仕事の引き継ぎが理解できないときに、前任者へ確かめることと資料の読み方


この記事のポイント
- ✓仕事の引き継ぎが理解できないときは
- ✓分からない中身を「言葉」「流れ」「判断の理由」に分けると
- ✓前任者へ何を確かめればよいかが見えてきます
仕事の引き継ぎを受けているのに、説明を聞いても資料を読んでも理解できない。前任者の異動日は迫っているのに、何が分からないのかさえ言葉にできない。そんな状態で焦っている人に向けて、この記事では、分からない中身を切り分けて、前任者へ確かめることを絞り込み、資料を読み解く手順を順にまとめます。
結論から言うと、引き継ぎが理解できない原因の多くは、受け取る側の能力ではなく、情報の渡し方と受け取り方の順番にあります。順番を組み直せば、同じ資料でも読めるようになります。後半では、引き継いだ内容を自分用に記録しておく方法として、ボードで仕事を管理できるPinatecaにも触れます。
引き継ぎが理解できないのは珍しいことではない
まず知っておいてほしいのは、引き継ぎの場で「分からない」と感じるのは、ごく普通のことだという点です。前任者は何年もかけて身につけた仕事を、数日から数週間で渡そうとしています。前任者にとっては当たり前になっている前提が、説明から抜け落ちるのは避けられません。
業務改善の解説記事でも、後任者側の事情として次のように書かれています。
後任者が担当業務に必要なスキルや経験が不足している場合、引き継ぎ内容の理解が困難になります。業界知識や専門用語、使用ツールに関する理解が足りないと、説明についていけないことがあります。これは人員配置の問題でもありますが、結果として引き継ぎの障壁となります。 出典: biz.moneyforward.com
ここで大事なのは「人員配置の問題でもある」という部分です。知識が足りない状態で引き継ぎを受けているなら、それは配置した側も分かっていることのはずです。自分を責めるより、足りない知識をどう埋めるかに頭を切り替えたほうが、結果として早く仕事を回せるようになります。
経営の相談に乗っていると、引き継ぎで困った話は職種を問わず出てきます。経理でも営業事務でもシステムの保守でも、聞いてみると共通しているのは「前任者は丁寧に説明したつもり」「後任者は聞いたけれど頭に残っていない」というすれ違いです。説明の量が足りないのではなく、受け取る側に話を整理する枠が無いまま、情報だけが流れ込んでいることが多いのです。
もう1つ、引き継ぎ期間は普段の仕事と並行して進むことがほとんどです。自分の担当を回しながら新しい仕事を覚えるので、頭に入る量には限りがあります。1日に聞いたことの半分も覚えていないのは、むしろ自然な状態です。だからこそ、覚えようとするのではなく、あとで引ける形に残すことが大切になります。
「分からない」の中身を3つに分ける
理解できないと感じたときに、最初にやってほしいのが、分からないことの種類を分けることです。引き継ぎで分からないことは、おおむね次の3つに分かれます。
- 言葉が分からない(社内の略語、取引先の呼び名、システムの画面名)
- 流れが分からない(何をきっかけに、どの順番で、誰に渡すのか)
- 判断の理由が分からない(なぜこの手順なのか、例外のときにどうするのか)
この3つは、確かめ方がまったく違います。
言葉が分からないときは、前任者でなくても答えられる人がいます。同じ部署の人、社内の用語集、過去のメールを検索すれば分かることも多いでしょう。前任者の限られた時間を使う必要はありません。
流れが分からないときは、資料を読むより、実際の作業を一度横で見せてもらうのが近道です。手順書に「請求書を確認する」と1行で書かれていても、実際には3つの画面を行き来しているかもしれません。見れば5分で分かることを、文章だけで理解しようとすると何時間もかかります。
判断の理由が分からないときは、前任者にしか聞けません。この種類の質問こそ、前任者がいるうちに優先して聞くべきものです。異動や退職のあとに一番困るのは、手順ではなく「なぜそうしていたのか」が分からないことです。
手元のメモに、分からないことを書き出し、それぞれの横に「言葉」「流れ」「理由」と付けてみてください。たとえば30個の疑問があったとしても、前任者に聞かなければならないのは「理由」の印が付いた10個前後に絞れることが多いはずです。残りは自分で調べるか、別の人に聞けば済みます。
具体例で考えてみます。営業事務の引き継ぎで「月末に受注表を締めて、営業部長にチェックしてもらってから基幹システムに入力する」と説明されたとします。このとき「受注表」がどのファイルなのか分からないのは言葉の問題です。「締める」の後に何を誰に渡すのか分からないのは流れの問題です。そして「なぜ部長のチェックを入力の前に挟むのか」が分からないのは理由の問題です。前者2つは共有フォルダや同僚で解決できても、3つ目は前任者に聞かなければ分かりません。部長が不在の月にどうするのか、という例外の扱いも、理由を知っていれば自分で考えられます。
この切り分けは、相談の場でもよく使います。経営者から「何が分からないのか分からない」と言われたとき、紙を3つの列に分けて書き出してもらうと、10分ほどで頭の中が整理されていきます。分からないことが多すぎて手が止まっている人ほど、この作業の効果は大きく出ます。
引き継ぎ資料を読む順番
引き継ぎ資料を渡されたとき、最初のページから順に読み始める人は多いと思います。ただ、資料の並び順は、前任者が書いた順であって、理解しやすい順とは限りません。次の順番で読むと、頭に入りやすくなります。
1. 仕事の全体像(年間・月間の予定)を先に読む
まず探すのは、その仕事が1年や1か月の中でいつ何をするのかが書かれた部分です。月末に締め、翌月の5日までに報告、四半期ごとに集計、といった予定が分かると、個々の手順がどこに当てはまるのかが見えてきます。資料にこの部分が無ければ、前任者に最初に作ってもらうのがよいでしょう。
2. 関係する人と取引先の一覧を読む
次に、仕事で関わる人の一覧を読みます。社内の誰に何を渡し、社外の誰から何を受け取るのか。登場人物が分かると、手順書の中の「先方に連絡」「経理へ回す」がどこを指すのかが具体的になります。
3. 個々の手順書は「頻度の高い順」に読む
手順書は、毎日やるもの、毎週やるもの、毎月やるもの、年に1回のもの、の順に読みます。年に1回の作業は、実際にその時期が来たときに改めて読めば十分です。引き継ぎの最初の数日で全部を理解しようとすると、どれも中途半端になります。
4. 例外とトラブルの記録は最後に読む
過去のトラブルの記録や、例外の対応は、通常の流れが分かってから読むと意味が通ります。通常の流れを知らないまま例外を読むと、どれが普通でどれが特別なのかの区別がつきません。
資料を読みながら、分からない言葉には線を引き、さきほどの3つの種類の印を付けていきます。1回目の読み込みは、理解することではなく、分からない箇所を見つけることが目的だと割り切ると、気持ちがずいぶん楽になります。
読み終えたら、資料の目次の横に「読んだ」「一部分からない」「まだ読んでいない」の3段階で印を付けておくと、どこまで進んだのかが自分でも上司にも分かります。引き継ぎ期間が2週間あるなら、最初の3日で全体を1回通し、残りの日数で分からない箇所をつぶしていく計画にすると、終わりが見えて落ち着いて進められます。
前任者へ確かめることのリスト
前任者に確かめることは、時間が限られている以上、優先順位を付けておく必要があります。次のリストは、どの職種の引き継ぎでも共通して聞いておきたい項目です。
| 確かめること | 聞く理由 |
|---|---|
| この仕事の締め切りと、遅れたときに困る人 | 優先順位の判断の土台になる |
| 毎月必ず発生する作業と、その日付 | 抜け漏れを防ぐ |
| 判断に迷ったときに相談していた相手 | 前任者がいなくなった後の相談先になる |
| 過去にあったトラブルと、そのときの対応 | 同じことが起きたときの手がかりになる |
| 手順書に書いていない「ひと手間」 | 実際の作業で差が出やすい |
| パスワードや権限の受け渡しの方法 | 異動後に作業が止まるのを防ぐ |
| 取引先ごとの癖や、頼まれやすいこと | 関係を引き継ぐうえで欠かせない |
この中で特に大事なのは、「手順書に書いていないひと手間」です。前任者に「手順書に書いていないけれど、毎回やっていることはありますか」と聞くと、思わぬ答えが返ってくることがあります。請求書を送る前に必ず電話で一言入れていた、データを取り込む前に前月分の控えを取っていた、といった習慣は、本人にとって当たり前すぎて書き残されないものです。
聞くときは、「どうやるんですか」より「なぜそうしているんですか」を意識してください。手順だけを聞くと、状況が変わったときに応用がききません。理由を聞いておけば、前提が変わったときに自分で判断できます。
取引先とのやり取りについても、可能なら一度、前任者と一緒に連絡を入れる機会を作ってもらうとよいでしょう。顔を知らない後任者から急に連絡が来るより、前任者から紹介されたほうが、先方も安心して話してくれます。
前任者への聞き方で、得られる答えが変わる
同じことを聞いても、聞き方によって返ってくる答えの質は大きく変わります。ここでは、前任者の時間を無駄にせず、必要な答えを引き出す聞き方を整理します。
質問はまとめて、時間を決めて聞く
疑問が出るたびに声をかけると、前任者は自分の仕事を何度も中断することになります。引き継ぎ期間中は前任者も忙しいので、1日の終わりに15分から30分、質問の時間を取ってもらうのがおすすめです。その日に出た疑問を書き出しておき、まとめて聞きます。
自分の理解を先に話してから聞く
「ここが分かりません」とだけ聞くと、前任者は最初から説明し直すことになります。それより「この作業は、月末に届いた請求書を確認して、金額が合っていれば経理に回す、という理解で合っていますか」と、自分の理解を先に話してから確かめるほうが、ずれている箇所だけを直してもらえます。説明を聞く時間も短くなります。
答えはその場で書き、後で見返せる形にする
業務改善の解説記事では、後任者がメモを取らなかったり復習しなかったりすると、情報が身につかないと指摘されています。聞いた答えは、その場で書き留め、あとから引ける場所に残しておきましょう。口頭で聞いて覚えたつもりでも、1週間後にはほとんど残っていません。
「分からない」と言いにくいときの言い方
前任者が先輩や上司だと、何度も同じことを聞くのは気が引けるものです。そんなときは「確認させてください」「念のため、もう一度だけ伺ってもいいですか」と前置きすると、聞く側も聞かれる側も構えずに済みます。分からないまま引き継ぎが終わるほうが、あとで双方の負担が大きくなります。
経営の現場でも、後任者が遠慮して質問しなかったために、異動した前任者のところへ数か月にわたって問い合わせが続いた例をよく見ます。前任者は新しい部署の仕事をしながら、前の仕事の質問にも答え続けることになります。引き継ぎ期間中にしっかり聞いておくことは、前任者のためでもあるのです。
前任者がもう不在・異動したあとの確かめ方
引き継ぎの期間が短すぎて、理解できないまま前任者が異動や退職してしまうこともあります。その場合でも、確かめる手段はいくつか残っています。
過去のメールとチャットを検索する
前任者が送受信したメールや、社内のチャットの履歴は、仕事の流れを知るための大切な手がかりです。取引先の名前や、作業の名前で検索すると、過去にいつ、誰と、どんなやり取りをしていたのかが分かります。特に、毎月同じ時期に同じ相手とやり取りしているメールは、その仕事の周期を教えてくれます。
共有フォルダの更新日を見る
共有フォルダのファイルの更新日を見ると、どの時期にどのファイルが使われていたのかが分かります。毎月の初めに更新されているファイルがあれば、月初の作業に関係していると推測できます。
前任者の周りにいた人に聞く
前任者と一緒に仕事をしていた同僚や、取引先の担当者は、前任者がどう動いていたかを知っています。「前任の方は、この件をどう進めていましたか」と聞けば、教えてもらえることも多いでしょう。
異動先の前任者に、まとめて1回だけ聞く
社内で異動しただけなら、前任者に連絡を取ることもできます。ただし、何度も連絡するのは負担になるので、聞きたいことを溜めておき、1回にまとめて聞くようにします。退職した前任者に連絡を取るかどうかは、会社の方針もあるので上司に相談してから決めましょう。
それでも分からないことは、自分で仮の手順を作り、上司に確認してもらう形で進めます。最初から完璧を目指さず、「今はこのやり方で進めます。問題があれば教えてください」と周りに伝えておけば、ずれていたときに早く気づいてもらえます。
自分用の引き継ぎノートを作る
引き継ぎで聞いたことを覚えようとするのではなく、あとから引ける形で記録しておくことが、理解できない状態から抜け出すいちばんの近道です。ここでは、自分用の引き継ぎノートの作り方を紹介します。
作業ごとに1枚のカードにする
聞いたことを時系列のメモで残すと、あとから探すのに苦労します。それより、作業ごとに1枚のカードやページを作り、そこに手順、締め切り、関係者、注意点、判断の理由を書いていくと、探しやすくなります。
1枚のカードに書くことの例は次のとおりです。
- 作業の名前と、やる頻度(毎日、毎月5日、など)
- 手順(番号付きで)
- 関係する人と連絡先
- 判断の理由(前任者から聞いたこと)
- まだ分からないこと
最後の「まだ分からないこと」の欄を作っておくのがポイントです。分からないことが1か所にまとまっていれば、前任者や上司に聞くときにそのまま使えます。
予定と進み具合を一緒に見えるようにする
引き継ぎを受けた仕事は、いつ何をするのかを予定として並べておくと、抜け漏れが防げます。月末の締め、翌月5日の報告といった予定をカレンダーに入れておけば、当日になって慌てることがありません。
ボードで管理するという選択肢
作業ごとのカードと、予定と、まだ分からないことを1か所で見たいなら、ボードで仕事を管理できるアプリが向いています。Pinatecaは、カンバン、ガント、カレンダー、リストなど8種類のボードを使い分けられるプロジェクト管理のサービスです。公式サイトによると、5人まで無料で、ガントチャートやチャットも無料プランから使えます。
引き継ぎの記録に使うなら、たとえば次のような使い方ができます。
・カンバンのボードに「まだ分からない」「確認中」「理解した」の列を作り、疑問をカードにして動かす
・カレンダーのボードに、月次や年次の作業の予定を並べる
・カードのコメントに、前任者から聞いた判断の理由を残す
カードにはコメントを残せるので、前任者や上司とのやり取りもその作業のカードに残せます。公式サイトでは、Trelloからボードを移せること、ChatGPTやClaudeから話しかけてボードを読んだり動かしたりできることも紹介されています。もちろん、紙のノートや表計算ソフトでも同じ考え方で記録はできます。大事なのは道具より、作業ごとに分けて、分からないことを1か所に集めることです。
Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
説明が早すぎてついていけないときの頼み方
引き継ぎの説明が早すぎて、メモを取る間もなく次の話に進んでしまう。これも、よく聞く悩みです。前任者は慣れた仕事なので、つい早口になります。悪気があるわけではありません。
ついていけないときは、次のような頼み方を試してみてください。
画面を操作するのは自分にしてもらう
前任者が操作して、自分は横で見ているだけだと、何をしているのか追いきれません。「次は私が操作するので、横で見ていてもらえますか」と頼むと、自分のペースで進められます。間違えそうなところで止めてもらえるので、覚えも早くなります。
録画や録音の許可をもらう
画面の操作を説明してもらうときは、会社の決まりで問題がなければ、画面の録画や会話の録音の許可をもらうのも1つの手です。あとから何度でも見返せるので、その場で全部を理解しなくて済みます。録画が難しい場合は、操作の要所でスクリーンショットを撮らせてもらいましょう。
1回の説明は1つの作業に絞ってもらう
一度に複数の作業を説明されると、頭の中で混ざってしまいます。「今日は月次の締めの作業だけを教えてください」と、1回の説明で扱う範囲を絞ってもらうと、理解しやすくなります。
説明の後で、自分の言葉で言い直す
説明を聞いた後で、「つまり、こういうことですね」と自分の言葉で言い直すと、理解がずれているところをその場で直してもらえます。言い直せないところは、まだ理解できていないところです。
説明を受ける側から頼むのは気が引けるかもしれませんが、早口の説明を何度も聞き直すより、最初に頼んでおくほうが、前任者の時間も節約できます。
引き継ぎの最初の5日間で進める順番
ここまでの内容を、引き継ぎの最初の5日間の予定に落とし込むと、次のようになります。引き継ぎ期間が2週間ほどある場合を想定していますが、短い場合も順番は同じです。
1日目:全体像をつかむ
資料の中から、年間と月間の予定、関係する人の一覧を探して読みます。前任者には「この仕事を一言でいうと何ですか」「1か月の中で一番忙しいのはいつですか」と聞いておきます。細かな手順にはまだ入りません。1日目の終わりに、自分用のノートに作業の一覧を作っておきます。
2日目:毎日の作業を横で見る
毎日発生する作業を、前任者の横で見せてもらいます。見ながら手順を書き、分からない言葉に印を付けます。夕方の質問の時間で、印を付けた言葉のうち、自分で調べても分からなかったものだけを聞きます。
3日目:毎日の作業を自分でやる
前日に見た作業を、今度は自分で操作します。前任者には横で見ていてもらい、間違えそうなところで止めてもらいます。自分でやってみると、見ていただけでは気づかなかった疑問が出てきます。それを「流れ」の疑問としてノートに足していきます。
4日目:毎週・毎月の作業を聞く
毎週や毎月の作業について、手順と締め切り、関係者を聞きます。実際の作業日が引き継ぎ期間の外にある場合は、過去の実績のファイルやメールを一緒に見ながら説明してもらいます。ここで「なぜこの順番なのか」という判断の理由を中心に聞いておきます。
5日目:分からないことを棚卸しする
ノートに残った「まだ分からないこと」を見直し、前任者に聞くもの、自分で調べるもの、上司に相談するものに分けます。この時点で全体の何割が理解できているかを自分で見積もり、残りの期間で足りそうかどうかを判断します。足りないと感じたら、ここで上司に相談します。
5日間で全部を理解する必要はありません。5日目の時点で、何が分かっていて何が分かっていないのかが一覧になっていれば、引き継ぎは順調に進んでいると考えてよいでしょう。
上司に相談するタイミングと伝え方
自分なりに工夫しても理解が追いつかないとき、上司に相談するのは自然なことです。むしろ、相談しないまま引き継ぎ期間が終わってしまうほうが、仕事にとっては大きな問題になります。
相談するタイミング
上司に相談したほうがよいのは、次のような状況です。
・引き継ぎの期間が明らかに足りず、全部の作業を一度も見ないまま終わりそう
・前任者が忙しく、質問の時間をほとんど取ってもらえない
・業務に必要な知識や資格が自分に無く、独学では間に合わない
・引き継ぎのほかに、今の担当の仕事も減らないまま続いている
こうした状況は、後任者の努力だけでは解決できません。人の配置や仕事の量の調整は、上司にしかできないことです。
相談の伝え方
相談するときは、「理解できません」とだけ伝えるより、具体的に伝えたほうが動いてもらいやすくなります。
- 引き継ぎの進み具合(全体の何割くらいが理解できているか)
- 分からないことの一覧(さきほどの3つの種類に分けたもの)
- 必要な手助け(前任者との時間を週2回取りたい、引き継ぎ期間を1週間延ばしたい、など)
このように伝えれば、上司も何をすればよいのかが分かります。引き継ぎの期間を延ばす、前任者の他の仕事を一時的に減らす、別の人にも一部を手伝ってもらう、といった調整ができるかもしれません。
上司への相談は、引き継ぎ期間の半ばを過ぎる前に1回は入れておくのがおすすめです。終わる直前に相談しても、調整の時間が残っていないことがあるからです。
心と体の負担が大きいときに使える相談先
引き継ぎの期間は、新しい仕事を覚えるだけでなく、今の仕事も並行して進めることが多く、想像以上に疲れがたまります。眠れない、食欲が落ちた、朝起きるのがつらい、といった状態が続くなら、無理を重ねずに相談先を使ってください。
厚生労働省は、働く人の心の健康についての情報をまとめたこころの耳というサイトを運営しています。疲れのたまり具合を自分で確かめられるチェックや、ストレスとの付き合い方の解説、相談窓口の案内が載っています。こうした情報を見ながら、自分の状態を落ち着いて振り返ってみるとよいでしょう。
また、引き継ぎを含めた職場の困りごとについては、各都道府県の労働局や労働基準監督署の中に、総合労働相談コーナーが設けられています。厚生労働省のページによると、全国の378か所に置かれていて、働く人からも事業主からも相談を受け付けています。いじめや嫌がらせ、仕事の割り振りの問題などで困ったときに、まず話を聞いてもらえる窓口です。
体の不調が続くときは、勤め先の産業医や、かかりつけの医療機関に相談してください。この記事は医療の助言をするものではないので、具体的な判断は専門家に委ねてください。
仕事に必要な知識を身につけるための手がかり
引き継ぎが理解できない理由が、そもそもの知識不足にあるなら、引き継ぎと並行して知識を補う必要があります。何を学べばよいのか分からないときに役立つのが、厚生労働省が公開している職業能力評価基準です。
「職業能力評価基準」とは、仕事をこなすために必要な「知識」と「技術・技能」に加えて、「成果につながる職務行動例(職務遂行能力)」を、業種別、職種・職務別に整理したものです。 出典: mhlw.go.jp
厚生労働省のページでは、事務系の職種のほか、ものづくりからサービス業まで56業種の基準が公開されています。引き継いだ仕事に近い職種の基準を開くと、その仕事でどんな知識が求められているのかが一覧で分かります。自分に足りない知識を探すための地図として使えます。
たとえば経理の仕事を引き継いだのに、仕訳の考え方が分からないなら、まずそこを補う必要があります。資料の読み方を工夫しても、土台の知識が無ければ理解は進みません。上司に相談する際に「この分野の知識が足りないので、研修や本で学ぶ時間をもらえないか」と具体的に頼めるのも、何が足りないのかが分かっているからこそです。
医療事務のように専門の資格がある仕事なら、資格の学習範囲がそのまま仕事の基礎知識になります。医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)のページでは、この資格の内容や学び方がまとめられています。病院やクリニックの受付や会計の仕事を引き継いだ人は、目を通しておくと全体像がつかみやすくなります。
引き継ぎで困らないために、受け取る側が身につけておきたいこと
ここまで、理解できないときの対処を見てきました。最後に、次に引き継ぎを受けるときに困らないよう、日頃から意識しておきたいことを整理しておきます。
1つ目は、自分の仕事を記録する習慣です。今の自分の仕事を手順書やカードに残しておけば、いずれ自分が誰かに渡すときに困りません。記録する習慣がある人は、人から引き継ぎを受けるときも、聞いたことを整理するのが上手になります。
2つ目は、分からないことを分類する習慣です。「言葉」「流れ」「理由」の3つに分ける考え方は、引き継ぎに限らず、新しい仕事を覚えるときにも使えます。
3つ目は、関係者とのつながりを持っておくことです。困ったときに聞ける人が社内外にいれば、前任者がいなくなっても仕事が止まりにくくなります。
業務の改善や仕組みづくりそのものを仕事にしている人もいます。業務の流れを整理し、ツールを入れて回る仕組みを作る仕事は、中小企業から特に求められています。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、こうした仕事の中身や求められる経験が紹介されています。経営全体の視点から業務を見直す力を身につけたい人には、中小企業診断士の資格のページも参考になります。
運営者の視点:在宅の仕事の引き継ぎで見えてきたこと
フリーランスや在宅ワークの仲介を長く続けてきた運営者の立場から見ると、会社員の引き継ぎと、業務委託の引き継ぎには共通する点があります。それは、うまくいく引き継ぎほど、受け取る側が「何を知らないか」を先に伝えているということです。
業務委託の仕事では、前の担当者から資料一式を受け取っただけで仕事を始めることも珍しくありません。そのとき、長く続く人ほど、最初の打ち合わせで「この部分の判断の理由を教えてください」「この略語は何を指していますか」と、分からないことを整理して聞いています。発注する側にとっても、何が分からないのかが早めに分かれば、説明の手間が少なくて済みます。
運営者として見てきた限りでは、依頼者と受け手が直接やり取りする形のほうが、こうした確認が早く進みます。間に人が入ると、質問と答えが行き来するたびに時間がかかり、細かな意図が抜け落ちやすくなるからです。仲介の手数料0%で直接取引できる仕組みは、金額の面だけでなく、こうした確認の手間を減らすという点でも、依頼者と受け手の双方にとって意味があると感じています。
在宅で業務の仕組みづくりを請け負う人の中には、デザインやシステムの仕事から入った人も多くいます。デザイナーの年収・単価相場では、デザインの仕事の相場が職種別にまとめられています。引き継ぎで身につけた「分からないことを整理して聞く力」は、どの職種で独立しても、最初の打ち合わせで信頼を得るための土台になります。アプリケーション開発のお仕事のように、前の担当者が書いた仕組みを読み解いて引き継ぐことが多い仕事では、なおさらこの力が問われます。
よくある質問
Q. 引き継ぎが理解できないのは自分の能力が低いからですか?
多くの場合、能力だけの問題ではありません。前任者が長年かけて身につけた仕事を短い期間で渡すため、前提となる知識や判断の理由が説明から抜けやすいのです。分からないことを「言葉」「流れ」「判断の理由」に分けて整理し、前任者にしか聞けない「理由」から優先して確かめると、理解は進みやすくなります。
Q. 前任者に同じことを何度も聞いてもよいですか?
聞いてかまいません。ただし、疑問が出るたびに声をかけるより、1日の終わりに15分ほど時間をもらい、まとめて聞くほうが前任者の負担は減ります。自分の理解を先に話してから「この理解で合っていますか」と確かめると、ずれている箇所だけを直してもらえるので、説明の時間も短くなります。
Q. 前任者が退職して、もう聞けないときはどうすればよいですか?
過去のメールやチャットの履歴、共有フォルダの更新日、前任者と一緒に仕事をしていた同僚や取引先から手がかりを集めます。それでも分からない部分は、自分で仮の手順を作り、上司に確認してもらいながら進めます。退職した前任者に直接連絡するかどうかは、会社の方針があるので上司に相談してから決めてください。
Q. 引き継ぎ期間が短すぎるときは上司に何と伝えればよいですか?
「理解できません」とだけ伝えるより、全体のどのくらいが理解できているか、分からないことの一覧、必要な手助け(前任者との時間を週2回取りたい、期間を延ばしたい、など)を具体的に伝えると、上司も調整しやすくなります。相談は引き継ぎ期間の半ばを過ぎる前に入れておくと、調整の時間が残ります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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