大学病院の人間関係|狭い職場での距離の取り方

中西 直美
中西 直美
大学病院の人間関係|狭い職場での距離の取り方

この記事のポイント

  • ✓大学病院の人間関係が息苦しく感じられる理由を
  • ✓同期や出身校のつながり
  • ✓寮と異動で広がる院内の噂から整理しました

大学病院の人間関係について調べている方は、きっと今、何かが心に引っかかっているのだと思います。

これから大学病院に入ろうとしていて、「大学病院は上下関係が厳しい」と聞いて不安になっている。あるいは、すでに働いていて、毎日の病棟の空気に、少しずつ疲れを感じている。

大丈夫ですよ。大学病院の人間関係が難しく感じられるのは、あなたの性格のせいではありません。職場の仕組みが、人と人との距離を独特の形にしているからです。

「大学病院は大きいのに、なぜ狭い職場のように感じるのか」。この問いには、ちゃんと理由があります。仕組みが分かれば、距離の取り方も見えてきます。この記事では、大学病院で人間関係が濃くなる理由、摩擦が起きやすい場面、そして自分を守りながら働くための具体的な方法を、順番にお話しします。

大きな病院なのに「狭い」と感じる理由

大学病院には、何百人、病院によっては千人を超える看護職員が働いています。これだけ人がいれば、人間関係も薄まりそうに思えますよね。

でも実際に働いてみると、「思っていたより狭い世界だった」と感じる人が少なくありません。その理由は、主に3つあります。

1つ目は、病棟という単位が閉じていることです。

大学病院の看護師は、診療科ごとに分かれた病棟に所属します。1つの病棟にいる看護師は、30人から40人ほど。この人たちと、日勤も夜勤も、休憩も、ほとんどの時間を一緒に過ごします。病院全体は大きくても、毎日顔を合わせるのは、この小さな集団です。

しかも、夜勤は少人数で朝まで一緒にいます。夜勤のペアとの相性は、その夜の疲れ方を大きく左右します。

2つ目は、階層がはっきりしていることです。

看護部には、看護部長、副看護部長、師長、副師長、主任という階層があります。医師の側にも、教授、准教授、講師、助教、医員、研修医という階層があります。誰に何を報告するのか、誰の判断を仰ぐのかが決まっているので、仕事は進めやすい反面、「言いたいことがあっても言いにくい」と感じる場面が生まれます。

3つ目は、人のつながりが病棟の外まで続いていることです。

大学病院には、附属の看護学校や看護学部の出身者が多く、同じ学校の先輩と後輩が同じ病院で働いていることがよくあります。毎年多くの新人が一緒に入職するので、同期のつながりも強くなります。寮に住めば、仕事が終わった後も同じ建物で生活することになります。

そして、数年ごとの部署異動です。異動した人は、前の部署の話を新しい部署に持っていきます。こうして、ある病棟で起きた出来事が、別の病棟にも伝わっていく。大きな病院なのに噂が早いと感じるのは、このためです。

もう1つ付け加えると、病棟の空気は、師長の考え方に大きく左右されます。大学病院は看護部の方針が病院全体で統一されていますが、その方針を日々の病棟運営に落とし込むのは師長です。同じ病院でも、師長が変わると病棟の雰囲気ががらりと変わることがあります。

つまり、「大学病院の人間関係」とひとくくりにされるものの多くは、実は「その病棟の人間関係」なんです。今いる病棟がつらくても、病院全体がそうだとは限りません。

閉じた病棟、はっきりした階層、病棟の外まで続くつながり。この3つが重なるから、大学病院の人間関係は、大きさの割に狭く、濃く感じられるんです。

摩擦が起きやすい4つの場面

こういう相談がよくあります。「特に誰かにいじめられているわけではないのに、なぜか病棟にいると息が詰まる」。

話を聞いていくと、多くの場合、摩擦は特定の誰かではなく、仕組みの「つなぎ目」で起きています。大学病院で摩擦が起きやすい場面は、主に4つです。

1つ目 申し送りとリーダーへの報告

大学病院の病棟では、勤務の交代時に申し送りがあり、日中はリーダー看護師に報告しながら仕事を進めます。扱う医療が複雑なので、報告の抜けは許されません。

そのため、報告の仕方への指摘が厳しくなりがちです。「結論から言って」「それで、どうしたいの」。言っている本人は患者さんの安全を守るために必死でも、言われる側は、自分が否定されたように感じることがあります。

2つ目 医師とのやりとり

医師への報告や、指示の確認も、摩擦が起きやすい場面です。とくに4月は、研修医が新しく入ってきて、指示の出し方が人によってばらばらになります。看護師が確認の電話をすると、忙しい医師の口調が強くなることもあります。

医局の人事で医師が数年ごとに入れ替わるので、やっと関係ができたと思ったら、また一から始まる。この繰り返しに疲れる人もいます。

3つ目 教える側と教わる側

大学病院は教育の場なので、プリセプターと新人、実習指導者と学生さんという「教える関係」がたくさんあります。

教える側は、自分の業務に加えて指導を受け持つので、余裕がなくなりがちです。教わる側は、何度も同じことを聞いてはいけないと思って、質問を我慢してしまう。お互いに相手を責める気持ちはないのに、すれ違いが生まれやすい関係です。

4つ目 同期との比べ合い

同期が多いことは心強い一方で、比べ合いのもとにもなります。「あの子はもう夜勤に入った」「同期の中で自分だけ独り立ちが遅れている」。

大学病院は、段階的な教育の仕組みに沿って進むので、進み具合が周りから見えやすいんです。比べる気がなくても、自然と自分と誰かを並べてしまう。これが、静かな息苦しさにつながります。

見落とされやすい場面 夜勤のペア

4つの場面に加えて、夜勤のペアとの関係も、摩擦が起きやすい場面です。夜勤は少ない人数で朝まで働くので、日勤では気にならなかった仕事の進め方の違いが、はっきり表に出ます。休憩の取り方、記録を書くタイミング、ナースコールへの出方。どれも正解が1つではないので、すれ違いが起きやすいんです。

夜勤の始まりに「今日はこの順番で回ろうと思います」と一言だけ伝え合う。それだけで、朝までのすれ違いはかなり減ります。

それはハラスメントかもしれない、と感じたら

ここで、とても大切なことをお話しします。

厳しい指導と、ハラスメントは違います。でも、その境目は、受けている本人には分かりにくいものです。厚生労働省は、職場のパワーハラスメントを次のように定義しています。

職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。 出典: no-harassment.mhlw.go.jp

少し言い換えてみますね。

①は、立場の差を背景にしているかどうかです。先輩と後輩、師長とスタッフ、医師と看護師。大学病院の階層は、ここに当てはまりやすい関係です。ただし、仕事の知識が豊富な後輩から先輩への言動も含まれることがあります。

②は、仕事に必要な範囲を超えているかどうかです。報告の抜けを具体的に指摘するのは、仕事に必要な指導です。でも、人格を否定する言葉、大勢の前での長時間の叱責、明らかにこなせない量の仕事を押しつけることは、その範囲を超えています。

③は、それによって働く環境が害されているかどうかです。出勤するのが怖い、仕事に集中できない、という状態は、これに当たります。

もし、あなたが受けている言動がこの3つに当てはまりそうなら、一人で抱え込まないでください。日本看護協会も、ハラスメントを受けたときの最初の一歩として、次のように呼びかけています。

まずは設置が義務付けられている職場のハラスメント相談窓口への相談をご検討ください。相談しにくい場合などには、下記相談先などへの相談をご検討ください。 出典: nurse.or.jp

大学病院は組織が大きいぶん、看護部とは別に、ハラスメントの相談窓口が置かれていることがほとんどです。直属の上司に相談しにくい場合でも、使える経路があります。

相談するときに役立つのは、記録です。いつ、どこで、誰に、何を言われたか、そのときどう感じたか。メモでかまいません。記録があると、相談を受けた側も状況をつかみやすくなります。

狭い職場での距離の取り方

ハラスメントとまではいかなくても、毎日の人間関係に疲れている。そういうときに役立つ、距離の取り方をお伝えします。

仕事の関係と、個人の関係を分ける

大学病院の病棟では、仕事の仲間が、そのまま休憩の仲間になり、寮の隣人になり、休日の遊び仲間になることがあります。それが心地よいうちはいいのですが、どこかで関係がこじれると、逃げ場がなくなってしまいます。

長く穏やかに働いている人は、仕事の関係と個人の関係を、ゆるやかに分けています。休憩時間は一緒に過ごしても、休日は職場の外の人と会う。病棟の飲み会には参加しても、二次会は無理をしない。すべての誘いを断る必要はありません。自分で「ここまで」と線を決めておくことが大切です。

報告の型を持つ

報告への指摘がつらいなら、報告の型を持っておくと楽になります。

「患者さんの今の状態」「気になっていること」「自分がどう考えたか」「相手にしてほしいこと」。この順番で伝えると、相手が誰でも、同じ質で情報を渡せます。

型があると、指摘を受けたときにも「型のどこが足りなかったか」と考えられます。人格を否定されたのではなく、報告の一部を直せばいい。そう受け止められると、心の負担はずっと軽くなります。

噂の輪から半歩下がる

院内の噂が早い職場では、噂の輪から半歩下がっておくことが、自分を守ることにつながります。

誰かの話題が出たとき、無理に否定する必要はありません。「そうなんですね」と受け止めて、自分の意見は足さない。それだけで、噂を広げる側に回らずに済みます。

大学病院では、人は異動します。今日の噂の相手が、来年は自分の上司になっているかもしれません。どの人とも、仕事の上で信頼できる関係を保っておく。それが、入れ替わりの多い職場での、いちばん確かな距離の取り方です。

比べる相手を「昨日の自分」にする

同期との比べ合いに疲れたら、比べる相手を変えてみてください。

今月できるようになったことを、手帳に1行だけ書く。「初めて1人で化学療法の患者さんを受け持った」「医師への報告で、聞き返されなかった」。小さなことで大丈夫です。

同期の進み具合は、配属された病棟の忙しさや、受け持つ患者さんの重さで変わります。同じ物差しで比べられるものではないんです。

少し、私自身の話をさせてください

私が以前、人の多い職場で働いていたとき、ある先輩との関係に悩んだことがあります。

その先輩は仕事がとてもできる人で、私の報告にいつも厳しい指摘をしました。私は、嫌われているのだと思い込んで、その先輩と同じ勤務の日は、朝から胃が痛くなっていました。

あるとき、別の先輩に思い切って相談しました。すると、「あの人は、誰にでもああなんだよ。あなたにだけ厳しいわけじゃない」と言われたんです。

驚きました。私は、自分だけが標的になっていると思っていました。でも、よく見てみると、その先輩は確かに、誰に対しても同じ調子で指摘をしていました。

それから、指摘の中身だけを受け取るように意識しました。言い方ではなく、「何を直せばいいのか」だけをメモする。すると、少しずつ胃の痛みが減っていきました。

このとき学んだのは、狭い職場ほど、一人で考え込むと見え方が偏るということです。信頼できる誰かに話すだけで、同じ出来事がまったく違って見えることがあります。

もちろん、「誰にでも厳しいから問題ない」ということではありません。度を超えた言動なら、相手が誰にでもそうであっても、相談してよいものです。大切なのは、一人で抱え込まないことです。

医師との関係で疲れたときに

大学病院の医師との関係は、一般の病院とは少し違う難しさがあります。

大学病院の医師は、診療に加えて、研究、学生や研修医の教育、学会の準備を抱えています。病棟にいる時間が限られ、連絡がつきにくいこともあります。看護師から見ると、「なかなかつかまらない」「話しかけると不機嫌になる」と感じる場面が出てきます。

こういう声をよく聞きます。「先生に電話するのが怖くて、確認を後回しにしてしまう」。

気持ちはとてもよく分かります。でも、確認を後回しにすると、患者さんの安全にも、自分の心にも負担がかかります。

楽になる方法の1つは、確認したいことをまとめてから連絡することです。急ぎではない確認は、3つほどまとめて、医師が病棟に来るタイミングで伝える。急ぎの確認は、報告の型に沿って、短く伝える。医師の側も、まとまった情報のほうが答えやすいんです。

もう1つは、医師の口調を「自分への評価」と受け取らないことです。忙しいときの強い口調は、多くの場合、その人の余裕のなさの表れです。あなたの価値が下がったわけではありません。

研修医との関係には、また別の難しさがあります。研修医は医師ですが、病棟の仕事にはまだ慣れていません。経験の長い看護師のほうが、病棟のルールや患者さんの様子をよく知っていることも多いです。

こういう声もよく聞きます。「研修医の先生の指示が不安だけど、医師に意見していいのか迷う」。

患者さんの安全に関わる疑問なら、遠慮せずに確認してかまいません。そのときは、「私の理解が合っているか確認させてください」と、相手を責めない形で伝えると、研修医も受け取りやすくなります。研修医にとっても、病棟の看護師に助けられた経験は、その後の医師としての働き方に残ります。4月に不安そうだった研修医が、数か月後には頼もしく声をかけてくれるようになる。その変化を見られるのも、大学病院ならではです。

薬剤師、リハビリの職員、医療ソーシャルワーカーなど、多職種との関係も同じです。大学病院は職種ごとの専門性が高いぶん、お互いの仕事の範囲が見えにくいことがあります。分からないことは「この場合、どなたに相談すればいいですか」と聞いてしまうのが、いちばん早くて角が立ちません。

それでも、人格を否定するような言葉や、大声での叱責が続くなら、それは我慢する必要のないものです。先ほどお話しした相談窓口を使ってください。医師の言動についても、相談の対象になります。

異動と4月の入れ替わりを味方にする

大学病院の人間関係には、ほかの職場にはない「リセットの機会」があります。それが、定期的な異動と、毎年4月の入れ替わりです。

人間関係は、ずっと同じではない

小さな病院やクリニックでは、合わない人と何年も同じ職場で働き続けることがあります。一方、大学病院では、看護師も医師も、数年のうちに入れ替わっていきます。

今つらい関係も、ずっと続くとは限りません。これは、我慢しなさいという意味ではなく、「今の状態が永遠ではない」と知っておくことで、少し気持ちが楽になるという意味です。

異動の希望を出すという選択

人間関係が理由でつらいなら、異動の希望を出すことを考えてみてください。多くの大学病院では、年に1回程度、看護部に希望を伝える面談や書類の仕組みがあります。

希望を伝えるときは、感情ではなく事実を中心に話します。「〇〇さんが嫌いだから」ではなく、「こういう出来事が続き、仕事に集中しにくくなっている」。先ほどの記録が、ここでも役に立ちます。

異動は、人間関係から逃げることではありません。自分が力を発揮しやすい場所を選び直すことです。別の診療科を経験することは、看護師としての幅を広げることにもつながります。

新しい部署での最初の3か月

異動した後、あるいは新しく入職した後の最初の3か月は、人間関係の土台ができる大切な時期です。

この時期に意識してほしいのは、前の部署の話を持ち込まないことです。「前の病棟ではこうだった」という言葉は、悪気がなくても、新しい部署のやり方を否定しているように聞こえることがあります。まずは新しい部署のやり方を受け取り、慣れてきてから「前の部署ではこういう工夫もありました」と提案の形で伝える。この順番を守るだけで、受け入れられ方が変わります。

もう1つは、分からないことを早めに聞くことです。異動してきた人は、経験があるぶん「今さら聞けない」と感じがちです。でも、部署ごとにやり方が違うのは、大学病院では当たり前のこと。聞いてくれる人のほうが、周りも安心して仕事を任せられます。

そして、最初の3か月で無理に全員と打ち解けようとしなくて大丈夫です。挨拶をする、お礼を言う、報告を丁寧にする。この3つを続けていれば、人間関係の土台は自然とできていきます。親しくなる人は、その後の時間の中で少しずつ見つかります。

困ったときの相談先

大学病院で人間関係に困ったとき、相談できる場所はいくつもあります。

病院の中では、まず直属の上司である師長。師長に相談しにくい場合は、副看護部長や看護部の教育担当、キャリアの相談を受け持つ看護師がいる病院もあります。ハラスメントについては、看護部とは別に置かれた相談窓口。心や体の不調があるなら、職員向けの健康管理の部署や産業医です。

病院の外では、都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーで、職場のトラブルについて相談できます。

働き方そのものを見直したいときは、キャリアの専門家に話を聞いてもらうのも1つの方法です。キャリアコンサルタントは、職業選択やキャリアの悩みについて相談に応じる国家資格で、どういう支援をしてくれるのかがまとめられています。職場の悩みを聞く仕事の中身は、職場・転職・キャリア相談のお仕事でも紹介されています。

どこに相談すればいいか分からないときは、まず、あなたが「この人なら話せる」と思える人に話してみてください。相談先は、正しさよりも、話しやすさで選んで大丈夫です。

相談するときの準備

相談の場に行くときは、次の3つを用意しておくと、話がまとまりやすくなります。

1つ目は、出来事の記録です。日付、場所、相手、言われたことやされたこと、そのとき周りにいた人。できるだけ事実だけを書きます。

2つ目は、自分がどう困っているかです。眠れない、出勤前に体調が悪くなる、仕事でミスが増えた。心と体に出ている変化も、大切な情報です。

3つ目は、どうなってほしいかです。相手に言動を改めてほしいのか、勤務が重ならないようにしてほしいのか、部署を移りたいのか。はっきりしなくても大丈夫ですが、少しでも言葉にしておくと、相談を受けた側も動きやすくなります。

「相談したら、かえって居づらくなるのでは」と心配する方も多いです。ハラスメントの相談をしたことを理由に、不利益な扱いをすることは、法律で禁止されています。相談窓口の担当者には、相談の内容を守る決まりもあります。怖さがあるのは自然なことですが、あなたが相談する権利は守られています。

入る前に人間関係を見抜く方法

これから大学病院に入ろうとしている方に、人間関係を見抜くヒントをお伝えします。

見学では、ナースステーションの声を聞く

病院見学では、ナースステーションで交わされている会話に耳を傾けてみてください。忙しい中でも「ありがとう」「手伝おうか」という声が聞こえるか。新人らしき看護師が、先輩に質問できているか。案内してくれる人の説明より、その場の空気のほうが、多くを教えてくれます。

教育の体制を具体的に聞く

プリセプターが1人でつくのか、チームで新人を支えるのか。教える側の負担が1人に集中していない病棟は、教わる側も質問しやすい傾向があります。「新人が困ったとき、誰に相談できる仕組みですか」と聞いてみると、職場の支え方が見えてきます。

離職と異動の様子を聞く

「昨年入った新人の方は、今どのくらい同じ部署で働いていますか」。聞きにくい質問ですが、答え方に職場の姿勢が表れます。すぐに具体的な答えが返ってくる病院は、定着に向き合っていることが多いです。

面接の最後に「何か質問はありますか」と聞かれたら、「部署の中で、困ったときに声をかけ合う工夫があれば教えてください」と聞いてみるのもおすすめです。朝の短い打ち合わせ、新人と先輩の定期的な面談、夜勤明けの振り返り。具体的な工夫が返ってくる職場は、人間関係を個人任せにしていない職場です。

寮の暮らしも確かめる

寮に入る予定なら、寮の場所や、職員以外の人が住んでいるか、門限などの決まりがあるかも確かめておきましょう。仕事と生活の距離をどう保てるかは、人間関係の疲れ方に直結します。

口コミは部署と時期を考えて読む

インターネットの口コミには、大学病院の人間関係について厳しい声も、温かい声も並んでいます。大学病院は部署ごとに雰囲気が大きく違うので、口コミを書いた人がどの部署にいて、いつごろの話なのかを想像しながら読んでください。師長が変われば病棟の空気も変わるので、数年前の口コミが今もそのまま当てはまるとは限りません。1つの声で判断せず、見学で自分の目で確かめる材料として使うのがおすすめです。

条件面も、心の余裕に関わります。お給料が生活に見合っているかどうかは、人間関係の悩みとは別に、心の土台になります。看護師の年収が年代や働き方でどう変わるのかは、看護師の年収・単価相場で見比べられるので、候補の病院の条件を落ち着いて確かめてみてください。

人間関係に疲れたときに、思い出してほしいこと

最後に、人間関係に疲れたときに思い出してほしいことをお話しします。

大学病院の病棟は、あなたの世界のすべてではありません。院内には、ほかの部署があり、病院の外には、ほかの職場があります。そして、職場の外には、あなたを大切に思う人たちがいます。

今の人間関係がつらいなら、異動を相談することも、職場を変えることも、立派な選択です。逃げではありません。自分を守るための判断です。

在宅ワークや業務委託の市場を20年運営してきた立場から見ていると、専門職が長く働き続けるうえで大切なのは、「どこで働くか」を自分で選び直せる感覚を持っていることだと感じます。看護師の経験は、病院の中だけでなく、健康相談や医療記事の監修など、病院の外でも求められています。どういう仕事があるのかは、看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】で紹介されています。

病院の外の仕事では、依頼する人と直接やりとりすることが多くなります。仲介の手数料がかからない直接のやり取りでは、依頼する側は同じ予算で頼みやすくなり、受ける側の手元にも多く残ります。何より、自分に合う相手と、自分に合う距離で関係を築ける。人間関係に疲れた経験がある人ほど、この「距離を自分で選べる」ことの価値を感じるようです。

もちろん、病院の外の仕事にも、別の人間関係の難しさはあります。ただ、組織の中で人との距離に悩んだ経験は、どの場所で働くときにも、自分に合う関係を見極める目になります。その目は、つらい時間を過ごしたあなたが手に入れたものです。

今日、病棟で少しでもつらいことがあったなら、帰り道に深呼吸を1つしてみてください。そして、今日の自分がちゃんと働いたことを、自分で認めてあげてください。人間関係の悩みは、あなたが真剣に仕事と向き合っているからこそ生まれるものです。

大学病院で働いた日々の中で、あなたが身につけた力は、どこへ行っても消えません。重症の患者さんを看てきた力、多くの人と連携してきた力、そして、つらい人間関係の中でも働き続けてきた力。

あなたは一人じゃありません。困ったときは、どうか誰かに話してください。

よくある質問

Q. 大学病院の人間関係はなぜ厳しいと言われるのですか?

病院全体は大きくても、毎日一緒に働くのは30人から40人ほどの病棟の仲間です。看護部と医局の階層がはっきりしていること、同期や出身校、寮などのつながりが病棟の外まで続くこと、異動で院内に話が伝わりやすいことが重なり、狭く濃い人間関係に感じられやすくなります。

Q. 厳しい指導とパワーハラスメントの違いは何ですか?

厚生労働省は、優越的な関係を背景とし、業務上必要かつ相当な範囲を超え、就業環境が害されるという3つの要素をすべて満たすものをパワーハラスメントとしています。報告の抜けを具体的に指摘するのは指導ですが、人格を否定する言葉や長時間の叱責は範囲を超えている可能性があります。

Q. 大学病院で人間関係に困ったら、どこに相談すればよいですか?

院内では直属の師長のほか、副看護部長や教育担当、看護部とは別に置かれたハラスメント相談窓口、職員の健康管理部門や産業医に相談できます。院内で相談しにくい場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーも利用できます。相談の前に出来事を記録しておくと役立ちます。

Q. 入職前に大学病院の人間関係を見抜く方法はありますか?

病院見学では、ナースステーションで感謝や声かけの言葉が交わされているか、新人が先輩に質問できているかを見てみましょう。新人を1人のプリセプターで支えるのかチームで支えるのか、新人の定着の状況を具体的に聞くと、職場の支え方や雰囲気が見えやすくなります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月10日最終更新:2026年9月16日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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