企業の医務室に向いている人|長く続く人に共通していること

中西 直美
中西 直美
企業の医務室に向いている人|長く続く人に共通していること

この記事のポイント

  • ✓企業の医務室に向いている人はどんな人か
  • ✓医務室の毎日の働き方を押さえたうえで
  • ✓長く続く人に共通する6つのこと

企業の医務室に向いているのは、どんな人なんだろう。

夜勤のない働き方に惹かれながらも、「病棟でしか働いたことがない自分に、会社の中の仕事が務まるのかな」と迷っている。こういう声を、本当によく聞きます。

大丈夫ですよ。企業の医務室に向いているかどうかは、看護の技術の高さや、経験の長さだけで決まるものではありません。

結論からお伝えすると、企業の医務室で長く続いている人には、いくつかの共通点があります。「待つ時間を自分で使える」「書類や数字の仕事を、人の健康につながる仕事と思える」「1人で判断しても、1人で抱え込まない」「本人と会社の間で線を引ける」「医療の言葉を働く人の言葉に言い換えられる」「成果が見えにくいことを受け止められる」。この6つです。

どれも、生まれ持った性格というより、医務室という職場の特徴に合った「仕事の向き合い方」です。つまり、今は当てはまらなくても、知っておくことで身につけていけるものでもあります。

この記事では、まず医務室がどんな毎日の職場なのかを整理して、そのうえで長く続く人の共通点をひとつずつお話しします。合わないと感じやすい人のことや、入る前に向き不向きを確かめる方法もまとめました。

向き不向きを考える前に 医務室はどんな毎日の職場か

向いているかどうかを考えるには、まず、その職場で毎日何が起きているのかを知る必要があります。企業の医務室は、病院とはかなり違う毎日です。

企業の医務室にいる看護職の相手は、治療を受けに来た患者さんではなく、今日も働いている社員です。仕事の目的は、病気を治すことではなく、働く人が健康に働き続けられるように支えることです。

1日の中で、体調不良の社員が来室するのは、多くの事業場で数件ほどです。昼休みに来室が集中し、それ以外の時間は比較的静かに過ぎていきます。その静かな時間に、健康診断の結果の管理、再検査の受診勧奨、保健指導の面談、産業医の来社日の準備、休職や復職の支援、衛生委員会の資料作りを進めます。

医務室は人事部や総務部の中にあることが多く、上司は医療職ではないこともよくあります。医師は常にいるわけではなく、嘱託の産業医が月に数回来社するだけ、という事業場がほとんどです。看護職は1人か2人という職場も珍しくありません。

そして、忙しさは1日の中ではなく、1年の中で波を打ちます。実際に企業の医務室で働いていた看護師の方は、繁忙期について次のように書いています。

以前、私が勤務をしていた会社では、健康診断前後やストレスチェック実施前後等の繁忙期には1~2時間程度(20-40H/月)の残業がありました。 出典: nurse.peko.co.jp

普段は定時で帰れる日が多い一方で、健康診断やストレスチェックの時期には、月に20〜40時間ほどの残業が続くこともある。こうした毎日の流れと、1年の波の両方があるのが、企業の医務室という職場です。

向き不向きは、この毎日と相性がよいかどうかで決まります。ここからは、この職場で長く続いている人に共通していることを、ひとつずつ見ていきましょう。

共通点1 待つ時間を、自分で使える人

企業の医務室で長く続いている人に、まず共通しているのは、「待つ時間」を自分で使えることです。

病棟では、ナースコールが鳴り、点滴の時間が来て、検査の出棟があって、次から次へとやることが目の前に現れました。やるべきことは、向こうからやってきていたんです。

企業の医務室は違います。体調不良の社員が来るのは1日に数件で、それ以外の時間は、誰からも「これをして」と言われません。何をするかは、自分で決める必要があります。

ここで、「暇だな」「私、ここで役に立っているのかな」と感じてしまう方がいます。一方で、長く続いている人は、この時間を「医務室の仕事を進める時間」として使っています。

たとえば、健康診断で再検査が必要になった人のうち、まだ受診していない人を洗い出して、声をかける準備をする。季節ごとの健康の話を社内報に載せる原稿を書く。来月の衛生委員会で報告する数字をまとめておく。休職している人への定期の連絡の予定を確認する。

どれも、誰かに頼まれたわけではありません。でも、この「頼まれていない仕事」こそが、医務室の仕事の中心なんです。

こういう相談がよくあります。「病棟から医務室に移って、最初の数か月は時間を持て余して、つらかった」。そういう方に話を聞くと、多くの場合、1年ほどたって医務室の年間の流れが見えてくると、「今は何をしておくべきか」が自分で分かるようになり、気持ちが楽になったと話してくれます。

つまり、待つ時間を使えるかどうかは、性格だけでなく、医務室の仕事の全体像が見えているかどうかにも左右されます。自分で段取りを組むことが好きな人、手帳や予定表でやることを整理するのが得意な人は、この点でとても向いています。反対に、今は苦手だと思う方も、年間の予定を最初に書き出してみることから始めれば大丈夫です。

この「待つ時間」の長さは、職場の体制によっても変わります。看護職が複数いる健康管理室では、担当ごとに仕事が割り振られているので、自分で決める範囲はそれほど広くありません。一方、看護職が1人だけの医務室では、1日の予定をすべて自分で組むことになります。自分で段取りを組むのが好きな人は1人職場でのびのび働けますし、決まった流れの中で働くほうが安心な人は、複数体制の職場から始めると無理がありません。

共通点2 書類と数字の仕事を、人の健康につながる仕事と思える人

2つ目の共通点は、書類や数字の仕事を「雑務」ではなく、「人の健康につながる仕事」と思えることです。

企業の医務室では、1日のうちかなりの時間を、パソコンの前で過ごします。健康診断の結果を表計算ソフトに取り込み、基準を超えた人を抽出し、受診を勧める通知を作る。産業医が判断するための資料をまとめる。衛生委員会で報告する受診率や休業者数を集計する。

病棟で働いていたころは、看護は「患者さんのそばにいること」だった方も多いと思います。だから、画面の中の数字を見ている時間に、「これは看護なのかな」と感じることがあるかもしれません。

健康診断の結果の一覧の中には、血圧がとても高いのに、本人は気づいていない人がいます。血糖値が治療の必要な範囲にあるのに、忙しくて病院に行っていない人がいます。その1行を見つけて、声をかけ、受診につなげる。そうして、何年か後に起きたかもしれない脳卒中や心筋梗塞を防ぐ。医務室の数字の仕事は、そういう仕事なんです。

長く続いている人は、この「1行の向こうに人がいる」という感覚を持っています。受診勧奨のメールを送るときも、「この人は営業で外回りが多いから、昼休みに電話したほうがつかまりやすいかな」と、その人の働き方を思い浮かべながら動きます。

表計算ソフトの操作に自信がない方も、心配しすぎなくて大丈夫です。並べ替え、絞り込み、簡単な関数くらいができれば、ほとんどの仕事は進められます。大切なのは技術より、「この作業は誰の健康につながっているのか」を忘れないことです。

もうひとつ、書類の仕事で大切なのが、記録の丁寧さです。企業の医務室の記録は、あとから産業医や人事部、ときには休職や労災の手続きで読み返されることがあります。「いつ、誰が、どんな相談に来て、どう対応したか」を、自分以外の人が読んでも分かるように書く。病棟で看護記録を丁寧に書いてきた方は、この点ですでに強みを持っています。

健康診断の結果の個人票は、会社に5年間の保存が義務づけられています。何年も前の記録を読み返して、「この人は3年前から血圧が少しずつ上がっている」と気づけるのは、記録を積み重ねてきた職場ならではです。書類や数字を「積み重ねるほど意味が増すもの」と感じられる人は、医務室の仕事を長く楽しめます。

共通点3 1人で判断し、1人で抱え込まない人

3つ目は、1人で判断する場面に向き合いながら、判断を1人で抱え込まないことです。この2つは矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、医務室ではどちらも欠かせません。

企業の医務室には、多くの場合、常にそばにいる医師がいません。体調不良の社員が来たとき、「休養室で様子を見る」「帰宅して受診してもらう」「救急車を呼ぶ」の判断を、看護職がその場で下すことになります。臨床経験が求められるのは、この判断のためです。

判断する力は大切です。でも、長く続いている人は、それと同じくらい「1人で抱え込まない工夫」をしています。

たとえば、よくある場面ごとの判断の目安を、あらかじめ産業医と一緒に決めて文書にしておく。判断に迷ったケースは記録しておいて、産業医の来社日にまとめて相談する。休職者の支援のような重い仕事は、人事部の担当者や上司と役割を分けて進める。

私自身も、職場で判断を任される立場になったとき、「自分が決めなければ」と思い込んで、夜になっても仕事のことが頭から離れない時期がありました。あるとき、信頼していた先輩に「判断は1人でしても、責任は仕組みで分け合うものだよ」と言われて、はっとしたことを覚えています。それからは、迷ったことを書き留めて、定期的に誰かと振り返るようにしました。それだけで、夜眠れるようになったんです。

企業の医務室も同じです。1人職場であっても、相談できる相手はいます。産業医、人事部の担当者、各都道府県にある産業保健総合支援センター、同じように企業で働く看護職のつながり。これらを「頼っていい先」として持てている人ほど、長く穏やかに働き続けています。

判断の場面は、事業場の種類によっても違います。工場や物流の現場がある事業場では、けがや熱中症の対応が多く、すぐに救急搬送を判断する場面があります。事務職が中心のオフィスでは、けがは少ない代わりに、頭痛や腹痛、そしてこころの不調の相談が多くなります。どちらの判断に経験があるかも、自分に合う職場を選ぶ手がかりになります。

責任感が強い人ほど、この「抱え込まない」ことが苦手です。もしご自分がそうだと感じたら、それは医務室に向いていないのではなく、「頼り方を先に決めておく」ことが大切なタイプだということです。

共通点4 本人と会社の間で、線を引ける人

4つ目の共通点は、社員本人と会社の間で、はっきりと線を引けることです。これは、病院にはあまりない、企業の医務室ならではの難しさです。

企業の医務室の看護職は、会社に雇われています。一方で、扱っているのは社員一人ひとりの健康の情報です。この2つの立場が、ときにぶつかります。

たとえば、上司から「部下が最近休みがちなんだけど、何か聞いていないか。病名を教えてほしい」と頼まれることがあります。人事部から「この人は、今後も働けるのか」と聞かれることもあります。

でも、健康の情報は、本人の同意なく伝えてはいけない大切な個人情報です。会社から頼まれたからといって、そのまま伝えることはできません。

一方で、何も伝えないままでいると、職場で必要な配慮がされず、本人がつらくなることもあります。だから、医務室の看護職には、「本人と話し合って、どこまでを、どんな言葉で伝えるか」を決める力が求められます。「病名は伝えずに、残業を控える配慮が必要だとだけ伝える」といった線の引き方です。

こういう相談もよくあります。「社員の方から、上司には絶対に言わないでと言われた。でも、このまま働き続けると危ないと感じる。どうしたらいいか分からない」。

こういうときは、1人で結論を出さず、産業医に相談するのが基本です。そして、本人に「あなたを守るために、職場にどう伝えるかを一緒に考えたい」と、率直に話してみる。多くの場合、本人も本当は職場に分かってほしいと思っていて、伝え方さえ一緒に決められれば、同意してくれることが少なくありません。

この線の引き方は、医務室が会社のどこに置かれているかでも難しさが変わります。人事部の中にある医務室では、人事の担当者と机を並べて働くことになり、人事評価や異動の話が耳に入ってくることもあります。聞いた話と、社員から相談された健康の話を、頭の中できちんと分けておく必要があります。総務部や安全衛生の部署の中にある医務室では、人事との距離が少し保たれていて、線を引きやすいと感じる方もいます。

長く続いている人は、「会社の味方」でも「社員の味方」でもなく、「働く人の健康の味方」という立場を大切にしています。どちらか一方に偏らず、両方と信頼関係を保つ。これができる人は、社員からも会社からも、頼りにされる存在になっていきます。

共通点5 医療の言葉を、働く人の言葉に言い換えられる人

5つ目は、医療の言葉を、働く人に伝わる言葉に言い換えられることです。

病院では、医師や看護師、薬剤師など、医療の言葉を共有している人たちと一緒に働いてきました。「バイタルが落ち着いている」「HbA1cが高い」と言えば、話が通じました。

企業の医務室で話す相手は、ほとんどが医療職ではありません。社員、上司、人事部の担当者、経営層。この人たちに、健康の話を分かりやすく伝える必要があります。

たとえば、健康診断で血圧が高かった社員に、「収縮期血圧が160を超えているので、受診してください」と伝えるだけでは、なかなか病院に行ってくれません。「このままだと、数年のうちに脳の血管にトラブルが起きる可能性が高くなります。今のうちに一度、お医者さんに診てもらいましょう。忙しいと思うので、会社の近くで土曜日にやっている病院を一緒に探しましょうか」。こう伝えると、受け止め方が変わります。

衛生委員会で、会社の人たちに向けて話すときも同じです。「有所見率が上がっています」ではなく、「健康診断で何らかの異常が見つかった人が、昨年より増えています。特に、夜遅くまで働く部署で多い傾向があります」と、会社の働き方と結びつけて話すと、対策につながりやすくなります。

経営層に向けて話すときは、さらに言い換えが必要になります。健康の話を、会社の言葉である「人が休むことによる影響」や「働き続けてもらうための投資」と結びつけて伝えると、予算や人員の話が前に進みやすくなります。「メンタルヘルス不調で長く休む人が増えると、その間の業務を周りの人が抱えることになり、さらに休む人が出るという悪循環が起きやすくなります」。こうした説明ができると、医務室の提案が会社の施策として取り上げられるようになります。

長く続いている人は、この言い換えを、相手を見ながら自然にしています。退院指導や、患者さんのご家族への説明が得意だった方は、この力をすでに持っています。医務室では、それが毎日の仕事の中心になるんです。

共通点6 成果が見えにくいことを、受け止められる人

6つ目は、成果が見えにくいことを、受け止められることです。これは、長く続くかどうかに、実はとても大きく関わっています。

病棟では、患者さんが回復して退院していく姿に、手応えを感じることができました。「ありがとう」と直接言ってもらえることも多かったと思います。

企業の医務室の仕事は、うまくいくほど、何も起きません。受診勧奨で治療につながった人が、何年も元気に働いていても、それが医務室のおかげだと言われることは、ほとんどありません。病気になる前に関わる仕事なので、「防げたこと」は目に見えないんです。

この見えにくさに、心がしんどくなる方がいます。「自分はここで何をしているんだろう」と。

長く続いている人は、成果を見える形にする工夫をしています。健康診断の受診率、再検査の受診率、休業している人の数、ストレスチェックの受検率。こうした数字を年ごとに記録して、少しずつ変化を追っていく。数字がよくなった年は、衛生委員会で報告する。そうすると、自分の仕事の意味を、自分でも会社でも確かめられるようになります。

もうひとつは、小さな手応えを大切にすることです。「受診を勧めた人が、病院に行ってきましたと報告に来てくれた」「面談で話を聴いた人が、少し表情が明るくなった」。こうした出来事を、自分のノートに書き留めておく。忙しい時期や、気持ちが沈んだときに見返すと、ちゃんと誰かに届いていることが分かります。

見えにくい成果は、年数を重ねるほど、少しずつ見えるようになっていきます。入職した年に受診を勧めた人が、翌年の健康診断で数値がよくなっていた。数年前に復職を支えた人が、今は後輩の相談に乗っている。こうした変化に出会えるのは、同じ会社で長く社員を見続けている医務室の看護職だけです。

つまり、医務室の仕事の手応えは、「すぐに返ってくるもの」ではなく「時間をかけて返ってくるもの」なんです。この時間の流れ方を心地よく感じられる人は、医務室にとても向いています。

合わないと感じやすい人と、その理由

ここまで、長く続く人の共通点をお話ししてきました。反対に、企業の医務室を「合わない」と感じやすいのは、どんな人なのでしょうか。これは、その人がだめだということではなく、職場との相性の話です。

臨床の手技を使い続けたい人

採血や点滴、急変対応など、臨床の手技を使い、磨き続けることにやりがいを感じている人は、医務室で物足りなさを感じやすいです。企業の医務室では、手技を使う機会が大きく減ります。「数年たったら、病院に戻れなくなるのでは」という不安を抱えながら働くことになりがちです。

ただし、医療法上の診療所として届け出ている企業内診療所では、採血や予防接種などの業務があります。手技を使いたい方は、そうした職場を選ぶという方法もあります。

チームで動くことに安心を感じる人

病棟のように、たくさんの看護師や多職種と一緒に動くことに安心を感じる人は、1人や2人の医務室で孤独を感じやすいです。休憩中に気軽に話せる同僚がいない、判断に迷ったときにすぐ相談できない、という環境がつらく感じることがあります。

こういう方は、看護職が複数いる健康管理室を選ぶと、ずいぶん働きやすくなります。

はっきりした指示のもとで働きたい人

やることが決まっていて、それを確実にこなすことにやりがいを感じる人も、最初は戸惑いやすいです。医務室では、何をするかを自分で決める場面が多く、上司も医療職ではないことが多いので、「何をすればいいか」を誰も教えてくれない時期があります。

会社の決まりや進め方にストレスを感じやすい人

企業の医務室は、会社の一部署です。備品をひとつ買うにも稟議や決裁が必要だったり、健康施策を始めるにも会議で承認を得る必要があったりします。病院なら看護の判断ですぐに進められたことが、会社では何段階もの手続きを経ることになります。

「健康のために必要なのに、なぜすぐにできないのか」ともどかしく感じる場面は、どの医務室にもあります。会社の進め方をいったん受け止めて、そのうえで通るように資料を整える、という働き方にストレスを感じやすい人は、医務室で疲れやすい傾向があります。

夜勤がないことだけを理由に選ぶ人

夜勤から離れたい、という気持ちは、とても自然なものです。ただ、それだけを理由に医務室を選ぶと、ここまでお話ししたような「待つ時間」「数字の仕事」「成果の見えにくさ」に向き合ったとき、「こんなはずじゃなかった」と感じやすくなります。

夜勤のない職場は、企業の医務室のほかにも、クリニックや健診機関、訪問看護、保育園や学校などがあります。いくつかを並べて比べてみてから選ぶと、自分に合った場所が見つかりやすくなりますよ。

自分が向いているかを、入る前に確かめる方法

最後に、自分が企業の医務室に向いているかを、入る前に確かめる方法をお伝えします。

1日の流れの中で、楽しめそうな時間を探す

まずは、医務室の1日の流れを思い浮かべて、その中に自分が楽しめそうな時間がどのくらいあるかを考えてみてください。昼休みに社員の相談に乗る時間、健康診断のデータから気になる人を見つける時間、保健指導で生活習慣を一緒に振り返る時間、衛生委員会で会社の人に話す時間。どれかひとつでも「やってみたい」と思えるなら、医務室で働く手応えを見つけられる可能性があります。

自分のこれまでの仕事を振り返る

次に、これまでの臨床の仕事の中で、自分が一番やりがいを感じたのはどんな場面だったかを振り返ってみてください。退院指導で患者さんが「分かりました」と言ってくれたとき。退院後の生活を多職種で話し合ったとき。こうした「説明」「調整」「予防」に関わる場面にやりがいを感じた方は、医務室の仕事と相性がよい傾向があります。急変対応で患者さんを救えたときに一番やりがいを感じた方は、手技を使える職場のほうが合っているかもしれません。

期間を区切って試してみる

実際に働いてみるのが、いちばん確かな方法です。健康診断の時期に数か月だけ入る派遣や、週に数日のパートなど、期間や時間を区切って医務室の仕事に触れる方法があります。数か月でも働いてみると、自分がその毎日を心地よく感じるかどうかが分かります。

医務室で働いている人の話を聞く

もし身近に、企業の医務室や健康管理室で働いている看護師や保健師がいたら、ぜひ話を聞いてみてください。看護学校の同級生や、以前の職場の先輩が、企業に移っていることは意外と多いものです。「1日の中で一番大変なのはどんな時間か」「入ってから意外だったことは何か」「辞めたいと思ったのはどんなときか」。こうした質問への答えは、求人票や記事では分からない、その職場の空気を教えてくれます。

各都道府県の産業保健総合支援センターが開いている研修やセミナーには、企業で働く看護職も多く参加しています。すでに看護職として働いている方なら、こうした場に参加して、実際に働く人の話に触れるのもひとつの方法です。

面接で職場の様子を聞く

応募するときは、面接で「看護職は何人の体制ですか」「1日の中で、どんな仕事に一番時間を使っていますか」「前任の方はどのくらい勤められましたか」と聞いてみてください。答えから、その職場の毎日が見えてきます。向き不向きは、職場によっても変わります。同じ企業の医務室でも、1人職場と複数体制では、求められることがかなり違うんです。

長く見てきた立場から、向いているということ

働き方の市場を長く見てきた中で感じているのは、「向いている人」は最初から完成しているわけではない、ということです。

企業の医務室で10年以上働いている方も、最初の1年は、待つ時間を持て余し、数字の仕事に戸惑い、会社と社員の間で悩んでいました。それでも続いたのは、この職場の仕事の意味を、少しずつ自分の言葉で理解していったからです。

もうひとつ、長く見てきて感じるのは、職場との相性は、働く人の人生の時期によって変わるということです。子育ての時期には医務室の働き方がぴったり合っていた人が、子どもが大きくなってから臨床に戻り、また新しいやりがいを見つけることもあります。今の自分に合うかどうかで選べばよく、一度選んだら一生そこにいなければいけない、ということはありません。

看護師の給与が全体としてどのくらいなのかを知っておくと、医務室の求人の条件を落ち着いて比べられます。看護師の年収・単価相場では、年齢や経験年数による違いが公的な統計をもとに整理されているので、提示された条件がどのくらいの位置にあるかを確かめる物差しとして使えます。

医務室の仕事の中で、社員の働き方や心の悩みを聴くことに一番やりがいを感じる方もいます。そういう方は、働く人の職業選択や能力開発の相談にのる国家資格について、キャリアコンサルタントで中身を知っておくと、将来の道が広がります。職場の悩みや転職の相談を仕事として受ける働き方にどんな形があるかは、職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介されています。

臨床経験を活かせる場所は、企業の医務室だけではありません。在宅でできる仕事や副業にどんな種類があるかは、看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】でまとめられています。いくつかの働き方を並べてみることで、自分がどんな場所で力を発揮できるのかが見えてきます。

あなたの経験は、どこに行っても必ず生きます。焦らず、自分に合う場所を選んでくださいね。

よくある質問

Q. 企業の医務室に向いているのはどんな看護師ですか?

自分で仕事の段取りを組める人、健康診断のデータ管理などの事務作業を人の健康につながる仕事と捉えられる人、1人で判断しつつ産業医や人事部と役割を分け合える人が向いています。本人の健康情報と会社の要望の間で線を引けること、医療の言葉を働く人に伝わる言葉に言い換えられることも、長く続く人に共通しています。

Q. 企業の医務室が合わないと感じやすいのはどんな人ですか?

採血や急変対応など臨床の手技を使い続けたい人、大人数のチームで動くことに安心を感じる人、はっきりした指示のもとで働きたい人は、合わないと感じやすい傾向があります。ただし、企業内診療所なら手技を使う業務があり、看護職が複数いる健康管理室なら相談しやすいなど、職場を選ぶことで働きやすくなる場合もあります。

Q. 企業の医務室は暇だと聞きますが本当ですか?

体調不良の社員の来室は1日に数件ほどの事業場が多く、来室対応だけを見ると時間に余裕があるように見えます。ただ、その時間に健康診断の結果管理、受診勧奨、保健指導、休職や復職の支援、衛生委員会の資料作りを進めるのが医務室の仕事の中心です。健診やストレスチェックの時期には月20〜40時間ほど残業が続くこともあります。

Q. 企業の医務室に向いているか入る前に確かめる方法はありますか?

医務室の1日の流れの中に自分が楽しめそうな時間があるかを考える、臨床で説明や調整、予防の場面にやりがいを感じたかを振り返る、といった方法があります。健康診断の時期だけの派遣や週数日のパートで実際に働いてみるのも確かな方法です。面接で看護職の人数や前任者の勤続年数を聞くと、職場の様子が見えてきます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月21日最終更新:2026年9月18日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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