会社を作ったあとの社会保険の加入手続き|出す書類と行き先

@SOHO編集部
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会社を作ったあとの社会保険の加入手続き|出す書類と行き先

この記事のポイント

  • ✓社会保険は会社設立とセットで発生する義務です
  • ✓ハローワークの3つの窓口に何をいつ出すのか
  • ✓社長ひとりの会社での扱い

結論から書きます。会社を作った時点で、社会保険への加入は選択肢ではなく義務になります。従業員がゼロで、役員が自分ひとりだけでも同じです。そして最初に出す書類の期限は、設立登記から5日以内。税務署に出す書類が1か月や2か月なのに対して、ここだけが極端に短い。

もう1つ、窓口が1か所ではないという特徴があります。健康保険と厚生年金は年金事務所、労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワーク。3つの役所にそれぞれ別の紙を出します。社会保険会社設立という言葉で調べていて話が噛み合わないと感じるのは、たいていこの3つが混ざっているからです。

以下、日本年金機構と厚生労働省が公開している案内と、根拠になっている条文をそのまま確認しながら、どこに何をいつ出すのかを順に並べます。

会社を作ったら、社会保険は選ぶものではなくなる

まず、なぜ義務なのかをはっきりさせます。日本年金機構は適用事業所の範囲をこう説明しています。

厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)です。また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて厚生年金保険の適用事業所となります。被保険者となるべき従業員を使用している場合は、必ず加入手続きをしなければいけません。 出典: nenkin.go.jp

注目すべきは「事業主のみの場合を含む」という一文です。個人事業なら従業員が5人以上でなければ強制加入になりませんが、法人にした瞬間、人数の条件は消えます。社長ひとりでも加入対象の事業所になります。

ここが、個人事業から法人にした人がいちばん驚く変化です。国民健康保険と国民年金から、健康保険と厚生年金に切り替わる。保険料の水準も仕組みも変わり、会社が半分を負担する形になります。

もう1つ押さえておきたいのは、この義務が「加入するかどうかを選べる制度」ではないという点です。任意適用という仕組みは存在しますが、それは強制適用にならない事業所が自分から入りにいくための制度で、法人には関係ありません。

なお、国が加入状況を把握する仕組みも動いています。日本年金機構は、将来的な無年金者や低年金者の発生を防ぎ、事業主の負担の公平性を保つ目的で、未加入の事業所の把握と加入指導に取り組んでいると明記しています。登記情報や税務の情報から未加入の法人は見つかる、と考えておいたほうが実態に近い。

窓口は3つ。どこに何を出すかを先に固定する

社会保険という言葉は、狭い意味と広い意味で使われます。狭い意味では健康保険と厚生年金保険の2つ、広い意味ではそこに労災保険と雇用保険を足した4つです。窓口が違うので、まず表で固定します。

保険 窓口 最初に出す書類 期限
健康保険・厚生年金保険 事務センターまたは年金事務所 新規適用届、被保険者資格取得届 事実発生から5日以内
労災保険 労働基準監督署 保険関係成立届 保険関係が成立した日から10日以内
労災保険・雇用保険(保険料) 労働基準監督署 概算保険料申告書 保険関係が成立した日から50日以内
雇用保険 ハローワーク 適用事業所設置届、被保険者資格取得届 設置日の翌日から10日以内

労災保険と雇用保険をまとめて労働保険と呼びます。ふつうの会社は一元適用事業といって、労災と雇用保険の保険料をまとめて扱います。別々に扱う二元適用事業になるのは、都道府県と市町村の事業、港湾運送の事業、農林水産の事業、建設の事業です。会社を作って事務所で仕事をするタイプの事業なら、一元適用で考えて構いません。

期限の短い順に並べると、年金事務所の5日、労働保険とハローワークの10日、労働保険料の50日。税務署に出す書類は1か月から2か月なので、先に社会保険を片付けるのが正しい順番になります。

年金事務所に出す書類

健康保険と厚生年金保険の手続きは、事務センターか管轄の年金事務所に出します。事務センターとは、都道府県ごとに置かれている届書の処理拠点のことで、郵送で送る場合はこちらが宛先になります。日本年金機構の案内は次のとおりです。

「新規適用届」は、事業所が厚生年金保険および健康保険に加入すべき要件を満たした場合に事業主が日本年金機構へ提出します。 提出時期 事実発生から5日以内 提出方法 電子申請、郵送、窓口持参 出典: nenkin.go.jp

出す書類は次の3種類です。

健康保険・厚生年金保険 新規適用届。 事業所そのものを登録する紙です。様式はエクセルで配布されています。

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届。 加入する人ごとに1枚ずつ書きます。新規適用届と必ず同時に出すよう案内されています。社長ひとりなら1枚です。

健康保険 被扶養者(異動)届。 扶養に入れる家族がいる場合に出します。配偶者を第3号被保険者にする場合は、国民年金第3号被保険者関係届も併せて必要になります。

提出先について1つ注意があります。実際に事業を行っている場所が登記上の所在地と違う場合は、実際に事業を行っている場所を管轄する事務センターまたは年金事務所が窓口になります。登記だけ別の住所にしている会社は、ここで行き先が変わります。

添付書類でつまずきやすい点

新規適用届でつまずくのは、書き方よりも添付書類です。日本年金機構の案内には、発行からの日数に条件が付いていると書かれています。

法人の事業所の場合、法人(商業)登記簿謄本が必要です。コピーは不可で原本を出します。そして、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものでなければなりません。登記が終わった直後に取得した謄本なら問題ありませんが、設立から数か月放置していた会社は取り直しになります。

もう1つ、法人番号指定通知書のコピーが必要です。これが手元にない場合は、国税庁の法人番号公表サイトで自社を検索して、事業所名称、法人番号、所在地が載っている画面を印刷して添付しても差し支えないと案内されています。通知書が見つからないときの逃げ道が用意されているわけです。

事業所の所在地が登記上の所在地と異なる場合は、賃貸借契約書のコピーなど、所在地が確認できるものを別に添付します。自宅を事務所にしている場合、持ち家なら登記事項証明書、賃貸なら賃貸借契約書が該当します。

口座振替で保険料を納めたい場合は、健康保険・厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出書も一緒に出します。ただしこの申出書は、先に金融機関の窓口で手続きが要る点に注意してください。

原本で出した添付書類は、希望すれば返却してもらえます。登記簿謄本は1通あたりの手数料がかかるので、返してもらって他の手続きに回すという使い方もできます。

労働基準監督署に出す書類

従業員を1人でも雇ったら、労働保険の手続きが始まります。厚生労働省の労働保険特設サイトは、対象をこう説明しています。

常勤、パート、アルバイトなどの名称や雇用形態にかかわらず、労働者を1人でも雇っている事業は強制適用事業であり、成立手続を行う義務があります。 出典: mhlw.go.jp

出すのは2種類です。

労働保険 保険関係成立届。 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第4条の2第1項は、保険関係が成立した事業の事業主は、その成立した日から10日以内に届け出なければならないと定めています。成立した日とは、最初の従業員を雇った日です。

労働保険 概算保険料申告書。 同じ法律の第15条第1項は、保険年度の途中に保険関係が成立したものについては、成立した日から50日以内に納付しなければならないと定めています。ここでいう概算とは、その年度に払う見込みの賃金総額をもとに、先に保険料を納めておくという意味です。年度が終わってから実際の賃金総額で計算し直し、差額を精算します。この精算を年度更新と呼び、毎年6月1日から7月10日の間に行います。

労災保険の保険料は全額が会社負担です。従業員の給与から天引きするものではありません。料率は事業の種類ごとに決まっており、事務所で行う事業は低く、建設や林業は高く設定されています。

ハローワークに出す書類

雇用保険は、労働基準監督署ではなくハローワークが窓口です。労働保険の保険関係成立届を労働基準監督署に出してから、その控えを持ってハローワークへ行く、という順番になります。

雇用保険適用事業所設置届。 雇用保険法施行規則第141条は、事業所を設置したときは、登記事項証明書、賃金台帳、労働者名簿その他の事項を証明できる書類を添えて、設置の日の翌日から起算して10日以内に、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出しなければならないと定めています。

雇用保険被保険者資格取得届。 同じ施行規則の第6条は、雇用する労働者が被保険者となったことについて、その事実のあった日の属する月の翌月10日までに提出すると定めています。設置届の10日と、資格取得届の翌月10日。期限の数え方が違うので混同しないでください。

なお、その事業主において初めて資格取得届を出す場合は、労働契約に係る契約書、労働者名簿、賃金台帳など、被保険者になった事実とその年月日を証明できる書類を添えることとされています。1人目の従業員のときだけ添付が重くなる、と覚えておくとよいでしょう。

雇用保険の被保険者になるのは、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みがある人です。週に数時間だけ手伝ってもらうアルバイトは対象になりません。

社長ひとりの会社では、労災と雇用保険の出番がない

ここは整理しておく価値があります。社長ひとりの会社では、4つの保険のうち2つしか出番がありません。

健康保険と厚生年金は、法人の事業所である以上、事業主のみでも加入します。一方、労災保険と雇用保険は、労働者を雇っていることが前提の制度です。役員は労働者ではないので、原則として対象外になります。

したがって、設立直後に社長ひとりで始める会社がやることは、年金事務所への新規適用届と被保険者資格取得届だけです。労働基準監督署にもハローワークにも行く必要はありません。1人目の従業員を雇った時点で、そこから10日以内に労働基準監督署、そのあとハローワークという流れが始まります。

ただし例外もあります。労災保険には特別加入という制度があり、中小事業主等は労働保険事務組合に事務処理を委託することを条件に、自分自身を労災保険の対象にできます。現場作業を伴う業種で、社長自身がけがをするリスクがある場合は検討の余地があります。事務所仕事が中心なら、民間の保険で代替する判断も現実的でしょう。

役員が兼務役員、つまり役員でありながら部長として労働者の実態も併せ持つ場合は、雇用保険の被保険者になれることがあります。判断はハローワークが実態を見て行うので、該当しそうなら事前に相談してください。

誰が被保険者になるのか

健康保険と厚生年金の被保険者になるのは、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の人です。国籍や性別、年金を受け取っているかどうかは関係ありません。雇用契約書があるかどうかも決め手ではなく、実際に働いて労務の対償として給与を受けている関係があるかどうかで判断されます。試用期間中でも報酬が支払われているなら使用関係が認められます。

パートやアルバイトについては、2つの基準があります。

4分の3基準。 1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の仕事をしている通常の労働者の4分の3以上であれば被保険者になります。週40時間の会社なら、週30時間以上が目安です。

短時間労働者の基準。 特定適用事業所などでは、4分の3未満であっても、週の所定労働時間が20時間以上、所定内賃金が月額8.8万円以上、学生でないことのすべてを満たせば被保険者になります。

設立したばかりの小さな会社は特定適用事業所に当たらないことが多いので、当面は4分の3基準で判断する場面が中心になります。

被保険者にならない人も決まっています。日々雇い入れられる人、2か月以内の期間を定めて使用される人、所在地が一定しない事業所に使用される人、季節的業務に4か月以内で使用される人、臨時的事業の事業所に6か月以内で使用される人です。ただし、2か月以内の契約であっても、その期間を超えて雇用されることが見込まれる場合は、契約の当初から被保険者になります。短期契約を繰り返して加入を避ける、という設計は成り立ちません。

従業員を採用したときや退職者が出たときは、被保険者資格取得届または被保険者資格喪失届を5日以内に提出します。入社のたびに5日、という運用が続くことになります。

役員報酬をゼロにすると、そもそも加入できない

見落とされやすい論点を1つ。日本年金機構の必要書類の案内には、次の但し書きが付いています。

法人事業所で、被保険者となる者がいない場合(無報酬の役員しかいない場合等)は、適用事業所の要件を満たさないため、適用を受けることができません。 出典: nenkin.go.jp

役員報酬をゼロに設定した会社には、被保険者になる人がいません。報酬がなければ保険料の計算もできないからです。この場合、加入したくてもできません。

設立直後に売上が立つまで役員報酬をゼロにする設計は珍しくありませんが、その間は社長個人が国民健康保険と国民年金に入ったままになります。そして役員報酬を出し始めた時点で、そこから5日以内に新規適用届を出す流れになります。

逆に、報酬を出しているのに加入していない状態は、単なる未加入です。ここを混同して「うちは報酬がゼロだから入らなくていい」と説明する人がいますが、報酬を出しているかどうかが分かれ目です。

なお、役員報酬の金額が極端に低い場合の扱いは、実務上の判断が分かれる領域です。保険料を下回るような報酬設定をしている場合は、年金事務所に事前に確認してください。金額と事情で結論が変わるので、断定できる話ではありません。

保険料はいくらで、いつ払うのか

保険料の計算の土台になるのが標準報酬月額です。給与の額をそのまま使わず、幅のある等級に当てはめて計算します。

厚生年金保険の保険料率は18.3%で固定されています。日本年金機構は次のように説明しています。

厚生年金保険の保険料率は、年金制度改正に基づき平成16年から段階的に引き上げられてきましたが、平成29年9月を最後に引上げが終了し、厚生年金保険料率は18.3%で固定されています。 出典: nenkin.go.jp

この18.3%を会社と本人で折半するので、それぞれ9.15%ずつを負担します。健康保険の保険料率は全国健康保険協会が都道府県ごとに決めており、年度ごとに改定されます。40歳以上65歳未満の人は介護保険の分が上乗せされます。実際の金額は、協会けんぽが公表している保険料額表で標準報酬月額の等級を引いて確認するのが確実です。

納付の期限も決まっています。

保険料の納付期限は、納付対象月の翌月末日です。(例えば、4月分保険料の納付期限は5月末日です。) 出典: nenkin.go.jp

毎月10日頃に前月分が確定し、20日頃に保険料納入告知書が事業所へ送られてきます。この告知書が届かない場合は、管轄の年金事務所に連絡して再発行を依頼します。転送届を出している事業所は到着が遅れることがあるので、月末が近いのに届かないときは早めに動いたほうがよいでしょう。

従業員の給与から控除する金額は、標準報酬月額に保険料率を掛けた額の半分です。1円未満の端数が出たときは、50銭以下なら切り捨て、50銭を超えるなら切り上げて1円とします。事業主と被保険者の間で特約があれば、その特約に従った端数処理も認められています。

加入しないとどうなるか

未加入のまま事業を続けた場合に何が起きるかも書いておきます。

労働保険については、厚生労働省が明確に警告しています。成立手続を行わない事業主に対しては、政府が職権で成立手続を行い、保険料の額を決定します。その際、保険料は手続をしていなかった過去の期間についてもさかのぼって徴収され、併せて追徴金も徴収されます。納付されない場合は財産の差押えなどの処分が行われます。

さらに重いのが労災が起きた場合です。事業主が故意または重大な過失により労災保険の成立手続を行っていない期間中に労働災害が生じ、労災保険給付が行われた場合、政府は保険給付に要した費用に相当する金額の全部または一部を事業主から徴収します。けがをした従業員への給付は行われますが、その費用を会社が負担することになる、という構図です。

助成金の面でも不利になります。雇用調整助成金や特定求職者雇用開発助成金といった雇用関係の助成金は、労働保険料の未納がある場合に受給できない可能性があると案内されています。人を雇って事業を広げようとする局面で、使えるはずの制度が使えなくなるのは痛い。

健康保険と厚生年金についても、年金事務所が加入指導を行い、最終的には職権で適用する仕組みがあります。さかのぼって保険料を請求されると、会社負担分と本人負担分の両方を用意することになり、退職した人の分をどう回収するかという難しい問題まで発生します。

手続きの順番と、当日までに用意するもの

最後に、実際に動くときの段取りをまとめます。

設立登記が完了したら、その週のうちに登記簿謄本を取る。 90日という期限があるので、社会保険の手続きを終えるまでは有効期間を意識します。同時に法人番号指定通知書が届くのを待ちます。

役員報酬を決める。 株主総会または取締役会で決議し、議事録を残します。金額が決まらないと標準報酬月額が決まらず、資格取得届が書けません。

年金事務所へ新規適用届と資格取得届を出す。 報酬を出し始める事実が発生してから5日以内です。郵送なら事務センター、持参なら管轄の年金事務所。電子申請も使えます。

従業員を雇ったら、労働基準監督署へ保険関係成立届。 雇った日から10日以内。そのあと50日以内に概算保険料申告書を出して納めます。

その控えを持ってハローワークへ。 適用事業所設置届は設置の日の翌日から10日以内、被保険者資格取得届は翌月10日まで。1人目のときは労働契約書や賃金台帳の添付が要ります。

持ち物として共通するのは、登記簿謄本、法人番号が分かるもの、代表者の本人確認書類、事業所の所在地が確認できるもの、賃金台帳と労働者名簿、そして法人の実印です。労働者名簿と賃金台帳は労働基準法で作成が義務づけられている書類なので、1人目を雇った時点で作り始めることになります。

窓口に行く前に電話で確認しておくと、二度手間が減ります。特に、事業所の所在地が登記と違う場合や、役員報酬の設定が特殊な場合は、事前相談の価値が大きい領域です。

建設や農林水産なら、労働保険の手続きが2本に分かれる

ここまでは一元適用事業を前提に書いてきました。労災保険と雇用保険をまとめて1つの労働保険として扱う形です。ところが一部の事業は、労災と雇用保険を別個の事業とみなして手続きします。これを二元適用事業と呼びます。

労働保険の保険料の徴収等に関する法律第39条第1項は、都道府県および市町村の行う事業その他厚生労働省令で定める事業について、労災保険に係る保険関係と雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなすと定めています。そして施行規則第70条が、その厚生労働省令で定める事業を4つ挙げています。都道府県に準ずるものおよび市町村に準ずるものの行う事業、港湾労働法にいう港湾運送の行為を行う事業、雇用保険法附則第2条第1項に掲げる事業、そして建設の事業です。

会社を作る立場で現実に関係するのは建設の事業と農林水産の事業です。建設業で会社を作る場合、労災保険の保険関係成立届を労働基準監督署へ、雇用保険の保険関係成立届をハローワークへ、それぞれ別に出します。労働保険番号も2つ持つことになり、概算保険料の申告も別々です。

なぜ分けるのか。建設業の労災保険は、現場ごとに元請が一括して加入する仕組みになっているため、事務所の従業員を対象にする雇用保険とは管理の単位が合わないからです。工事現場の労災は元請の保険で処理し、自社の事務員の雇用保険は自社で管理する。この2つを1本の番号で扱うと計算が成り立ちません。

建設業で会社を作るなら、この点だけは先に労働基準監督署に確認しておいてください。一元適用の前提で書類を用意すると、窓口で一からやり直しになります。

電子申請を使うと何が変わるか

3つの役所を回ると、それだけで半日から1日を使います。電子申請を使えば、この移動がなくなります。

健康保険と厚生年金の届書は、日本年金機構の事業所向けオンラインサービスや、政府が用意している電子申請の窓口から送れます。新規適用届も資格取得届も対象です。労働保険についても、厚生労働省が労働保険関係手続の電子申請の案内を出しています。

規模の大きい会社には義務も課されています。労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則は、特定法人について、概算保険料申告書などの提出を電子情報処理組織を使用して行うものと定めています。特定法人とは、事業年度開始の時における資本金または出資金の額が1億円を超える法人、相互会社、投資法人、特定目的会社です。設立したばかりの小さな会社は該当しませんが、増資で1億円を超えた年からは義務の側に移ります。

電子申請には初期設定の手間があります。電子証明書を用意するか、GビズIDを取得するか。どちらも取得までに日数がかかるので、設立から5日という期限に間に合わないことがあります。1回目は紙か窓口で出して、2回目以降のために電子申請の準備を並行して進める。これが現実的な進め方です。

口座振替も同じ発想で、初回は納入告知書で払い、その間に金融機関で口座振替の手続きを進めておくと、翌月以降は自動で引き落とされるようになります。毎月末日の支払いを忘れる心配がなくなるので、ひとりで会社を回している人には効果が大きい仕組みです。

個人事業から法人にしたときの切り替え

個人でやっていた事業を法人にする場合は、加入する制度そのものが入れ替わります。順番を間違えると保険証が手元にない期間ができるので、流れを確認しておきます。

個人事業主のときは、社長本人は国民健康保険と国民年金の第1号被保険者でした。法人にすると、健康保険と厚生年金の被保険者になります。年金事務所に新規適用届と資格取得届を出し、健康保険証が届いたら、市区町村の窓口で国民健康保険の資格喪失の手続きをします。国民年金のほうは、厚生年金の加入記録が入ることで自動的に切り替わるため、本人が届け出る必要はありません。

順番として、国民健康保険をやめるのは健康保険証が届いたあとにします。先にやめてしまうと、どちらの保険証もない期間ができます。この間に病院に行くと、いったん全額を払って後から精算する手間が発生します。

従業員を引き継ぐ場合も同じ考え方です。個人事業として労働保険に加入していたなら、個人の事業としては廃止し、法人として新たに保険関係を成立させます。労働保険番号は個人時代のものを引き継げません。雇用保険については、被保険者の番号は個人に付いたまま引き継がれるので、事業所の番号だけが変わります。

扶養に入れていた家族の扱いも変わります。国民健康保険には扶養という考え方がなく、世帯全員が被保険者でした。健康保険に切り替わると、収入の条件を満たす家族は被扶養者になり、その分の保険料はかかりません。配偶者を第3号被保険者にすれば、国民年金の保険料の負担もなくなります。世帯全体で見ると負担が下がる場合があるので、切り替えのときに一度計算してみる価値があります。

固定費が増えたあとに、何で回収するか

社会保険に加入すると、会社の固定費が増えます。役員報酬に対する会社負担分は、ざっくり言えば報酬額の15%前後が上乗せされる規模です。この増分をどこで回収するのかを、手続きと同じタイミングで考えておく価値があります。

回収の方向は2つしかありません。単価を上げるか、使える制度を取りに行くかです。

制度の側から見ると、人を雇う会社には助成金や補助金の入口がいくつか用意されています。テレワークの体制を整える場面ではテレワーク 助成金 2026で要件と申請の流れが整理されています。福祉や介護の分野で事業を始めるなら、介護・福祉事業所のDX化2026|IT導入補助金で介護記録を完全デジタル化や送迎バス安全装置の設置補助金2026|介護施設の義務化対応と申請手順のように、業種ごとに別の制度が動いています。いずれも労働保険料の未納があると不利になるので、手続きを先に済ませておくことが条件整備そのものになります。

単価の側から見るなら、職種ごとの相場を把握しておくのが出発点です。ソフトウェア作成者の年収・単価相場では全国平均と都道府県別の水準が確認でき、著述家,記者,編集者の年収・単価相場も同じ見方で使えます。資格で守備範囲を広げるなら、経営の相談に入っていける中小企業診断士や、医療機関の事務を在宅で受けられる医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)のような選択肢があります。仕事の種類そのものを増やしたいなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発を軸にするならアプリケーション開発のお仕事の整理が参考になります。

20年この市場を見てきた運営者の立場から言えば、社会保険料という固定費を抱えたあとに効いてくるのは、案件の数より1件あたりに残る金額です。仲介が入らない直接の取引は、依頼する側から見れば同じ予算でより多くを頼めて、受ける側から見れば手数料0%の分だけ手取りが厚くなります。月々の保険料は毎月末日に必ず引かれるので、この差はそのまま資金繰りの余裕として表れます。

なお、この記事で扱った期限や添付書類は、日本年金機構と厚生労働省が公開している案内と条文で確認したものです。一方で、役員報酬の金額設定や兼務役員の扱い、特別加入の可否といった個別の判断は事情によって変わります。金額や具体的な人の扱いが絡む場面では、管轄の年金事務所、労働基準監督署、ハローワーク、または社会保険労務士に確認してください。

よくある質問

Q. 従業員がいない社長ひとりの会社でも社会保険に入る必要がありますか?

健康保険と厚生年金は必要です。日本年金機構は法人の事業所を、事業主のみの場合を含めて適用事業所としています。一方、労災保険と雇用保険は労働者を雇っていることが前提なので、社長ひとりの間は手続きが発生しません。1人目を雇った時点で始まります。

Q. 新規適用届の期限はいつまでですか?

事実発生から5日以内です。会社設立と同時に役員報酬を出すなら設立登記の日が起点になります。提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所で、実際に事業を行っている場所が登記上の所在地と違う場合は、事業を行っている場所の管轄になります。

Q. 役員報酬をゼロにしていても加入手続きは必要ですか?

必要ありません。日本年金機構は、無報酬の役員しかいない場合は被保険者となる者がいないため適用を受けられないと案内しています。ただし役員報酬を出し始めた時点で適用事業所になるので、そこから5日以内に新規適用届を提出します。

Q. 社会保険料は毎月いつ払いますか?

納付対象月の翌月末日が期限です。4月分なら5月末日です。毎月10日頃に前月分が確定し、20日頃に保険料納入告知書が事業所へ届きます。告知書が届かない場合は管轄の年金事務所に連絡して再発行を依頼してください。

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年3月12日最終更新:2026年10月10日
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