ICUを辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと


この記事のポイント
- ✓ICUを辞めたいと感じたときに
- ✓出ていく前に切り分けておきたいことをまとめました
- ✓辞めたくなる理由とICUの構造
ICUを辞めたい。そう思いながら、今日も夜勤に向かっている人がいると思います。
先日、ICUで働く看護師さんから相談を受けました。「もう限界なので辞めたい。でも病院の奨学金を借りていて、辞めたら一括で返せと言われている。辞めるのが怖い」と。結論から言うと、奨学金の返還の約束があっても、辞めること自体は止められません。そして、返還を求められる金額や条件が、退職の自由を不当に縛るものであれば、労働基準法の考え方から争える余地もあります。つまり、「辞めたいのに辞められない」と思い込んでいる状態の中には、法律を知ることで解ける結び目がある、ということです。
ただ、この記事で一番お伝えしたいのは、「すぐ辞めましょう」でも「我慢しましょう」でもありません。ICUを辞めたいという気持ちの中身を、出ていく前に一度切り分けておくことです。ICUの仕事そのものがつらいのか、その病院のICUがつらいのか、今の自分の心と体が疲れているのか。ここが分かれていないまま辞めると、次の職場で同じことを繰り返しやすいからです。
順番に見ていきましょう。
ICUを辞めたくなる理由は、職場の構造から来ている
まず、ICUを辞めたいと感じるのは、あなたが弱いからではない、ということを確認しておきます。ICUという職場には、辞めたくなる理由が生まれやすい構造があります。
重症の患者さんの全身状態を24時間体制で管理し、集中的に治療するICUでの看護師の仕事内容はハードと言われています。緊張感が高く、精神的にも体力的にも負担がかかるので、ICU看護師の仕事を続ける事に辛さを感じている人も。その結果「ICU看護師を辞めたい」と考えるようになっているかもしれません。 出典: kango-oshigoto.jp
具体的に、ICUの何が負担を生んでいるのかを分解してみます。
配置が手厚いぶん、1人の抜けが重い
診療報酬の特定集中治療室管理料を算定するICUでは、常時、患者2人に対して看護師1人以上の配置が必要です。これは患者にとっては手厚い体制ですが、働く側から見ると、1人休むだけで基準を満たせなくなるおそれがある、ということです。「体調が悪いのに休むと言い出せない」「有給を申請しにくい」という相談がICUで多いのは、この構造と無関係ではありません。
1日の中で緊張が途切れない
ICUの日勤は、朝の申し送りで人工呼吸器の設定や薬剤の流量を確認し、午前は観察とケア、回診で方針が変わり、午後は手術後の入室や救急からの受け入れが入ります。夜勤は人数が減るなかで、定時の観察、早朝の採血、急変への備えが続きます。どの時間帯も「何も起きない時間」が少なく、休憩中も受け持ち患者のことが頭から離れません。
学ぶことが多く、終わりが見えない
人工呼吸器、血液浄化、補助循環、多種類の薬剤。外科から内科まで幅広い患者が入ってくるので、勉強しても勉強しても追いつかない感覚になりやすい職場です。
命の終わりに立ち会う
治療を尽くしても助からない患者がいて、その場面にご家族と一緒に立ち会います。それが続くと、自分で気づかないうちに心がすり減っていきます。
厳しいコミュニケーションが起きやすい
急変の場面では、指示が短く強い口調になりがちです。それが日常の人間関係にまで持ち込まれている職場もあります。
こうして並べると、ICUを辞めたいと感じる理由の多くは、個人の性格ではなく職場の性質から来ていることが分かります。そして、職場の性質から来ている理由は、「職場を変えれば解決するもの」と「どこのICUでも変わらないもの」に分けられます。ここが次の切り分けにつながります。
切り分け1:自分で変えられることと、変えられないこと
辞めたい理由を整理するときに、まずやってほしいのが、自分の力で変えられることと、変えられないことを分けることです。
辞めたいと感じる理由に対して、まずは「自分が解決できるもの」「自分では解決するのが難しいもの」をわけて整理しましょう。辞めたい理由が人間関係であれば、人との接し方を変えたり、距離をおくなど対処ができます。一方、ICU特有の業務内容が自分には合っていないことや、職場環境の悪さが辞めたい理由であれば、自分だけでの解決は困難なので、他者の協力が必要でしょう。 出典: kango-oshigoto.jp
私が相談を受けるときは、紙に3つの欄を作ってもらいます。
欄1:自分の工夫で変えられること
・勉強の方法。1日1つだけ調べる、先輩に分からない点をまとめて聞く時間をもらう、など。 ・休日の過ごし方と睡眠。夜勤明けの過ごし方を固定する、仕事の連絡を見ない時間を決める。 ・特定の人との距離。業務上必要なやり取りに絞る、記録や申し送りの形で伝える。
欄2:誰かに相談すれば変わる可能性があること
・夜勤の回数や勤務表の組み方。 ・教育の担当者やペアを組む相手。 ・休憩の取り方、残業の多さ。 ・受け持つ患者の重症度の配分。
欄3:どこのICUでも変わらないこと
・重症患者を看ること、急変に立ち会うこと。 ・患者と言葉で話せない時間が長いこと。 ・患者の状態が落ち着けば一般病棟へ移り、回復を見届けにくいこと。 ・学び続ける必要があること。
書き出してみると、多くの人は欄2に項目が集中します。つまり、自分の努力ではどうにもならないけれど、職場が動けば変わるかもしれないことが、辞めたい理由の中心になっていることが多いんです。これ、知らない人が本当に多いんです。欄2の項目は、辞める前に一度は言葉にして職場に伝える価値があります。伝えても何も変わらなかった、という事実は、次の判断の根拠にもなります。
一方、欄3に重い項目が並ぶ人は、ICUという職場そのものと、自分の大切にしたい看護が合っていない可能性があります。その場合は、別の病院のICUに移っても同じ悩みが続くので、ICU以外の職場を考えるのが自然です。
私自身、この仕事を始めた頃に苦い経験があります。ある看護師さんから「辞めたい」と相談されたとき、退職の手続きの話ばかりをしてしまったんです。その方は辞めて別の病院のICUに移りましたが、半年後にまた同じ相談に来られました。話を聞き直すと、つらさの中心は欄3の「看取りが続くこと」でした。最初に切り分けをしていれば、ICU以外の選択肢を一緒に考えられた。それ以来、手続きの話は必ず切り分けのあとにしています。
切り分け2:ICUの仕事が嫌なのか、この職場が嫌なのか
次の切り分けは、仕事と職場を分けることです。
ICU看護師を辞めたい人の中には、「ICUの仕事は好きなのに辞めたい」と感じている人も。仕事が好きなのに、職場に行きたくないと感じてしまうのは、職場環境に関連した辞めたい理由があると考えられます。 出典: kango-oshigoto.jp
見分けるための問いを置いておきます。「もし明日から、勤務表も人間関係も理想どおりの職場に移れるとしたら、それでもICUで働きたいですか」。
働きたいと思えるなら、辞めたいのは「この職場」です。別の病院のICUやHCUに移る、あるいは同じ病院の中で環境を変える道があります。働きたいと思えないなら、辞めたいのは「ICUの仕事」かもしれません。
厳しさと、ハラスメントの境目
職場の問題の中でも、とくに切り分けが必要なのが人間関係です。ICUでは、患者を守るための厳しい指導が日常的にあります。一方で、それを超えてハラスメントになっている場合もあります。
職場のパワーハラスメントは、労働施策総合推進法で、優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超え、働く人の就業環境を害するもの、と整理されています。つまり、ポイントは「業務上必要かどうか」と「相当な範囲かどうか」です。厚生労働省の指針では、典型的な類型として、身体的な攻撃、精神的な攻撃(人格を否定する発言や、必要以上に長時間の叱責など)、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害(私生活への過度な立ち入り)の6つが示されています。
たとえば次のように分けて考えられます。
・急変時に「今すぐ離れて」と強く言われた。これは患者を守るための業務上の指示で、ハラスメントとは言いにくい場面です。 ・ミスについて、具体的な改善点を示されながら指導された。厳しくても、業務上の指導の範囲です。 ・毎日のように「看護師に向いていない」「いないほうがまし」と言われる。これは人格を否定する発言で、精神的な攻撃にあたる可能性が高いです。 ・自分にだけ申し送りをしない、質問しても無視される。人間関係からの切り離しにあたる可能性があります。
2022年4月からは、病院を含むすべての事業主に、パワーハラスメントの相談窓口を設けるなどの防止措置が義務づけられています。院内の相談窓口に相談したことを理由に、不利な扱いをすることも禁じられています。
※ハラスメントの被害について、慰謝料の請求や加害者の処分を求めたい場合は、個別の事情によって判断が分かれるので、弁護士に相談してください。院内で解決しない場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーでも相談を受け付けています。
ハラスメントが原因で辞めたいのであれば、それは「ICUの仕事が合わない」のではなく、「その職場が法律の求める環境を守れていない」ということです。自分を責める必要はありません。
出ていく前に、院内で使える選択肢
切り分けが終わったら、辞める以外の選択肢を一度並べてみましょう。病院を出ていく前に、院内で使える方法がいくつかあります。
部署の異動を希望する
大きな病院であれば、ICUから一般病棟、HCU、手術室、外来などへの異動を希望する道があります。欄3の「ICUの仕事そのもの」がつらい人でも、同じ病院の別の部署なら、給与や福利厚生を保ったまま環境を変えられます。
異動の希望は、多くの病院で年に1回程度の面談や自己申告の時期に出す仕組みになっています。時期を待てないほど苦しい場合は、師長や看護部に直接相談してください。そのときは、「ICUが嫌だから」ではなく、「どの部署でなら何を活かせるか」を添えると、話が前に進みやすくなります。
HCUに移る
ICUと一体で運営されているHCUは、配置が4対1が一般的で、ICUより重症度の低い患者を看ます。急性期の経験は続けたいけれど、今の緊張の強さはつらい、という人には現実的な選択肢です。
勤務形態を変える
正職員のまま夜勤の回数を減らす、パートに切り替えて日数を減らす、という方法もあります。育児や介護の事情がある場合は、法律で使える制度があります。育児・介護休業法では、小学校に入る前の子を育てている人は、深夜(22時から翌5時)の勤務の制限を請求できます。3歳未満の子を育てている人は、所定労働時間を短くする制度を使えます。つまり、「夜勤ができないなら辞めるしかない」とは限らない、ということです。請求できる条件には細かい決まりがあるので、就業規則と合わせて確認してください。
受け持ちや役割の配分を相談する
ICUの中にとどまったまま、負担の中身を変える相談もできます。たとえば、補助循環や血液浄化を使う最重症の患者の受け持ちが自分に偏っている、リーダー業務と教育担当が重なっている、委員会の仕事が勤務時間外に食い込んでいる、といった状況です。これらは勤務表や役割分担の問題なので、師長に具体的に伝えれば調整される可能性があります。「全部つらい」とまとめてしまうと調整のしようがないので、切り分け1の欄2に書いた項目を、そのまま持っていくのがおすすめです。
相談できる人を院内で探す
直属の上司に言いにくい場合は、看護部の教育担当、産業医、院内の職員相談窓口、労働組合などがあります。「辞めたい」と伝える前に「困っている」と伝える段階を挟むと、選べる道が増えます。
実際、私が相談を受けた方の中には、ICUの人間関係に悩んで辞める寸前だったものの、看護部に相談して同じ病院の救急外来に異動し、今も働き続けている人がいます。その方は「辞めるしかないと思っていたけれど、病院を辞めたかったわけではなかった」と話していました。
心と体が限界のときは、辞める前に休む
切り分けや院内の選択肢を考える余裕すらない、という状態のときもあると思います。眠れない、食べられない、出勤前に涙が出る、休日も急変の場面が頭に浮かぶ。こうした状態が続いているなら、辞めるかどうかの判断は後回しにして、まず休んでください。
疲れきった状態での判断は、どうしても視野が狭くなります。「辞める」という大きな決断を、一番判断力が落ちているときにしないこと。これは法律の話ではありませんが、相談を受けてきた立場から強くお伝えしたいことです。
医療機関を受診する
心身の不調が続くときは、心療内科や精神科を受診してください。医師の診断書があれば、休職の手続きを進めやすくなります。
休職の制度を確認する
多くの病院の就業規則には、病気で働けないときの休職の制度があります。休職できる期間や、その間の給与の扱いは病院ごとに違うので、就業規則で確認しましょう。
傷病手当金を使う
休職中に給与が出ない場合、健康保険の傷病手当金を受け取れる可能性があります。病気やけがで働けず、連続する3日間の待期のあと、4日目以降の休んだ日について、おおむね標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給されます。支給される期間は、支給を始めた日から通算して1年6か月です。つまり、休んでいる間の生活を支える仕組みがある、ということです。退職後も一定の条件を満たせば受け取り続けられる場合があるので、辞める前に加入している健康保険の窓口で確認してください。
業務が原因なら労災も視野に
長時間労働やハラスメントなど、業務による強い心理的な負担が原因で心の病気になった場合は、労災として認められる可能性があります。労災の手続きは労働基準監督署が窓口です。
※労災の認定には、発病前の出来事や労働時間などの細かい基準があります。申請を考えるときは、労働基準監督署に相談するか、労働問題を扱う弁護士や社会保険労務士に相談してください。
休むことは、逃げではありません。ICUで命と向き合い続けてきた心と体を、いったん守るための手続きです。
辞めると決めたときに知っておく法律のこと
切り分けて、院内の選択肢も考えて、それでも辞めると決めた。そのときに知っておいてほしい法律の知識をまとめます。これ、知らない人が本当に多いんです。
退職の申し出はいつまでにするか
期間の定めのない雇用(多くの正職員)の場合、民法第627条では、退職の申し入れから2週間が経てば雇用が終わると定められています。一方で、病院の就業規則には「退職の1か月前までに申し出ること」などと書かれていることが多いです。法律上は民法の2週間が基本と考えられていますが、引き継ぎや勤務表の都合を考えると、就業規則に沿って早めに伝えるほうが円満に進みやすいのが現実です。
有期契約の場合は注意
パートや契約職員で期間の定めがある場合は、話が違います。契約期間の途中で辞めるには、原則として「やむを得ない事由」が必要です(民法第628条)。ただし、契約期間が1年を超える契約では、働き始めて1年が経てば、いつでも退職を申し出られるという決まりもあります(労働基準法第137条、一部の専門職などを除く)。心身の不調でどうしても働けない場合は、やむを得ない事由にあたる可能性があります。
引き止められたとき
「人が足りないから辞めさせられない」「後任が見つかるまで待って」と言われることがあります。気持ちとしては理解できますが、辞める自由は法律で守られています。人員の確保は病院の責任です。退職の意思を伝えたことを記録に残すため、口頭だけでなく退職届を出すか、メールなど日付の残る方法で伝えておくと安心です。
奨学金の返還を求められたとき
冒頭の相談のように、病院の奨学金(修学資金の貸与)を受けていて、一定期間働けば返済が免除される約束になっている場合があります。途中で辞めると、残りの金額の返還を求められるのが一般的です。
ここで知っておいてほしいのが、労働基準法第16条です。働く人が約束の期間より前に辞めた場合に、違約金や損害賠償の額をあらかじめ決めておくことを禁じています。奨学金の貸与そのものは、お金の貸し借りの契約として有効なことが多いのですが、その実態が「辞めさせないための足かせ」になっている場合、つまり、返還の金額や条件が退職の自由を不当に縛るような内容になっている場合には、この規定に反するとして返還の請求が認められなかった裁判例もあります。
※奨学金の返還をめぐる判断は、貸与の目的、金額、返還の条件、勤務との結びつき方などによって大きく変わります。返還を求められて納得できない場合は、支払う前に必ず弁護士に相談してください。
有給休暇
退職前に残っている年次有給休暇を使うことは、働く人の権利です。退職日が決まっていると、病院側は時季を変更する余地がほとんどありません。引き継ぎの期間と合わせて、早めに計画を立てておきましょう。
雇用保険の失業給付
自己都合で辞めた場合、失業給付には受け取りを始めるまでの給付制限期間があります。2025年4月からは、この期間が原則1か月に短くなりました。心身の不調など正当な理由がある場合は、扱いが変わることもあります。詳しくは厚生労働省やハローワークの案内で確認してください。
ICUを出たあとの行き先と、経験の活かし方
最後に、ICUを辞めたあとの行き先を考えておきましょう。切り分けの結果によって、選ぶ方向が変わります。
「この職場」が合わなかった人
別の病院のICUを選ぶ道があります。ICUは病院の規模、受け入れる患者(術後中心か、救急からの重症患者が多いか)、夜間の医師の体制、教育の仕組みによって、働きやすさが大きく違います。次の職場を選ぶときは、欄2に書いた項目(夜勤の回数、教育、休憩、人間関係)が、応募先でどうなっているかを面接や見学で確かめてください。
「ICUの緊張の強さ」がつらかった人
HCU、救急外来、手術室など、急性期の経験を活かしながら負担の性質が変わる職場があります。救急外来は短い時間に集中して関わり、患者を長く抱えない働き方です。手術室は手順に沿って正確に進める仕事で、看取りの場面は少なめです。
「ICUの仕事そのもの」が合わなかった人
一般病棟、回復期の病棟、訪問看護、クリニック、健診センターなど、患者と言葉を交わしながら長く関われる職場があります。ICUで身につけた観察力と急変への対応力は、どこでも評価されます。
臨床を少し離れたい人
医療機器メーカー、治験に関わる仕事、看護学校の教員など、臨床の外で経験を活かす道もあります。
辞める前に、経験を言葉にしておく
どの方向を選ぶにしても、退職前にやっておくと役に立つのが、ICUで身につけたことの棚卸しです。辞めた後になると、つらかった記憶が先に立ち、自分ができるようになったことを思い出しにくくなります。
書き出しておきたいのは、たとえば次のような項目です。
・扱えるようになった機器(人工呼吸器の機種、血液浄化、補助循環など)。 ・受け持ってきた患者の主な病態(心臓血管外科の術後、敗血症、重症呼吸不全など)。 ・経験した役割(リーダー、新人の教育担当、委員会など)。 ・受講した院内外の研修や、取得した資格。
これらは、面接で「ICUで何をしてきたか」を具体的に伝える材料になります。応募先がICU以外でも、急変時にどう動けるかを具体的に話せる人は評価されやすいものです。
辞める時期の考え方
次の職場が決まる前に辞めるか、決まってから辞めるかも考えておきましょう。心身が限界なら、先に休むことが最優先です。余裕があるなら、在職中に次の職場を探すほうが、収入の途切れがなく、焦って条件の悪い職場を選ぶことを避けられます。また、夏と冬の賞与の支給日に在籍していることが条件になっている病院が多いので、就業規則で支給の条件を確認してから退職日を決めると、損をしにくくなります。
どの道を選ぶにしても、給与や条件の変化は気になるところです。看護師の年収の水準を統計で確認し、職場による違いを把握しておきたいときは、看護師の年収・単価相場が参考になります。今の条件と次の職場の条件を並べるときの物差しになります。
また、次の方向が決められないときは、一人で考え続けずに、キャリアの相談を専門にしている人に話を聞いてもらうのも一つの方法です。職場選びや転職の迷いを扱う相談の仕事がどんなものかは、職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介されています。
働き方の相談を受け続けてきて感じること
フリーランスや在宅ワークを含め、働く人の契約や働き方の相談を長く受けてきた立場から、最後に一つだけ書いておきます。
運営者として見てきた限りでは、辞めたあとに後悔しにくい人は、辞める理由を「職場への不満」ではなく「次に何を大切にしたいか」の形で言えるようになってから動いています。「ICUがつらい」から出発しても、切り分けを経て「看取りの少ない場所で、患者と話しながら看護したい」「夜勤のない形で、急性期の観察力を活かしたい」と言葉になった人は、次の職場選びでも迷いにくい。反対に、限界のまま勢いで辞めた人は、次の職場でも同じ不満の形で悩みが戻ってきやすい印象があります。辞める決断が遅いか早いかより、切り分けをしたかどうかのほうが、その後の働きやすさを左右しているように見えます。
もう一つ、看護師の働き方は病院に雇われる形だけではなくなってきています。臨床を休んでいる時期や、パートで働きながら、医療記事の監修、看護学生の学習支援、オンラインの健康相談といった仕事を個人で受ける人もいます。個人で仕事を受けるときは、契約の条件を自分で確かめる必要がありますが、間に入る仲介の手数料が小さい仕組みを選べば、同じ報酬でも自分の手元に残る金額が厚くなり、依頼する側も同じ予算でより多くを頼めます。手数料0%で直接やり取りできる場を選ぶ人がいるのは、この双方の得があるからです。臨床経験を活かせる在宅の仕事の種類は、看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】でまとめられています。
人の働き方の悩みに向き合う仕事に関心が出てきたなら、国家資格のキャリアコンサルタントの資格ガイドで、試験の内容と取得までの流れを確認できます。ICUで人の命と感情に向き合ってきた経験は、相談を受ける仕事でも活きます。
辞めたいと思うことは、悪いことではありません。大切なのは、その気持ちを切り分けてから、自分で選ぶことです。辞める自由も、休む権利も、ハラスメントから守られる権利も、法律はきちんと用意しています。法律はあなたの味方です。
よくある質問
Q. ICUを辞めたいけれど、1年目で辞めるのは早すぎますか?
年数だけで早すぎるとは言えません。ただ、1年目のつらさは慣れていないことから来ている部分も大きいため、自分で変えられること、相談すれば変わること、どこのICUでも変わらないことに分けて整理してから判断するのがおすすめです。心身の不調が続いている場合は、辞めるかどうかより先に受診や休職を考えてください。
Q. 病院の奨学金を借りていても、ICUを辞めることはできますか?
辞めること自体はできます。退職の自由は法律で守られており、奨学金の返還の約束があっても退職を止めることはできません。途中で辞めると残額の返還を求められるのが一般的ですが、返還の条件が退職の自由を不当に縛る内容であれば、労働基準法第16条に反するとされる場合もあります。納得できないときは支払う前に弁護士に相談してください。
Q. ICUから同じ病院の別の部署に異動することはできますか?
多くの病院で、自己申告や面談の時期に異動の希望を出す仕組みがあります。HCU、一般病棟、手術室、外来などへの異動が考えられます。時期を待てないほど苦しいときは、師長や看護部に直接相談してください。どの部署で何を活かしたいかを添えて伝えると、話が進みやすくなります。給与や福利厚生を保ったまま環境を変えられるのが利点です。
Q. 心身が限界のときは、辞める前に何をすればよいですか?
まず医療機関を受診し、必要であれば休職の制度を使ってください。休職中に給与が出ない場合は、健康保険の傷病手当金を受け取れる可能性があります。支給は待期3日のあと4日目からで、期間は通算1年6か月です。業務による強い負担やハラスメントが原因の場合は労災の対象になることもあります。大きな決断は、休んで判断力が戻ってからにしましょう。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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