした。 高齢化が進むほど搬送は増える傾向にあり、救急外来の1人あたりの負担は、何もしなければ重くなる方向にあります。

加えて、夜間に緊急性の低い受診が集中することも、現場の負担として病院側から繰り返し発信されています。 二次救急の病院が、軽症の人に一次救急やかかりつけ医の受診をお願いする案内を出しているのは、そのためです。

経験者が語る「きつさ」

救急外来で働いた看護師の経験談でも、きつさの筆頭に挙がるのは「予定が読めない」ことです。

救急看護師のきついところは、1日のスケジュールが読めないところです。救急は、患者さんの受け入れが重なって忙しくなるときもあれば、患者さんがおらず待機しているときもあります。患者さんがいつ搬送されてくるかわからないため、毎日スケジュールが決まっておらず、待機中も常に緊張感をもち続けなければならない大変さがありました。 出典: recruit.nurse-senka.com

ここで注目したいのは、「待機中も緊張感を持ち続ける」という部分です。 患者さんがいない時間も、完全には休めていない。 この点は、あとで説明する休憩や仮眠の法律上の扱いにも関わってきます。

負担が集まる場面1:救急車が重なる時間と、消える休憩

救急外来で「きつい」と感じる瞬間として一番多く聞くのは、救急車が重なって、気づいたら休憩を取れないまま夕方になっていた、という場面です。

法律上、休憩はどう決まっているか

これ、知らない人が本当に多いんです。 労働基準法では、休憩について次のように決まっています。

・労働時間が6時間を超える場合は、少なくとも45分 ・労働時間が8時間を超える場合は、少なくとも1時間 ・休憩は、労働時間の途中に与える ・休憩時間は、自由に使えるものでなければならない

最後の「自由に使える」がポイントです。 つまり、休憩室にいても「救急車が来たらすぐ戻ること」と指示されている時間は、法律上の休憩とは言えない可能性があります。 これは「手待ち時間」と呼ばれ、労働時間として扱われるのが原則です。

現場で起きていること

実際の救急外来では、「休憩中にホットラインが鳴ったら戻る」という運用が珍しくありません。 患者さんの命がかかっている以上、戻ること自体を否定するつもりはありません。 問題は、戻った分の休憩が別の時間で取り直せているか、取れなかった分が記録されているかです。

相談を受けたケースでは、休憩が取れなかった日も勤怠の記録上は「休憩1時間」と自動で入力され、その分の賃金が支払われていなかった、ということがありました。 これは、本来は労働時間として賃金の対象になる時間が、記録から消えている状態です。

自分でできる対策

・休憩が取れなかった日は、手帳やスマートフォンに日付と時刻をメモしておく ・職場に「休憩が取れなかった場合の申請の仕組み」があるか確かめる ・申請の仕組みがない場合は、上司に「取り直す時間をどう確保すればよいか」を相談する

※未払いの賃金を請求するかどうかといった具体的な判断は、個別の事情によって変わります。このケースでは、労働基準監督署の相談窓口や弁護士に相談してください。

休憩が取れないことを「救急だから仕方ない」で終わらせてしまうと、疲れが積み重なり、結果として続けられなくなります。 記録を残すことは、職場と対立するためではなく、仕組みを変えるための材料を持つためです。

休憩が取れない職場で起きやすい連鎖

休憩が取れない状態が続くと、次のような連鎖が起きやすくなります。 まず、食事や水分をとれず、午後の集中力が落ちます。 集中力が落ちると、確認の漏れや記録のずれが起きやすくなります。 ミスを防ごうとして、終業後に記録を見直す時間が増え、残業が長くなります。 残業が長くなると睡眠が削られ、翌日の集中力がさらに落ちます。

この連鎖の出発点は、個人の能力ではなく「休憩が取れない仕組み」です。 救急外来で「最近ミスが増えた」と自分を責めている人は、まず自分が休憩を取れているかを振り返ってみてください。 原因が休憩の不足にあるなら、努力で解決しようとするより、職場の運用を変えてもらうほうが確実です。 交代で休憩に入る順番を始業時に決めておく、救急車が重なったときに休憩中の人を呼び戻す前に他部署の応援を先に頼む、といった運用で改善している救急外来もあります。

負担が集まる場面2:夜勤と仮眠

救急外来の夜勤は、多くの病院で日中より少ない人数で回しています。 その分、1人が受け持つ範囲が広くなり、体への負担も大きくなります。

仮眠時間は労働時間か

ここも、知らない人が多いポイントです。 夜勤中の仮眠時間が労働時間にあたるかどうかについては、最高裁判所の判決(大星ビル管理事件、2002年)があります。 この判決では、仮眠中であっても、警報や電話があればすぐに対応することが義務付けられている場合は、使用者の指揮命令のもとにあるとして、労働時間にあたると判断されました。

つまり、救急外来の夜勤で「仮眠していても、救急車が来たら起きて対応すること」とされているなら、その仮眠時間は労働時間と評価される可能性がある、ということです。 実際に呼び出しがあったかどうかではなく、「対応する義務があったかどうか」が判断の基準になっています。

夜勤の負担に関する指針

日本看護協会は、看護職の夜勤と交代制勤務について、ガイドラインで次のような目安を示しています。

・勤務と勤務の間は11時間以上あける ・1回の勤務の拘束時間は13時間以内 ・夜勤の連続は2回まで ・夜勤の途中で連続した仮眠時間を設ける ・2回連続の夜勤のあとは、おおむね48時間以上の休息をとる

これは法律ではありませんが、看護職の健康と安全を守るための目安として、多くの病院が参考にしています。 自分の職場の夜勤がこの目安からどれくらい離れているかを知っておくことは、きつさを「気のせい」ではなく「仕組みの問題」として話し合うための出発点になります。

2交代の長い夜勤

2交代制の病院では、夕方から翌朝まで16時間前後の夜勤になることがあります。 救急外来では、深夜から明け方にかけても救急車が来るため、仮眠の時間がまとまって取れないことも少なくありません。 「仮眠室はあるが、実際には使えていない」という声は、救急外来で特によく聞きます。 仮眠が取れない夜勤が続くと、明けの日の運転や判断にも影響が出ます。 自分の体のために、明けの日は車の運転を控える、予定を入れないといった工夫も大切です。

深夜の割増賃金と夜勤手当

夜勤のお金の話も、きちんと知っておきましょう。 労働基準法では、午後10時から午前5時までの間に働かせた場合、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払わなければならないと決まっています。 これは深夜割増賃金と呼ばれるもので、夜勤手当とは別の、法律上の義務です。

これ、混同している人が本当に多いんです。 病院によっては、夜勤1回あたりの定額の「夜勤手当」だけを支払い、深夜割増賃金をその中に含めている場合があります。 含めること自体は、手当の額が法律で計算した割増賃金を下回らなければ認められることがあります。 つまり、夜勤手当の金額が、深夜の時間帯に働いた分の割増賃金を満たしているかどうかが大切だということです。 給与明細に「夜勤手当」しか書かれていない場合は、就業規則の賃金の規定で、深夜割増賃金との関係がどう書かれているかを確かめてみてください。

負担が集まる場面3:暴言、暴力、理不尽な要求

救急外来の「きつさ」として、表に出にくいのがこれです。 酔って来院した人、長く待たされて苛立った家族、痛みで混乱した患者さん。 救急外来は、病院の中でも暴言や暴力に出会いやすい場所です。

待ち時間への怒りが向かう先

救急外来では、緊急度の高い人から先に診るため、受付順に診察が進みません。 軽症の人ほど長く待つことになり、その怒りが受付や看護師に向かいます。 病院側も、診察の順番が受付順ではないことを案内していますが、待っている本人にとっては納得しにくいものです。

法律ではどう扱われているか

患者さんや家族からの著しい迷惑行為は、カスタマーハラスメントとして扱われるようになっています。 厚生労働省は、企業向けのカスタマーハラスメント対策の手引きを公表しており、2025年には、事業主にカスタマーハラスメントへの対策を義務付ける法律の改正が成立しました。

また、精神障害の労災認定の基準も2023年に見直され、顧客や取引先などから著しい迷惑行為を受けたことが、心理的な負荷の具体例として明記されました。 つまり、患者さんからの暴言や暴力でこころの病気になった場合、労災として認められる道が、以前よりはっきり示されたということです。

※実際に労災の申請を考える場合は、労働基準監督署に相談してください。

自分を守るためにできること

・暴言や暴力を受けたら、1人で対応せず、すぐに周りのスタッフを呼ぶ ・日時、場所、言われた言葉、された行為を、できるだけその日のうちに記録する ・職場に報告し、報告した記録を残す ・警備員や警察との連携の手順が職場にあるか確かめる

「患者さんだから我慢しなければ」と思わなくて大丈夫です。 暴力を受けてよい仕事は、この世にありません。 組織として対応する仕組みがあるかどうかは、職場を選ぶときの大切な基準の1つです。

相談を受けたケースから

以前、救急外来で働く看護師の方から、こんな相談を受けたことがあります。 深夜に酔って来院した男性に、待ち時間のことで怒鳴られ、腕をつかまれた。 上司に報告したところ、「救急ではよくあること」と言われ、それ以上の対応はなかった。 その後、同じような時間帯の勤務に入るたびに動悸がするようになった、という内容でした。

このケースで大切だったのは、つかまれた日時と状況をその方がメモに残していたことです。 メモをもとに、改めて看護部に書面で報告し、夜間の警備員の巡回を救急外来に増やしてもらうことができました。 体調の不調については、産業医の面談も受けています。

「よくあること」は、「我慢すべきこと」と同じ意味ではありません。 上司の段階で止まってしまったときは、看護部、安全管理の担当部署、労働組合など、別の窓口に伝える道があります。 ※暴行によるけががある場合は、警察への相談も選択肢に入ります。

負担が集まる場面4:看取りと、心に残る場面

救急外来では、どれだけ手を尽くしても助からない命に出会います。 突然の知らせを受けて駆けつけた家族と向き合うのも、救急外来の看護師の仕事です。

心の負担は「慣れ」では解決しない

「そのうち慣れる」と言われることがありますが、心の負担は慣れで消えるものではありません。 むしろ、感じないふりを続けることで、あとから大きな疲れとして出てくることがあります。 相談の中でも、「何年も平気だと思っていたが、ある日急に仕事に行けなくなった」という話を聞いたことがあります。

心の負担がたまっているときには、いくつかのサインが出やすいと言われています。 ・休みの日も仕事の場面が頭に浮かんで離れない ・眠りが浅く、夜中や明け方に目が覚める ・以前は楽しめていた趣味に気持ちが向かない ・出勤の前になると、体が重くなったり、お腹が痛くなったりする こうしたサインが2週間以上続くときは、「気合いが足りない」と考えず、早めに相談につなげてください。 早い段階で手を打つほど、仕事を続けながら回復できる可能性が高くなります。

職場に振り返りの仕組みがあるか

心に残る場面のあとに、チームで短く振り返る時間を設けている救急外来があります。 処置の良し悪しを話し合うだけでなく、「あの場面でどう感じたか」を言葉にする場です。 こうした仕組みがある職場とない職場では、長く働き続けられる人の割合に差が出る傾向があります。

心の不調と、法律の支え

心の不調が続くときは、職場の産業医や相談窓口を使ってください。 労働安全衛生法にもとづき、一定規模以上の職場ではストレスチェックが行われています。 ストレスチェックの結果、高いストレスがあると判定された人は、希望すれば医師による面接指導を受けることができます。 つまり、「つらい」と感じたときに使える制度が、法律の中に用意されているということです。 この制度を使ったことを理由に不利益な扱いをすることは、禁止されています。

家族と向き合う場面の負担

救急外来の看取りでは、患者さん本人との関わりが短い一方で、家族と向き合う時間が大きな負担になります。 突然の知らせを受けて駆けつけた家族は、状況を受け入れられず、怒りや混乱を看護師に向けることもあります。 医師が説明したあと、家族のそばに残って言葉を受け止めるのは、多くの場合、看護師です。

この場面で「うまく声をかけられなかった」と自分を責める人は少なくありません。 でも、突然の別れの場面に、正しい言葉は存在しないことがほとんどです。 そばにいたこと、静かに時間を作ったこと自体が、家族にとって大切な支えになっています。

自分でできる、小さな区切り

勤務のあとに、心の中で区切りをつける習慣を持っている人もいます。 帰り道で好きな音楽を聴く、更衣室で深呼吸を3回する、家に着いたら着替えてから家族と話す。 小さな行動でも、「仕事の場面」と「自分の生活」の間に線を引く助けになります。 心に残った場面を無理に忘れようとせず、区切りをつけて持ち帰らない、という考え方です。

それでも続く人のやり方

ここまで、救急外来で負担が集まる場面を見てきました。 それでも、救急外来で何年も働き続けている人はたくさんいます。 その人たちは、何が違うのでしょうか。

オンとオフをはっきり分ける

救急の世界で長く働く人の言葉として、こんな話があります。

救急に携わって25年以上経ちますが、この仕事の良さは大きく2つあると思っています。一つは、軽症から重症まで扱うので、飽きずにずっと取り組めることです。さらに、オンオフが明確で休みが取れる。よく「救急はきつい」と言われますが、実際は違います。業務を短い期間に固めて、他の期間で休みを取ることも可能です。 出典: career.m3.com

これは救急医の言葉ですが、看護師にも通じる考え方です。 救急外来の仕事は、病棟のように「受け持ちの患者さんが翌日も続く」わけではありません。 勤務が終われば、その日の患者さんは入院するか帰宅しており、自分の手を離れています。 この特徴を生かして、勤務時間外は仕事のことを考えない、休みはきちんと休む、と決めている人ほど長く続いている印象があります。

「型」を持っている

長く続く人は、どんな患者さんが来ても、まず確かめる順番を体に覚えさせています。 意識、呼吸、循環を確かめる、ホットラインでは聞く項目を決めておく、といった型です。 型があると、予定が読めない状況でも「次に何をするか」で迷わなくなり、疲れ方が変わります。

1人で抱えない

続いている人は、つらい場面のあとに誰かと話しています。 同僚、家族、職場の外の友人、専門の相談窓口。 話す相手がいることは、救急外来で長く働くための大切な条件です。

自分の限界を知っている

「このくらいの夜勤の回数なら続けられる」「この時間帯の勤務は体に合わない」といった自分の限界を知り、それを職場に伝えている人も長く続いています。 限界を伝えることは、わがままではありません。 長く働くための、正当な自己管理です。

学ぶことを、負担ではなく楽しみに変える

救急外来では、診療科を問わずさまざまな患者さんに出会います。 これを「覚えることが多くてきつい」と感じるか、「毎日新しいことを知れる」と感じるかで、同じ仕事でも疲れ方が変わります。 長く続いている人は、学ぶことを自分のペースで楽しんでいる傾向があります。 勉強会に参加する、気になった症例を1つだけ調べる、資格の取得を目標にする。 クリティカルケア認定看護師のような資格を目指す人もいます。 目標があると、きつい日にも「この経験は自分の力になっている」と思える支えになります。

きつさを、求人票と労働条件通知書で先に減らす

救急外来のきつさのうち、仕組みで減らせる部分は、入職前に確かめることでかなり避けられます。

労働条件通知書で確かめること

労働基準法では、使用者は労働者を雇うときに、賃金や労働時間などの条件を書面などで明示しなければならないと決まっています。 これが労働条件通知書です。 2024年4月からは、就業場所や業務の変更の範囲も明示する項目に加わりました。 つまり、「救急外来で採用されたのに、あとで別の部署に異動になるかもしれない」という点も、入職前に書面で確かめられるようになったということです。

確かめておきたいのは、次の点です。

・始業と終業の時刻、休憩時間 ・夜勤の有無と、夜勤の時間帯 ・時間外労働(残業)の有無 ・休日の日数と、休日の決め方 ・就業場所と業務の変更の範囲

求人票と面接で確かめること

・救急の段階(一次、二次、三次)と、年間の救急車の受け入れ台数 ・日勤帯と夜勤帯の看護師の人数 ・月の夜勤の回数の目安 ・仮眠室の有無と、実際に仮眠が取れているか ・休憩が取れなかったときの扱い ・暴言や暴力への組織の対応方法 ・振り返りや相談の仕組み

面接で残業や休憩のことを聞くと、印象が悪くなるのではないかと心配する方もいます。

「どうすれば長く続けられる職場か知りたい」という姿勢で聞けば、きちんと答えてくれる職場のほうが、入ってからも信頼できます。

36協定の話

残業については、36協定(時間外労働と休日労働に関する協定)も関わります。 法律上、時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間と決まっており、特別な事情がある場合でも上限が設けられています。 36協定は職場に掲示するなどして周知することが義務付けられているので、入職後に内容を確かめることができます。

変形労働時間制と、固定残業代

病院の勤務では、変形労働時間制が使われていることがよくあります。 これは、1か月などの一定の期間を平均して、1週間の労働時間が法定の40時間を超えなければ、特定の日に8時間を超えて働かせてもよいという仕組みです。 つまり、16時間の夜勤があっても、月の中で調整されていれば、その日の8時間を超えた部分がすぐに残業になるわけではない、ということです。 ただし、この仕組みを使うには、就業規則などで勤務の割り振りを事前に決めておく必要があります。 直前になって勤務表が変わる職場では、変形労働時間制が正しく運用されていない可能性もあります。

もう1つ、求人票で見かけるのが「固定残業代」です。 毎月一定の時間分の残業代を、あらかじめ給与に含めて支払う仕組みです。 固定残業代がある場合は、何時間分の残業代がいくらなのかが明示されている必要があり、その時間を超えた分は別に支払われなければなりません。 「残業代込み」とだけ書かれている求人は、面接で内訳を確かめてください。

続けるか迷ったときの選択肢

救急外来で働いていて「もう続けられないかもしれない」と感じたときに、選べる道はいくつもあります。

同じ救急外来でも、職場を変える

きつさの多くが仕組みの問題なら、救急外来という仕事を辞めるのではなく、仕組みの整った救急外来へ移るという選択肢があります。 夜勤の回数が少ない、役割分担がはっきりしている、振り返りの時間がある。 こうした条件は、病院によって大きく違います。

働き方を変える

正職員からパートに変える、夜勤のない一般外来に移る、救急外来の経験を生かして訪問看護や健診の仕事に移る、といった道もあります。 働き方を変えたときに収入がどう変わるかは、事前に確かめておきたいところです。 看護師の年収・単価相場では、看護師の年収の水準や、働き方による違いがまとめられているので、今の条件と比べる基準として役立ちます。

第三者と一緒に整理する

迷いが大きいときは、1人で決めずに第三者と整理するのも1つの方法です。 職場・転職・キャリア相談のお仕事では、転職や職場の悩みを面談で一緒に整理する仕事がどのように行われているかが紹介されています。 相談を受ける側の国家資格としてはキャリアコンサルタントがあり、医療の現場を知る人がこの資格を取って、医療職の相談に乗る側に回ることもあります。

休職という選択肢

心や体の不調が大きいときは、辞める前に「休む」という選択肢があることも知っておいてください。 多くの職場では、就業規則に休職の制度が定められています。 また、健康保険に加入している人が病気やけがで働けず、給与が支払われない場合は、一定の条件のもとで傷病手当金を受け取ることができます。 支給される額は、おおよそ給与の3分の2で、支給を始めた日から通算して1年6か月まで受け取れます。

つまり、「今すぐ辞めるか、無理をして働き続けるか」の2択ではなく、「いったん休んで回復してから考える」という道があるということです。 ※休職の条件や傷病手当金の手続きは、職場の人事担当者や加入している健康保険の窓口に確認してください。

運営者の視点から

在宅ワークやフリーランスの市場を20年見てきた立場から言えば、長く働き続けている人ほど、「きつさ」を我慢の問題ではなく、条件と仕組みの問題として捉えています。 これは雇われて働く場合でも、個人で仕事を請ける場合でも同じです。 契約の中身を確かめ、無理のない条件を自分から伝えられる人は、仲介の手数料が乗らない直接のやり取りでも、依頼する側と対等な関係を築きやすく、結果として手取りも心の余裕も厚くなります。

救急外来のきつさは、あなたの弱さのせいではありません。 その多くは、確かめること、記録すること、伝えることで減らせます。 法律はあなたの味方です。

よくある質問

Q. 救急外来がきついと言われる一番の理由は何ですか?

経験者の声で最も多いのは、いつ救急車が来るか分からず1日の予定が読めないことです。救急車が重なって休憩が取れない、夜勤の人数が少ない、暴言や暴力に出会いやすい、看取りの場面が多いといった負担も重なります。ただし、その多くは役割分担や人員配置、休憩の運用など職場の仕組みで減らせる部分です。

Q. 救急外来の休憩中に呼び出されたら、その時間は休憩になりますか?

労働基準法では、休憩は自由に使える時間でなければならないとされています。救急車が来たらすぐ戻るよう指示されている時間は、手待ち時間として労働時間にあたる可能性があります。休憩が取れなかった日は日時を記録し、職場の申請の仕組みを確かめましょう。具体的な判断は労働基準監督署などに相談してください。

Q. 救急外来の夜勤の仮眠時間は労働時間に含まれますか?

最高裁判所の判決では、仮眠中でも呼び出しに対応する義務がある場合は労働時間にあたると判断されています。救急外来の夜勤で、仮眠中も救急車が来たら起きて対応することになっているなら、労働時間と評価される可能性があります。実際の扱いは就業規則や勤務の実態によるため、職場の規定を確認してください。

Q. 救急外来のきつさを入職前に見抜く方法はありますか?

労働条件通知書で休憩や夜勤、残業、業務の変更の範囲を確かめ、面接で日勤と夜勤の人数、月の夜勤回数、仮眠が実際に取れているか、休憩が取れなかったときの扱いを聞くのが有効です。暴言や暴力への組織の対応や、振り返りの仕組みがあるかも確認しておくと、入職後のギャップを減らせます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月20日最終更新:2026年9月22日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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