児童発達支援の人間関係|狭い職場での距離の取り方


この記事のポイント
- ✓児童発達支援の人間関係は
- ✓職員3人から5人という規模が原因で起きます
- ✓狭い職場で消耗せずに働くための具体的な距離の取り方を解説します
「仕事の中身は好きなんです。でも、人間関係がしんどくて」。
児童発達支援で働いている方から、この言葉を何度聞いたか分かりません。そして、そのあとにほぼ必ず続くのが、「こんなことで辞めたいと思う自分が情けない」です。
情けなくありません。断言します。
児童発達支援の職場で人間関係が重くなるのは、あなたの性格のせいではありません。その職場の構造がそうさせています。職員の人数、一日の動き方、情報の共有のされ方。この三つが噛み合うと、逃げ場のない状態が簡単に出来上がります。
逆に言えば、構造が原因なら、構造に手を打てます。
今日は、児童発達支援という職場で実際に何が起きているのかを分解したうえで、狭い職場で消耗しないための距離の取り方を具体的にお話しします。がまんしましょう、という話ではありません。
職員3人から5人という規模が、人間関係の形を決めている
まず、数字から見てください。ここがすべての出発点です。
児童発達支援事業所の人員配置は、おおむね障害児10人までに対して直接支援職員2人以上、10人を超えると5人ごとに1人を加える形になっています。定員10人規模の事業所が多いので、現場に立っているのは管理者と児童発達支援管理責任者を含めても4人から6人、というところが珍しくありません。
保育園を思い出してください。クラスが複数あって、学年ごとに担任がいて、職員室には十数人がいる。合わない人がいても、担当が違えば一日話さずに済みます。
児童発達支援では、それができません。
同じ90分の支援に、同じ相手と入ります。記録を書く机が隣です。休憩も同じ時間帯に重なります。合わない人がいると、逃げる場所が物理的に存在しません。
これが、狭い職場特有の重さです。
心理学では、閉じた集団ほど関係が濃くなり、小さな摩擦が増幅されやすいと説明します。難しい言い方をしなくても、みなさん体感で分かるはずです。人数が少ないほど、一人の機嫌が場を支配する。
もうひとつ、規模が生む問題があります。役割の境界が曖昧になることです。
5人しかいない職場では、「これは誰の仕事か」が決まっていないことが多い。教材の準備、掃除、備品の発注、保護者への連絡。気づいた人がやる、という運用になります。
最初は問題になりません。しかし半年もすると、「いつも自分ばかりやっている」という感情が必ず生まれます。そして、これは口に出しにくい。言えば「細かい人」だと思われそうだからです。
言えないまま溜まって、ある日、まったく別の些細なことで爆発する。この流れ、本当によくあります。
ですから最初にお伝えしたいのは、あなたが感じている重さは、人数という構造から来ているということ。相性の問題だと決めつける前に、そこを見てください。
一日の中で、摩擦が起きる場所は決まっている
次に、具体的にどこで衝突が起きるのかを見ます。散らばっているように見えて、実は場所が限られています。
朝の準備の時間。その日の受け入れに向けて、教材を出し、部屋を作ります。ここで、誰がどこまでやるかの認識がずれます。「前日に用意しておくべきだった」「いや、当日に子どもの様子を見てから決めるものだ」。どちらも正しいので、決着しません。
支援中の交代。子どもが落ち着かなくなったとき、誰がどう入るか。ここは技術の差が出るので、感情が乗りやすい場所です。「なぜあのタイミングで代わってくれなかったのか」「勝手に入ってきて、こちらの意図が崩れた」。これも双方に言い分があります。
記録を書く時間。降所後の限られた時間に、全員が書きます。ここで、書く速度の差、書く内容の濃さの差が可視化されます。早く終わった人が先に帰ると、残された人に感情が生まれます。
降所時の保護者対応。誰がどの保護者に何を伝えたか。ここが共有されていないと、別の職員が違うことを伝えて、保護者が混乱します。そして「聞いていない」という言葉が飛びます。
片付けと締め作業。一日の最後。全員が疲れています。疲れているときの一言は、想定の三倍きつく届きます。
五つ挙げました。共通しているのが分かるでしょうか。
すべて、事前に決めておけば起きないことです。
つまり、児童発達支援の人間関係の多くは、性格の不一致ではなく、取り決めの不在から生まれています。ここを取り違えると、「あの人が悪い」で止まってしまい、何も改善しません。
具体策をひとつ。摩擦を感じたら、その場面をメモしてください。感情ではなく、事実だけ。「火曜、降所後。記録の時間に、Aさんが先に退勤。残りの片付けを自分がやった」。これを二週間続けると、パターンが見えます。
パターンが見えたら、初めて人に言えます。「毎回こうなっているので、当番を決めませんか」。感情ではなく事実で切り出せば、相手も反発しません。
児発管との関係が、いちばん仕事の質に効く
小さな職場の中でも、関係の重心がある場所があります。児童発達支援管理責任者、通称、児発管との関係です。
児発管は、一人ひとりの個別支援計画を作る人です。保護者から聞き取り、子どもを評価し、目標を立て、支援内容を決めます。そして定期的にモニタリングして、計画を見直します。
現場の職員が毎日書いている記録は、この計画とモニタリングを支える材料になります。つまり、児発管と現場は、構造的に上下ではなく前後の関係です。
ところが、ここがうまく噛み合わないことが多い。
よくあるのが、「計画が現場に合っていない」というずれです。計画には「言語での要求を増やす」と書いてある。しかし現場で見ていると、その子は今、要求以前に場に慣れることで精一杯だと感じる。
ここで職員が取る行動は、だいたい三つに分かれます。
一つめ、計画どおりにやろうとして無理が出る。子どもにも自分にも負荷がかかります。
二つめ、黙って自分の判断でやり方を変える。これをやると記録と計画がずれて、モニタリングのときに話が噛み合わなくなります。そして「勝手なことをする人」という評価がつきます。
三つめ、児発管に伝える。これが正解なのですが、言い方が難しい。「この計画、合っていないと思います」だと否定になります。
伝えるときのコツは、評価ではなく観察を渡すことです。
「先週から三回、入室してから最初の10分は棚のほうを向いていて、こちらの声かけに反応がありませんでした。10分過ぎると参加できています。計画の目標に入る前に、この10分をどう扱うか相談させてください」。
これなら、児発管は判断材料を受け取れます。否定されたとも感じません。
児発管が管理者と兼務している事業所では、この相談の時間が取りにくいことがあります。現場に入りきれず、書類と外部対応で手一杯になるからです。相談したいのに捕まらない、という状態が続くと、現場は孤立します。
もしあなたが今その状態にあるなら、口頭でつかまえようとするのをやめて、書面に切り替えてください。短いメモで構いません。「この件、相談したいです」と書いて渡す。相手の都合のよいときに読んでもらえます。口頭にこだわると、いつまでも届きません。
他職種との距離、ここで遠慮しすぎる人が多い
児童発達支援の事業所には、保育士や児童指導員のほかに、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、公認心理師が在籍していることがあります。事業所によって顔ぶれは違いますが、複数の専門職が同じ場にいるのが、この分野の特徴です。
そして、ここで起きやすいのが、遠慮です。
「専門職の方に、こんな基本的なことを聞いていいのだろうか」。この感覚を持つ方が非常に多い。特に、保育士としての経験は長いけれど療育は初めて、という方に多く見られます。
はっきり申し上げます。聞いてください。
他職種の側から見ると、現場で長時間その子を見ているのは保育士や児童指導員です。専門職が関われるのは週に一度、あるいは月に数回という事業所もあります。日常の様子を持っている人からの情報は、専門職にとって貴重です。
聞き方にもコツがあります。「どうすればいいですか」ではなく、「こういう場面があったのですが、どう見えますか」と聞く。前者は答えを求める形なので、相手は責任を感じて構えます。後者は見立てを聞く形なので、答えやすい。
逆のパターンもあります。専門職の側が孤立している事業所です。
保育士や児童指導員のチームが出来上がっていて、後から入った専門職が輪に入れない。あるいは、専門職が提案した内容が「現場を分かっていない」と受け取られる。これも実際に起きています。
どちらの立場であっても、共通する解決策があります。それは、相手の仕事の時間軸を知ることです。
保育士は一日の流れで動きます。専門職は評価と介入のサイクルで動きます。この時間軸が違うことを知らないと、「なぜすぐ動いてくれないのか」「なぜこんな急に言ってくるのか」という不満になります。
多職種が集まる職場でこうした調整ができる人は、どこでも重宝されます。相手の話を構造的に聴き取って整理する技術は体系化されていて、キャリアコンサルタントのような対人支援の資格で扱われる内容が、そのまま職場内の調整に使えます。
事業所とセンターでは、人間関係の質が変わる
ここで、職場の種類による違いに触れておきます。同じ児童発達支援でも、規模と機能がまったく違う場合があるからです。
児童発達支援センターは、地域の中核的な役割を担う施設です。通所支援だけでなく、保育所等訪問支援や相談支援も行い、地域の園や学校と連携します。
児童発達支援センターとは、地域で生活する障害のある子供たちを対象に、基本的日常生活動作の指導・自活に必要な知識や技能の獲得・集団生活への適応のための訓練を行う施設です。その他、利用される児童の家族への支援や、保育所・幼稚園といった障害のある子供たちを預かる機関との連携・相談・支援も行っています。施設に通う子どもの通所支援のほか、当施設では保育所等訪問・児童発達支援・相談支援のサービスの提供(未就学児が対象)も行っており、法人内に放課後等デイサービス(小学生~高校生が対象)を提供する施設も運営することで就学前~高校卒業まで一貫した環境で安心して通える施設を目指しています。 出典: shinkikai.net
この一文から読み取ってほしいのは、センターには外部との接点が多いということです。
外部との接点が多いということは、職員数が多く、部門が分かれ、会議が組織的に行われるということでもあります。人間関係の悩みは、小規模事業所とは質が変わります。密着の重さではなく、部門間の調整や、決定までの時間の長さが問題になりやすい。
一方、定員10人規模の事業所は、意思決定が速い代わりに、逃げ場がありません。
どちらが良いという話ではなく、自分がどちらの負荷に強いかです。「人が多い中で埋もれるのがつらい」なら小規模、「密着した関係が苦手」ならセンターや多機能型の大きな法人。この軸で選ぶと、入ってからのずれが減ります。
系列の放課後等デイサービスを併設している法人では、応援で行き来することがあります。行き来があると、関係が固定されにくくなるという利点があります。合わない人と毎日顔を合わせなくて済むからです。求人を見るときの隠れた判断材料になります。
保護者との距離、近づきすぎると必ず崩れる
人間関係の話で、職員同士だけを見ていると足りません。児童発達支援では、保護者との距離が大きな比重を占めます。
この職場の保護者は、多くの場合、不安を抱えて来ています。健診で指摘された、園から言われた、自分で気づいた。経緯はさまざまですが、「この先どうなるのか」が見えない状態にある方が多い。
だから、話を聞いてくれる職員に強く依存することがあります。
ここで起きるのが、境界の崩壊です。
個人の連絡先を教えてしまう。勤務時間外に相談に乗る。他の職員の対応について愚痴を聞いてしまう。最初は親切心です。しかし、この関係は必ず破綻します。
理由は二つ。
ひとつは、あなたが持たないから。一人の保護者に時間を割けば、他の保護者に割く時間が減ります。そして、あなた自身の生活が削られます。
もうひとつは、事業所の中で孤立するから。「あの人だけが特別扱いしている」という見え方になります。他の職員が同じ保護者に対応したとき、「前の人はやってくれたのに」と言われる。あなたの親切が、同僚の負担になります。
私が現場の方にお伝えしているのは、「窓口を個人にしない」ということです。
深い相談を受けたときは、「大事なお話なので、児発管も一緒に聞かせてください」と返す。これは突き放すことではありません。むしろ、その保護者にとって確実な支援につながります。個人ではなく事業所として受けるほうが、継続性があるからです。
もうひとつ、時間の区切りを最初に置く方法があります。「今日はあと10分ほどお話しできます」と先に言う。これだけで、話す側も要点から入ってくれます。
私自身、この仕事を始めた頃、相談の時間を延ばすことが誠実さだと思っていました。時間を延ばせば延ばすほど、相手の役に立っていると思い込んでいたんです。実際は逆でした。延ばした分だけ自分の集中が切れて、後半の受け答えが雑になっていた。区切りを守るようになってから、短い時間のほうがかえって深く話せることが分かりました。
境界を引くことは、冷たさではありません。長く続けるための技術です。
合わない人がいるときの、現実的な三つの手
それでも、どうしても合わない人がいることはあります。ここは正直に書きます。
まず、全員と仲良くする必要はないということを、前提に置いてください。職場は友人を作る場所ではありません。仕事が回れば十分です。
そのうえで、三つの手があります。
一つめ、接点を業務に限定する。雑談をやめる、という意味ではありません。感情的な話題に入らない、ということです。他の職員の評価、家庭の事情、過去の職場の話。こうした話題に踏み込まないだけで、摩擦は大きく減ります。相手から振られたら、「そうなんですね」で受けて、別の話に移す。反応しないことが、いちばん強い防御になります。
二つめ、事実の記録を残す。理不尽な指示、明らかに不適切な発言があるなら、日時と内容をメモしてください。感情を書かず、事実だけ。これは戦うためではなく、自分の認識を保つためです。人は繰り返し否定されると、自分の感覚のほうを疑い始めます。記録があると、そこで踏みとどまれます。
三つめ、外に相談先を持つ。職場の中だけで解決しようとしないでください。小さな職場では、誰に相談しても本人に伝わる可能性があります。法人の本部、系列の別事業所の管理者、あるいは職場の外の相談窓口。自分の状況を客観的に話せる相手を、一人でいいので確保してください。
そして、この三つを試しても改善しないなら、移ることを考えてよいと思います。
これは逃げではありません。児童発達支援の事業所数はこの十数年で大きく増えており、選択肢は以前より広がっています。同じ資格、同じ経験で、別の職場を探せます。
待遇の相場を知っておくと、移るかどうかの判断がしやすくなります。保育士資格を持って児童発達支援に入る方は多いので、保育士の年収・単価相場でまず全体の水準を掴んでください。福祉の他分野と比べたいなら、介護職員の年収・単価相場と並べると、自分がどの条件を優先したいかがはっきりします。
自分のキャリアをどう組み立て直すかを整理したいときは、職場・転職・キャリア相談のお仕事のような、キャリアの相談そのものを扱う仕事の視点が参考になります。相談する側の論点を知っておくと、自分の状況も整理しやすくなります。
見学と面接で、職場の空気を見抜く方法
移るにしても、同じ失敗を繰り返したくないはずです。ここを見てください。
困っている職員に、誰かが動いているか。見学のとき、これだけを見てください。子どもが落ち着かなくなった場面で、周りの職員がどう動くか。自然に代わりに入る職場は、関係が出来ています。見て見ぬふりをする職場は、そうではありません。
職員同士の呼び方。名前で呼び合っているか、役職で呼んでいるか、あるいはほとんど声をかけ合っていないか。声の量ではなく、声をかける回数を見てください。
記録の時間に会話があるか。降所後、黙々と書いているだけの職場と、「今日のあの場面どう思った」と話している職場があります。後者は、判断を共有する文化があるということです。
児発管が現場にいるか。見学の時間帯に、児発管がどこにいるか確認してください。事務所にこもりきりなら、現場との距離があります。
面接で聞くこと。「職員同士で支援の方針を話す時間は、どれくらいありますか」。この質問への答えが具体的なら、その職場には共有の仕組みがあります。「必要に応じて」としか返ってこないなら、決まった時間はないということです。
もうひとつ、離職の状況を聞いてよいと思います。「直近1年で退職された方はいますか」。答えにくそうにする事業所より、「いました、こういう理由で」と率直に話す事業所のほうが、入ってからの誠実さも期待できます。
情報が口頭でしか流れない職場は、必ずこじれる
もうひとつ、小規模事業所で人間関係が壊れる典型的な原因があります。情報共有の仕組みがないことです。
職員が5人しかいない職場では、「言えば伝わる」と思われがちです。実際、その場にいれば伝わります。問題は、その場にいなかった人です。
シフト制の事業所では、全員が揃う日がありません。午前だけの職員、午後だけの職員、週3日勤務の職員が混ざります。そこで口頭だけの共有をしていると、抜ける人が必ず出ます。
そして、抜けた人が知らずに違う対応をする。保護者から「前は違うことを言われた」と指摘される。誰かが責任を問われる。この流れで、職場の空気が一気に悪くなります。
多くの場合、悪いのは誰でもありません。仕組みがないだけです。
ここで効くのは、たった一つのルールです。保護者に伝えたことは、必ず書いて残す。
書く場所はどこでもいい。共有ノートでも、事業所のシステムでも構いません。大事なのは、「伝えた内容」と「伝えた相手」と「伝えた人」の三つが残ることです。これがあるだけで、「聞いていない」という言葉がほぼ消えます。
私が相談を受ける中で感じるのは、この種の問題を「確認不足」として個人のせいにしてしまう職場が多いということ。個人の注意力に頼る運用は、必ず破綻します。人は疲れるからです。
もうひとつ、支援内容の共有も同じです。
「今日、この子にこういう関わり方をして、うまくいった」。この情報が個人の頭の中に留まると、翌日別の職員が同じ場面でゼロから試行錯誤することになります。子どもにとっても負担です。
短くていいので、記録に残す。1行で十分です。「棚の前で止まったとき、声をかけずに20秒待つと自分で動いた」。この1行があるかどうかで、チームの動きが変わります。
もし今の職場に共有の仕組みがないなら、自分の分だけでも始めてみてください。人を変えようとするより早い。そして、書いたものが役に立った瞬間に、周りも真似を始めます。
シフトと休憩が、人間関係のいちばん深いところに刺さる
見落とされやすいのですが、勤務時間の組み方が関係に与える影響は非常に大きいです。
児童発達支援の事業所では、午前と午後で別のグループを受け入れる形が中心です。9時台から11時台、13時台から15時台。この間に、記録、準備、保護者対応が挟まります。
問題は、休憩をどこで取るかです。
支援と支援の合間に昼休憩を置く事業所が多いのですが、この時間帯は保護者からの電話が来やすく、記録の続きも残っています。結果として、休憩が名ばかりになる。
そして、ここで差が出ます。きちんと休憩を取る人と、取らずに作業を続ける人。
取らない人は、内心で「自分は頑張っている」と思います。取る人は、「周りが働いているのに休むのは気まずい」と感じます。どちらも消耗します。そして、この構図が続くと確実に感情が溜まります。
私がお伝えしているのは、休憩は個人の判断で決めないこと、です。
管理者に、休憩の時間帯を明示してもらってください。「12時から13時は電話を留守番に切り替える」でもいい。決まりがあれば、個人の気まずさが消えます。
送迎業務がある事業所では、さらに複雑になります。運転する人と、事業所に残る人で、負荷の質が違うからです。運転は責任が重く、天候や道路状況に左右されます。一方、残る人は片付けと記録を引き受けます。
どちらが大変かを比べても答えは出ません。大事なのは、固定しないことです。同じ人がいつも運転している事業所では、その人に負荷が集中し、周りはそれに気づきません。
応募の段階で、送迎の担当がどう決まっているかを聞いてください。「手が空いている人が行く」という答えなら、実際には決まった人が行っています。
一日の終わりに、自分の状態を確かめる習慣
人間関係の悩みは、気づいたときにはかなり進行していることが多いです。早めに気づくための方法を一つ置いておきます。
帰るときに、その日の自分の状態を三段階で記録してください。良い、普通、しんどい。それだけです。理由は書かなくて構いません。
1か月続けると、パターンが見えます。特定の曜日だけしんどい。特定の人と組んだ日だけしんどい。あるいは、全体としてじわじわ下がっている。
これが分かると、対処の仕方が変わります。曜日のパターンなら、その日の業務量を調整できるかもしれない。特定の人との組み合わせなら、シフトの相談ができるかもしれない。全体が下がっているなら、職場の問題ではなく自分の疲労かもしれない。
心理学では、自分の状態を観察することをセルフモニタリングと呼びますが、難しく考える必要はありません。三段階のメモだけで十分です。
そして、しんどいが二週間続いたら、誰かに話してください。職場の中でも外でも構いません。話すことで解決しなくても、言葉にした時点で整理が進みます。
私自身、相談を受ける仕事をしていながら、自分が消耗していることには気づくのが遅れました。人の話を聞くのが仕事なので、自分の状態を後回しにする癖がついていたんです。記録を始めてから、下がり始めた時点で気づけるようになりました。
あなたの感じているしんどさは、記録に値します。気のせいにしないでください。
狭い職場で長く続いている人を見てきて
この市場を20年見てきた運営者の立場から、ひとつ付け加えます。
人数の少ない現場で長く続いている人には、共通点があります。人当たりがよいことでも、我慢強いことでもありません。「自分の担当範囲を、自分で言葉にできる」ことです。
どこまでが自分の仕事で、どこからが他の人の仕事か。それを自分の中で決めて、必要なときに口に出せる。この一点があるかどうかで、消耗の度合いがまるで違います。
これは、在宅で業務を受ける働き方でも同じです。中間に何も挟まらず、直接やりとりする関係ほど、双方の得は大きくなります。発注する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側は手取りが厚くなる。ただしその関係が続くのは、役割の線が引けている場合だけです。線がないまま親しくなると、境界のない依頼が増えて、結局どちらも疲れます。
福祉の現場でも、業務委託の現場でも、長く続く関係の条件は同じでした。距離を取ることと、関係を切ることは違います。
今日から試せること
最後に、明日の勤務から使える手順を置いておきます。
摩擦の場面を、事実だけで二週間メモする。感情を書かないのがコツです。書いているうちに、相手ではなく仕組みの問題だと気づく場面が必ず出てきます。
「決まっていないこと」を一つだけ挙げる。片付けの当番でも、保護者対応の共有方法でも構いません。一つに絞って、児発管か管理者に提案してください。全部を変えようとすると何も進みません。
相談は口頭にこだわらない。捕まらない相手には、短いメモを渡す。読んでもらえる形にするだけで、届く確率が変わります。
職場の外に、話せる相手を一人つくる。同業でも、まったく別分野でも構いません。中の論理だけで考えていると、自分の感覚がずれていきます。
そして、もし今すでに眠れないほど消耗しているなら、改善策を試す前に休んでください。疲れているときの判断は、どうしても悲観に寄ります。休んでから見ると、同じ状況が違って見えることがあります。
狭い職場がつらいのは、あなたが弱いからではありません。人数が少ないという構造が、そうさせているだけです。構造が分かれば、打つ手はあります。あなたは一人で抱える必要はありません。
よくある質問
Q. 児童発達支援の職場はなぜ人間関係が濃くなりやすいのですか?
職員数の少なさが原因です。定員10人規模の事業所では現場に立つ職員が4人から6人程度で、同じ支援に同じ相手と入り、記録も休憩も重なります。保育園のように担当が分かれて距離を取ることができないため、小さな摩擦が増幅されやすくなります。性格の相性より構造の問題として捉えてください。
Q. 児発管の作った個別支援計画が現場に合わないとき、どう伝えればよいですか?
評価ではなく観察を渡してください。「この計画は合っていない」ではなく、「入室後の10分は声かけに反応がなく、10分過ぎると参加できています」のように、日時と事実で伝えます。判断材料として渡せば否定に受け取られず、計画の見直しにもつながります。黙ってやり方を変えるのは避けてください。
Q. 保護者と親しくなりすぎたとき、どう距離を戻せばよいですか?
窓口を個人から事業所に移すのが基本です。深い相談を受けたら「大事なお話なので児発管も一緒に聞かせてください」と返します。突き放すのではなく、継続性のある支援につなぐ形です。個人の連絡先を教える、勤務時間外に相談を受ける、といった対応は必ず破綻するため避けてください。
Q. 見学のときに職場の人間関係を見抜くポイントはありますか?
困っている職員に誰かが自然に動いているかを見てください。子どもが落ち着かなくなった場面で周囲が代わりに入る職場は、関係ができています。あわせて、降所後の記録の時間に支援について会話があるか、児発管が現場にいるかも確認してください。面接では方針を話し合う時間の有無を聞くと具体性が出ます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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