変更登記とは何のためにやるのか|放っておくと起きること


この記事のポイント
- ✓制度の建前ではなく実務の側から整理します
- ✓何が変わったら登記が要るのか
- ✓期限の2週間はいつから数えるのか
会社を作ってしばらく経つと、法務局から思いがけない通知が届いたり、取引先に登記事項証明書を求められて中身が古いままだと気づいたりします。そこで初めて「変更登記とは何のためにやるのか」と検索する。まず、安心してください。気づいた時点で申請すれば、たいていの遅れは取り戻せます。この記事では、変更登記の目的を建前ではなく実務の側から整理し、放っておくと具体的に何が起きるのかを、費用と期限まで含めて説明します。
変更登記は誰のために存在しているのか
変更登記の目的を一言で言うと、会社の中身を外から確かめられる状態に保つことです。
会社は目に見えません。看板もオフィスも持たずに動いている法人はいくらでもあります。それでも契約は結ばれ、お金は動き、責任を負う人が決まっている必要があります。そこで法律は、会社に関する一定の情報を登記簿に載せ、誰でも手数料を払えば見られる仕組みを用意しました。これが商業登記です。
つまり登記簿は、会社にとっての身分証明書にあたります。誰が代表者なのか、どこに本店があるのか、何を事業の目的にしているのか、資本金はいくらか。取引相手はこれを見て、相手が実在するのか、契約を結ぶ権限を持つ人と話しているのかを判断します。
ここが理解の分かれ目になります。登記は「会社が自分の都合で管理している台帳」ではなく、「外の人が会社を信用するための材料」です。だから、中身が変わったのに直さないという状態は、身分証明書に古い情報が載ったままという意味になります。
会社法は、会社の登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に、本店の所在地において変更の登記をしなければならないと定めています。2週間という短さは、外の人が見る情報だから、という理由で説明がつきます。情報が古いまま長く放置されると、登記簿という仕組みそのものが信用されなくなるためです。
そしてもう1つ、見落とされがちな目的があります。登記されていない事項は、原則として第三者に対抗できないという点です。たとえば代表取締役を交代させたのに登記を直していない場合、辞めたはずの前の代表者が会社名義で結んだ契約について、相手方が登記簿を信じていたなら、会社の側から「あの人にはもう権限がなかった」と主張するのが難しくなります。登記は、会社を守るための仕組みでもあるということです。
何が変わったら登記が必要になるのか
登記事項は会社法に列挙されています。株式会社の場合、主なものを挙げると次のとおりです。
目的、商号、本店および支店の所在場所、資本金の額、発行可能株式総数、発行済株式の総数、取締役の氏名、代表取締役の氏名および住所、取締役会設置会社であるかどうか、監査役設置会社であるかどうかとその監査役の氏名、公告方法の定めなどです。
実務で動くことが多いのは、次の5つに集約されます。
1つ目が役員です。取締役や監査役が辞めた、新しく入った、任期が切れて同じ人が続けた、という場面すべてが変更登記の対象になります。同じ人が続投する重任も、登記の上では退任と就任が同じ日に起きた扱いになるため、申請が必要です。
2つ目が本店です。事務所を移した、自宅兼事務所を引っ越した、という場合です。登記簿上の本店と実際の所在地がずれていると、法務局からの通知も税務署からの書類も届きません。
3つ目が商号です。会社の名前を変えた場合です。
4つ目が目的です。定款に書いた事業の目的を追加したり、書き換えたりした場合です。新しい分野の仕事を受けるとき、あるいは許認可を取るときに必要になります。
5つ目が資本金です。増資をした場合が典型です。
一方、登記が不要なものもあります。代表的なのは、電話番号やメールアドレスの変更、従業員の増減、取引銀行の変更、事務所の内装や部屋番号だけの変更などです。部屋番号については、登記簿にどこまで記載しているかで扱いが変わるため、証明書を取って現在の記載を確認してから判断してください。
役員の住所や氏名が変わった場合も登記事項です。代表取締役の住所は登記事項なので、引っ越したら直す必要があります。法務局は、株式会社の役員変更について、住所移転用と氏名変更用の申請書様式をそれぞれ別に用意しており、記載例も公開しています。自分のケースに合う番号の記載例を先に開いてから書き始めると、書き損じが減ります。
期限の2週間は、いつから数えるのか
2週間という期限は短いのですが、起算日を間違えると余計に短くなります。原因ごとに、数え始める日が違います。
役員が辞任した場合は、辞任の意思が会社に到達した日から数えます。辞任届に書いた日付と、実際に会社が受け取った日がずれている場合、どちらを取るかは書面の書き方によります。
任期満了と重任の場合は、定時株主総会が終わった日から数えます。総会の議事録に記載した開催日がそのまま起算日になります。
本店を移した場合は、移転の効力が生じた日からです。株主総会や取締役会で「いつから移す」と決議したなら、その日です。
商号や目的を変えた場合は、定款変更の効力が生じた日からです。定款の変更は株主総会の特別決議で行うため、決議した日、または決議で定めた効力発生日が起点になります。
増資の場合は、払込みが完了して効力が生じた日からです。
ここで実務的なコツを1つ。2週間は、書類をそろえて法務局に提出するまでの期間です。郵送で申請するなら、到着までの日数も計算に入れる必要があります。オンライン申請を使えるなら、そのほうが期限の管理は楽になります。
また、複数の変更が同じ時期に起きた場合は、まとめて1件の申請にできるケースがあります。たとえば同じ株主総会で役員を選び直して目的も変えたなら、1つの申請書で両方を処理できます。ただし登録免許税は事項ごとの区分で計算されるため、1件にまとめたから安くなるとは限りません。この点は次で説明します。
変更の種類ごとに、いくらかかるのか
登録免許税は国税庁が税額表を公開しています。令和8年4月1日現在の法令等に基づく内容として、商業登記の主なものが次のように示されています。
役員に関する変更の登記、つまり取締役または代表取締役もしくは監査役等に関する事項の変更の登記は、申請1件につき3万円です。ただし資本金の額が1億円以下の会社については1万円とされています。個人が立ち上げた会社の多くはこちらに当たります。
本店または支店の移転の登記は、1箇所につき3万円です。
商号や目的の変更、つまり登記事項の変更、消滅または廃止の登記は、申請1件につき3万円です。ここには資本金による軽減がありません。
資本金を増やす登記は、増加した資本金の額の1000分の7で、それが3万円に満たないときは申請1件につき3万円です。
支店を設置する登記は、1箇所につき6万円です。
登記の更正または抹消の登記は、申請1件につき2万円です。書き間違えて直す場合にもお金がかかる、という点は覚えておいてください。
詳細な区分は国税庁の登録免許税の税額表で確認できます。
司法書士に依頼する場合は、これに報酬が乗ります。目的変更を例に取ると、依頼にかかる費用について次のような目安が示されています。
目的変更登記は自身で行う以外に、登記の専門家である司法書士に依頼する方法があります。依頼にかかる費用は司法書士により異なりますが、20,000円〜30,000円程度が目安です。 出典: biz.moneyforward.com
登録免許税と報酬を合わせると、目的変更なら5万円から6万円程度に収まる計算になります。自分でやれば報酬分は浮きますが、書類の不備で法務局に何度も足を運ぶ時間と比べて、どちらが得かは本業の忙しさ次第です。役員変更のように毎回同じ形で繰り返す手続きは自分でやり、定款変更が絡むものは専門家に任せる、という切り分け方をしている人が多い印象です。
放っておくと起きること1. 代表者個人に過料が来る
ここからが、この記事の本題です。登記を直さないまま放置すると、順番に3段階で影響が出ます。
最初に来るのが過料です。法務局は、申請書様式のページで次のように説明しています。
登記すべき期間内に登記を怠り、その後に登記申請をする場合であっても、そのことだけをもって申請が却下されることはありませんが、会社・法人の代表者に対して、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります。 出典: houmukyoku.moj.go.jp
読み方のポイントは2つあります。
1つは、遅れても申請自体は受け付けてもらえるという点です。期限を過ぎたから登記できなくなる、ということはありません。気づいた時点で出せば通ります。ここは安心してよい部分です。
もう1つは、過料を負担するのが会社ではなく代表者個人だという点です。会社の経費として処理する性質のものではありません。上限として100万円という数字が示されていますが、実際の金額は裁判所が決めます。遅れた期間が長いほど重くなる傾向があるとされています。
過料の通知は、登記を申請したあとに届くことが多いと言われています。これが厄介で、「登記を出すと過料が来るらしい」と聞いて申請自体を先送りする人が出てきます。しかし先送りしても遅れた期間が伸びるだけで、状況は悪くなる一方です。気づいた時点で出すのが、結果として一番軽く済みます。
放っておくと起きること2. 12年でみなし解散
2段階目は、会社そのものが消える段階です。
会社法には休眠会社のみなし解散という仕組みがあります。株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したものを休眠会社と呼び、法務大臣が官報で公告し、一定期間内に届出も登記もしなければ、解散したものとみなされるという内容です。
この整理作業は毎年行われています。直近では令和7年10月10日に官報公告が行われ、同日付で管轄の登記所から対象の会社に通知書が発送されました。届出または必要な登記の期限は同年12月10日とされ、それを過ぎた会社は翌日付で解散したものとみなされ、登記官の職権で解散の登記がされる流れになりました。一般社団法人と一般財団法人は、12年ではなく5年が基準です。作業の詳細は法務省の休眠会社等の整理作業のページで公開されています。
12年という数字を見て「そんなに放置しない」と思う方も多いはずです。ところが役員の任期を10年に設定している会社は、構造的にここへ近づきます。10年に一度しか登記が発生しないため、1回忘れるだけで20年の空白ができるからです。
さらに怖いのは、通知書の宛先です。通知は登記簿上の本店に送られます。本店移転の登記をしないまま事務所を移していれば、その通知すら受け取れません。登記を忘れる会社ほど、忘れたことを知らせる手紙も届かないという構造になっています。
みなし解散の登記がされたあとも、一定の期間内であれば株主総会の決議で会社を継続させる道は残されています。ただし継続の登記にも費用と手間がかかり、その間に銀行口座や許認可の扱いがどうなるかという別の問題も発生します。
放っておくと起きること3. 取引と資金調達で止まる
3段階目は、実は最も早く効いてくる部分です。過料もみなし解散も先の話ですが、これは来月にも起こります。
金融機関から融資を受けるとき、規模の大きい取引先と新規に契約するとき、補助金や助成金に申請するとき、許認可を取るとき。どの場面でも登記事項証明書の提出を求められます。
そこに載っている代表取締役が何年も前に辞めた人のままだったり、本店が旧住所のままだったりすると、単純に書類が通りません。担当者が親切なら「登記を直してから出し直してください」と言ってくれますが、審査の内部では管理体制に疑問符がつきます。
目的の欄も見られます。たとえば新しく始めた事業の内容が定款の目的に入っていないまま取引を進めていると、契約の相手方から指摘されることがあります。許認可が必要な業種では、目的の記載が要件になっているケースもあり、その場合は目的変更の登記を済ませないと申請自体が受け付けられません。
目的変更登記をする際は、登録免許税として1件につき30,000円の納付が必要です。登録免許税を納付するには、郵便局や法務局で収入印紙を購入するか、金融機関を訪れて現金で支払う方法があります。 出典: biz.moneyforward.com
急に必要になってから動くと、定款変更のための株主総会を開き、議事録を作り、申請して、登記が完了するまで待つという流れになります。法務局の処理にも日数がかかるため、その週のうちに終わるものではありません。許認可や入札のスケジュールが決まっているなら、逆算して数か月前から動く必要があります。
申請書に何を書き、何を添えるのか
実際の申請書は、思っているより短い書類です。法務局が公開している株式会社変更登記申請書の記載例を見ると、埋める欄は次の並びになっています。
会社法人等番号、商号のフリガナ、商号、本店、登記の事由、登記すべき事項、登録免許税、添付書類、申請の日付、申請人である会社の本店と商号、代表取締役の住所と氏名、代理人を立てるならその住所と氏名、連絡先の電話番号、提出先の法務局名。これだけです。
つまずきやすいのは登記すべき事項の欄です。ここは自由作文ではなく、登記簿に記録する形式に合わせて書きます。役員の重任なら「役員に関する事項」「資格」取締役「氏名」といった項目名を鍵カッコで並べ、「原因年月日」に令和何年何月何日重任と書きます。代表取締役の行だけは、氏名の前に住所が入ります。この形が崩れると補正の対象になるので、記載例を横に置いて写すのが確実です。
商号のフリガナは登記事項証明書には表示されませんが、国税庁の法人番号公表サイトを通じて公表されます。株式会社という会社の種類を表す部分を除き、片仮名で左詰めに書きます。間に空白がある場合は、空白を削除した文字がフリガナとして登録されます。
添付書類は、何が起きたかで変わります。役員全員が重任した取締役会設置会社なら、株主総会議事録、株主リスト、取締役会議事録、就任承諾書。代表取締役の住所が変わっただけなら、添付するのは委任状だけで、住民票を付ける必要はありません。法務局の記載例にもその旨が明記されています。引っ越しただけなのに住民票を取りに行く人がいますが、不要な手間です。
登録免許税は収入印紙または領収証書で納めます。収入印紙は申請書に直接貼るのではなく、収入印紙貼付台紙に貼って綴じます。台紙と申請書のつづり目には契印が必要です。印紙に割印をしたり汚したりすると使えなくなるので、貼る前に金額を確かめてください。
申請書が2枚以上になるときは、各用紙のつづり目に契印が必要です。文字を訂正、追加、削除したときは訂正印が必要になります。ただし、契印も訂正印も、その書面の押印に法令上の根拠があるものに限られます。
登記が済んだら、証明書を取って確かめる
申請を出したら終わり、ではありません。完了したかどうかを自分で確かめる工程が残っています。
法務局は、提出された申請書や添付書面に補正がある場合は管轄の登記所から連絡するとしており、登記完了予定日まで連絡がなければ補正がなく手続きが完了したということになる、と説明しています。完了予定日は、申請した登記所を管轄する法務局のサイトで確認できます。オンライン申請やQRコード付き書面申請なら、処理状況をパソコンで確認できます。
完了したら、登記事項証明書を1通取って中身を読んでください。申請どおりに記録されているか、原因年月日がずれていないか、前任者の抹消がされているか。ここまでやって1つの手続きです。
手数料は法務省が公表しています。窓口や郵送で請求する書面請求は1通600円、オンラインで請求して郵送で受け取る場合は520円、オンラインで請求して窓口で受け取る場合は490円です。会社代表者の印鑑証明書は書面請求で500円です。1通の枚数が50枚を超える場合は、超える枚数50枚までごとに100円が加算されます。
証明書としての効力は要らず、中身だけ見たいのであれば、登記情報提供サービスという仕組みもあります。インターネット経由で登記記録の全部の情報を見られるもので、令和8年4月1日からの利用料金は1件330円です。内訳は登記手数料320円と指定法人の手数料10円で、個人が登録する場合の登録費用は300円、法人は740円です。
年に1回、この330円を使って自社の登記記録を眺める習慣をつけておくと、代表者の住所が古いまま、役員が辞めたまま、といった状態に自分で気づけます。取引先や金融機関から指摘されて気づくより、はるかに安く済みます。
自分で申請するか、専門家に任せるか
判断の基準をはっきりさせておきます。
自分でやりやすいのは、役員の重任や住所変更のように、定款をいじらず、毎回同じ形で繰り返す手続きです。法務局が申請書の様式と記載例を無料で公開しており、住所移転、氏名変更、役員全員の重任、辞任にともなう新任といったケース別に分かれています。記載例をそのまま埋めれば形になります。
専門家に任せたほうがよいのは、定款変更が絡むもの、複数の変更が同時に動くもの、株主が複数いて決議の要件が複雑なものです。目的変更、商号変更、本店移転で管轄の法務局が変わる場合、増資などが該当します。
費用感を整理すると、自分でやれば登録免許税だけで済みます。資本金1億円以下の会社の役員変更なら1万円です。司法書士に頼むと報酬が2万円から3万円程度加わり、目的変更のような3万円の登記なら合計5万円から6万円が目安になります。
電子証明書を持っているならオンライン申請が使えます。持っていない場合でも、法務局はQRコード付き書面申請という方法を案内しており、オンライン申請と同様のメリットがあるとしています。手続きの入口は法務局の商業・法人登記の申請書様式のページにまとまっています。
なお、法務局では登記手続きの案内を受けられますが、多くの登記所で事前予約制になっています。予約せずに行くと案内を受けられないか、長時間待つことになるため、相談したい場合は管轄の法務局のサイトで予約方法を確認してから向かってください。
住所を出したくない場合に使える制度
代表取締役の住所変更の登記について、引っ越すたびに自宅の番地が登記簿に載るのが気になる、という声は少なくありません。令和6年10月1日から、これに対応する制度が動いています。代表取締役等住所非表示措置です。
一定の要件を満たすと、代表取締役、代表執行役、代表清算人の住所が、登記事項証明書や登記情報提供サービスの画面で最小行政区画までしか表示されなくなります。市区町村まで(東京都では特別区まで、政令指定都市では区まで)が出て、番地から先が消える形です。
申出には条件があります。まず、登記の申請と同時に行う必要があります。単独では申し出られません。設立の登記、代表取締役の就任の登記、住所移転による変更の登記など、住所が登記されることになる申請と一緒に出します。住所に変更がない重任の登記に合わせて申し出ることもできます。
次に書面です。上場会社以外の場合、本店の実在を示す書面(会社宛に配達証明郵便が届いたことを証する書面など)、代表取締役の氏名と住所が書かれた市町村長等の証明書、会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面の3点が必要になります。
法務省が公表している月報によると、令和6年10月から令和8年8月までの実施件数は累計26,181件(暫定値)です。設立の登記と併せて申し出たものが5,735件、それ以外の登記と併せて申し出たものが20,446件で、すでに動いている会社が後から使っている例のほうが多いことが分かります。
ただし法務省は、慎重な検討を求めています。住所非表示の措置が講じられると、登記事項証明書で代表者の住所を証明できなくなるため、金融機関から融資を受ける際に不都合が生じたり、不動産取引で必要な書類が増えたりする可能性があるからです。創業間もない時期に融資を予定しているなら、その影響を先に考えておくほうが現実的です。
なお、住所が表示されなくなっても、住所を登記する義務自体はなくなりません。引っ越せば住所変更の登記は必要ですし、申請書には実際の住所を書きます。しかも住所に変更がある登記のときは、改めて申出をしないと新しい住所には措置が及びません。「一度申し出れば以後ずっと安心」ではない点に注意が要ります。
忘れないための仕組みと、市場から見た実像
制度の説明はここまでです。最後に、実際に忘れないための方法を書きます。
対策は2つで足ります。1つは、定款のコピーと最新の登記事項証明書を同じ場所に保管し、「次の登記はいつか」を書いた紙を挟んでおくこと。もう1つは、その期限の半年前にカレンダーの通知を入れておくことです。会計ソフトが出す決算の通知とは別枠で持っておくのが要点です。決算と登記は動く周期が違うため、同じ枠に入れると埋もれます。
登記事項証明書は年に1回は取り直して、記載内容と実態を突き合わせる。これだけで、代表者の住所が古いまま、役員が辞めたまま、といった状態には気づけます。
在宅ワークやフリーランスの市場を20年見てきた運営者の立場から言うと、法人化した個人が最初に消耗するのは、仕事を取ることよりもこうした事務のほうです。登記、社会保険、決算、契約書。どれも売上に直結しないのに、放置すると後からまとめて効いてきます。長く続いている人ほど、この種の作業を年に1回の固定業務として日程に先に埋め込んでいて、思い出して慌てるということをしていません。
法人を作ったから単価が上がる、という関係もありません。単価を決めるのは職種と専門性です。実際の水準は、職種別に相場を整理したソフトウェア作成者の年収・単価相場や、文章を扱う仕事の相場をまとめた著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確かめられます。前者は開発職の年収レンジと案件単価の傾向を、後者は執筆や編集の取引水準を整理したページです。
受注の幅を広げたい場合は、いま依頼が増えている領域を先に見ておくほうが早く進みます。生成AIの導入支援でどんな仕事が発生しているのかをまとめたAIコンサル・業務活用支援のお仕事、マーケティングやセキュリティを含む周辺領域を扱うAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発案件の種類と進め方を説明したアプリケーション開発のお仕事が、発注側の需要を掴むのに向いています。
書類仕事そのものに苦手意識があるなら、型を資格の形で身につけてしまうのも一手です。社内外の文書の書き方を体系的に扱うビジネス文書検定は、議事録や通知文の作法という点で登記まわりの書類とも地続きです。技術寄りの人なら、ネットワークの基礎を証明できるCCNA(シスコ技術者認定)が受注時の説明材料になります。
運営者として見てきた限りで、もう1つ確かなことがあります。手数料が引かれない直接取引の価値は、金額そのものより手取りの厚さに表れます。同じ予算を出す依頼者から見れば、仲介の取り分が乗らないぶん依頼できる量が増え、受ける側は同じ仕事で残る額が増える。手数料0%という条件が効いてくるのは単発の案件ではなく、同じ相手と何年も続ける関係のときです。そして何年も続けるつもりなら、登記のような地味な管理が土台になります。
契約や報酬の回収にも目を配ってください。支払いが止まったときの手段を整理した未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】は、支払督促の流れと費用の目安をまとめたものです。発注書や契約書に何を書くべきかは、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストが具体的な項目で示しています。数字を扱う専門職の働き方に関心があるなら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】も参考になります。
変更登記の目的は、会社を信用してもらうための情報を最新に保つことです。裏を返せば、放置は信用を少しずつ削る行為になります。皆さんが今日できるのは、登記事項証明書を1通取って、書いてある内容と実態を突き合わせることです。それだけで、次にやるべきことがはっきりします。
よくある質問
Q. 変更登記の期限を過ぎてしまいました。もう申請できませんか?
申請できます。法務局は、期限内に登記を怠った後に申請する場合でも、そのことだけを理由に申請が却下されることはないと説明しています。ただし代表者個人に対して裁判所から100万円以下の過料が科される可能性があります。遅れた期間が長いほど重くなるとされるため、気づいた時点で申請するのが最も負担の軽い選択です。
Q. 変更登記にかかる費用はいくらですか?
国税庁の税額表では、役員に関する変更の登記が申請1件につき3万円で、資本金の額が1億円以下の会社は1万円です。商号や目的の変更は1件につき3万円、本店移転は1箇所につき3万円とされています。司法書士に依頼する場合は、目的変更で2万円から3万円程度の報酬が目安となり、合計5万円から6万円程度になります。
Q. 電話番号や従業員数が変わったときも登記は必要ですか?
不要です。登記事項は会社法で決まっており、目的、商号、本店の所在場所、資本金の額、取締役の氏名、代表取締役の氏名と住所などが対象です。電話番号、メールアドレス、従業員の増減、取引銀行の変更は登記事項に含まれません。判断に迷う場合は登記事項証明書を取って、現在どこまで記載されているかを確認してください。
Q. 登記を長く放置すると会社はどうなりますか?
株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過すると休眠会社として扱われます。法務大臣が官報で公告し、期限までに届出も登記もしない場合は解散したものとみなされ、登記官の職権で解散の登記がされます。一般社団法人と一般財団法人は5年が基準です。通知は登記簿上の本店に届くため、本店移転も未登記だと通知自体が受け取れません。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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