役員が引っ越したときの登記|出さなくてよい人もいる

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
役員が引っ越したときの登記|出さなくてよい人もいる

この記事のポイント

  • 役員住所変更登記が必要なのは
  • 住所が登記されている役員だけです
  • 株式会社では代表取締役

役員が引っ越した。この場合に登記が必要かどうかは、多くの解説が「必要です」と一言で片づけています。正直なところ、この説明は正確ではありません。結論から書くと、役員住所変更登記が必要なのは、住所が登記されている役員だけです。そして株式会社の場合、住所が登記されているのは代表取締役だけです。

平の取締役や監査役が引っ越しても、株式会社であれば登記は要りません。登記簿に載っているのが氏名だけだからです。逆に、昔の有限会社から移行した特例有限会社では、取締役と監査役の全員について住所が登記されているため、誰が引っ越しても登記が必要になります。

この違いを知らないまま「役員が引っ越したら必ず登記」と覚えてしまうと、不要な手続きに時間と1万円を使うことになります。まずは自社の登記簿に何が載っているかを確認するところから始めてください。

登記簿に住所が載っているのは誰か

会社法では、株式会社の設立の登記において何を登記するかが列挙されています。役員に関する部分を抜き出すと、取締役については「氏名」、代表取締役については「氏名及び住所」、監査役については「監査役の氏名」と書き分けられています。

つまり株式会社では、住所が登記されるのは代表取締役と、指名委員会等設置会社における代表執行役だけです。取締役会を置いている会社でも、置いていない会社でも、この扱いは同じです。取締役会を置かない会社で取締役がそれぞれ会社を代表している場合は、その全員が代表取締役として扱われるので、結果的に全員の住所が登記されます。

特例有限会社はルールが違います。会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律では、特例有限会社の登記について、取締役の欄の「氏名」を「氏名及び住所」に読み替え、監査役についても「監査役の氏名及び住所」に読み替えると定めています。昔の有限会社の登記のかたちを引き継いでいるためです。

整理すると次のようになります。

株式会社の代表取締役が引っ越した。登記が必要です。

株式会社の平の取締役や監査役が引っ越した。登記は不要です。

取締役会を置かない株式会社で、取締役がそれぞれ会社を代表している。その取締役が引っ越したら登記が必要です。

特例有限会社の取締役や監査役が引っ越した。登記が必要です。

自社がどれに当たるかは、登記事項証明書を1通取れば分かります。「役員に関する事項」の欄を見て、氏名の上に住所が印字されている役員が、住所変更登記の対象です。ここを目で確認するのが最も確実で、記憶や一般論で判断すると間違えます。

対象になる場合の期限は2週間

住所変更の登記が必要な役員に該当した場合、期限は引っ越した日から2週間です。会社法では、登記すべき事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をしなければならないと定められています。住所は登記すべき事項なので、その変更も対象です。

役員の変更登記は、変更が生じた日から2週間以内に行う必要があります。役員の住所変更も同様に、住所が変わった日から2週間以内に法務局へ申請しなければなりません。この2週間という期限を過ぎてしまうと、会社法違反となり、代表者個人に対して過料(かりょう)が科される可能性があります。過料の金額はケースバイケースですが、数万円から最大100万円に及ぶこともあります。 出典: corporate.ai-con.lawyer

住所変更は、辞任や就任と比べて後回しにされやすい手続きです。会社の事業に直接の影響が出ないうえ、引っ越しそのものが私生活の出来事なので、会社の手続きとして認識されにくいからです。しかし登記簿の上では、代表者の住所は会社の重要な情報として扱われています。放置していると、取引先が登記情報を確認したときに古い住所が出てきて、確認の連絡が入ることがあります。

起算点は、実際に住み始めた日です。住民票の異動届を出した日ではありません。住民票の日付と実際の転居日がずれている場合、登記に書くのは住民票に記載された住所移転の年月日になるのが一般的な扱いなので、住民票を取り寄せて日付を確認してから申請書を作ると確実です。

添付書類は、実は委任状だけ

役員住所変更登記の意外な点は、書類がほとんど要らないことです。法務局が公開している「株式会社役員変更登記申請書(住所移転)」の記載例には、添付書類が次のように書かれています。

1.添付書類 委任状 (注)代理人に登記申請を委任した場合のみ必要です。なお、申請書に住民票を添付する必要はありません。 出典: houmukyoku.moj.go.jp

住民票も、印鑑証明書も、株主総会議事録も不要です。自分で申請するなら、添付書類は何もありません。申請書1枚と登録免許税だけで完結します。

これは役員変更の登記のなかで最も簡単な部類です。就任や辞任では印鑑証明書や本人確認証明書、議事録が必要になりますが、住所変更は誰かを選ぶ決議を伴わないため、証明すべきことが少ないのです。

申請書に書くのは、会社法人等番号、商号のフリガナ、商号、本店、登記の事由、登記すべき事項、登録免許税、添付書類、申請の日付、申請人の情報です。登記すべき事項の欄には、資格として代表取締役、変更後の住所、氏名、そして原因年月日として「令和〇年〇月〇日住所移転」と書きます。

注意点が1つあります。申請書の末尾に書く代表取締役の住所は、変更後の住所を書きます。法務局の案内にも、代表者の住所を変更する登記の場合は変更後の住所を記載する必要があると明記されています。ここを古い住所のまま書いてしまう間違いが多いので、提出前に確認してください。

費用は1万円か3万円。本店移転と重なると増える

登録免許税は、国税庁の税額表で決まっています。取締役や代表取締役、監査役に関する事項の変更の登記は申請1件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社については1万円です。住所変更もこの区分に含まれます。

役員が複数いて同時に引っ越したとしても、1回の申請にまとめれば1件分で済みます。夫婦や親子で役員を務めていて同じ家に住んでいる会社では、まとめて申請するのが自然です。

ここで注意したいのが、自宅を本店として登記している会社です。自宅兼事務所として自宅の住所を本店にしている場合、役員が引っ越すと本店の所在地も変わります。この場合は、役員の住所変更の登記に加えて本店移転の登記も必要になり、登録免許税は本店移転の分が別に加算されます。本店移転の登録免許税は1か所につき3万円です。

さらに、移転先が別の法務局の管轄になる場合は、移転前と移転後の両方の管轄分として6万円かかります。同じ市内でも法務局の管轄が分かれていることがあるので、引っ越し先が決まった段階で管轄を確認しておくと、費用の見込みを立てやすくなります。

司法書士に依頼する場合の報酬は事務所によりますが、住所変更のみであれば1万円前後を提示する事務所が多く、役員変更全般では2万円から3万円程度が相場とされています。ただし、添付書類が不要で申請書1枚で済む手続きなので、自分でやる難易度は低い部類です。

引っ越しのたびに自宅を公開したくない場合

代表取締役の住所は、誰でも取得できる登記事項証明書に記載されます。手数料を払えば取引先でも、まったく無関係の人でも見ることができます。自宅を本店にしている一人会社の経営者にとって、この点は長く不満の対象でした。

この状況を受けて、令和6年10月1日から代表取締役等住所非表示措置という仕組みが始まっています。

代表取締役等住所非表示措置は、一定の要件の下、株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人(以下「代表取締役等」といいます。)の住所の一部を登記事項証明書や登記事項要約書、登記情報提供サービスに表示しないこととする措置です。 出典: moj.go.jp

措置が講じられると、登記事項証明書に表示されるのは最小行政区画までになります。市区町村まで、東京都なら特別区まで、指定都市なら区までが表示され、それより細かい番地は出ません。

利用するには条件があります。申出は単独ではできず、住所が登記されることになる登記の申請と同時に行う必要があります。設立の登記、代表取締役の就任の登記、そして住所移転による変更の登記が該当します。つまり、引っ越しのタイミングはこの措置を申し出る数少ない機会のひとつです。

上場していない株式会社が申し出る場合、添付するのは次の3つです。会社宛に配達証明郵便が届いたことを証する書面など、本店が実在することを示すもの。代表取締役の氏名と住所が記載された住民票の写しや印鑑証明書など、市区町村長等による証明書。そして、会社の実質的支配者が誰かを証する書面です。実質的支配者リストの保管の申出をしている会社は、3つ目は不要です。

ただし、法務省はこの措置について慎重な検討を求めています。措置が講じられると登記事項証明書で代表者の住所を証明できなくなるため、金融機関から融資を受けるときに不都合が生じたり、不動産取引で必要な書類が増えたりすることが想定されるとしています。住所を隠せる代わりに、住所を証明する必要がある場面で手間が増える。この交換条件を理解したうえで判断してください。

もうひとつ重要な点があります。この措置が講じられていても、登記の義務そのものは免除されません。住所が変わったら、やはり2週間以内に変更の登記を申請する必要があります。そして、住所に変更がある登記を申請するときは、改めて非表示措置の申出をしなければなりません。申出をせずに住所変更の登記だけを出すと、新しく登記される住所には措置が講じられず、番地まで表示されてしまいます。

海外へ引っ越した場合も登記は必要

代表取締役が海外に移住した場合はどうなるか。この点も答えははっきりしています。

自宅の住所が登記されている役員であれば、国内・国外を問わず住所が変わるたびに登記が必要です。自宅兼オフィスとしていた住所を、役員の自宅住所として登記しているケースでは、役員が引っ越すと同時に会社の本店移転登記も必要になる場合があるので注意が必要です。 出典: corporate.ai-con.lawyer

住所が国外になっても、登記すべき事項であることは変わりません。国名から番地までを記載して登記します。日本の住民票がなくなるため住所の確認に迷いますが、住所変更の登記には住民票の添付が求められないので、申請そのものは同じ手順で進められます。

海外に移るときは、あわせて2つ確認してください。1つは、会社に印鑑を届け出ている代表者が国外に出ると、登記の申請書に押す印鑑の扱いや、印鑑証明書が必要になる別の手続きで不便が生じる可能性があることです。もう1つは、法人としての納税や社会保険の扱いが変わる場合があることです。どちらも個別の事情によって答えが変わるため、移住の予定が固まった段階で税理士と司法書士に状況を伝えて確認してください。

結婚などで氏が変わったときの扱い

引っ越しとあわせて質問が多いのが、氏が変わった場合です。役員の氏名は住所と違い、株式会社でも取締役と監査役の全員について登記されています。したがって、結婚や離婚で氏が変わったときは、住所が登記されていない役員であっても氏の変更の登記が必要です。

このときに知っておくと役立つのが、旧氏を併記できる仕組みです。法務省は次のように案内しています。

役員(取締役、監査役、執行役、会計参与又は会計監査人をいいます。)又は清算人について、その旧氏を記録するよう申し出ることができます(商業登記規則第81条の2)。令和4年9月1日から、併記可能な旧氏の範囲が拡大され、登記の申請時以外の申出も可能となりました。 出典: moj.go.jp

旧姓で仕事をしてきた人にとっては実務的な意味が大きい仕組みです。取引先や契約書の名義が旧姓のままでも、登記簿に旧氏が併記されていれば同一人物であることを説明しやすくなります。申出は登記の申請と同時でも、単独でも行えます。記録すべき旧氏を証する書面として、戸籍の書類や住民票などが必要です。

氏名の変更登記も、登録免許税の区分としては役員に関する事項の変更にあたるため、資本金1億円以下の会社なら1万円です。住所変更と同時に起きたなら、1回の申請にまとめれば1件分で済みます。

引っ越しと同時に確認したい登記事項

住所変更の登記のために登記事項証明書を取るなら、そのついでに他の記載も見ておくと効率がよくなります。登記簿は、放っておくと現実とずれていく書類です。

本店の所在地。自宅を本店にしているなら、引っ越しで変わります。

会社の目的。設立時に書いた事業内容のまま、実際の売上が別の分野から立っているケースは珍しくありません。目的と実態がずれていると、取引先の与信審査や補助金の申請で説明を求められることがあります。

役員の任期。取締役の任期は原則2年以内に終わる事業年度についての定時株主総会の終結時までで、非公開会社なら定款で最長10年まで延ばせます。前回の就任日から数えて次の満了がいつかを確認しておくと、重任の登記を忘れずに済みます。

公告の方法。官報にするか、電子公告にするかが登記されています。実際には一度も公告していない会社が多いのですが、決算公告は法律上の義務です。

これらをまとめて直すなら、1回の申請で複数の登記事項を変更できます。ただし登録免許税は区分ごとに加算されるので、費用の計算は事前にしておいてください。

登記事項証明書を取る方法も押さえておくと無駄がありません。法務局の手数料表によると、窓口や郵送で紙の請求をすると1通600円、オンラインで請求して郵送してもらうと520円、オンラインで請求して窓口で受け取ると490円です。本店の所在地に関係なく、全国どの法務局でも取得できます。取引先や銀行に提出するために何通も必要になるなら、オンライン請求のほうが確実に安く済みます。

申請そのものも、窓口、郵送、オンラインの3つから選べます。オンライン申請なら登録免許税を電子納付できるため、収入印紙を買いに行く必要がありません。ただし、初めて使う場合は申請用のソフトを入れて電子証明書を用意する手間があります。住所変更のように年に1回あるかないかの手続きだけのために環境を整えるなら、最初は郵送で出すほうが早く終わります。郵送の場合は書留や簡易書留を使い、返送用の封筒を同封しておくと、補正のやり取りがあったときに連絡が早くなります。

非表示措置が途中で終わることもある

住所を表示しない措置は、一度申し出れば永久に続くものではありません。法務省は、登記官が職権で措置を終了させる場合として4つを挙げています。

1つ目は、会社が希望しない旨を申し出た場合です。この申出は登記の申請と同時である必要がなく、単独で行えます。申出書には、措置を希望しない役員の氏名と住所を書き、会社が法務局に提出している印鑑を押します。融資を受けることになって住所の証明が必要になった、といった事情で戻すケースが想定されます。

2つ目は、本店の所在場所に会社が実在しないと判断された場合です。この場合、登記官が本店宛に通知を送り、一定期間内に返送などがなければ措置を終了させます。弁護士などの資格者から実在しない旨の情報提供があったときは、通知を送らずに終了させることもあるとされています。

3つ目は、上場会社でなくなったと認められる場合です。

4つ目は、閉鎖された登記記録を復活させるべき事由があると認められる場合です。

実務で気をつけたいのは1つ目と2つ目です。特に、本店として登記している場所に郵便物が届かない状態になっていると、措置が終了する可能性があります。自宅を本店にしていて引っ越したのに本店移転の登記をしていない、というのはまさにこの状態です。住所を隠したいという目的で措置を使うなら、登記簿の本店が現実と一致していることが前提になります。

登記を怠ると、みなし解散に近づく

住所変更の登記を放置しても、すぐに会社が止まるわけではありません。だからこそ後回しにされます。しかし、登記を長く放置することには別のリスクがあります。

会社法には休眠会社のみなし解散という仕組みがあり、会社に関する登記が最後にあった日から12年が経過した株式会社は、法務大臣が官報で事業を廃止していない旨の届出を求める公告をした場合に、2か月以内に届出をしないと解散したものとみなされます。

役員の任期を10年に延ばしている会社が、重任も住所変更も登記していなければ、12年はすぐに来ます。登記簿の上で解散した会社になると、金融機関の審査も取引先との契約も止まります。復活させる手続きには別の登記が必要で、費用も時間もかかります。

住所変更の登記は、こうした事態を避けるための最も軽い手続きでもあります。申請書1枚で、登記簿に「最後に登記があった日」が新しく記録されるからです。

会社の形ごとに、住所が載っている人は違う

株式会社と特例有限会社の違いは冒頭で整理しましたが、持分会社では扱いがまた別です。合同会社、合名会社、合資会社は、それぞれ登記する事項が会社法で書き分けられています。

合同会社については、会社法914条が次のように定めています。

六 合同会社の業務を執行する社員の氏名又は名称 七 合同会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所 出典: laws.e-gov.go.jp

業務執行社員は氏名だけ、代表社員は氏名と住所です。株式会社の取締役と代表取締役の関係と同じ構造になっています。代表社員を1人に定めている合同会社なら、その人が引っ越したときだけ登記が必要で、ほかの業務執行社員が引っ越しても手続きは要りません。

注意したいのは、代表社員をあえて定めていない合同会社です。この場合は業務執行社員の全員が会社を代表することになるため、全員が「合同会社を代表する社員」として住所まで登記されます。定款で代表社員を1人に絞っているかどうかで、対象になる人数が変わります。

合名会社と合資会社は、さらに範囲が広いです。会社法912条5号と913条5号が、いずれも「社員の氏名又は名称及び住所」を登記事項としています。会社を代表するかどうかに関係なく、社員であれば全員の住所が登記簿に載ります。この2つの形では、社員の誰が引っ越しても登記が必要です。

並べ替えると、住所が登記される人の範囲は、合名会社と合資会社がいちばん広く、次が特例有限会社、そして株式会社と合同会社がいちばん狭いという順番になります。もっとも、この順番を覚えるより、登記事項証明書で住所が印字されている人を目で確認するほうが早く、間違いも起きません。

自宅が本店だったときの費用を、実額で並べる

費用がいちばん膨らむのは、自宅を本店として登記している一人会社が引っ越す場合です。2つのパターンで実額を並べます。

引っ越し先が同じ法務局の管轄内だった場合。代表取締役の住所変更として1万円、本店移転として3万円で、登録免許税の合計は4万円です。資本金が1億円を超える会社は住所変更のほうが3万円になるため、合計6万円になります。

引っ越し先が別の管轄だった場合。本店移転の登録免許税は旧所在地と新所在地の両方にかかるので3万円が2つ、これに住所変更の1万円を足して合計7万円です。管轄が変わる移転は、登記が完了するまでの日数も管轄内より長くかかります。

ここに登記事項証明書の600円と、郵送するなら書留の料金が乗ります。申請そのものは1件にまとめられるので、法務局に出す回数は増えません。

同じ引っ越しでも、本店を自宅から切り離しておけば、次の引っ越しでは1万円だけで終わります。共同利用の事務所を本店にしている会社が、この費用を構造的に避けているのはそのためです。ただし本店として登記した場所には、郵便物が届く状態を保つ必要があります。届かない状態が続くと、住所を表示しない措置が終了する理由になり、みなし解散の通知を受け取れない事態にもつながります。

税務の届出も、本店が動くかどうかで変わります。役員の住所だけが変わる場合、会社の納税地は動かないので税務署への届出は要りません。本店が動いて納税地が変わる場合は、異動届出書を出します。

[提出時期]異動等後速やかに [添付書類]なし 出典: nta.go.jp

提出先は、異動する前の納税地を管轄する税務署長です。都道府県と市町村にも同じ趣旨の届出が必要なので、登記が終わった段階で3か所にまとめて出すのが手堅い進め方です。個々の会社で必要な書類は事情によって変わるので、迷ったら所轄の税務署か税理士に確認してください。

引っ越しの前後でやることを、日付順に置く

2週間という期限は、引っ越しの片付けと重なる時期に消えていきます。転居する日を起点に並べます。

転居の1か月前。引っ越し先の住所で法務局の管轄を調べます。自宅を本店にしているなら、管轄が変わるかどうかで登録免許税が3万円違います。あわせて、住所を表示しない措置を申し出るかどうかを決めます。この措置は住所が登記される登記の申請と同時にしか申し出られないため、住所変更の登記はその数少ない機会です。申し出るなら、配達証明郵便が届いたことを示す書面など、本店の実在を示す資料を先に用意します。

転居の当日。ここが2週間の起算点になります。日付を記録に残します。

転居の直後。市区町村に転入の届出をして、住民票の写しを1通取ります。登記への添付は不要ですが、住所の表記と移転した年月日を申請書に正確に書くために手元に置きます。丁目や番地の書き方は、住民票の表記に合わせます。

転居から1週間以内。申請書を作ります。登記すべき事項の欄には、資格として代表取締役、変更後の住所、氏名、原因年月日として住所を移した日と「住所移転」を書きます。申請書の末尾に書く代表取締役の住所も、変更後のものにします。

転居から2週間以内。法務局に申請します。登録免許税は収入印紙を貼付台紙に貼って納めます。自分で消印はしません。汚したり割印をしたりすると、その印紙は使えなくなります。

申請から1週間前後。登記完了予定日を過ぎます。本店も動かしたなら、ここから税務署と都道府県と市町村への届出に移ります。

この順番で進めると、引っ越しの片付けが終わらないうちに登記の期限が来る、という事故を避けられます。逆に、転居してから1か月以上たって気づいた場合でも、申請自体はできます。期限を過ぎたことだけで却下されるわけではないので、気づいた時点で早く出すほうが、放置して登記簿を古いまま残すより明らかに良い選択です。

20年見てきた、登記と信用の関係

在宅ワークと業務委託の仲介を20年見てきた立場から言えば、法人の登記情報を発注側が確認する場面は、以前より確実に増えています。登記情報を取得するサービスが安く使えるようになり、初めて取引する相手の実在性を確かめる動きが一般化したためです。

そのとき見られているのは、住所や目的が現実と合っているかという整合性です。登記簿の住所と請求書の住所が違う、登記簿の目的に今やっている事業が入っていない。こうしたずれは、それ自体が違法というわけではなくても、確認のやり取りを生み、判断を遅らせます。1万円で消せるずれを放置して、案件の入口で説明に時間を使うのは合理的ではありません。

長く続いている事業者に共通しているのは、こうした「説明しなくて済む状態」を保っている点です。そして、仕事の取り方についても同じ発想を持っています。案件を単発で拾い続けるのではなく、直接やり取りできる相手を増やして関係を資産にしていく。手数料0%の直接取引が効いてくるのは金額の大きさよりも手元に残る額の厚みで、依頼する側から見ても中間マージンが乗らないぶん同じ予算でより多く頼めます。双方に利があるから続く、という単純な構造です。

判断の材料になる、社外の相場と周辺情報

登記を自分でやるか外に出すかを決めるとき、その時間で本業からいくら生み出せるかと並べると答えが出やすくなります。開発系の仕事の相場はソフトウェア作成者の年収・単価相場に、文章まわりの仕事の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっています。住所変更の登記は添付書類が不要で申請書1枚の手続きなので、自分で進めるほうが割に合う場面が多い部類です。

事業の領域を広げたい場合は、伸びている分野を見ておくと判断しやすくなります。企業のAI導入を支援する仕事の実像はAIコンサル・業務活用支援のお仕事に、セキュリティやマーケティングを含む広い範囲はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に、受託開発の体制づくりはアプリケーション開発のお仕事に整理されています。

申請書や議事録のような定型文書を社内で正確に作れるようにしたいならビジネス文書検定の内容がそのまま実務に効きます。技術寄りの案件を法人として受けるときの裏づけにはCCNA(シスコ技術者認定)のような資格が発注側の判断材料になります。

登記情報の整合性は、契約や支払いの場面でも効いてきます。取引条件を書面でどこまで固めるべきかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに、支払いが止まったときの回収の流れと費用は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に、会計の専門家が資格を事業に使う考え方は会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】にまとまっています。

役員住所変更登記の判断は、登記事項証明書を1通取るところから始まります。住所が印字されている役員だけが対象で、印字されていない役員は引っ越しても手続きは要りません。対象だった場合は、申請書1枚と1万円で終わります。

よくある質問

Q. 役員が引っ越したら必ず登記が必要ですか?

必要なのは、住所が登記されている役員だけです。株式会社では住所が登記されるのは代表取締役と代表執行役なので、平の取締役や監査役が引っ越しても登記は要りません。特例有限会社では取締役と監査役の全員の住所が登記されているため、誰が引っ越しても登記が必要になります。

Q. 住所変更の登記に住民票は必要ですか?

不要です。法務局の記載例にも、申請書に住民票を添付する必要はないと明記されています。添付書類は、代理人に申請を任せる場合の委任状だけです。自分で申請するなら添付書類は何もなく、申請書1枚と登録免許税で完結します。

Q. 費用と期限はどれくらいですか?

登録免許税は申請1件につき3万円、資本金1億円以下の会社は1万円です。複数の役員が同時に引っ越しても、1回の申請にまとめれば1件分で済みます。期限は住所が変わった日から2週間で、過ぎると代表者個人に過料が科される可能性があります。

Q. 代表者の自宅住所を登記簿に出さない方法はありますか?

令和6年10月1日から代表取締役等住所非表示措置が始まり、条件を満たせば市区町村より細かい部分を登記事項証明書に表示しないことができます。申出は住所が登記される登記の申請と同時に行う必要があります。ただし住所を証明できなくなるため、融資や不動産取引で不都合が生じる可能性があると法務省が注意を促しています。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月12日最終更新:2026年9月22日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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