法人設立届出書の書き方|会社を作って2か月以内に出す


この記事のポイント
- ✓法人設立届出書は設立登記の日から2か月以内に税務署へ出す書類です
- ✓都道府県と市町村への届出
- ✓同時に出す4つの書類までを一次資料で確認して整理しました
登記が終わってほっとしたのも束の間、手元に何を出せばいいのか分からない紙束が残る。法人設立届出書はその筆頭です。結論から言うと、やることは3つしかありません。設立登記の日から2か月以内に税務署へ出す、添付するのは定款の写し1枚、そして都道府県と市町村にも同じ趣旨の届出を別に出す。この3つを押さえれば、残りは欄を埋める作業です。
ここでは国税庁が公開している手続案内と記載要領、各自治体の案内をそのまま確認しながら、どの欄に何を書くのか、いつまでに何をどこへ出すのかを順番に並べていきます。専門用語は出てくるたびに言い換えるので、会社を作るのが初めてでも読み進められます。
法人設立届出書は「会社ができました」と税務署に知らせる紙
法人設立届出書とは、会社を作ったという事実を税務署に知らせるための書類です。登記は法務局の仕事で、税金は税務署の仕事なので、法務局で登記が通っても税務署には自動では伝わりません。だから自分で知らせる必要があります。
対象になるのは、株式会社や合同会社のような普通法人と、協同組合等です。国税庁の手続案内にはこう書かれています。
内国普通法人等を設立した場合の手続です。 [提出時期]法人設立の日(設立登記の日)以後2月以内 [提出先]納税地の所轄税務署長 出典: nta.go.jp
ここで気をつけたいのが「法人設立の日」の読み方です。定款を作った日でも、公証役場で認証を受けた日でも、資本金を振り込んだ日でもありません。法務局に設立の登記を申請して、それが登記簿に載った日、つまり登記年月日です。実務上は申請日が登記年月日になることが多いので、申請した日をカレンダーに丸を付けて、そこから2か月後を締め切りとして数えます。
根拠になっている条文は法人税法第148条と法人税法施行規則第63条です。条文そのものを読む必要はありませんが、「法律で決まっている届出であって、税務署の親切なお願いではない」という位置づけだけは頭に入れておくといいでしょう。
一方で、一般社団法人や一般財団法人のうち非営利型法人に当たるものは、そもそもこの届出書を出しません。非営利型法人とは、利益を配らない仕組みを定款に書いた法人のことで、税法上は公益法人等として扱われます。ただし後から収益事業、つまり法人税がかかる34種類の事業のどれかを始めた場合は、別の届出が必要になります。この記事の話は株式会社と合同会社を前提に進めます。
期限は2か月。過ぎたらどうなるのか
期限は設立登記の日から2か月以内です。ではこれを過ぎたら罰金が来るのか。実は、法人設立届出書そのものに「出し遅れたら何円」という罰則は用意されていません。ここは正直に書いておきます。
ただし、遅れて困るのは別のところです。いちばん大きいのは青色申告の承認申請です。青色申告とは、帳簿をきちんと付けることを条件に税制上の特典が受けられる申告方法で、赤字を翌期以降に繰り越せる、30万円未満の備品を買った年に全額経費にできる、といった扱いが認められます。その承認申請の期限を国税庁はこう定めています。
普通法人又は協同組合等の設立の日の属する事業年度の場合は、設立の日以後3月を経過した日と当該事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日まで 出典: nta.go.jp
設立から3か月と、最初の事業年度の終わり。どちらか早いほうの前日が締め切りです。たとえば4月1日に設立して3月末決算にしたなら、期限は6月30日。ところが4月1日に設立して5月末決算にしたなら、期限は5月30日に前倒しになります。1期目を短く設定した会社ほど、この期限は早く来ます。
そして現実の流れとして、青色申告の承認申請書は法人設立届出書と一緒に出すものです。届出書を「まだいいか」と机の上に置いたまま忘れると、青色申告の期限も一緒に飛びます。初年度が赤字になる会社は多いので、繰り越せるはずだった赤字を捨てるのは痛い。期限に罰則がないからこそ、後ろにぶら下がっている書類の期限で自分を縛るのが現実的です。
もう一つ、地方税のほうは事情が違います。東京都は事業を開始した日から15日以内と条例で決めていて、国の2か月よりはるかに短い。この話は後の節で詳しく扱います。
出す先は3か所ある。税務署だけでは終わらない
法人設立届出書でいちばん多い勘違いが、税務署に出せば終わりだと思ってしまうことです。会社にかかる税金は、国に納める法人税と、地方に納める法人住民税および法人事業税に分かれています。窓口が違うので、届出も別々に出します。
| 出す先 | 書類の呼び名の例 | 期限の例 |
|---|---|---|
| 税務署(国) | 法人設立届出書 | 設立の日から2か月以内 |
| 都道府県(都道府県税事務所) | 法人設立・設置届出書、法人設立等申告書 など | 東京都は15日以内、神奈川県と大阪府は2か月以内 |
| 市区町村(市役所・町村役場) | 法人設立・設置届出書 など | 名古屋市は30日以内、札幌市は2か月以内 |
地方の期限が自治体ごとにばらばらなのは、地方税の届出が各自治体の条例で決まっているからです。東京都は都税条例第26条第1項で15日以内と定めています。
法人を設立した場合、都内に初めて支店等を設置した場合、法人設立・設置届出書を所管の都税事務所(都税支所)・支庁に提出してください(東京都都税条例第26条第1項、都税条例規則第12条の2)。事業を開始した日から15日以内に申告をお願いします。 出典: tax.metro.tokyo.lg.jp
自治体ごとの差は実際に開いて確かめるしかありません。大阪府は法人を設立した日から2か月以内に府税事務所へ、神奈川県は事業を開始した日から2か月以内に県税事務所へと案内しています。市のほうは、名古屋市が設立または新設の日から30日以内、札幌市が設立から2月以内、市内への支店設置は1月以内です。自分の本店所在地の自治体名と「法人設立 届出」で公式サイトを引いて、日数を確認してから動くのが確実です。
東京23区に本店を置く場合だけは、扱いがひとつ簡単になります。23区内の法人は、市町村民税に当たる部分も都が都民税としてまとめて課税するため、区役所に別途出す必要がなく、都税事務所への届出で足ります。都内でも武蔵野市や八王子市のような市部に本店を置くなら、都税事務所と市役所の両方に出します。
添付するのは定款の写しだけ
添付書類は驚くほど少なくて済みます。国税庁の案内が挙げているのは1点だけです。
[添付書類]定款、寄付行為、規則又は規約の写し 出典: nta.go.jp
定款とは、会社の決まりを書いた文書のことです。商号、目的、本店所在地、資本金、事業年度などが並んでいます。株式会社なら公証役場で認証を受けた定款、合同会社なら自分たちで作った定款、そのコピーを1部添えます。原本を渡す必要はありません。
かつては登記事項証明書、いわゆる登記簿謄本も付けるのが当たり前でした。今は税務署への提出分には要りません。法人番号制度が始まり、税務署側が登記の情報を確認できるようになったためです。法務局に証明書を取りに行く手間と1通あたりの手数料が浮きます。
ただし地方税の届出は別の話です。東京都が配っている記載要領には、定款等の写しと登記事項証明書の両方が挙がったうえで、登記事項証明書は税務署と都税事務所への提出には不要、つまり市町村に出す分には必要だと書かれています。横浜市の記載要領も同じ作りで、税務署提出分への添付は不要と明記しています。市町村に出す分だけ登記事項証明書が要る、と覚えておけば取り違えません。
なお東京都の記載要領には、オンライン登記情報提供制度を使う場合は照会番号と発行年月日を書けば登記事項証明書の添付が不要になる、という但し書きも入っています。照会番号は提出先ごとに必要なので、複数の市町村に出すなら、その数だけ取得することになります。
16の記入欄を上から順に埋める
用紙は1枚です。国税庁が公開している法人設立届出書の記載要領は、各欄の埋め方を16項目に分けて説明しています。迷いやすいところだけ抜き出します。
法人番号は13桁を書きます。ただし提出する時点でまだ番号の指定を受けていなければ、空欄のままで構いません。登記が終わるとおおむね1週間ほどで国税庁から通知書が届くので、間に合えば書く、という程度の扱いです。
本店又は主たる事務所は、登記してある所在地をそのまま書きます。普段の郵便で使っている省略した住所ではなく、登記簿に載っている表記に合わせます。丁目と番地をハイフンでつないで書いている人は、登記簿を開いて確かめてください。
設立時の資本金又は出資金の額は、設立のときに登記した額です。会社法では資本金の下限がないので1円でも会社は作れますが、額が何であれ、登記した数字をそのまま書きます。
設立年月日は、登記簿に記載されている登記年月日です。ここを定款の作成日や口座振込の日と取り違えるミスが起きやすいので、登記簿を見ながら書き写します。
事業年度は、定款で決めた会計期間です。4月1日から翌年3月31日まで、といった形で書きます。事業の目的は、定款に書いた目的のうち主なものと、実際に営んでいる事業または営む予定の事業の種類を書きます。定款の目的が10項目並んでいても、全部を書き写す必要はありません。
支店、出張所、工場等の欄は、登記してあるかどうかに関係なく、すべて書きます。登記していない営業所も対象です。ここに書いた場所が、後で地方税の均等割がかかる場所になります。
「給与支払事務所等の開設届出書」提出の有無は、その届出を出すかどうかを答える欄です。役員1人だけの会社でも、その役員に報酬を払う予定があるなら「有」です。役員報酬を0円にして当面は誰にも給与を払わないなら「無」で構いません。
関与税理士の欄は、顧問税理士がいれば氏名と事務所所在地を書きます。いなければ空欄です。税理士署名の欄は、税理士がこの届出書を作成したときだけ署名する欄なので、自分で作ったなら触りません。
資本金1,000万円の線で、書く欄がひとつ増える
記入欄のなかで、意味が分かりにくいのが「消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日」です。記載要領の説明はこうです。
「消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日」欄には、設立時の資本金の額又は出資金の額が1千万円以上である場合にその設立年月日を記入してください。この欄に設立年月日を記入した場合には、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を提出する必要はありません。 出典: nta.go.jp
ふつう、会社を作った1期目と2期目は、2年前の売上という判定材料がないので消費税を納めなくてよいことになっています。ところが設立時の資本金が1,000万円以上あると、その免除が使えません。最初の期から消費税の申告と納付が必要になります。
だからこの欄は、資本金が1,000万円以上の会社だけが埋めます。999万円で設立したなら空欄のままです。そして1,000万円以上でこの欄に設立年月日を書けば、消費税の新設法人に該当する旨の届出書という別の書類を出さずに済みます。1枚の欄を埋めるだけで1枚減る、という珍しく得な仕組みです。
資本金をいくらにするかを、この線だけで決めるのは乱暴です。取引先の与信審査、許認可の要件、銀行融資の見え方など、判断材料はほかにもあります。ただ、900万円台にするか1,000万円ちょうどにするかで迷っているなら、消費税の扱いが変わる分岐がここにあることは知っておいて損がありません。金額と事情によって結論は変わるので、実際の判断は税務署か税理士に確認してください。
法人設立届出書と一緒に出す4つの書類
税務署に出す書類は、実際には法人設立届出書1枚では終わりません。会社の形によって、次の4つが加わります。期限はそれぞれ違います。
| 書類 | 誰が出すか | 期限 |
|---|---|---|
| 青色申告の承認申請書 | 青色申告をしたい会社(ほぼ全社) | 設立から3か月を経過した日と1期目の末日の早いほうの前日まで |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 役員報酬や給与を払う会社 | 事務所を設けた日から1か月以内 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 給与を払う人が常時10人未満の会社 | 期限の定めなし |
| 消費税の新設法人に該当する旨の届出書 | 資本金1,000万円以上の会社 | 速やかに(法人設立届出書に記載すれば不要) |
給与支払事務所等の開設届出書は、従業員を雇っていなくても必要になります。社長1人の会社でも、自分に役員報酬を払うなら給与を払う事務所だからです。国税庁の案内は開設、移転又は廃止の事実があった日から1か月以内と定めています。
源泉所得税の納期の特例は、手間の面で効く申請です。給与から天引きした所得税は、原則として天引きした月の翌月10日までに納めます。毎月です。この特例が認められると、1月から6月までの分を7月10日、7月から12月までの分を翌年1月20日と、年2回にまとめられます。条件は給与を払う人が常時10人未満であること。提出時期には定めがなく、原則として提出した日の翌月に支払う給与から適用されます。少人数の会社なら、設立時にまとめて出しておくのが合理的です。
設立後に本店を移したり、商号を変えたり、事業年度を変えたりしたときは、異動届出書を異動前の納税地を所轄する税務署に出します。こちらは添付書類なしで、異動後すみやかに出すことになっています。
紙で出すか、電子で出すか
国税庁の案内は、e-Taxソフトで作って提出する方法を先に書いています。e-Taxは国税の手続をインターネットで行う仕組みで、国税電子申告・納税システムから利用します。初めて使う場合は利用者識別番号を取得する必要があり、法人の場合は電子証明書も用意することになります。
紙で出す場合は、届出書と添付書類を1部、税務署に持参するか送付します。税務署の開庁時間は8時30分から17時まで。土日祝日は窓口が閉まっていますが、送付するか、時間外収受箱に投函すれば提出できます。控えが欲しいなら、同じ書類をもう1部と返信用封筒を同封して、受付印を押して返してもらう形にします。この控えは、銀行で法人口座を開くときや、補助金の申請で会社の実在を示すときに使えることがあります。
地方税のほうは、自治体によっては1枚の複写用紙で税務署用、都道府県用、市町村用がまとまっています。横浜市が配っている記載要領には、税務署、県税事務所、市町村の各提出用を作ってどれか1か所に出せば、そこから他の機関へ回してもらえる、という案内が書かれています。東京都の用紙も同じく3枚綴りです。一方で、それぞれ別々に出す運用の自治体もあります。用紙を取り寄せた時点で記載要領を読んで、何通必要なのかを確かめてください。東京都の記載要領は、資本金1億円以上の内国普通法人なら税務署提出用が2通必要、市町村提出分は支店等がある市町村ごとに各1通必要、とまで指定しています。
事業年度をいつにするかは、届出書を書く前に決める
事業年度の欄は1行で済みますが、ここに何を書くかで会社の1年の動き方が決まります。届出書を前にしてから慌てて決める人が多いので、先に考え方を並べておきます。
日本の会社は3月末決算が多い、という印象があるかもしれませんが、法律で決まっているわけではありません。決算月は自由に選べます。株式会社と合同会社のどちらでも、定款に書いた会計期間がそのまま事業年度になります。
選ぶときの基準は3つです。第一に、繁忙期と決算作業が重ならないこと。決算月の翌々月末が法人税の申告期限なので、たとえば12月決算なら2月末が申告期限です。仕事がいちばん立て込む時期に棚卸しと帳簿の締めが来ると、どちらも雑になります。第二に、資金繰りです。法人税と消費税は申告期限に現金で出ていきます。入金が細る月に納税が重なる設計は避けます。第三に、1期目をなるべく長く取ること。
3つ目は補足が要ります。設立から最初の決算日までが1期目です。4月1日に設立して3月末決算にすれば1期目は12か月、4月1日に設立して5月末決算にすれば1期目は2か月で終わります。資本金1,000万円未満の会社は1期目と2期目に消費税の納税義務が免除される扱いになっているので、1期目を短くすると、その免除される期間そのものが短くなります。設立月の前月末を決算月にすると1期目が最長になる、というのが実務でよく使われる考え方です。
ただし、1期目を長くすることだけを目的に決算月を決めると、繁忙期と重なる設計になってしまうことがあります。どれを優先するかは事業の中身によるので、消費税の扱いを含めた最終的な判断は税務署か税理士に確認してください。事業年度を後から変えることもできますが、そのときは定款を変更したうえで異動届出書を出し直す手間が発生します。
税務署の届出と同じ時期に、年金事務所の届出も来る
法人設立届出書は税金の話ですが、会社を作った直後には社会保険の届出も並行して走ります。ここを見落とすと、期限がいちばん短い書類を落とすことになります。
法人は、社長1人だけの会社であっても健康保険と厚生年金保険の適用事業所になります。個人事業主のときのように、国民健康保険と国民年金で通すことはできません。そして届出の期限は5日です。日本年金機構が配っている新規適用届の案内には、次のように書かれています。
この届出は、事業所が健康保険、厚生年金保険に適用されることになった場合、事実発生から5日以内に事業主が行わなければなりません。 出典: nenkin.go.jp
税務署の2か月と比べると、桁が違う短さです。しかも添付書類として法人(商業)登記簿謄本が要ります。しかもこの謄本は、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものに限られる、と案内に明記されています。登記が完了したらまず法務局で謄本を取り、そのまま年金事務所へ持っていく、という順番になります。届出書の様式や提出先は日本年金機構の適用関係届書のページから確認できます。
新規適用届は単独では出しません。被保険者になる人の資格取得届を同時に出します。扶養する家族がいるなら、被扶養者の届出も一緒です。社長1人の会社でも、社長自身が被保険者なので資格取得届が要ります。
従業員を雇うなら、さらに労働保険の届出が加わります。労災保険と雇用保険は労働基準監督署とハローワークが窓口で、税務署とも年金事務所とも別です。従業員を雇う予定がない設立当初は不要ですが、最初の1人を採用した時点で発生する、と覚えておくといいでしょう。
書き間違えた、内容が変わった、控えが欲しい
提出したあとに起こることも整理しておきます。
書き間違いに気づいたときは、提出前なら二重線を引いて書き直せば足ります。訂正印を求められる場面はほとんどありません。提出したあとで誤りに気づいたら、所轄の税務署に電話をして指示を仰ぎます。設立当初の届出書は、税務署側でも法人を登録するための情報として扱われるので、修正の申し出は普通に受け付けてもらえます。
提出後に会社の中身が変わったときは、新しい届出書を出し直すのではなく異動届出書を使います。本店の移転、商号の変更、代表者の変更、事業年度の変更、資本金の額の変更、支店の設置や廃止などがこれに当たります。提出先は異動する前の納税地を所轄する税務署長で、期限は異動後すみやかに、とされています。添付書類は原則なしですが、内容の確認のために定款等の写しを求められることがあります。
控えについては、紙で出すなら自分で用意します。同じ届出書をもう1部作り、返信用封筒に切手を貼って同封すれば、受付印を押したうえで返送してもらえます。e-Taxで出した場合は、送信結果が記録として残るので、そこから受信通知を印刷すれば同じ役割を果たします。この控えは、法人口座の開設、事務所の賃貸契約、補助金の申請などで会社の実在を示す資料として使われることがあります。捨てずに定款の写しと一緒にファイルしておいてください。
設立1期目にやることを、日付の順に並べる
ここまでに出てきた期限を、設立登記の日を起点にして1本の線に並べ直します。締め切りが短いものから手を付けるのが安全です。
| 期限 | やること | 出す先 |
|---|---|---|
| 5日以内 | 健康保険・厚生年金保険の新規適用届と被保険者資格取得届 | 年金事務所 |
| 1か月以内 | 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 |
| 2か月以内 | 法人設立届出書と定款の写し、都道府県と市町村への設立届 | 税務署、県税事務所、市町村 |
| 2か月を経過する日まで | 役員に賞与を出す予定があるなら事前確定届出給与に関する届出 | 税務署 |
| 3か月を経過する日まで | 役員報酬の月額を決めて議事録に残す | 社内 |
| 3か月を経過した日と1期目の末日の早いほうの前日まで | 青色申告の承認申請書 | 税務署 |
| 決算日の翌日から2か月以内 | 法人税・地方税・消費税の申告と納付 | 税務署、県税事務所、市町村 |
役員報酬の3か月は、提出の期限ではなく決めごとの期限です。毎月同じ額を払う役員報酬(定期同額給与といいます)を経費として扱うには、金額を決める時期に制限があります。国税庁の説明では、改定できるのは「その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日」までです。設立した会社の1期目は設立の日が会計期間の始まりなので、設立から3か月を過ぎたあとに月額を上げ下げしても、その差額はその期の経費として認められません。役員報酬をいくらにするかは社会保険料と所得税にも跳ね返るので、届出書を書く時期と並行して決めておきます。
役員に賞与を出す予定があるなら、届出が1枚増えます。あらかじめ日付と金額を決めて届け出る役員賞与(事前確定届出給与といいます)について、国税庁はこう書いています。
新設法人がその役員のその設立の時に開始する職務についてその定めをした場合にはその設立の日以後2か月を経過する日 出典: nta.go.jp
法人設立届出書と同じ2か月です。1期目から賞与を出すつもりなら、設立届と同じ封筒に入れる書類として数に入れておきます。逆に賞与を出さないなら、この届出は不要です。
決算のあとの申告期限は法人税法が定めています。各事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。3月31日決算なら5月31日までに申告書を出し、同じ日までに税金も納めます。赤字で法人税が0円でも、都道府県と市町村の均等割は残るので、申告と納付そのものは毎年発生します。
設立にかかったお金は「創立費」に入れて、落とす年を選べる
届出が済んだら、次は帳簿を作る作業です。ここで最初に迷うのが、会社ができるまでに払ったお金の置き場所です。
設立登記の登録免許税、定款の認証手数料、登記事項証明書の交付手数料、発起人に払った報酬は、まとめて創立費という科目に入れます。法人税法施行令はこれを「発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用」と定義しています。設立が済んでから実際に営業を始めるまでの間に、開業の準備のために特別に払ったお金は開業費です。名刺や会社案内の印刷費、開業前の広告費、開業前に借りた事務所の家賃などがここに入ります。
仕訳の形は次のようになります。設立の費用を社長が立て替えていたなら、貸方は現金ではなく役員借入金です。金額は例として置いたものです。
・創立費 210,000 / 役員借入金 210,000 ・開業費 80,000 / 現金 80,000
この2つは繰延資産という扱いになり、支払った期に全額を経費にしなくてもかまいません。法人税法施行令は、創立費と開業費について償却できる限度額を「その繰延資産の額」そのものと定めています。限度が全額ということは、0円から全額までの好きな金額をその期の経費にできる、という意味です。
これが効いてくるのは1期目が赤字のときです。売上が立つ前に払った費用を1期目で全部落としても、赤字が膨らむだけで納める税金は変わりません。落とさずに資産として残しておき、黒字になった期にまとめて経費にすれば、その期の税金が減ります。青色申告なら赤字そのものを翌期以降に繰り越せますが、繰越にも使える年数の上限があるので、経費にする年を自分で選べる創立費と開業費は使い勝手のよい枠です。どの期にいくら落とすのが有利かは売上の見通しで変わるので、迷うところは税務署か税理士に確認してください。
帳簿と領収書をいつまで持つかも、最初に決めておきます。国税庁は、帳簿と取引の書類を「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間」保存すると案内しており、青色申告で赤字が出た事業年度については10年間になります。設立初年度の領収書は、手元にいちばん長く置くことになる紙です。封筒に「第1期」と書いて、定款の写しと届出書の控えを同じ場所にまとめておくと、あとで探す手間がなくなります。
独立して会社にする人が、届出の前に確かめていること
ここからは、在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた運営者の視点で、届出そのものより一段手前の話を書きます。
法人化の相談で最も多い誤解は、「売上が増えたから会社にする」という順番の思い込みです。運営者として見てきた限りでは、実際に法人にして楽になっている人は、売上より先に取引の形が変わっています。単発の発注が続くうちは個人のままでも回りますが、年間契約や複数名での受注が入ってくると、契約書の名義、請求の締め、支払いサイトの管理が個人の器に収まらなくなる。そこが分岐点です。逆に言えば、売上が1,000万円を超えていても取引が全部単発なら、法人にした分だけ均等割と記帳の手間が増えるだけ、ということが起こります。
もう一つ、長く続いている人に共通しているのが、報酬の額面ではなく手取りの厚みで判断している点です。仲介が何割か抜く仕組みのなかで動いていると、同じ仕事量でも手元に残る額が変わります。中間マージンが乗らない直接取引なら、発注する側は同じ予算でより多く頼め、受ける側は手数料0%で手取りが厚くなる。この構造を理解している人ほど、法人化の損得も額面ではなく手取りベースで計算します。
職種によって、法人化が効く時期はかなり違います。開発系のように1案件あたりの金額が大きく、契約期間も長い仕事は比較的早く法人の器が必要になります。相場の感覚をつかむならソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。全国平均と都道府県別の水準が並んでいるので、自分の請求単価が地域のどのあたりにいるかを確かめられます。文章を書く仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場のほうです。
仕事の内容そのものを広げたいなら、単価が動いている領域を見ておくのが早い。AIコンサル・業務活用支援のお仕事は、生成AIの導入戦略から社内研修までを引き受ける仕事で、企業側の予算が付きやすい分野です。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事も、技術と事業の両方が分かる人が少ないため単価が落ちにくい傾向があります。受託開発を主軸にするならアプリケーション開発のお仕事が近い領域になります。
会社にすると、税金の考え方も個人事業のときとは変わります。個人時代の申告の感覚を整理しておきたいなら確定申告 メリットを最大化!フリーランスが知るべき節税と還付のコツが土台になりますし、役員報酬を決める前に手元資金の置き場所を考えるなら【20年で2倍?】毎月10万円の積立投資で資産形成する最強のポートフォリオのような長期の視点も要ります。
届出書の欄を埋めるのは、慣れれば30分で終わる作業です。時間がかかるのは、事業年度をいつにするか、資本金をいくらにするか、役員報酬を月いくらに決めるかといった、届出書に書く前の判断のほうです。欄を埋める前に、その判断を先に固めておくと、書き直しが起きません。業務の幅を広げる準備として資格を検討しているなら、書類仕事の精度が上がるビジネス文書検定や、技術側の基礎を示せるCCNA(シスコ技術者認定)のような選択肢もあります。
よくある質問
Q. 法人設立届出書を期限の2か月を過ぎて出したらどうなりますか?
法人設立届出書そのものに罰則は定められていないため、遅れて出しても受け付けてもらえます。ただし一緒に出す青色申告の承認申請書には期限があり、設立から3か月を経過した日と1期目の末日の早いほうの前日を過ぎると、その期は青色申告ができません。初年度の赤字を繰り越せなくなるので、実質的な期限はこちらだと考えてください。
Q. 添付書類は定款の写しだけで足りますか?
税務署に出す分は、定款、寄付行為、規則または規約の写しだけです。登記事項証明書は税務署への提出分には要りません。ただし市町村に出す分では登記事項証明書を求められるのが一般的で、都道府県税事務所の分は自治体によって扱いが分かれます。提出先の記載要領を開いて確認してください。
Q. 税務署と都道府県と市町村で、期限は同じですか?
違います。税務署は設立の日から2か月以内で全国共通ですが、都道府県と市町村は各自治体の条例で決めるため、東京都は15日以内、名古屋市は30日以内、大阪府や神奈川県は2か月以内といった差があります。本店所在地の自治体の公式サイトで日数を確かめるのが確実です。
Q. 社長1人の会社でも給与支払事務所等の開設届出書は必要ですか?
自分に役員報酬を払う予定があるなら必要です。従業員を雇っていなくても、役員報酬は給与として源泉徴収の対象になるためです。期限は事務所を設けた日から1か月以内。役員報酬を0円にして誰にも給与を払わない場合は、法人設立届出書の該当欄を「無」にして、この届出は見送って構いません。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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