企業の医務室の志望動機をどう書くか|ここを選んだ理由の組み立て方

長谷川 奈津
長谷川 奈津
企業の医務室の志望動機をどう書くか|ここを選んだ理由の組み立て方

この記事のポイント

  • ✓企業の医務室の志望動機は
  • ✓日勤や休日の話ではなく
  • ✓その会社の医務室が何のためにあるのかに合わせて組み立てると通りやすくなります

企業の医務室の求人に応募しようとして、志望動機の欄で手が止まる人は多いです。本音を言えば「夜勤がない」「土日が休める」。でも、それをそのまま書くわけにはいかない。かといって「予防医療に関わりたい」と書いても、どこか借り物の言葉に見える。

結論から書きます。企業の医務室の志望動機は、「その会社が、なぜ医務室に看護師を置いているのか」という問いへの答えに合わせて組み立ててください。自分がやりたいことを並べるのではなく、その医務室が必要としている役割と、自分の経験がどう重なるのかを書く。これだけで、志望動機は借り物ではなくなります。

この記事では、企業の医務室の採用で何が見られているのかを整理したうえで、求人票からその医務室の姿を読み取る方法、臨床経験を医務室の言葉に置き換える方法、経験別の例文、そして書いてはいけないことまでを順番に説明します。

企業の医務室の志望動機が難しい理由

まず、なぜ企業の医務室の志望動機は書きにくいのかを整理します。理由が分かると、何を書けばよいのかも見えてきます。

1つ目の理由は、採用枠が小さいことです。企業の医務室の看護職は、1人から数人の配置が一般的です。求人1件あたりの募集人数は1人ということが多く、そこに日勤で土日休みの条件にひかれた応募者が集まります。条件面の魅力は他の応募者も同じなので、志望動機で差がつきます。

2つ目の理由は、選考する人が医療職ではないことです。企業の医務室は、人事部や総務部の中に置かれていることがほとんどです。書類を読み、面接をするのは、人事の担当者や管理職です。病院の看護部長のように、看護の経験をそのまま評価してくれる相手ではありません。「急性期病棟で5年勤務」と書いても、それが医務室でどう役立つのかは、応募者の側から説明する必要があります。

3つ目の理由は、ここが一番大切なのですが、看護師を医務室に置くことが法律上の義務ではない、という点です。これ、知らない人が本当に多いんです。

労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場に産業医と衛生管理者の選任を義務づけていますが、看護師や保健師の配置は義務づけていません。つまり、企業が医務室に看護師を置くのは、会社として「必要だ」と判断したからです。

言い換えると、会社は「なぜ看護師を置くのか」について、自分なりの答えを持っています。工場でけが人が出たときにすぐ対応できる人がほしい。メンタル不調で休む社員が増えていて、早めに気付ける人がほしい。健診の運営を任せられる人がほしい。健康経営に取り組むにあたって、施策を形にできる人がほしい。

志望動機が通るかどうかは、この会社の答えと、応募者の書いた内容が重なっているかどうかで、ほぼ決まります。「予防医療に関わりたい」が弱いのは、間違っているからではなく、どの会社にも出せる内容で、その会社の答えと重ならないからです。

採用する側が、志望動機で確かめていること

次に、採用する側が志望動機を読むときに、何を確かめようとしているのかを整理します。企業の医務室の場合、確かめたいことはおおむね次の5つです。

長く続けてくれるか

医務室の看護職が辞めると、次の人が見つかるまで、健診の運営や社員への対応が止まります。採用する側にとって、定着は最重要の関心事です。「病院の働き方が合わなかったから」という理由だけでは、「企業でも合わなかったらまた辞めるのでは」と思われてしまいます。

医務室の仕事を正しく理解しているか

企業の医務室の仕事は、応急手当だけではありません。健康診断の準備と結果管理、再検査の受診勧奨、ストレスチェックの運営補助、産業医との連携、衛生委員会の資料作成など、事務や調整の比重が大きい仕事です。「看護技術を活かしたい」とだけ書くと、仕事の中身を理解していないと判断されることがあります。

一人でも動けるか

一人職場の医務室では、医師がいない時間に、社員の急病やけがへの初期対応を一人で判断する場面があります。慌てずに状況を見て、救急要請や産業医への連絡につなげられるか。求人票に「看護師経験3年以上」と書かれていることが多いのは、この判断力を求めているからです。

社員と会社の両方に対して、中立でいられるか

医務室の看護職は、社員の健康情報を扱います。社員の味方でありながら、会社の一員でもある立場です。健康情報を適切に扱い、どちらか一方に偏らない姿勢があるかどうかは、面接でも確かめられます。

事務作業に抵抗がないか

健診結果のデータ入力、書類の作成、社内への案内文の作成など、パソコンを使う作業は日常的にあります。求人票に「パソコンができること」と書かれているのは、そのためです。

もう1つ、見落としやすいのが、応募書類全体の一貫性です。企業の採用では、履歴書の志望動機、職務経歴書の経験の書き方、面接での受け答えが、同じ人事担当者によって続けて見られます。志望動機で「メンタル不調への早期対応をしたい」と書いたのに、職務経歴書にそれを裏付ける経験が1行も書かれていなければ、説得力が落ちます。志望動機で触れた経験は、職務経歴書にも具体的に書いておいてください。

志望動機は、この5つすべてに答える文章である必要はありません。ただ、書いた内容がこの5つのどれかに不安を持たせるものになっていないかは、提出する前に確認してください。

求人票から「この医務室」の姿を読み取る

志望動機を「その会社の答え」に合わせるには、まず求人票から、その医務室がどういう役割を期待されているのかを読み取る必要があります。実際の求人票を例に見てみます。企業の医務室で働く看護師の方が紹介している求人の例です。

職種:製薬会社 雇用形態:正社員 給与:月給25万円以上(経験や能力により考慮) 勤務時間:8時30分から17時30分 募集人数:1人 応募資格:看護師資格保有者、看護師勤務経験3年以上、パソコンができること 勤務内容:社内に設置されている医務室での勤務、応急処置や健康診断補助、メンタルケアや健康面の管理、指導などを中心に行う 出典: kigyonurse.wpx.jp

この求人票から、次のことが読み取れます。

・募集人数が1人で、看護師経験3年以上が条件。一人で初期判断をする場面を想定している可能性が高い ・「パソコンができること」が応募資格にある。健診結果の管理などの事務作業が一定量ある ・勤務内容の中に「メンタルケア」「健康面の管理、指導」が入っている。応急処置だけでなく、社員の相談や保健指導的な役割も期待されている ・製薬会社なので、社員の医療に関する知識は一般の会社より高い。説明の正確さが求められやすい

ここまで読み取れれば、志望動機で触れるべき内容が見えてきます。一人で判断した経験、メンタル面の相談に応じた経験、事務や記録の正確さ。この3つのどれかを、具体的な経験とともに書けば、この医務室が必要としている役割と重なります。

求人票だけで分からないことは、会社のウェブサイトで補ってください。見るべきところは、次のようなページです。

・事業所の所在地と規模(勤務先が本社か、工場か、研究所か) ・健康経営や従業員の健康に関する方針のページ ・経済産業省の健康経営優良法人の認定を受けているか ・統合報告書やサステナビリティのページにある、従業員の健康に関する取り組み

健康経営の方針を公開している会社であれば、「どんな健康課題に取り組もうとしているか」が書かれています。たとえば、「生活習慣病のリスクがある社員の割合を下げる」「メンタルヘルス不調による休業を減らす」といった目標です。これが、その会社にとっての「なぜ看護師を置くのか」の答えの手がかりになります。

志望動機を組み立てる4つの部品

ここからは、実際に志望動機を組み立てていきます。企業の医務室の志望動機は、次の4つの部品で作ると、まとまりやすくなります。

部品1:企業の医務室に関心を持ったきっかけ

病院やクリニックで働くなかで、何をきっかけに「働く人の健康」に目が向いたのか。ここは、具体的な場面を1つ書くのが効果的です。

たとえば、「外来で、仕事が忙しくて受診が遅れ、病状が進んでから来院する働き盛りの患者さんを何人も見てきた」という場面です。こうした場面があると、「予防に関わりたい」という言葉に中身が伴います。

部品2:医務室でやりたい仕事

きっかけから、医務室でどんな仕事をしたいのかにつなげます。ここは、求人票の勤務内容に書かれている仕事と重ねてください。「健診結果から受診が必要な社員を把握して、確実に受診につなげる仕事」「不調のサインに早く気付いて、産業医につなぐ仕事」のように、具体的に書くと伝わります。

部品3:この会社である理由

ここが、他の応募者と差がつく部分です。求人票と会社のウェブサイトで読み取った内容を使います。「工場を持つ製造業で、けがや熱中症への初期対応の経験を活かせる」「健康経営の方針でメンタルヘルス対策を重点に掲げており、自分の経験と重なる」のように、その会社でなければ書けない内容にしてください。

部品4:活かせる経験と、これからの姿勢

最後に、自分の経験がどう役立つのかと、入社後にどう取り組むかを書きます。「長く続けたい」という意思は、ここで具体的な行動として示すと伝わりやすくなります。たとえば、「産業保健の知識を体系的に身に付けるために勉強を続け、衛生管理者の資格取得を目指す」といった書き方です。

この4つを、全体で300〜400字程度にまとめると、履歴書の志望動機欄にも、面接で話す長さにも合わせやすくなります。

私が以前、友人の看護師から志望動機の相談を受けたとき、最初の原稿は「日勤で長く働ける環境で、予防医療に携わりたい」の2行でした。本人は「嘘は書いていない」と言っていましたし、実際に嘘ではありません。ただ、どの会社にも出せる文章でした。そこで、応募先の工場で扱っている製品と、その工場の近くにある救急病院までの距離を一緒に調べて、「救急外来で、けがの初期対応を数多く経験してきた」という経験とつなげて書き直しました。本人の経験は何も変わっていないのに、文章は「その工場の医務室のため」のものになりました。志望動機は、経験を作る作業ではなく、経験の見せ方を応募先に合わせる作業なんです。

臨床経験を、医務室の言葉に置き換える

選考する人が医療職ではない以上、臨床経験は「医務室でどう役立つか」という言葉に置き換える必要があります。経験の種類ごとに、置き換え方の例を挙げます。

これまでの経験 医務室での言い換え
急性期病棟 急変の兆候に早く気付き、医師へ正確に報告する判断力
救急外来 けがや急病の初期対応と、救急要請の判断
一般外来 限られた時間で症状を聞き取り、受診の必要性を判断する力
手術室 手順を守る正確さと、多職種との連携
訪問看護 医師がいない場で一人で判断し、記録して報告する力
健診センター 健診の運営と結果の読み取り、受診勧奨の経験
精神科 メンタル不調のサインへの気付きと、傾聴の姿勢

大切なのは、手技そのものではなく、手技の裏にある「判断」「報告」「説明」「記録」の力として書くことです。企業の医務室では、採血や点滴をする場面は多くありませんが、判断と報告と説明と記録は、毎日のように求められます。

企業の医務室で働くために必要な力について、医師の立場から次のように述べている記事もあります。

これらのスキルは、企業の医務室での効果的な業務遂行に不可欠であり、看護師としての専門性を活かしながら、社員の健康と福祉を支えるために重要な役割を果たします。企業の医務室で働くことは、看護師としてのキャリアにおいて、病院とは異なる経験を提供し、多様なスキルを磨く機会となります。 出典: jp.linkedin.com

つまり、医務室は看護の専門性を捨てる場所ではなく、専門性を別の形で使う場所です。志望動機でも、「看護から離れたい」ではなく「看護の力を、働く人の健康を守る形で使いたい」という方向で書くと、採用する側の受け止め方が変わります。

例文:経験別の志望動機

ここまでの考え方を使って、経験別の例文を3つ示します。そのまま使うのではなく、自分の経験と応募先の情報に置き換えて使ってください。

例文1:急性期病棟から、工場の医務室へ

「急性期病棟で6年間勤務し、患者さんの状態の変化に早く気付いて医師に報告することを、日々の仕事の中心としてきました。入院してくる患者さんの中には、働き盛りの年代で、職場での体調不良を我慢した結果、重症化してから運ばれてくる方も少なくありませんでした。そうした経験から、働く場所のすぐそばで、早い段階の変化に気付ける仕事に就きたいと考えるようになりました。貴社の工場は交替制で多くの方が勤務されており、けがや急な体調不良への初期対応が求められると伺っています。急変時の観察と報告の経験を活かして、医師がいない時間でも落ち着いて判断し、産業医や医療機関に確実につなげる役割を担いたいと考えています。」

例文2:一般外来と健診センターから、本社の医務室へ

「内科外来と健診センターで合わせて5年勤務し、健診の運営と、結果に基づく受診勧奨を担当してきました。再検査が必要と判定されても、仕事の忙しさを理由に受診しない方が多いことを、健診の現場で強く感じてきました。貴社が健康経営の方針で、再検査の受診率向上を重点項目に掲げていることを拝見し、健診を実施する側から、社員の方が受診しやすい仕組みを社内で作る側に回りたいと考え、応募いたしました。健診データの管理や、社員の方への分かりやすい説明の経験を活かすとともに、入社後は産業保健の知識を学び続け、衛生管理者の資格取得にも取り組みます。」

例文3:精神科病棟から、メンタルヘルス対策に力を入れる会社へ

「精神科病棟で4年間勤務し、患者さんの話を丁寧に聞き、小さな変化を記録して多職種で共有することを大切にしてきました。入院される方の中には、職場での不調が長く続き、周囲に気付かれないまま症状が重くなった方もいました。職場の中で、不調が軽いうちに相談できる窓口があれば、と感じたことが、企業の医務室を志した理由です。貴社はストレスチェックの結果を職場改善に活用する取り組みを公開されており、相談を受けるだけでなく、職場全体の環境づくりに関われる点に魅力を感じました。社員の方の健康情報を適切に扱いながら、産業医や人事の方と連携して、早期の対応につなげる役割を果たしたいと考えています。」

3つの例文に共通しているのは、「きっかけとなる場面」「その会社を選んだ理由」「医務室での具体的な役割」が入っていることです。そして、どれも「日勤」「土日休み」には触れていません。

転職理由と志望動機を、1本の線でつなげる

面接では、志望動機とあわせて、ほぼ必ず転職理由を聞かれます。企業の医務室の選考では、この2つが1本の線でつながっているかどうかが、よく見られます。

転職理由の本音が「夜勤がつらかった」「病棟の人間関係に疲れた」であること自体は、何もおかしくありません。問題は、それをそのまま話すと、志望動機との間に線が引けなくなることです。「夜勤がつらかったので、日勤の医務室を選びました」では、医務室でなければならない理由になりません。

つなげ方の基本は、転職理由を「前の職場でできなかったこと」として言い直し、それが「応募先の医務室でならできること」につながる形にすることです。いくつか例を挙げます。

・夜勤がつらかった場合:「交替勤務を続けるなかで、長く同じ方の健康に関わり続ける働き方をしたいと考えるようになりました。社員の方と継続的に関われる医務室で、健診から受診、職場復帰までを一貫して支えたいと思っています」 ・人間関係に疲れた場合:「多くの職種と連携する中で、自分は一人ひとりとじっくり向き合う仕事に力を発揮できると感じてきました。社員の方と個別に向き合う医務室の仕事に、その強みを活かしたいと考えています」 ・家庭の事情で働き方を変えたい場合:「家庭の事情で勤務時間を安定させる必要があり、転職を考えました。そのうえで、これまでの経験を活かせる職場を探すなかで、健診の運営経験がそのまま役立つ企業の医務室を志望しました」

家庭の事情のように、隠す必要のない理由は、率直に伝えてかまいません。そのうえで、「条件だけで選んだのではない」ことを、志望動機の中身で示せば十分です。

気を付けたいのは、言い直しが事実から離れすぎないことです。面接では「具体的にどんな場面でそう感じたのですか」と掘り下げられます。そのときに答えられない言い直しは、かえって不信感を招きます。本音を否定するのではなく、本音の中にある「次にやりたいこと」を取り出す、という感覚で考えてください。

書いてはいけないこと、書き方に注意すること

志望動機には、書くと不利になることや、書き方を誤るとトラブルにつながることがあります。ここは法律に関わる点もあるので、丁寧に見ていきます。

勤務条件だけを理由にする

「夜勤がない」「土日祝日が休み」「残業が少ない」を志望動機の中心にすると、条件が合う職場があれば移るのではないかと受け取られます。家庭の事情などで勤務条件が重要な場合は、志望動機ではなく、面接で働き方の希望を聞かれたときに、長く働くための条件として伝えるほうが自然です。

前の職場への不満

「病院の人間関係に疲れた」「業務が過酷だった」といった前職への不満は、志望動機に書かないでください。転職理由を聞かれたときも、不満ではなく「次に何をしたいか」に置き換えて話します。

患者さんの個人が特定される書き方

具体的な場面を書くことを勧めましたが、患者さんが特定されるような書き方は避けてください。保健師助産師看護師法第42条の2では、看護師が正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならないと定めており、この義務は看護師でなくなった後も続きます。つまり、「〇〇病院に入院していた40代の△△業の男性が」のように、病院名、年齢、職業などを組み合わせて書くと、特定につながるおそれがあるということです。「働き盛りの年代の方」のように、ぼかして書いてください。

企業の医務室は、社員の健康情報を扱う職場です。志望動機の書き方そのものが、「この人は情報の扱いに注意できる人か」を示す材料になります。

事実と違う経験を書く

経験年数を多めに書く、担当していない業務を担当したように書く、持っていない資格を書く。こうした書き方は、入社後に発覚すると、経歴詐称として懲戒の対象になる可能性があります。特に、重要な経歴の詐称は、懲戒解雇が有効と判断された裁判例もあります。※実際に経歴の記載をめぐって会社とトラブルになった場合は、弁護士に相談してください。

経験が足りないと感じるなら、盛るのではなく、足りない部分をどう補うかを書いてください。そのほうが、採用する側の評価は高くなります。

抽象的な言葉だけで終わる

「予防医療」「健康経営」「働く人を支えたい」といった言葉は、使ってもかまいません。ただ、それだけで終わると、どの会社にも出せる文章になります。必ず、自分の経験の具体的な場面と、応募先の具体的な特徴を1つずつ入れてください。

志望動機を書く前に、労働条件を確かめておく

最後に、志望動機を書く前にしておいてほしいことがあります。応募先の労働条件を、できるだけ正確に確かめておくことです。

志望動機は、「この会社で長く働きたい」という意思を伝える文章です。ところが、入社してから契約社員で更新上限があった、配属先が求人票と違う事業場だった、ということが分かると、書いた志望動機そのものが成り立たなくなります。

これについては、法律が応募者の側を支えています。

2022年10月に施行された改正職業安定法では、求人を出す会社や求人サイトに対して、求人情報を正確かつ最新の内容に保つこと、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしないことが義務づけられました。

また、2024年4月からは、労働条件の明示のルールが変わっています。会社は労働契約を結ぶときに、就業場所と業務の「変更の範囲」を明示しなければなりません。有期契約の場合は、更新上限の有無と内容も明示する必要があります。

つまり、「将来、別の事業場の医務室に異動する可能性があるか」「契約社員の場合、更新に上限があるか」は、会社が明示すべき事項だということです。求人票に書かれていなければ、応募前の問い合わせや面接で確認してかまいません。遠慮する必要はないんです。

志望動機に「工場の医務室で、けがへの初期対応に力を尽くしたい」と書いたのに、入社後の配属が本社だった。こういうずれを防ぐためにも、条件を確かめてから志望動機を書く、という順番を守ってください。

内定が出たら、求人票ではなく、会社から交付される労働条件通知書や雇用契約書で、条件を最終的に確認してください。求人票に書かれていた内容と、実際に結ぶ契約の内容が違うことは、法律上ありえます。求人票はあくまで募集の段階の情報で、労働契約の内容は、契約を結ぶときに明示される条件で決まるからです。

確認するときは、次の項目を求人票と並べて見比べると漏れがありません。

・雇用形態と契約期間、更新の有無と上限 ・就業場所と、その変更の範囲 ・業務の内容と、その変更の範囲 ・試用期間の有無と、その間の条件 ・始業と終業の時刻、休日、繁忙期の時間外労働の見込み

もし求人票と違う点があれば、署名する前に理由を聞いてください。説明に納得できないまま入社すると、志望動機に書いた「長く働きたい」という意思を、自分で守れなくなってしまいます。

面接で志望動機を話すときも、この確認は役に立ちます。条件を理解したうえで書いた志望動機は、質問を掘り下げられても揺らぎません。

医務室を選んだ理由は、その先のキャリアにもつながる

志望動機を考える作業は、選考のためだけのものではありません。「なぜ企業の医務室なのか」を言葉にすることは、自分が看護の経験をどう使っていきたいのかを整理することでもあります。

企業の医務室の給与水準は、夜勤手当がない分、病棟勤務より低めに見えることがあります。応募前に、看護師全体の中でどのあたりに位置するのかを知っておくと、提示された条件を冷静に判断できます。雇用形態別の水準は看護師の年収・単価相場で確認できます。

医務室で積む経験は、働く人の相談を受ける力、健康の情報を分かりやすく伝える力として、その先にもつながります。職業やキャリアの相談に応じる国家資格のキャリアコンサルタントは、試験の概要と受験資格が整理されていて、社員の面談経験を体系立てたい人の参考になります。相談の仕事にどんな形があるのかは、職場・転職・キャリア相談のお仕事で具体的に確認できます。看護師資格を在宅の仕事で活かす方法は、看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】に仕事の種類ごとの注意点がまとめられています。※副業をする場合は、勤務先の就業規則を事前に確認してください。

20年、仕事を探す人と頼む人が出会う場を運営してきた立場から見ると、応募の文章が上手な人には共通点があります。自分のやりたいことより先に、相手が何に困っているのかを書いている点です。これは企業の採用でも、個人で仕事を受けるときでも変わりません。依頼する側の困りごとに合わせて経験を見せられる人は、「この人に任せたい」と思われ、長い付き合いになりやすい傾向があります。そして、仲介の手数料が差し引かれない直接取引であれば、依頼する側は同じ予算で頼める範囲が広がり、受ける側は手取りが厚くなります。手数料0%でやり取りできる場は、そうした関係を築く入口の1つです。

志望動機は、自分をよく見せる文章ではなく、相手の必要と自分の経験を重ねる文章です。その重なりを見つけるために、求人票を読み、会社を調べ、条件を確かめてください。知っていれば、選考の場でも、入社後も、自分を守ることができます。法律はあなたの味方です。

よくある質問

Q. 企業の医務室の志望動機に「日勤で働きたい」と書いてもいいですか?

勤務条件だけを志望動機の中心にすると、条件が合う職場があれば移るのではと受け取られやすくなります。家庭の事情などで重要な場合は、志望動機ではなく面接で働き方の希望を聞かれたときに、長く働くための条件として伝えるのが自然です。志望動機には、医務室でやりたい仕事と応募先を選んだ理由を書きましょう。

Q. 臨床経験が病棟だけでも、企業の医務室の志望動機は書けますか?

書けます。選考するのは人事など医療職でない人が多いので、手技ではなく、急変の兆候に気付く判断力、医師への正確な報告、患者さんへの分かりやすい説明といった力に置き換えて書くと伝わります。一人で初期対応をする場面が多い医務室では、病棟で培った観察と報告の力は十分に評価されます。

Q. 志望動機に以前の患者さんのエピソードを書いても問題ありませんか?

具体的な場面を書くのは効果的ですが、患者さんが特定されないようにしてください。看護師には法律上の守秘義務があり、看護師でなくなった後も続きます。病院名や年齢、職業などを組み合わせず、「働き盛りの年代の方」のようにぼかして書きます。情報の扱いへの配慮は、医務室の適性を示す材料にもなります。

Q. 志望動機を書く前に、応募先について何を調べればいいですか?

勤務する事業場が本社か工場か研究所か、その事業場の規模、健康経営の方針や認定の有無を会社のウェブサイトで確認してください。求人票からは募集人数や応募条件、勤務内容を読み取ります。あわせて、雇用形態や更新上限、就業場所の変更の範囲など、会社が明示すべき労働条件も確かめておくと安心です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月4日最終更新:2026年9月16日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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