院内保育を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

中西 直美
中西 直美
院内保育を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

この記事のポイント

  • 院内保育を辞めたいと感じたら
  • 保育そのものの4つに切り分けてください
  • 施設側の運用の問題なら辞める前に直せます

「院内保育、もう辞めたいんです」

このご相談を受けたとき、私がいちばん最初にお伝えするのは「辞めるかどうかは、あとで決めましょう」ということです。

冷たく聞こえたらごめんなさい。引き止めたいわけではありません。ただ、辞めたい気持ちが強いときほど、原因が1つに見えてしまうんです。本当は複数の要因が重なっているのに、いちばん目立っているものだけが犯人に見える。その状態で職場を変えると、次の職場でも同じことが起きます。

だから、出ていく前に切り分けておく。切り分けたうえで辞めるなら、それは良い辞め方です。

この記事では、院内保育所という職場で「辞めたい」が生まれる原因を4つに分け、それぞれに何ができるかを整理します。辞めると決めた場合の手順も、最後に書きます。大丈夫です。あなたは一人ではありません。

「辞めたい」の中身を、4つに切り分ける

まず、紙とペンを用意してください。頭の中だけでやると、感情が強いほうに引っ張られます。

辞めたい理由を、次の4つに分けて書き出します。

1つ目、体とシフトのこと。早朝や夜勤で生活リズムが崩れている。休みが取れない。腰が痛い。疲れが抜けない。

2つ目、人のこと。特定の人と合わない。相談できる相手がいない。責任者の判断に納得できない。保護者への対応が負担。

3つ目、お金と条件のこと。給与が見合わない。残業代が出ない。昇給がない。将来が見えない。

4つ目、仕事そのもののこと。保育以外の業務が多すぎる。行事がなくて物足りない。1人で判断するのが怖い。この仕事自体を続けたいと思えない。

書き出したら、それぞれに点数をつけてみてください。10点満点で、いまどれくらい重いか。

多くの方は、ここで意外な結果になります。「人間関係が全部だと思っていたけれど、実は睡眠不足のほうが重かった」。こういうことが本当によく起きます。疲れているときは、人の言葉が刺さりやすくなるからです。

院内保育の現場で挙がる負担の声は、業界の調査でも整理されています。

院内保育がきついと言われる理由には、夜勤や不規則シフトによる体力的な負担、少人数体制ゆえの人間関係と休みづらさ、医療現場に合わせた急な残業などが挙げられます。一方で「行事が少ない」「子どもとじっくり関われる」といった魅力もあります。今回は、院内保育で働く保育士さんからよく聞かれる声をもとに、きついと感じる理由TOP5形式で紹介。あわせて、きつさを和らげる方法もまとめました。 出典: hoikushibank.com

夜勤と不規則シフト、少人数ゆえの人間関係と休みづらさ、急な残業。並んでいる要因は、どれも施設の構造から来ています。つまり、あなたの性格や努力が足りないから起きているわけではありません。ここを先に知っておいてください。

点数をつけたら、いちばん重い項目から順に、次の節を読んでください。全部読まなくて構いません。いま必要なところだけで大丈夫です。

体とシフトが原因のとき

いちばん多いのがここです。そして、いちばん先に手を打つべきなのもここです。

院内保育所は病院のシフトに合わせて開いています。施設によっては24時間開所していて、早朝から夜間まで人を配置します。日勤と夜勤が混ざったシフトで働いていると、体内時計が安定しません。これは根性の問題ではなく、生理的な反応です。

まず確認してほしいのが、休憩が実際に取れているかどうかです。労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければならないと定められています。保育室から離れられず、食事をしながら子どもを見ている状態は、休憩ではありません。

次に、勤務の間隔です。夜勤明けの翌日に早番が入っていないか。連続した勤務の間に十分な時間があるか。シフト表を1か月分並べて、休みの配置を見てください。連休がまったくない月が続いているなら、それは組み方の問題です。

そして、ここが大事なのですが、シフトの希望は言葉にしないと伝わりません

「夜勤を減らしてほしい」「日勤固定にしてほしい」。言いにくいのはよく分かります。人が足りない職場だと、自分が言ったせいで誰かの負担が増えると考えてしまう。でも、あなたが倒れたら、その負担はもっと大きくなります。

言い方のコツをお伝えします。「できません」ではなく「この形なら続けられます」と伝えてください。「夜勤は月1回までなら入れます」「早番と遅番が同じ週に重ならなければ大丈夫です」。条件を示すと、相手は調整の余地を探せます。ただ断られるより、ずっと話が進みます。

腰痛については、労災の対象になる可能性があります。保育中の抱き上げによる腰痛は、業務との関連が認められれば業務災害です。パートでも派遣でも、労災保険は適用されます。痛みが続いているなら、我慢せず受診して、業務で負傷した旨を医師に伝えてください。

体の問題は、放っておくと他の全部を悪化させます。ここから手を付けるのが、いちばん効率がいいんです。

人間関係が原因のとき

院内保育所は、職員が数人しかいない職場です。定員10人から20人の施設なら、常勤とパートを合わせても5人前後ということが珍しくありません。

この人数だと、合わない人が1人いるだけで、職場の半分が苦しくなります。認可保育園なら別のクラスに移る選択肢がありますが、院内保育所にはそれがない。逃げ場がないというのは、事実です。

だから、まずお伝えしたいのは、「人間関係が原因で辞めたい」と感じるのは弱さではないということです。構造的に、そうなりやすい場所にいます。

そのうえで、できることを3つ挙げます。

1つ目、事実と解釈を分ける。「あの人は私のことを嫌っている」は解釈です。「先週、引き継ぎのときに3回、目を合わせずに話された」は事実です。紙に書き出すと、思っていたより事実が少ないことに気づくことがあります。逆に、事実がはっきり並ぶなら、それは相談できる材料になります。

2つ目、職場の外に話せる相手を持つ。少人数の職場では、職場の中の誰かに相談すると、必ず全員に伝わります。それが悪いわけではありませんが、本音を出しにくくなります。同業の知人、前の職場の同僚、家族。誰でも構いません。職場の外に1人いるだけで、ものの見え方が変わります。

3つ目、運営主体の相談窓口を確認する。院内保育所には、病院が直接運営している施設と、保育事業者に委託している施設があります。委託運営なら、運営会社に人事や労務の担当がいます。派遣で働いているなら、派遣会社の担当者が窓口です。施設の中だけで解決しようとしないでください。

それから、保護者との関係で悩んでいる方へ。相手は同じ建物で働いている医療職です。夜勤明けで疲れきった状態でお迎えに来る方に、こちらの説明が届かないと感じることがあります。

これは、あなたの伝え方の問題ではないことが多いです。相手に受け取る余裕がないだけ。伝える内容を短くして、「今日の様子は連絡ノートに書いてあります」と添える。それで十分です。全部をその場で伝えようとしなくて大丈夫ですよ。

給与や条件が原因のとき

お金の話は、口に出しにくいですよね。でも、ここを曖昧にしたまま働き続けると、不満が静かに溜まります。

まず、自分の条件が相場の中でどの位置にあるかを確かめてください。感覚で「安い」と思っていても、実際には平均的だということがあります。逆に、明らかに低いこともあります。どちらなのかを知らないと、交渉も転職も判断できません。

雇用形態と地域による給与の幅は保育士の年収・単価相場にまとまっています。まずここで、自分の条件を確認してみてください。

あわせて見ておいてほしいのが看護師の年収・単価相場です。院内保育所は、看護師をはじめとする医療職に働き続けてもらうための設備として維持されています。つまり、この保育室は病院の人材確保策の一部です。施設が簡単に閉じられない理由も、そこにあります。この構造を知っておくと、交渉のときに「保育所を維持することが病院にとってどれだけ重要か」を踏まえた話ができます。

次に、支払われていないものがないかを確認してください。

残業代。労働時間は1分単位で計算するのが原則です。15分単位で切り捨てている施設があれば、それは本来認められていません。

引き継ぎの時間。勤務時間に含まれていますか。毎日15分の無給労働が発生しているなら、月に5時間ほどになります。

有給休暇。雇い入れから6か月継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤していれば、年次有給休暇が発生します。パートでも、勤務日数に応じて付与されます。残日数を確認してください。

社会保険。週の所定労働時間が20時間以上、賃金が月額8.8万円以上、雇用期間が2か月を超える見込みという条件を満たすと、一定規模の事業所では加入対象になります。要件は日本年金機構の案内で確認できます。加入すべき状態なのに手続きされていない場合があるので、保険証の有無を確かめてください。

昇給については、施設によって仕組みがあったりなかったりします。契約更新のタイミングで、「昇給の仕組みはありますか」と聞いてみてください。仕組みがない施設で長く待っても、上がりません。それが分かっただけでも、判断材料になります。

仕事そのものが合わないと感じるとき

4つ目です。ここは、他の3つとは性質が違います。

院内保育所では、保育以外の業務が保育士に回ってきます。配膳、下膳、清掃、洗濯、備品の管理、利用申請の受付。認可保育園なら別の職員が担当していた仕事です。「保育士として採用されたのに、なぜこれをやるのか」という気持ちが消えないなら、それは環境との相性の問題です。

行事がないことが物足りない、という声もよく聞きます。院内保育所には運動会も発表会もほとんどありません。保護者が交代勤務で揃わないからです。行事を通じて子どもの成長を見たい方には、確かに物足りない。

夕方以降に1人で判断するのが怖い、という方もいらっしゃいます。この不安は健全です。問題は、不安を抱えたまま誰にも言わないこと。迷ったときに連絡できる相手を、あらかじめ決めておいてください。それだけで、かなり軽くなります。

ここで大事なのは、「院内保育が合わない」と「保育が合わない」を分けることです。

院内保育所の特徴は、少人数、混合保育、業務の幅広さ、病院のシフトに連動した開所時間です。この4つが合わないだけなら、認可保育園や小規模保育園に移れば解決します。

一方で、子どもと関わること自体に負担を感じているなら、それは別の話です。その場合は、保育以外の道も視野に入れてください。保護者の話を短時間で聞き取ってきた経験は、人を支える仕事に自然につながります。相談業務の実際については職場・転職・キャリア相談のお仕事に概要があり、資格としてはキャリアコンサルタントが体系立っています。

どちらなのかを判断するには、少し時間が要ります。急がなくて大丈夫です。

辞めたくなる時期には、波があります

もう1つ、切り分けの材料をお渡しします。辞めたい気持ちが強くなる時期には、ある程度決まった波があるんです。自分がいまどの波にいるのかが分かると、それだけで少し落ち着きます。

入職から1か月目。覚えることが多すぎて、手応えがまったくない時期です。院内保育所は預かる子どもが日替わりで、保護者の勤務部署まで把握する必要があります。認可保育園のように固定のクラスがないので、覚える対象が「人」ではなく「人と時間の組み合わせ」になる。この時期のつらさは、能力ではなく情報量の問題です。手元のノートに、子どもの名前と保護者の勤務部署と迎えの時間帯をセットで書いておくと、負荷がぐっと下がります。

3か月目。仕事の流れは掴めてきたのに、まだ自分の型ができていない時期です。ここで「自分は要領が悪いのではないか」と感じる方が多い。でも、少人数の施設は手順書が整備されていないことが多く、型は自分で作るしかありません。作っている途中でつまずくのは当然です。先輩の動きを見て、順番を書き起こしてください。その紙が、そのままあなたの型になります。

半年から1年。ここがいちばん相談の多い時期です。仕事は回せるようになったのに、業務の幅の広さや人間関係の近さが、はっきり見えてくる。慣れたからこそ、見なくて済んでいたものが見えるようになります。この時期の「辞めたい」は、環境への評価としてかなり正確なので、真面目に受け取ってください。ただし、この時期は疲労も溜まっています。まず休みを取って、それから判断してください。

3年目前後。今度は、先が見えないことがつらくなります。院内保育所は職員数が少ないため、主任や施設長のポストが極端に少ない。何年働いても役職がつかないことは普通にあります。ここでの「辞めたい」は、いまの職場への不満というより、キャリアの停滞感です。役職以外で自分の成長を測る軸を持てるかどうかが分かれ目になります。

季節の波もあります。感染症が広がる冬、預かり人数が増える年度替わり、職員が抜けて補充されるまでの期間。この時期の気持ちは一時的なものなので、その最中に大きな決断をしないでください。落ち着いてから、もう一度考える。それで十分間に合います。

施設の規模と運営主体で、つらさの中身が変わる

「院内保育がつらい」と感じているとき、その原因が院内保育という働き方そのものにあるのか、いま勤めている施設の条件にあるのかを分けてください。同じ院内保育でも、規模と運営主体で中身がかなり違います。

大学病院や大規模な総合病院に併設された保育所は、預かる子どもが多く、職員も十人前後います。この規模になると、シフトが早番、中番、遅番、夜勤と整理され、手順書や研修も用意されています。休みも取りやすい傾向があります。つらさの中身は、組織としての窮屈さや、子ども一人ひとりと関わる時間の短さに寄ります。

中規模の病院に併設された保育所が、いわゆる院内保育の典型です。定員は十人から二十人、職員は常勤とパートを合わせて数人。手順が決まっていないぶん自分で組み立てる必要があり、業務の幅も広い。人間関係の近さと休みづらさが出やすいのはこの層です。求人数もいちばん多いので、次を探すときも選択肢が多くあります。

クリニックや小規模な病院の託児所は、預かる子どもが数人、職員も一人か二人。相談できる同僚が物理的にいません。1人で判断することが怖いと感じている方が、この規模の施設にいるなら、それは性格の問題ではなく体制の問題です。規模の大きい施設に移るだけで、そのつらさは消えることがあります。

運営主体でも違います。病院が直接運営している施設は、病院本体の規程に近い形で休暇制度が整備されている場合があり、有給が取りやすいことがあります。保育事業者への委託運営は、条件の柔軟性がある代わりに、委託契約の更新時に運営会社が変わることがあります。運営会社が変わると、就業規則も労務の担当者も入れ替わる。いま感じている不満が、運営会社の方針から来ているのであれば、同じ院内保育でも別の運営会社の施設に移れば変わります。

つまり、「院内保育を辞める」という結論に飛ぶ前に、「規模を変える」「運営主体を変える」という選択肢があります。この2つを試さずに保育の仕事そのものを離れてしまうのは、もったいないことがあります。

施設の運用に問題があるなら、辞める前に直せます

ここ、いちばんお伝えしたいところです。

次の項目に当てはまるなら、それは施設の運用の問題であって、あなたの適性の問題ではありません。そして、辞める前に改善を求められる項目です。

休憩が取れない。引き継ぎの時間が勤務時間に含まれていない。残業代が切り捨てられている。有給休暇の取得を認めてもらえない。契約にない業務を求められる。契約にない夜勤を一方的に指示される。教える人がいないまま1人で保育室を任される。

これらに気づいたら、まずやってほしいのは記録です。

何月何日、何時から何時まで働いたか。誰に何を言われたか。どの業務を求められたか。手帳でも、スマートフォンのメモでも構いません。日付と内容が残っていればいい。

記録があると、話が変わります。施設と話し合うときも、労働基準監督署に相談するときも、根拠になるからです。※記録がないまま相談しても、話は前に進みにくいのが実情です。

そのうえで、伝える順番があります。まず直属の責任者。次に、運営会社の労務担当か病院の人事。派遣なら派遣会社の担当者。ここまでで動かないなら、外部の相談窓口です。都道府県労働局の総合労働相談コーナーでは、無料で相談を受け付けています。

改善を求めることは、わがままではありません。続けるための手続きです。そして、改善を求めた結果として職場が変わるなら、辞めずに済みます。何も言わずに辞めると、次に入る人も同じ思いをします。

もちろん、言っても変わらない職場もあります。そのときは、堂々と出ていってください。やることはやった、と自分で言える状態で辞めるのは、次の職場での自信につながります。

辞めると決めたときの手順

切り分けた結果、やはり辞めると決めた方へ。順番を書きます。

1、就業規則と契約書を確認する。退職の申し出をいつまでにするか、就業規則に書かれています。期間の定めのない雇用なら、民法上は申し出から2週間で退職できますが、実務上は1か月前が一般的です。有期契約なら、契約期間の満了に合わせるのがいちばん揉めません。派遣なら、契約の満了で終えられます。

2、有給休暇の残日数を確認する。辞める前に消化してください。退職日を決めるとき、残日数を計算に入れて逆算します。

3、次の当てを、辞める前に作る。これは強くおすすめします。在職中に探すほうが、条件を冷静に比べられます。辞めてから探すと、焦りが判断を鈍らせます。

4、退職の申し出は書面で残す。口頭だけだと「聞いていない」と言われることがあります。メールでも構いません。日付が残る形にしてください。

5、引き継ぎの範囲を決める。少人数の職場では、引き継ぎが際限なく広がることがあります。何をどこまで引き継ぐかを、最初に確認してください。

次の職場を探すときのポイントも書いておきます。

人員体制を数字で聞く。「定員に対して常勤何人、パート何人ですか」「夕方以降は何人で回していますか」。この2つに具体的な数字で答えられる施設を選んでください。

業務範囲を具体的に聞く。調理があるか、事務があるか、清掃はどこまでか。ここを聞かずに入ると、同じことが繰り返されます。

教える体制を聞く。「最初の1か月はどなたに教わりますか」。名前が出る施設には体制があります。

運営主体を確認する。病院直営か委託か。委託なら委託契約の期間も聞いておく。

それから、保育の現場を離れて在宅で働く道を考える方もいらっしゃいます。事務、データ入力、オンラインでの相談業務、文章を書く仕事。通勤がなくなるだけで、体の負担は大きく変わります。ただし、在宅の仕事は最初から収入が安定するわけではないので、保育の仕事を続けながら少しずつ試す進め方が現実的です。焦って全部を切り替えないでください。

資格の話も添えておきます。保育士資格は、辞めても消えません。院内保育所で身につけた、異年齢を同時に見る目配り、短時間で正確に伝える報告、感染対策の手順、少人数で回す段取り。これらは企業内保育所、病児保育、小規模保育園でそのまま通用しますし、認可保育園に戻るときも実務経験として評価されます。

いま働いている時間は、無駄になっていません。

残ることを選んだ人が、良いと感じている点

辞めたい理由ばかり並べてきたので、残った人の話もしておきます。判断の材料として、両方を並べてほしいからです。

いちばん多く挙がるのは、行事と書類の負担が軽いことです。院内保育所には運動会も発表会もほとんどありません。保護者が交代勤務のため揃わないからです。行事がないということは、その準備で持ち帰る仕事と、時間外の打ち合わせがないということでもあります。認可保育園で書類と行事に追われて一度離れた方が、この職場に戻ってくる流れは、ここから来ています。

次に挙がるのが、子ども一人ひとりと関わる時間の長さです。定員が小さく異年齢の混合保育なので、集団を動かすための号令が要りません。この子がいま何をしたいのかを見て、そこに付き合える。大規模園では時間的に難しかったことが、ここでは日常になります。「保育をしている実感がある」という言い方をされる方が多いです。

三つ目が、職場そのものの安定度です。院内保育所は、看護師をはじめとする医療職に働き続けてもらうための設備として維持されています。病院が人を必要とし続ける限り、保育所も必要とされる。認可外保育施設の中では、経営面で安定している部類に入ります。

四つ目に、身につくものがはっきりしていることです。異年齢を同時に見る目配り、短時間で保護者に正確に伝える報告、感染対策の手順、少人数で回すための段取り。これらは企業内保育所、病児保育、小規模保育園でそのまま通用しますし、認可保育園へ移るときも実務経験として評価されます。

ここで気づいてほしいのですが、良いと言われている点と、つらいと言われている点は、多くが同じ事実の裏表です。行事がないことは、負担の軽さであり、物足りなさでもある。関係の近さは、やりがいであり、逃げ場のなさでもある。職員が少ないことは、裁量の広さであり、休みづらさでもある。

だから、一般論の「院内保育は良いか悪いか」に答えはありません。あなたにとってどちらに転んでいるか、それだけが判断の材料になります。いま辞めたいと感じているなら、裏側に転んでいる項目が多いということです。それは事実として受け止めて構いません。無理に良いほうを見ようとしなくて大丈夫ですよ。

市場から見た、辞めるという選択

在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた立場から、少し広い話をさせてください。

運営者として見てきた限りでは、辞めた判断そのものを後悔している人は、実はそれほど多くありません。後悔として語られるのは、たいてい「もっと早く動けばよかった」か「次を決めずに辞めてしまった」のどちらかです。辞めたこと自体ではなく、辞め方とタイミングのほうが尾を引きます。

もう1つ、長く働き続けている人を見ていて気づくことがあります。それは、職場を変えた回数の多さではなく、「自分が続けられる条件」を言葉にできているかどうかが、結果を分けているということです。夜勤は月に何回までなら大丈夫か。終業が何時を過ぎると家庭が回らなくなるか。どの業務までなら引き受けられるか。これを言葉にできている人は、次の職場を選ぶときに間違えません。

言葉になっていないと、求人票の時給や雰囲気で選んでしまいます。そして同じ理由で、また辞めたくなる。

報酬の見方についても触れておきます。額面の金額だけを比べると、施設どうしの差は小さく見えます。でも、行事の準備で持ち帰る時間、休日の打ち合わせ、記録を書く時間。これらの違いで、同じ額面でも自分の時間の残り方はまったく変わります。中間に余計な工程が挟まらないやりとりが増えるほど、同じ金額でも手元に残る感覚は厚くなる。これは保育に限らず、私たちが市場全体で見てきたことと一致します。

だから、次を選ぶときは、額面ではなく「一週間働いたあとに、自分の時間がどれだけ残っているか」で比べてください。

最後に。辞めたいと思ったことは、あなたが弱いからではありません。そう感じるだけの理由が、その職場の構造の中にあります。まず切り分けて、直せるものは直して、それでも変わらないなら出ていく。その順番を踏めば、次の職場ではもっと楽に働けます。

焦らなくて大丈夫ですよ。あなたは一人ではありません。

よくある質問

Q. 院内保育を辞めたいとき、まず何をすればよいですか?

辞めたい理由を、体とシフト、人間関係、給与と条件、仕事そのものの4つに分けて紙に書き出し、それぞれ10点満点で重さをつけてください。疲労が重いときは人の言葉が刺さりやすくなるため、原因を1つに見誤りやすくなります。切り分けてから、いちばん重い項目に手を付けるのが近道です。

Q. 夜勤や早朝シフトがつらいとき、減らしてもらえますか?

シフトの希望は言葉にしないと伝わりません。「できません」ではなく「夜勤は月1回までなら入れます」のように、続けられる条件を示すと調整の余地が生まれます。また、労働時間が6時間を超えるなら45分以上の休憩が必要です。保育室から離れられない状態は休憩に当たりません。

Q. 残業代や有給は、パートでも請求できますか?

できます。労働時間は1分単位で計算するのが原則で、15分単位の切り捨ては本来認められていません。有給休暇も、雇い入れから6か月継続勤務し所定労働日の8割以上出勤していれば、勤務日数に応じて付与されます。日付と内容を記録に残しておくと、話し合いの根拠になります。

Q. 院内保育が合わないだけなのか、保育自体が合わないのか、どう見分けますか?

院内保育の特徴は、少人数、異年齢の混合保育、業務の幅広さ、病院のシフトに連動した開所時間の4つです。この4つが合わないだけなら、認可保育園や小規模保育園に移れば解決します。子どもと関わること自体に負担を感じている場合は別で、人を支える相談系の仕事など保育以外の道も検討してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月5日最終更新:2026年9月17日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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