アジャイルとは何か|開発以外のチームの仕事にも取り入れる考え方と進め方

@SOHO編集部
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アジャイルとは何か|開発以外のチームの仕事にも取り入れる考え方と進め方

この記事のポイント

  • ✓アジャイルソフトウェア開発宣言の4つの価値と12の原則
  • ✓ウォーターフォール型との違い
  • ✓メリットとデメリットから整理しました

アジャイルとは、計画を最初に固めきらず、短い期間で作って確かめることをくり返しながら、変化に合わせて進め方を変えていく仕事の考え方です。もとはソフトウェア開発の分野で生まれた言葉ですが、いまは営業や企画、事務の改善、Webサイトの運用など、開発以外のチームの仕事でも使われるようになりました。

一方で、「言葉は聞くけれど、結局何をすればいいのか分からない」「会議が増えただけで終わった」という声もよく聞かれます。この記事では、アジャイルの意味と生まれた背景、もとになった宣言の中身、従来の進め方との違い、メリットとデメリットを順に整理し、開発以外のチームが小さく始めるための手順まで説明します。チームの仕事を見える形で回す道具の選択肢の1つとして、カンバンやガントのボードを使えるPinatecaも紹介します。

アジャイルとは何か

「アジャイル(agile)」は英語で「すばやい」「機敏な」という意味の言葉です。情報処理推進機構(IPA)が運営するDX SQUAREの解説では、ITやビジネスの場面では「方針の変更やニーズの変化などに機敏に対応する能力」を指すと説明されています。

ただし、アジャイルは1つの決まった手順の名前ではありません。IPAの解説は、アジャイルが次のように幅の広い言葉であることを指摘しています。

アジャイルとは価値観や原則であり、ソフトウェア開発手法であり、ビジネス手法でもある複雑な概念です。その概念構造を「家」になぞらえて、「アジャイル開発の家」として整理してみると以下のような構造になります。 出典: dx.ipa.go.jp

同じ解説では、この「家」を、土台が組織文化、2本の柱が人間中心と技術の尊重、屋根と梁が役に立つ動くソフトウェアを通じたビジネス価値の最大化、という形で整理しています。手順だけをまねても、土台になる組織の文化や、人を大事にする姿勢がなければうまくいかない、という意味です。

アジャイルという言葉が使われる場面は、大きく分けると次の3つです。

  • 考え方としてのアジャイル:価値を届けることを中心に、試して確かめ、やり方を変えていく姿勢
  • 開発の進め方としてのアジャイル:短い期間でソフトウェアを作って見せ、反応を見て次の作業を決める進め方
  • 組織や働き方のアジャイル:部署の壁を越えて小さなチームを作り、決めることをチームに任せる仕組み

「アジャイルとは何か」と調べている人の多くは、職場で「うちもアジャイルでやろう」と言われた、取引先がアジャイル開発を提案してきた、研修で言葉が出てきた、といったきっかけを持っています。その場合に知っておきたいのは、アジャイルは「速く作る技術」というより、「分からないことが多い仕事を、小さく試しながら進めるための考え方」だという点です。最初に全部を決められる仕事なら、無理にアジャイルにする必要はありません。逆に、作りながらでないと正解が見えない仕事では、大きな力を発揮します。

アジャイルが生まれた背景と、もとになった宣言

アジャイルという言葉が広く使われるきっかけになったのは、2001年に公開された「アジャイルソフトウェア開発宣言」です。当時、それぞれ別のやり方で軽い開発の進め方を実践していた17人のソフトウェア開発者が集まり、共通する価値観を短い文章にまとめました。

それまでのソフトウェア開発では、最初に要件を細かく決め、設計、製造、テストの順に工程を進める進め方が一般的でした。この進め方は、作るものがはっきりしている仕事では計画どおりに進めやすい一方で、途中で利用者の要望が変わったり、作ってみて初めて問題が分かったりすると、手戻りが大きくなります。数か月かけて完成させたものが、使う人の求めていたものと違っていた、ということが起きやすかったのです。

宣言の日本語訳は、次のように書かれています。

プロセスやツールよりも個人と対話を、 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、 契約交渉よりも顧客との協調を、 計画に従うことよりも変化への対応を、 価値とする。すなわち、左記のことがらに価値があることを認めながらも、私たちは右記のことがらにより価値をおく。 出典: agilemanifesto.org

大事なのは最後の一文です。宣言は、手順書や計画、契約を不要だと言っているわけではありません。それらにも価値があると認めたうえで、迷ったときには人どうしの対話、実際に動くもの、相手との協力、変化への対応を優先する、と言っています。

4つの価値を、開発以外の仕事に読み替える

宣言はソフトウェア開発の言葉で書かれていますが、IPAの解説でも、「ソフトウェア開発」を「製品やサービス」や「働き方」に読み替えても通じると書かれています。たとえば、営業資料を作るチームに当てはめると、次のようになります。

宣言の価値 営業資料づくりに読み替えた例
個人と対話 決められた承認の流れを待つより、営業担当と作り手が直接話して決める
動くソフトウェア 完璧な企画書を書くより、1枚の試作を作って現場で使ってもらう
顧客との協調 依頼の範囲を細かく交渉するより、使う人と一緒に中身を詰める
変化への対応 最初の構成にこだわるより、反応を見て構成を組み替える

宣言の背後にある12の原則

宣言には、「アジャイル宣言の背後にある原則」という12の原則が添えられています。そのうち、開発以外の仕事にも当てはめやすいものを挙げると、次の5つです。

  1. 顧客満足を最優先し、価値のあるものを早く継続的に届ける
  2. 要求の変更は、たとえ後半であっても歓迎する
  3. 依頼する側と作る側は、期間を通して日々一緒に働く
  4. 一定のペースを続けられるように、無理のない進め方を保つ
  5. チームは定期的に振り返り、やり方を調整する

原則には「動くソフトウェアを、2から3週間から2から3か月という、できるだけ短い時間間隔でリリースする」という一文もあります。期間の長さはチームによって違っても、「短く区切って、途中で見せる」という考え方が中心にあることが分かります。

ウォーターフォール型との違い

アジャイルと比べられることが多いのが、ウォーターフォール型と呼ばれる進め方です。滝の水が上から下へ流れるように、要件定義、設計、製造、テスト、納品の順に工程を進め、原則として前の工程に戻らない進め方を指します。IPAの解説では、計画の変更を想定しない進め方を「予測型」、状況の変化への対応をくり返す進め方を「適応型」と呼び、アジャイル開発は適応型にあたると説明しています。

2つの違いを表に整理すると、次のとおりです。

比べる点 ウォーターフォール型(予測型) アジャイル(適応型)
計画の立て方 最初に全体を細かく決める 大まかな方向を決め、短い期間ごとに詳しく決める
途中の変更 手戻りが大きいので、できるだけ避ける 前提として受け入れ、次の期間の計画に反映する
成果を見せる時期 最後にまとめて納品する 短い期間ごとに、使える形で見せる
向いている仕事 作るものが決まっていて、変更が少ない仕事 正解が分からず、試しながら決める仕事
進み具合の測り方 計画に対してどこまで進んだか 実際に使える成果がどこまで積み上がったか

どちらが優れているという話ではありません。建物の工事や、法律で手順が決まっている手続きのように、途中で大きく変えられない仕事では、ウォーターフォール型のほうが安全です。一方で、新しいサービスの立ち上げや、Webサイトの改善、社内の業務の見直しのように、やってみないと分からないことが多い仕事では、アジャイルの考え方が合います。

実際の現場では、両方を組み合わせることも多くあります。たとえば、全体の予算と大きな期限はウォーターフォール型のように最初に決め、その中で作る中身は2週間ごとに見直す、という進め方です。「アジャイルにするか、しないか」の二択で考えるより、「この仕事のどの部分が、まだ分からないのか」を見極めて、分からない部分に短い区切りと振り返りを入れると考えると、取り入れやすくなります。

アジャイルの代表的な進め方

アジャイルは考え方なので、具体的な進め方にはいくつかの種類があります。IPAの解説でも、アジャイル開発には厳格な決まりごとはなく、「唯一の正しい」アジャイル開発というものはないと書かれています。ここでは、開発以外のチームでもよく使われる2つを紹介します。

スクラム

スクラムは、アジャイルの進め方のなかで最もよく知られたものです。考案したケン・シュエイバー氏とジェフ・サザーランド氏が公開している「スクラムガイド」(scrumguides.org、日本語版あり)では、スクラムを、複雑な問題に対して人々やチームが価値を生み出すための軽量級のフレームワークだと説明しています。

スクラムでは、1か月以内の決まった長さの期間(スプリント)をくり返します。チームは、仕事の優先順位を決めるプロダクトオーナー1人、進め方を支えるスクラムマスター1人、作業を進める開発者で構成し、スクラムガイドでは通常10人以下とされています。スプリントの中では、計画を立てる場(スプリントプランニング)、毎日15分の打ち合わせ(デイリースクラム)、成果を関係者と確かめる場(スプリントレビュー)、やり方を振り返る場(スプリントレトロスペクティブ)を開きます。スクラムガイドには、スクラムで使う「開発者」という言葉は開発者以外を排除するものではない、という説明もあり、開発以外の仕事に使うことも想定されています。

カンバン

カンバンは、仕事を1件ずつカードにして、「やること」「進行中」「確認待ち」「完了」のような列に並べ、カードを左から右へ動かしながら進める方法です。期間を区切るスクラムと違い、カンバンは仕事の流れそのものを見える形にすることを重視します。

カンバンでよく使われる工夫が、「進行中」の列に入れられるカードの数に上限を決めることです。たとえば「進行中は1人2枚まで」と決めておくと、手をつけたまま止まっている仕事が増えにくくなり、どこで仕事が詰まっているかがすぐに分かります。問い合わせ対応や事務作業のように、仕事が次々と入ってきて、期間で区切りにくい仕事に向いています。

どちらから始めるか

迷ったときは、次のように考えると決めやすくなります。

  • 大きな目標があり、それに向けて中身を少しずつ作っていく仕事(新しいサービス、Webサイトの作り直し、イベントの企画)なら、期間で区切るスクラムの形が合う
  • 次々と入ってくる仕事をさばく仕事(問い合わせ対応、経理や総務の事務、制作物の修正依頼)なら、流れを見るカンバンの形が合う
  • どちらか分からないなら、まずカンバンのボードで仕事を見える形にし、慣れてきたら2週間ごとの振り返りを加える

アジャイルのメリット

アジャイルの考え方を取り入れると、仕事の進め方にどんな良いことがあるのでしょうか。IPAの解説は、アジャイル開発のメリットを次のように説明しています。

アジャイル開発は、小さく始めて、MVP(必要最低限の機能を備えたプロダクト)を素早くリリースします。そして利用者の反応を確かめながら、仕様を柔軟に変更していきます。このメリットは、リスクを最小化して、成功の可能性を高められることです。 出典: dx.ipa.go.jp

これを仕事全般に置き換えると、メリットは大きく4つに整理できます。

メリット1:手戻りが小さくなる

短い期間ごとに成果を見せるので、方向がずれていても早い段階で気づけます。3か月かけて作った資料が使われないより、1週間で作った試作を見せて「この方向ではない」と分かるほうが、失う時間ははるかに小さくて済みます。IPAの解説でも、うまくいかなければ早く撤退でき、むだな費用を抑えられることが理由として挙げられています。

メリット2:使う人の声を早く取り込める

作る側が想像で決めるのではなく、実際に使う人の反応を見て次の作業を決めるので、出来上がったものが使われやすくなります。社内向けの仕組みでも同じで、経理の申請の手順を見直すなら、現場の何人かに試してもらってから全社に広げるほうが、反発が少なく、定着も早くなります。

メリット3:チームの状況が見える

毎日の短い打ち合わせや、カンバンのボードで、誰が何をしていて、どこで止まっているかがチーム全員に見えるようになります。上司が1人ずつ進み具合を聞いて回る必要がなくなり、困っている人に早く手を貸せます。

メリット4:やり方そのものが良くなっていく

定期的な振り返りで、うまくいったことと、うまくいかなかったことを話し合い、次の期間で1つずつ直していきます。仕事の中身だけでなく、進め方そのものが少しずつ良くなっていくのが、アジャイルの大きな特徴です。

アジャイルのデメリットと、よくある誤解

良いことばかりではありません。アジャイルを取り入れてうまくいかなかったチームには、共通する原因があります。

デメリット1:全体の期限と費用が見えにくい

中身を少しずつ決めていくので、「最終的に何がいつ、いくらでできるのか」を最初に約束しにくくなります。予算を年度の初めに決めなければならない組織や、取引先に完成の日付を約束しなければならない仕事では、この点が大きな壁になります。対策としては、期間と予算の上限を先に決め、その中で優先順位の高いものから作る、という形にするのが一般的です。

デメリット2:決める人が関わらないと進まない

アジャイルでは、短い期間ごとに「次に何をやるか」を決める必要があります。その判断をする人が忙しくて打ち合わせに出てこない、決めたことが上の会議でくつがえる、という状態では、チームが動けなくなります。スクラムガイドでも、プロダクトオーナーの決定を組織全体で尊重する必要があると書かれています。

デメリット3:形だけまねると会議が増えるだけになる

毎日の打ち合わせ、2週間ごとの振り返り、と形だけを入れると、会議の時間が増えただけで中身が変わらない、ということが起きます。IPAの解説も、スクラムなどの進め方を表面的になぞるだけでは目的を達成できないと注意しています。

誤解:アジャイルでは書類を作らなくてよい

宣言に「包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを」とあることから、アジャイルでは書類を作らなくてよいと受け取られることがあります。IPAの解説は、これを誤解だとはっきり書いています。宣言には「左記のことがらに価値があることを認めながらも」とあり、価値のある必要な書類は作るのが当然だという説明です。開発以外の仕事でも、決めたことの記録や、引き継ぎに必要な手順の書き出しは、むしろ短い期間でくり返すからこそ欠かせません。

誤解:アジャイルは計画を立てない

アジャイルは計画を立てないのではなく、計画を何度も立て直す進め方です。むしろ、短い期間ごとに計画を作り直すので、計画にかける回数は増えます。違うのは、遠い先の細かい計画を最初に固めないことです。

開発以外のチームの仕事に取り入れる例

アジャイルの考え方は、ソフトウェアを作らないチームでも使えます。ここでは、取り入れやすい仕事の例を4つ挙げます。

例1:Webサイトやブログの運用

Webサイトの改善は、作ってみて、見た人の反応を数字で確かめ、また直す、という仕事なので、アジャイルと相性が良い分野です。2週間ごとに「この期間に直すページ」を3つほど決め、期間の終わりに閲覧数や問い合わせの数を見て、次に直すページを選びます。最初に1年分の改善計画を作るより、反応を見ながら直す順番を変えるほうが、成果が出るまでの時間が短くなります。

例2:営業資料や提案書の作成

営業資料は、作る人と使う人が違うことが多い仕事です。作り手が1か月かけて完成させてから営業担当に渡すのではなく、最初の1週間で骨組みだけを作って営業担当に見せ、実際の商談で1回使ってもらってから中身を詰めていきます。使う人の声が早く入るので、使われない資料が減ります。

例3:事務の手順の見直し

経費の精算、備品の購入、請求書の発行といった事務の手順を見直すときも、いきなり全社の手順を変えるのではなく、1つの部署で2週間試し、困ったことを振り返ってから広げる、という進め方が使えます。カンバンのボードで「見直す手順」「試している手順」「定着した手順」を分けておくと、どこまで進んだかが一目で分かります。

例4:イベントやキャンペーンの準備

社内イベントや販促のキャンペーンは、期日が決まっているので、全体はウォーターフォール型のように逆算して日程を組みます。そのうえで、中身の準備(告知の文面、会場の手配、当日の進行)は1週間ごとに進み具合を確かめ、遅れている作業や変更が必要な作業を早めに見つけます。期日を守る仕組みと、中身を柔軟に変える仕組みを組み合わせた形です。

小さなチームでアジャイルを始める手順

ここからは、3人から8人ほどのチームが、明日からアジャイルの考え方を試すための手順を紹介します。最初から全部をそろえる必要はありません。

ステップ1:チームが目指すことを1文で決める

「この3か月で、問い合わせへの返信を、受け付けた翌営業日までに返せる状態にする」のように、チームが目指すことを1文で書きます。目指すことがあいまいだと、何を優先するかを決められません。

ステップ2:やることを書き出して、優先順に並べる

目指すことのために必要な作業を、付箋やスプレッドシートにすべて書き出します。そのうえで、効果が大きく、すぐに取りかかれるものを上にして、上から下へ1列に並べます。同じ順位のものを作らず、必ず順番を付けるのがこつです。

ステップ3:期間の長さを決める

最初は1週間か2週間にするのがおすすめです。短すぎると準備と振り返りに追われ、長すぎると方向のずれに気づくのが遅れます。決めた長さは、慣れるまで変えずに続けます。

ステップ4:期間の初めに、やることを選ぶ

期間の初めに30分ほど集まり、並べた一覧の上から、その期間に終えられる分だけを選びます。終えられるかどうか迷う作業は、もっと小さく分けます。「新しい手順書を作る」ではなく、「現在の手順を書き出す」「現場の2人に見てもらう」「直したものを共有する」のように、1日から2日で終わる大きさにすると、進み具合が分かりやすくなります。

ステップ5:毎日10分から15分、状況を共有する

毎日決まった時間に、全員が「昨日やったこと」「今日やること」「困っていること」を短く話します。ここで細かい議論はしません。困っていることがあれば、打ち合わせのあとに関係する人だけで話します。全員が同じ場所にいないチームなら、チャットに3行で書く形でも構いません。

ステップ6:期間の終わりに、成果を見せて振り返る

期間の終わりには、まず終わった作業を関係者に見せ、意見をもらいます。そのあとチームだけで、「うまくいったこと」「うまくいかなかったこと」「次の期間に1つだけ変えること」を話し合います。変えることを1つに絞るのが、続けるためのこつです。

この6つを2回か3回くり返すと、チームの中に自然とリズムが生まれます。最初の1回目でうまくいかなくても、振り返りで直していけばよい、というのがアジャイルの考え方そのものです。

紙やスプレッドシートで足りる場面と、道具を使う場面

アジャイルを始めるのに、特別な道具は必要ありません。全員が同じ部屋で働く3人ほどのチームなら、ホワイトボードに「やること」「進行中」「完了」の3列を書き、付箋を貼って動かすだけで十分に回ります。在宅のメンバーがいても、人数が少なく作業の数も少ないうちは、共有のスプレッドシートに作業名、担当、期限、状態の列を作れば、同じことができます。

一方で、次のような状態になったら、専用の道具を使うほうが楽になります。

  • メンバーが5人を超え、スプレッドシートを同時に書き換えて内容がぶつかることが増えた
  • 作業ごとのやり取りがチャットに散らばり、どの話がどの作業のことか分からなくなった
  • 期限の重なりを見たいが、表のままでは全体の予定が見えない
  • 業務委託のメンバーなど社外の人と一緒に進めるので、見せる範囲を分けたい

チームの仕事をボードで回す道具の選択肢の1つが、Pinatecaです。公式サイトによると、Pinatecaにはカンバン、ガント、カレンダー、リスト、ディスカッション、グリッド、時間割、リソースの8種類のボードがあり、作業をカードにして列に並べるカンバンの形と、期間を横棒で並べるガントの形を、同じ道具の中で使い分けられます。ワークスペースごとのチャットと、カードごとのコメントがあるので、作業についてのやり取りをその作業のすぐ隣に残せます。Trelloからボードやカードを移す機能や、ChatGPTやClaudeから話しかけてボードを読んだり動かしたりする機能もあります。料金は、5人までのチームならボード10個まで無料で、すべての種類のボードとチャットを使えます。6人目または11個目のボードからはスタンダードプラン(1人あたり月額500円・税抜、年払いなら1人あたり月額400円)になります。

Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。

どの道具を選ぶにしても、道具を入れる前に、ステップ1からステップ6までの進め方を紙かスプレッドシートで1回か2回試しておくことをおすすめします。進め方が決まっていない状態で道具だけを入れると、ボードに作業が並ぶだけで、誰も見なくなることが多いからです。

外部の人と組んでアジャイルで進めるときの注意点

小さな会社では、Webサイトの改善やアプリの開発を、フリーランスや外部の会社に頼むことがよくあります。このとき、アジャイルの進め方を取り入れるなら、依頼する前にいくつかのことを決めておく必要があります。

依頼する側も、決める役割を担う

アジャイルでは、短い期間ごとに「次に何を作るか」を決める必要があります。外部の人に任せきりにすると、この判断ができず、作る側が困ってしまいます。依頼する側から、優先順位を決める人を1人決めて、期間ごとの打ち合わせに必ず出るようにします。

「何を作るか」より「どう進めるか」を約束する

アジャイルでは、最初に作るものを細かく決めきらないので、契約や発注の段階で「何ができあがるか」をすべて書くことはできません。その代わり、期間の長さ、打ち合わせの頻度、作業時間の見込み、成果の確かめ方、途中でやめるときの扱いを決めておきます。IPAは、アジャイル開発をITの会社に頼むときの考え方や契約前のチェックリスト、契約書のひな形をまとめた「アジャイル開発版 情報システム・モデル取引・契約書」を公開しています。外部に頼む前に一度目を通しておくと、決めておくべきことの抜けを防げます。契約の形や細かい条件は事情によって変わるので、必要に応じて専門家に確かめてください。

小さな依頼から始める

初めての相手と組むときは、いきなり大きな案件を頼むより、2週間ほどで終わる小さな作業を1つ頼み、進め方が合うかを確かめるのが安全です。期間ごとの成果を見せてもらい、振り返りでお互いのやり方を合わせていけば、そのまま次の期間へ続けられます。これも、小さく試して確かめるというアジャイルの考え方そのものです。

求人と年収のデータから見る、アジャイルの考え方が生きる仕事

最後に、仕事を探す側と頼む側の両方の視点から、アジャイルの考え方がどんな仕事で求められているかを見ておきます。

アジャイルが最もよく使われているのは、やはりソフトウェアの分野です。アプリケーション開発のお仕事では、Webアプリやスマートフォンのアプリを作る仕事の内容と、求められる技術を紹介しています。この分野では、短い期間ごとに動くものを見せる進め方が広く使われているので、業務委託で関わる場合も、期間ごとの打ち合わせや振り返りに参加することが多くなります。

最近は、AIを業務に取り入れる支援の仕事でも、アジャイルの考え方が役立ちます。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、企業の業務にAIを取り入れる手伝いをする仕事を紹介しています。AIの使い方は、試してみないと効果が分からないことが多いので、小さな業務で試して、効果を確かめてから広げる進め方が基本になります。マーケティングやセキュリティの分野の仕事をまとめたAI・マーケティング・セキュリティのお仕事でも、広告やWebサイトの改善を、数字を見ながら短い間隔で直していく仕事が多く紹介されています。

デザインの仕事も、作って見せて直す、をくり返す点でアジャイルと近い仕事です。デザイナーの年収・単価相場では、デザイナーの年収と、業務委託で受けるときの単価の目安を紹介しています。試作を早く見せて意見をもらい、直す回数を前提に見積もりを組む進め方は、アジャイルの考え方と重なります。

組織全体の進め方を見直す立場では、経営の視点が欠かせません。中小企業診断士は、中小企業の経営を診断し、助言するための国家資格で、業務の見直しや組織の改善を支援する仕事につながります。

2004年から在宅ワークとフリーランスの仲介を続けてきた運営者として見てきた限りでは、外部の人とうまく長く続いている仕事には、共通点があります。最初から大きな依頼をするのではなく、小さな依頼で進め方を確かめ、途中で成果を見せ合い、決めたことを記録に残している、という点です。これは、アジャイルという言葉を使っていなくても、アジャイルの考え方そのものです。また、仲介の手数料がかからない直接のやり取りでは、同じ予算で頼める作業の回数が増え、受ける側の手取りも厚くなります。短い期間で何度も頼み直すアジャイルの進め方にとって、1回ごとのやり取りの負担が軽いことは、続けやすさに直結します。

アジャイルは、特別な技術ではなく、「分からないことは小さく試して確かめる」「決めたことは見える形で共有する」「やり方は定期的に見直す」という、当たり前のことを続けるための考え方です。まずはチームの仕事を1つ選び、1週間か2週間の区切りで、試して、見せて、振り返る、を1回やってみてください。

よくある質問

Q. アジャイルとは、簡単に言うとどういう意味ですか?

計画を最初に固めきらず、短い期間で作って確かめることをくり返しながら、変化に合わせて進め方を変えていく仕事の考え方です。もとはソフトウェア開発の分野で生まれましたが、営業資料の作成や事務の見直し、Webサイトの運用など、やってみないと正解が分からない仕事全般に使えます。決まった手順の名前ではなく、価値観や原則を指す言葉です。

Q. アジャイルとウォーターフォールはどちらが良いのですか?

どちらが優れているということはなく、仕事の性質で使い分けます。作るものが決まっていて途中で変えにくい仕事ならウォーターフォール型、正解が分からず試しながら決める仕事ならアジャイルが合います。実際には、全体の予算と期限は先に決め、その中の中身を短い期間ごとに見直す、という組み合わせもよく使われます。

Q. アジャイルを始めるのに、専用のツールは必要ですか?

必ずしも必要ではありません。3人ほどのチームなら、ホワイトボードと付箋、または共有のスプレッドシートで十分に始められます。メンバーが増えて同時の書き換えがぶつかる、作業ごとのやり取りが散らばる、社外の人と見せる範囲を分けたい、といった状態になったら、ボードで管理できる道具を検討すると楽になります。

Q. アジャイルではドキュメントを作らなくてよいのですか?

作らなくてよいわけではありません。アジャイルソフトウェア開発宣言は、書類にも価値があると認めたうえで、動くものをより重く見ると書いています。IPAの解説でも、書類を作らなくてよいという受け止め方は誤解だと説明されています。決めたことの記録や引き継ぎの手順など、価値のある書類は作る必要があります。

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年7月6日最終更新:2026年10月17日
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