個人クリニックを辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

中西 直美
中西 直美
個人クリニックを辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

この記事のポイント

  • ✓個人クリニックを辞めたいと感じたときに
  • ✓出ていく前に切り分けておきたいことをまとめました
  • ✓人間関係・院長・業務量・給与・休みにくさのどれが原因か

「もう、あのクリニックに行きたくない」。日曜の夜になると、胸のあたりが重くなる。個人クリニックを辞めたいと感じている方から、こういう声を本当によく聞きます。

まず、お伝えさせてください。辞めたいと思うことは、甘えでも、あなたが弱いからでもありません。個人クリニックという職場には、辞めたくなりやすい構造があります。あなたは一人じゃありません。

ただ、少しだけ立ち止まってほしいんです。辞めたい気持ちの中身を切り分けておくと、次の職場で同じことを繰り返さずに済みます。この記事では、個人クリニックで辞めたくなる理由を整理し、出ていく前に確かめておきたいこと、そして辞めると決めたときの段取りを、順番にお話しします。

個人クリニックで「辞めたい」が起きやすい理由

最初に、個人クリニックという職場の構造を少し見ておきましょう。辞めたい気持ちの原因が「あなた」ではなく「職場の形」にあることが、見えてくるはずです。

看護師向けの転職情報を扱うサイトでは、クリニックで働く看護師が辞めたくなる理由の1つとして、人間関係がこう説明されています。

規模が小さめなクリニックの場合、人間関係が閉鎖的になりがちなため、院長やほかの看護師と合わないと居づらくなってしまいます。職員間で患者さまとの接し方や業務の流れといった方針や価値観に違いがあると、一気に関係がこじれやすいでしょう。また、個人クリニックだと相談相手も探しにくく、悩みを抱えたままになることも。問題が改善されず人間関係に疲れた結果、退職しか解決方法がないと感じるケースもあるようです。 出典: kango-oshigoto.jp

ここに書かれていることは、個人クリニックの形そのものから来ています。

人数が少なく、逃げ場がない

厚生労働省の令和5年の医療施設調査では、一般診療所は全国に104,894施設あり、そこで働く看護師と准看護師は常勤換算で合わせて25万人ほどです。1施設あたりにすると、看護職は2.4人ほど。入院ベッドのある診療所も含めた平均なので、外来だけのクリニックなら、看護スタッフが自分を入れて2人か3人という職場が多いはずです。

2人しかいない職場で、もう1人と合わなかったらどうなるか。休憩室も同じ、昼休みも同じ、明日も来週も同じ顔ぶれです。病院なら異動を待つこともできますが、個人クリニックにはその道がありません。

院長が、上司であり経営者でもある

個人クリニックでは、院長が医師であると同時に経営者です。診療方針も、職場のルールも、給与も、院長が決めます。

病院なら、師長や看護部長が院長との間に入ってくれます。個人クリニックでは、院長の機嫌や考え方が、直接あなたに届きます。院長が経営のことで追い詰められていれば、その緊張も、そのまま職場に流れてきます。

相談できる人がいない

そして、この2つが重なると、「相談できる人がいない」状態が生まれます。院長のことを看護スタッフに相談すれば、院長の耳に入るかもしれない。先輩のことを院長に相談すれば、関係がさらにこじれるかもしれない。

1人で抱え込んで、ある日「もう無理」とあふれてしまう。個人クリニックで辞めたい気持ちが急に強くなるのは、この流れがとても多いんです。

辞めたい気持ちを、5つに切り分ける

では、あなたの「辞めたい」は、何から来ているのでしょう。ここで一度、気持ちを分けてみましょう。紙に書き出すのがお勧めです。頭の中だけで考えていると、いろいろな理由が絡み合って、全部が同じ重さに感じられてしまうからです。

1つ目:人間関係

「先輩の看護師に毎日きつく当たられる」「受付のスタッフに陰で悪口を言われている」「自分だけ会話に入れてもらえない」。

人間関係のつらさは、誰との関係なのかで、打てる手が変わります。相手が1人なのか、職場全体の空気なのか。相手が近いうちに辞める予定があるのか、ずっといる人なのか。ここを書き出してみてください。

2つ目:院長

「院長の機嫌で、毎日の空気が変わる」「患者さんの前で怒鳴られる」「指示がころころ変わる」。

院長との関係は、個人クリニックで一番変えにくいものです。院長は辞めませんし、異動もしません。院長の言動が、あなたの人格を否定するようなものであれば、それは我慢の問題ではなく、ハラスメントの問題になります。これはあとの章でお話しします。

3つ目:仕事の量と範囲

「看護師が自分1人で、休憩も取れない」「受付も掃除も発注も、全部回ってくる」「終わる時間が毎日読めない」。

仕事の量のつらさは、人が増えれば解決することもあります。求人を出しているのか、出していても人が来ないのか。ここは院長と話す余地があるかもしれません。

4つ目:給与と待遇

「病院にいた頃より年収が大きく下がった」「昇給がほとんどない」「残業代がきちんと出ていない」。

個人クリニックは夜勤がないので、夜勤手当の分だけ年収が下がりやすいです。これは構造なので、同じクリニックにいる限り大きくは変わりません。一方で、残業代が払われていないなら、それは待遇の問題ではなく、法律の問題です。

5つ目:休みにくさ

「子どもが熱を出しても、代わりがいないから休めない」「有給があっても、使える空気じゃない」。

少人数の職場では、1人休むと残った人に負担がかかります。これもある程度は構造ですが、有給休暇はあなたの権利です。年に10日以上の有給が付く人には、年5日は必ず取らせることが、職場の側に義務づけられています。

書き出したら、重さを付ける

5つに分けて書き出したら、それぞれに「どれくらいつらいか」を10点満点で付けてみてください。

全部が8点、9点ということは、実はあまりありません。書き出してみると、「院長が9点、仕事量が6点、ほかは3点くらい」のように、重さに差があることに気づくはずです。一番重いものが、あなたの「辞めたい」の芯です。

変えられることと、変えられないこと

切り分けができたら、次は「このクリニックの中で変えられるか」を考えます。

変えられる可能性があること

仕事の量や範囲は、話し合いで変わることがあります。「看護が1人の日は、受付の応援を減らしてもらえませんか」「発注を週1回にまとめてもいいですか」。具体的な提案にすると、院長も判断しやすくなります。

勤務の形も、変えられることがあります。常勤で疲れ切っているなら、パートに切り替える。通し勤務がきついなら、午前だけにしてもらう。個人クリニックは院長の判断ひとつで決まるので、病院よりも柔軟に変えてもらえることがあるんです。

残業代の未払いも、変えられることの1つです。これは話し合いというより、本来払われるべきものを請求するという話です。

変えにくいこと

一方で、変えにくいものもあります。

院長の性格や、診療方針の根っこにある考え方は、スタッフの働きかけで変わることはほとんどありません。院長にとって、それは自分の医療そのものだからです。

長く勤めている先輩のやり方も、変わりにくいです。少人数の職場では、長くいる人のやり方が「職場のルール」になっていて、院長もそれに頼っていることが多いからです。

夜勤手当がないことによる年収の差も、構造なので変わりません。

変えにくいことが芯なら

もし、先ほど書き出した「一番重いもの」が、変えにくいことだったら。そのときは、我慢を続けるより、職場を移ることを前向きに考えていいと思います。

変えられないものに、変わることを期待し続けるのは、とても消耗します。「私の努力が足りないから変わらない」と自分を責める方が多いのですが、そうではありません。変えにくいものは、誰が頑張っても変えにくいんです。

辞める前に、今のクリニックで試せること

変えられる可能性があるものが芯だったなら、辞める前に1つか2つ、試してみる価値があります。少人数の個人クリニックは、うまく伝われば変化が早い職場でもあるからです。

院長に伝えるときは「提案」の形にする

院長に不満を伝えるのは、とても勇気がいりますよね。ここで大切なのは、不満をそのまま伝えるのではなく、「こうしてもらえると続けやすい」という提案の形にすることです。

たとえば、「忙しすぎてつらいです」ではなく、「火曜と金曜は看護が私1人なので、この2日だけ受付の応援を外してもらえると、処置が滞らずに回せます」。こう伝えると、院長は何を判断すればいいのかが分かります。院長にとっても、診療が回るための話として受け取りやすくなります。

伝える時間は、診療の合間ではなく、閉院後の落ち着いた時間を選びましょう。「5分ほどご相談したいことがあります」と先に声をかけておくと、院長も身構えずに聞いてくれます。

勤務の形を変えてみる

常勤で疲れ切っているなら、いきなり辞める前に、パートや短い時間の勤務に変えてもらえないか相談してみてください。個人クリニックは、院長の判断で勤務の形を柔軟に変えられることが多いです。

週5日から週4日に減らすだけで、体と気持ちの余裕がずいぶん変わります。1日空いた日に、ゆっくり休んだり、ほかの仕事を試してみたりすることもできます。

まとまった休みを取る

有給休暇が残っているなら、数日まとめて休んでみるのも1つの方法です。職場から離れてみると、「やっぱり辞めたい」のか「疲れがたまっていただけ」なのかが、少し見えてきます。

少人数の職場では休みを言い出しにくいものですが、早めに日程を伝えれば、院長も調整しやすくなります。閑散期を選べば、周りへの負担も小さくて済みます。

体調が崩れているなら、休職という道もある

心や体の不調で働くのがつらいなら、医療機関を受診して、休職できないか相談する道もあります。個人クリニックでは休職の制度が就業規則に書かれていないこともありますが、まずは院長に相談してみてください。

健康保険に加入していれば、病気で仕事を休んで給与が出ないとき、傷病手当金を受け取れることがあります。辞める前に休むという選択肢があることを、覚えておいてください。

私が「辞めたい」を切り分けたときのこと

ここで、私自身の話を少しさせてください。

以前、少人数の職場で働いていたとき、毎朝駅に向かう足が重くなった時期がありました。とにかく辞めたい。理由を聞かれても、「全部がつらい」としか答えられませんでした。

ある日、家族に言われて、つらいことを紙に書き出してみたんです。すると、一番重かったのは、仕事の中身でも給与でもなく、「1人の先輩と、昼休みに2人きりになる時間」でした。その1時間が、1日全体を暗くしていたんです。

そこで、昼休みの時間を少しずらしてもらえないか、上の人に相談しました。理由は「家の用事で、昼に一度戻りたい日がある」とだけ伝えて。それだけで、驚くほど気持ちが楽になりました。結局、その職場にはそのあと2年いました。

もちろん、切り分けた結果「やっぱり辞めるしかない」となることもあります。それでいいんです。大事なのは、「何から離れたいのか」を分かったうえで辞めること。そうすれば、次の職場を選ぶときに、同じものを避けられます。

それは我慢の問題ではないかもしれない

切り分けの途中で、「これは我慢すべきことなのかな」と迷うことがあると思います。ここで、はっきり線を引いておきたいことがあります。

ハラスメントにあたる言動

職場のパワーハラスメントを防ぐための措置は、令和4年4月から、中小規模の事業主にも義務づけられています。個人クリニックも例外ではありません。

次のような言動が繰り返されているなら、それは我慢する問題ではなく、ハラスメントの可能性があります。

・患者さんや他のスタッフの前で、人格を否定するように怒鳴る ・物を投げる、机を叩くなどして威圧する ・明らかに終わらない量の仕事を1人に押しつける ・理由なく仕事を与えない、会話や情報から外す ・休日や夜間の私生活に、必要以上に干渉する

こうしたことが続いているなら、日付、言われたこと、その場にいた人をメモに残しておいてください。スマートフォンのメモで十分です。

残業代や休憩の問題

「診療が延びた分は、残業代が出ない」「昼休みも電話番で休めない」。こうしたことも、我慢の問題ではありません。働いた時間には賃金が払われるべきですし、休憩中に仕事を指示されて自由に離れられないなら、それは休憩ではありません。

出勤と退勤の時刻を、自分でも記録しておきましょう。タイムカードがない職場なら、なおさらです。

相談できる場所

職場の中に相談相手がいないときは、外に目を向けてください。各地の労働局や労働基準監督署の中にある総合労働相談コーナーでは、ハラスメント、残業代、辞め方など、働くことの悩みを無料で聞いてもらえます。

心や体に不調が出ているなら、それを最優先にしてください。眠れない日が続く、食欲がない、朝になると涙が出る。そういうときは、職場の問題を解決する前に、まず医療機関に相談することをお勧めします。あなたの体は、どの職場よりも大切です。

気持ちが一番つらい時期に、決めないほうがいいこと

辞めることを決めるのは、あなたの自由です。ただ、気持ちが一番つらいときに勢いで決めると、あとで「もう少し考えればよかった」と感じることがあります。次のような時期は、大きな決断を少しだけ先に延ばしてみてください。

繁忙期のさなか

内科や小児科なら秋から冬の予防接種の時期、耳鼻科なら春の花粉症の時期。個人クリニックには、1年のうちで特に忙しい時期があります。この時期は誰でも疲れがたまり、「辞めたい」気持ちが強くなりやすいです。

繁忙期が終わって落ち着いたときに、同じ気持ちが続いているか。それを確かめてから決めても、遅くはありません。

大きなミスや、きつく叱られた直後

ミスをした直後や、院長に強く叱られた直後は、自分を責める気持ちと、職場から逃げたい気持ちが一気にふくらみます。このときの「辞めたい」は、職場そのものより、その出来事への反応であることが多いんです。

数日たって、気持ちが少し落ち着いてから、もう一度5つの切り分けをしてみてください。

眠れていないとき

睡眠が足りていないと、物事を悪いほうに考えやすくなります。夜中に「明日辞めると言おう」と決めても、朝になると気持ちが変わっていることはよくあります。

眠れない日が続いているなら、辞めるかどうかを決める前に、まず眠れるようにすることを優先してください。

次を決めずに辞めてもいいとき

一方で、次の職場が決まっていなくても、すぐに離れたほうがいい場合もあります。ハラスメントが続いている、体調を崩して通勤すら難しい、残業代が払われない状態が続いている。こういうときは、自分を守ることを最優先にしてください。看護の資格は、少し休んでからでも必ず活かせます。

辞めると決めたときの段取り

切り分けて、考えて、それでも「辞める」と決めたなら。ここからは、できるだけ穏やかに出ていくための段取りです。

いつまでに伝えるか

期間の定めのない雇用契約なら、民法では、辞める意思を伝えてから2週間で辞められることになっています。ただ、クリニックの就業規則に「1か月前までに申し出ること」などの決まりがあることが多いので、まず就業規則を確認しましょう。

個人クリニックの場合、看護スタッフが1人抜けると、次の人が来るまで診療に影響が出ます。円満に辞めたいなら、就業規則の期間より少し余裕を持って、1か月半から2か月前に伝えると、話がこじれにくくなります。

ただし、ハラスメントを受けているなど、心身に負担が大きい場合は、無理に長く残る必要はありません。自分を守ることを優先してください。

誰に、どう伝えるか

個人クリニックでは、伝える相手は院長です。事務長がいる場合でも、最終的に決めるのは院長なので、院長に直接伝えるのが基本です。

伝えるタイミングは、診療が終わって落ち着いた時間を選びましょう。「少しお話ししたいことがあるので、お時間をいただけますか」と、先に時間をもらうのがお勧めです。

理由は、正直に全部を話す必要はありません。「家庭の事情で」「働き方を見直したくて」など、角の立たない言い方で大丈夫です。院長への不満を理由にすると、残りの期間が気まずくなることが多いからです。

引き止められたら

少人数のクリニックでは、引き止められることがよくあります。「次の人が決まるまで待ってほしい」「給料を上げるから」。

心が揺れるのは自然なことです。ただ、先ほど切り分けた「一番重いもの」が、その条件で解決するかを考えてみてください。給与が芯なら、昇給で解決するかもしれません。院長との関係が芯なら、給与が上がっても、つらさは変わりません。

「次の人が決まるまで」と言われたら、いつまでなら残れるかを、自分から日付で伝えましょう。期限を決めずに残ると、ずるずる延びてしまいます。

有給休暇と引き継ぎ

残っている有給休暇は、辞める前に使うことができます。最終出勤日と退職日の間に有給を充てる形がよく使われます。

引き継ぎは、自分がいなくなったあとに困らないよう、書き残しておくと喜ばれます。個人クリニックでは、あなたの頭の中にしかない情報が意外と多いんです。

・医療材料や薬品の発注先と、発注のタイミング ・器具の滅菌の手順と、機械の扱い方 ・定期的に来る患者さんの注意点(採血しにくい、アレルギーがある等) ・予防接種の予約の管理方法

これを1枚にまとめて渡すだけで、「最後まできちんとしてくれた」という印象が残ります。同じ地域の医療機関は、意外なところでつながっています。円満に辞めておくことは、次の職場のためでもあります。

辞めたあとのお金

雇用保険に入っていた方は、失業手当を受け取れることがあります。自己都合で辞めた場合は、手当が出るまでに待つ期間がありますが、令和7年4月からは、この期間が原則1か月に短くなりました。

ハラスメントや、残業代の未払いなどが理由で辞めた場合は、「特定受給資格者」などとして扱われ、待つ期間がなくなることがあります。メモや記録が、ここでも役に立ちます。手続きの詳しい条件は、住んでいる地域のハローワークで確認してください。

次の職場で、同じことを繰り返さないために

最後に、次の職場を選ぶときのことをお話しします。せっかく切り分けたのですから、それを次に活かしましょう。

「一番重かったもの」を、次の職場で確かめる

人間関係が芯だったなら、次は看護スタッフの人数が多い職場や、勤続年数の長い人が多い職場を選ぶと、同じつらさを避けやすくなります。面接で「看護スタッフは何名体制ですか」「長く勤めている方は多いですか」と聞いてみてください。

院長との関係が芯だったなら、院長と直接やり取りする場面の少ない、規模の大きいクリニックや病院の外来を考えてみてもいいかもしれません。見学で、院長がスタッフにどう話しているかを見ておくと安心です。

給与が芯だったなら、自分の経験が相場と比べてどうなのかを先に知っておきましょう。看護師の年収・単価相場には、看護師の年収や時給の水準がまとまっています。今の待遇が相場より低いのか、夜勤がないことによる差なのかが分かると、次の職場に何を求めるべきかがはっきりします。

個人クリニックの中でも、職場によって違う

「個人クリニックはもうこりごり」と感じている方もいると思います。ただ、個人クリニックとひとくくりにしても、中身は職場によってかなり違います。

看護スタッフが5人以上いるクリニックなら、合わない人がいても、シフトで顔を合わせる日を減らせます。複数のクリニックを運営している医療法人なら、院長とは別に事務長や看護主任がいて、間に入ってくれることがあります。開業から年数がたって、スタッフの入れ替わりが少ないクリニックもあります。

反対に、開業したばかりのクリニックは、仕組みがまだ固まっておらず、院長もスタッフも手探りの状態です。自由に意見を言える良さがある一方で、方針が落ち着くまで変化が多くなります。

今のつらさの芯が「個人クリニックという形」なのか、「今のクリニックの院長やメンバー」なのか。ここも切り分けておくと、次の職場探しで選択肢を必要以上に狭めずに済みます。

看護の外に目を向ける選択肢

「もう臨床はいいかな」と思う方もいます。それも1つの答えです。

医療の現場で患者さんの話を聞いてきた経験は、働く人の悩みを聞く仕事に活かせます。職場の人間関係や、仕事と家庭の両立に悩む人の話を聞き、次の一歩を一緒に考える仕事の中身は、職場・転職・キャリア相談のお仕事にまとまっています。今のあなたのように「辞めたい」と感じた経験があることは、この仕事では相手の気持ちに寄り添う力になります。国家資格として学ぶなら、キャリアコンサルタントの受験資格や試験の内容も確認してみてください。

医療の知識を活かしながら、在宅でできる仕事を少しずつ始める方もいます。どんな仕事があるかは、看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】で紹介されています。すぐに転職しなくても、「ほかにも道がある」と知っておくだけで、今の職場での息苦しさが和らぐことがあります。

運営者として見てきたこと

フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、職場を移ったあとに長く安定する人ほど、辞める前に「何から離れたかったのか」を言葉にしています。そして次の場所では、1つの職場や1人の相手にすべてを預けすぎないよう、少しずつ働き方を分散させていきます。

たとえば、臨床の仕事を週に数日にして、残りの時間で依頼者と直接やり取りする在宅の仕事を持つ。間に仲介の手数料が入らない分、同じ依頼額でも手元に残る分が厚くなり、依頼する側も同じ予算でより多くを頼めます。収入の柱が複数あると、1つの職場の人間関係で追い詰められることが少なくなります。

辞めたいと思ったあなたは、弱いのではありません。自分の働き方を見直す時期に来ている、というサインです。今日できることは、紙を1枚用意して、つらいことを5つに分けて書いてみること。そこから、次の一歩が見えてきます。

よくある質問

Q. 個人クリニックを辞めたいのは甘えでしょうか?

甘えではありません。個人クリニックは看護スタッフが2人から3人程度の職場が多く、異動もないため、人間関係や院長との相性の問題が逃げ場のないつらさになりやすい構造があります。辞めたい気持ちを人間関係、院長、仕事量、給与、休みにくさに分けて書き出すと、何から離れたいのかが見えて、次の判断がしやすくなります。

Q. 個人クリニックを辞めるときは、何か月前に伝えればいいですか?

法律上は期間の定めのない雇用なら2週間前で辞められますが、就業規則で1か月前などと決まっていることが多いので、まず確認してください。少人数のクリニックは1人抜けると診療に影響が出るため、円満に辞めたいなら1か月半から2か月前に院長へ伝えると話がこじれにくくなります。心身に負担が大きい場合は無理をしないでください。

Q. 院長に引き止められたら、どうすればいいですか?

辞めたい理由の中で一番重いものが、提示された条件で解決するかを考えてみてください。給与が理由なら昇給で解決することもありますが、院長との関係が理由なら条件が変わってもつらさは続きます。次の人が決まるまで残ってほしいと言われたら、いつまでなら残れるかを自分から日付で伝え、期限を決めておくことが大切です。

Q. 院長の言動がパワハラかもしれないときの相談先はありますか?

各地の労働局や労働基準監督署にある総合労働相談コーナーで、無料で相談できます。パワーハラスメントを防ぐ措置は令和4年4月から中小規模の事業主にも義務づけられており、個人クリニックも対象です。相談の前に、いつ、誰に、何を言われたか、その場に誰がいたかをメモに残しておくと、状況を正確に伝えやすくなります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月9日最終更新:2026年9月16日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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