企業主導型保育園で任される仕事|ここでしか経験できないことは何か

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
企業主導型保育園で任される仕事|ここでしか経験できないことは何か

この記事のポイント

  • ✓企業主導型保育園の仕事内容を
  • ✓保育そのものと保育以外の業務に分けて整理しました
  • ✓認可保育所では経験できない仕事が何かを具体的に解説します

企業主導型保育園の仕事内容は、認可保育所と何が違うのか。結論から言うと、保育そのものはほとんど変わりません。変わるのは、保育以外の部分です。

具体的には、入園の問い合わせ対応から契約手続きまでを園が直接行うこと、利用企業との共同利用契約にかかわること、そして助成金の実績報告を毎月出すこと。この3つが、認可保育所では自治体や法人本部が担っていた部分にあたります。

求人票の仕事内容欄には、たいてい「0歳児から2歳児の保育業務全般」としか書かれていません。正直なところ、これはどうかと思います。実際に任される業務の幅は、施設の運営形態によって大きく変わるからです。この記事では、企業主導型保育園の中で1日が実際にどう動いていて、あなたが何を担うことになるのかを分解して書きます。

企業主導型保育園は「認可外なのに認可並みの助成を受ける」という特殊な立ち位置にある

まず前提を揃えます。ここを誤解したまま入職すると、後で話が噛み合いません。

企業主導型保育事業は、2016年度に始まった制度です。企業が従業員のために保育施設を設置し、その整備費と運営費を国が助成する仕組みになっています。当初は内閣府が所管し、2023年4月のこども家庭庁発足以降は同庁の所管に移りました。実施にあたる窓口は公益財団法人児童育成協会です。

制度上の分類では、企業主導型保育園は認可外保育施設です。市町村の認可を受けていません。ところが、受け取る助成の水準は認可保育所に準じます。この「認可外だが助成は認可並み」というねじれが、働く側にとってのすべての違いを生みます。

ある保育施設の説明では、制度の成り立ちがこう整理されています。

企業主導型保育とは、一言で表現すると「会社がつくる保育園」。平成28年度からスタートした制度で、子ども家庭庁管轄です。多様な働き方に対応した保育サービス拡大を企業が主導して提供することで待機児童解消を図り、仕事と子育てを両立していくことを目的としています。 出典: heros-kids.com

「会社がつくる保育園」という言い方は的確です。認可保育所が市町村の計画に沿って配置されるのに対し、企業主導型は設置企業の都合で配置されます。工場の隣、本社ビルの一角、駅前のオフィスの2階。立地の決まり方からして違います。

働く側にとっての最大の影響は、入園の仕組みにあります。認可保育所の入園は市町村が利用調整を行います。園は決まった子どもを受け入れるだけです。企業主導型は認可外なので、保護者と施設が直接契約します。つまり、入園の問い合わせを受けるのも、見学を案内するのも、契約書を交わすのも、園の職員の仕事です。

もう1つ、定員の考え方も違います。小規模保育事業のように19人以下という上限はなく、10人規模の施設から60人規模の施設まで幅があります。定員19人以下は小規模型として扱われ、職員配置の考え方が変わります。求人を見るときは、まず定員を確認してください。定員で仕事の中身がかなり決まります。

従業員枠と地域枠|この2つの枠が、あなたの1日の動きを決めている

企業主導型保育園の定員は、従業員枠と地域枠の2つに分かれています。この分け方を理解していないと、園内で起きていることの半分が説明できません。

「従業員枠・地域枠」は以下のように分類されています。従業員枠:定員のうち、企業主導型保育施設を設置した企業の従業員またはその企業と利用契約を結んだ企業の従業員のお子様のための利用枠のことをいいます。地域枠:その施設の利用定員のうち、最大50%まで(定員12名の施設であれば6名まで)を地域のお子様の預かりのために開放する事が出来ます 出典: kigyounaihoiku.jp

この2つの枠は、園の中では同じ部屋で一緒に過ごします。子どもたちに区別はありません。区別があるのは、保護者の側です。

従業員枠の子どもの保護者は、設置企業またはその企業と契約を結んだ企業の従業員です。つまり、勤務先が分かっています。シフト勤務の職場なら、登園と降園の時間が日によって変わります。夜勤明けの日は昼に迎えに来る。この不規則さが、そのまま園の運営に反映されます。

地域枠の子どもの保護者は、地域の住民です。企業とは関係がないので、一般の保育所と同じような利用の仕方をします。

この2種類の保護者が同じ園にいると、何が起きるか。連絡の経路が2系統になります。従業員枠の保護者への連絡は、企業の担当部署を通す場合があります。一方で地域枠は直接やり取りします。同じ内容のお知らせを、2つの経路で出すことになる施設も珍しくありません。

また、地域枠は定員の50%までという上限があります。従業員枠が埋まらないと、地域枠も増やせない。ここが企業主導型の運営上の急所です。設置企業の従業員に子どもが少ない時期は、定員が埋まらず助成額が減ります。

だから園の職員は、定員の充足を常に意識することになります。認可保育所では考えなくてよかった部分です。正直なところ、この感覚に慣れるまでが企業主導型の入職者にとっていちばんの壁だと思います。保育の質を考えたいのに、空き枠の話が日常的に出てくる。この違和感を最初に言語化しておくと、後で楽になります。

保育以外に任される仕事の1つ目|入園の問い合わせから契約まで

認可保育所で働いていた方が驚くのが、ここです。

認可の場合、入園希望者は市町村の窓口に申し込みます。園が受けるのは見学の対応くらいで、選考にも契約にも関与しません。企業主導型は直接契約なので、この流れを園が全部担います。

具体的に並べるとこうなります。電話やウェブフォームでの問い合わせ受付。見学日程の調整。見学当日の施設案内と説明。空き状況の確認と回答。入園申込書の受け取り。必要書類の案内。契約書の説明と締結。保育料の説明と請求方法の案内。慣らし保育の日程調整。

これらを、保育をしながらこなします。定員19人程度の施設では、事務専任の職員を置く余裕がないことが多い。園長または主任が担当し、手が足りなければ保育士が対応します。

見学案内は、実質的に接客業務です。保護者は他の園とも比較しています。施設の特徴、1日の流れ、給食の内容、保育料、空き状況を、初対面の相手に分かりやすく説明する必要があります。認可保育所の保育士がこの経験を積む機会は、ほとんどありません。

保育料の説明も担います。企業主導型の保育料は施設が設定しますが、助成を受けている分、認可施設と同程度またはそれ以下に抑えられる仕組みになっています。ある施設の説明では、この点がこう整理されています。

「認可外は保育料が高いのではないですか?」このようなご質問も多く受けますが、企業主導型保育園を運営する企業は国から助成を受けておりますので、利用料金を認可施設並または、それ以下で運営することが可能です。 出典: heros-kids.com

この説明を、見学に来た保護者に自分の言葉でできるようになることが、企業主導型で働く上での最初の仕事のひとつです。「認可外」という言葉に不安を覚える保護者は多いので、制度の説明ができるかどうかで入園の決まり方が変わります。

ここで身につく力は、他の職場に移っても使えます。保育の内容を、保育を知らない相手に説明する力です。これは意外と保育士のキャリアの中で訓練されない部分で、園長や主任を目指すなら必ず必要になります。

保育以外に任される仕事の2つ目|共同利用企業とのやり取り

企業主導型保育事業には、共同利用という仕組みがあります。設置企業以外の企業が利用契約を結ぶと、その企業の従業員も従業員枠を使えるようになる制度です。

これが運営上どれだけ重要か。設置企業1社の従業員だけで定員を埋めるのは、ほとんどの施設で不可能です。だから周辺の企業と共同利用契約を結び、枠を埋めます。地域の病院、介護施設、飲食チェーン、小売店。夜勤や早番のある業種ほど、保育の受け皿を求めています。

では、この契約の実務を誰がやるのか。運営法人の本部が担当する施設もありますが、施設長や主任が窓口になっているケースも多いです。

業務の中身は、契約企業からの利用申し込みの受付、利用状況の共有、契約更新の手続き、担当者からの問い合わせ対応。ときには新規の共同利用先を探すための説明資料を作ることもあります。

これは、保育士のキャリアの中では異質な仕事です。相手は企業の人事担当者や総務担当者で、保育の専門用語は通じません。開園時間、受け入れ年齢、緊急時の対応、契約の単位。ビジネスの言葉で説明する必要があります。

正直なところ、この業務を負担に感じる保育士は多いです。保育がしたくてこの仕事を選んだのに、なぜ企業との調整をしなければならないのか、という気持ちは分かります。

ただ、この経験には他では得られない価値があります。保育の現場を、外部の組織に対して説明し、条件をすり合わせる経験です。将来的に施設を運営する側に回るなら、必ず使います。また、この種の折衝経験は保育以外の分野にも転用できます。人の相談を受けて進路や働き方を整理する仕事の全体像は職場・転職・キャリア相談のお仕事にまとまっていて、面談と調整を軸にした職種がどう組み立てられているかを知る手がかりになります。

保育以外に任される仕事の3つ目|助成金の実績報告と指導監査

企業主導型保育事業の運営費は、児童育成協会からの助成で賄われます。この助成は、実績に基づいて支払われます。つまり、毎月の利用実績を報告しなければ入ってきません。

報告する内容は、在籍児童の数、年齢区分、利用日数、従業員枠と地域枠の内訳、職員の配置状況など。これを決められた様式で、期限までに提出します。

この作業は、通常は施設長や運営法人の事務担当が行います。ただ、その元になるデータを日々記録するのは現場の保育士です。出欠の記録、延長保育の利用記録、職員の勤務実績。これらが正確でないと、報告が作れません。

認可保育所にも似た書類はありますが、企業主導型は認可外であるぶん、記録の正確さがより厳しく問われます。助成の要件を満たしているかどうかが、記録で判定されるからです。

加えて、指導監査があります。児童育成協会による指導や、認可外保育施設としての自治体の立入調査。監査では、職員の配置、保育の内容、施設の設備、書類の整備状況が確認されます。監査前には書類を揃える作業が発生し、現場の保育士も準備に加わります。

もう1つ、企業主導型で特に厳しく見られるのが、保育従事者に占める保育士の割合です。制度の見直しによって、新規に開設する施設では保育士の割合を高くすることが求められるようになりました。既存の施設についても、割合を維持することが助成の条件になります。だから園は、保育士が1人辞めるたびに配置を計算し直します。

働く側から見ると、これは意外な安心材料になります。有資格者が抜けると運営そのものが危うくなるので、保育士の定着に園が神経を使うからです。待遇の交渉余地も、この構造から生まれます。

開園時間の幅が広い|夜間、土日、短時間の受け入れ

企業主導型保育事業の目的の1つが、多様な働き方への対応です。この目的が、そのまま勤務シフトの形になって返ってきます。

認可保育所の開所時間は、多くが11時間前後です。朝7時台に開き、夕方18時台に閉まる。延長保育があっても19時台までというのが一般的です。

企業主導型は、設置企業の勤務形態に合わせて開園時間を設定できます。工場の三交代に合わせて夜間まで開ける施設、病院に併設されて日曜も開ける施設、早朝から開ける施設があります。

働く側にとって、これは両面あります。負担の面では、シフトの種類が増えます。早番、遅番、夜勤に近い時間帯の勤務。生活リズムを整えるのが難しくなる方もいます。

一方で、利点もはっきりしています。認可保育所では成立しなかった働き方ができます。週3日だけ、1日5時間だけ、といった短時間勤務の募集が出やすい。自分の子どもの学校行事に合わせて勤務時間を組める施設もあります。

この柔軟さは、ライフステージの変化に対応しやすいという意味で、長く保育の仕事を続けたい人にとって現実的な選択肢になります。実際、いったん保育を離れた方が復帰する入口として企業主導型を選ぶケースは増えています。

保育士として働く条件が地域や経験年数でどのくらい動くのかを確かめておくと、提示された勤務形態と給与のバランスを判断しやすくなります。保育士の年収・単価相場には職種全体の相場が整理されているので、短時間勤務を選んだときに年収がどう変わるかを考える基準として使えます。

保育の中身がどう変わるか|少人数と異年齢の日常

保育そのものはほとんど変わらないと最初に書きましたが、細かく見ると変わる点はあります。

1つ目は、異年齢保育が日常になることです。企業主導型の施設は定員が小さいものが多く、年齢別にクラスを分けるだけの人数がいません。0歳児から2歳児が同じ部屋で過ごし、食事と午睡だけ分けるという運用が一般的です。

異年齢の環境は、保育の組み立て方が変わります。1歳児が使っている玩具を0歳児が口に入れないよう、動線を分ける。2歳児の活動中に、0歳児が眠くなる。この同時進行を、常に頭に置いて動くことになります。年齢別クラスに慣れた保育士にとっては、最初のうちかなり神経を使います。

2つ目は、行事が少ないことです。0歳児から2歳児が中心なので、運動会や発表会が成立しにくい。あっても保護者参加の小さな会で、練習期間は数日です。行事の準備に追われてきた方にとっては、大きな変化になります。

3つ目は、保護者との距離です。従業員枠の保護者は、設置企業の従業員です。園によっては、保護者と職員が同じ建物で働いていることもあります。廊下ですれ違う、社員食堂で顔を合わせる。この近さは、信頼が築きやすい反面、公私の線引きが難しくなる場面もあります。

4つ目は、記録の量です。0歳児から2歳児は、食事量、排泄、睡眠、体温を毎日記録します。子どもの人数が少ないぶん、1人あたりの記述量は増えます。連絡帳の書き込みも、乳児クラスは厚くなります。

5つ目は、安全管理の重さです。0歳児から2歳児は、事故のリスクが最も高い年齢帯です。午睡中の呼吸チェック、誤嚥への警戒、転倒への備え。少人数だからこそ、1人の職員が同時に見る範囲が広くなる時間帯が生まれます。ここは、施設の人員配置と直結する部分なので、面接で必ず確認すべき点です。

施設長のポジションが早く回ってくるという特徴

企業主導型保育園のキャリア面での特徴として、管理職の位置が近いことが挙げられます。

制度上、企業主導型保育園の施設長には特別な要件が置かれていません。ある保育人材サービスの整理では、次のように説明されています。

企業主導型保育園の園長(施設長)には、特別な資格や経験、専任・兼任といった条件などは定められていません。 出典: hoiku.jinzaibank.com

これは両面のある事実です。

働く側の利点としては、経験年数が短くても管理職に就ける可能性があることです。認可保育所では、主任や園長になるまでに15年以上かかることも珍しくありません。企業主導型では、新設施設の立ち上げに合わせて30代前半で施設長になる例があります。

一方で、要件がないということは、保育を知らない人が施設長になり得るということでもあります。設置企業の総務部門から異動してきた方が施設長を務めている施設もあります。正直なところ、ここは施設によって当たり外れが大きい部分です。

給与水準についても、同じ調査に数字が出ています。

なお、企業主導型保育園の園長(施設長)の給料は、求人情報からみると20万円~30万円程度が多くなっています。 出典: hoiku.jinzaibank.com

この水準をどう読むか。管理職としては決して高くありません。施設の規模が小さいぶん、役職手当も抑えられているということです。ただし、これは月給の話なので、賞与と各種手当を含めた年収で比べる必要があります。

キャリア形成の面では、企業主導型保育園は「責任感を持って働き、保育士としてのキャリアを積みたい人に向いている」と紹介されることがよくあります。

この評価に補足するなら、「積めるキャリアの種類が違う」というのが実態に近いです。幼児保育の技術や大規模組織の運営経験は積めません。代わりに、契約、折衝、報告、立ち上げといった運営側の経験が早く手に入ります。

求人票のどこを見れば、任される仕事の範囲が分かるか

ここまでの内容を、求人を読むときのチェック項目に落とします。

定員を見てください。19人以下なら小規模型で、事務専任を置いていない可能性が高く、保育士が保育以外の業務を分担することになります。40人を超える規模なら、事務や調理が分業されている確率が上がります。

仕事内容欄の書き方も手がかりになります。求人サイトには、こうした表記が並びます。

埼玉県さいたま市浦和区の企業主導型保育園<給与>月給223500円~293500円...0歳児~2歳児の保育業務業務に関わる事務作業保護者対応定員:19名 出典: 求人ボックス

「業務に関わる事務作業」「保護者対応」という語が仕事内容に並んでいれば、保育以外の業務を担うという意味です。この一文をどれだけ具体的に説明できるかが、面接での確認事項になります。

運営主体も確認してください。設置企業が自ら運営しているのか、保育事業者に委託しているのか。保育事業者が運営している施設は、複数施設のノウハウがあるぶん書類や研修の仕組みが整っている傾向があります。設置企業の直営は、企業文化がそのまま入ってくるので、良くも悪くも一般企業に近い運営になります。

開園時間と閉園時間も見てください。夜間や土日の記載があれば、その時間帯のシフトに入る可能性があります。「シフト制」とだけ書かれている場合は、最も早い時間と最も遅い時間を面接で確認してください。

保育士の配置人数と、そのうち有資格者が何人かも聞いてください。制度上の割合を満たしているかどうかは、その施設の運営の安定度を測る指標になります。

最後に、開園からの年数です。開園1年以内の施設は、業務の型が固まっていません。自分で仕組みを作る楽しさがある反面、混乱もあります。開園5年以上の施設は、運用が安定している代わりに、既存のやり方に合わせることが求められます。

この経験は、次の職場でどう評価されるか

企業主導型で数年働いた後、他の園に移るときに何が評価されるのか。ここを整理しておくと、在職中に何を意識して働くべきかが決まります。

まず、認可保育所に移る場合。評価されるのは乳児保育の経験です。0歳児から2歳児を継続的に担当してきた記録は、どの園でも通用します。離乳食の段階的な進め方、睡眠リズムの整え方、噛みつきへの対応。こうした具体的な手技を語れる人は、面接で強いです。

一方で、評価されにくいのが運営側の経験です。共同利用契約の調整も、助成金の実績報告も、認可保育所の一般の保育士には関係がありません。面接で長々と話しても、相手には響きません。話すなら「保護者に制度を説明して入園につなげた経験があります」という形に翻訳したほうが伝わります。

次に、別の企業主導型施設に移る場合。このときは運営側の経験がそのまま評価されます。制度を理解していて、報告書類の型を知っていて、見学対応ができる人は即戦力です。企業主導型は施設ごとに独立して運営されているので、他施設の運用を知っている人材は重宝されます。

3つ目に、認定こども園や幼稚園に移る場合。ここは相性が良くありません。幼児保育と教育課程の経験がないため、一から学ぶことになります。年齢の幅を広げたいなら、いったん認可保育所を経由するほうが現実的です。

4つ目に、保育以外の分野に移る場合。企業主導型で身につく説明と折衝の力は、対人支援の職種に転用できます。相手の状況を聞き取り、制度を分かりやすく説明し、選択肢を整理する。この流れは、保育の見学対応でも相談支援でも同じ構造です。

在職中に意識すべきことは、記録を残しておくことです。担当した年齢、受け持った人数、対応した見学の件数、関わった契約の件数。数字で語れるものがあると、どの方向に移るにしても説明が具体的になります。保育の職歴は曖昧に語られがちなので、ここで差がつきます。

20年この市場を見てきた立場からの観察

在宅ワークやフリーランスの求人市場を長く運営してきた立場から、企業主導型保育園の求人には、他の保育の求人とは違う特徴があると感じています。

それは、応募者に求められる役割の幅が、求人票の記載より広いということです。保育業務全般という一文の裏に、契約、説明、報告、調整が入っている。この差を事前に知らずに入った人ほど、早く辞めています。

運営者として見てきた限りでは、この種のギャップは保育に限った話ではありません。小さな組織で働く求人はどの職種でも、書かれている業務の外側にある仕事が多い。そして長く続く人は、その外側の仕事を「余計な作業」ではなく「自分が判断できる範囲が広がった」と受け取っています。

企業主導型保育園で言えば、見学の説明も、企業との調整も、報告書類も、全部が保育の外側です。でも、それをこなせる人は、園の中で意思決定に近い位置に立ちます。保育の方針を自分の言葉で語れるようになり、それが通るようになる。この循環に入れた人が、結果として長く続いています。

もう1つ観察しているのは、中間に人を挟まない関係のほうが、双方にとって条件が良くなりやすいという構造です。企業主導型の共同利用契約は、企業と施設が直接結びます。仲介が入らないぶん、企業は同じ予算でより多くの枠を確保でき、施設は受け取る額が厚くなります。この形は、保育に限らず仕事の受け渡し全般に当てはまります。間に立つ人が減るほど、渡す側も受ける側も条件が良くなる。長く見てきて、この構造は一貫していると感じます。

最後に、この分野で経験を積んだ人がどこへ進んでいるかについて。施設長を経験した後、複数施設の運営統括に進む人、認可保育所の立ち上げに関わる人、そして相談支援の領域に移る人がいます。3つ目の道は意外に思われるかもしれませんが、保護者面談と企業との調整を日常的にこなしてきた経験は、人と組織の間に立つ仕事に直結します。国家資格として整備されているキャリアコンサルタントの養成講習の内容を見ると、面談の構造化や職業理解の部分で、保育の現場経験と重なる要素が多いことが分かります。

企業主導型保育園は、制度としてはまだ10年ほどの若い仕組みです。運用の見直しも続いています。だからこそ、入る前に制度の骨格を理解しておくことが、他の保育の職場以上に効きます。

よくある質問

Q. 企業主導型保育園の仕事は、認可保育所と何が一番違いますか?

保育そのものはほとんど変わりません。違うのは保育以外の業務です。認可外で直接契約のため、入園の問い合わせ対応、見学案内、契約手続きを園が担います。加えて共同利用企業とのやり取りと、児童育成協会への月次の実績報告があります。定員19人以下の施設では事務専任がいないことが多く、保育士がこれらを分担します。

Q. 従業員枠と地域枠があると、現場では何が変わりますか?

子どもたちは同じ部屋で一緒に過ごすので保育に区別はありません。変わるのは保護者との連絡経路です。従業員枠は企業の担当部署を経由する場合があり、地域枠は直接やり取りします。また従業員枠の保護者はシフト勤務が多く、登降園の時間が日によって変わるため、園の時間帯ごとの人員配置に影響します。

Q. 未経験や経験の浅い保育士でも施設長になれますか?

制度上、企業主導型保育園の施設長には特別な資格要件が定められていません。そのため新設施設の立ち上げに合わせて30代前半で施設長になる例があります。ただし要件がないということは保育経験のない人が就く可能性もあるということで、施設ごとの差が大きい部分です。応募前に現在の施設長の経歴を確認してください。

Q. 夜間や土日の勤務は必ずありますか?

必ずではありません。開園時間は設置企業の勤務形態に合わせて決まるため、平日の日中のみの施設もあれば、三交代や日曜開園に対応する施設もあります。求人票に「シフト制」とだけ書かれている場合は、最も早い勤務開始時刻と最も遅い終了時刻を面接で確認してください。週3日や1日5時間といった短時間勤務の募集が出やすいのもこの制度の特徴です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月17日最終更新:2026年9月17日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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