講師の資格|教える仕事に役立つもの


この記事のポイント
- ✓教える場所によって必要なものと役立つものが分かれます
- ✓登録日本語教員のように法律で決まった資格と
- ✓研修講師やセミナー講師の民間認定
講師の資格を調べると、「資格は不要」という記事と「この資格を取れば講師になれる」という広告が並んでいて、どちらを信じればよいのか迷う人が多くいます。結論から書くと、講師に資格が必要かどうかは、教える場所によって決まります。学校の先生や、国の職業訓練の指導員、国が認定した日本語学校の教員のように、法律で資格が決められている講師がある一方、企業研修やセミナー、学習塾、オンライン講座の講師には、法律上の資格の条件がありません。この記事では、講師の資格を「法律で必要なもの」「民間の講師認定」「教える分野の専門資格」の3つに分けて整理し、自分に必要な資格の見極め方と、教える仕事の始め方までを順番に説明します。
講師の仕事は「どこで教えるか」で条件が変わる
講師と一口に言っても、教える場所と相手は大きく違います。まず、自分が目指す講師がどの種類に当たるかを確かめておくと、資格選びで遠回りをせずに済みます。
| 教える場所 | 主な相手 | 法律上の資格の条件 |
|---|---|---|
| 小学校・中学校・高校・特別支援学校など | 児童・生徒 | 教員免許状が必要 |
| 公共の職業訓練(ハロートレーニング) | 仕事を探している人、働いている人 | 普通職業訓練では職業訓練指導員免許が必要 |
| 国が認定した日本語教育機関 | 日本語を学ぶ外国人 | 登録日本語教員の資格が必要 |
| 企業研修・社内研修 | 会社員、管理職 | 条件なし(依頼主が経験や実績で判断) |
| セミナー・講演 | 一般の参加者 | 条件なし |
| 学習塾・予備校・家庭教師 | 児童・生徒 | 条件なし(運営する会社が採用の条件を決める) |
| オンライン講座・動画講座 | 一般の受講者 | 条件なし |
表のとおり、法律で資格が決められているのは、学校、公共の職業訓練、国が認定した日本語教育機関の3つが代表的です。それ以外の多くの講師の仕事では、資格の有無より「何を教えられるか」「教えた実績があるか」が見られます。
ただし、資格の条件が無いことは、資格が役に立たないことを意味しません。企業研修の担当者が社外の講師を探すとき、教える分野の資格や、講師としての認定は、実力を判断する手がかりになります。とくに初めて依頼する相手には、資格が信頼の入り口として働きます。
学習塾や予備校は、学校教育法でいう学校には当たらないため、教員免許が法律上の条件にはなっていません。ただし、運営する会社によっては、教員免許を持つ人を優遇したり、難関大学の出身であることを条件にしたりすることがあります。募集の要項で条件を確かめるのが確実です。
法律で資格が決まっている講師
学校の教員(教員免許状)
日本の学校で授業をするには、教員免許状が必要です。文部科学省の教員免許状に関するQ&Aには、次のように書かれています。
日本の学校の教員になるためには教員免許状が必要です。教員免許状がなければ、日本の学校で教壇に立ち、授業を行うことはできません。 出典: mext.go.jp
教員免許状を取る一般的な方法は、教職課程のある大学や短期大学で、法令で決められた科目と単位を修得して卒業し、都道府県の教育委員会に申請することです。免許状を授与するのは都道府県の教育委員会で、大学ではありません。さらに、公立学校で働くには教育委員会の教員採用試験に、私立学校で働くには学校法人の採用試験に合格する必要があります。
社会人から教員を目指す道もあります。文部科学省のQ&Aでは、優れた知識や経験を持つ社会人を学校に迎えるための特別免許状が紹介されています。特別免許状は大学で単位を修得する必要がなく、学校を設置する側の推薦に基づき、都道府県の教育委員会の審査を経て授与されます。
かつてあった教員免許の更新制は、令和4年7月1日に廃止されました。それ以降に授与される免許状も、その時点で有効だった免許状も、有効期限のない生涯有効なものになっています。昔取った免許状を持っている人は、期限が切れたと思い込まずに、手元の免許状を確かめてみてください。
職業訓練の指導員(職業訓練指導員免許)
国や都道府県が行う職業訓練(ハロートレーニング)で、溶接、電気工事、介護、パソコン事務などの技能を教える人を、職業訓練指導員といいます。厚生労働省は、職業訓練指導員を「テクノインストラクター」という愛称で紹介しています。
職業能力開発促進法第28条では、普通職業訓練の指導員は、原則として都道府県知事の免許を受けた人でなければならないと決められています。免許は職種ごとに分かれていて、次のいずれかに当てはまる人が申請して受け取ります。
- 指導員を育てる訓練の課程を修了した人
- 職業訓練指導員試験に合格した人
- 1と2と同等以上の能力があると認められた人
職業訓練指導員試験は、都道府県知事が行い、実技試験と学科試験があります。受験できるのは、技能検定に合格した人や、決められた実務の経験がある人などです。これまで仕事で身に付けた技能を生かして、教える側に回る道として選ばれています。都道府県の指導員の採用情報と試験の情報は、厚生労働省のテクノインストラクター(職業訓練指導員)のページから都道府県ごとにたどれます。
日本語学校の教員(登録日本語教員)
2024年4月に施行された日本語教育機関認定法により、国が認定した日本語教育機関(認定日本語教育機関)で教えるには、登録日本語教員という国家資格が必要になりました。文部科学省の案内によると、登録日本語教員になる道は次の2つです。
- 試験ルート。日本語教員試験の基礎試験と応用試験に合格し、登録実践研修機関で実践研修を修了する
- 養成機関ルート。登録日本語教員養成機関で養成課程を修了し、日本語教員試験の応用試験に合格し(基礎試験は免除)、実践研修を修了する
令和8年度の日本語教員試験は11月8日に行われ、基礎試験と応用試験の受験料は18,900円です。登録日本語教員の登録者数は、文部科学省の発表で20,075名(令和8年8月21日時点)です。すでに日本語学校で教えている人には、条件に応じて試験や研修が免除される経過措置もあります。
なお、地域のボランティアの日本語教室や、オンラインで個人に日本語を教える仕事には、登録日本語教員の資格は法律上の条件になっていません。ただし、教える力を示す手段として、資格の価値は今後高まっていくと考えられます。
研修講師・セミナー講師の民間認定
企業研修やセミナーの講師には、民間団体が講師としての技能を審査して認定する制度があります。資格が必須ではない分野だからこそ、「自分の教え方は通用するのか」を客観的に確かめたい人に選ばれています。
たとえば、日本プロフェッショナル講師協会の研修講師認定制度は、事前の提出物と模擬の登壇を審査し、一定以上の技能があると認められた人を認定講師として認定する仕組みです。審査の基になっているのは、IBSTPIという米国の非営利団体が研究してまとめた、講師に求められる能力の基準です。同協会の案内では、認定の有効期限について次のように書かれています。
※ 資格そのものに有効期限はありませんが、ロゴの使用や名称の利用は、有料会員を解約した場合、解約日より一年間のご利用となります。一年後も継続してご利用を希望される場合は、更新料として12,000円を申し受けます。 出典: j-pia.net
民間の講師認定は、団体ごとに審査の方法、費用、取得後の会費や更新料が違います。申し込む前に確かめておきたい点は次の5つです。
- 審査の中身。講座を受ければ誰でも取れるのか、模擬の登壇などで技能を審査するのかを確かめます
- 費用の総額。受講料、審査料、認定料のほか、取得後の年会費や更新料がかかるかを確かめます
- 取得後の支え。研修会社との仲介や、勉強会の機会があるかを確かめます
- 名乗り方の決まり。認定の名称やロゴを使える条件と期間を確かめます
- 取得者の実例。実際に認定を受けた講師が、どのような研修を担当しているかを確かめます
注意したいのは、「この資格を取れば講師として稼げる」と収入を約束するような勧誘です。講師の仕事は、資格よりも、教える内容と依頼主とのつながりで決まります。高額な講座の申し込みを急がせる勧誘には、契約の前に一度立ち止まって、費用と取得後に得られるものを比べてください。
コーチング、マナー、アンガーマネジメント、カラーなど、特定のテーマを教える講師を育てる民間資格も数多くあります。こうした資格は、そのテーマの内容と教え方をセットで学べるのが特徴です。ただし、取得すると講座を開く権利が得られる一方で、教材を団体から買う決まりや、受講料の一部を団体に納める決まりがある場合もあります。規約を読み、開講したあとの収支を計算してから申し込むと安心です。
教える分野の専門資格が講師の信頼をつくる
講師として依頼を受けるとき、講師としての認定以上に見られるのが、教える分野の専門資格です。パソコンの使い方を教えるならパソコンの資格、お金の話をするならお金の資格というように、教える中身の確かさを示す資格です。
| 教える分野 | 信頼の裏付けになる資格の例 | 試験を実施する団体 |
|---|---|---|
| パソコン・事務 | MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト) | オデッセイ コミュニケーションズ |
| IT・情報セキュリティ | ITパスポート試験、情報セキュリティマネジメント試験 | IPA(情報処理推進機構) |
| ネットワーク | CCNA | シスコシステムズ |
| お金・家計 | FP技能検定 | 日本FP協会、金融財政事情研究会 |
| 会計・経理 | 日商簿記検定 | 日本商工会議所 |
| ビジネス文書 | ビジネス文書検定 | 実務技能検定協会 |
たとえばIT企業の新人研修でネットワークの基礎を教える講師には、CCNAのような技術者認定が強い裏付けになります。CCNA(シスコ技術者認定)では、出題の範囲や、資格を生かせる仕事について紹介しています。
企業研修では、ビジネス文書の書き方や報告書の作り方を教える講師の需要も安定しています。自分自身の文書の基礎を固めるのにも役立つのがビジネス文書検定です。ビジネス文書の形式、敬語、表現の正しさを問う検定で、研修の資料やテキストを作るときの土台にもなります。
専門資格を選ぶときは、自分が教えたい相手が、その資格の名前を知っているかを考えてください。社会人向けの研修なら、受講者や人事担当者が名前を聞いて分かる資格のほうが、紹介文の一言で信頼を得やすくなります。
講師に必要な技能と、磨き方
資格の有無にかかわらず、講師として依頼が続く人には共通する技能があります。資格の勉強と並行して、次の5つを意識して磨いていくと、教える仕事の質が上がります。
内容を組み立てる力
講座の目標を決め、その目標に向けて内容を並べる力です。受講者が講座の終わりに「何ができるようになっているか」を先に決め、そこから逆算して、説明、例、練習の順に組み立てます。90分の研修なら、説明だけで終わらせず、受講者が手を動かす時間を必ず設けると、理解の度合いが大きく変わります。
伝える力
声の大きさ、話す速さ、間の取り方、資料の見せ方など、内容を相手に届ける力です。自分の講座を録画して見直すと、口癖や早口に気づけます。最初は恥ずかしく感じますが、上達の近道です。
場を進める力
受講者の反応を見ながら、質問を投げかけたり、話し合いの時間を設けたりして、場を前に進める力です。オンラインの研修では、受講者の表情が見えにくいため、チャットへの書き込みや、短い投票を取り入れる工夫が欠かせません。
振り返る力
講座の後にアンケートを取り、受講者の声をもとに内容を直していく力です。依頼主の企業に、研修の結果を短い報告書にして渡すと、次の依頼につながりやすくなります。
教材を作る力
講座で使うスライド、配布資料、練習問題を作る力です。スライドは1枚に伝えることを1つに絞り、文字を詰め込みすぎないようにします。配布資料は、講座の後に受講者が読み返して内容を思い出せるように、スライドより説明を厚くします。練習問題は、講座の目標と結びつけ、解き終えたときに「できるようになった」と実感できる難しさにします。
教材は一度作って終わりではなく、講座のたびに直していくものです。受講者が質問した箇所、つまずいた箇所に印を付けておき、次の講座までに説明を書き直します。この積み重ねが、ほかの講師には無い、自分だけの教材になります。依頼主によっては、教材を研修会社の書式で作るよう求めることもあるため、書式の決まりがあるかを最初の打ち合わせで確かめておきます。
これらの技能は、本を読むだけでは身に付きません。社内の勉強会で発表する、地域の講座でボランティアの講師を引き受ける、知人を集めて小さな勉強会を開くなど、実際に人前で教える機会を少しずつ増やしていくのが確実な方法です。
目的別に見る、講師の資格の選び方
ここまでの内容を、講師を目指す目的ごとに整理します。自分に近い目的を選び、上から順に確かめていくと、取るべき資格が絞り込めます。
学校や公的な訓練の場で教えたい
学校の教員を目指すなら、教員免許状が出発点です。大学で教職課程を履修していない社会人は、通信制の大学で教職課程を学ぶ道や、特別免許状の道があります。どちらが合うかは、教えたい教科や学校の種類、働き方によって変わるため、住んでいる都道府県の教育委員会の案内を確かめます。
職業訓練の指導員を目指すなら、まず自分の技能を技能検定などで証明し、職業訓練指導員試験の受験資格を満たしているかを確かめます。電気、機械、建築、介護など、仕事で長く使ってきた技能がある人ほど、この道を選びやすくなります。
日本語学校で教えたいなら、登録日本語教員の資格が必要です。試験ルートと養成機関ルートのどちらを選ぶかは、すでに日本語教育を学んだことがあるか、学ぶ時間をどれだけ確保できるかで決めます。
企業研修の講師になりたい
企業研修の講師を目指すなら、まず教える分野を1つに絞り、その分野の専門資格と実務の経験を軸にします。そのうえで、講師としての技能を確かめるために、民間の講師認定や、研修会社が行う講師養成の講座を検討します。研修の担当者は、講師の資格より「その分野で何をしてきた人か」を見ることが多いため、実務の経験を言葉にして説明できるように準備しておくことが大切です。
趣味や得意なことを教えたい
料理、手芸、写真、楽器など、趣味や得意なことを教える講師には、資格が無くても始められるものが多くあります。ただし、料理教室で食べ物を提供する場合の衛生の決まりや、教室として場所を借りるときの契約など、教える内容とは別の決まりが関わることがあります。始める前に、その分野で教室を開いている人の進め方を調べ、必要な手続きを住んでいる地域の窓口で確かめてください。
講師の仕事を探す方法
講師の仕事を探す方法は、目指す講師の種類によって違います。主な方法は次の4つです。
- 求人サイトで探す。学習塾、予備校、パソコン教室、職業訓練を行う民間の会社などは、求人サイトで講師を募集しています。勤務の時間や曜日、担当する科目や講座を確かめて応募します
- 研修会社に講師として登録する。企業研修の講師は、研修会社に講師として登録し、依頼主の企業に合わせて紹介してもらう形が多く見られます。登録のときには、担当できるテーマ、実務の経歴、登壇の実績を一覧にした資料を求められます
- 自治体や公的な機関の講座に応募する。公民館の講座や、自治体が行う市民向けの講座では、講師を公募していることがあります。地域で教えた実績を作る入り口になります
- 自分で講座を開いて集客する。オンライン講座の場を提供するサービスや、イベントの告知サービスを使えば、個人でも講座を開けます。最初は少人数でも、受講者の声を集めることで次の講座の信頼につながります
どの方法でも、応募や登録のときに見られるのは、担当できるテーマと実績です。教えた経験がまだ少ない人は、社内の勉強会や、ボランティアの講座で教えた経験も実績として書いてかまいません。受講者の人数、講座の時間、受講者の反応を具体的に書くと、依頼主が講座の様子を想像しやすくなります。
オンラインで教えるときの準備
講師の仕事は、オンラインで行われることが増えています。会場への移動が要らず、遠方の受講者にも教えられる一方で、対面とは違う準備が必要です。
まず整えたいのは、音声です。受講者は、映像が多少粗くても我慢できますが、声が聞き取りにくいと内容が頭に入りません。パソコンの内蔵マイクより、外付けのマイクやヘッドセットを使うと、声がはっきり届きます。次に、照明とカメラの位置です。顔が暗く映ると表情が伝わりにくいため、正面から光が当たるように机の位置を工夫します。
インターネットの回線が途切れたときの備えも欠かせません。資料のファイルを事前に受講者へ送っておく、スマートフォンからも参加できるようにしておくなど、講座が止まらない工夫をしておくと、依頼主からの信頼が高まります。
オンラインの講座では、受講者の集中が続きにくいことにも注意が必要です。説明を15分前後で区切り、その間に質問や短い練習を入れると、受講者の参加の度合いが保たれます。チャットへの書き込みや、画面上の投票の機能を使い、受講者が手を動かす時間を意識して作ります。
録画した講座を後から販売する形もあります。この場合は、受講者が途中で離れないように、1本の動画を短くし、各回の終わりに次の回で学ぶことを予告すると、続けて見てもらいやすくなります。
講師の働き方と報酬の受け取り方
講師の働き方は、大きく分けて3つです。
- 雇われて教える。学校、学習塾、職業訓練の施設などで、正社員や契約社員、アルバイトとして教えます
- 業務委託で教える。研修会社や、教室を運営する会社から、1回ごとや期間ごとに仕事を受けます
- 自分で講座を開く。セミナーやオンライン講座を自分で企画し、受講者を集めて教えます
企業研修の講師は、研修会社から業務委託で仕事を受ける形が多く見られます。業務委託とは、雇用ではなく、仕事の完成や作業の実施を約束して報酬を受け取る契約のことです。2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス保護新法)では、事業者がフリーランスに仕事を頼むとき、業務の内容、報酬の額、支払い期日などを書面やメールで示すことが義務になっています。研修の当日だけでなく、事前の打ち合わせや資料作りが報酬に含まれるのかも、契約の前に確かめておくと行き違いを防げます。
講師の報酬は、研修の時間、内容の専門性、講師の実績、資料を誰が作るかによって大きく変わり、一律の相場はありません。初めのうちは、研修会社のアシスタント講師として、ベテランの講師の進め方を間近で見ながら経験を積む人もいます。
業務委託で報酬を受け取る場合、会社員の副業であっても、所得の申告が必要になることがあります。所得税の確定申告の条件や、住民税の申告については、金額や働き方によって扱いが変わるため、国税庁の案内や、住んでいる市区町村の窓口で確かめてください。
自分で講座を開く場合は、教室の費用、集客の費用、教材の費用を自分で負担します。オンライン講座なら場所の費用はかかりませんが、受講者を集める手間は変わりません。最初は少人数の講座から始め、受講者の声をもとに内容を直しながら、続けて受けてくれる人を増やしていく進め方が堅実です。
学び直しの費用を抑える方法
講師を目指すための学び直しには、国の支援を使える場合があります。厚生労働省の教育訓練給付制度は、厚生労働大臣が指定した講座を修了すると、受講費用の一部が支給される仕組みです。雇用保険に加入していた期間などの条件があり、講座ごとに対象かどうかが決まっています。
対象になる講座は、パソコンや簿記などの専門資格の講座から、キャリアコンサルタントのような国家資格の養成講座まで幅があります。民間の講師認定の講座が対象になっているかどうかも講座ごとに違うため、申し込む前に確かめておく必要があります。対象の講座かどうかは、厚生労働省の教育訓練給付制度のページから検索の仕組みをたどって調べられます。
職業訓練指導員を目指す場合は、技能検定の合格が受験の道の1つになります。技能検定の受検料は都道府県によって違い、若い人には減額の制度が設けられていることもあるため、都道府県の職業能力開発協会の案内で確かめてください。
費用を抑えるもう1つの方法は、受講する講座を一度に決めず、まず無料の説明会や体験の講座で、講師の教え方と教材の質を確かめることです。講師を目指す人にとっては、ほかの講師の講座を受けること自体が、教え方を学ぶ機会になります。受講した講座で良いと感じた進め方や資料の作り方を書き留めておくと、自分の講座を作るときに役立ちます。
会社員のまま社内講師を務める場合は、勤務先の研修制度を使えることもあります。社内で講師を育てる取り組みに、国の人材開発支援助成金を使う企業もあります。助成金の仕組みについては、福祉用具貸与事業所のスキルアップ助成金2026|人材開発支援助成金の活用法で、事業所が社員の研修に助成金を使う流れを紹介しています。福祉の事業所の例ですが、助成金の申請の考え方は、ほかの業種にも共通する部分があります。
教える仕事で気をつけたい決まり
講師の仕事では、資格とは別に、知っておきたい決まりがいくつかあります。とくに企業研修や有料のセミナーでは、知らずに決まりを破ると、依頼主との信頼を失うことにつながります。
1つ目は著作権です。研修の資料に、本や記事の文章、図、写真、イラストを使う場面は多くあります。著作権法第35条には、学校などの教育機関の授業で、必要な範囲で他人の著作物を複製できる決まりがありますが、この決まりは営利を目的として設置された教育機関を除いています。企業研修や、有料のセミナー、学習塾の授業は、この決まりの対象にならないと考えておくのが安全です。他人の著作物を資料に使うときは、引用の条件を守るか、著作権を持つ人の許可を得ます。自分で図を描き、自分の言葉で書き直すのが確実です。
2つ目は、受講者の個人情報です。受講者の名簿、アンケートの回答、講座中の発言の記録には、個人を特定できる情報が含まれます。研修の依頼主から受け取った名簿は、研修が終わったら決められた方法で削除するなど、取り扱いの方法を契約の段階で確かめます。講座の様子を写真や動画で記録するときは、写り込む受講者の同意を取ります。
3つ目は、講座の内容に関わる決まりです。お金、健康、法律の話を扱う講座では、受講者の個別の事情に踏み込んだ助言が、資格を持つ専門家にしか許されていない業務に当たる場合があります。たとえば、個別の税金の計算や申告を代わりに行うことは税理士の業務です。一般的な仕組みの説明にとどめ、個別の相談は専門家につなぐ線引きを、講座の冒頭で受講者に伝えておくと安心です。
講師を始めるまでの3か月の進め方
講師の仕事を始めたいと思ったら、最初の3か月を次のように使うと、資格の勉強と実績づくりを並行して進められます。
| 時期 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 教える分野と相手を決め、必要な資格を確かめる。法律で資格が必要な場所かどうかを最初に判断する | 分野を1つに絞る |
| 2か月目 | 専門資格の勉強を始める。並行して、社内や地域で教える機会を1回作り、録画して見直す | 人前で1回教える |
| 3か月目 | 講座の資料を1本完成させ、受講者の声を集める。研修会社や教室の募集に応募するための実績の一覧を作る | 実績の一覧を作る |
この進め方の要は、資格の勉強が終わるのを待たずに、早い段階で一度教えてみることです。教えてみると、自分が説明できない部分や、受講者がつまずく部分が見えてきます。そこを資格の勉強で埋めていくと、知識が教える力に結びつきます。
3か月で講師の仕事を得られるとは限りませんが、教える分野、資格、実績の一覧の3つがそろうと、応募や依頼主への提案ができる状態になります。そこから先は、1回ずつの講座の質を上げ、受講者の声と依頼主の評価を積み重ねていくことが、次の依頼につながります。
運営者として見てきたこと
在宅ワークとフリーランスの仲介を2004年から続けてきた運営者として見てきた限りでは、教える仕事を長く続けている人は、資格の数よりも、教えた記録の積み重ねを大事にしています。担当した研修のテーマ、受講者の人数、受講者の声、依頼主から言われたことを1件ずつ残しておき、次の依頼主に見せられる形に整えています。資格は最初の信頼を得る助けになりますが、2回目の依頼を決めるのは、前回の研修の手応えです。
もう1つ見えてくるのは、仲介の手数料が重い仕組みほど、講師の手元に残る報酬が薄くなり、準備にかけられる時間が削られていくということです。依頼主と講師が直接やり取りし、手数料0%で契約できる形なら、同じ予算でも依頼主は研修の回数や準備の時間を確保しやすく、講師は手元に残る金額が厚くなります。その差は、資料の作り込みや事前の聞き取りの丁寧さとして、研修の質に表れます。
教えた実績を見せる方法は、文章を書く仕事の実績の見せ方と共通する部分が多くあります。Webライターのポートフォリオの作り方|案件獲得率が上がるテンプレート付き【2026年版】では、実績を選び、見せる順番を決め、依頼主に伝わる形に整える方法を紹介しています。講師の実績を一覧にするときの参考になります。
講師の資格は、教える場所が決まると、必要なものと役立つものがはっきり分かれます。学校、職業訓練、日本語学校で教えたいなら、まず法律で決められた資格の取り方を確かめてください。企業研修やセミナーで教えたいなら、教える分野の専門資格を軸にして、講師としての認定は技能を確かめる手段として選ぶのが堅実です。文書を使う研修を担当したい人は、ビジネス文書検定の出題の範囲から確かめてみると、教える準備の第一歩になります。
よくある質問
Q. 講師になるのに資格は必要ですか?
教える場所によって違います。学校で授業をするには教員免許状、公共の普通職業訓練で教えるには職業訓練指導員免許、国が認定した日本語教育機関で教えるには登録日本語教員の資格が必要です。企業研修、セミナー、学習塾、オンライン講座の講師には、法律上の資格の条件はありません。
Q. 研修講師の民間資格は取ったほうがよいですか?
自分の教え方を客観的に確かめたい人には役立ちます。模擬の登壇などで技能を審査する認定なら、講評をもとに改善点が分かります。ただし、団体ごとに費用、年会費、更新料、名乗り方の決まりが違うため、申し込む前に総額と取得後に得られるものを確かめてください。
Q. 昔取った教員免許は今も使えますか?
教員免許の更新制は令和4年7月1日に廃止されました。その時点で有効だった免許状は、手続きなしで有効期限のない免許状になっています。それ以前に期限が切れていた免許状の扱いは状況によって違うため、免許状を授与した都道府県の教育委員会に確かめてください。
Q. 社会人から講師を始めるには何から手を付ければよいですか?
まず教えたい分野と相手を決め、その分野の専門資格で知識の確かさを示せるように準備します。並行して、社内の勉強会や地域の講座など、人前で教える機会を少しずつ増やします。担当した講座のテーマ、人数、受講者の声を記録しておくと、研修会社に応募するときの実績になります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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