法人の青色申告承認申請書|出し遅れると赤字が繰り越せない


この記事のポイント
- ✓法人を作ったら出しておく青色申告の承認申請書について
- ✓承認を受けると何が得られるのか
- ✓代わりに何を求められるのか
法人を作った直後に出す書類のうち、出し忘れがいちばん高くつくのがこの青色申告の承認申請書です。設立届を出し忘れても後から届出すれば済みますが、こちらは期限を過ぎると、その事業年度は青色申告にできません。そして設立初年度は赤字になりやすいので、その赤字を翌期以降に持ち越せなくなります。
つまり、書くのに1時間もかからない紙を1枚出し忘れただけで、後から効いてくる不利益が生まれます。この記事では、申請書に何を書くのか、承認を受けると何が得られるのか、代わりに何を求められるのか、そしてどういう場合に承認が取り消されるのかを、国税庁の案内と法人税法の条文を確認しながら整理します。
青色申告とは、帳簿をきちんと付ける代わりに得をする仕組み
青色申告というのは、確定申告書を「青色申告書」として出す扱いを税務署に認めてもらう制度です。名前は色ですが、いまは用紙の色が青いわけではありません。制度としての中身は、帳簿をきちんと備えて記録し保存する法人に対して、税の計算でいくつかの有利な扱いを認める、という交換条件です。
法人税法は、承認を受けている法人は財務省令の定めるところにより帳簿書類を備え付けてこれに取引を記録し、かつ保存しなければならない、と定めています。つまり「帳簿を付けること」が条件であり、「帳簿を付けたら得をする」のが効果です。
ここで押さえておきたいのは、個人事業の青色申告とは効果が違うという点です。個人事業では青色申告特別控除という名前で、所得から一定額を引ける扱いがあります。法人にはこの控除がありません。法人の青色申告の価値は、赤字の扱いと、資産を費用にするタイミング、それに税務署の処分の手続きに現れます。
もうひとつ、承認は自動では付きません。法人を作っただけでは白色申告のままです。申請書を出して、承認を受けて、初めて青色申告書を出せるようになります。逆に言えば、この紙を出すかどうかだけで扱いが分かれます。事業の規模も、業種も、売上も関係ありません。
そして、法人で青色申告を選ばない理由はほとんどありません。後で見るように、引き換えに求められるのは帳簿をきちんと付けることだけで、これは青色でなくても法人には求められる水準です。要するに、やることはほぼ同じで、得をするかしないかだけが変わります。
申請書はいつまでに出すのか
期限の考え方を先に置いておきます。原則は、青色申告書で出そうとする事業年度が始まる日の前日までです。つまり、すでに動いている法人が来期から青色にしたいなら、今期のうちに出しておく形になります。
設立した法人の第1期については、別の定めがあります。国税庁は、普通法人の設立の日が属する事業年度の場合は、設立の日以後3か月を経過した日と、その事業年度終了の日とのうち、いずれか早い日の前日まで、と案内しています。
ここで注意したいのは、3か月と決まっているわけではないという点です。第1期が3か月より短い会社は、決算日の前日が期限になります。設立月と決算月が近い会社は、思っているより早く締め切りが来ます。期限の数え方は考えることが多いので、詳しくは自社の設立日と決算日を紙に書いて逆算してください。
提出先は納税地の所轄税務署長です。提出方法は、e-Taxソフトで作って送るか、書面で作って1部を持参または送付します。税務署の開庁時間は8時30分から17時までですが、閉庁日でも送付や時間外収受箱への投函で提出できます。
手続きの根拠は法人税法第122条、第125条第2項などです。
申請書に何を書くのか
用紙は1枚です。国税庁のページから様式と記載要領がダウンロードできます。書く内容は大きく2つに分かれます。会社の基本情報と、参考事項です。
会社の基本情報のほうは、設立届と同じものを書き写す作業です。納税地、法人名、法人番号、代表者の氏名と住所、事業種目、資本金または出資金の額、そして青色申告書によって申告書を提出しようとする事業年度。ここは登記事項証明書と定款から転記できます。
参考事項の欄が、この申請書に特有の部分です。記載要領は、次のように書き方を示しています。
「帳簿組織の状況」欄には、貴法人の伝票から総勘定元帳までの帳簿書類等の種類、形態及び記帳の時期を記載します。なお、「左の帳簿の形態」欄には、例えば、「3枚複写伝票」、「大学ノート」、「ルーズリーフ」、「装丁帳簿」のように記載し、「記帳の時期」欄には、例えば、「毎日」、「1週間ごと」、「10日ごと」のように記載します。 出典: nta.go.jp
例として挙がっているのが大学ノートやルーズリーフである点に、この様式の古さが出ています。いまは会計ソフトで付けている会社がほとんどなので、帳簿の名称として総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳などを書き、形態の欄には使っている会計ソフトの名前を書く形で差し支えありません。記帳の時期は、実際の運用に合わせて毎日か1週間ごとか、といった頻度を書きます。
ここで大事なのは、書いた内容がそのまま義務になるわけではない、という点です。承認の判断のための情報として聞かれているので、実態に近いものを書きます。逆に、実際には月末にまとめて入力しているのに「毎日」と書く必要はありません。
参考事項には、ほかに特別な記帳方法を採用しているかどうかの欄、税理士が関与している場合のその関与度合を書く欄があります。関与度合は、記載要領の例では「総勘定元帳の記帳から一切の事務」「伝票整理から一切の事務」のように具体的に書くよう求められています。税理士や税理士法人が申請書を作った場合は、その税理士が署名する欄もあります。
自分で帳簿を付けていて税理士に頼んでいないなら、この欄は空欄で構いません。税理士がいないと承認されない、ということはありません。
出した後に何もなければ、承認されたことになる
申請書を出したあと、承認の通知が来るのを待つことになりますが、通知が来ないまま期が終わることもあります。この場合の扱いが決まっています。
国税庁は、申請書を提出した場合において、青色申告書によって申告書を提出しようとする事業年度終了の日までに承認または却下の処分がなかったときは、その日においてその承認があったものとみなされる、と案内しています。中間申告書を出すべき法人については、その事業年度開始の日以後6か月を経過する日が基準になります。
つまり、何も言われなければ承認されたと考えてよい、という仕組みです。設立初年度に申請を出した会社は、たいていこの「みなし承認」の形で青色申告書を出すことになります。通知が届かないからといって、慌てて問い合わせる必要はありません。
なお、グループ通算制度の承認を受けた法人については、その承認の効力が生じた日において青色申告の承認があったものとみなされるため、この申請書を出す必要はありません。ひとり法人や小規模な会社には関係のない話ですが、様式の注意書きに出てくるので触れておきます。
得られること1 赤字を10年繰り越せる
いちばん大きいのがこれです。国税庁の解説は次のように述べています。
確定申告書を提出する法人の各事業年度開始の日前10年(注)以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、各事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入されます。 出典: nta.go.jp
欠損金額というのは、税の計算上の赤字のことです。これを10年にわたって将来の黒字から引ける、という扱いです。平成30年4月1日前に開始した事業年度に生じた分の繰越期間は9年です。
具体的に考えます。設立初年度に200万円の赤字を出し、2期目に300万円の黒字になった会社があるとします。青色申告の承認を受けていれば、2期目の所得は300万円から200万円を引いた100万円として計算されます。受けていなければ、300万円に対してそのまま税金がかかります。
繰越しの条件は2つあります。1つは、赤字が生じた事業年度に青色申告書である確定申告書を出していること。もう1つは、その後の各事業年度について連続して確定申告書を出していることです。注意したいのは、赤字の年に青色で出していれば、その後の年が白色になっても、その赤字については繰越しが使えるという点です。つまり、赤字が出る年に青色であることが決定的に重要になります。
引ける金額には限度があります。資本金1億円以下などの中小法人等であれば、その事業年度の所得金額まで全額を引けます。それ以外の法人は、繰越控除前の所得金額に一定の率を掛けた金額が限度です。ひとり法人や小規模な会社は前者に入るので、所得を0まで落とせる計算になります。
繰越しの手続きは、確定申告書に必要な明細を付けて申告することです。過去の赤字を管理し続ける必要があるので、会計ソフトと申告書の控えを年度順に保管しておいてください。
得られること2 前の年に払った税金を返してもらえる
赤字を将来に繰り越すのとは逆に、過去に戻す道もあります。
国税庁は、青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻して、法人税額の還付を請求することができる、と案内しています。
つまり、前の期に黒字で税金を払っていて、今期が赤字になった場合、前の期の税金の一部を返してもらえる仕組みです。繰越しは将来の黒字を待つ必要がありますが、繰戻しはいま現金が戻ってきます。資金が細っている局面では、こちらのほうが効きます。
この制度は、中小企業者等以外の法人については適用しないこととされている期間があります。中小企業者等の範囲は細かく定められていますが、資本金または出資金の額が1億円以下の普通法人は、大法人に支配されているなどの例外に当たらなければ含まれます。ひとり法人や小規模な会社は、使える側に入ります。
ただし、還付の請求をすると税務調査の対象になりやすい、という話を耳にすることがあります。制度として請求できるものを請求するのは正当な行為ですが、内容の確認は入ります。帳簿と証憑がそろっていることが前提になるので、そこは押さえておいてください。個別の判断は金額や事情で変わるため、使うかどうかは税務署か税理士に相談してから決めるのが確実です。
なお、この繰戻しも青色申告書を出していることが前提です。白色では使えません。
得られること3 30万円未満のものを一度に費用にできる
3つめは、資産を買ったときの扱いです。
原則として、10万円以上のものを買った場合は、その年に全額を費用にはできません。資産として計上し、決められた年数にわたって少しずつ費用にしていきます。この原則に対する例外が、青色申告の法人に用意されています。
国税庁の中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の解説では、中小企業者等が取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得して事業に使った場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金に算入できる、とされています。適用の対象になる期間は平成18年4月1日から令和8年3月31日までです。
上限があります。その事業年度に使ったこの特例の合計額が300万円を超えるときは、300万円に達するまでが限度です。事業年度が1年に満たない場合は、300万円を12で割って月数を掛けた金額になります。設立初年度が半年なら、150万円が上限という計算です。
対象になる法人は、中小企業者または農業協同組合等で青色申告書を提出するもののうち、常時使用する従業員の数が500人以下の法人です。特定法人については300人以下になります。ひとり法人や数人の会社は、当然この範囲に入ります。
実務でいちばん効くのは、パソコンやカメラ、工具などを買ったときです。25万円のノートパソコンを買った場合、原則どおりなら数年に分けて費用にしますが、この特例を使えばその年に全額を費用にできます。黒字の年に設備を入れるときの効き方が大きく変わります。
手続きとしては、事業に使った事業年度において取得価額に相当する金額を損金経理し、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添えて申告します。明細書の様式は別表16の7です。買っただけでは適用されないので、申告のときに忘れないでください。
なお、この特例は他の特別償却や税額控除、圧縮記帳と重ねて使うことはできません。また、令和4年4月1日以後に取得するものについては、貸付けの用に供したものが対象から外れています。
得られること4 税務署の処分に理由が書かれる
金額には表れませんが、手続きの上で意味のある効果があります。
税務署が申告の内容を直す処分をする場合、青色申告の法人に対しては、その理由を書面に付記することが求められています。つまり、なぜ直されたのかが文面で分かります。納得できなければ、その理由に対して反論できます。
白色申告の場合、この理由の付記が同じようには働きません。加えて、帳簿がそろっていない場合に、税務署が売上や所得を推定して計算する余地が広く残ります。推定で課税された金額に対して、こちらから覆すのは簡単ではありません。
小さな会社にとっては、この違いが最後の砦になります。帳簿を付けて青色申告にしていれば、説明できる材料が自分の手元にあります。付けていなければ、相手の推定に対して言い返す材料がありません。
引き換えに求められること
得られるものを並べてきましたが、条件があります。帳簿です。
法人税法は、承認を受けている法人は財務省令で定めるところにより帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ保存しなければならないと定めています。そして、税務署長は必要があると認めるときは、帳簿書類について必要な指示をすることができるとされています。
保存の期間も決まっています。国税庁は帳簿書類等の保存期間の解説で、法人は帳簿を備え付けて取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければならない、と案内しています。ただし、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度については10年間です。
帳簿の例として挙げられているのは、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳です。書類の例は、棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書です。
ここで気づいてほしいのは、これらは青色申告だから増える負担ではないという点です。法人は白色申告でも帳簿を付けて保存する義務があります。会計ソフトを使えば、仕訳を入れるだけで元帳や試算表は自動で出ます。つまり、青色申告のために追加でやることは、実質的には申請書を1枚出すことだけです。
電子で保存する場合のルールは電子帳簿保存法が定めています。紙の領収書をスキャンして保存する、電子取引のデータをそのまま保存する、といった扱いには要件があるので、運用を決めるときに確認してください。
承認が取り消される場合
承認は一度受けたら永久に続くものではありません。法人税法は、取消しの事由を次のように定めています。
第百二十一条第一項(青色申告)の承認を受けた内国法人につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、当該各号に定める事業年度まで遡つて、その承認を取り消すことができる。 出典: laws.e-gov.go.jp
挙げられている事実は4つです。
1つ目は、その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録または保存が、財務省令で定めるところに従って行われていないこと。帳簿を付けていない、保存していない、という状態です。
2つ目は、帳簿書類について税務署長の指示に従わなかったこと。
3つ目は、帳簿書類に取引の全部または一部を隠蔽し、または仮装して記載したこと、その他記載した事項の全体について真実性を疑うに足りる相当の理由があること。売上を抜いた、架空の経費を入れた、という場合です。
4つ目は、確定申告書を提出期限までに提出しなかったこと。これがいちばん見落とされます。帳簿をきちんと付けていても、申告を期限内に出さなければ取消しの事由に当たります。
取消しがあった場合、その事業年度の開始の日以後に提出した青色申告書は、青色申告書以外の申告書とみなされます。つまり、さかのぼって白色扱いになり、繰越していた赤字の扱いも変わります。取消しの処分をするときは、書面で通知され、その書面には4つのどれに当たるかが付記されます。
申告期限を守る、というのは当たり前のことに見えますが、ひとり法人で決算を自分でやっていると、1日遅れることは現実に起きます。青色申告の承認はそこに掛かっている、と知っておいてください。
白色申告のままだと何が変わるのか
申請書を出さなかった場合、その事業年度は白色申告になります。何が起きるのかを並べておきます。
まず、その年に出た赤字を翌期以降に繰り越せません。設立初年度は、登記費用、備品の購入、営業活動の経費が先に出て、売上が追いつかないことが多い時期です。ここで出た赤字を持ち越せないと、2期目に黒字が出た瞬間から税金がかかります。
次に、前の期に払った税金を返してもらう繰戻し還付も使えません。国税庁の欠損金の繰戻しによる還付の解説が示すとおり、この制度は青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合を前提にしています。
30万円未満の資産を一度に費用にする特例も、対象が青色申告書を提出する中小企業者等に限られているため、使えません。10万円以上のものは原則どおり数年に分けて費用にしていくことになります。
そして、帳簿を付けなくてよくなるわけではありません。法人は白色でも帳簿を備えて保存する義務があります。つまり、義務はそのままで、得られるものだけが消えます。これが「法人で青色申告を選ばない理由がほとんどない」と言われる理由です。
出し忘れに気づいたらどうするか。その事業年度について後からさかのぼって青色にすることはできませんが、次の事業年度からなら間に合います。原則の期限は、青色申告書で出そうとする事業年度が始まる日の前日までです。つまり、今期を白色で終えることが確定していても、今期のうちに申請書を出せば来期から青色になります。気づいた時点で出してください。
個人事業から法人にした人が迷うところ
個人事業で青色申告をしていた人が法人を作った場合、混同しやすい点が2つあります。
1つ目は、個人で受けていた青色申告の承認が法人に引き継がれないことです。個人と法人は税の上で別の人格なので、法人としての承認は法人として申請し直す必要があります。「もう青色でやっているから大丈夫」と考えて申請を出さないまま期限を過ぎる、というのが起きやすいところです。
2つ目は、個人事業のときに繰り越していた赤字を、法人の所得から引けないことです。個人の繰越損失は個人の所得に対して使うものなので、法人の申告には持ち込めません。法人化のタイミングを考えるときに、この点は計算に入れておく必要があります。個別の判断は事情によって変わるので、税務署か税理士に確認してください。
また、個人事業を続けるのか、やめるのかも決めておきます。法人に事業を移して個人事業をやめるなら、個人の側でも廃業に関する届出が必要です。個人と法人の両方を並行して動かす形にするなら、どちらの売上をどちらで受けるのかを最初に線引きしておかないと、帳簿が混ざります。
法人の口座とカードを個人のものと完全に分けるのは、この段階でやっておくのがいちばん楽です。後から分けようとすると、混ざった期間の仕分けに時間がかかります。青色申告の要件である帳簿の正確さも、ここが分かれているかどうかで大きく変わります。
申請書と一緒に考えておく届出
税務署に出す書類は、設立届と青色申告の承認申請書だけではありません。設立直後に検討するものを挙げておきます。
役員や従業員に報酬や給料を払うなら、給与支払事務所等の開設届出書を出します。ひとり法人で自分に役員報酬を払う場合も対象です。この届出を出すと、給料から預かった所得税を納めるための納付書が送られてきます。
給料から預かった所得税は、原則として毎月納めます。ただし、給与を支払う人数が少ない事業所向けに、納付を年2回にまとめられる特例があります。これを使うには別に申請が必要です。毎月の納付作業を減らしたいなら、設立時に検討しておくと手数が減ります。
棚卸資産の評価方法や、減価償却資産の償却方法についても、届出を出すことで原則とは別の方法を選べる仕組みがあります。届出をしなければ法定の方法が適用されるので、必ず出さなければならないものではありません。在庫を抱える事業や、設備投資が大きい事業なら、税理士に相談したうえで選ぶ価値があります。
消費税については、設立から一定の期間は納税の義務が免除される場合があります。一方で、インボイスの登録をすると、その免除とは別の扱いになります。取引先が事業者中心かどうかで判断が分かれるところなので、ここも設立時に一度整理しておいてください。どの届出も期限が別に決まっているので、税務署の案内で自社に必要なものを確認するのが確実です。
帳簿を付ける時間をどこから出すか
青色申告の承認を受けるのは簡単です。紙を1枚出すだけです。難しいのはそのあと、毎月の記録を続けることです。
編集部がこの市場を長く見てきた限り、法人化した人がつまずくのは会計の知識ではありません。売上が立っている月は忙しくて入力が止まり、暇な月にまとめて片付けようとして、年度末に膨大な量が残る。この繰り返しです。決算の直前に半年分の領収書を袋から出す、という状態になると、青色申告の要件そのものが危うくなります。
20年この市場を見てきた立場から言えば、続いている人は帳簿を「月末の作業」ではなく「入金と出金があった日の作業」にしています。まとめてやるほど重くなるので、分けているだけです。仕組みとしては、事業用の口座とカードを1つに絞り、会計ソフトに連携させておくのがいちばん効きます。手で入れる量が減れば、止まりにくくなります。
もうひとつ、運営者として見てきた実感を書いておきます。帳簿にかかる時間は、売上の大きさに比例しません。月に3件受けても30件受けても、記録の手間はそれほど変わりません。だから、1件あたりの単価が低いほど、事務の負担が重く感じられます。中間マージンが乗らない直接取引は、同じ予算で依頼者がより多くを頼めて、受け手の手取りが厚くなります。手数料0%の強みは、額面の大きさではなく手取りの厚さに出ます。同じ売上を少ない件数で立てられれば、帳簿も軽くなります。
いま自分の職種がどの水準で動いているのかを確かめるなら、公的統計をもとにしたソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場が手がかりになります。法人にして帳簿の手間が増えたのに単価が変わっていないなら、そこが先に直すところです。
受ける仕事の軸を組み直すなら、企業の業務にAIを組み込む相談が増えているAIコンサル・業務活用支援のお仕事や、法人として受託しやすいアプリケーション開発のお仕事に、仕事の中身と求められる経験が整理されています。申請書や明細書のような型のある文書を正確に扱う力を体系的に押さえたいなら、ビジネス文書検定の出題範囲が参考になります。
守りの面も、初年度のうちに一度そろえておくと後が楽です。発注側との関係を規律するルールはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに、支払われなかったときの手順と費用の目安は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】にまとまっています。青色申告の承認申請書を出したら、この2つに目を通しておくと、法人としての足元がひと通り固まります。
よくある質問
Q. 法人を作ったら青色申告の承認申請書は必ず出すべきですか?
出しておくのが基本です。承認を受けると赤字を10年繰り越せ、前期の税金の還付を請求でき、30万円未満の資産を一度に費用にできます。引き換えに求められるのは帳簿を付けて保存することですが、これは白色申告でも法人に求められる水準なので、実質的な追加負担は申請書1枚です。
Q. 設立第1期の申請期限はいつですか?
国税庁は、普通法人の設立の日が属する事業年度については、設立の日以後3か月を経過した日と、その事業年度終了の日とのうち、いずれか早い日の前日までと案内しています。第1期が3か月より短い会社は決算日の前日が期限になるため、設立月と決算月が近い会社は特に早く来ます。
Q. 承認の通知が届かない場合はどうなりますか?
青色申告書で申告しようとする事業年度終了の日までに承認も却下の処分もなかったときは、その日に承認があったものとみなされます。中間申告書を提出すべき法人は、事業年度開始の日以後6か月を経過する日が基準です。通知が来なくても、そのまま青色申告書を提出できます。
Q. 青色申告の承認が取り消されることはありますか?
あります。法人税法は、帳簿書類の備付けや記録や保存が定めどおりでないこと、税務署長の指示に従わないこと、取引を隠蔽または仮装して記載したこと、確定申告書を提出期限までに提出しなかったことを取消しの事由として挙げています。申告の遅れも対象になる点に注意が必要です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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