大学病院を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

長谷川 奈津
長谷川 奈津
大学病院を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

この記事のポイント

  • ✓大学病院を辞めたいと思ったときに
  • ✓辞める前に切り分けておくことを整理しました
  • ✓部署の問題か大学病院という構造の問題か

大学病院を辞めたい。そう思いながら、今日も勤務に向かっている方は少なくないはずです。

結論から言うと、辞めること自体は労働者の権利として守られています。ただし、大学病院には「辞めたい理由が部署を変えれば消えるものなのか、大学病院という職場の構造から来ているものなのか」で、取るべき行動がまったく変わるという特徴があります。さらに、奨学金や研修費の返還、年度末に集中する退職の手続きなど、辞める前に確かめておかないと後で困ることがいくつもあります。

これ、知らない人が本当に多いんです。勢いで退職届を出してから「奨学金を一括で返してください」と言われて慌てる。辞めずに済む方法があったのに、それを知らないまま辞めてしまう。この記事では、そうならないために、出ていく前に切り分けておくことを順番に整理します。

「辞めたい」の中身を3つに分ける

まず、辞めたい気持ちの中身を分けてみましょう。大学病院で働く看護師の「辞めたい」は、大きく3つに分かれます。

1つ目は、今いる部署に原因があるものです。師長やプリセプターとの関係がつらい、診療科の業務が自分に合わない、病棟の忙しさが限界を超えている。こうした理由は、大学病院を辞めなくても、院内の異動で解消できる可能性があります。大学病院は部署の数が多く、診療科ごとに雰囲気も業務もかなり違います。ある病棟で限界だった人が、別の部署に移って何年も働き続けている例は珍しくありません。

2つ目は、大学病院という職場の構造に原因があるものです。看護研究や委員会の負担、数年ごとの異動、記録や手順の多さ、医師の入れ替わりの激しさ。こうした理由は、どの部署に移っても大なり小なりついて回ります。この場合は、大学病院以外の職場を考えるのが自然な流れです。

3つ目は、看護職の働き方そのものに原因があるものです。夜勤を含む交代制がつらい、患者さんの命に関わる緊張感が続くのがしんどい。こうした理由は、職場を変えても解消しにくいので、日勤のみの職場や、臨床から離れた仕事まで視野を広げる必要があります。

つまり、「辞める」の前に「何から離れたいのか」を決める必要があるということです。紙に辞めたい理由を書き出して、それぞれが1つ目から3つ目のどれに当たるかを分類してみてください。1つ目が多いなら異動の相談から、2つ目が多いなら転職の準備から、3つ目が多いなら働き方の見直しから始めるのが近道です。

書き出すときは、「いつ」「何があって」「どう感じたか」を日付と一緒に残しておくのがおすすめです。つらい気持ちは波があるので、1日だけの感情で決めると、後から「あのときは疲れていただけだった」と後悔することがあります。反対に、同じ理由が何週間も続けて出てくるなら、それは一時的な疲れではなく、本当に向き合うべき問題です。

この記録は、後で異動を相談するときにも、ハラスメントの相談をするときにも、そのまま材料になります。つまり、書き出しておくことは、辞めるにしても残るにしても、自分を守る準備になるということです。

3つの分け方と、最初に取る行動を表にしておきます。

辞めたい理由の種類 例 最初に取る行動
部署の問題 師長との関係、診療科の業務内容 異動の希望を看護部に伝える
大学病院の構造の問題 研究や委員会、定期異動、医師の入れ替わり 市中病院など別の職場の情報を集める
看護職の働き方の問題 夜勤、命に関わる緊張の連続 日勤のみの職場や制度の利用を検討する

1つ注意があります。心や体の不調が強いときは、この切り分け自体が難しくなります。眠れない、食欲がない、出勤前に涙が出る。そういう状態なら、理由の分類より先に、職場の産業医や心療内科に相談してください。※体調を崩している場合は、辞めるかどうかの判断は、医師の意見を聞いてからにしましょう。

大学病院だから起きやすい「辞めたい」理由

次に、大学病院に特有の理由をもう少し具体的に見ておきます。自分の気持ちがどこから来ているのかを知る手がかりになるはずです。

研究と委員会の負担

大学病院は、診療に加えて研究と教育を担う病院です。看護師も、看護研究や院内の委員会、学生の実習指導を受け持ちます。こうした仕事は勤務時間の前後に食い込みやすく、「患者さんを看るだけで精一杯なのに、研究の締め切りまである」という状況が生まれます。

ここで確かめてほしいのは、その時間が労働時間として扱われているかどうかです。業務として参加を指示されている委員会や研修、看護研究の作業は、原則として労働時間に当たります。つまり、時間外に行っているなら、時間外労働として扱われるべきものです。自己研鑽という名目で記録されていない時間が多いなら、それは辞めるかどうかとは別に、確認してよい問題です。

異動と医局の人事

大学病院では、看護師の定期的な異動を制度として行っている病院が多くあります。慣れた部署を離れるたびに一から覚え直すのがつらい、という声はよく聞かれます。加えて、医師は医局の人事で関連病院との間を行き来するので、関係を築いた医師が数年でいなくなります。この「人の流動性」に疲れているなら、構造の問題に近いと言えます。

重症度の高さと記録の多さ

特定機能病院として高度な医療を担う大学病院では、化学療法、移植、救命救急など、緊張感の高い場面が続きます。記録や確認の手順も細かく、1つのミスが大きな事故につながりうるという緊張が、少しずつ心をすり減らすことがあります。

大学病院としての役割への違和感

大学病院は、地域の医療機関からの紹介を受けて高度な治療を担い、治療が落ち着いたら地域へ戻すという役割を持っています。東京大学医学部附属病院も、その役割を次のように説明しています。

東大病院では、地域の医療機関と連携・協力することで、大学病院としての役割や機能を十分に果たすとともに、質の高い医療を提供できるよう努めています。 出典: h.u-tokyo.ac.jp

この役割は医療全体にとって大切なものですが、看護師個人から見ると「患者さんが良くなる前に転院してしまい、関わりが途中で終わる」ことを意味します。長く寄り添う看護をしたい人ほど、ここに違和感を抱きやすくなります。これも構造の問題なので、慢性期の病院や訪問看護のほうが気持ちに合う可能性があります。

中堅になってからの役割の重さ

入職して5年から10年ほどたつと、今度は別の理由で辞めたくなる人が増えます。プリセプター、実習指導者、委員会の担当、リーダー業務、看護研究のまとめ役。大学病院では、中堅の看護師に教育と運営の役割が集中しやすいからです。

新人のころは「覚えることが多くてつらい」、中堅になると「任されることが多くてつらい」。同じ辞めたいでも、中身は違います。中堅の負担が理由なら、役割の一部を外してもらえないか看護部に相談することも、辞める前の選択肢の1つです。役割を引き受けた経緯や、1か月にかかっている時間を書き出して伝えると、相談が具体的になります。

辞める前に院内で使える選択肢

辞めたい理由が1つ目の「部署の問題」や、3つ目の「働き方の問題」の一部であれば、辞めずに使える選択肢があります。規模の大きい大学病院は、こうした制度が比較的整っているのが強みです。

異動の希望を出す

多くの大学病院では、年に1回程度、看護部に異動の希望を伝える面談や調書の仕組みがあります。希望がすぐに通るとは限りませんが、「今の部署で何がつらいのか」を具体的に伝えておくことで、次の人事で考慮されやすくなります。人間関係が理由の場合は、感情ではなく「どういう出来事があったか」を時系列でまとめて伝えると、相手も対応を考えやすくなります。

師長本人との関係が理由で、師長に異動の相談をしにくい場合もありますよね。そういうときは、看護部の副看護部長や教育担当、キャリア相談を受け持つ看護師など、師長以外の窓口に話を持っていってかまいません。大学病院は組織が大きいぶん、相談の経路も複数用意されていることが多いです。

夜勤の免除や短時間勤務を使う

子育てや介護をしている場合、法律で使える制度があります。育児・介護休業法では、小学校入学前の子を育てる労働者などが請求した場合、原則として深夜業をさせてはならないとされています。3歳未満の子を育てている場合は、短時間勤務の制度も設けなければなりません。

日本看護協会の労働に関するよくある質問でも、夜勤ができないことを理由に退職や非常勤への変更を強制することは、要件を満たす場合には不利益な取り扱いになると説明されています。つまり、育児や介護を理由に夜勤がつらいなら、辞める前にまずこの制度を使えるか確認する価値があるということです。

休職を検討する

心身の不調が理由なら、就業規則の休職制度を確認しましょう。大学病院の多くは、病気による休職の制度を設けています。休職中は、条件を満たせば健康保険から傷病手当金を受けられます。休職して回復してから、改めて続けるか辞めるかを考えることもできます。

常勤から非常勤に切り替える

夜勤や委員会の負担が理由なら、同じ大学病院の非常勤職員として日勤のみで働く道がある病院もあります。慣れた職場と人間関係を保ったまま、働く量だけを減らせるのが利点です。ただし、給与や賞与、退職金の扱いが変わるので、切り替える前に条件を必ず書面で確認してください。

ハラスメントの相談窓口を使う

辞めたい理由が、上司や医師からの暴言、無視、過大な要求といった言動なら、それはハラスメントの可能性があります。労働施策総合推進法により、事業主にはパワーハラスメントを防ぐための相談窓口の設置などが義務付けられています。大学病院にも、看護部とは別にハラスメントの相談窓口が置かれているはずです。

ここで知っておいてほしいのは、相談したことを理由に不利益な取り扱いをすることも禁止されているということです。つまり、「相談したら居づらくなるのでは」という心配に対して、法律は一定の歯止めを用意しています。相談するときは、先ほどの書き出しの記録が大きな助けになります。

院内の窓口に相談しにくい場合は、都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーでも相談できます。※暴言や暴力によって心身に不調が出ている場合は、医師の診断を受けたうえで、弁護士への相談も検討してください。

辞めると決めたときのルール

院内の選択肢を検討したうえで、やはり辞めると決めたなら、次は手続きのルールです。ここで揉めやすいのが「いつまでに言えば辞められるのか」という点です。日本看護協会の労働に関するよくある質問には、こう書かれています。

それぞれの施設で退職に関して就業規則などで定めていることがほとんどですので、まずは、就業規則を確認し職場のルールに沿って手続きを進めていくことになります。 ただし、民法では期間の定めのない契約は、いつでも解約の申入れすることができ、その場合、原則2週間を経過すれば雇用契約は終了することとされていますので、法律上は退職を申入れてから2週間すれば、使用者の承諾がなくても退職することが可能です 出典: nurse.or.jp

つまり、就業規則に「3か月前までに申し出ること」と書かれていても、期間の定めのない雇用契約なら、法律上は申し入れから2週間で退職の効果が生じるということです。病院の承諾がなければ辞められない、ということはありません。

とはいえ、大学病院の看護部は、年度単位で人員配置を組んでいます。4月に新人が入り、年度途中の欠員は埋めにくい。円満に辞めたいなら、就業規則の期限を目安にして、年度末の退職なら秋から冬のうちに師長へ伝えるのが現実的です。法律上の最短と、円満に辞めるための目安は分けて考えましょう。

なお、有期雇用の非常勤職員の場合は、契約期間の途中で辞めるには「やむを得ない事由」が必要とされるなど、ルールが異なります。※契約期間中の退職で病院と揉めている場合は、労働局の総合労働相談コーナーや弁護士に相談してください。

有給休暇は退職前に使える

退職前に残っている年次有給休暇を使いたいのに、「人手が足りない」と断られる。これも大学病院でよくある相談です。同じよくある質問では、退職日までの勤務日数以上の有給休暇がある場合は、時季を変更する余地がないため申し出どおり取得を認めなければならないこと、恒常的な人手不足を理由に時季変更権は行使できないことが説明されています。

ただし、実務では引き継ぎも必要です。退職日から逆算して、引き継ぎに必要な勤務日と、有給休暇を使う日を早めに示しておくと、話がこじれにくくなります。

引き止められたときの伝え方

大学病院の看護部は、辞めたいと伝えると「異動させるから」「せめて年度末まで」と引き止めることがよくあります。辞める意思が固まっているなら、理由を細かく説明しすぎないことがコツです。理由を詳しく話すほど、「その理由なら解決できる」と交渉の材料にされます。「一身上の都合で、何月何日付で退職します」と、日付を入れて伝えるのが基本です。口頭で伝えた後は、退職届を書面で出し、提出した日付を控えておきましょう。

ちなみに、退職願と退職届は意味が少し違います。退職願は「辞めさせてください」というお願いで、病院が承諾するまでは撤回できる余地があります。退職届は「辞めます」という一方的な意思表示で、原則として届いた時点で撤回できません。つまり、まだ迷いがあるなら退職願、意思が固まっているなら退職届、と使い分けるのが安全です。病院所定の書式がある場合は、それに沿って提出します。

辞める時期をいつにするか

辞めると決めても、時期の選び方で、手元に残るお金と次の職場の選びやすさが変わります。大学病院の1年の流れと合わせて考えてみましょう。

大学病院の1年のカレンダー

大学病院の看護部は、4月に新人看護師と研修医を迎え、年度単位で人員配置を組みます。翌年度の配置や異動は、多くの病院で冬から春先にかけて決まっていきます。つまり、年度末の3月末で辞めたい場合、秋から冬のうちに意思を伝えておくと、病院側も次年度の配置に反映しやすくなります。

年度途中で辞めることも、もちろん可能です。ただ、年度途中の欠員は補充が難しいので、引き止めが強くなりやすい傾向があります。辞める理由が体調など急を要するものでなければ、年度の区切りに合わせるほうが、話はまとまりやすくなります。

賞与と退職金の区切り

この後の節でも触れますが、賞与は支給日に在籍していることが条件になっていることが多いです。夏と冬の賞与の支給日を確認し、その後に退職日を置くと、受け取れる額が変わります。退職金も、勤続年数の区切りを1日でも下回ると額が変わる規程があります。退職日を決める前に、給与明細や規程で支給日と勤続年数を確かめましょう。

次の職場の採用時期

市中の病院やクリニック、訪問看護は、年間を通して中途採用をしていることが多い一方、4月入職に合わせて求人が増える傾向もあります。年度末に辞めて4月から次の職場で働き始める流れは、辞める側にとっても受け入れる側にとっても自然です。

空白期間をどう使うか

退職日と次の入職日の間に期間を空けるなら、有給休暇の消化、健康保険や年金の手続き、体調を整える時間として使えます。ただし、空白が長くなると、家計への影響と、臨床の感覚が鈍ることへの不安が出てきます。辞める前に、何か月分の生活費が手元にあるかを数字で確認しておくと、焦って次の職場を決めずに済みます。

伝える順番を守る

時期を決めたら、伝える順番にも気を配りましょう。最初に伝えるのは、直属の上司である師長です。同僚や医師に先に話すと、噂として師長の耳に入り、話がこじれることがあります。師長に伝えた後、看護部の面談を経て、正式な手続きに進むのが大学病院では一般的な流れです。

伝える場所は、ナースステーションのような人の多い場所ではなく、面談の時間を取ってもらって個室で話すのが望ましいです。「ご相談したいことがあるので、お時間をいただけますか」と前もって声をかけておくと、落ち着いて話ができます。

お金に関わる確認を先に済ませる

辞める前に必ず確認してほしいのが、お金に関わる項目です。後から知ると取り返しがつかないものもあります。

奨学金の返還

大学病院の附属看護学校や、病院独自の奨学金を受けて入職した場合、「一定期間勤務すれば返還を免除する」という条件が付いていることがあります。この期間の途中で辞めると、残りの額を返還するよう求められるのが一般的です。まず、奨学金の契約書を探して、免除の条件、途中で辞めたときの返還額、一括か分割か、を確認してください。

これ、知らない人が本当に多いんです。奨学金はお金の貸し借りの契約なので、返還そのものは原則として有効です。ただし、労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金や損害賠償額を予定する契約を禁止しています。つまり、実態として「辞めたら罰金」のように働く縛りになっている場合は、問題になる可能性があります。※返還額が不自然に高い、利息が法外に上乗せされているといった場合は、弁護士に相談してください。

研修費用の返還

認定看護師の教育課程など、病院が費用を負担して研修に出した場合、「修了後一定期間勤務しなければ費用を返還する」という取り決めがあることもあります。これも、業務として研修を命じたのか、本人の希望による資格取得を貸付の形で支援したのかで、扱いが変わります。取り決めの書面を確認し、判断に迷う場合は専門家に相談しましょう。

退職金と賞与

退職金は、勤続年数によって支給額や支給の有無が変わる規程が多くあります。勤続3年や5年といった区切りの直前で辞めると、受け取れる額が大きく変わることがあります。賞与も、支給日に在籍していることを条件とする規程が一般的です。退職日を決める前に、退職金規程と賞与の支給日を確認してください。

失業給付と保険

次の職場が決まる前に辞める場合は、雇用保険の失業給付を受けられます。自己都合で辞めた場合は給付までに待機期間と給付制限がありますが、2025年4月から給付制限の期間は原則1か月に短縮されています。健康保険は、任意継続か国民健康保険への切り替えが必要です。退職後の空白期間に保険が切れないよう、手続きの時期を確認しておきましょう。

年金も忘れがちです。次の職場にすぐ入らない場合は、厚生年金から国民年金への切り替えが必要になります。住民税は前年の所得に対してかかるので、退職した翌年に思ったより大きな額の納付書が届くことがあります。空白期間の家計を考えるときは、この住民税の分も見込んでおくと安心です。

ある看護師さんから聞いた話

少し、私が以前知人から相談を受けたときの話をさせてください。細部は変えています。

大学病院で5年働いた看護師さんが、「もう限界なので明日にでも辞めたい」と連絡してきました。話を聞くと、理由は2つありました。1つは、新しく来た師長との関係。もう1つは、病院の奨学金を受けていて、あと1年勤務すれば返還が免除されるのに、その1年が耐えられないということでした。

一緒に書き出してみると、師長との関係は部署の問題で、異動の希望を出せば解消する可能性がありました。そして奨学金の残りの返還額は、想像していたよりずっと大きな額でした。本人は「辞めたら少し返せばいい」と思っていたそうです。

結果として、その方は看護部に異動の希望を具体的な出来事と一緒に伝え、翌年度に別の病棟へ移りました。免除の期間を満たしたうえで、改めて転職を考えるそうです。

私がこのとき痛感したのは、辛いときほど「辞めるか、耐えるか」の二択になりやすいということです。実際には、その間にいくつもの選択肢がありました。そして、契約書を一度読むだけで、判断の前提がまったく変わることもあるんです。

次の職場を選ぶときの考え方

辞めると決めたら、次の職場は「辞めたい理由の裏返し」で選ぶのが基本です。

研究や委員会の負担が理由なら、診療に集中できる市中の急性期病院。人の入れ替わりや異動が理由なら、組織が小さく異動の少ないクリニックや中小規模の病院。関わりが途中で終わる違和感が理由なら、慢性期の病院や訪問看護。夜勤が理由なら、日勤のみの外来や健診機関、企業の健康管理室などが候補になります。

大学病院で積んだ経験は、どの職場でも評価されやすいものです。重症度の高い患者さんを看てきたこと、細かな手順と記録を守ってきたこと、多職種と連携してきたことは、採用する側にとって安心材料になります。辞めることを、キャリアの失敗と考える必要はありません。

次の職場の求人を見るときは、辞めたい理由に関係する項目を必ず確認してください。委員会や看護研究の有無、部署異動の制度、月の夜勤回数、残業の平均時間、教育の体制。求人票に書かれていなければ、面接で聞いてかまいません。「大学病院で委員会の負担が大きかったので、そのあたりの状況を知りたい」と、前の職場の話を責める調子にならないよう事実として伝えれば、相手も具体的に答えてくれるはずです。

内定をもらったら、労働条件通知書の内容を確認しましょう。給与、勤務時間、休日、試用期間、夜勤の有無は、書面で示されるのが原則です。口頭で聞いた話と違う点があれば、入職前に確かめておくことが、同じ理由で再び辞めたくならないための一番の予防になります。

条件を比べるときは、給与の相場も見ておきましょう。看護師の年収・単価相場では、年代や働き方ごとの年収の目安が整理されているので、大学病院の給与と転職先の条件を並べて考える材料になります。

自分だけで方向を決めるのが難しいなら、キャリアの相談にのる専門家を頼る方法もあります。キャリアコンサルタントは、職業選択や能力開発について相談に応じる国家資格です。職場の悩みや転職の相談を受ける仕事の内容は、職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介されています。

臨床から少し距離を置きたい人には、看護の経験を在宅で活かす働き方もあります。医療記事の監修や健康相談などの仕事の種類は、看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】で紹介されています。いきなり本業にするのではなく、非常勤で働きながら少しずつ試すと、収入の面でも無理がありません。

運営者の視点から見た、辞め方と次の働き方

在宅ワークや業務委託の市場を20年運営してきた立場から見ていると、組織を離れた後に長く仕事を続けている人には共通点があります。前の職場との関係を壊さずに辞めていることと、契約の中身を自分で確かめる習慣を持っていることです。

病院を辞めた後、個人として仕事を受ける場面が出てくると、今度は自分で契約の条件を確かめる立場になります。報酬の支払い期限、仕事の範囲、途中で終わったときの扱い。2024年に施行されたフリーランス保護新法では、発注者に取引条件を明示する義務などが課されていますが、自分で読まない限り、その保護も活かせません。大学病院を辞めるときに就業規則や奨学金の契約書を読んだ経験は、そのまま次の働き方でも役に立ちます。

もう1つ感じるのは、辞めた理由をきちんと言葉にできている人ほど、次の場所で同じつまずきを繰り返しにくいということです。「何から離れたかったのか」がはっきりしていれば、次に選ぶ仕事の条件も自然と決まります。この記事で最初にお伝えした切り分けは、辞めた後にも効いてきます。

そして、仲介の手数料がかからない直接のやり取りでは、依頼する側は同じ予算で頼みやすくなり、受ける側の手元にも多く残ります。専門職としての経験を、無理のない形で届け続ける選択肢があることも、知っておいて損はありません。

辞めたいと思うこと自体は、決して悪いことではありません。大切なのは、何から離れたいのかを切り分け、使える制度と自分の権利を知ったうえで、次の一歩を選ぶことです。困ったときは、一人で抱え込まずに相談してください。法律はあなたの味方です。

よくある質問

Q. 大学病院の就業規則に「3か月前までに申し出る」とある場合、それより早く辞めることはできますか?

期間の定めのない雇用契約であれば、民法上は退職を申し入れてから原則2週間で契約が終了します。ただし大学病院は年度単位で人員を配置しているため、円満に辞めたい場合は就業規則の期限を目安に、早めに師長へ伝えるのが現実的です。有期契約の場合はルールが異なります。

Q. 病院の奨学金を受けている途中で辞めると、どうなりますか?

一定期間の勤務で返還を免除する条件の奨学金では、途中で辞めると残りの額の返還を求められるのが一般的です。まず契約書で返還額と返還方法を確認してください。実態として退職を縛る違約金のように働いている場合は問題になる可能性があるので、弁護士に相談しましょう。

Q. 退職前に残っている有給休暇は使えますか?

使えます。退職日までの勤務日数以上に有給休暇が残っている場合、病院は時季を変更する余地がないため、申し出どおり取得を認める必要があります。恒常的な人手不足は時季変更の理由になりません。引き継ぎの日程と有給休暇の取得日を早めに示すと、話がこじれにくくなります。

Q. 辞めたい理由が師長との関係だけの場合、辞める以外の方法はありますか?

大学病院は部署の数が多いため、院内異動で解消できる可能性があります。看護部の異動希望の面談や調書で、どういう出来事があったかを時系列でまとめて伝えると検討されやすくなります。ハラスメントに当たる言動がある場合は、病院のハラスメント相談窓口にも相談してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月3日最終更新:2026年9月15日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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