医療機器メーカーを辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

中西 直美
中西 直美
医療機器メーカーを辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

この記事のポイント

  • 医療機器メーカーを辞めたいと感じたときに
  • 職種・会社・業界のどこが辛さの原因かを切り分ける方法をまとめました
  • 営業やサービスエンジニア

「医療機器メーカーを辞めたい」。そう検索するまでに、きっと何度も迷ってきたのだと思います。

人の命を支える製品に関わっているという誇りがある。だからこそ、辞めたいと思う自分を責めてしまう。こういうご相談、本当によくあります。

大丈夫ですよ。辞めたいと感じるのは、弱いからではありません。医療機器メーカーという職場には、他の業界にはない種類の負担が、構造としてあるからです。

ただ、辞めるかどうかを決める前に、1つだけやっておいてほしいことがあります。それは「何が辛いのか」を切り分けることです。職種の問題なのか、今の会社や部署の問題なのか、それとも業界そのものが合わないのか。ここが分かれば、出ていく先を間違えずに済みます。

この記事では、医療機器メーカーで辞めたい気持ちが生まれやすい場面、辛さの切り分け方、心と体が限界に近いときの休み方、社内で動かせること、転職先の考え方、辞めると決めたときの手順を、順番にお話しします。

医療機器メーカーで「辞めたい」が生まれやすい場面

まず、この職場で何が起きているのかを見ておきましょう。自分の辛さが「自分だけのもの」ではないと分かるだけで、少し呼吸がしやすくなります。

営業職:病院の時間に合わせて1日が決まる

医療機器の営業担当は、自分で1日の予定を組めるように見えて、実際には病院の時間に合わせて動いています。

手術で使う機器を扱っている場合、朝の手術の前に病院に着き、手術室の近くで待機することがあります。予定していた手術が延びれば、その後の訪問はすべてずれます。緊急手術で機器が必要になれば、夜や休日でも電話が鳴ります。

担当エリアが広いのも特徴です。地方の営業所では、1人で複数の県を受け持ち、1日に数百キロ運転することもあります。

そして、板挟みがあります。病院からは「すぐに持ってきてほしい」と言われ、社内では在庫や規制のルールで「すぐには出せない」と言われる。その間に立つのが営業担当です。

サービスエンジニア:故障は時間を選ばない

病院の検査装置や治療機器の保守を担うサービスエンジニアは、故障の連絡があれば駆けつけます。検査が止まれば、その日の患者さんの予定がすべて止まるからです。

夜間や休日の呼び出し当番、長距離の出張、重い部品の運搬。体力的な負担が積み重なりやすい仕事です。

品質保証・薬事・安全管理:期限と記録に追われる

社内の部門にいる人にも、別の種類の負担があります。

不具合の情報には、国への報告の期限があるものがあります。製品の回収が決まれば、通常業務を止めて対応にあたります。行政や認証機関の査察の前には、記録の確認で残業が続くこともあります。

「間違えてはいけない」という緊張が毎日続く。これが、静かに心をすり減らしていきます。

開発・製造:記録の量と、変えられない手順

開発部門では、設計を少し変えるだけでも、変更の理由と検証の記録が必要になります。「もっと早く良いものを作りたい」と思う技術者ほど、進みの遅さに疲れてしまうことがあります。

製造の現場では、手順書から外れることは許されません。交代勤務がある工場では、生活のリズムが崩れやすくなります。

外資系メーカー:自分の手の届かないところで決まる

外資系メーカーの日本法人では、海外本社の方針で組織が再編されたり、担当製品が変わったりすることがあります。頑張ってきたことが、自分の関与できないところで変わってしまう。この無力感が、辞めたい気持ちの引き金になることもあります。

まず「何が辛いのか」を3つに切り分ける

ここからが、この記事でいちばん大切にしたいところです。

辞めたい気持ちは、たいてい、いくつかの辛さが絡まり合ってできています。絡まったまま転職すると、次の職場でも同じ辛さに出会ってしまうことがあります。

紙とペンを用意して、次の3つの箱に分けてみてください。

箱1:職種の問題

「営業という仕事そのものが合わない」「夜間の呼び出しがある仕事は、もう続けられない」。こうした辛さは、会社を変えても、同じ職種を選べばついてきます。

確かめる質問は、これです。

・同じ職種で、別の会社に移ったら楽になると思えますか ・その辛さは、同業他社の同じ職種の人も口にしていますか

どちらも「いいえ」なら、職種を変えることを考えてよい段階です。

箱2:会社や部署の問題

「上司との関係が苦しい」「担当エリアが広すぎる」「人が足りなくて1人に仕事が集中している」。こうした辛さは、職種を変えなくても、会社や部署が変われば軽くなる可能性があります。

確かめる質問は、これです。

・社内の別の部署や、別の営業所の同じ職種の人は、同じように辛そうですか ・今の上司が変わったら、続けられると思いますか

「別の部署の人は、そこまで辛そうではない」と感じるなら、社内異動や、同じ職種での転職で解決できるかもしれません。

箱3:業界の問題

「規制に縛られた仕事そのものが窮屈」「病院という相手と関わり続けるのが辛い」。こうした辛さは、医療機器メーカーという業界の性質から来ています。

確かめる質問は、これです。

・医療機器以外の業界の、同じような仕事なら続けられそうですか ・製品が人の体に関わるという緊張感から、離れたいと感じますか

ここが「はい」なら、業界を変えることを考えてよいでしょう。

もう1つの視点:今の人生の時期の問題

3つの箱のどれにも入りきらない辛さもあります。それは「今の自分の生活と、仕事の形が合っていない」という辛さです。

たとえば、子どもが小さくて、朝の手術の立会いに間に合う時間に家を出られない。親の介護が始まって、泊まりがけの出張が難しくなった。自分の体調の波があって、夜間の呼び出しに応えられる自信がない。

こうした辛さは、仕事が悪いわけでも、あなたが悪いわけでもありません。生活の側が変わったのです。

この場合に考えたいのは、「数年後に生活が落ち着いたら、また今の仕事に戻りたいか」という問いです。戻りたいなら、辞めるより、時短勤務や担当の変更、一時的な異動を相談するほうが、キャリアを途切れさせずに済みます。戻りたくないなら、生活に合う形の仕事を、落ち着いて探してよいのです。

切り分けたあとに見えてくること

以前、こんなご相談がありました。医療機器メーカーの営業を数年続けてきた方で、「もう営業は無理です」とおっしゃっていました。

一緒に辛さを書き出してみると、中身は「営業という仕事」ではなく、「夜中や休日に携帯が鳴るかもしれない緊張が、ずっと続いていること」でした。製品の説明をすることや、病院の方と話すことは、むしろ好きだったのです。

その方は、緊急の呼び出しが少ない製品を扱う会社を探すことにしました。職種を丸ごと捨てなくてよかった、とあとで話してくれました。

辛さの正体が分かると、選択肢は思っているより広がります。

心と体が限界に近いときは、辞める判断より先に休む

ここで、少し立ち止まってください。

眠れない日が続いている。朝、会社に向かう途中で涙が出る。休日も仕事のことが頭から離れない。食事の味がしない。

こうしたサインがあるなら、今は「辞めるかどうか」を決めるタイミングではありません。疲れ切った状態で下す大きな決断は、あとで悔やむことが多いからです。まず休むことを優先してください。

セルフチェックと、相談先を知っておく

厚生労働省が運営する働く人のメンタルヘルスのポータルサイト「こころの耳」には、5分ほどでできる職場のストレスのセルフチェックや、電話、SNS、メールで相談できる窓口がまとまっています。自分の状態を数字で見るだけでも、「少し休もう」と自分に許可を出しやすくなります。

会社に産業医や保健師がいるなら、面談を申し込むのも1つの方法です。産業医は会社の味方ではなく、働く人の健康を守る立場の専門家です。

休職という選択肢

医師から療養が必要だと判断されれば、会社の就業規則に沿って休職できる場合があります。

健康保険に加入している会社員であれば、病気やけがで働けず給料が出ないときに、傷病手当金を受けられる可能性があります。健康保険法では、働けなくなった日から3日を経過した日から支給され、1日あたりの額は標準報酬月額をもとにした額のおおむね3分の2、支給期間は支給を始めた日から通算して1年6か月と定められています。細かな条件は加入している健康保険によって違うので、会社の担当部署か健康保険の窓口で確かめてください。

休職は「逃げ」ではありません。体と心を立て直してから、落ち着いて次を考えるための時間です。

休職から戻るときは、いきなり元の仕事に全力で戻らなくて大丈夫です。多くの会社には、主治医や産業医の意見を聞きながら、短い勤務時間から始めたり、夜間の呼び出しや長距離の出張を一定期間外したりする、職場復帰の支援の仕組みがあります。

医療機器メーカーの営業職やサービスエンジニアの場合、復帰直後は担当する病院の数を減らしてもらう、社内のサポート業務から始める、といった調整を相談できることがあります。復帰の面談では、「どの業務なら今の体調でできそうか」を自分の言葉で伝えてください。無理のない形で戻ることが、結果的に長く働き続けるための近道になります。

職場のトラブルそのものを相談したいとき

長時間労働やハラスメントなど、職場のトラブルが辛さの原因になっている場合は、社外の窓口に相談することもできます。

職場のトラブルに関するご相談や、解決のための情報提供をワンストップで行っています。 いつでもお気軽に総合労働相談コーナーをご利用下さい。 出典: 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」

総合労働相談コーナーは、各都道府県の労働局や労働基準監督署の中にあり、予約なしで相談できます。相談したからといって、会社に知られるわけではありません。

あなたは一人じゃありません。頼れる場所は、ちゃんとあります。

辞めたい気持ちが強い日に、やらないほうがいいこと

辞めたい気持ちには、波があります。何もかも投げ出したくなる日もあれば、「もう少し頑張れそう」と思える日もあります。

気持ちがいちばん強い日は、判断がいちばん揺れやすい日でもあります。そんな日に、やらないほうがいいことを先に知っておきましょう。

その場で退職を口にしない

病院で理不尽なことを言われた帰り道、上司に電話で「もう辞めます」と伝えてしまう。気持ちはとてもよく分かります。

でも、一度口にした言葉は取り消しにくいものです。上司も周りも、あなたが辞める前提で動き始めます。落ち着いてから「やっぱり続けたい」と思っても、居心地の悪さが残ってしまうことがあります。

辞めたいと感じたら、まずその日は家に帰って、寝てください。伝えるのは、少なくとも数日考えてからでも遅くありません。

担当の病院に先に話さない

医療機器の営業担当は、病院の医師や看護師、臨床工学技士と長い時間を過ごします。信頼している相手に、つい「実は辞めようと思っていて」と話したくなることがあります。

けれど、病院側からすれば、担当者が変わることは手術や検査の準備に関わる大きな話です。会社が後任を決める前に話が広がると、あなた自身が引き継ぎで苦しい立場になります。社外に伝えるのは、会社と退職日を決め、後任が決まってからにしましょう。

SNSに職場のことを書かない

辛さを誰かに聞いてほしい気持ちから、SNSに書き込みたくなることもあると思います。

医療機器業界は、思っているより狭い世界です。製品名や病院名、上司の特徴を少し書いただけで、誰のことか分かってしまうことがあります。守秘義務に触れる情報が混ざる危険もあります。

吐き出す場所が必要なら、紙のノートや、鍵のかかったメモアプリを使ってください。

代わりに、やってほしいこと

気持ちが強い日には、次の3つを試してみてください。

・その日に辛かったことを、3行だけ書き留める。1週間続けると、辛さの波と原因が見えてきます ・家族や友人など、仕事と関係のない人に話す。結論を出さなくていい、ただ聞いてもらう時間です ・有給休暇を1日取って、仕事から完全に離れる。離れてみて「戻りたくない」と感じるのか、「少し休めば戻れる」と感じるのかが、大事な手がかりになります

社内で動かせることを、先に試してみる

辛さの切り分けで「箱2:会社や部署の問題」が大きかった人は、辞める前に社内で動かせることがないか見てみましょう。

医療機器メーカーは、1つの会社の中に、性質のまったく違う仕事が並んでいる職場です。それは、社内で環境を変えやすいということでもあります。

営業職から移りやすい部署

営業の経験は、社内の他の部署でも役に立ちます。

・営業企画やマーケティング:製品の販促資料や、学会での展示の企画を担います。病院の現場で聞いた声が、そのまま武器になります ・営業教育やトレーニング:新しく入った営業担当に製品知識を教える役割です ・カスタマーサポート:病院からの問い合わせに社内で答える部署です。夜間の呼び出しは減ることが多いです

サービスエンジニアから移りやすい部署

・テクニカルサポート:現場のエンジニアからの問い合わせに、社内で答える役割です ・品質保証:故障の原因を調べる仕事で、現場で見てきた経験が活きます ・製品トレーニング:病院の臨床工学技士向けに、機器の扱い方を教える仕事です

品質保証や薬事から移りやすい部署

・薬事と品質保証の間:同じ規制の知識を使いながら、期限の性質が違う仕事に移れます ・開発部門の設計管理:開発の記録を整える役割で、規制の知識が求められます

上司に伝えるときのコツ

異動を相談するときは、「辛いから逃げたい」ではなく、「この経験を、別の形で活かしたい」と伝えるほうが通りやすくなります。

たとえば、「夜間の呼び出しが続いて、体調を崩しかけています。病院の現場で聞いてきた声を、営業企画の仕事で活かせないかと考えています」というように。

辛さを伝えることは、恥ずかしいことではありません。事実として伝えたうえで、希望を添える。それだけで、話は前に進みやすくなります。

社内公募の制度がある会社なら、上司を通さずに応募できることもあります。人事部門のページや就業規則を一度見てみてください。

異動がかなわなかったときに

異動を希望しても、すぐには通らないこともあります。人員の都合で「半年待ってほしい」と言われることもあるでしょう。

そのときは、待つ間に何が変わるのかを確かめてください。担当エリアを一部減らしてもらえるのか、呼び出し当番の回数を調整してもらえるのか。具体的な約束が何もないまま「もう少し頑張って」と言われるだけなら、それは会社の中では解決しにくい、という1つの答えです。

その答えが出たことは、無駄ではありません。「社内でできることは試した」と自分で納得できていれば、転職を決めたときに迷いが少なくなります。

転職するなら、どこへ行けるか

社内で動かせることを試しても難しい、あるいは「箱1」や「箱3」の辛さが大きい。そう分かったら、転職を考えてよい段階です。

ここでは、切り分けの結果ごとに、転職先の考え方を整理します。

会社を変えたいだけなら:同じ職種で、別のメーカーへ

医療機器と一口に言っても、扱う製品で働き方は大きく変わります。

手術で使う機器や、心臓や血管の治療に使う機器は、緊急の対応が起きやすい分野です。一方、検査で使う機器や、消耗品を扱うメーカーでは、夜間の呼び出しが比較的少ない傾向があります。

同じ営業でも、担当する製品と担当エリアの広さを変えるだけで、生活が大きく変わることがあります。求人票では、担当エリア、1人あたりの担当施設数、呼び出し当番の有無を確認してください。

職種を変えたいなら:業界の知識を持ったまま横に動く

医療機器業界の知識は、職種を変えても価値があります。

・医療機器の販売代理店:メーカーより地域に密着した働き方になります ・医療分野のIT企業:病院向けのシステムを扱う会社では、病院の仕組みを知っている人が重宝されます ・薬事や品質のコンサルティング会社:規制の知識を、複数の会社のために使う働き方です

業界を変えたいなら:経験を言葉にしておく

医療機器以外の業界に移る場合は、「規制の厳しい環境で、記録を正確に残してきた」「専門職と対等に話し、信頼を得てきた」といった経験を、業界の外の人にも伝わる言葉にしておくことが大切です。

たとえば、品質保証の経験は、食品や自動車部品など、他の品質に厳しい業界でも評価されます。営業の経験は、専門性の高い商材を扱うBtoBの営業で活きます。

もともと看護師や臨床工学技士として病院で働いていて、医療機器メーカーに移った人は、病院に戻るという選択肢もあります。その場合は、病院勤務の条件を今の給与と比べておくと、判断がしやすくなります。看護師の収入の水準は看護師の年収・単価相場で確認できます。

年収はどう変わりやすいか

転職を考えるとき、収入がどうなるかは大きな不安ですよね。

医療機器メーカーの営業職やサービスエンジニアの給与には、基本給のほかに、営業手当、呼び出し当番の手当、出張手当、業績に応じた賞与などが含まれていることが多くあります。社用車を私用の移動にも使える会社もあります。

そのため、夜間の呼び出しがない職種や、手当の少ない業界に移ると、基本給が同じでも年収が下がることがあります。反対に、住宅手当や残業代の支給が手厚い会社に移ると、月の手取りが増えることもあります。

比べるときは、月給ではなく年収で、そして手当と賞与を分けて見てください。求人票に「想定年収」とだけ書かれている場合は、そのうちいくらが固定で、いくらが業績で変わるのかを面接で確かめると安心です。

収入が少し下がっても、夜に携帯を気にせず眠れる生活を選ぶ。それは、決して損な選択ではありません。何を大切にしたいかを、自分の言葉で決めておきましょう。

転職活動のコツ

できれば、在職中に転職活動を始めてください。収入が途切れない安心感は、判断の落ち着きにつながります。

面接で退職理由を聞かれたら、辛かったことをそのまま話すのではなく、「次の職場で何を大切にしたいか」に言い換えます。「夜間の呼び出しが辛かった」は「長く安定して成果を出せる働き方で、製品の知識を活かしたい」と言えます。

一人で考えがまとまらないときは、キャリアの専門家に話を聞いてもらうのも1つの方法です。キャリアコンサルタントは、転職を勧める人ではなく、あなたの考えを整理する手伝いをする専門家です。どんな資格で、どんな相談ができるのかはキャリアコンサルタントにまとまっています。

辞めると決めたときの手順

じっくり考えて、辞めると決めた。その決断は、あなた自身を大切にするための選択です。

ここからは、医療機器メーカーを辞めるときに押さえておきたい手順を整理します。

いつまでに伝えるか

期間の定めのない雇用契約の場合、民法第627条では、退職の申入れから2週間が経過すると雇用が終了すると定められています。ただし、多くの会社の就業規則では「1か月前までに申し出る」などと決められています。

円満に辞めるためには、就業規則を確認したうえで、引き継ぎに必要な期間を考えて伝えるのがおすすめです。

※会社が退職を認めてくれない、退職届を受け取ってもらえないといった場合は、総合労働相談コーナーや弁護士に相談してください。

伝える順番と、切り出し方

退職を伝える順番は、直属の上司が最初です。同僚や先輩に先に話してしまうと、上司が人づてに知ることになり、話がこじれやすくなります。

切り出すときは、「ご相談があります」ではなく「退職のご報告とご相談があります」と、最初に要件をはっきり伝えます。「相談」とだけ言うと、引き止めの話し合いが長引くことがあるからです。

理由を聞かれたら、会社や人への不満を並べる必要はありません。「自分の生活と働き方を見直したい」「別の形で医療に関わる仕事に挑戦したい」など、前向きな言葉で短く伝えれば十分です。

転職先が決まっている場合は、入社日から逆算して退職日の希望を伝えます。引き止めのために条件の改善を提示されることもありますが、その場で答えを出さず、「一度持ち帰って考えます」と伝えて大丈夫です。辛さを切り分けたときのメモを見返して、提示された条件で本当に解決するのかを確かめてから返事をしてください。

医療機器メーカーならではの引き継ぎ

医療機器メーカーの引き継ぎには、他の業界にはない項目があります。

・営業職:担当している病院ごとの手術の予定、貸し出している機器の返却予定、進行中の見積や入札の状況。後任の担当者を、病院の医師や臨床工学技士に紹介する時間を取っておくと、病院側も安心します ・サービスエンジニア:保守契約を結んでいる機器ごとの点検予定と、過去の修理の経緯 ・品質保証や安全管理:対応中の不具合案件の状況と、報告の期限

特に、報告の期限がある案件は、後任に確実に渡してください。あなたが辞めたあとに問題にならないようにすることは、自分を守ることにもなります。

返すものと、持ち出してはいけないもの

営業車、社用の携帯電話、パソコン、デモ機、サンプル品、社員証、入館証など、貸与されているものは一覧にして返却します。

病院の担当者の連絡先、価格の情報、未発表の製品の情報は、持ち出してはいけません。入社時に秘密保持の誓約書を書いていることが多いので、一度読み返しておくと安心です。

お金と保険のこと

退職後に次の仕事がすぐ決まらない場合、雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付)を受けられる可能性があります。ハローワークの案内では、原則として離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あることが条件で、受給できる期間は原則として離職の翌日から1年間です。自己都合で退職した場合は給付が始まるまでの制限期間があるので、期間はハローワークで確かめてください。

健康保険は、会社の保険を任意継続するか、国民健康保険に切り替えるかを選びます。退職前に、どちらの保険料が安くなるか調べておきましょう。

有給休暇が残っていれば、引き継ぎの計画に組み込んで消化できるよう、早めに上司と相談してください。

運営者の視点から見た、医療機器業界の経験の活かし方

在宅ワークやフリーランスの市場を20年近く見てきた立場から言えば、医療機器メーカーで働いた経験は、会社を離れたあとも意外なほど長く役に立ちます。

医療機器の添付文書や取扱説明書の翻訳、医療従事者向けの製品資料の作成、営業担当向けの研修の講師、薬事の書類づくりの手伝いなど、業界の知識が前提になる仕事は、個人に直接依頼されることがあります。規制の言葉や病院の仕組みを説明しなくても分かってくれる人は、発注する側にとって頼みやすい相手だからです。

長く続いている人を見ていると、会社を辞めてすぐに独立するよりも、次の職場で働きながら少しずつ仕事を受け、「この人に任せると楽だ」という関係を育てている人が多い印象です。仲介を通さずに依頼者と直接やり取りできる場なら、同じ予算で依頼者はより多く頼め、受ける側の手取りも厚くなります。手数料0%の直接取引は、そうした関係を長く続けるための土台になります。

辞めたいと思ったあなたの気持ちは、これまで真剣に働いてきた証です。まず辛さを切り分け、休むべきときは休み、動かせることから動かしてみてください。人の話を聴き、次の一歩を一緒に考える仕事に関心が出てきた人は、職場・転職・キャリア相談のお仕事でどんな働き方があるかを見てみるのもよいと思います。

大丈夫。出ていく先は、あなたが思っているより、たくさんあります。

よくある質問

Q. 医療機器メーカーの営業を辞めたい理由で多いのは何ですか?

病院の手術や検査の時間に合わせて1日が決まること、緊急時に夜間や休日も連絡が来ること、担当エリアが広く移動の負担が大きいこと、病院と社内のルールの間で板挟みになることがよく挙げられます。扱う製品によって呼び出しの頻度は大きく違うため、辛さの原因が製品分野にあるのか、営業という仕事にあるのかを切り分けてから次を考えるのがおすすめです。

Q. 医療機器メーカーを辞めたあと、どんな転職先がありますか?

同じ職種で別の製品分野のメーカーに移る、販売代理店や医療分野のIT企業に移る、薬事や品質のコンサルティング会社に移るといった道があります。業界を変える場合も、規制の厳しい環境で記録を正確に残してきた経験や、専門職と信頼関係を築いてきた経験は、品質保証やBtoB営業などで評価されます。

Q. 辞めたいけれど体調が悪く、決断できません。どうすればいいですか?

眠れない、涙が出る、休日も仕事が頭から離れないといった状態なら、辞めるかどうかを決めるより先に休むことを優先してください。産業医への相談や、医師の判断に基づく休職を検討できます。健康保険の傷病手当金は、条件を満たせば支給を始めた日から通算1年6か月まで受けられます。厚生労働省のこころの耳でも相談窓口を探せます。

Q. 医療機器メーカーを辞めるとき、引き継ぎで気をつけることはありますか?

営業職なら病院ごとの手術予定や貸出機の返却予定、サービスエンジニアなら保守契約の点検予定、品質保証や安全管理なら対応中の不具合案件と報告の期限を、漏れなく後任に渡してください。病院の担当者の連絡先や価格情報、未発表製品の情報は持ち出さないようにし、入社時の秘密保持の誓約書も確認しておくと安心です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月21日最終更新:2026年9月16日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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