扶養の範囲で働くあん摩マッサージ指圧師|勤務時間の決め方と注意点

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
扶養の範囲で働くあん摩マッサージ指圧師|勤務時間の決め方と注意点

この記事のポイント

  • あん摩マッサージ指圧師が扶養の範囲で働くための考え方を整理します
  • 税と社会保険で違う区切り
  • 職場ごとの収まりやすさ

結論から書きます。あん摩マッサージ指圧師として扶養の範囲で働くなら、見るべき数字は「月にいくら稼ぐか」ではなく、「週に何時間働く契約にするか」と「その勤務が給与なのか報酬なのか」の2つです。この職種は時給制の勤務、歩合が乗る勤務、1件いくらの業務委託が同じ求人票の中に混在していて、月収だけを目安にしていると、気づかないうちに社会保険の加入要件を踏み越えることがあります。逆に、契約の形と週の枠を先に決めてしまえば、繁忙期に施術数が増えても慌てずに済みます。

この記事では、扶養という条件を外せない状況であん摩マッサージ指圧師の働き方を選ぶときに、何を先に決め、何を職場に確認しておくべきかを順番に整理します。制度の金額そのものは改正が続いている領域なので、最終的な判断は必ず公式の窓口で確認してください。この記事が担当するのは、確認しに行く前の「どこを確認すればいいのか」の地図づくりです。

扶養の範囲で働くという選択が、この職種で成立しやすい理由

まず前提を共有しておきます。あん摩マッサージ指圧師は、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律にもとづく国家資格です。専門の養成施設で学び、国家試験に合格して免許を受けた人だけが、あん摩、マッサージ、指圧を業として行えます。街中にあるリラクゼーションサロンのボディケアとは、法律上の位置づけが別物です。ここは押さえておいてください。無資格で代替できる仕事ではないという事実が、そのまま働き方の交渉力になります。

この「代替されにくさ」が、扶養の範囲という制約と相性がいい理由です。一般に、労働時間を短くする条件を出すと採用のハードルは上がります。ところが免許職の場合、事業者側は免許保持者でなければ配置できない業務を抱えているため、時間の短い人でも受け入れる動機があります。週2日でも、午前だけでも、免許がある人に入ってもらいたい現場は実際に存在します。求人票に「週1日から可」「扶養内相談可」という条件が並びやすいのは、資格の希少性が働き手側に有利に効いているからです。

もう1つ、この職種の働き方が多層になっている点も見逃せません。治療院や整骨院での勤務、病院やクリニックのリハビリ部門、介護施設への配置、在宅への訪問マッサージ、機能訓練指導員としての配置、そして開業。同じ免許で入口が複数ある職種は、そう多くありません。扶養の範囲という枠を守りながらでも、入口の選び方によって積める経験の中身がまったく変わります。ここが、単に時給の高い短時間バイトを探すのとは違うところです。

求人の探し方についても触れておきます。短時間の枠は、一般の求人サイトに常時掲載されているとは限りません。現場が「誰か入ってくれないか」と思った瞬間に、既存のつながりの中で埋まってしまうことが多いためです。だからこそ、養成施設の同期や実習先とのつながりを切らさないでおくことが、短時間で働きたい人にとっては実質的な求人チャネルになります。学校の就職支援窓口が卒業後も相談を受けているケースもあります。募集が出てから動くのではなく、条件を先に伝えて覚えてもらっておく。この順番が効きます。

一方で、正直なところ気になる点もあります。求人票に書かれた「扶養内OK」が、どこまで実務で守られるかは職場によって差があるという点です。予約が詰まった日に延長を頼まれる、担当していた利用者の都合で訪問が増える。こうした運用は現場では起こります。年間の見込みを立てたうえで働くつもりなら、契約書に週の上限を書いてもらう、繁忙期の追加をどう扱うかを事前に決めておく。この2つを最初にやっておくと、後から調整する手間が大幅に減ります。

「扶養の壁」は1本ではない。税の線と社会保険の線を分けて考える

扶養という言葉は日常会話ではひとまとめに使われますが、制度としては少なくとも3つの別々の話が混ざっています。ここを分けずに考えると、必ずどこかで混乱します。順番に整理します。

1つ目は、本人にかかる所得税の話です。給与収入が一定額を超えると、本人に所得税が発生します。この区切りは長らく年収103万円という数字で語られてきましたが、近年の税制改正で基礎控除や給与所得控除の水準が見直され、非課税となる収入の上限は引き上げられています。改正の適用時期や対象となる年分によって扱いが変わるため、いま自分に当てはまる金額は国税庁の案内で確認してください。金額そのものより、「本人に税がかかり始める線が1本ある」という構造を理解しておくことが重要です。

高齢化が進む日本において、介護保険の利用者は年々増加しています。 訪問マッサージは、「自宅や施設にお伺いしてマッサージ治療を行う」サービスであるため、介護保険利用者との親和性が非常に高く、その需要は年々伸びており、今後も業界としての需要は伸びていく見込みです。 出典: magonoteclub.co.jp

2つ目は、社会保険の話です。ここが扶養内で働く人にとって一番影響が大きく、そして一番見落とされやすい線です。健康保険の被扶養者でいられるかどうかの判定と、勤務先で自分自身が社会保険に加入することになるかどうかの判定は、別のルールで動きます。後者は、週の所定労働時間、雇用期間の見込み、勤務先の従業員規模、学生かどうかといった複数の条件の組み合わせで決まります。つまり、年収がいくらかという1つの数字だけでは判定できないということです。ここが「月収だけ見ていると踏み越える」と冒頭で書いた理由です。

3つ目は、配偶者側の控除の話です。配偶者控除や配偶者特別控除は、働く本人ではなく配偶者の税額に影響します。世帯としての手取りを考えるなら、この3本目も一緒に見る必要があります。本人の税、本人の社会保険、配偶者の控除。この3つは判定の基準日も、対象になる収入の範囲も、それぞれ違います。健康保険の被扶養者の判定では、これから先の見込み収入で見る運用が一般的で、1月から12月までの実績を積み上げる所得税の考え方とはそもそも時間軸が違います。

制度の金額と要件は、この数年で複数回動いています。断定した数字を暗記するより、自分が加入している健康保険の保険者に直接確認するほうが確実です。税については国税庁、年金や社会保険の適用については日本年金機構の案内が一次情報になります。勤務先の総務担当に聞くのも有効ですが、健康保険組合によって被扶養者の認定基準の運用に差があるため、最終的には自分が入っている保険者に当たるのが正解です。

勤務時間から逆算する。週の枠と単価の決め方

制度の線が3本あることを踏まえたうえで、実際の決め方に入ります。おすすめの順番は、次の3ステップです。

最初にやるのは、社会保険の加入要件に触れない週の所定労働時間を確定させることです。年収の見込みではなく、契約書に書かれる週の所定労働時間が判定の入口になるためです。ここを先に固定すると、以降の計算がすべて素直になります。週の枠が決まれば、月の勤務時間はおおよそ4.3倍で見積もれます。週15時間なら月およそ65時間、週20時間なら月およそ86時間です。

次に、時給または1件あたりの単価を掛けて、年間の見込みを出します。ここで注意したいのが、基本給以外に乗ってくるものです。交通費、指名手当、資格手当、時間外、歩合。健康保険の被扶養者の判定では、交通費を含めて収入を見る運用が一般的です。給与明細の額面ではなく、実際に振り込まれている総額で計算しておくと、あとで慌てません。求人票の時給だけで年間の見込みを立てると、手当の分だけ後ろにずれます。

3つ目に、繁忙期の上振れ分をあらかじめ引いておきます。年末年始、担当者の欠員、季節性の予約集中。この職種は現場の事情で急に施術数が増えることがあります。年間の枠をぎりぎりまで使う設計にすると、11月や12月に「今月はもう入れません」と断る羽目になり、職場との関係が悪くなります。年間見込みの1割程度を余白として最初から空けておく設計にしておくと、追加の依頼を受けても調整で吸収できます。

この3ステップで出した数字を、そのまま面接や契約更新の場で使ってください。「扶養内で働きたいです」とだけ伝えると、職場側はどこまで入れていいのか判断できません。「週3日、1日5時間、月60時間までで組みたい」と数字で伝えるほうが、双方にとって話が早い。時間の条件を具体的に出せる人のほうが、結果として長く続いています。

職場のタイプ別に見る、扶養の範囲との相性

同じ免許でも、働く場所によって時間のコントロールのしやすさはかなり違います。主な選択肢を、扶養の範囲という観点から比べてみます。

治療院や整骨院での勤務は、シフトの区切りがはっきりしていて、時間の管理はしやすい部類です。午前だけ、夕方だけといった枠で入れる求人もあります。ただし、予約の入り方によって終業が後ろにずれる可能性はあります。締め時間を過ぎた予約をどう扱うかは、入る前に確認しておきたい点です。歩合や指名手当が乗る職場では、施術数が増えた月の収入が読みにくくなるので、その計算方法も聞いておきます。

病院やクリニック、介護施設での勤務は、勤務時間が制度的に管理されている分、予定が崩れにくい傾向があります。機能訓練指導員として配置される場合など、施設の運営基準に関わる配置では、勤務時間や勤務日数の条件が施設側から明確に提示されることが多くなります。逆に言えば、施設側の必要とする時間数と自分の希望する枠が合わなければ、そもそも成立しません。条件が合ったときは安定しますが、選べる求人の母数は絞られます。

訪問マッサージは、この職種の中でも需要の伸びが語られている分野です。1件あたりの時間が読みやすく、午前に2件、午後に2件といった組み方ができるため、時間を区切りたい人との相性はいい。ただし、移動時間をどう扱うかで実労働時間の考え方が変わります。移動が勤務時間に含まれるのか、施術時間だけが対象なのか。ここは職場によって扱いが分かれるので、必ず契約前に確認してください。

あん摩マッサージ指圧師として5年の実務経験を積むとケアマネジャー(介護支援専門員)の受験資格を取得することができますが、福祉の分野とより密接にかかわるのは訪問マッサージになるため資格取得後、ケアマネジャーになる場合にも有利です。 また、通院が困難であるALSや脳梗塞などの既往歴を持つ患者様の治療を行う事も多いため、治療家としての技術を磨く機会も多くあります。 訪問サービスであることから、移動をする事や、治療院の様に施術環境が整っていない状態で施術を行わなければいけないことはデメリットです。 出典: magonoteclub.co.jp

もう1つ、自宅の一室や出張の形で自分の施術を始めるという選択肢もあります。時間の自由度は最も高くなりますが、集客と事務のすべてが自分の負担になります。施術所を構える場合は保健所への届出など開設に関する手続きが必要で、要件は自治体によって運用が異なります。扶養の範囲という制約のもとで、集客に時間を割く余力があるかどうかは、事前に冷静に見積もっておくべきです。週2日の稼働で新規の患者を安定して集めるのは、正直なところ簡単ではありません。既存の勤務を続けながら、少しずつ自分の顧客を持つ形から始めるほうが現実的です。

引用にある通り、訪問には環境面の負担があります。時間を短く区切って働くつもりなら、この負担の分を単価と移動条件で埋められるかを見ておくべきです。「時給は高いが移動が長い」求人と「時給は普通だが担当エリアが近い」求人では、扶養の範囲という制約下では後者のほうが有利になることがあります。時間あたりの手取りではなく、拘束時間あたりの手取りで比べてください。

給与で働くか、業務委託で受けるか。ここで扱いが変わる

扶養の範囲で働く人が最も混乱しやすいのが、この論点です。同じ「週2日の施術」でも、雇用契約に基づく給与なのか、業務委託契約に基づく報酬なのかで、税と社会保険の扱いが変わります。

雇用契約の場合はシンプルです。収入は給与所得として扱われ、給与所得控除が適用されます。社会保険の加入要件も、勤務先での所定労働時間と勤務先の規模で判定されます。年末調整も勤務先で行われます。手続きの負担が軽く、判定の基準も比較的わかりやすい。時間の管理さえできていれば、扶養の範囲に収める設計は立てやすいと言えます。

業務委託の場合は、話が変わります。受け取るのは報酬であり、事業所得または雑所得として自分で申告することになります。給与所得控除は使えませんが、代わりに業務にかかった経費を差し引けます。健康保険の被扶養者の判定でも、収入から必要経費を差し引いた額で見る保険者と、収入の総額で見る保険者があり、運用に差があります。ここは推測で進めず、加入している保険者に必ず確認してください。判定の考え方を知らずに1年働いてしまうと、後から遡って認定が取り消される可能性もあります。

もう1点、業務委託には確定申告の負担が乗ります。年間の売上と経費を記録し、申告書を作る作業が毎年発生します。会計ソフトを使えば負担は減りますが、ゼロにはなりません。時間を短く区切って働きたい人にとって、この事務作業が割に合うかどうかは、報酬水準との兼ね合いで判断すべきです。1件あたりの単価が雇用契約の時給換算を明確に上回るなら検討の価値がありますが、ほぼ同じなら雇用契約のほうが手間の面で合理的です。

契約書の名称に惑わされない点も大事です。「業務委託契約書」と書かれていても、実際の働き方が勤務時間や勤務場所を細かく指示され、断る自由がない状態であれば、実態として雇用に近いと判断される場合があります。逆に「アルバイト」と呼ばれていても、実態が業務委託ということもあります。判断に迷う条件を提示されたときは、契約書の文言ではなく、実際にどう働くことになるのかを具体的に確認してください。指揮命令の有無、勤務時間の拘束、報酬の計算方法。この3点を聞けば、おおよその輪郭は見えます。判断が難しいと感じたら、労働基準監督署や専門家に相談することをおすすめします。

一方で、業務委託には仲介が入らない分だけ受け手の手取りが厚くなるという構造的な利点があります。発注者と受け手のあいだに中間マージンが乗らない手数料0%の直接取引では、同じ予算で発注者はより多く依頼でき、受け手の手元に残る額も増えます。扶養の範囲という上限がある働き方では、同じ時間でどれだけ手取りが厚くなるかが、そのまま働きやすさに直結します。

面接と契約の前に、確認しておきたい項目

ここまでの内容を、実際に職場に聞く形に落とし込みます。次の項目は、入る前に確認しておく価値があります。

週の所定労働時間を契約書に明記してもらえるか。これが最優先です。口頭で「週3日くらいで」と決めた条件は、繁忙期に必ず揺れます。書面にあれば、断る根拠になります。次に、社会保険の適用対象になるかどうかの判定を勤務先がどう行っているか。従業員規模によって適用の範囲が変わるため、勤務先に確認するのが早い。総務担当がいる規模の職場なら、この質問は普通に受け止めてもらえます。

3つ目に、交通費や各種手当が支給されるか、それらが収入の判定にどう含まれるか。前述の通り、健康保険の被扶養者の判定では交通費を含めて見る運用が一般的です。求人票の時給に交通費が含まれるのか、別途支給なのかで、年間の見込みが変わります。4つ目に、指名や歩合の計算方法。施術数が伸びた月にどれだけ上振れるのかを、あらかじめ知っておきたいところです。

5つ目に、繁忙期の追加勤務を依頼された場合の断り方が、職場のルールとして用意されているか。ここを聞いておくと、実際に断るときの心理的な負担が減ります。「扶養の関係で今月はこれ以上入れません」と言える空気があるかどうかは、求人票からは読み取れません。面接で聞くしかない項目です。

あわせて、自分の側でも記録を残しておくことをおすすめします。月ごとの勤務時間と振込額を1枚の表にまとめておくだけで、年間の見込みが常に見える状態になります。表計算ソフトでも手書きのノートでも構いません。重要なのは、交通費や手当を含めた実際の入金額で記録することです。給与明細を捨てずに保管しておけば、年の後半に「あと何時間入れるか」を即答できます。この作業にかかる時間は月に5分程度で、後から慌てて計算し直す手間に比べれば圧倒的に軽い。

時間の条件を伝えるときは、断り文句ではなく設計として伝えるほうが受け入れられやすくなります。「これ以上は働けません」ではなく「この枠なら年間を通して安定して入れます」と言い換えるだけで、相手の受け取り方は変わります。職場が本当に困るのは、時間が短いことではなく、予定が読めないことです。読める人は、時間が短くても頼りにされます。

最後に、契約の更新時期です。年の途中で契約内容が変わると、年間の見込みが崩れます。更新のタイミングと、そこで条件を見直せるかどうかを把握しておくと、翌年の設計が立てやすくなります。医療や介護の現場では年度の区切りで体制が変わることが多く、4月前後は条件が動きやすい時期です。

扶養の範囲で働きながら、経験をどう積み上げるか

時間を短く区切ることの本当のコストは、収入の上限ではなく、経験の積み上がりが遅くなることです。ここを意識して職場を選ぶかどうかで、数年後の選択肢の広さが変わります。

たとえば、実務経験の年数が要件になる資格があります。引用にもあった通り、あん摩マッサージ指圧師として一定年数の実務経験を積むことで、介護支援専門員の受験資格につながる道があります。受験資格の要件は制度改正で変わることがあるため、詳細は都道府県の担当窓口で確認が必要ですが、「いま積んでいる経験が、将来の受験資格や配置要件につながるか」という視点を持っておくと、職場選びの基準が変わります。時給が少し低くても、要件に算入される勤務のほうが長期では得になる場合があります。

もう1つは、扱う症例の幅です。治療院での自費施術と、在宅での機能維持を目的とした施術では、身につく引き出しが違います。どちらが優れているという話ではなく、将来どちらの方向に進みたいかで選ぶべきという話です。扶養の範囲という制約があるからこそ、限られた時間をどの現場に置くかの選択が効いてきます。少ない時間で幅広い経験を求めるより、1つの領域で担当を持ち続けるほうが、結果的に深い経験になることが多い。

医療や介護に隣接する職種では、資格と勤務形態の組み合わせで働き方の幅が大きく変わります。職場の種類ごとに条件を比較する視点は、隣接領域の記事も参考になります。職場ごとの体制や支援ツールの違いを整理した看護師におすすめの職場・働き方・転職支援ツールを徹底解説では、同じ資格でも配属先で働き方がどう変わるかを扱っています。資格を持ったまま働く場所を移すという選択肢を考えるとき、比較の観点として使えます。

企業の中で資格を活かす道を考えるなら、企業薬剤師への転職ガイド|年収・働き方・中途採用の壁を突破する方法【2026年版】も参考になります。医療系の国家資格を持つ人が、臨床の現場以外でその資格をどう位置づけるかという論点は、あん摩マッサージ指圧師にも通じるところがあります。免許を持っていることが、必ずしも施術だけに使われるとは限らないという発想です。

枠を超える選択も、最初から選択肢に入れておく

扶養の範囲で働くことを前提に読み進めてもらいましたが、公平を期すために反対側の話も書いておきます。枠を超えて働く選択が有利になる場面は、確かに存在します。

社会保険の被保険者になると、保険料の負担が発生します。手取りが一時的に減るのは事実です。ただし、その代わりに厚生年金の加入期間が積み上がり、将来受け取る年金額に反映されます。傷病手当金や出産手当金のように、被扶養者のままでは受けられない給付の対象にもなります。手取りの目先の増減だけで判断すると、この部分が計算から抜け落ちます。

現実的な判断基準は、「枠のすぐ内側で止まっているかどうか」です。年間の見込みが上限の手前ぎりぎりで止まっている状態は、保険料の負担を避けるために勤務時間を削っている状態でもあります。この位置にいる人が働く時間を少し増やすと、保険料の負担が乗る分だけ手取りが一度落ち込みます。落ち込んだ手取りを元の水準まで戻すには、それなりの勤務時間の上積みが必要です。中途半端に増やすのが一番損になる、という構造です。

だからこそ、判断は「増やすなら、しっかり増やす」か「増やさないなら、枠の内側で確実に止める」の二択で考えるほうが合理的です。あん摩マッサージ指圧師の場合、免許職として一定の時給水準が期待できる分、勤務時間を増やしたときの回復も比較的早い部類に入ります。子育てや介護の事情が落ち着くタイミングで、この選択を一度検討しておく価値はあります。制度の具体的な要件と保険料の水準は、日本年金機構や勤務先の総務担当で確認してください。

なお、枠を超えるかどうかを検討する際には、配偶者側の控除への影響も一緒に見る必要があります。本人の手取りが増えても、配偶者の税額が変わることで世帯全体では思ったほど増えないという場面はあります。世帯の合計で比較する。この視点を持たずに本人の手取りだけを見ると、判断を誤ります。

市場全体の動きから見た、時間を区切って働く人の位置づけ

在宅ワークやフリーランスの市場を20年運営してきた立場から見ると、時間を短く区切って働く人が不利になるかどうかは、業界の構造で決まります。作業単位で発注される仕事の場合、時間の短い人は単純に受注量で負けます。一方で、免許や担当制が前提になる仕事では、時間の長さより「継続して同じ人が入ること」の価値が高い。あん摩マッサージ指圧師は明らかに後者です。

運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど、単発の施術数を追わずに「この人に任せると楽だ」という関係づくりに時間を使っています。報告の書き方が丁寧で、次回の予定調整が早い。この2つができる人は、時間が短くても現場から外されません。逆に、施術の技術は高いのに連絡の返しが遅い人は、繁忙期に真っ先に調整の対象になります。扶養の範囲という制約下では、この「調整されにくさ」がそのまま収入の安定につながります。

もう1つ、額面と手取りの話をしておきます。中間に仲介が入る働き方では、同じ予算でも受け手に届く額が目減りします。逆に、発注者と直接つながる形では、依頼側は同じ予算でより多く頼め、受け手は手元に残る額が厚くなります。扶養の範囲で働く人にとって、これは単なる金額の差ではありません。年間の上限が決まっている以上、同じ収入を得るために必要な労働時間そのものが変わるということです。時間を短くしたい人ほど、この構造の影響を強く受けます。

職種ごとの単価水準や働き方の傾向は、データとして比較すると見え方が変わります。フリーランスとして働く職種の相場感を確認したい場合は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場のように職種別に単価データを整理したページが参考になります。専門職が独立してどう単価を組み立てているかという観点では、インテリアコーディネーターのフリーランス独立ガイド|年収・案件獲得・働き方も、案件の取り方と単価の考え方の実例として読めます。

あん摩マッサージ指圧師の場合、扶養の範囲という条件は「稼げる上限」の話に見えて、実際には「時間の使い方をどう設計するか」の話です。免許が必要な仕事である以上、代わりがきかない。代わりがきかない仕事で、時間の条件を先に提示できる立場にあるというのは、本来かなり強い交渉のカードです。週の枠を決め、契約の形を選び、確認すべき項目を面接で聞く。この3つを最初にやっておくだけで、後から調整する労力は大きく減ります。制度の具体的な金額と要件については、国税庁や日本年金機構、そして自分が加入している健康保険の保険者に必ず当たってください。

よくある質問

Q. 扶養の範囲で働くとき、まず何から決めればいいですか?

最初に決めるのは週の所定労働時間です。社会保険の加入要件は年収の見込みだけでなく、契約書に書かれた週の所定労働時間や勤務先の規模で判定されます。週の枠を固定してから月の勤務時間と年間の見込みを計算する順番にすると、繁忙期の上振れにも対応しやすくなります。

Q. 求人票の「扶養内OK」はそのまま信じていいですか?

条件として掲げていても、運用は職場によって差があります。予約の集中や欠員で追加を頼まれることは実際に起こります。週の上限を契約書に明記してもらえるか、繁忙期の追加をどう扱うかを面接の段階で確認しておくと、後から断るときの根拠になります。

Q. 業務委託で受ける場合、扶養の判定はどう変わりますか?

受け取る収入は給与ではなく報酬になり、自分で確定申告することになります。健康保険の被扶養者の判定で必要経費を差し引くかどうかは保険者によって運用が異なるため、契約前に自分が加入している保険者へ直接確認してください。推測で進めると、後から認定に影響が出る可能性があります。

Q. 訪問マッサージは扶養の範囲で働く人に向いていますか?

1件あたりの時間が読みやすく、午前と午後で件数を区切れるため、時間を管理したい人との相性はよい分野です。ただし移動時間が勤務時間に含まれるかは職場によって扱いが分かれます。時間あたりではなく拘束時間あたりの手取りで比較し、担当エリアの範囲も確認してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月8日最終更新:2026年9月11日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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