企業主導型保育園と認可保育園は何が違うのか|働く側から見て何が変わるのか


この記事のポイント
- ✓企業主導型保育園と認可保育園の違いを
- ✓働く側の視点で整理しました
- ✓現場で何が変わるのかと求人票の確認ポイントを具体的に解説します
「企業主導型の求人を見つけたんですけど、認可と何が違うんでしょうか」。このご相談、本当によくいただきます。
制度の説明ならインターネットにいくらでも出てきます。でも、みなさんが知りたいのはそこではないですよね。その園に入ったら、自分の1日がどう変わるのか。それが知りたいのだと思います。
この記事では、制度の違いが現場のどこに出るのかを、働く側の目線だけで書いていきます。大丈夫ですよ。仕組みが分かれば、求人票の読み方も、面接で聞くべきことも、はっきりします。
そもそも成り立ちがまったく違う2つの園
まず土台の話をさせてください。ここを飛ばすと、あとの話がつながらないんです。
認可保育園は、児童福祉法に基づいて都道府県知事などの認可を受けた施設です。設備も職員配置も国と自治体が定めた基準を満たしていて、運営費は公定価格という国が決めた単価にもとづいて自治体から支払われます。入園する子どもは、保護者が自治体に申し込み、自治体が点数をつけて決めます。園が誰を受け入れるかを自分で決めることはできません。
企業主導型保育園は、2016年度に始まった内閣府の企業主導型保育事業によって生まれた園です。財源は、厚生年金保険の適用事業所が納めている事業主拠出金。従業員のための保育所を企業が自前で作りやすくするために、整備費と運営費を助成する仕組みとして設計されました。
ここが大事なのですが、企業主導型は制度上は認可外保育施設です。ただし、認可と同等の水準の助成を受け、認可に近い基準が課されています。つまり「認可外だから質が低い」という単純な話ではないんです。
こんなふうに書かれている園もあります。
「企業主導型」という言葉だけ聞くと不安に感じるかもしれません。 でも、中身は認可保育園と同等の基準を満たした、むしろ柔軟性の高い保育園です。 出典: yusui.ed.jp
この「柔軟性の高い」という言葉が、働く側にとっては両刃です。柔軟だから、企業のニーズに合わせて夜間や土日に開けられる。柔軟だから、シフトが読みにくい園もある。同じ性質が、良い方にも大変な方にも出ます。
そしてもう1つ。認可は自治体の認可、企業主導型は実施機関である公益財団法人児童育成協会への申請という形で、審査する主体も指導監査をする主体も違います。何か困ったときに、どこへ相談が届くのかが変わるということです。
誰が入園者を決めるか。ここが働き方の分かれ道
制度の違いで、現場にいちばん大きく効いてくるのが「定員の埋まり方」です。
認可保育園は、自治体が利用調整をします。園は待っていれば、原則として定員まで子どもが割り振られます。都市部なら、むしろ定員いっぱいで動くのが普通です。
企業主導型は違います。従業員枠と地域枠の2つで定員を構成し、園が自分で利用者を集めます。従業員枠は設置企業や共同利用契約を結んだ企業の社員の子ども。地域枠は、地域の一般家庭の子どもで、定員の50%までと定められています。
つまり、園は営業をして定員を埋めなければならない立場にあるということです。実際、地域枠を積極的に受け入れている園は多くあります。
ゆうすい保育園もヴェゼルワークス株式会社の社員枠と並行して、地域のご家庭の入園を広く受け入れています。 (実際、当園の在園児の多くは地域のご家庭です。) 出典: yusui.ed.jp
働く側にとって、この差は想像以上に大きいです。
定員が埋まらないと、運営費の助成は在籍児童数に応じて減ります。収入が落ちれば、まず削られるのは人件費と備品です。パートの募集を止める、行事を縮小する、正職員の賞与を下げる。こうした調整が、定員割れの翌年度あたりから静かに始まります。
逆に、定員が安定して埋まっている企業主導型は、認可と変わらない安定感があります。ですから見学のときは、園の雰囲気よりも先に、いま何人在籍していて定員は何人か、この1点を聞いてください。充足率9割を超えているかどうかが、ひとつの目安になります。
ここで不安になった方へ。企業主導型が危ない、という話ではありません。認可でも、地方では少子化で定員割れが進んでいる園がたくさんあります。見るべきは制度の名前ではなく、その園の在籍数です。
保育士の割合が違う。これが日々の負担に直結する
働く側の実感として、いちばん差が出るのが職員の構成です。
認可保育園は、保育に従事する職員は原則として保育士でなければなりません。年齢ごとの配置基準も決まっていて、0歳児はおおむね3人に1人、1歳児と2歳児は6人に1人といった形です。
企業主導型は、保育従事者の数そのものは認可の基準に1人を加えた人数が求められます。ここだけ見ると手厚いのですが、内訳が違います。制度開始当初は、保育従事者のうち保育士は半数以上いればよいとされていました。残りは子育て支援員研修を修了した人などで構成できる設計です。その後、保育の質を確保する観点から、新規に助成を受ける施設については保育士の割合を引き上げる方向で見直しが進められてきました。園によって適用される基準が違うので、応募先が何割の体制なのかは必ず確認してください。
この「保育士が半分」という状態が現場で何を生むか。想像してみてください。
書類が書ける人が限られます。指導計画、児童票、日誌、アレルギー対応の献立確認、発達の記録。これらは有資格者に集まります。
判断を求められる場面も同じです。熱が何度で連絡するか、誤飲の疑いがあるときにどう動くか、かみつきをどう保護者に伝えるか。無資格の同僚は判断できませんから、有資格者を呼びます。
つまり、企業主導型で保育士として働くということは、保育をしながら同時に教える側、判断する側に立つということです。これをやりがいと感じる方もいますし、荷が重いと感じる方もいます。どちらが正しいという話ではありません。自分がどちらのタイプかを、先に知っておくことが大事なんです。
私が相談を受けた中で多かったのは、経験3年ほどで企業主導型に移り、いきなり「リーダー」と呼ばれて戸惑った方のケースです。認可の大きな園なら中堅の位置にいたはずの経験年数で、最年長の有資格者になってしまう。これは本人の力不足ではなく、構造の問題です。
1日の流れと開所時間の違い
認可保育園の開所時間は、保育標準時間の11時間を基本に、その前後に延長保育が付く形が一般的です。朝7時に開けて夜18時までが標準、延長で19時や20時まで。シフトは早番、中番、遅番の3つに分かれ、ローテーションで回ります。
企業主導型は、設置した企業の働き方に合わせて時間を設計できます。ここが柔軟性の正体です。
病院が設置した園なら、夜勤の看護師のために24時間に近い受け入れをしていることがあります。飲食やサービス業が母体なら、土日祝日が開所日です。IT企業が母体なら、逆に土日は完全に閉まっていて、平日も19時で締まることがあります。
つまり、企業主導型は園ごとの差が非常に大きい。「企業主導型はこういう働き方」という一般化がほとんど意味を持たないんです。
もう1つの特徴は規模です。企業主導型には定員19人以下の小規模な園がたくさんあります。ビルの1フロア、園庭なし、クラスは2つか3つ。
小規模だと、1日はこう動きます。朝、受け入れをしながら検温と視診。9時30分ごろにおやつと朝の会。天気がよければ近くの公園まで散歩に出ます。園庭がないので、散歩は毎日の必須業務です。11時台に給食、12時から午睡、その間に連絡帳と書類。15時におやつ、その後は順次お迎え。
行事は小さくなります。運動会を近くの体育館を借りて2時間で終える、発表会は保護者を入れ替え制にする。準備の負担は認可の大規模園よりずっと軽い。ここを魅力に感じて移ってくる方は多いです。
その代わり、逃げ場がありません。職員が6人しかいない園で、誰か1人と合わないと、毎日その人と同じ部屋にいることになります。人間関係の濃さは、小規模の宿命です。
給与とキャリアの積み上がり方はどう違うか
お金の話も、避けずにしておきますね。ここを曖昧にしたまま転職すると、あとで苦しくなります。
認可保育園の人件費は、公定価格の中に組み込まれています。その中に処遇改善等加算という仕組みがあって、勤続年数に応じた加算と、キャリアアップ研修の受講と役職に紐づいた加算の2種類があります。副主任保育士や専門リーダーといった役職に就くと、月額で上乗せが付く設計です。
企業主導型にも、職員の処遇を改善するための加算は用意されています。ただ、運営費の算定方法が認可と異なり、また園の裁量の幅も広いので、同じ経験年数でも園によって差が出やすいのが実情です。
ですから、求人票の月給を額面だけで比べないでください。確認したいのは3つです。
1つ目、基本給がいくらで、手当がいくらか。処遇改善の手当を含んだ金額を月給として表示している園があります。
2つ目、賞与の算定根拠。「年2回」とだけ書かれている場合、実績が何か月分だったのかを聞いてください。
3つ目、キャリアアップ研修を受けられるか。企業主導型の園でも、都道府県のキャリアアップ研修を受講することはできます。ただし、園が勤務扱いで行かせてくれるかどうかは園次第です。これは将来、認可に戻るときにも効いてくる資産になります。
そして、退職金制度の有無も見てください。社会福祉法人が運営する認可園では、福祉医療機構の退職手当共済に加入していることがあります。株式会社が運営する企業主導型では、中小企業退職金共済か、制度なしか、どちらかが多い印象です。
書類作成や保護者への報告文を書く機会が増える職場を選ぶなら、文章の型を一度整理しておくと負担がぐっと減ります。報告書の基本構成と、敬語の使い分けを押さえるだけでも、連絡帳やお便りを書く時間は短くなります。
監査と安定性。長く働けるかを見極める視点
認可保育園は、自治体による指導監査を定期的に受けます。設備、職員配置、給食、事故防止、書類の整備まで、細かく見られます。手間ではありますが、外から定期的にチェックが入るということは、園が極端におかしな状態になりにくいということでもあります。
企業主導型は、実施機関による指導や監査に加えて、認可外保育施設としての指導監督基準にもとづく自治体の立入調査を受けます。二重に見られている形です。
ただ、ここで注意してほしいのは、基準を満たしているかどうかと、現場が働きやすいかどうかは別だということです。ある施設の説明にこう書かれていました。
実際には「決まりよりも力をいれて対応している項目」、「軽微な違反などが指摘されている項目」、「特別な事情を認められている項目」などがあるので、利用者みずからの目で確認することが大切になります。 出典: kumakoguma.com
これは保護者向けに書かれた文章ですが、働く側にもそのまま当てはまります。書類上は基準を満たしていても、ぎりぎりで回している園と、余裕を持って回している園があります。自分の目で見に行くしかありません。
安定性についても、正直に書きます。企業主導型は制度が比較的新しく、助成の要件が見直されてきた経緯があります。定員割れや運営体制の不備によって助成が取り消されたり、母体企業の事業の都合で閉園したりする例が報じられてきました。
だからといって企業主導型を避けるべきだ、とは思いません。見るべきは、その園がどれだけ続いているかです。開園から5年以上経っていて、在籍児童数が安定していて、職員の平均勤続年数がある程度あるなら、制度上の分類よりもずっと信頼できる材料になります。
面接で「職員の方は平均してどれくらい勤めていらっしゃいますか」と聞いてみてください。答えに詰まる園は、その時点で分かります。
給食と安全管理の体制が、保育士の手数を変える
制度の話でもう1つ、現場に効いてくるのに見落とされやすいのが、給食と子どもの安全を誰がどう支えているかです。ここは求人票にほとんど書かれないのに、毎日の手数を大きく左右します。
給食を園の中で作っているか
認可保育園は、原則として園の中の調理室で給食を作ることが求められています。3歳以上の子どもについては条件付きで外部からの搬入が認められていますが、0歳から2歳の子どもの給食は園内で調理するのが基本です。調理員や栄養士が園に常駐していて、離乳食の段階ごとの形状や、アレルギー対応の除去食も調理室で作り分けます。
企業主導型では、調理室を持って園内で作っている園もあれば、外部から給食を運び入れている園もあります。ビルの1フロアに入っている小規模な園では、調理の設備を置く広さがないこともあるからです。
働く側にとっての違いは、配膳の場面に出ます。園内で調理している場合、調理員が形状を整えたうえで配膳台に並べ、除去食には名札が付いて出てきます。外部から運ばれてくる場合は、届いた給食を保育室で取り分ける作業、刻み直す作業、温度の確認が保育士の手に回ってくることがあります。アレルギーのある子どもの食事を取り違えない確認も、保育士が中心になって行います。求人票に「調理員」「栄養士」の職種が並んでいるか、面接で「給食はどこで作っていますか」と聞いてください。
午睡中の見守りを、何人で回しているか
0歳から2歳の子どもの午睡中は、呼吸や体の向きを一定の間隔で確認し、記録を残すことが事故防止の指針で示されています。0歳児ならおおむね5分ごと、1歳以上でも10分ごとが目安とされていて、この時間帯は子どもから目を離せません。
ここで、先ほどの「午睡中に書類の時間があるか」という話につながります。職員が十分にいる園なら、午睡の見守りを交代で担当し、見守りから外れた人が連絡帳や指導計画を書きます。人数がぎりぎりの園では、見守りをしながら書類を書くことになり、どちらかがおろそかになりやすい。小規模な企業主導型では、午睡の時間帯に休憩を取る職員も重なるので、実際に何人で見守っているのかを聞いておく価値があります。
看護師がいるか
0歳児を受け入れる認可保育園には、看護師を配置している園が多くあります。体調の変化の判断や、けがの手当ての判断を看護師に相談できると、保育士が抱える判断はかなり減ります。企業主導型で看護師を置いていない園では、発熱時の連絡の判断も保育士が担います。病院が設置した企業主導型では、母体の病院と連携して相談できる体制を持つ園もあります。
この3つを確認すると、同じ「保育士」という職種でも、保育以外にどれだけの手数がかかる職場なのかが見えてきます。
給与の水準を比べるときは、公的な統計をもとに年齢や経験年数ごとの分布をまとめた保育士の年収・単価相場と照らし合わせてください。手数の多い職場なのに給与が相場の下側にある場合は、その差をどう考えるかを先に決めておくと、入職後に迷わずに済みます。
求人票と見学で確認したい項目を整理する
ここまでの話を、実際に使えるチェックリストにまとめます。
在籍数と定員。企業主導型なら従業員枠と地域枠の内訳も。充足率が読めれば、その園の経営状態がおおよそ分かります。
保育士の割合。保育従事者のうち、有資格者が何人いるか。クラスに1人なのか、2人なのか。ここで日々の負担が決まります。
開所時間と閉所日。土日の開所があるか、年末年始の扱いはどうか。母体企業の業種を調べておくと、だいたい予想がつきます。
シフトの組み方。早番と遅番が何時から何時か、月に何回ずつ回ってくるか。小規模園ほど、1人が抜けたときの影響が大きくなります。
書類の量と持ち帰りの有無。指導計画を誰が書いているか、ノンコンタクトタイムが確保されているか。午睡中に書類の時間があるかどうかは、必ず聞いてください。
研修と資格取得の支援。キャリアアップ研修に勤務扱いで行けるか、費用は誰が負担するか。
給与の内訳と賞与の実績。基本給、手当、賞与の月数を分解して確認する。
退職金制度の有無。
そして最後に、園長や主任がどれくらいその園にいるか。管理職が頻繁に入れ替わっている園は、その理由がどこかにあります。
見学は、できれば午前中に行ってください。午睡中の静かな時間帯だけを見ると、いちばん忙しい時間の様子が分かりません。登園から散歩に出るまでの2時間を見せてもらえるようお願いするのが理想です。
見学のときに、目で確かめてほしいことも挙げておきます。
職員同士が声をかけ合っているか。子どもの名前を呼ぶときの声の高さはどうか。子どもが転んだとき、いちばん近い大人がすぐに動いたか。この3つは、マニュアルでは作れない部分です。園の空気がそのまま出ます。
それから、掲示物の日付を見てください。先月のお知らせが貼りっぱなしになっている園は、細かいところに手が回っていない可能性があります。逆に、子どもの作品が丁寧に飾られていて、写真に日付とひとことが添えられている園は、記録を残す文化があるということです。
トイレと沐浴のスペースも見せてもらってください。ここは見学者に見せたがらない園もありますが、遠慮せず頼んでいいところです。狭い動線に無理やり設備を詰め込んでいると、日々のオムツ替えや着替えが、そのまま腰への負担になります。
最後に、職員の表情です。すれ違ったときに目が合うか。これは感覚的な話に聞こえるかもしれませんが、疲弊した現場では大人同士が目を合わせなくなります。長く相談を受けてきて、この観察が外れたことはあまりありません。
保護者との距離が変わる。ここに戸惑う人が多い
制度の違いから生まれる差で、意外と語られないのが保護者との関係です。ここ、移ってから気づく方が多いんです。
認可保育園の保護者は、自治体の利用調整を経て入園してきます。第1希望に入れた家庭もあれば、第5希望でようやく決まった家庭もある。園を選んだというより、割り当てられたという感覚を持っている保護者が一定数います。
企業主導型は、保護者が自分で園を見つけて、直接申し込んで契約します。従業員枠なら勤務先が紹介した園、地域枠なら自分で探した園です。つまり、選んで入ってきている。
この違いが、日々のやりとりに出ます。
選んで入った保護者は、期待値が高いです。ホームページや見学で見たものと、実際のサービスを照らし合わせます。英語のプログラムがあると聞いていた、写真の共有が毎日あると思っていた、といった話が出てきます。
一方で、関係は作りやすい面もあります。園を気に入って選んだ方が多いので、行事への協力が得られやすく、信頼が積み上がるのも早い。
もう1つの差が、従業員枠の保護者との距離感です。設置企業の社員の子どもを預かるということは、保護者と園の運営者が同じ会社の中にいるということです。保護者が本社の役職者だった、というケースも実際にあります。
これは働く側にとって、少し気を遣う構造です。クレームが園長を飛び越えて本社に届くことがある。逆に、社内の福利厚生として位置づけられているので、園への理解が得られやすいこともある。良し悪しではなく、認可にはない力学がある、ということです。
対処としては、記録をきちんと残すこと。これに尽きます。けがの経緯、伝えた内容、伝えた時刻、伝えた相手。この4点を日誌に残す習慣があるだけで、あとから事実関係を巡って苦しむことがなくなります。
私が相談を受けた方で、保護者対応が怖くなってしまった方がいました。話を伺うと、こじれた原因はいつも「言った、言わない」でした。記録は自分を守る道具です。丁寧に残してくださいね。
企業主導型から認可へ、認可から企業主導型へ移るとき
キャリアの行き来についても触れておきます。片道切符ではありませんから、安心してください。
企業主導型から認可保育園へ移る場合。経験年数は保育士としての実務経験として扱われるのが一般的です。認可外保育施設での勤務も、保育士としての経験に算入されます。ただし、園によって評価の仕方に差があるので、面接では自分が担当した年齢、クラス人数、書類の範囲を具体的に説明できるようにしておいてください。
認可の採用側が気にするのは、大人数のクラス運営の経験です。定員19人の園から120人規模の園に移ると、同じ1歳児クラスでも人数が倍以上になります。ここを不安視されることがあるので、「散歩の引率で何人を何人体制で見ていたか」といった具体を出せると強いです。
逆に、認可から企業主導型へ移る場合。こちらは歓迎されやすい傾向があります。有資格者の比率を上げたい園が多く、認可での経験がそのまま指導計画や書類の整備に活きるからです。
ただ、ここで気をつけてほしいことがあります。認可の大きな園にいたときのやり方を、そのまま小規模に持ち込まないことです。
認可の園では、役割が細かく分かれています。給食は栄養士、保健は看護師、事務は事務員。企業主導型の小規模園では、それらを保育士が兼ねていることが珍しくありません。「これは私の仕事ではない」という線の引き方が通じにくい環境です。
逆に言えば、保育以外の業務まで経験できるということでもあります。献立の確認、備品の発注、保護者への配布物の作成、ホームページの更新まで任される園もあります。将来、小規模の園を自分で立ち上げたい方や、園長を目指す方にとっては、この幅広さが財産になります。
どちらへ移るにしても、在職中に手元へ残しておくべきものがあります。担当した年齢とクラス人数を年度ごとに書き出したもの、受講した研修の修了証、自分が作成した指導計画の様式です。園の書類は持ち出せませんから、自分の職務経歴として整理したメモを作っておいてください。転職活動のときに、記憶をたどる必要がなくなります。
選ぶ前に、自分の条件を先に決めておく
ここまで制度と現場の違いを書いてきましたが、最後にいちばん大切なことをお伝えします。
園を比べる前に、自分が譲れない条件を決めてください。
通勤時間なのか、土日の休みなのか、書類の少なさなのか、有資格者の同僚がいることなのか、給与の額なのか。全部を満たす園はありません。優先順位が決まっていないまま見学を重ねると、どの園も一長一短に見えて、決められなくなります。
こういう相談、本当によくあるんです。「どの園がいいと思いますか」と聞かれるのですが、私にはお答えできません。その方が何を大事にしているかによって、答えが逆になるからです。
ここからは、在宅の仕事とフリーランスの市場を20年見てきた運営者としての観察を書きます。保育の現場を離れる人が増えているのではなく、現場を続けるために収入の構成を変える人が増えている、というのが実感です。週4日の勤務にして、空いた1日で在宅の仕事を受ける。この形を取っている人が、結果として現場に長く残っています。
もう1つ、運営者として見てきた限りでは、仲介に手数料を取られない直接の取引に移った人ほど、同じ作業量でも手元に残る額が厚くなります。依頼する側も同じ予算でより多く頼めるので、双方にとって得になる。副収入を考えるなら、この構造は知っておいて損がありません。
企業主導型と認可、どちらが良いかという問いには、答えがありません。あるのは、あなたの条件に合う園かどうかだけです。制度の名前で選ぶのをやめて、在籍数と職員構成とシフト表で選ぶ。それだけで、失敗はかなり減らせます。あなたは一人じゃありません。焦らず、見学を重ねてください。
よくある質問
Q. 企業主導型保育園は認可外だと聞きましたが、保育士資格は活かせますか?
活かせます。企業主導型は制度上は認可外保育施設ですが、認可と同等の水準の助成を受け、職員配置にも基準があります。保育士は中核の人材として扱われ、認可より有資格者の比率が低い園ではむしろ役割が重くなります。キャリアアップ研修も受講でき、認可へ戻る際の経験としても評価されます。
Q. 企業主導型の園に転職するとき、いちばん確認すべきことは何ですか?
在籍児童数と定員の充足率です。企業主導型は自分で利用者を集める仕組みのため、定員が埋まらないと運営費の助成が減り、人件費や備品に影響が出ます。充足率9割を超えているか、開園から何年経っているか、職員の平均勤続年数はどれくらいかを、見学時に必ず聞いてください。
Q. 認可保育園と企業主導型では給与にどれくらい差がありますか?
一概には言えません。認可は公定価格に処遇改善等加算が組み込まれ、勤続年数や役職に応じた上乗せの仕組みが明確です。企業主導型にも処遇を改善する加算はありますが、運営費の算定方法が異なり園の裁量も広いため差が出やすくなります。基本給と手当を分解し、賞与の実績月数まで確認してください。
Q. 小規模な企業主導型に移ると、行事の負担は減りますか?
減る傾向にあります。定員19人以下の園では運動会を近隣施設で短時間で行ったり、発表会を入れ替え制にしたりするため、準備の総量は大規模園より軽くなります。ただし職員数も少ないため、1人が欠けたときの影響が大きく、人間関係の濃さも増します。負担の種類が変わると考えてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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