防災庁の緊急要請で何が起こる?|在宅で働く人が今週やる3つ(備蓄・171・仕事のデータ)


この記事のポイント
- ✓防災庁が発足日の2026年11月2日に出した緊急要請「国民のみなさまへ」を原文から解説
- ✓何かが起きる合図ではないという大臣の説明
- ✓停電や通信障害への備え
防災庁の緊急要請で何が起こるのか。先に答えを書くと、この要請は「近く何かが起きる」という合図ではありません。2026年11月2日、防災庁は発足したその日に「事前防災徹底のための緊急要請」を出しました。国民あての文書の中身は、家具の固定、水と食料と携帯トイレの備蓄、ハザードマップの確認、非常持ち出し品、防災訓練の5つで、どれも以前から言われてきたことです。
それでも、在宅で働く人にとっては読み飛ばせない文書です。国の文書には、停電や通信の障害が起きたときの考え方が何度も出てきます。家のパソコンとWi-Fiで仕事をしている人は、停電がそのまま仕事の停止になります。この記事では、防災庁の要請の全文、大臣の記者会見録、令和8年版防災白書などの原本を読み、何が書かれているのか、在宅で働く人や副業をしている人が今週のうちに何をすればよいのかを順番に整理します。
結論として、今週やることは3つです。1つ目は3日分の水と食料の備蓄、2つ目は災害用伝言ダイヤル171とweb171を家族と試すこと、3つ目は仕事のデータの控えと取引先への連絡手段を決めておくことです。
防災庁の緊急要請とは:11月2日に出た3種類の文書
防災庁の緊急要請は、1通の文書ではありません。防災庁のサイトには、宛先の違う3種類の文書が掲載されています。
| 宛先 | 出し方 | 主な中身 |
|---|---|---|
| 国民 | 防災大臣からのメッセージ「国民のみなさまへ」 | 耐震と家具の固定、備蓄、ハザードマップ、非常持ち出し品、防災訓練 |
| 地方公共団体 | 事務次官名で都道府県知事に通知(市町村あての内容を含む) | 防災人材の育成、受援体制、避難所の環境、個別避難計画、帰宅困難者対策など8項目 |
| 各府省庁 | 防災大臣名で各府省庁の長に依頼 | 各府省庁の業務継続計画の点検、所管する企業や団体の事前防災の徹底 |
国民あての文書は「防総政第4号」として、防災大臣の細野豪志氏の名前で出ています。冒頭では、千島海溝地震、日本海溝地震、首都直下地震、南海トラフ地震、富士山噴火といった「国難級の災害」が心配されていると書いたうえで、行政だけで対応するには限界があると続けます。
しかしながら、国難級の災害では、行政だけによる対応には限界があるため、国民のみなさま一人一人が「自らの命は自らが守る」ことが必要です。みなさまがしっかり備えることで、被害を大きく減らすことができます。 出典: 防災庁「事前防災徹底のための緊急要請」
ここで出てくる「事前防災」とは、災害が起きる前にできる備えのことです。起きてから助けを待つのではなく、起きる前に家や暮らしを整えておく、という考え方を指します。
都道府県あての文書は、市町村の取り組みも含めて都道府県が点検し、市町村を支えるよう求めています。各府省庁あての文書は、それぞれの役所が自分の業務を止めない計画を見直すことに加え、所管している業界の企業や団体にも事前防災を徹底させるよう求めています。在宅で働く個人に直接関係するのは国民あての文書ですが、後で触れるとおり、各府省庁あての文書にも小さな事業者に向けた一節があります。
「何が起こる?」への答え:差し迫った危機の情報はないと大臣が説明
要請が出る前から、SNSでは「戦争が起きるのではないか」「AIによる攻撃があるのではないか」といった書き込みが広がっていました。この点は、発足前の10月30日の記者会見で、記者がそのまま大臣に質問しています。
質問によると、大臣はそれ以前から、テレビ局のYouTubeの企画や自身のXなどで、食料とトイレと水を3日分、できれば1週間分備えてほしいと呼びかけていました。そのうえで記者は、SNSで第3次世界大戦やAI攻撃への憶測と不安が広がっているとして、差し迫った危機を把握しているのかを尋ねています。
大臣の答えは次のとおりです。
御質問にあった何か、例えば戦争のような危機的な状況が生じる情報があるのかとか、また事前の災害の予知、地震の予知などの情報があるのかとか、そういった話が一部で出ているということですが、そういうことではありません。 出典: 内閣府「細野復興大臣・内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和8年10月30日」
つまり、要請の背景に戦争や地震予知の情報があるわけではありません。一方で大臣は同じ答えの中で、南海トラフ地震は30年以内に60%から90%の確率で起きるとされていること、首都直下の地震にも同じようなリスクがあることに触れ、いつ起きてもおかしくない状況だから事前の備えが大事だと述べています。
なぜ発足の日に要請を出したのか
会見で大臣は、要請を出す理由をもう1つ説明しています。防災庁ができたから国に任せておけば大丈夫だと多くの人が考えると、かえって国全体の防災の力が弱くなる、という趣旨です。国がどれだけ力を入れても、一人一人が自分で備える部分は残る。その部分を改めてお願いするのが、国民あての要請の目的だと説明しています。
自治体への要請も同じ理由で、国がやるから自治体はやらなくてよい、とならないように出すと話しています。都道府県にあえて出すのは、市町村によって力の差があり、規模の小さな町や村が大きな被害を受けたときに、都道府県が支える役割を果たせるようにするためだと述べています。
噂に振り回される必要はありませんが、「何も起きないなら何もしなくてよい」という意味でもありません。要請の中身は、いつ起きるか分からない地震に向けた、ふだんの備えの見直しです。
国民あての要請5項目を、在宅で働く人の目線で読む
ここからは、国民あての5項目を1つずつ確認します。文書の言い回しはそのまま紹介し、在宅で働く人なら何に当てはめるとよいかを添えます。
1. 家屋の耐震診断、耐震化、家具の固定
要請は、昭和56年以前に建てられた家について、耐震診断を受けるよう求めています。耐震診断とは、建物が大きな揺れにどこまで耐えられるかを専門家に調べてもらうことです。改修の費用が大きいときは、寝室やリビングなど一部だけでも手を入れて、家の中に安全な場所をつくることも考えられる、と書かれています。
家具については、言い方がはっきりしています。
大地震では、固定していない家具は必ず倒れると思ってください。家が無事でも、家具の下敷きとなり、命を失ったり、大けがをしたりすることがあります。 出典: 防災庁「事前防災徹底のための緊急要請(国民のみなさまへ)」
在宅で働く人が真っ先に見てほしいのは、仕事机のまわりです。机の後ろや横にある本棚、書類棚、プリンターを載せた棚、モニターアームを付けた机は、1日の長い時間をすごす場所のすぐそばにあります。棚を壁に固定する、重い物を下の段に移す、机の真上や背中側に背の高い家具が来ないよう配置を見直す。これだけでも、要請の1項目目に手を付けたことになります。
2. 水・食料、携帯用トイレ等の備蓄
2つ目は備蓄です。要請は、大災害ではすぐに助けが来るとは限らないとして、最低3日間、できれば1週間分の水や食料を備えるよう求めています。飲み水は、食事に使う分も含めて1人あたり1日3リットル必要だと書かれています。携帯用トイレ、ティッシュ、トイレットペーパーといった生活用品も備えておくよう求めています。
さらに、ふだん使っている物を多めに買っておき、使ったら補充する習慣を身に付けよう、とも書かれています。いわゆるローリングストックと呼ばれる方法です。特別な非常食をそろえるより、毎日食べている物の買い置きを少し多めにする方が続けやすい、という考え方です。
3. ハザードマップ、避難場所、避難経路の確認
3つ目は、ハザードマップで自分の家や職場のリスクを知ることです。ハザードマップとは、地震の揺れやすさ、津波、洪水、土砂災害などの危険がある場所を地図にしたものです。要請では「揺れやすさマップ」や「津波ハザードマップ」を例に挙げ、あわせて避難場所と避難経路を確認するよう求めています。
在宅で働く人にとっては、職場とは自宅のことです。家と職場の2か所を調べる必要はなく、自宅1か所の地図をきちんと読めば足ります。国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、住所を入れると重ねて表示できます。コワーキングスペースや取引先の事務所に通う日がある人は、その場所も一緒に確かめておくと安心です。
4. 非常持ち出し品の準備
4つ目は非常持ち出し品です。要請は、避難生活で「すぐに必要になるもの」と「ないと困るもの」を自分で考え、リュックなどに入れて玄関の近くなど持ち出しやすい場所に用意するよう求めています。
ここで大事なのは「自分で考える」という部分です。市販の防災セットだけでは、その人に必要な物が入っていないことがあります。ふだん飲んでいる薬、眼鏡、スマートフォンの充電器、モバイルバッテリーなど、自分の暮らしで欠かせない物を書き出すところから始めます。在宅で働く人なら、取引先の連絡先を書いた紙もこのリュックに入れておくと、後で触れる「仕事の連絡手段」の準備にもなります。
5. 防災訓練への参加
5つ目は地域の防災訓練です。避難、安否の確認、炊き出しや簡易トイレの利用など、避難生活を体験してみるよう呼びかけています。災害のときに近所の人と協力し合える関係を築いておこう、とも書かれています。
日中に家で仕事をしている人は、平日の昼間に地域にいる数少ない大人でもあります。地域の訓練の日程は自治体や町内会の案内で確かめられます。1回参加するだけでも、避難所の場所や近所の顔ぶれが分かります。
新しいのは「確かめる仕組み」:年末の報告と勧告
ここまで読むと、5項目の中身は以前から言われてきたことばかりだと気づきます。今回の要請で新しいのは中身よりも、やったかどうかを確かめる仕組みが付いたことです。
防災庁が公表した概要には、要請のあとの流れが書かれています。
| 対象 | 確かめ方 |
|---|---|
| 都道府県 | 市町村の分も含めて、年末に進み具合を報告 |
| 各府省庁 | 自分たちの施策を点検し、年末に進み具合を報告 |
| 企業 | 「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」などで点検 |
| 国民 | 「防災に関する世論調査」などで点検 |
そのうえで、必要に応じて再要請、勧告権の行使、予算の執行への反映を行う、とされています。勧告権とは、防災大臣が各府省庁に対して対策を改めるよう正式に求めることができる権限のことです。各府省庁あての文書には、要請に基づく実施状況について本年内に報告を求める予定であること、著しい問題がある場合には防災庁設置法に基づく勧告を行うことが明記されています。
10月30日の会見で大臣は、3種類の要請のうち権限として一番強いのは関係省庁に対する要請だと説明しています。防災庁の長は内閣総理大臣で、防災大臣が各省庁への勧告権を持つため、各省庁には非常に強い要請として受け取ってほしい、という趣旨です。
国民の側について言えば、世論調査などで備えがどこまで進んだかが見られることになります。個人が報告を求められたり、罰則があったりするわけではありません。ただ、国が数字で進み具合を追いかける対象になった、という点は押さえておくとよいでしょう。
小さな事業者への要請:停電などの「結果」から考える
在宅で働く人にとって、意外と大事なのが各府省庁あての文書です。各府省庁は、所管している企業や団体に事前防災を徹底させるよう求められており、そこで企業に伝える中身も文書に書かれています。
事業継続計画(BCP)の策定率
文書は、事業継続計画(BCP)の策定を企業に求めています。BCPとは、災害などで仕事が止まったときに、どの仕事から再開するか、誰がどう動くかを前もって決めておく計画のことです。文書によると、政府は令和17年までに大企業で100%、中堅企業で80%という策定率の目標を掲げていますが、令和7年度の調査では大企業で75.8%、中堅企業で54.8%にとどまっています。大企業でも、4社に1社ほどは計画を作っていないことになります。
BCPを作るときの考え方として、文書は3つを挙げています。1つ目は会社の中枢の機能を代わりに担う手段を確保すること、2つ目は取引先と連携してサプライチェーン全体で事業を続けること、3つ目は次の部分です。
拠点の使用不能、要員不足、停電等の結果事象に着目した対応の検討を進めていただくようお願いいたします。 出典: 防災庁「事前防災徹底のための緊急要請(各府省庁宛)」
「結果事象に着目する」とは、原因が地震か台風かサイバー攻撃かを問わず、「拠点が使えない」「人が足りない」「電気が来ない」という起きた結果ごとに対応を考えておく、という意味です。在宅で働く人に置き換えると、「家で作業できない」「自分が動けない」「停電した」の3つの場面で、それぞれどうするかを決めておく、ということになります。
中小企業と小規模事業者への一節
文書には、中小企業と小規模事業者に向けた一節があります。経済産業省の「事業継続力強化計画」の認定制度を活用して、防災と減災の事前対策に取り組むよう求めています。中小企業庁の説明によると、この制度は中小企業が作った防災と減災の事前対策の計画を経済産業大臣が認定するもので、中小企業のための取り組みやすいBCPと位置づけられています。認定を受けると、税制措置や金融支援、補助金の加点などの措置が受けられます。
文書はさらに、計画を作るのが難しい場合でも、まず自社の災害リスクを知り、棚の固定や重い物の落下防止といった基本的な対策ができているかを自分で点検するところから始めてほしい、と書いています。
ひとりで仕事をしているフリーランスや副業の人も、事業の規模でいえば小規模事業者の側にいます。認定まで取るかどうかは別として、「自分の災害リスクを知る」「仕事場の棚を固定する」という2つは今日からできます。会社としての計画の作り方は、事業継続計画(BCP)とは|作り方と小さな会社で決めることで詳しく整理しています。
サイバー攻撃による大規模停電や通信障害も「災害」として扱う
国の文書をさらにさかのぼると、在宅で働く人に関係の深い決定がもう1つあります。令和8年版防災白書のコラムには、サイバー攻撃やシステム障害で電力や通信が大規模に止まる場合の扱いが書かれています。
白書によると、政府は令和7年2月に関係する府省で連絡会議をつくり、令和7年7月に検討の結果を取りまとめて公表しました。その取りまとめの中身が次の部分です。
取りまとめでは、大規模インフラ障害が一定期間以上継続することが見込まれる場合、「災害対策基本法」上の大規模な事故により生ずる被害に該当するため、「災害」として取り扱い、「災害対策基本法」等の関係法令に基づく対応を実施することを示した。 出典: 防災庁「令和8年版 防災白書 第1部 第1章 第2節 2-12」
大規模インフラ障害とは、電力、通信、交通などの生活を支える仕組みが広い範囲で止まることです。つまり、地震や台風でなくても、サイバー攻撃などで大きな停電や通信の障害が続けば、国はそれを災害として扱い、災害のときと同じ法律の枠組みで対応する、ということです。
原因がすぐ分からず、復旧まで数日かかることも
この取りまとめの本文である「社会的影響が特に深刻な大規模インフラ障害への対応の基本的考え方について」には、想定される事態が具体的に書かれています。大規模な停電では信号が消えて交通が混乱する、高い建物のエレベーターが止まる、ポンプが止まって断水する、通信が止まる。大規模な通信障害では、クレジットカードやキャッシュレス決済が使えなくなる、宅配が遅れる、といった例が並んでいます。
そのうえで、こうした障害は発生の原因がすぐには特定されず、復旧までに数日が経過しうると書かれています。原因がサイバー攻撃だと分かっても、復旧に相当の時間がかかる可能性があるとしています(出典:内閣官房「社会的影響が特に深刻な大規模インフラ障害への対応の基本的考え方について」)。
白書によると、令和7年12月18日には内閣官房と東京都の共催で、首都圏で自然災害に起因しない大規模停電が起きたという想定の机上演習も行われました。机上演習とは、実際に人や物を動かさず、会議室で想定に沿って各機関の動きを確かめる訓練のことです。
在宅で働く人にとって、この話は「地震が来なければ大丈夫」ではないことを意味します。停電が数日続けば、家のパソコンは充電が切れたところで止まり、ルーターも動きません。キャッシュレス決済が止まれば、買い物にも現金が要ります。
10月には防災メールの配信そのものが止まった
通信にまつわる話では、2026年10月に身近な出来事もありました。自治体の防災メールの配信システムを提供する会社が不正アクセスを受け、多くの自治体で防災メールの配信が止まったり、登録したメールアドレスが漏れたおそれが出たりしました。
さいたま市の発表によると、防災行政無線の放送内容をメールで受け取れるサービスなどのシステム提供元である株式会社アルカディアのネットワークが外部から不正アクセスを受けました。10月22日時点で漏えいの可能性があるとされた情報は、防災行政無線メールの34,783件のメールアドレスなどです(出典:さいたま市「防災情報配信システムの不正アクセスに伴う個人情報漏洩の可能性発生について」)。市には、送信元のアドレスにシステム名の文字列が入った不審なメールを受け取ったという問い合わせも寄せられています。
この件について大臣は、10月16日の記者会見で次のように話しています。
この不正アクセスという、こういう事案については、これまでは総務省であるとか消防庁などにおいて対応してきたという経緯があるようですけれども、これ恐らくこれから相当頻発すると思うんです。 出典: 内閣府「細野復興大臣・内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和8年10月16日」
同じ会見で大臣は、内閣府はこれまでも、メールだけでなくテレビ、ラジオ、防災行政無線、最近はSNSなどを通じて住民に防災情報を伝えるよう自治体に周知してきたと説明しています。メールが止まっている自治体では、それ以外の方法で緊急の情報発信ができる体制を取る、とも述べています。
受け取る側の私たちにとっての教訓は、防災の連絡手段を1つに頼らないことです。防災メールに登録しているから大丈夫、ではなく、テレビ、ラジオ、自治体のSNS、スマートフォンに届く緊急速報など、複数の受け取り方を持っておきます。届いた防災メールが本物かどうかを見分ける方法は、raiden.ktaiwork.jpとは|防災メールなどの配信に使われる送信元と迷惑メールとの見分け方で解説しています。
今週やること1:3日分の水と食料(1人なら水9リットル)
ここからは、在宅で働く人が今週のうちにやることを3つに絞って説明します。1つ目は備蓄です。
要請が求めるのは、最低3日間、できれば1週間分の水と食料です。飲み水は1人1日3リットルなので、3日なら1人9リットルになります。2リットルのペットボトルなら5本で10リットルになり、9リットルを上回ります。
| 人数 | 3日分の飲み水 | 1週間分の飲み水 |
|---|---|---|
| 1人 | 9リットル | 21リットル |
| 2人 | 18リットル | 42リットル |
| 3人 | 27リットル | 63リットル |
| 4人 | 36リットル | 84リットル |
表の数字は、要請にある1人1日3リットルをそのまま掛けたものです。首相官邸の「災害への備え」のページにも、飲料水は3日分で1人1日3リットルが目安と書かれています。同じページには、飲み水とは別に、トイレを流すための生活用水も必要だという注意があります。水道水を入れたポリタンクを用意する、お風呂の水を張っておくといった方法が紹介されています(出典:首相官邸「災害への備え 事前にできること」)。
食料は、要請にもあるとおり、ふだん食べている物を多めに買い、食べたら買い足す方法が続けやすいです。週に1回の買い物で、水を1ケース、レトルト食品や缶詰を数日分多めに買う。これを今週から始めれば、来週には最低限の3日分がそろいます。携帯トイレも、食料と同じくらい大事です。10月30日の会見で大臣は、災害用トイレについて、今度出す要請の中でも最優先事項だと思っていると話しています。
在宅で働く人は、ここにもう1つ加えてください。停電に備えた電源です。スマートフォンとノートパソコンを充電できるモバイルバッテリーがあれば、停電の初日に取引先へ状況を伝えるくらいはできます。ふだんから充電しておき、使ったら充電し直す。食料と同じく、使いながら備える考え方です。
今週やること2:171とweb171を家族と試す
2つ目は、電話がつながりにくいときの連絡手段です。総務省の資料によると、東日本大震災の直後は、携帯電話事業者によっては最大で平常時の50倍以上の通話が一時的に集中しました(出典:総務省「災害発生時の安否確認における『災害用伝言サービス』の活用」)。通話が集中すると回線が混み合い、つながりにくくなります。そこで使うのが災害用伝言サービスです。
災害用伝言ダイヤル171の使い方
災害用伝言ダイヤル171は、声で伝言を残すサービスです。局番なしの171に電話をかけ、ガイダンスに従って、録音するなら1、再生するなら2を押します。NTT東日本の説明では、主な条件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 伝言の長さ | 1伝言あたり30秒以内 |
| 伝言の数 | 電話番号あたり1から20伝言(提供時に知らせる) |
| 料金 | NTT東日本とNTT西日本の電話から録音や再生をする場合、通話料は無料。他社の電話や携帯電話からは各社に確認 |
(出典:NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)概要とご提供のしくみ」)
伝言は、自分の電話番号にひもづけて残します。家族は、その電話番号を入力して伝言を聞きます。固定電話の番号は市外局番から入れる必要があります。
災害用伝言板web171の使い方
web171は、スマートフォンやパソコンから文字で伝言を残すサービスです。NTT東日本の説明では、伝言は1伝言あたり100文字以下で、1つの電話番号に最大20件まで、保存期間は最大6か月です。安否情報の登録や確認にかかる利用料は無料ですが、インターネットの接続費用などは別にかかります(出典:NTT東日本「災害用伝言板(web171)サービスのしくみ」)。
体験利用の日を予定に入れる
171もweb171も、ふだんは使えませんが、体験利用の日があります。
・毎月1日と15日
・正月三が日(1月1日から3日)
・防災週間(8月30日から9月5日)
・防災とボランティア週間(1月15日から21日)
(出典:NTT西日本「体験利用のご案内」)
今週やることは、次の体験利用の日をカレンダーに入れて、家族と「誰の電話番号に伝言を残すか」を決めておくことです。離れて暮らす親や、仕事で外に出ている家族と一度試しておくと、いざというときに迷いません。
公衆無線LAN「00000JAPAN」も覚えておく
もう1つ覚えておきたいのが、災害用の公衆無線LAN「00000JAPAN(ファイブゼロ・ジャパン)」です。大きな災害のときなどに、被災地で誰でも使えるよう開放されることがあるWi-Fiです。携帯の回線がつながりにくいときの、もう1つの道になります。
ただし、運営する無線LANビジネス推進連絡会は、誰でも使える利便性を優先しているため通信の暗号化などのセキュリティ対策をしていないと説明しています。通信障害のときに発動する場合も同じだとしています。安否確認や情報収集などの最小限の利用にとどめ、IDやパスワードなどの入力や金融のサービスに使う場合は注意するよう呼びかけています(出典:無線LANビジネス推進連絡会「00000JAPAN利用者の皆様へ」)。仕事のアカウントにログインするのは、できるだけ避けた方が安全です。
今週やること3:仕事のデータの控えと、取引先への連絡手段
3つ目は、在宅で働く人ならではの備えです。停電や通信の障害が何日も続くと、家のパソコンだけに入っている仕事はそこで止まります。
大事なファイルは家の外にも控えを残す
まず、仕事のファイルが家のパソコン1台にしか保存されていない状態をなくします。クラウドのストレージに同期する、外付けのドライブにも控えを残し、そのドライブを家とは別の場所に保管する、といった方法があります。家が被災すれば、家の中にある控えも同時に使えなくなるおそれがあるため、少なくとも1つは家の外に控えを持っておくのが基本です。写真や書類の控えの残し方は、写真のバックアップ方法|スマホとパソコンで二重に残すも参考になります。
取引先の連絡先を紙とスマートフォンに控える
次に、取引先の連絡先です。メールの受信箱やチャットツールの中にしか連絡先がないと、パソコンが使えない間は誰にも連絡できません。主な取引先の担当者名、電話番号、メールアドレスを紙に書き出して非常持ち出し品のリュックに入れ、スマートフォンの連絡先にも登録しておきます。
納期が近い仕事の「止まったときの連絡」を決める
納期が近い仕事を抱えているなら、仕事が止まったときに、誰に、どの手段で、何を知らせるかを決めておきます。例えば「停電で作業できない日が出たら、その日のうちに電話かショートメッセージで担当者に知らせ、復旧の見込みと受け渡し済みのファイルの場所を伝える」といった具合です。止まってから考えると、連絡そのものができないことがあります。
継続的に仕事を受けている相手とは、災害のときの連絡方法を事前に話しておくのも1つの方法です。相手にとっても、外注先が連絡もなく止まるのが一番困ります。先に決めておけば、相手も代わりの段取りを組みやすくなります。会社側の安否確認の仕組みについては、安否確認の方法|災害時に社員の無事を確かめる仕組みで整理しています。
ログインの守りも一緒に見直す
データの控えと一緒に見直したいのが、アカウントの守りです。内閣官房の国家サイバー統括室は、2026年10月9日に「不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえた対応について」という文書を出しました。個人情報を含むデータが不正アクセスで盗まれる事案を複数確認しているとして、事業者に対策の徹底を求めています。アカウントの管理と認証については、次の点を挙げています。
・多要素認証(MFA)を導入する
・推測されやすいパスワードの使用を禁止する
・管理者アカウントの利用者とアクセス権を必要最小限にする
・退職者や異動者、使われていないアカウントなど、不要なアカウントを速やかに無効にする
(出典:国家サイバー統括室「不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえた対応について」)
多要素認証とは、パスワードに加えて、スマートフォンに届く確認コードや指紋などもう1つの方法で本人を確かめる仕組みのことです。この文書は大量の個人情報を扱う事業者向けですが、個人で仕事を受ける人にも当てはまる中身です。クラウドのストレージ、メール、取引先とやりとりするチャットツールなど、仕事に使うアカウントで多要素認証が有効になっているかを確かめておきます。
同じ文書は、委託先を含めたサプライチェーン全体で安全を確保する考え方も示しています。攻撃者は防御が弱い委託先を足掛かりにすることがある、という指摘です。在宅で仕事を受ける人は、発注する会社から見れば委託先の側にいます。取引先から預かったデータを守ることは、自分の仕事を守ることでもあります。在宅で仕事を受ける人向けの具体的な対策は、テレワークのセキュリティガイドラインとは|在宅で仕事を受ける人が今日から守る13の対策にまとめています。
在宅で働く人の今週の確認表
ここまでの内容を、今週のうちに確かめる項目として一覧にします。
| やること | 目安 | 確かめる場所 |
|---|---|---|
| 仕事机のまわりの棚を固定する | 背の高い家具から | 自宅 |
| 飲み水をそろえる | 1人3日で9リットル | 首相官邸「災害への備え」 |
| 生活用水を用意する | ポリタンクやお風呂の水 | 首相官邸「災害への備え」 |
| 携帯トイレをそろえる | 食料と同じく3日分から | 防災庁の要請 |
| 自宅のハザードマップを見る | 揺れやすさと浸水 | ハザードマップポータルサイト |
| 171とweb171の体験日を予定に入れる | 毎月1日と15日 | NTT東日本・西日本 |
| 防災の情報の受け取り方を複数にする | テレビ、ラジオ、自治体のSNSなど | 自治体のサイト |
| 仕事のファイルの控えを家の外に残す | 少なくとも1か所 | クラウドや外付けドライブ |
| 取引先の連絡先を紙に書き出す | 主な取引先から | 非常持ち出し品のリュック |
| 仕事のアカウントの多要素認証を確かめる | メール、ストレージ、チャット | 各サービスの設定画面 |
全部を1日で終える必要はありません。今週は水と携帯トイレの買い物、体験日の予定、取引先の連絡先の書き出しの3つだけでも十分な一歩です。
在宅の仕事を止めないという視点で備える
防災庁の緊急要請は、何かが起きる合図ではなく、いつ起きてもよいように備えを見直すための呼びかけです。中身は昔から言われてきたことですが、今回は年末の報告と勧告という確かめる仕組みが付き、停電や通信の障害を災害として扱う国の考え方とも結び付いています。
在宅で働く人にとって、災害への備えは仕事を続けるための備えでもあります。会社に勤めていれば会社が用意してくれる非常用の電源、データの控え、取引先への連絡も、ひとりで働く人は自分で用意するしかありません。逆にいえば、この3つを整えておけば、災害のあとに仕事へ戻るまでの時間を短くできます。
在宅でできる仕事の中には、場所を選ばずに続けやすいものもあります。例えばオンライン秘書・アシスタントのお仕事やカスタマーサポート・事務全般のお仕事は、パソコンと通信さえ戻ればどこからでも再開しやすい働き方です。文章を書く仕事の収入の目安はライター・編集者の年収・単価相場で確かめられます。働き方を選ぶときに、災害のあとでも続けやすいかという視点を1つ加えておくと、備えと仕事選びがつながります。
よくある質問
Q. 防災庁の緊急要請は、近く大きな災害が起きるという意味ですか?
そうではありません。2026年10月30日の記者会見で細野大臣は、戦争のような危機の情報や地震の予知の情報があるわけではないと答えています。ただし、南海トラフ地震は30年以内に60%から90%の確率で起きるとされ、首都直下の地震にも同じようなリスクがあるため、いつ起きてもよいように備えを見直してほしい、というのが要請の趣旨です。
Q. 国民あての要請に従わないと罰則はありますか?
国民あての要請は防災大臣からのメッセージとして出されたもので、個人に報告を求めたり罰則を設けたりするものではありません。国は「防災に関する世論調査」などで国民の備えがどこまで進んだかを点検するとしています。年末に進み具合の報告を求められるのは都道府県と各府省庁で、各府省庁には必要に応じて勧告が行われます。
Q. 備蓄の水は1人あたりどれくらい必要ですか?
要請では、飲み水は食事に使う分も含めて1人1日3リットル必要としています。最低3日間なら1人9リットル、1週間なら21リットルです。首相官邸のページでは、飲み水とは別にトイレを流すための生活用水も必要だとして、ポリタンクに水道水を入れておく、お風呂の水を張っておくといった方法を紹介しています。
Q. 災害用伝言ダイヤル171はいつ練習できますか?
毎月1日と15日、正月三が日(1月1日から3日)、防災週間(8月30日から9月5日)、防災とボランティア週間(1月15日から21日)に体験利用ができます。web171も同じ日に試せます。ただし、災害が起きているときは体験利用ができない場合があります。家族と、誰の電話番号に伝言を残すかを決めてから試しておくと安心です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
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