医療機器メーカーの志望動機をどう書くか|ここを選んだ理由の組み立て方

長谷川 奈津
長谷川 奈津
医療機器メーカーの志望動機をどう書くか|ここを選んだ理由の組み立て方

この記事のポイント

  • 医療機器メーカーの志望動機は「人命に貢献したい」だけでは差がつきません
  • メーカーの中で営業・サービス・開発・薬事がそれぞれ何をしているか
  • 治療系と診断系と消耗品で仕事がどう違うか

医療機器メーカーの志望動機を書こうとすると、多くの人が同じ一文から書き始めます。「人の命を支える仕事がしたい」。

その気持ちは本物だと思います。ただ、採用する側から見ると、この一文は応募者のほとんどが書いてくる言葉です。つまり、この一文だけでは、あなたがなぜ製薬会社でも病院でもなく医療機器メーカーを選んだのか、そしてなぜその会社なのかが伝わりません。

これ、知らない人が本当に多いんです。医療機器メーカーと一口に言っても、ペースメーカーを作る会社と、注射器や手袋を作る会社と、CTやMRIを作る会社とでは、社員が毎日やっている仕事がまったく違います。その違いを知らないまま書いた志望動機は、どの会社に出しても同じ文章になってしまう。

この記事では、医療機器メーカーという職場の中で何が起きているのかを先に整理し、そのうえで「ここを選んだ理由」を組み立てる手順をお話しします。途中で、志望動機に書いてはいけないことにも触れます。ここは法律が関わる話なので、少し丁寧に説明させてください。

医療機器メーカーは、どういう決まりの中で動いているのか

まず、職場の土台になっている決まりを押さえておきます。ここを知っているかどうかで、志望動機の深さが変わります。

医療機器は、法律でリスクごとに分けられている

医療機器は、医薬品医療機器等法(薬機法)で規制されています。そして、人の体に与えるリスクの大きさによって、4つのクラスに分けられています。

・クラスI:不具合があっても人体へのリスクが極めて低いもの(ピンセット、メス、X線フィルムなど) ・クラスII:リスクが比較的低いもの(電子血圧計、MRI、超音波診断装置、注射針など) ・クラスIII:不具合があると人体へのリスクが比較的高いもの(透析器、人工骨、放射線治療装置など) ・クラスIV:生命の危険に直結するおそれがあるもの(ペースメーカー、人工心臓弁、ステントなど)

リスクが高いクラスほど、国の承認を得るための手続きが重く、販売したあとの安全管理も厳しくなります。つまり、どのクラスの製品を扱う会社かによって、社員が担う責任の重さも、仕事の進め方も変わるのです。

作る会社と、売る責任を持つ会社

医療機器を市場に出すには、製造販売業の許可が必要です。製造販売業者は、製品の品質と安全性について最終的な責任を負います。工場で作っているのが別の会社であっても、責任を持つのは製造販売業者です。

そのため、医療機器メーカーの中には、品質保証、安全管理、薬事申請といった、法律に基づく仕事を担う部署があります。営業や開発のように表に出る仕事ではありませんが、会社の信頼を支える中心の仕事です。

業界には、独自のルールがある

医療機器業界には、公正競争規約という業界の自主ルールがあります。つまり、医療機関に対して過度な景品や接待を提供して、製品の選定をゆがめてはいけない、というルールです。

また、営業担当者が手術室などで医療機器の使い方を説明する「立会い」についても、業界の基準で、無償で行える範囲や期間が定められています。医療機器メーカーの営業が、製薬会社の営業とも、一般の法人営業とも違う働き方になる理由の1つがここにあります。

志望動機にこうした決まりを長々と書く必要はありません。でも、知ったうえで書いている人の文章は、1文の選び方が変わります。

メーカーの中で、誰が何をしているのか

次に、医療機器メーカーの中の仕事を見ていきます。志望する職種の中身を具体的に知ることが、「ここを選んだ理由」の出発点です。

営業

医療機器の営業は、病院やクリニックを訪問し、製品を紹介し、導入を提案します。相手は医師だけでなく、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師、そして病院の購買部門です。

1日の流れは、たとえばこうです。朝、担当する病院の手術予定を確認し、午前中は手術室で製品の使い方を説明する。昼は購買部門と価格や納期の打ち合わせ。午後は別の病院で、新しく導入された機器の勉強会を看護師向けに開く。夕方、会社に戻って、受けた問い合わせと在庫の手配をする。

製薬会社の営業(MR)が、主に医師に薬の情報を届けるのに対し、医療機器の営業は、製品を「実際に使う人」と長く関わり、使い方の支援まで担うことが多いのが特徴です。

サービスエンジニアとクリニカルスペシャリスト

大型の機器を扱う会社には、納入した機器の設置、点検、修理を担うサービスエンジニアがいます。故障すれば検査や手術が止まるので、急な呼び出しに対応することもあります。

また、医療現場の経験を持つ人が、製品の臨床での使い方を支援する職種を置く会社もあります。呼び方は会社によって違いますが、看護師や臨床工学技士、臨床検査技師の経験者が多く活躍している職種です。

開発

新しい製品や、既存製品の改良を担います。機械、電気、ソフトウェア、材料と、分野は多岐にわたります。医療現場の声を製品に反映するために、医師や看護師へのヒアリングを重ねるのも開発の仕事です。

近年は、診断を支援するソフトウェアのように、プログラムそのものが医療機器として扱われるものも増えています。

薬事、品質保証、安全管理

製品を国に申請するための書類を作る薬事、製品の品質を管理する品質保証、市場に出たあとの不具合の情報を集めて対応する安全管理。どれも、薬機法の決まりに沿って進める仕事です。

不具合の報告が上がってきたとき、それが患者さんの安全に関わるかを判断し、必要なら国に報告し、回収の要否を検討する。会社の判断の最後の砦になる部署です。

これらの部署の1日は、営業とはまったく違います。申請書類や手順書を読み込み、試験のデータと記載が合っているかを確かめ、社内の開発や製造の担当者に根拠を問い合わせる。机に向かう時間が長く、1つの申請に数か月から年単位で関わることもあります。

こうした職種を志望する人は、「医療に関わりたい」に加えて、「決まりを正確に読み、根拠を積み上げる仕事にやりがいを感じる」ことを書くと、職種の実際に合った志望動機になります。臨床検査技師や薬剤師、理系の研究職の経験は、この職種でとても評価されやすい経験です。

私がこれまで許認可に関わる書類に触れてきた感覚からも、申請の仕事で信頼される人は「分からないことを曖昧なまま書かない人」です。医療機器の薬事も同じで、その慎重さを自分の性格として示せる場面があれば、志望動機に入れる価値があります。

マーケティングと学術

製品の販売戦略を立てるマーケティング、医療従事者向けの資料や勉強会の内容を作る学術。臨床の知識と、正確な情報を伝える文章の力が求められます。

何を作っている会社かで、仕事の中身は変わる

ここが、「なぜこの会社なのか」を書くときにいちばん大切な部分です。

医療機器メーカーは、扱う製品によって、大きく4つの性格に分けて考えると分かりやすくなります。

治療系の機器を作る会社

カテーテル、ステント、ペースメーカー、人工関節、手術用の機器など、治療そのものに使う機器です。

営業は手術室に入り、医師のすぐそばで製品の説明をすることがあります。手術の予定に合わせて動くため、朝が早い日や、予定が急に変わる日もあります。1つの製品が患者さんの体の中に入るので、仕事の緊張感は高い。その分、医師や看護師と深い信頼関係を築ける仕事でもあります。

こうした会社に応募するなら、「治療の現場に近いところで、医療者と一緒に患者さんを支えたい」という軸が合います。

診断系の機器を作る会社

CT、MRI、超音波診断装置、内視鏡、検体検査の機器など、診断に使う機器です。

1台が高額で、導入は病院にとって大きな投資になります。営業の仕事は、数年単位の導入計画に関わる提案型の色合いが強く、放射線科や検査部門の技師と長く付き合います。導入後の保守や更新まで含めた関係づくりが中心です。

こうした会社に応募するなら、「病院の設備計画に長く関わり、検査の質を支えたい」という軸が合います。

消耗品を作る会社

注射器、輸液セット、手袋、ガーゼ、カテーテルの一部など、日々大量に使われる製品です。

1つあたりの価格は低いものの、病院全体で使う量が多く、採用されるかどうかが売上に大きく響きます。営業は、看護部や購買部門と、使いやすさや価格、安定した供給について話し合います。災害や感染症の流行で供給が止まれば、医療そのものが止まる。安定供給の責任が重い分野です。

こうした会社に応募するなら、「現場の毎日の医療を、途切れさせずに支えたい」という軸が合います。

在宅医療の機器を作る会社

睡眠時無呼吸症候群の治療に使う機器、在宅酸素療法の機器、在宅で使う輸液ポンプなど、患者さんの自宅で使う機器です。

医療機関だけでなく、患者さん本人や家族と接する機会があり、機器の使い方の説明や、トラブル時の対応を担うこともあります。高齢化で在宅医療が広がる中、需要が伸びている分野です。

在宅の機器では、夜間や休日に「機器のアラームが鳴り止まない」「停電のときはどうすればいいか」といった連絡が患者さんや家族から入ることがあり、24時間の対応窓口を設けている会社もあります。営業やサービスの担当者は、医療機関の医師や訪問看護師と連携しながら、患者さんの暮らしの中で機器が安全に使われ続けるよう支えます。病院の中の仕事よりも、生活に寄り添う感覚が強く求められる分野です。

こうした会社に応募するなら、「病院の外で、患者さんの暮らしを支えたい」という軸が合います。

どうでしょう。同じ「人の命を支えたい」でも、手術室で支えるのか、検査の質で支えるのか、毎日の消耗品で支えるのか、自宅での暮らしで支えるのかで、書くべき言葉がまったく変わります。

業界を志望する人が、よく書く理由を見直す

医療機器業界を志望する理由として、よく挙げられるのは次のようなものです。

医療機器業界とは、日本の高齢化や海外への売込みにより需要が高まっている分野です。人命を救うことに貢献できる仕事であり、社会貢献度が高い仕事であるため、その点に魅力を感じて志望しているという学生も多く見られます。 出典: careerpark-agent.jp

需要の高まりも、社会貢献度の高さも、事実として正しい理由です。ただ、「多く見られる」と書かれているとおり、これは多くの応募者に共通する理由でもあります。

志望動機で差がつくのは、この共通の理由に、自分だけの具体的な場面と、応募先の製品の特徴を足したときです。

業界を選ぶ前の迷いは、恥ずかしいことではない

就職活動や転職活動の途中で、「本当にこの業界でいいのか」と迷うのは自然なことです。実際、こんな声もあります。

27卒です。介護で内定をもらいましたが、夜勤が不安になってきて正直もうちょっと色々業界を見て決めても良かったなと思い始めています。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

医療や介護の分野に関心があっても、現場で直接ケアをする仕事と、機器を通して医療を支える仕事とでは、働き方が大きく違います。夜勤の有無、患者さんとの距離、関わる相手、評価のされ方。迷っている人ほど、医療機器メーカーの中の仕事を具体的に知ることで、「自分はどちらの支え方をしたいのか」が見えてきます。

そして、その迷いを経て選んだ理由は、志望動機の中でいちばん説得力のある部分になります。

経験別に、ここを選んだ理由を組み立てる

どの経験から応募する場合でも、骨組みは同じです。

  1. これまでの経験の中から、医療機器につながる場面を1つ選ぶ
  2. その場面で気づいたことや、感じた課題を書く
  3. だから医療機器メーカーを選び、その中でもこの会社を選んだ、とつなげる
  4. 入社後、その経験をどう活かすかを書く

新卒で応募する場合

学生時代の経験で、医療機器に直接関わった人は多くありません。それで構いません。

たとえば、家族が入院したときに見た医療機器、アルバイト先で接した高齢の方の在宅医療、理系の研究で扱った計測機器。1つの場面から「機器が医療の質を左右している」と気づいた経験を書けば、十分に具体的です。

そのうえで、応募先の製品分野を調べ、「その気づきが、なぜこの会社の製品につながるのか」を1文で書きます。

看護師や臨床工学技士など、医療職から応募する場合

医療職の経験は、医療機器メーカーでは大きな強みになります。製品を実際に使う立場の感覚を知っているからです。

つなげやすい場面は、「使いにくい機器が、現場の負担やヒヤリハットにつながっていた」経験や、「メーカーの担当者の説明で、現場の不安が解けた」経験です。

そこから、「使う側の感覚を、製品の支援や改善に活かしたい」とつなげます。応募先が治療系なら手術室や病棟の経験を、在宅系なら訪問や退院支援の経験を選ぶと、自然に結びつきます。

他業界の営業から応募する場合

法人営業の経験がある人の強みは、顧客の課題を聞き取り、提案し、長く関係を続ける力です。

つなげやすい場面は、「売って終わりではなく、導入後の支援で信頼を得た」経験です。医療機器の営業は、導入後の使い方の支援や保守まで含めた関係づくりが中心なので、その経験はそのまま活きます。

一方で、医療機器の営業には、先ほど触れた業界のルールがあります。「どんな手を使っても受注を取ってきた」という書き方は、この業界では逆効果になります。ルールの中で信頼を積み上げた経験を選んでください。

エンジニアから応募する場合

機械、電気、ソフトウェアの経験がある人は、開発やサービスエンジニアの職種で強みを発揮できます。

つなげやすい場面は、「自分の技術が、人の安全に直結する分野で使われることに関心を持った」きっかけです。医療機器の開発は、一般の製品開発よりも、記録を残し、手順を守り、リスクを評価する工程がはるかに重くなります。その重さを「面倒」ではなく「意味のある工程」と捉えられることを書けると、伝わりやすくなります。

志望動機に書いてはいけないこと

ここからは、私が特にお伝えしたい部分です。志望動機には、書くと法律上の問題になりうることがあります。

患者さんの情報

医療職から応募する人が、いちばん注意すべき点です。

看護師や臨床工学技士には、法律で守秘義務が課されています。つまり、仕事の中で知った患者さんの秘密を、正当な理由なく漏らしてはいけない、ということです。これは、その職を離れたあとも続きます。

志望動機で臨床の場面を書くときに、「〇〇病院の循環器内科で、70代の男性患者が〇月に…」のように、個人が特定できるほどの具体性で書いてしまう人がいます。書類は採用担当者だけでなく、複数の社員が目にするものです。

※場面は、年代や状況をぼかし、個人が特定できない形で書いてください。

前の職場の営業秘密

他の医療機器メーカーや製薬会社、代理店から応募する人は、前の職場の情報の扱いに注意が必要です。

不正競争防止法は、会社が秘密として管理している技術や営業上の情報を、不正に持ち出したり使ったりすることを禁じています。「前職で扱っていた病院ごとの納入価格を知っている」「前職の開発中の製品の情報を持っている」といったことを、志望動機や面接で自分の強みとして話すと、それだけで応募先に「情報の扱いに問題がある人」と受け取られます。

先日、ある方から相談を受けました。代理店から医療機器メーカーへの転職で、面接で「前職の取引先リストを活かせます」と話したところ、面接官の表情が変わった、と。結論から言うと、取引先の情報が前職で秘密として管理されていたなら、それを持ち出して使うことは法律上の問題になりえます。そして、応募先の会社もそのリスクを負うことになる。面接官が警戒したのは当然の反応でした。

強みとして書くべきなのは、情報そのものではなく、「顧客との信頼関係をどう築いてきたか」という経験です。

※前職との間で秘密保持や競業避止の誓約書を交わしている場合は、転職前にその内容を確認し、判断に迷うときは弁護士に相談してください。

製品の効果についての断定

志望動機の中で、応募先の製品について「〇〇の病気を必ず治せる製品」のように、効果を断定する書き方も避けたほうが安全です。医療機器の広告や情報提供には、効果を誇大に表現してはいけないという決まりがあります。応募書類は広告ではありませんが、その感覚を持っているかどうかは、採用担当者に伝わります。

例文と、書き直しの実際

ここで、看護師から治療系の機器メーカーの営業職に応募する場合を例に、書き直しの流れを見てみます。

よくある最初の下書き

「看護師として病院に勤務する中で、医療機器の重要性を実感しました。人の命を支える医療機器を通じて、より多くの患者様に貢献したいと考え、貴社を志望いたしました。」

この文章には、誤りはありません。ただ、どの医療機器メーカーにも同じ文章を出せてしまいます。

書き直した志望動機

「循環器の病棟で6年間勤務し、カテーテル治療を受けた患者様の術後管理に携わりました。治療の質が機器の選択と使い方に大きく左右されることを日々実感する一方で、新しい機器が導入されるたびに、看護師の間で扱い方の不安が広がる場面も見てきました。その不安を解いてくれたのは、病棟に足を運び、看護師の目線で説明してくださったメーカーの担当者でした。

貴社は循環器領域の治療機器を中心に、医療者向けの勉強会に力を入れていると伺っています。病棟で機器を使う側として感じてきた疑問や不安を、分かりやすい説明と導入後の支援に活かし、医療者が安心して治療に向き合える環境づくりに貢献したいと考え、志望いたしました。」

違いは3つです。1つ目は、経験の場面が具体的になっていること。2つ目は、患者さんの個人が特定できる情報を含めずに、場面を描いていること。3つ目は、応募先の製品分野と取り組みに、自分の経験が結びついていること。

※例文はそのまま使わず、必ずご自身の経験に置き換えてください。

面接で深く聞かれることに、備えておく

書類が通ると、面接では志望動機の中身を掘り下げられます。医療機器メーカーの面接で聞かれやすいのは、次のような質問です。

・なぜ製薬会社ではなく、医療機器メーカーなのですか ・なぜ当社の製品領域を選んだのですか ・医師から、ルール上できない依頼をされたらどうしますか ・製品の不具合について、医療機関から問い合わせがあったらどう動きますか ・手術の予定に合わせて、朝早くや急な対応が必要になることをどう考えていますか

3つ目と4つ目の質問は、この業界ならではです。

ルール上できない依頼、たとえば過度な接待や、基準を超える無償の立会いを求められたとき。正解は、その場で安易に引き受けず、会社の決まりを説明し、上司や社内の担当部署に相談することです。つまり、「顧客との関係」と「業界の決まり」の両方を守る姿勢を示せるかが見られています。

不具合の問い合わせについては、自分の判断で「問題ありません」と答えず、事実を正確に聞き取り、社内の安全管理の部署に速やかに報告する、という流れを答えられれば十分です。医療機器メーカーでは、市場に出た製品の不具合の情報を集め、必要な対応をとることが法律で求められています。現場の担当者がその入口になることを理解している人は、面接官に安心感を与えます。

私自身、法務の相談を受ける中で、医療機器の営業担当の方から「医師との関係を壊したくなくて、ルールの説明をためらってしまう」という悩みを聞いたことがあります。けれど、長く信頼される担当者ほど、最初にきちんと線を引いている。線を引くことは、関係を壊すことではなく、お互いを守ることなんです。

入社したあと、最初の1年に待っていること

志望動機を書くときに、入社後の姿を具体的に思い描けていると、文章の最後の1文に説得力が出ます。ここでは、営業職を例に、最初の1年の流れを描いておきます。

入社してすぐは、製品知識と医療の基礎を学ぶ研修が続きます。解剖や生理の基本、担当する領域の疾患と治療、製品の仕組み、そして薬機法や業界の決まり。医療職の経験がない人にとっては、ここがいちばん覚えることの多い時期です。

研修のあとは、先輩の営業に同行して病院を回ります。手術室に入る製品を扱う会社では、清潔と不潔の区別や、手術室での立ち位置といった、現場での振る舞いも学びます。医療者の仕事を妨げないことが、何よりも優先されるからです。

半年から1年ほどで、担当する病院やエリアを持つようになります。担当エリアは広く、転勤がある会社も少なくありません。求人票に「勤務地は全国」と書かれている場合は、その意味を面接で確かめておきましょう。

また、医療機器の情報を正しく伝えるための業界の資格として、医療機器情報コミュニケータ(MDIC)があります。取得を推奨している会社や、費用を支援している会社もあるので、入社後の学びの計画として志望動機の最後に触れておくのも1つの方法です。

こうした流れを知っていれば、「入社後はまず製品と疾患の知識を身につけ、担当する医療者の方に信頼される説明ができるようになりたい」という、地に足のついた1文が書けます。

応募先の会社を、どう調べるか

最後に、「なぜこの会社なのか」を書くための調べ方をまとめます。

・会社のWebサイトで、主力製品のクラスと領域(治療系、診断系、消耗品、在宅)を確認する ・医療従事者向けのページで、勉強会やトレーニングの取り組みを見る ・統合報告書や採用サイトで、今後力を入れる領域を確認する ・求人票で、担当エリア、訪問先の診療科、立会いの有無を確認する ・医療機器の情報提供に関する業界の資格(医療機器情報コミュニケータなど)の取得を支援しているかを見る

調べた内容のうち、自分の経験と結びつくものを1つだけ選び、志望動機に入れてください。たくさん並べるより、1つを深く書くほうが伝わります。

医療機器の世界では、プログラムそのものが医療機器として扱われる製品が増え、ソフトウェアの開発に関わる人の活躍の場も広がっています。一方で、看護師や臨床工学技士など臨床の経験を持つ人がメーカーを志望する例も多くあります。その場合は、臨床に残ったときの収入と並べて考えておくと、条件を冷静に比べられます。看護職全体の平均年収と単価の幅は、看護師の年収・単価相場で確認できます。

また、薬事や学術、マーケティングの職種では、正確で誤解のない文書を作る力が日々問われます。結論を先に置き、根拠と事実を分けて書くという基本を意識しておくと、志望動機を書くときにも、入社後の資料づくりにも役に立ちます。

長くこの市場を見てきた立場から言えば、専門知識を持つ人が組織の外でも長く仕事を得続けるとき、決め手になるのは「この人の説明は正確で、ルールを守る」という信頼です。仲介の手数料が間に入らない直接のやり取りであれば、依頼する側は同じ予算でより丁寧な仕事を頼め、受ける側は手取りが厚くなる。医療機器業界で求められる「正確さ」と「ルールの中で信頼を積む姿勢」は、どこで働くことになっても、そのまま自分の武器になります。

志望動機は、あなたの経験と、応募先の会社が作っている製品とを結ぶ文章です。会社の中で何が起きているのかを知り、書いてはいけないことを避けて、1つの場面を丁寧に書く。それだけで、「人の命を支えたい」という思いは、あなたにしか書けない言葉になります。法律はあなたの味方です。知ったうえで書けば、怖がる必要はありません。

よくある質問

Q. 医療機器メーカーの志望動機で、製薬会社との違いはどう書けばいいですか?

製薬会社の営業が主に医師へ薬の情報を届けるのに対し、医療機器メーカーは看護師や臨床工学技士など実際に使う人と長く関わり、使い方の支援まで担うことが多い点が違います。この「使う人を支える」という特徴と、自分の経験を結びつけて書くと、医療機器を選んだ理由が伝わります。

Q. 医療職の経験を志望動機に書くとき、注意することはありますか?

看護師などには守秘義務があり、職を離れたあとも続きます。臨床の場面を書くときは、病院名や患者さんの年齢、時期などで個人が特定できないよう、状況をぼかして書いてください。強みとして伝えるべきなのは患者さんの情報ではなく、機器を使う側として得た気づきや経験です。

Q. 前職の取引先の情報を、転職先で強みとして話してもいいですか?

前職が秘密として管理していた取引先の情報や価格情報を持ち出して使うと、不正競争防止法上の問題になりえます。面接でも警戒されやすいため、情報そのものではなく、顧客との信頼関係をどう築いたかという経験を伝えてください。誓約書がある場合は内容を確認し、迷うときは弁護士に相談してください。

Q. 医療機器メーカーの志望動機は、会社ごとに書き分けるべきですか?

書き分けることをおすすめします。治療系、診断系、消耗品、在宅医療の機器では、営業や支援の仕事の中身が大きく違うためです。応募先の主力製品の領域を調べ、自分の経験の中からその領域に結びつく場面を1つ選ぶだけで、その会社を選んだ理由がはっきり伝わります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月31日最終更新:2026年9月16日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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