医療系のコールセンターで派遣として働く|直接雇われる場合との差と、合う場面


この記事のポイント
- ✓医療系のコールセンターの派遣は
- ✓なぜ看護師でも入れるのか
- ✓3年ルールと窓口が閉じたときの扱い
医療系のコールセンターの求人を探していると、「派遣」の募集がかなりの割合を占めていることに気づきます。看護師資格を活かせる、在宅勤務可、時給2,000円台。条件だけ見ると魅力的ですが、派遣で入るのと、運営会社に直接雇われるのとで、実際に何が変わるのかは見えにくいはずです。
結論から言うと、差が出るのは「時給」よりも「窓口が終わったとき」と「その先の役割」です。派遣は入口が広く、時給の見た目も高い傾向があります。一方で、窓口の委託が終わったときの扱いと、リーダーや管理役に上がる道は、直接雇用のほうが見通しやすいという特徴があります。
この記事では、医療系のコールセンターという職場の中で、派遣というかたちで働くと何が起きるのかを、労働者派遣法の条文を確かめながら整理します。どちらが正解という話ではなく、どういう場面で派遣が合うのかを判断できる材料をそろえるのが目的です。
看護師でも、コールセンターなら派遣で働ける理由
最初に、多くの人が疑問に思う点から片づけます。「看護師の派遣は禁止されていると聞いたが、コールセンターの看護師派遣はなぜあるのか」という点です。
労働者派遣法第4条は、一部の業務への派遣を禁止しています。医療関係の業務もその中に入っていて、具体的な範囲は労働者派遣法施行令第2条で定められています。条文を読むと、看護師の業務の派遣が禁止されるのは、その業務が「病院等、助産所、オンライン診療受診施設、介護老人保健施設、介護医療院又は居宅において行われるもの」に限られています。
つまり、禁止の線は「看護師という資格」ではなく「働く場所」で引かれているということです。医療系のコールセンターの多くは、運営会社のオフィスや、在宅の自宅から電話を受けます。これは病院でも診療所でもないので、派遣で看護師を配置することができます。求人検索サイトで「完全在宅」「看護師資格×コールセンター」「時給2100円」といった派遣の募集が並んでいるのは、この構造のためです。
一方で、同じ施行令は例外も定めています。紹介予定派遣の場合や、産前産後休業・育児休業・介護休業を取っている人の代わりに入る場合、へき地の医療機関に入る場合などは、病院等であっても派遣が認められます。
ここで気をつけたいのが、病院やクリニックの中に置かれた電話窓口です。予約の受付や事務の電話であれば医療関係業務ではないので派遣で入れますが、看護師として症状の相談に応じる業務を病院の中で行う場合は、場所が「病院等」にあたる可能性があります。正直なところ、この線引きは求人票の文面だけでは判断しにくいケースがあります。迷ったら、派遣会社に就業場所の住所と業務の中身を確認し、それでも曖昧なら都道府県労働局の需給調整事業の窓口に問い合わせるのが確実です。
もう1つ押さえておきたいのは、医療系のコールセンターの派遣には、看護師資格が要らない枠も多いということです。多くの窓口は、最初に電話を取って本人確認や用件の聞き取りをする一次対応と、医療的な判断が必要な電話を受ける二次対応に分かれています。一次対応は医療関係業務ではないので、場所を問わず派遣で入れます。医療機器の問い合わせ窓口や、医療保険の支払いに関する事務と電話の取次ぎなどは、医療事務の経験者や、医療の現場にいた人が歓迎される枠です。
看護師資格を持っている人が一次対応の枠に応募することもできますが、その場合は時給が資格者の水準にならないことが多いという特徴があります。応募資格の欄に「正看護師資格必須」とあるか、「資格不問」とあるかで、自分がどちらの層に入るのかを先に確かめておくと、時給の比較を間違えずに済みます。
この仕組みを知っておくと、求人の見え方が変わります。コールセンターの看護師派遣は「グレーな抜け道」ではなく、法律の線の内側にある働き方です。そのうえで、派遣ならではの差を見ていく、という順番で考えるのが合理的です。
派遣で入ると、誰の指示で1日が動くのか
派遣という働き方の本質は、「雇っている会社」と「指示を出す会社」が別だという点にあります。労働者派遣法第2条は、労働者派遣を「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」と定義しています。
医療系のコールセンターの場合、関係者はさらに1社増えることが多いという特徴があります。整理すると、次の3層です。
・派遣元:あなたを雇い、給与を払い、社会保険に加入させる派遣会社 ・派遣先:コールセンターを運営し、日々の業務の指示を出す会社 ・委託元:その窓口の運営を運営会社に委託している保険会社、製薬会社、医療機器メーカー、自治体など
1日の流れの中で、あなたに直接指示を出すのは派遣先の現場の人です。始業前の申し送り、対応マニュアルの変更点の共有、判断に迷った電話を回す先、シフトの調整は、すべて派遣先のスーパーバイザーや看護師リーダーが担います。電話を受け、プロトコルに沿って緊急度を判断し、受診の目安を伝え、記録を残す。この仕事の中身は、直接雇われているスタッフと変わりません。
変わるのは、困ったときの相談の窓口です。時給や契約期間、有給休暇の申請、職場での人間関係のトラブルは、派遣元の営業担当に相談することになります。派遣先の現場で「この時間帯のシフトは入れない」と伝えても、契約の条件に関わる話であれば、派遣元を通して調整することになります。
そして委託元の存在は、現場のルールに影響します。対応マニュアルの中身、答えてよい範囲、記録の書き方は、委託元との契約で決まっていることが多く、派遣先の現場の判断だけでは変えられません。「この案内の仕方は患者さんにとって分かりにくいのでは」と感じても、すぐには直らない。これは派遣か直接雇用かにかかわらず、コールセンターという職場に固有の事情です。
私自身、以前いくつかの会社と仕事をしていたとき、指示を出す人と契約の相手が違う状態で、どちらに何を言えばいいのか分からず、同じ相談を2か所にしてしまったことがあります。結果として、話が二重に進んで調整に余計な時間がかかりました。派遣で入るなら、「業務の中身は派遣先に、契約と待遇は派遣元に」と最初に頭の中で線を引いておくと、無駄な行き違いが減ります。
派遣で入った最初の1か月に起きること
派遣で医療系のコールセンターに入ると、最初の1か月は直接雇用の新人とは少し違う動き方になります。時間の流れに沿って見ていきます。
就業の前に、派遣会社から就業条件の明示を受けます。労働者派遣法第34条により、派遣元は派遣しようとするとき、あらかじめ就業の条件を明示しなければなりません。この書面には、業務の内容、就業の場所、指揮命令者、派遣期間、就業日と時間、そして派遣先で3年の期間制限に抵触する最初の日などが書かれます。「抵触日」と呼ばれるこの日付は、その窓口であと何年働けるかの目安になるので、必ず確認しておきたい項目です。
初日は、派遣会社の担当者と一緒に派遣先に行くことが多いという特徴があります。入館証やシステムのIDを受け取り、個人情報の取り扱いに関する誓約書に署名します。医療系の窓口では、相談者の病歴や服薬の情報を扱うため、この誓約の範囲が広く、私物のスマートフォンを席に持ち込めない職場もあります。
そこから研修が始まります。研修を行うのは派遣先です。委託元の窓口の概要、受け付ける相談の範囲、電話と記録のシステムの使い方、緊急度を判断するプロトコル、エスカレーション(上の人に回す)の手順を学び、先輩の電話を横で聞き、模擬の電話で練習します。研修の期間や、研修中の時給が通常と違うかどうかは求人によって異なるので、事前に確認しておく必要があります。
独り立ちしてからの1日は、直接雇用のスタッフと同じです。申し送りを読み、電話を受け、プロトコルに沿って案内し、記録を残し、迷ったら回す。違いが出るのは、事務的な手続きです。勤怠の記録は派遣先の現場で確認を受けたうえで、派遣会社に提出します。シフトの希望は派遣先の現場に出しますが、契約で決めた就業日や時間を超える変更になるなら、派遣会社を通すことになります。
最初の1か月で、派遣ならではの悩みが出てくることもあります。よくあるのは、「研修で聞いた話と、派遣会社から聞いていた業務の範囲が違う」というものです。たとえば、受電だけと聞いていたのに、こちらから電話をかける架電の業務が加わっている。こういう場合は、現場で抱え込まずに、就業条件の明示の書面を手元に置いて、派遣会社の担当者に相談するのが正しい順番です。業務の範囲は契約で決まっているので、現場の判断だけで広げてよいものではありません。
正直なところ、この「言いにくいことを代わりに言ってもらえる」点は、派遣という仕組みのいちばん実用的な利点だと思います。直接雇用なら自分で上司と話さなければならないことを、派遣なら担当者を通して調整できる。職場の人間関係を壊さずに条件を守りたい人にとって、これは小さくない価値です。
時給は高く見えるが、そこに何が含まれているか
医療系のコールセンターの派遣求人は、時給の見た目が高い傾向があります。看護師向けの求人情報サイトの解説記事では、コールセンターで働く看護師の時給の目安が日勤で1,500円から2,500円、夜勤で2,000円から3,500円程度と紹介されています。派遣の求人一覧を見ても、在宅の看護師枠で時給2,100円、医療機器の問い合わせ窓口で時給1,800円といった水準が並びます。
ただ、時給を比べるときは、その時給に何が含まれているかを確かめる必要があります。
派遣労働者の待遇には、「同一労働同一賃金」の考え方が適用されます。労働者派遣法第30条の3は、派遣元に対し、派遣労働者の基本給や賞与などの待遇について、派遣先に雇われている通常の労働者の待遇との間で不合理な相違を設けてはならないと定めています。これが「派遣先均等・均衡方式」です。
一方、第30条の4は、派遣元が労働者の過半数代表などと書面で協定を結び、同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額などを基準に賃金の決め方を定めた場合は、その協定に沿って待遇を決める方式を認めています。これが「労使協定方式」です。
どちらの方式を採るかは派遣会社ごとに決まっていて、同じ労使協定方式でも、賞与や退職金に相当する分を時給に上乗せする形や、別途支給する形など、設計が異なります。つまり、時給2,000円の派遣と時給1,800円の直接雇用パートを並べたとき、前者の時給に賞与相当分や交通費が含まれているのか、別に出るのかで、実際の差は変わります。
社会保険は派遣元で加入します。加入の要件は直接雇用のパートと同じで、日本年金機構の案内では、週の所定労働時間が20時間以上、所定内賃金が月額8.8万円以上、学生でないことなどを満たし、従業員51人以上の企業に雇われている場合に対象になります。大手の派遣会社は従業員数の要件を満たしているので、週20時間を超えれば加入する前提で考えておくのが現実的です。
有給休暇も派遣元から付与されます。労働基準法第39条により、6か月継続勤務して8割以上出勤すれば発生します。ここで派遣ならではの注意点があります。同じ派遣会社で次の派遣先に切れ目なく移れば、勤続期間は通算されやすくなります。しかし、窓口が終わって次の仕事までの空白が長く空いたり、別の派遣会社に移ったりすると、勤続期間がリセットされ、有給休暇をゼロから積み直すことになりかねません。
時給の数字だけで判断するのではなく、「賞与相当分と交通費は時給に含まれているか」「窓口が終わったあと、同じ派遣会社で次を紹介してもらえる見込みはあるか」の2点を、派遣会社との面談で確かめておくことをおすすめします。
3年ルールと、窓口が閉じたときの扱い
派遣で働くうえで避けて通れないのが、期間の制限です。いわゆる「3年ルール」には、2つの種類があります。
1つ目は、個人単位の制限です。労働者派遣法第35条の3は、派遣元に対し、派遣先の事業所などにおける「組織単位ごとの業務」について、3年を超えて継続して同じ派遣労働者を派遣してはならないと定めています。医療系のコールセンターでいえば、同じ窓口のチームに同じ人が派遣で入れるのは原則3年まで、ということです。
2つ目は、事業所単位の制限です。第40条の2は、派遣先が同じ事業所で派遣を受け入れられる期間を原則3年と定めています。ただし、派遣先がその事業所の過半数労働組合などの意見を聴けば、3年を限りに延長できます。
この制限には例外があります。派遣元に期間の定めなく雇われている「無期雇用派遣労働者」や、60歳以上の人などは、制限の対象外です。つまり、同じ窓口で長く働きたいなら、派遣会社の無期雇用派遣の制度を使うという道があります。
では、3年に近づいたとき、あるいは窓口そのものがなくなったときはどうなるのか。ここで効いてくるのが、派遣元の雇用安定措置です。第30条は、同じ組織単位で継続して1年以上働く見込みがある有期雇用の派遣労働者について、派遣元が次のような措置を講じるよう努めなければならないと定めています。
・派遣先に対して、その人を直接雇用するよう依頼すること ・新しい派遣先を紹介すること ・派遣元で期間の定めなく雇用すること ・雇用の安定に役立つ教育訓練などを行うこと
そして、同じ組織単位で3年間働く見込みがある人については、この措置が「努めなければならない」から「講じなければならない」に変わります。
医療系のコールセンターで特に意識しておきたいのが、委託契約の終了です。自治体から委託された健康観察やワクチンの相談窓口は、事業の区切りで閉じます。メーカーや保険会社の窓口でも、委託先の運営会社が入れ替わることがあります。この場合、派遣先の都合で派遣契約が途中で解除されることがありますが、第29条の2により、派遣先は派遣労働者の新たな就業の機会の確保や、休業手当などの費用の負担といった措置を講じなければなりません。
正直なところ、「窓口が閉じたら次を紹介してもらえるだろう」と楽観している人は少なくありません。紹介はあくまで措置のひとつで、希望に合う仕事が出てくるとは限りません。派遣で入るなら、契約の開始時に「この窓口の委託期間はいつまでか」「終わったときに同じ職種で次の紹介が出る見込みはどのくらいか」を聞いておくことが、いちばんの備えになります。
運営会社に直接雇われる場合との差
ここまでの内容を、運営会社にパートや契約社員として直接雇われる場合と並べて整理します。
| 項目 | 派遣 | 直接雇用(パート・契約社員) |
|---|---|---|
| 雇用主 | 派遣会社 | コールセンターの運営会社 |
| 日々の指示 | 運営会社の現場 | 運営会社の現場 |
| 待遇の決め方 | 派遣先均等・均衡方式か労使協定方式 | 運営会社の正社員との均衡 |
| 契約と待遇の相談先 | 派遣会社の担当者 | 運営会社の人事・上司 |
| 同じ窓口で働ける期間 | 有期派遣は原則3年まで | 期間の制限なし(契約の更新次第) |
| 窓口が閉じたとき | 派遣会社が次の紹介など | 運営会社の別の窓口への異動など |
| リーダー・管理役への道 | 派遣のままでは限られる | 登用の制度があれば開かれている |
| 無期転換 | 派遣会社との有期契約が通算5年超 | 運営会社との有期契約が通算5年超 |
いくつか補足します。
待遇の決め方について、直接雇用のパートや契約社員には、パートタイム・有期雇用労働法第8条が適用されます。基本給や賞与などの待遇ごとに、同じ運営会社の正社員との間で不合理な相違を設けてはならない、という決まりです。派遣とは比べる相手が違う、という点を押さえておくと、待遇の差を理解しやすくなります。
無期転換は、労働契約法第18条により、同じ使用者との有期契約が通算5年を超えた人が申し込めば、期間の定めのない契約になる決まりです。派遣の場合、この「使用者」は派遣会社です。つまり、派遣でも同じ派遣会社との契約が通算5年を超えれば無期転換の申込みができます。ただし、無期になるのは派遣会社との契約であって、運営会社に直接雇われるわけではありません。
リーダーや管理役への道は、差が大きく出るところです。コールセンターのスーパーバイザーや看護師リーダーは、委託元への報告、新人の研修、クレームの最終対応を担います。これらは運営会社の社員や契約社員が担う設計になっていることが多く、派遣のままでは任されにくい傾向があります。医療系の窓口で「電話を受ける側」から「窓口を回す側」に移りたいなら、直接雇用を目指すほうが近道です。
直接雇用にも注意点はあります。運営会社に契約社員として雇われる場合、契約の更新に上限が設けられていることがあります。労働基準法施行規則第5条により、有期契約を更新する場合の基準と、通算の契約期間や更新回数に上限がある場合はその上限を、労働条件として明示しなければならないと定められています。直接雇用だから長く働けるとは限らず、この欄を読んで初めて「2年で終わる契約だった」と気づく人もいます。
また、就業の場所と業務について「変更の範囲」も明示事項に含まれています。直接雇用の場合、窓口が閉じたときに別の委託元の窓口へ移ることが、この変更の範囲として最初から書かれていることがあります。医療系の窓口から、医療と関係のない通販や金融の窓口に移る可能性がある、ということです。派遣なら業務の範囲は派遣契約で決まっているので、こうした異動は起きません。どちらが自分にとって安心かは、医療系の窓口にこだわりたいかどうかで変わります。
派遣が合う場面、直接雇用が合う場面
ここまでの差を踏まえて、どういう場面で派遣が合うのかを整理します。
派遣が合うのは、次のような場面です。
・病棟を離れて、まず電話の仕事が自分に合うか試したい ・複数の窓口を経験して、得意な分野を見つけたい ・期間限定の窓口で、区切りをつけて働きたい ・職場との条件交渉を、自分ではなく派遣会社に任せたい ・いずれ直接雇用に移ることも視野に入れて、職場を内側から見ておきたい
最後の点について、派遣の求人には「直接雇用実績あり」と書かれたものがあります。たとえば、人材派遣会社の求人一覧には次のような募集が掲載されています。
(直接雇用実績あり☆*)新宿駅から無料バスあり◎損保カスサポ/一般事務・OA事務/テレマーケティング業務(受信)/損保事務 出典: tempstaff.co.jp
この表記は、過去にその派遣先で派遣から直接雇用に切り替わった人がいる、という意味です。将来の直接雇用が約束されているわけではありませんが、派遣先に直接雇用の枠を用意する姿勢があるかどうかの目安にはなります。最初から直接雇用を前提にするなら、紹介予定派遣の求人を探すのも手です。
一方、直接雇用が合うのは、次のような場面です。
・同じ窓口で年単位で働き、専門の知識を深めたい ・スーパーバイザーや看護師リーダーなど、窓口を回す役割を目指したい ・窓口が閉じても、同じ会社の中で次の職場に移りたい ・契約の相手と指示を出す相手が同じほうが、気持ちよく働ける
どちらが得かは、時給の数字ではなく「どのくらいの期間、どういう役割で働きたいか」で決まります。1年から2年で区切るつもりなら派遣、3年以上続けて役割を広げたいなら直接雇用。この目安で考えると、判断がぶれにくくなります。
実際には、この2つを順番に組み合わせる人も少なくありません。たとえば、病棟から離れた直後は派遣で健康相談の窓口に入り、電話での判断に慣れる。1年ほど働いて、自分が得意なのは幅広い症状の相談よりも、特定の薬や機器の説明だと分かったら、メーカーの窓口に派遣で移る。そこで長く働きたいと思えたら、直接雇用の枠や紹介予定派遣を探す。こうすると、派遣の「試せる」利点と、直接雇用の「深められる」利点を、両方とも使えます。
逆に、避けたいのは、時給だけを見て窓口を短期間で次々に移ることです。窓口ごとにプロトコルもシステムも違うので、移るたびに研修からやり直しになり、経験が積み上がりにくくなります。移るなら「前の窓口で身につけたことが、次の窓口でどう使えるか」を説明できる移り方をする。これは、将来どこかで直接雇用を目指すときの面接でも、そのまま評価される視点です。
在宅の派遣で、見落としやすいこと
医療系のコールセンターの派遣には、在宅勤務の枠が目立ちます。求人検索サイトでも「研修後完全在宅勤務OK」「業務習得後時給2000円」といった看護師向けの募集が掲載されています。
【経験・資格】未経験OK!<必要なスキル>看護師職種未経験OK...<研修後完全在宅勤務OK/業務習得後時給2000円><シフト制><正看護師資格をお持ちの方へ> ヘルスケアコールセンター業務!... 出典: 求人ボックス
在宅は通勤がなく、家庭と両立しやすいのが利点です。ただ、派遣で在宅に入る場合、見落としやすい点がいくつかあります。
1つ目は、研修期間の勤務地です。「研修後完全在宅」は、研修の間は出社するという意味です。研修が数日なのか数週間なのか、その間の交通費が出るのかは、求人票に書かれていないことがあります。
2つ目は、機材と費用の負担です。会社から端末やヘッドセットが貸与されるのか、自分のパソコンを使うのか。自宅の回線を使う場合、通信費や光熱費の負担はどうなるのか。医療系の窓口では個人情報の保護のために、会社の端末以外での業務を認めないことが多く、その場合は機材の返却の決まりもあります。
3つ目は、周囲の環境の条件です。相談者の症状や病歴を話す電話なので、家族に会話が聞こえない個室を用意することが条件になっている窓口があります。子どもが帰宅している時間帯や、家族が在宅している休日にシフトを組むと、この条件を守るのが難しくなります。
4つ目は、相談のしにくさです。オフィスなら、判断に迷ったとき隣の先輩に目で合図できますが、在宅ではチャットや内線で呼び出すことになります。エスカレーションの手順が在宅向けにどう整えられているかは、研修の間に必ず確かめておきたい点です。
5つ目は、勤怠の記録です。在宅の場合、システムへのログインとログアウトの時刻で勤怠を記録する職場が多くあります。回線の不調でログインが遅れたとき、その時間がどう扱われるのかも、契約の段階で派遣会社に聞いておくと安心です。
在宅の派遣は、条件が合えば非常に働きやすい形です。だからこそ、「在宅」という一語で決めずに、研修、機材、環境、相談、勤怠の5点を一つずつ確かめてから応募することをおすすめします。
派遣会社との面談で、必ず確かめておく行
最後に、派遣会社との面談や、紹介された求人を読むときに確かめておきたい点をまとめます。医療系のコールセンターの派遣は見出しが似ているので、次の行を一つずつ埋めていくのが確実です。
・就業場所:運営会社のオフィスか、在宅か、病院の中か ・委託元の種類:健康相談、保険、医薬品、医療機器、自治体など ・担当する層:一次対応か、看護師資格が必要な二次対応か ・待遇の方式:派遣先均等・均衡方式か、労使協定方式か ・時給の中身:賞与相当分と交通費が含まれているか ・派遣期間:その窓口の委託期間と、自分の契約期間 ・窓口が閉じたとき:次の紹介の見込みと、休業中の扱い ・直接雇用:直接雇用の実績、または紹介予定派遣の枠があるか ・研修:研修期間の時給と、在宅に移る時期
労働者派遣法第34条により、派遣元は派遣労働者に対して就業条件を明示しなければなりません。上の項目の多くは、この明示の中で書面になるはずです。書面をもらったら、口頭で聞いた内容と食い違っていないかを必ず照らし合わせてください。
電話で相手の症状を聞き取り、緊急度を判断し、分かりやすい言葉で案内する経験は、派遣でも直接雇用でも同じように身につきます。看護師資格を活かした在宅での働き方の選択肢は、看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】で健康相談や医療系ライティングなどが紹介されているので、コールセンターの次を考える材料になります。
派遣の時給が高いのか低いのかを判断するには、職種全体の賃金の水準を知っておくことが欠かせません。看護師全体の平均年収や時給の相場は、看護師の年収・単価相場で公的な統計をもとに確認できます。医薬品メーカーの窓口では薬剤師の枠が別に募集されることもあり、その水準は薬剤師の年収・単価相場で比べられます。
フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、間に入る会社が多いほど、依頼する側が払う金額と働く側が受け取る金額の差は開きます。派遣という仕組みには、条件交渉や次の仕事の紹介を任せられるという価値があり、その対価として差があること自体は不自然ではありません。ただ、専門職の経験を積んだ人ほど、仲介の手数料が乗らない直接の取引を選ぶことで、同じ予算でも依頼者はより多くを頼め、受け手の手取りは厚くなる。この双方が得をする構造を、キャリアの次の段階の選択肢として知っておく価値はあります。
よくある質問
Q. 看護師が医療系のコールセンターに派遣で入るのは違法ではありませんか?
違法ではありません。労働者派遣法施行令第2条で看護師の業務の派遣が禁止されているのは、病院等、助産所、介護老人保健施設、介護医療院、居宅などで行われる場合に限られます。運営会社のオフィスや在宅で電話を受けるコールセンターはこれにあたらないため、派遣で働けます。病院の中の窓口は判断が分かれるので、就業場所を確認してください。
Q. 派遣と直接雇用では、時給はどちらが高いですか?
求人の見た目では派遣のほうが高い傾向がありますが、単純には比べられません。派遣の多くは労使協定方式で待遇を決めており、賞与相当分や交通費が時給に含まれているか、別に支給されるかは派遣会社によって異なります。時給の中身と、窓口が終わったあとの紹介の見込みまで含めて比べることをおすすめします。
Q. 同じコールセンターに派遣で何年まで働けますか?
有期雇用の派遣の場合、同じ組織単位の業務には原則3年までです。派遣会社に期間の定めなく雇われる無期雇用派遣や、60歳以上の人などは、この制限の対象外になります。3年に近づいた場合や窓口が閉じた場合は、派遣会社に直接雇用の依頼や新しい派遣先の紹介などの雇用安定措置を講じる決まりがあります。
Q. 派遣から運営会社の直接雇用に切り替わることはできますか?
可能性はあります。求人に「直接雇用実績あり」と書かれていれば、過去に切り替わった人がいる職場です。最初から直接雇用を前提にしたいなら、紹介予定派遣の求人を選ぶ方法もあります。同じ組織単位で1年以上働く見込みがある場合、派遣会社は派遣先に直接雇用を依頼するなどの措置を講じるよう努める決まりになっています。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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