訪問看護ステーションの人間関係|狭い職場での距離の取り方

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
訪問看護ステーションの人間関係|狭い職場での距離の取り方

この記事のポイント

  • ✓訪問看護ステーションの人間関係は
  • ✓少人数の体制と1日の流れから
  • ✓関係がこじれやすい場面

訪問看護ステーションの人間関係は、よく「楽そう」と「逃げ場がなくてきつい」の両方で語られます。どちらも正しく、どちらも半分しか言い当てていません。

結論から言うと、訪問看護の人間関係は、同僚と一緒にいる時間は短いのに、関係がこじれたときの逃げ場がほとんどない、という特徴があります。だから距離の取り方は、仲良くなることでも、一人で抱え込むことでもなく、情報の受け渡しを整えることが中心になります。

この記事では、訪問看護ステーションの人員体制と1日の流れから、人と関わる場面がどこにあるのかを整理し、関係がこじれやすい場面、病棟や施設との比較、職場の外の人との付き合い方、狭い職場での距離の取り方、そして入職前に人間関係の実態を見分ける方法までまとめます。

訪問看護ステーションの人間関係が、病棟と違って見える理由

最初に、訪問看護ステーションという職場の形を確認しておきます。人間関係の特徴は、ほとんどがこの形から生まれています。

訪問看護ステーションを開くには、看護職員が常勤換算で2.5人以上いればよいと決められています。実際には、看護師が5人前後、そこに理学療法士や作業療法士などのリハビリ職が数人、事務員が1人か2人、という規模の事業所がよく見られます。看護職員が常勤換算で5人に満たない事業所も珍しくありません。病院の病棟が1部署に20人から30人の看護師を抱えているのと比べると、組織の大きさは数分の1です。

もう1つの特徴は、管理者との距離が近いことです。管理者は保健師か看護師であることが決められていて、小さな事業所では管理者自身も訪問に出ています。病棟でいえば、師長が毎日同じ現場でケアをしながら、スタッフの勤務表を組み、利用者の受け入れを判断している状態です。上司の考え方や機嫌が、職場の空気にそのまま出やすいという特徴があります。

さらに、職種の混ざり方も病棟とは違います。訪問看護ステーションでは、看護師とリハビリ職が同じ事務所で働き、同じ利用者を担当することがあります。医療保険と介護保険の請求を担う事務員も、訪問の予定を組むうえで欠かせない存在です。少人数のなかに違う専門を持つ人が混ざっているので、考え方の違いがぶつかる場面も出てきます。

そして、日中はほとんど一人で動きます。朝に事務所を出たら、夕方に戻るまで同僚と顔を合わせない日も普通にあります。この「一緒にいる時間の短さ」が、人間関係を楽に見せる理由です。一方で、人数が少ないので部署異動はなく、合わない相手とも毎朝同じ部屋で申し送りをすることになります。こちらが「逃げ場がない」と言われる理由です。

つまり、訪問看護の人間関係は、接触時間は短いが、関係の固定度は高い、という組み合わせになっています。病棟の感覚のまま入ると、この組み合わせに戸惑う人が多い傾向が見られます。

1日の中で、どこで人と関わるのか

人間関係のつらさを具体的に考えるために、訪問看護ステーションの1日を、人と関わる場面に絞って追ってみます。

朝は、8時半ごろに事務所に集まり、前夜のオンコールで何があったかを当番の看護師から聞きます。緊急の出動があった利用者の状態、今日の訪問で気をつける点、急な予定変更などを数人で共有します。時間にすると15分から30分ほどですが、1日のなかで同僚全員が顔をそろえる数少ない時間です。ここで責めるような言い方をする人がいると、職場全体の雰囲気が一気に重くなります。

日中は、それぞれが車や自転車で訪問に出ます。1日に4件から6件ほどを回り、移動のあいだに事務所や管理者と電話でやり取りします。「今日の訪問で血圧が高かったので主治医に連絡したい」「次の利用者の家に向かう途中で道が混んでいる」といった連絡です。電話の向こうの相手が忙しそうにしている、相談すると面倒そうな声を出される、という経験が重なると、次第に連絡すること自体をためらうようになります。

夕方は事務所に戻り、記録を書きます。同僚と並んでパソコンやタブレットに向かい、ここで日中の出来事を話したり、判断に迷ったことを相談したりします。1日のなかでいちばん自然に会話が生まれる時間ですが、記録が終わらずに焦っている人が多い日は、相談する余裕がありません。

月に1回ほど、担当している利用者の状態を話し合うカンファレンスがあります。ケアの方針について意見を出し合う場なので、経験年数や考え方の違いが表に出やすい場面です。

最後に、オンコールの交代です。当番の携帯電話を次の人に渡すときに、今夜注意が必要な利用者を伝えます。この引き継ぎが雑だと、夜中に呼ばれた人が状況をつかめず、翌朝の申し送りで不満が出ます。

こうして見ると、訪問看護の人間関係は「長時間一緒にいて摩擦が起きる」のではなく、「短い受け渡しの場面で摩擦が起きる」ことが多いと分かります。これが、距離の取り方を考えるうえでの出発点になります。

人間関係がこじれやすい場面

では、具体的にどんな場面で関係がこじれるのか。訪問看護ステーションで働く人の話や、求人情報、事業所の発信を見ていくと、いくつかの型に分かれます。

1つめは、訪問の振り分けです。移動が長い地域の利用者、医療的な管理が重い利用者、家族との関係が難しい利用者が、特定の人に偏って割り当てられることがあります。予定を組む人に悪気がなくても、「なぜ自分ばかり」という不満がたまります。人数が少ないので、誰がどの利用者を担当しているかが全員に見えてしまうことも、不満を大きくします。

2つめは、オンコールの負担の差です。子育て中の人はオンコールを免除され、独身の人や子どもが大きくなった人に当番が集中する、という構図はよく見られます。免除される側も肩身が狭く、担う側は疲れている。どちらが悪いわけでもないのに、職場の空気がぎくしゃくします。

3つめは、ケアのやり方の違いです。病院で経験を積んだ看護師は、それぞれの病院で身につけた手順を持っています。訪問看護では利用者の家にある物で工夫しなければならないため、「前の人はこうしてくれた」と利用者に言われ、同僚のやり方と比べられることもあります。担当が交代するたびに、やり方の違いが見えてしまうのが訪問看護の特徴です。

4つめは、管理者とベテランの関係です。立ち上げから在籍しているベテランが実質的に職場を仕切っていて、管理者が遠慮している、あるいはその逆、というケースがあります。新しく入った人は、どちらの顔を立てればよいのか分からず、板挟みになりがちです。

5つめは、看護師とリハビリ職の間の溝です。同じ利用者を担当していても、見ている視点が違います。看護師は体調の変化や医療処置を、リハビリ職は動作や生活の自立を中心に見ます。情報の共有が少ないと、「看護師はリハビリの意図を分かっていない」「リハビリ職は体調の変化に気づいていない」という不満が互いに生まれます。

正直なところ、これらの多くは個人の性格の問題ではなく、仕組みの問題です。振り分けの基準が決まっていない、オンコールの手当や免除のルールが曖昧、ケアの手順が共有されていない、情報共有の場がない。仕組みが整っていない事業所ほど、個人の我慢で回そうとして関係がこじれる傾向があります。

病棟・施設・クリニックと比べたときの違い

訪問看護の人間関係の特徴をつかむために、看護師がよく働く他の職場と比べてみます。どれが良い悪いではなく、関係の性質が違うということを表にまとめました。

比べる点 病院の病棟 介護施設 クリニック 訪問看護ステーション
同じ職場の看護師の数 20〜30人程度 数人程度 数人程度 数人から10人程度
同僚と一緒にいる時間 長い 長い 長い 短い(朝夕が中心)
部署異動 ある 系列内であることも ほぼない ほぼない
主に関わる他職種 医師、薬剤師、看護補助者 介護職員、相談員 医師、受付 リハビリ職、ケアマネジャー、主治医
判断を相談する相手 すぐそばにいる 施設内にいる 医師がそばにいる 電話が中心

病棟は人数が多く、合わない人がいても勤務がずれる日がありますし、異動という選択肢もあります。その代わり、長時間同じ空間にいるので、細かい摩擦は日常的に起きます。

介護施設では、看護師が少数派になり、介護職員との関係が中心になります。医療の視点と生活の視点の違いから、意見がぶつかる場面が多いと言われます。一緒に働く介護職の人たちの働き方や給与の水準を知っておくと、相手の事情を理解しやすくなります。訪問介護や施設介護を含めた相場は、介護職員の年収・単価相場にまとめられています。

クリニックは少人数で異動がない点が訪問看護と似ていますが、医師や受付と一日中同じ空間にいるため、接触時間が長いという違いがあります。

訪問看護ステーションは、少人数で異動がない点はクリニックに近く、一緒にいる時間が短い点はどの職場とも違います。そして、同僚よりも、事業所の外にいる主治医やケアマネジャー、利用者の家族と関わる時間のほうが長い日もあります。この点は、あとで書く「事業所の外にある人間関係」につながります。

入って最初の3か月で、関係の土台をつくる

訪問看護ステーションに転職したばかりの時期は、仕事を覚えるのと同時に、少人数の職場での自分の立ち位置が決まっていく時期でもあります。最初の3か月の過ごし方で、その後の関係がかなり変わります。

最初の1か月は、同行訪問が中心になります。先輩の訪問についていき、利用者の家での動き方、物品の置き方、家族との話し方を見て覚えます。この時期に意識したいのは、先輩のやり方と前の職場のやり方が違っても、すぐに「前はこうしていました」と言わないことです。訪問看護のやり方には、その家庭の事情に合わせて工夫してきた経緯があることが多いからです。疑問は、訪問が終わって車に戻ってから「さっきの方法は、どういう理由でああしているんですか」と理由を聞く形で出すと、相手も説明しやすくなります。

2か月目から3か月目にかけて、一人で訪問する件数が少しずつ増えていきます。ここで大切なのは、迷ったときに連絡する基準を、早めに先輩や管理者とすり合わせておくことです。「血圧がこの範囲を超えたら連絡する」「転倒があったら必ず電話する」といった線を決めておけば、連絡しすぎて迷惑をかけるのではないか、連絡しなくて怒られるのではないか、という不安が減ります。連絡の基準が人によって違う事業所では、新しく入った人がいちばん困ります。

この時期は、記録の書き方も覚えます。事業所ごとに、記録に書く項目や言葉の使い方に決まりがあります。自分の書き方で押し通すのではなく、先輩の記録をいくつか読んで形をそろえると、同僚があなたの記録を読んで次の訪問に入るときに困りません。訪問看護では、自分の記録が同僚の仕事の材料になるので、記録を整えることがそのまま信頼につながります。

オンコールの当番に入る時期も確認しておきましょう。入職してすぐに当番を持たされる事業所もあれば、半年ほど経ってから段階的に入る事業所もあります。まだ担当していない利用者の家に夜中に呼ばれるのは、誰にとっても不安です。いつから、どの程度の回数で入るのかを最初に確認し、不安があれば同行や電話での支援を頼んでおくと、当番の交代をめぐる摩擦を防げます。

事業所の外にある人間関係

訪問看護の人間関係というと、事業所の同僚との関係を思い浮かべがちですが、実際には外の人との関係も同じくらい重みがあります。

まず、利用者と家族です。訪問看護では、利用者の自宅に入り、生活の場でケアをします。病院のように「患者さんが病院のルールに合わせる」のではなく、看護師が家庭のルールに合わせる立場になります。靴の脱ぎ方、物の置き場所、家族がどこまで介護に関わるかといった細かな点に、家庭ごとの考え方があります。長く担当すると信頼関係が深まる一方で、「あなたでなければ嫌だ」と担当の交代を拒まれることもあり、それが同僚との関係に響くことがあります。

次に、主治医です。訪問看護は主治医の指示書に基づいて行うので、状態が変わったときは主治医に報告し、指示を仰ぎます。病院と違って医師がそばにいないため、電話やファクス、連絡用のシステムでやり取りします。忙しい開業医に何度も連絡するのをためらう気持ちは誰にでもありますが、報告の仕方を事業所内で決めておくと、個人が抱える負担はかなり軽くなります。

そして、ケアマネジャーです。介護保険で訪問看護を利用している人の場合、ケアプランを作るケアマネジャーとの連携が欠かせません。訪問の回数や時間の変更、ほかのサービスとの調整など、やり取りの頻度は高めです。ヘルパーやデイサービスなど、ほかの事業所の人と情報を共有する場面もあります。

訪問エリアが広い事業所では、この外の人との関係の比重がさらに大きくなります。たとえば群馬県沼田市の事業所は、次のように広い範囲を訪問先として挙げています。

当施設は沼田市上之町にある訪問看護ステーションです。沼田市、昭和村、川場村、片品村、みなかみ町、渋川市、高山村への訪問看護を実施しています。 出典: kijokai.or.jp

これだけの範囲を回ると、移動の時間が長くなり、事務所で同僚と過ごす時間はさらに短くなります。その分、地域の診療所やケアマネジャー、利用者の家族と直接やり取りする場面が増えます。都市部の事業所とは、人間関係の重心そのものが違うということです。

狭い職場での距離の取り方

ここからは、実際にどう距離を取ればよいかを書きます。ポイントは、感情の距離ではなく、情報の距離を整えることです。

まず、報告と相談は「事実・判断・お願い」の順で短く伝えることを習慣にします。「〇〇さんの訪問で、血圧が普段より20高かったです。本人は症状なしで、様子を見る判断をしました。明日の当番の人に共有をお願いします」という形です。電話で相談するときも同じです。相手が忙しくても、要点が先に分かれば返事をしやすく、面倒そうな声を出される場面が減ります。

次に、ケアのやり方の違いは、口頭で指摘し合うのではなく、記録と手順書に落とします。「前の担当はこうしていた」と利用者に言われたら、その場で同僚のやり方を否定せず、事務所に戻ってから記録を見て、手順をそろえるかどうかを話し合います。人ではなく手順を議題にすると、個人攻撃に聞こえにくくなります。

3つめに、訪問の振り分けやオンコールの負担に不満があるときは、感想ではなく数字で伝えます。「最近しんどいです」ではなく、「この1か月、移動30分以上の訪問が週に8件あり、ほかの人より多いです」と伝えると、管理者も調整しやすくなります。私自身、数人の小さなチームで仕事をしていた時期に、不満を曖昧な言葉で伝えて空気を悪くしたことがあります。担当量を表にして見せたら、相手はあっさり「気づいていなかった」と言い、翌月から配分が変わりました。狭い職場では、言葉の選び方1つで関係が長く左右されます。

4つめに、プライベートの話はほどほどにします。少人数の職場では、休日の過ごし方や家族の事情がすぐに全員に伝わります。仲が良いのは悪いことではありませんが、オンコールの交代や休みの調整を頼むときに、個人的な事情を理由にしすぎると不公平感が生まれます。

5つめに、オンコールの交代は「形」を決めて渡します。今夜注意が必要な利用者の名前、想定される連絡の内容、そのときの対応の目安、主治医への連絡の要否。この4点を書いたメモを携帯電話と一緒に渡すだけで、夜中に呼ばれた人が状況をつかめず不満をためる、という流れはかなり防げます。自分が当番を受け取る側のときも、足りない項目があれば遠慮せず聞き返してください。聞き返すことは相手を責めることではなく、利用者の安全を守るための確認です。

6つめに、感謝は具体的に伝えます。「いつもありがとうございます」より、「昨日の夜、〇〇さんの件で出動してくれて助かりました。朝の訪問で落ち着いていました」と伝えるほうが、相手の負担がどう役に立ったのかが伝わります。日中に顔を合わせない職場だからこそ、短い言葉で相手の仕事を見ていると示すことが、関係を保つうえで効きます。

そして最後に、職場の外に相談できる人を持っておきます。以前の職場の同僚、看護協会の研修で知り合った人、地域の訪問看護の勉強会の仲間などです。同じ事業所の人だけで悩みを抱えると、話がすぐに広がり、かえって関係がこじれることがあります。

強い叱責やハラスメントがあるときの線引き

距離の取り方を工夫しても解決しない関係もあります。相性の問題なのか、職場として対応すべき問題なのかを分ける線を知っておくことは大切です。

職場のパワーハラスメントについては、事業主に防止のための措置を講じる義務があり、中小企業も2022年4月から対象になっています。大声で怒鳴る、人格を否定するような言葉を繰り返す、必要な情報を意図的に伝えない、一人だけ仕事を回さないといった行為は、業務上必要な指導の範囲を超えていると判断される可能性があります。少人数の事業所では相談窓口が管理者本人しかいないこともありますが、法人として別の窓口を設けている場合もあるので、就業規則や入職時の資料を確認してください。

訪問看護ならではなのは、利用者や家族からのハラスメントです。自宅という閉じた空間で一人でケアをするため、暴言や身体への接触、不当な要求を受けても、その場に証人がいません。厚生労働省は介護現場におけるハラスメント対策のマニュアルを公表しており、事業所として対応を検討すること、職員一人に抱え込ませないことが示されています。制度の資料は厚生労働省のサイトから探せます。

線引きの目安は、繰り返されているか、業務に必要な範囲を超えているか、心身に影響が出ているか、の3つです。当てはまるなら、日時、場所、相手の言葉、そのときの状況をメモに残してください。記録があると、事業所の中で相談するときも、外部の窓口に相談するときも、話が具体的になります。

外部の窓口としては、各都道府県の労働局に総合労働相談コーナーがあります。どこに相談すればよいか分からないという段階でも受け付けてもらえます。職場を変えることも含めて今後の働き方を整理したい場合は、職業選択の相談に乗る国家資格であるキャリアコンサルタントに話を聞いてもらうという方法もあります。

※心身に不調が出ているときは、関係の改善より先に、医療機関の受診と休むことを優先してください。

入る前に、人間関係の実態を見分ける

人間関係は入ってみないと分からない、と言われます。ただ、訪問看護ステーションは組織が小さいので、見学や面接で確かめられることは意外と多くあります。

まず、求人情報で体制を読みます。事業所の発信には、たとえば次のように人員の構成や雰囲気が書かれていることがあります。

訪問看護ステーションぐらんで北大阪は、若手からベテランまで、経験豊富なスタッフが幅広く活躍しています。それぞれの強みを活かしながら、チームとして支え合える体制です。 出典: grande-kango.com

こうした文章は、そのまま信じるのではなく、「若手とベテランがそれぞれ何人いるか」「支え合う体制とは具体的に何か」を面接で聞くための手がかりにします。オンコールを何人で分けているか、同行訪問を何回してもらえるか、困ったときの電話相談は誰が受けるか、と具体的に聞くと、体制の実態が見えてきます。

次に、見学の時間帯を選びます。可能であれば、朝の申し送りか夕方の記録の時間に見学させてもらいましょう。前の節で書いたとおり、訪問看護で人が顔をそろえるのはこの2つの時間です。申し送りで誰が話し、誰が黙っているか、質問しやすい空気か、管理者がどのように場を回しているかを見ると、職場の関係性がかなり分かります。

3つめに、人の入れ替わりを聞きます。「ここ1年で何人が入り、何人が辞めましたか」「いちばん長く勤めている人は何年目ですか」という質問は、失礼にはあたりません。少人数の職場で入れ替わりが激しいなら、人間関係か体制のどちらかに問題がある可能性が高いです。

4つめに、給与や手当の決め方を確認します。オンコール手当、出動手当、訪問件数に応じた手当などが明確に決まっていれば、負担の差をめぐる不満は起きにくくなります。給与の水準そのものを見るときは、病院で働いた場合との差も含めて比べておくと判断しやすくなります。看護師の年収・単価相場には、公的な統計をもとにした看護師全体の相場がまとめられているので、提示された額が相場のどのあたりにあるのかをつかむ手がかりになります。

人間関係は相性の要素もあるので、ここまで確かめても完全には分かりません。それでも、仕組みが整っている事業所かどうかは見分けられます。仕組みが整っていれば、多少の相性の悪さは個人の工夫で乗り越えられる範囲に収まります。

運営者として見てきた、小さなチームで長く続く関係

フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、少人数のチームで長く続く関係には、業種を問わず共通点があります。訪問看護ステーションも、その意味では小さなチームの典型です。

長く続くチームでは、「誰が何をどこまで担うか」が言葉にされています。訪問の振り分けの基準、オンコールの回数と手当、相談を受ける人と時間帯。決まっていることが多いほど、個人の気遣いに頼る部分が減り、感情の摩擦が起きにくくなります。反対に、「みんなで助け合う」という言葉だけで回しているチームは、助ける側と助けられる側が固定され、いつか不満が表に出ます。

もう1つの共通点は、仕事を頼む側と受ける側が、お互いの手取りや負担を想像できていることです。在宅の仕事を見ていると、中間に誰かが入らずに直接やり取りしている関係では、依頼する側は同じ予算で頼みたいことを頼め、受ける側は手元に残る額が厚くなり、双方が相手を大事にする傾向があります。訪問看護の職場でも、オンコールを担う人に手当と翌日の配慮がきちんと届いている事業所は、担う人も免除される人も、互いに負い目を感じずに済んでいます。

在宅の仕事の世界で長く仕事が続く人を見ていると、相手に合わせて自分を変えるより、やり取りの形を先に決めている人が多いという特徴もあります。連絡はいつまでに返すか、変更はどう伝えるか、困ったときに誰に言うか。こうした取り決めを最初に交わしておくと、相手の性格が自分と違っても、仕事は滞りなく回ります。訪問看護ステーションでも、申し送りの形式や連絡の基準が決まっている職場ほど、性格の違う人が混ざっていても関係が安定しているように見えます。

人間関係に悩んだとき、自分の性格や相性の問題として抱え込む人は多いです。ただ、小さな職場の関係のこじれは、たいていどこかの仕組みの穴から生まれています。どこに穴があるのかを探し、数字と手順の言葉で伝える。それでも変わらない職場なら、次に選ぶ職場で同じ穴がないかを確かめる。狭い職場で距離を取るというのは、そういう作業のことだと考えています。

よくある質問

Q. 訪問看護ステーションは人間関係が楽だと聞きましたが、本当ですか?

日中は一人で訪問するため、同僚と一緒にいる時間は病棟より短く、細かな摩擦は起きにくい傾向があります。一方で、少人数で異動がないため、関係がこじれると逃げ場がありません。楽かどうかは、訪問の振り分けやオンコールの分担など、仕組みが整っているかどうかで大きく変わります。

Q. 管理者と合わない場合はどうすればよいですか?

まず、不満を感想ではなく数字と事実で伝えてみてください。訪問件数や移動時間、オンコールの回数などを表にして相談すると、個人攻撃に聞こえにくくなります。それでも改善しない場合、小さな事業所では管理者の方針が職場全体を左右するため、体制の整った別の事業所を検討するのも現実的な選択です。

Q. 見学でどこを見れば人間関係の雰囲気が分かりますか?

朝の申し送りか、夕方の記録の時間に見学させてもらうのがおすすめです。訪問看護で同僚が顔をそろえるのはこの時間帯だけなので、誰が発言しているか、質問しやすい空気か、管理者がどう場を回しているかがよく見えます。あわせて、ここ1年の入職者と退職者の数も聞いておくと判断材料になります。

Q. 利用者の家族との関係がつらいときは、一人で抱えるしかないですか?

一人で抱える必要はありません。家族との関係で困ったことは、記録に事実を残し、管理者やケアマネジャーと共有してください。担当を複数人で持つ、訪問時に2人で入る、ケアマネジャーを通して家族と話し合うといった対応を取れる事業所もあります。暴言やハラスメントがある場合は、事業所として対応を求めることが大切です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月21日最終更新:2026年9月15日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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