未経験から学校の保健室で働く|受け入れている募集と、慣れるまで

中西 直美
中西 直美
未経験から学校の保健室で働く|受け入れている募集と、慣れるまで

この記事のポイント

  • 学校の保健室で未経験から働きたい人に向けて
  • 受け入れている募集の種類と
  • 歓迎されにくい募集の理由を整理します

学校の保健室で働いてみたい。でも、学校で働いたことがないし、子どもの対応にも自信がない。そんなふうに迷っている方は、とても多いんです。

先にお伝えしておくと、大丈夫ですよ。学校の保健室には、未経験の人を受け入れている募集がちゃんとあります。

ただし、ひとことで「未経験」と言っても、何が未経験なのかによって開いている扉が違います。学校で働いたことがない看護師なのか、臨床経験そのものが浅いのか、そもそも看護の資格を持っていないのか。この記事では、その違いを整理しながら、どんな募集が受け入れているのか、着任してから慣れるまでに何が起きるのかを、順番にお話しします。

「未経験」には3つの意味があり、入口がそれぞれ違う

まず、自分がどの「未経験」にあたるのかを確かめてみてください。ここがはっきりすると、探すべき求人が見えてきます。

1つ目は、看護師や保健師の資格と臨床経験はあるけれど、学校で働いたことがないという人です。病院やクリニック、訪問看護などで働いてきて、子育てや生活の変化をきっかけに、日勤で土日が休みの職場を探している。学校の保健室の求人を見る人の中で、いちばん多いのがこのパターンです。この人たちにとっては、学校保健の経験がないことは、多くの募集で大きな壁にはなりません。

2つ目は、資格はあるものの、臨床経験が浅い、あるいはブランクが長いという人です。新卒で数年働いて離職した、子育てで10年近く現場を離れていた、という方ですね。この場合は、応募できる募集がやや絞られます。後で詳しく触れますが、1人で判断する場面の多い保健室では、臨床での経験年数を条件にしている募集が少なくないためです。

3つ目は、看護師や保健師、養護教諭の資格を持っていないという人です。この場合、保健室で子どもの手当てをする役割に就くことはできません。ただ、大学の保健管理センターの受付や事務、健康診断の時期の補助スタッフなど、保健室の周辺で働く入口はあります。

もう1つ、教員免許である養護教諭免許状を持っているけれど、学校で働いた経験がないという人もいます。養成課程を出たばかりの人や、免許を取ったあと別の仕事をしてきた人です。この場合は、教員採用試験を受けて正規の養護教諭を目指す道と、臨時的任用や会計年度任用職員として学校に入りながら経験を積む道があります。

どれにあたるかで、次に読むべき部分が変わります。自分の立ち位置を頭に置きながら、読み進めてみてください。

ちなみに、学校の種類によっても、未経験の人の慣れやすさは違います。大人の学生が相手で職員が複数いる大学の保健室は、最も慣れやすい部類です。養護教諭と一緒に働く私立の中学や高校、看護師がチームで働く特別支援学校がそれに続きます。反対に、子どもの数が多く、保健室を1人で担当する小学校は、経験のある人でも最初は戸惑う職場です。自分の不安の大きさに合わせて、学校の種類から選ぶという考え方もあります。

学校で働いたことがなくても応募できる募集

資格と臨床経験がある方にとって、学校保健の経験がなくても応募しやすいのは、次のような募集です。

最も目にしやすいのは、大学や専門学校の保健室の募集です。大学では保健室を保健管理センターや健康管理室と呼ぶことが多く、看護師や保健師が学生や教職員の健康管理を担っています。求人サイトには、たとえば次のような募集が並んでいます。

【仕事内容】<おすすめポイント>有名大学でのお仕事です。閑静な環境の中でご勤務いただけます。人気の大学保健室業務です!...【経験・資格】保健師 【給与】時給2,000円~2,000円 出典: 求人ボックス

この募集で求められているのは保健師の資格で、学校での経験は条件に入っていません。大学の保健室は、来室するのが大人の学生であること、健康診断の運営や健康相談といった仕事が企業の健康管理室に近いことから、病院や企業での経験をそのまま活かしやすい職場です。4月の健康診断の時期に合わせて、短期の募集が出ることもあります。

2つ目は、医療的ケアを担当する看護師の募集です。2021年に施行された医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律によって、学校の設置者には、医療的ケアが必要な子どもが保護者の付き添いなしで通えるよう、看護師などを配置する措置が求められるようになりました。特別支援学校や地域の小中学校で、たんの吸引や経管栄養などを担う看護師の募集が増えているのは、このためです。学校での経験は問われないことが多い一方で、臨床での経験年数を条件にしている募集がよく見られます。

3つ目は、私立学校の学校看護師や、修学旅行や宿泊行事への付き添いの募集です。付き添いは数日単位の仕事なので、学校という職場の雰囲気を知る最初の一歩として選ぶ人もいます。

収入の目安としては、学校や大学の保健室の非常勤の募集では、時給1,500円から2,000円台前半の範囲が多い傾向があります。病院の日勤パートと比べて極端に高いわけではないので、収入より働き方の安定を重視して選ぶ人が多い職場だと考えておくとよいでしょう。

未経験だと入りにくい募集と、その理由

一方で、未経験の人が入りにくい募集もあります。ここを知っておくと、応募して落ちたときに必要以上に落ち込まずに済みます。

いちばん入りにくいのは、保健室を1人で担当する募集です。私立の小中学校や高校で、看護師が1人で保健室を任される場合、けがの重さの判断、保護者への連絡、救急車を呼ぶかどうかの決定まで、その場で1人で行う必要があります。相談できる医師がすぐそばにいない環境なので、臨床での経験、特に救急外来や小児科での経験を重視する学校が多くなります。

医療的ケアの中でも、人工呼吸器を使っている子どもや、ケアの内容が複雑な子どもを担当する募集は、経験を条件にしていることがほとんどです。ケアの一つひとつが子どもの命に直結するため、未経験の人をいきなり配置するのは難しいという判断です。

公立学校の正規の養護教諭は、そもそも経験の有無より、教員採用試験に合格することが条件です。自治体によっては倍率が高く、何年か続けて受験する人も珍しくありません。その間に、臨時的任用や会計年度任用職員として学校で働き、経験を積みながら受験を続ける人が多くいます。

こうした入りにくさの背景にあるのは、保健室が「1人で判断する職場」だということです。病院なら、判断に迷ったときに先輩や医師に聞けます。学校では、その相手がすぐにはいません。未経験の人を受け入れる募集が、複数配置の学校や、指導役の看護師がいる職場、大学のように職員が複数いる保健室に多いのは、そのためです。

経験年数の条件を見るときに、1つ知っておいてほしいことがあります。求人票に「臨床経験3年以上」とあっても、それが絶対の線ではない場合があるということです。応募者が少ない地域や、年度途中で急いで人を探している学校では、条件に少し届かなくても面接に進めることがあります。気になる募集があれば、自分の経験を正直に伝えたうえで、応募できるかを問い合わせてみるのも1つの方法です。

もし応募した募集で「経験者を優先したい」と言われても、それはあなたの力を否定しているわけではありません。その職場の体制では、1人で判断できる人が必要だというだけのことです。体制の整った別の募集を探せば大丈夫です。

資格を持っていない人、免許の途中にいる人の入口

看護師や保健師の資格を持っていない方からも、「保健室で働くことはできますか」というご相談をいただきます。

子どもの手当てや健康相談の役割に就くことはできません。けれど、保健室の仕事を支える入口はいくつかあります。

1つは、大学の保健管理センターの事務や受付です。学生の来室の受付、健康診断の予約や案内、診断書の発行の手続き、データの入力などを担います。健康診断の時期は、数千人の学生の受診を短期間でさばく必要があるため、この時期だけ事務のスタッフを増やす大学が多くあります。求人サイトで「大学 健康診断 事務」といった言葉で探すと見つかりやすくなります。

2つ目は、特別支援学校や小中学校の介助員や支援員です。子どもの移動や食事、着替えなど、学校生活を支える仕事で、医療的ケアそのものは看護師が行いますが、保健室の看護師と一緒に子どもを見守る場面が多くあります。教員免許や保育士の資格が応募条件に挙げられることもありますが、資格を問わない募集もあり、学校という職場を知る入口として選ぶ人がいます。

こうした仕事で学校の雰囲気に触れた後、看護の学校に進んで資格を取り、保健室に戻ってくる人もいます。遠回りに見えても、学校の中の人の動きを先に知っていることは、資格を取った後に大きな強みになります。

資格の途中にいる人の道も整理しておきます。保健師の免許を持っている人は、日本国憲法、体育、外国語コミュニケーション、情報機器の操作の単位を修めて都道府県の教育委員会に申請すると、養護教諭二種免許状を取得できます。保健師として学校で働いた後、教員として保健室に立ちたいと考えたときに使える道です。

看護師の免許だけを持っている人については、養護教諭の応募者が見つからない地域で、臨時免許状を出して養護助教諭として任用する自治体もあります。ただし、これはあくまで欠員を埋めるための例外的な扱いで、どの自治体でも用意されているわけではありません。関心がある場合は、働きたい地域の教育委員会の募集案内を確かめてみてください。

資格を取るところから考えている人は、学校の保健室にこだわらず、看護や保健の資格そのものの取り方から調べてみるのも1つの方法です。保健師を目指す流れについては、未経験から保健師になるまでの道筋で資格の取り方と最初の職場の選び方がまとめられています。学校以外の職場も含めて見通しを持っておくと、選べる道が増えます。

病院から学校に移ると、何が一番違うのか

臨床経験のある人が学校の保健室に移ったとき、戸惑いやすい点がいくつかあります。前もって知っておくと、驚きが小さくなります。

いちばん大きいのは、医師がいないことです。学校には学校医がいますが、常駐はしていません。けがや体調不良の子どもが来たとき、医療機関を受診させるか、保健室で様子を見るか、教室に戻すかを判断するのは、保健室にいる人です。病院では医師の指示のもとで動いていた人ほど、この「判断の最初を担う」重さに驚きます。

2つ目は、学校では診断も治療もしないということです。保健室で行うのは、あくまで救急処置と、医療機関につなぐまでの対応です。市販の飲み薬を子どもに渡すことも、原則として行いません。「痛み止めを飲ませれば楽になるのに」と感じる場面でも、保護者に連絡して受診をすすめるのが基本です。病院で当たり前にしていたことができないもどかしさを感じる人は少なくありません。

3つ目は、相手が子どもであり、その後ろに保護者と担任がいることです。子どもは自分の症状をうまく言葉にできないことがあり、「お腹が痛い」の中に、友達とのトラブルや家庭の悩みが隠れていることもあります。そして、対応した結果は保護者に伝え、担任とも共有します。1人の子どもへの対応が、何人もの大人とのやり取りにつながっていくのが学校です。

4つ目は、職場の中で自分だけが医療職だということです。職員室にいるのは教員が中心で、医療の言葉は通じにくいこともあります。けがの対応の必要性を説明するときも、専門用語ではなく、担任や管理職にわかる言葉に置き換える力が求められます。

5つ目は、1年のリズムです。病院は365日動いていますが、学校には夏休みや冬休みがあり、子どもがいない期間は仕事の中身ががらりと変わります。4月から6月は健康診断に追われ、冬は感染症の対応が続く。月ごとに忙しさの波があるので、最初の1年は「今は忙しい時期なんだ」と知っているだけでも、気持ちの持ち方が違ってきます。

こうした違いは、慣れればやりがいにもなります。子どもの成長を1年を通して見守れること、困っていた子が少しずつ元気になっていく姿に立ち会えることは、病院ではなかなか得られない経験です。

着任してから慣れるまで、どんな順番で進むか

未経験で学校の保健室に入った場合、慣れるまでの流れにはおおよその順番があります。焦らなくていいように、目安をお伝えしますね。

最初の1週間は、場所と人を覚える時期です。校舎の配置、救急車が入れる場所、AEDの置き場所、職員室の誰に何を相談すればいいか。そして、持病やアレルギーのある子どものリストと、発作が起きたときの対応です。この時期は、目の前の来室に対応しながら、学校の地図を頭の中に作っていくことに集中すれば十分です。

最初の1か月は、子どもの顔と名前、そして担任の先生との関係を作る時期です。よく来室する子どもの様子、学年ごとの雰囲気、担任ごとの連絡の取り方がわかってくると、対応が格段に楽になります。

最初の学期は、学校の行事と年間の流れに振り回される時期です。4月に着任した場合は、すぐに定期健康診断の時期が来ます。学校保健安全法の施行規則では、児童生徒の健康診断を毎学年6月30日までに行うことになっているため、着任してから2か月ほどで大きな山を越えることになります。前任者や養護教諭の指示に沿って、1つずつこなしていけば大丈夫です。

医療的ケアを担当する看護師として入った場合は、少し順番が違います。最初の数週間は、指導役の看護師や保護者と一緒に、担当する子どものケアの手順を1つずつ確かめる期間になります。同じたんの吸引でも、子どもによって吸引の深さや時間、嫌がるときのなだめ方が違うためです。保護者は家庭で毎日ケアをしてきた、いわばその子の専門家なので、教えてもらう姿勢で関わると信頼関係が早くできます。1人でケアを任されるのは、手順を一通り確かめ、主治医の指示書の内容を理解してからです。

1年がたつと、ようやく年間の流れが見えてきます。夏のプールと熱中症、秋の行事、冬の感染症、年度末の記録の整理。2年目からは「去年はこうだった」という見通しを持って動けるので、気持ちの余裕がまったく違ってきます。

私自身、長男が小学校に入ったばかりのころ、学校から「休み時間に転んで頭を打ちました」と電話をもらったことがあります。電話の向こうの保健室の先生は、けがの様子と、家で見てほしい症状を、ゆっくり、わかりやすく伝えてくれました。後で聞いたところ、その先生はその年に病院から移ってきたばかりだったそうです。慣れていないはずの1年目でも、保護者に伝わる言葉を選べる。その姿を思い出すと、未経験であることは、丁寧さでちゃんと補えるのだと感じます。

不安になりやすい場面と、その受け止め方

慣れるまでの間には、不安になる場面が必ずあります。こういうご相談がよくあるので、いくつか挙げておきます。

1つ目は、頭を打った子どもの判断です。その場では元気でも、時間がたってから症状が出ることがあるため、「受診させるべきだったのでは」と、帰宅後まで気になってしまう。これは、慣れた人でも同じように悩む場面です。受け止め方としては、1人で抱えずに、判断の基準を学校の中で共有しておくことが大切です。管理職や学校医と、どういう場合に受診をすすめるかを事前に話しておくと、判断した後の不安が軽くなります。

2つ目は、保護者からの問い合わせや苦情です。「なぜもっと早く連絡してくれなかったのか」と言われると、心が沈みますよね。こうした場面では、自分だけで対応しようとせず、管理職と一緒に対応するのが基本です。記録をきちんと残しておくことが、自分を守ることにもつながります。

3つ目は、教員との温度差です。保健室から見ると休ませたい子を、担任は授業に戻したいと考えることもあります。どちらが正しいかではなく、子どもにとって何がいいかを一緒に考える姿勢で話すと、少しずつ理解し合えるようになります。

4つ目は、医療的ケアでの小さなヒヤリです。吸引のタイミングが遅れた、経管栄養の注入の速さを間違えそうになった。大きな事故にならなくても、そのたびに「自分には向いていないのでは」と落ち込む方がいます。ヒヤリとしたことを記録し、指導役の看護師や主治医と共有して手順を見直すのは、失敗を責めるためではなく、次に同じことを起こさないためです。報告できる人ほど、周りから信頼されていきます。

5つ目は、孤独感です。職場で医療職が自分だけという環境は、思っている以上に心細いものです。同じ地域の学校で働く養護教諭や看護師の研修会、学校保健の勉強会などに参加して、話せる相手を学校の外にも作っておくと、気持ちが楽になります。

気持ちが疲れてきたときに、働き方そのものを相談できる相手がいると心強いものです。キャリアの専門家に相談するという選択肢については、キャリアコンサルタントのページで、どんな支援をする資格なのかが紹介されています。今の職場を続けるか、別の形の働き方を探すかを、1人で決めなくていいということを覚えておいてください。

応募する前にしておくと、着任してからが楽になる準備

未経験で学校に入る方から「何を勉強しておけばいいですか」と聞かれることがよくあります。全部を完璧にしておく必要はありません。けれど、次のことを少し復習しておくだけで、最初の数か月の不安がかなり軽くなります。

1つ目は、子どもの救急処置の基本です。子どもの体温や脈拍、呼吸数の目安は大人と違います。頭を打ったときに受診をすすめる症状、熱中症の見分け方と冷やし方、鼻血や歯が抜けたときの対応、アナフィラキシーの症状とアドレナリン自己注射薬の使い方。成人の病棟で働いてきた人ほど、ここは一度おさらいしておくと安心です。消防署や日本赤十字社などが開いている救命講習に参加して、子どもへの心肺蘇生の手順を体で覚えておくのもおすすめです。

2つ目は、学校で扱う感染症のルールです。学校保健安全法では、インフルエンザや麻しん、流行性耳下腺炎などの感染症について、出席停止の期間の基準が決められています。たとえばインフルエンザは、発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日を経過するまでが基準です。保護者から「いつから登校していいですか」と聞かれる場面は多いので、代表的な感染症の基準だけでも頭に入れておくと、落ち着いて答えられます。

3つ目は、子どもへの声のかけ方です。病院では患者さんに症状を詳しく聞き取りますが、子どもは質問を重ねると黙ってしまうことがあります。「どこが痛い?」と聞くより、「ここかな、それともここかな」と一緒に確かめる。叱らず、急かさず、まず座らせて安心させる。こうした関わり方は、身近な子どもとの会話の中でも練習できます。

4つ目は、記録の書き方です。学校の記録は、保護者や担任、場合によっては災害共済給付の書類にも使われます。いつ、どこで、何をしていて、どんな症状で、どう対応し、誰に連絡したか。医療用語を使わずに、誰が読んでもわかる言葉で残す練習をしておくと、着任してから役に立ちます。

こうした準備は、ほとんどお金をかけずにできます。完璧を目指さなくて大丈夫です。「知らないことがあったら、その都度調べて確かめる」という姿勢があれば、学校の保健室は少しずつあなたの職場になっていきます。

面接で聞かれやすいことと、未経験の人が伝えるとよいこと

学校の保健室の面接では、経験の長さよりも、学校という場所で働く姿勢を見られることが多くあります。未経験の方が緊張しやすいところなので、よく聞かれることをお伝えしておきますね。

よく聞かれるのは、「なぜ学校で働きたいのか」「子どもと関わった経験はあるか」「判断に迷ったときにどうするか」「教職員や保護者とどう連携するか」といった質問です。どれも、正解が1つあるわけではありません。

未経験の人が伝えるとよいのは、臨床で身につけたことを学校でどう活かせるかです。たとえば、急変に気づくための観察の習慣、家族への説明の経験、多職種で連携してきた経験。これらは、保健室でそのまま役に立ちます。学校での経験がないことを隠す必要はなく、「わからないことは確認しながら進めたい」と素直に伝えるほうが、1人で抱え込まない人だと受け止めてもらえます。

判断に迷ったときの対応を聞かれたら、自分だけで決めずに管理職や学校医に相談し、記録を残すと答えるのが基本です。保健室は1人で判断する場面が多いからこそ、相談できる人かどうかが見られています。

子どもと関わった経験を聞かれて、答えに困る方もいます。小児科で働いたことがなくても大丈夫です。自分の子育て、地域の子ども会やスポーツ少年団の手伝い、親戚の子どもの世話など、日常の中で子どもと接した経験を具体的に話せば十分です。大事なのは、子どもの話をどう聞き、どう安心させようとしたかという姿勢が伝わることです。

勤務の条件についての希望も、面接で伝えておきましょう。子育て中で朝の時間に制約がある、夏休みの間は勤務を減らしたいといった希望は、採用された後に言い出すより、最初に話しておくほうが、お互いに無理のない形を探しやすくなります。

逆に、面接はこちらが職場を見極める場でもあります。配置人数、前任者との引き継ぎ、医療的ケアの指導体制、長期休業中の勤務について、遠慮せずに質問してみてください。丁寧に答えてくれる学校は、着任した後も相談しやすい職場であることが多いものです。

求人票で「未経験でも大丈夫か」を見分けるところ

最後に、応募する前に求人票で確かめておきたい点をまとめます。未経験の人にとっては、仕事の中身より「支えがあるかどうか」を見ることが大切です。

1つ目は、配置人数です。保健室に何人いるのか、看護師は自分だけなのか、養護教諭と一緒に働くのか。複数の職員がいる職場ほど、未経験でも慣れやすくなります。

2つ目は、引き継ぎと研修の期間です。前任者からの引き継ぎがあるのか、医療的ケアの手順を指導する看護師がいるのか、着任前に研修を受けられるのか。求人票に書かれていない場合は、面接で遠慮なく聞いてみてください。

3つ目は、応募条件の書き方です。「臨床経験3年以上」「小児科経験者優遇」といった条件がある場合、その職場は1人で判断できる人を求めています。「学校での勤務経験は問いません」「ブランクのある方も歓迎」と書かれている募集は、受け入れる体制を意識していることが多いです。

4つ目は、募集が出た時期です。年度の途中に出る募集は、産休や育休の代替であることが多く、引き継ぎの時間が短いことがあります。年度初めに向けた募集のほうが、健康診断などの流れを最初から経験できる分、未経験の人には入りやすい面があります。

5つ目は、雇用の形です。公立学校の会計年度任用職員は、任期が1年ごとで、夏休みなどの長期休業中に勤務がない契約もあります。年間の収入の見通しを立てるために、休業期間の扱いを確かめておきましょう。

6つ目は、仕事内容の欄に書かれている言葉です。「保健室業務全般」とだけ書かれている場合は、来室対応から記録、健康診断の準備まで幅広く任される可能性があります。「養護教諭の補助」「医療的ケア児の看護」「健康診断期間の補助」のように範囲が絞られている募集は、任される仕事がはっきりしている分、未経験の人でも最初の見通しを立てやすくなります。わからない言葉があれば、応募の前に問い合わせて確かめてかまいません。問い合わせへの対応の丁寧さも、職場を知る手がかりになります。

学校で働いた後の収入を、病院で働き続けた場合と比べてみたいときは、看護師の年収・単価相場が参考になります。働く場所ごとの水準がまとまっているので、学校の保健室を選んだときの収入の位置づけを落ち着いて確かめられます。ブランクが気になっている方は、ブランクのある看護師が現場に戻るまでで、不安の正体と埋め方が整理されています。学校に応募する前に、自分に足りないと感じている部分を1つずつ確かめておくと、面接でも落ち着いて話せます。

未経験であることは、学校の保健室を諦める理由にはなりません。受け入れている募集を選び、慣れるまでの順番を知っておけば、大丈夫です。あなたが子どもたちの「ほっとできる場所」を支える日は、きっと来ますよ。

よくある質問

Q. 学校で働いた経験がない看護師でも保健室の求人に応募できますか?

応募できる募集は多くあります。大学や専門学校の保健室、医療的ケアを担当する看護師、私立学校の学校看護師、行事の付き添いなどでは、学校での経験を条件にしていない募集がよく見られます。ただし、保健室を1人で担当する募集では、臨床経験の年数を条件にしていることがあります。

Q. 看護師の資格がなくても学校の保健室で働けますか?

子どもの手当てや健康相談の役割に就くことはできません。ただ、大学の保健管理センターの受付や事務、健康診断の時期の補助スタッフ、特別支援学校の介助員など、保健室の仕事を周りから支える入口はあります。

Q. 学校の保健室に慣れるまでどのくらいかかりますか?

場所と人を覚えるのに1週間、子どもや担任との関係を作るのに1か月、年間の流れがつかめるまでに1年ほどが目安です。4月に着任すると2か月ほどで定期健康診断の山が来るので、最初の学期は前任者や養護教諭の指示に沿って進めるのが安心です。

Q. 未経験の人が求人票で確かめておくべき点は何ですか?

配置人数、引き継ぎや研修の有無、応募条件の書き方、募集が出た時期、雇用の形を確かめてください。複数の職員がいる職場や、指導役の看護師がいる職場は慣れやすくなります。年度途中の募集は産休や育休の代替で、引き継ぎが短いことがあります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月30日最終更新:2026年9月24日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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