未経験から治験のコーディネーターで働く|受け入れている募集と、慣れるまで

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
未経験から治験のコーディネーターで働く|受け入れている募集と、慣れるまで

この記事のポイント

  • 治験コーディネーター(CRC)に未経験から転職したい方へ
  • SMO・病院・Phase I施設で任される範囲の違い
  • 来院日を軸にした1日の流れ

治験コーディネーターに未経験から入れるのか。結論から言うと、入れます。求人サイトで「CRC 未経験」と検索すると、未経験歓迎の募集がまとまって出てきます。ただし、その多くは「医療系の国家資格を持っている人」か「理系の知識がある人」を想定した未経験歓迎です。資格も医療の経験もまったくない状態だと、応募できる募集はぐっと絞られます。

もうひとつ、先に押さえておきたいことがあります。同じ「治験コーディネーター」という職名でも、雇われる先がSMO(治験施設支援機関)なのか、病院そのものなのか、健康な人を対象にした試験を行う施設なのかで、1日の動きも任される範囲もかなり変わります。求人票の職名だけ見て応募すると、入ってから「思っていた仕事と違う」となりやすい職種です。

この記事では、治験コーディネーターが働く職場の中で実際に何が起きているのかを軸に、未経験を受け入れている募集の形、資格の扱い、年収の相場、求人票で見ておきたい行、そして独り立ちするまでの時期に起きることを順番に整理します。

治験コーディネーターは、職場の中でどこに立っている仕事か

治験とは、新しい薬や医療機器を国に承認してもらうために、人を対象に行う臨床試験のことです。製薬会社(治験依頼者)が試験を計画し、病院やクリニック(実施医療機関)で医師が試験を行います。このあいだに入って、試験が決められた手順どおりに進むよう段取りを整えるのが治験コーディネーター、略してCRC(Clinical Research Coordinator)です。

治験の現場には、立場の違う人が何人も関わっています。整理すると次のようになります。

・治験責任医師:試験を実施する医師。被験者(試験に参加する患者さん)の診察と医学的な判断を担う ・CRC:医師の指示のもとで、被験者の来院の段取り、説明の補助、検査の手配、記録の作成を担う ・CRA(臨床開発モニター):製薬会社やCRO(開発業務受託機関)の担当者。試験が手順どおりに行われているかを外から確認する ・治験事務局(SMA):施設内の治験に関する書類、契約、審査委員会(IRB)の運営などを担う ・院内の看護師、薬剤部、検査部:採血や投薬、検体の処理などで試験に関わる

この中でCRCは、医師、患者さん、製薬会社側の担当者、院内の各部署のすべてと毎日やり取りする位置にいます。つまり「医療行為をする人」ではなく「医療行為が手順どおりに行われるよう、周囲を調整する人」です。看護師がCRCに転職すると、注射や採血などの手技をしなくなることに驚くことがよくあります。

では、なぜ未経験の募集が多いのか。背景には2つの事情があります。

1つ目は、CRCという職種が学校で育てられる仕事ではないことです。CRCになるための国家資格はなく、養成課程もほとんどありません。つまり、ほぼすべてのCRCが「未経験から入社して、会社の研修で育った人」です。採用する側も、未経験者を育てる前提で研修の仕組みを持っています。

2つ目は、治験の手順が細かく決まっていることです。治験は「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(GCP)という国のルールに沿って行う必要があり、試験ごとに実施計画書(プロトコル)が決まっています。やることの範囲がはっきりしているため、医療の基礎知識がある人なら、手順を覚えることで仕事ができるようになります。GCPを所管する厚生労働省のサイトでは、治験の仕組みについての一般向けの説明も公開されています。

正直なところ、「未経験歓迎」という言葉だけを見て、誰でも入れる仕事だと考えるのは危険です。未経験歓迎の中身は「CRCとしては未経験でよい」という意味であることがほとんどで、医療や理系の土台は前提に置かれています。この違いは、応募先を選ぶ段階でかなり効いてきます。

CRCの1日は、被験者の来院日を中心に組まれている

CRCの仕事は、担当する被験者がいつ来院するかによって、1日の組み立てが決まります。治験では、薬を飲み始めてから何週目にどの検査をするかが実施計画書で細かく決まっているため、来院日は動かせない予定です。そのほかの作業は、来院の合間に組み込んでいきます。

SMOに所属して病院に派遣されているCRCの、典型的な1日の流れを見てみます。

朝(8時半から9時頃) 事務所には寄らず、担当の病院へ直接向かう働き方が一般的です。病院に着いたら、その日に来院する被験者のカルテを確認し、実施計画書と照らし合わせて、今日行う検査や質問の項目を確認します。採血の本数、心電図の有無、飲み残した薬の回収など、チェックリストを作っておくことが多いです。

午前(9時から12時頃) 被験者が来院したら、受付から検査、診察、会計まで付き添う形で動きます。

・前回の来院から今日までの体調の変化、ほかに飲んだ薬の有無を聞き取る ・採血や心電図などの検査を、決められた順番とタイミングで手配する ・医師の診察に同席し、有害事象(試験中に起きた体調の変化)の記録に必要な情報を確認する ・次回の来院日を調整し、治験薬の受け渡しを薬剤部と連携して行う

新しく試験に参加する候補の患者さんがいる日は、医師が説明を行ったあとに、CRCが説明文書をもとに補足説明をします。これをインフォームド・コンセントの補助と呼びます。患者さんが納得して同意するまで、時間をかけて質問に答える場面です。

昼から午後(13時から16時頃) 来院が落ち着いたら、記録の作業に移ります。カルテや検査結果などの原資料をもとに、症例報告書(CRF)の内容を電子データ収集システム(EDC)に入力していきます。入力した内容に疑問点があると、製薬会社側からクエリ(問い合わせ)が届くので、その回答もこの時間に行います。

CRAが病院を訪問する日は、カルテと症例報告書を照合する作業(SDV)に立ち会い、指摘があればその場で確認します。

夕方(16時から17時半頃) 翌日以降の来院予定の確認、新しい被験者の候補になりそうな患者さんのカルテ確認(スクリーニング)、会社への日報の提出などを行い、そのまま帰宅します。

このように、CRCの1日は「午前は人と向き合い、午後は記録と向き合う」という形になりやすいです。私が医療系の特集を編集していたとき、CRCの方に1日の流れを聞いたことがあります。そのとき一番意外だったのは、「患者さんと話す時間より、記録を書いている時間のほうが長い日もある」という言葉でした。治験は記録がすべてで、記録に残っていないことは起きなかったことと同じ扱いになる。だから、書き方ひとつにも神経を使う、という話でした。

人と話すことが好きでこの仕事を選んだ人ほど、この事務作業の比重に戸惑います。逆に、正確な書類作りが苦にならない人は、医療の現場経験が浅くても評価されやすい仕事だと言えます。

SMO・病院・Phase I施設・食品試験で、任される範囲はこう違う

同じCRCでも、雇われる先によって仕事の中身が変わります。求人票を見るときは、まず「どこに雇われて、どこで働くのか」を確認してください。主な職場は4つです。

SMO(治験施設支援機関)に雇われるCRC 未経験の募集でもっとも多いのがこの形です。SMOは、自前でCRCを抱えられない病院やクリニックと契約し、CRCを送り込む会社です。社員は会社に所属しながら、担当の病院に通います。

特徴は、担当する施設や試験が変わりやすいことです。1人のCRCが複数の施設を掛け持ちし、がん、糖尿病、皮膚科など、領域の違う試験を並行して担当することもあります。幅広い試験を経験できる一方で、施設ごとにルールや人間関係が違うため、慣れるまでの負荷は大きめです。直行直帰が基本で、会社の事務所に行くのは研修や会議のときだけという人も少なくありません。

病院に直接雇われるCRC(院内CRC) 大学病院や大きな総合病院では、治験管理室などの部署を置き、病院の職員としてCRCを雇っていることがあります。看護師や薬剤師として病院に勤めている人が、配置転換でCRCになる形も多いです。

同じ施設に長くいるため、院内の医師や部署との関係が作りやすく、試験の立ち上げから終了まで一貫して関われます。ただし、外部からの未経験の募集は少なく、欠員が出たときに限られる傾向があります。給与は病院の給与体系に沿うため、看護師として勤めていた頃と大きく変わらないこともあります。

Phase I施設(健康な人を対象にした試験を行う施設)のCRC 新しい薬を初めて人に使う段階の試験は、健康な成人を対象に、専用の病棟を持つ施設で行われることがあります。被験者が数日から数週間入院するため、CRCや看護師は交代制で24時間体制を組むこともあります。

ここでは、決められた時刻に採血や投薬を行うタイムスケジュールの管理が仕事の中心になります。看護師資格があれば、CRCとして採血などの手技を担当することもあります。夜勤や泊まりがある募集もあるので、求人票の勤務時間の欄は必ず確認してください。

食品の臨床試験を行う施設のCRC 特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品の効果を確かめるヒト試験にも、コーディネーターが置かれます。医薬品の治験ほど厳格な規制の対象ではないものの、試験計画書に沿って被験者を管理し、記録を作る点は共通しています。

医薬品の治験より業務の範囲が限られていることが多く、医療系資格を問わない募集も見られます。医薬品の治験に進む前の入口として選ぶ人もいます。

違いを表にまとめると、次のようになります。

職場 未経験の募集 働く場所 特徴
SMO 多い 契約先の病院やクリニック 複数施設を担当、直行直帰が多い
院内CRC 少ない 自分が雇われている病院 1施設で長く関われる
Phase I施設 一定数ある 専用病棟 交代制や夜勤がある場合も
食品の臨床試験 資格不問の募集もある 試験を行う施設 規制が比較的ゆるやか

未経験から入る人の多くはSMOを選びます。理由は単純で、募集の数が多く、研修の仕組みが整っているからです。院内CRCは、今勤めている病院に治験管理室があるなら、異動の希望を出すという道も考えてみる価値があります。

未経験を受け入れている募集の形と、資格の扱い

未経験歓迎のCRC募集を並べてみると、応募条件はおおむね次の3つのパターンに分かれます。

パターン1:医療系の国家資格がある人を歓迎 看護師、臨床検査技師、薬剤師の資格を持っている人を優遇する募集です。未経験の募集の中でもっとも数が多い形です。採血や検査の段取り、薬の知識など、資格で学んだことがそのまま役に立つためです。資格手当が付く会社もあります。

特に臨床検査技師は、検体の処理や検査データの読み方に強く、CRCとの相性がよい資格として知られています。求人の中には「臨床検査技師資格の所持者に限る」とはっきり書いている募集もあります。

パターン2:理系の大学を出ている人なら資格不問 薬学部、看護学部、農学部、生命科学系などの理系学部を卒業した人を対象に、資格を問わない募集です。医療現場の経験がなくても、医学や生物学の基礎があれば研修で追いつける、という考え方です。新卒採用に近い扱いで、第二新卒の人が応募することもあります。

パターン3:医療系の業務経験があれば資格不問 製薬会社のMR、医療機器の営業、医療事務、治験以外の研究補助など、医療の周辺で働いた経験を評価する募集です。医療用語に慣れていること、医師とのやり取りに抵抗がないことが評価されます。医療事務の経験がある人は、カルテの構成や保険の仕組みを知っている点が強みになります。受付や会計で扱う知識の全体像は、医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)のページで確認できます。

逆に言えば、上の3つのどれにも当てはまらない場合、医薬品の治験のCRCに直接入るのは難しいのが実情です。その場合は、食品の臨床試験のコーディネーターや、治験事務局の補助、データ入力の仕事から入り、治験の仕組みに慣れてからCRCを目指すという順番も現実的です。

次に、CRCとしての資格についてです。

CRCになるために必須の資格はありません。ただし、働き始めてから取れる認定制度がいくつかあります。

・日本臨床薬理学会の認定CRC:一定期間のCRCとしての実務経験と、担当した試験の実績などが要件になる ・日本SMO協会の公認CRC:SMO協会の会員企業に勤めるCRCが対象で、研修と試験がある ・SoCRA(米国の臨床研究専門職の団体)の認定:英語での試験で、外資系の案件で評価されることがある

いずれも、実務経験を積んでから取るものです。未経験の段階で持っている必要はありません。面接で「入社後に認定CRCの取得を目指したい」と話せると、この仕事を長く続けるつもりであることが伝わります。

私が編集者として働き始めた頃、専門分野の記事を担当することになり、業界の資格や制度を一覧にして覚えようとしたことがあります。結果はあまりうまくいきませんでした。現場で使う順番を知らないまま名前だけを覚えても、頭に残らなかったのです。CRCの資格も同じで、応募の段階では「どんな資格があり、いつ取るものか」を知っておけば十分です。

年収と働き方の相場

CRCの年収は、雇われる先と持っている資格によって幅があります。求人に書かれている条件を並べると、おおよその相場は次のとおりです。

・SMOの未経験採用(医療系資格なし):年収300万円から400万円程度 ・SMOの未経験採用(看護師、臨床検査技師、薬剤師):年収350万円から480万円程度 ・経験を積んだCRCやリーダー職:年収450万円から600万円程度

求人の中には「年収500万円以上可」とうたう募集もありますが、多くは経験者や管理職を想定しています。未経験で入社した1年目からその水準に届くことは多くありません。

ここで気をつけたいのは、病院勤務の看護師からCRCに移ると、年収が下がりやすいことです。病棟の看護師の給与には夜勤手当が含まれているため、日勤だけのCRCに移ると、その分が減ります。看護師の年収が職場の種類や経験年数によってどう分布しているかは、看護師の年収・単価相場で確認できます。今の年収とCRCの提示額を比べるときは、夜勤手当を除いた額で比べると、判断を誤りにくくなります。

薬剤師の場合も、調剤薬局やドラッグストアの給与と比べると、CRCの初年度は低めに出ることがあります。薬剤師の年収の分布は薬剤師の年収・単価相場にまとまっています。

一方で、働き方の面では、CRCの募集には共通する傾向があります。

・日勤のみで、夜勤がない(Phase I施設を除く) ・土日祝日が休みで、年間休日は120日以上の募集が多い ・残業は月10時間から20時間程度と書かれていることが多い ・直行直帰が認められていて、通勤時間が短くなることがある

年収は下がっても、夜勤がなくなり、土日に休める生活に変わる。この交換を納得して選べるかどうかが、転職を決めるときの大きな分かれ目になります。

ただし、残業が少ないと書かれていても、実際には試験の立ち上げ時期や、複数の被験者の来院が重なる時期に忙しくなります。被験者の都合で来院が夕方にずれ込むこともあり、「定時に帰れる日が多いが、帰れない日もある」と考えておくほうが現実に近いです。

求人票のどの行を見れば、職場の実態が分かるか

CRCの求人票は、どの会社も「未経験歓迎」「研修充実」「残業少なめ」と似た言葉が並びます。そのため、見出しの言葉ではなく、条件の細かい行を読むことが大切です。確認したい行を順番に挙げます。

1. 雇用主と勤務地の書き方 「勤務地:当社が契約する首都圏の医療機関」と書かれていれば、SMOからの派遣の形です。担当する施設がどの範囲に散らばっているかで、移動の負担が変わります。「勤務地:〇〇病院 治験管理室」とあれば院内CRCです。

2. 担当エリアと転勤の有無 全国に拠点を持つSMOでは、配属先の地域が入社後に決まる場合があります。「転勤なし」と書かれているか、「担当エリアは本人の希望を考慮」とあるかを見てください。家庭の事情で転勤ができない人は、面接でも最初に確認しておきましょう。

3. 研修の期間と中身 「研修充実」とだけ書かれている場合は、面接で具体的に聞く必要があります。見ておきたいのは次の点です。

・入社後の座学研修が何週間あるか(GCP、医学の基礎、実施計画書の読み方など) ・先輩に同行する期間がどれくらいあるか ・独り立ちの目安が何か月とされているか

座学が1〜2週間で、すぐに現場に出る会社もあれば、1〜3か月かけて研修する会社もあります。未経験なら、同行期間が長い会社のほうが安心です。

4. チーム制か、1人担当か 「チーム制」と書かれている募集では、1つの施設や1つの試験を複数のCRCで担当します。休みを取りやすく、困ったときに相談しやすい体制です。1人で施設を担当する形は、自由度が高い一方で、慣れないうちは孤立しやすくなります。

5. 担当する領域 がん、生活習慣病、精神科、小児など、会社によって得意な領域が違います。がんの試験は検査や記録の量が多く、難易度が高い傾向があります。前職で経験した診療科に近い領域を扱う会社を選ぶと、入り口の負担が小さくなります。

6. 資格手当と給与テーブル 看護師や臨床検査技師の資格で、給与の基準額が変わる会社があります。資格を持っている人は、資格手当の有無と金額を確認しておくと、年収の比較がしやすくなります。

7. 求人の出方 同じ会社の同じ地域の募集が、1年を通して何度も出ている場合は、人の入れ替わりが多い可能性があります。一方で、新しい拠点の立ち上げや試験の増加で増員していることもあります。面接で「この募集は増員か、欠員補充か」を聞くのは、失礼な質問ではありません。

求人サイトの検索では、職種だけでなく条件の言葉を組み合わせると、目的の募集に近づけます。

検索のヒント:「営業」「アパレル」「カフェ バイト」といった職種・業種・働き方のほか「営業 未経験」のような条件でも検索できます。 出典: 求人ボックス

CRCの場合、「CRC 未経験 転勤なし」「治験コーディネーター 臨床検査技師」のように、自分が譲れない条件を足して検索すると、条件に合わない募集を最初から外せます。

入社から独り立ちまで、慣れるまでに起きること

未経験でCRCとして入社したあと、どんな順番で仕事を覚えていくのか。多くのSMOで見られる流れを、時期ごとにまとめます。

入社から1か月目:座学と用語の壁 最初の数週間は、会社の研修室やオンラインで座学を受けます。GCPの内容、治験の流れ、実施計画書の読み方、よく使う医学用語、EDCの操作などを学びます。

この時期につまずきやすいのは、略語の多さです。AE(有害事象)、SAE(重篤な有害事象)、ICF(同意説明文書)、CRF、SDV、IRBなど、会話の半分が略語という場面もあります。看護師出身の人でも、治験特有の言葉には最初は戸惑います。単語帳を作って、出てきた言葉を毎日追加していく人が多いです。

2か月目から4か月目:先輩への同行 座学が終わると、先輩CRCの担当施設に同行します。最初は見学が中心で、少しずつ被験者の来院対応や記録の入力を任されていきます。

この時期に苦労するのは、施設ごとのルールです。同じ病院でも、診療科によって検査の出し方やカルテの書き方が違います。医師によって連絡を好む時間帯も違います。これは研修資料には書かれていないことで、先輩のやり方を見て覚えるしかありません。

5か月目から半年頃:担当を持ち始める 比較的手順の少ない試験や、被験者の少ない試験から、自分の担当として持ち始めます。先輩が近くにいる状態で、一人で来院対応をこなし、記録をまとめていきます。

最初に担当を持ったときに多い失敗は、実施計画書で決められた検査の時期を見落とすことです。たとえば「投与開始から4週目の来院日の前後3日以内に採血」といった条件があり、これを外すと計画からの逸脱として記録を残す必要があります。チェックリストを自分で作り、来院の前日に必ず見直す習慣が、この失敗を防ぎます。

1年目以降:複数の試験を並行して担当する 1年が過ぎる頃には、複数の試験を並行して担当するようになります。担当の数が増えると、来院日の重なりや記録の締め切りが同時に来るため、スケジュール管理の力が問われます。

この時期に「思っていた仕事と違う」と感じて辞める人もいます。理由として多いのは、事務作業の多さ、施設と会社のあいだに立つ板挟み、そして医療者として患者さんに直接ケアをしたいという気持ちとのずれです。

未経験で入社した人の声として、転職の過程で経験者の話を聞けたことが不安の解消につながった、という感想があります。

担当のコンサルタントの方がとても丁寧で、数年前の新卒だった時に登録していたことも覚えてくださっていました。私の質問にも迅速に答えてくださったり、担当の方から求人を紹介してくださったり、とても良くしていただきました。未経験の業界なので不安でしたが、経験者の話を聞けて本当によかったです。他にも書類の添削やズームでの座談会などとても良かったです。 出典: crcjob.jp

入社前に現役のCRCから話を聞いておくと、上に書いたような「入ってから気づくずれ」を小さくできます。会社説明会や座談会の機会があれば、1日の中で事務作業がどれくらいを占めるかを、具体的に聞いてみてください。

志望動機と転職の進め方

未経験からCRCに応募するときの志望動機は、「治験に興味がある」だけでは弱くなります。採用する側が知りたいのは、この人がCRCという仕事の中身を理解したうえで、どこに自分の経験を使うつもりか、という点です。

志望動機は、次の3つの要素で組み立てると伝わりやすくなります。

1. 今までの経験の中で、CRCにつながる場面 看護師なら、患者さんへの説明や、検査の段取り、多職種との調整の経験。臨床検査技師なら、検体の扱いやデータの正確さへのこだわり。医療事務なら、カルテや書類を正確に扱ってきた経験。どんな職種でも、CRCの仕事のどこかにつながる場面があります。

2. なぜ臨床の現場ではなく、治験なのか ここが面接で必ず聞かれるところです。「夜勤がつらいから」は本音であっても、それだけを話すと、仕事そのものへの関心が伝わりません。「治療の選択肢が限られた患者さんに、新しい薬が届くまでの過程に関わりたい」「目の前の患者さんのケアだけでなく、将来の患者さんにもつながる仕事をしたい」など、治験ならではの意味と結びつけて話すと説得力が出ます。

3. CRCの仕事の大変さを理解していること 記録の正確さが求められること、医師と製薬会社のあいだに立つ調整役であること。こうした点を理解したうえで応募していることを伝えると、入社後のミスマッチを心配する採用担当者の不安を和らげられます。

転職の進め方としては、次の順番が現実的です。

・求人サイトで「CRC 未経験」を検索し、募集の数と条件の分布をつかむ ・SMOの会社説明会や座談会に参加し、1日の流れや研修の中身を聞く ・医療系の転職に強い転職支援サービスに登録し、非公開の募集も含めて比較する ・自分の資格や経験で応募できる募集に絞り、研修体制と担当エリアで比べる

医療系の転職支援サービスは、CRCの採用事情に詳しい担当者がいるかどうかで、得られる情報の質が変わります。利用者の感想を見ると、業界の内部事情に詳しいことや、面接の準備で自分の考えを整理してもらえたことを評価する声が見られます。

キャリアの方向を一人で決めきれないときは、専門家に相談するのも一つの方法です。キャリアの相談を受ける仕事がどのようなものかは、職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介されています。相談する側として、どんな支援が受けられるのかを知る手がかりにもなります。また、相談の専門家の資格についてはキャリアコンサルタントのページにまとめられています。

運営者の視点から見た、この仕事で長く続く人

フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、医療系の資格を持つ人の働き方は、ここ数年で明らかに広がっています。病院やクリニックで働き続ける道だけでなく、治験、医療機器、ヘルスケアの企業、医療記事の監修など、資格と経験を別の場所で使う人が増えてきました。CRCは、その中でも「臨床の経験を持ったまま、臨床とは違う形で医療に関わる」代表的な選択肢です。

運営者として見てきた限りでは、職種を移ったあとに長く続く人には共通点があります。前の仕事で身につけたことを、新しい仕事のどこで使えるかを自分の言葉で説明できる人です。CRCで言えば、「看護師として患者さんの小さな変化に気づいてきた経験が、有害事象を拾うときに役立つ」と具体的に言える人は、入社後の苦しい時期も、自分の強みを軸に乗り越えていきます。反対に、「今の職場から離れたい」という理由だけで移った人は、新しい職場の大変さに直面したとき、支えになるものが少なくなります。

もうひとつ、長く続く人は、所属する組織の外にも自分の経験を話せる場所を持っています。CRCとして数年働いた人の中には、治験の仕組みを一般の人向けに解説する記事を書いたり、医療系の転職を考える人の相談に乗ったりと、会社の外で知識を活かす人もいます。こうした仕事は、仲介の手数料が乗らない直接のやり取りであれば、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めて、受ける側の手取りも厚くなります。会社員として安定して働きながら、少しずつ外の仕事にも関わっていく。その積み重ねが、次のキャリアの選択肢を増やしていきます。

未経験から治験のコーディネーターを目指すなら、まずは自分の資格と経験が、上で整理した3つの募集パターンのどこに当てはまるかを確かめてください。そのうえで、SMOか院内か、どの領域を扱う会社かを選び、求人票の研修と担当エリアの行を読み比べる。この順番で進めれば、入社してからのずれを小さくしながら、新しい職場に入っていけます。

よくある質問

Q. 医療系の資格がなくても治験コーディネーターになれますか?

なれますが、応募できる募集は限られます。未経験歓迎の募集の多くは看護師、臨床検査技師、薬剤師の資格を持つ人か、理系の大学を卒業した人を想定しています。資格も医療経験もない場合は、食品の臨床試験のコーディネーターや治験事務局の補助から入り、治験の仕組みに慣れてからCRCを目指す順番が現実的です。

Q. 看護師からCRCに転職すると年収は下がりますか?

下がることが多いです。病棟勤務の給与には夜勤手当が含まれているため、日勤のみのCRCに移るとその分が減ります。SMOの未経験採用では年収350万円から480万円程度の提示が多く見られます。比較するときは、今の年収から夜勤手当を除いた額で比べると判断しやすくなります。

Q. 未経験で入社してから一人で担当できるまで、どれくらいかかりますか?

会社によって違いますが、座学研修と先輩への同行を経て、半年前後で比較的手順の少ない試験の担当を持ち始めるのが一般的です。複数の試験を並行して担当するようになるのは1年目以降が目安です。求人票や面接で、同行期間と独り立ちの目安を確認しておくと安心です。

Q. SMOと院内CRCでは、未経験者にはどちらが向いていますか?

未経験から入る場合はSMOが選びやすいです。募集の数が多く、未経験者を育てる研修の仕組みが整っているためです。院内CRCは同じ施設で長く関われる利点がありますが、外部からの未経験募集は少なめです。今勤めている病院に治験管理室がある場合は、異動の希望を出す道も検討できます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月19日最終更新:2026年9月15日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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