企業主導型保育園を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
企業主導型保育園を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

この記事のポイント

  • ✓企業主導型保育園を辞めたいと感じたとき
  • ✓その理由が園の構造なのか人間関係なのか自分の状態なのかを切り分ける方法をまとめました
  • ✓転職しても解決しない問題と

企業主導型保育園を辞めたいと検索する人が見ているのは、たいてい「辞めてもいいという後押し」です。ただ、その前にやっておくべきことがあります。結論から言うと、辞めたい理由を3つに切り分けてください。園の構造から来る問題、職場の人から来る問題、自分の心身の状態から来る問題。この切り分けをしないまま転職すると、次の園でも同じ壁に当たります。企業主導型保育園は園ごとの差が極端に大きい一方で、制度そのものに起因する問題も抱えています。どちらが原因かによって、打つ手はまったく変わります。

辞めたい理由を、まず3つに切り分ける

切り分けの作業は紙とペンでできます。いま辞めたいと思っている理由を、思いつくまま10個ほど書き出してください。そのうえで、それぞれに印を付けます。

Aは、園の構造から来ているもの。職員が足りない、書類の時間がない、施設長が保育を分かっていない、行事の準備が時間外になる、園児数が読めない。これらは特定の誰かのせいではなく、その園の作り方の結果です。

Bは、特定の人から来ているもの。主任の言い方がきつい、保護者の1人から執拗に指摘される、同僚が仕事を押し付けてくる。これは相手が変われば消えます。

Cは、自分の心身の状態から来ているもの。朝起きられない、園に向かう電車で涙が出る、以前は気にならなかったことに苛立つ、家に帰ってから何もできない。これは原因ではなく結果である場合が多く、AとBが積み重なった末に出てきます。

この分類をやると、何が見えるか。Aだけが並んでいるなら、転職は有効です。園の構造は個人の努力では変わらないからです。Bだけが並んでいるなら、異動や配置替えの相談、あるいは相手との距離の取り方の変更で解決する可能性があります。Cが並んでいるなら、辞めるかどうかの判断そのものを、いま下すべきではありません。

順番も重要です。Cが強く出ているときに転職活動を始めると、判断が雑になります。「ここより悪くなければどこでもいい」という状態で園を選ぶと、また同じ場所に行き着きます。実際、保育の転職で1年以内に再度辞める人の多くは、この状態で次を決めています。

書き出した10個を見て、Cが半分以上を占めているなら、まず休むことを優先してください。有給が残っているなら使う、診断を受ける必要があるなら受ける。辞める判断はそのあとでも間に合います。逆に、Aが大半を占めているなら、次の園選びの条件が明確になったということなので、動き出す価値があります。

切り分けA:園の構造から来ている問題

企業主導型保育園に固有の構造を、順に挙げます。ここに書かれていることが自分の不満と一致するなら、それはあなたの努力不足ではありません。

第一に、職員数の少なさです。定員12名から19名という小規模な園が多く、配置される保育従事者は4人から6人程度です。1人が休めば配置基準の維持が難しくなり、系列園から応援を呼べる法人でなければ、残った人で回すしかありません。この構造がある限り、有給は取りにくく、体調不良でも休みにくい状況が続きます。

第二に、施設長に保育の資格要件がないことです。設置企業の総務部門の社員が兼務している園があり、現場の判断を仰げないまま保育士が決めることになります。相談しても保育の観点からの答えが返ってこない状況が続けば、疲弊するのは当然です。

第三に、運営面の整備状況にばらつきがあることです。制度全体の課題として、次のような指摘が報じられています。

実際、制度を所管する内閣府から委託された「児童育成協会」が17年度、800カ所を調べたところ、76%で保育計画などに不備があった。今回のトラブルでは、自治体や公的機関が保育内容に責任を持たず、突然の休園という事態を食い止められない構造が浮き彫りになった。 出典: sukusuku.tokyo-np.co.jp

保育計画に不備があった施設が調査対象の大半を占めたという数字は、個別の園の怠慢というより、制度の立ち上がり方の問題を示しています。認可保育園なら自治体の指導監査が定期的に入り、書類の様式も自治体から示されます。企業主導型保育園では、その支援が薄い時期がありました。あなたの園で書類の様式が整っていないなら、それは前任者の責任ではなく、参照できる型がなかったからかもしれません。

第四に、園児数の変動です。従業員枠が中心の園では、設置企業の異動や退職がそのまま在籍数に響きます。来年度の見通しが立たない状態で働くのは、精神的な負荷になります。

これらはいずれも、個人が頑張って変えられるものではありません。もし辞めたい理由がここに集中しているなら、園を変えることは合理的な選択です。ただし、次の園でも同じ構造を持つ園を選べば、同じことが起きます。園選びの条件として、定員規模、常勤の人数、施設長の経歴、系列園の有無を確認する必要があります。

切り分けB:特定の人から来ている問題

少人数の職場では、1人との関係が職場全体の印象を決めてしまいます。定員12名の園で職員が5人なら、合わない相手が1人いるだけで、逃げ場がありません。

現場からは、管理職の資質に関する厳しい声も出ています。

企業主導型保育園に勤務していますが、園長は資格がないし、仕事中でも外に行って煙草は吸うし資格もない、社会経験もない人が、普通に園長と言えるのが信じられない。我慢できず退職していく保育士もいる。片付けも出来ない人で、事務室はゴミだらけ、個人情報管理もしていないし、園児の情報ファイルも出したまま。ありえません。 出典: sukusuku.tokyo-np.co.jp

この声で注目すべきなのは、個人情報の管理と園児のファイルの扱いに触れている点です。人間関係の不満に見えて、実は運営上の問題が混ざっています。ここは切り分けが必要なところです。

相手の性格が合わないという話であれば、対処の仕方はあります。会話の量を減らす、業務連絡は口頭ではなく記録に残る形にする、相談相手を園の外に持つ。これらで乗り切れる場合があります。

一方、個人情報の放置、安全管理の不備、園児への不適切な関わりといった問題が混ざっている場合は、話が変わります。これは我慢で解決してよい種類のものではありません。企業主導型保育園には、設置企業の本社という報告先があります。園の中で止まっている問題を、運営法人の担当部署に上げる経路が存在します。認可保育園と違って自治体の窓口が使いにくい分、この経路の使い方を知っておく価値があります。

もうひとつ、保護者との関係で消耗しているケースもあります。企業主導型保育園の保護者は設置企業や提携企業の従業員なので、園での出来事が会社の中で話題になることがあります。対応に差を付けないこと、伝える内容をあらかじめ決めておくことが、自分を守る仕組みになります。

Bに分類された問題は、原則として園を変えれば消えます。ただし、次の職場にも合わない人はいます。合わない人がいても仕事は続けられる、という状態を作れるかどうかが、長期的には効いてきます。

切り分けC:自分の心身の状態から来ている問題

Cに印が付いた項目が多いときは、判断の順序を変える必要があります。

見分けるための目安を挙げます。以前は気にならなかったことに苛立つようになった。休日に何もする気が起きない。眠れない、あるいは眠りすぎる。出勤前に体調が悪くなる。ミスが増えた。人と話すのが億劫になった。これらが2週間以上続いているなら、疲労の蓄積として扱うより、専門家に相談する段階に来ています。

ここで重要なのは、この状態のときに重大な決断をしないということです。退職の意思表示は、いったん出すと撤回が難しくなります。転職先の決定も同じです。判断力が落ちている自覚がないまま決めたことは、回復してから後悔することがあります。

使える手段はいくつかあります。有給休暇が残っているなら、まず使ってください。企業主導型保育園は職員が少ないので取りにくいのは事実ですが、権利として存在します。運営法人が大きい企業であれば、従業員向けの相談窓口が設けられていることがあります。保育園の職員も、その法人の従業員です。園の中には相談できなくても、法人の窓口なら話せる場合があります。

体調が理由で働けない期間が生じたときの制度についても、知っておくだけで選択肢が増えます。健康保険の傷病手当金のように、一定の条件を満たすと給付を受けられる仕組みが存在します。制度の詳細や自分が対象になるかは、加入している健康保険の窓口で確認してください。辞める以外の選択肢があるかどうかを知らないまま辞めると、生活の面でも不利になります。

そして、園の外に相談先を作ることです。少人数の職場では、園の中の誰に話しても全員に伝わる可能性があります。職業選択や職場の悩みの相談を担う国家資格の専門職があり、キャリアコンサルタントがどういう場面で何をしてくれるのかを知っておくと、必要になったときにすぐ頼れます。悩みが深くなってから探すと、探すこと自体が負担になります。

園を変えても解決しないこと、変えれば解決すること

切り分けの結果を、転職で解決するかどうかという軸で並べ直します。

園を変えれば解決する可能性が高いのは、次のものです。職員数の不足、書類の時間が確保されていないこと、施設長が保育を分かっていないこと、行事の負担、開所時間の長さ、通勤の距離、時給や給与の水準、特定の同僚や上司との関係。これらは園ごとに差があるので、条件を確認して選べば変わります。

園を変えても解決しない可能性が高いのは、次のものです。保育という仕事そのものへの疲れ、子どもと関わることへの負担感、保護者対応全般への苦手意識、記録や書類作業への強い抵抗、シフト勤務そのものへの不適合。これらは職種の性質なので、園を変えても付いてきます。

後者に当てはまる場合、選択肢は職種を変えることになります。保育の現場経験は、園の外でも使えます。保育に関わる事務や運営支援の仕事、子育て支援の相談業務、人の働き方や職場の悩みを扱う領域など、隣接する分野は複数あります。職場・転職・キャリア相談のお仕事のような領域では、現場を知っている人の理解力が直接の強みになります。

判断に迷うときは、いまの仕事の中で「これは嫌ではない」と思える部分を探してみてください。子どもと遊ぶ時間は苦ではないが保護者対応が辛いのか。保育そのものは好きだが人手不足が辛いのか。前者なら職種を変える方向、後者なら園を変える方向です。全部が嫌だと感じるなら、Cの状態にある可能性が高いので、判断を急がないでください。

金銭的な条件で迷っているなら、相場を確認してから判断するのが確実です。保育士の年収・単価相場には正職員、契約、パートそれぞれの水準がまとまっているので、自分の待遇が相場のどこにあるかが分かります。相場より低いなら交渉か転職の材料になり、相場並みなら金銭以外に不満の原因があるということになります。

自分では動かせないリスクを、どう見積もるか

辞めたい理由とは別に、企業主導型保育園には構造的なリスクがあります。ここを知らずに残る判断をすると、後から慌てることになります。

最大のものが、閉園です。企業主導型保育園は設置企業が運営しているので、その企業の経営判断で閉じることがあります。認可保育園であれば自治体が関与しますが、この制度では公的機関が保育内容に責任を持つ仕組みが薄く、突然の休園を食い止める経路が整っていません。先に引用した報道が指摘しているのも、まさにこの点です。

閉園の兆候として現れやすいものを挙げます。園児の在籍数が定員を大きく下回る状態が続いている。設置企業の業績に関する報道が出ている。備品の補充が止まった。職員の補充をしなくなった。運営法人の担当者が変わって、園への関与が減った。これらが重なってきたら、情報収集を始める段階です。

もうひとつのリスクが、運営方針の急な変更です。設置企業の人事や経営体制が変われば、保育の方針も変わります。地域枠を縮小する、開所時間を変える、職員を削減する。こうした決定は現場の意見を経ずに下りてくることがあります。

こうしたリスクに対して個人ができるのは、自分の市場価値を維持しておくことです。資格を取る、記録や指導計画の作成経験を積む、複数の年齢の担当を経験する。これらは園がなくなっても持ち出せます。逆に、特定の園のやり方にだけ習熟しても、外では評価されません。

在籍中に転職市場を定期的に見ておくことも有効です。応募するかどうかは別として、どういう条件の求人が出ているかを知っていれば、いざというときに焦りません。企業主導型保育園の求人は入れ替わりが早いので、半年に一度見るだけでも相場感が保てます。

辞めると決める前に、やっておくこと

切り分けの結果、辞める方向に傾いたとしても、その前にやっておくべきことがあります。

第一に、記録を残すことです。労働時間の実態、時間外の作業、有給の取得状況、受けた指示の内容。手帳でもスマートフォンのメモでも構いません。後になって未払いの時間外手当を請求する、あるいは離職の理由を証明する必要が出たときに、記録がなければ何も主張できません。

第二に、就業規則と雇用契約書を確認することです。退職の申し出は何日前までか、有給の残日数は何日か、退職金の規定があるか。小規模な園では就業規則が見当たらないこともありますが、常時10人以上を雇用する事業所には作成と周知の義務があります。運営法人単位で作られていることが多いので、本社の人事部門に問い合わせれば入手できます。

第三に、転職の条件を書き出すことです。譲れない条件を3つまで絞ってください。通勤時間、給与、定員規模、開所時間、担任の有無、行事の量。全部を満たす園は存在しないので、優先順位を決めておかないと選べません。

第四に、在職中に動き始めることです。保育の求人は年間を通じて出ていますが、年度替わりの前後に集中します。退職してから探すと、生活費の不安から条件を妥協しやすくなります。

第五に、辞めることを誰に最初に伝えるかを決めることです。同僚に先に話すと、伝わり方が制御できなくなります。少人数の園ほど、情報は速く回ります。最初に伝えるのは、直属の責任者か、運営法人の担当者です。

辞めると決めたあとの手順

実際に退職する段になってからの手順を整理します。

意思表示は、口頭ではなく書面で残る形にしてください。民法上、期間の定めのない雇用契約は申し出から2週間で終了できますが、就業規則で1か月前と定めている事業所が多くなっています。現実的には、園児と保護者への影響を考えて年度末に合わせる人が多いのですが、体調を崩している場合は無理に合わせる必要はありません。

引き継ぎは、書面にして残すのが確実です。担当していた園児の情報、保護者との経緯、進行中の書類、備品の管理状況。口頭の引き継ぎは、後任が入るまでに時間が空くと消えてしまいます。小規模園では後任がすぐに決まらないことが多いので、紙かデータで残しておくと、残る人の負担が減ります。

有給休暇は、退職前に消化できます。取得を拒否することは原則としてできません。ただし、人員が少ない園では調整が必要になるので、退職日から逆算して早めに申し出てください。

退職後の書類も確認します。離職票、雇用保険被保険者証、源泉徴収票、年金手帳。離職票は失業給付の手続きに必要で、発行までに時間がかかることがあります。退職時に「いつ頃送付されますか」と確認しておくと、後の手続きが滞りません。

離職理由の記載にも注意してください。自己都合か会社都合かで、失業給付の受給開始時期が変わります。実態が会社都合に近いのに自己都合として処理されそうなときは、記録を根拠に主張できます。ここでも、在職中に記録を残しておいたことが効いてきます。

残るという選択を取るなら、何を変えるか

辞めるかどうかの二択で考えると、行き詰まります。残りながら状況を変える手もあるので、選択肢として書いておきます。

まず、勤務形態を変える交渉です。正職員からパートへ、フルタイムから短時間へ。収入は下がりますが、責任範囲と拘束時間が減ります。企業主導型保育園は職員が少ないので、辞められるより時間を減らしてでも残ってほしいと考える園は多くあります。「このままでは続けられないので、勤務時間を減らす形で相談したい」と切り出すと、話が進むことがあります。

次に、担当を変える相談です。0歳児の担当が負担なら1歳児へ、書類が負担なら書類の少ない役割へ。少人数の園では役割が固定されがちですが、固定されているだけで、変えられないわけではありません。言わなければ、園は今のままでよいと判断し続けます。

3つ目が、業務の線引きを明文化することです。時間外の行事準備、持ち帰りの書類、休日の連絡対応。これらが慣習として続いている場合、「勤務時間内に収める形にしたい」と提案してみる価値があります。小規模園の慣習は、誰かが意識的に作ったものではなく、何となく続いているだけのことが多いからです。

4つ目が、運営法人の担当部署に相談することです。園の中で解決しない問題でも、本社の人事や総務が知れば動く場合があります。設置企業にとって保育園は福利厚生施設なので、職員が定着しないことは経営上の問題として認識されます。園長の頭越しになるので気は引けますが、企業主導型保育園にはこの経路が存在します。

5つ目が、期限を区切ることです。「あと半年やってみて、変わらなければ辞める」と決めるだけで、消耗の質が変わります。終わりが見えない状態が最も辛いので、自分で期限を置くこと自体に効果があります。ただし、心身の不調が出ている場合はこの限りではありません。期限を区切って耐えることが、状態を悪化させることもあります。

辞めた人が、次にどこへ行っているか

実際の移動先を、選択肢として整理しておきます。それぞれ何が変わるかを併記します。

認可保育園に移る人が最も多くなります。変わるのは、職員数と運営の安定性です。定員60名以上の園なら職員が20人前後いるので、1人休んでも回ります。自治体の指導監査が定期的に入るため、書類の様式も整っています。その代わり、園児1人あたりに割ける時間は減り、行事の規模は大きくなります。少人数でじっくり関わりたくて企業主導型を選んだ人には、逆方向の変化になります。

小規模認可保育園に移る人もいます。定員19名以下という規模は企業主導型と同じですが、認可なので自治体の関与があり、運営の安定性が違います。規模の良さを保ったまま、制度面の不安定さだけを外せる選択肢です。募集の数は多くありませんが、条件が合えば有力です。

別の企業主導型保育園に移る人もいます。同じ制度でも園による差が大きいので、これは十分に合理的です。ただし、選ぶ基準を持たないまま移ると同じことが起きます。定員、常勤の人数、施設長の経歴、系列園の有無、母体の業種。この5点を確認してから決めてください。

医療機関や介護施設に併設された保育室へ移る人もいます。母体が医療や介護の法人は、シフト管理や人員配置の考え方が確立していることが多く、運営が整理されている傾向があります。保護者が医療職なので体調管理の基準が明確で、曖昧な判断を求められにくいという特徴もあります。現場の勤務実態を知っておくと連携しやすいので、看護師の年収・単価相場のページで夜勤や交代制の仕組みを確認しておくと、保護者の生活リズムが理解しやすくなります。

保育以外の職種へ移る人もいます。子育て支援の相談窓口、児童館や学童保育、保育用品や教材を扱う企業、保育施設の運営支援。いずれも保育の現場経験が評価されます。給与水準は職種によって差が大きいので、同じ法人内の別職種を検討するなら、介護職員の年収・単価相場のような近接職種の水準と比べておくと、判断の材料になります。

どの道を選ぶにしても、共通して言えるのは、次を決める前に「いまの園の何が嫌だったのか」を言語化しておくことです。これができていないと、面接で聞かれたときに答えられず、条件の確認も漏れます。切り分けの作業は、辞める理由を整理するためだけでなく、次を選ぶための材料でもあります。

20年この市場を見てきた立場からの観察

フリーランスと在宅ワークの市場を長く運営してきた立場から見ると、辞めるかどうかで悩んでいる人の相談には、共通する構造があります。多くの場合、辞めること自体が問題なのではなく、辞めた後にどうするかの見通しが立っていないことが不安の正体です。

運営者として見てきた限りでは、次の場所で早く落ち着く人は、辞める前に自分の持っているものを棚卸ししています。何年やったか、どの年齢の担当を経験したか、書類はどこまで書けるか、保護者対応で何を身につけたか。これを言語化できている人は、面接でも交渉でも強くなります。逆に、「とにかくこの園を出たい」だけを持って動いた人は、条件を比べる基準を持たないまま次を決めてしまいます。

もうひとつ、働く形そのものを変える選択肢についても触れておきます。中間にマージンが乗らない直接の取引では、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側は手取りが厚くなります。これは単価が高いという話ではなく、削られる分がないという話です。組織に所属する働き方だけが選択肢ではない、という前提を持っておくと、いまの職場に過度に依存せずに済みます。所属を辞めることと、その仕事を辞めることは同じではありません。

企業主導型保育園の求人を継続的に見ていて感じるのは、同じ園が何度も同じ条件で募集を出しているケースがあることです。半年以上出続けている募集は、人が定着していない理由があります。次の園を選ぶとき、その園の過去の募集履歴を確認するだけで、かなりの情報が得られます。求人サイトで園名を検索すれば、過去の掲載が残っていることがあります。

最後にひとつ。辞めたいと思った時点で、あなたはすでにその職場を客観的に見始めています。この状態は、実は貴重です。慣れきってしまうと、おかしいことがおかしいと感じられなくなります。いま感じている違和感は、記録しておく価値があります。次の園を見学したときに、同じ違和感があるかどうかを確かめる基準になるからです。

よくある質問

Q. 企業主導型保育園を辞めたい理由が人手不足の場合、転職すれば解決しますか?

園によって職員数は大きく違うので、解決する可能性はあります。ただし定員12名から19名の小規模園は構造的に職員が少なく、1人休むと回らない状況は共通しています。次を選ぶときは定員規模だけでなく、常勤保育士の人数と系列園の有無を確認してください。系列園がある法人なら応援を回せるため、欠員時の負荷が違います。

Q. 退職はいつまでに伝えればよいですか?

期間の定めのない雇用契約であれば、民法上は申し出から2週間で終了できます。ただし就業規則で1か月前と定めている事業所が多いため、まず就業規則を確認してください。小規模園では後任がすぐ決まらないことが多いので、余裕を持って伝えるほうが引き継ぎは楽になります。体調を崩している場合は、無理に年度末まで合わせる必要はありません。

Q. 園が閉園しそうな兆候はどこに出ますか?

園児の在籍数が定員を大きく下回る状態が続く、備品の補充が止まる、職員の補充をしなくなる、運営法人の担当者の関与が減る、といった変化が重なったときは情報収集を始める段階です。企業主導型保育園は設置企業の経営判断で運営されるため、認可保育園より閉園のリスクが構造的に高くなります。在籍中から市場価値を保っておくことが備えになります。

Q. 辞めたいけれど次が決まらず不安です。先に辞めてよいですか?

可能であれば在職中に転職活動を始めることをすすめます。退職後に探すと生活費の不安から条件を妥協しやすく、同じ理由で再び辞めることになりかねません。ただし心身の不調が2週間以上続いている場合は別です。その状態では判断力が落ちているため、まず有給の取得や専門家への相談を優先し、回復してから決めるほうが結果的に良い選択ができます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年7月7日最終更新:2026年9月17日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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